【解決手段】空調機器1は、ケーシング2、吸込口11、HEPAフィルタ12、送風ファン44、脱臭部60等を備える。脱臭フィルタ62は、ゼオライトを含む吸着材と、OMS−2構造を有する酸化マンガンとを含む材料により形成し、100℃以下の規定温度αで加熱することにより、再生可能な構成とする。加熱ユニット63は、ヒータユニット63aと、ユニットケース63bとを備え、ユニットケース63bを樹脂材料により形成する。駆動機構64は、脱臭フィルタ62を回転させることにより、脱臭フィルタ62のうち加熱ユニット63と対向する部位を変更し、脱臭フィルタ62全体を再生する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
以下、
図1から
図13を参照して、本発明の実施の形態1について説明する。なお、各図においては、共通する要素に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。
図1は、本発明の実施の形態1による空気清浄設備機器としての空調機器を示す正面図(a)、平面図(b)及び右側面図(c)である。また、
図2は、
図1中の各図から前面パネル、プレフィルタ及びHEPAフィルタを取外した状態を示している。
図3、
図4、
図5は、それぞれ、空調機器の分解斜視図、
図1(a)のY−Y線断面図、空調機器を前方及び後方からみた斜視図(a),(b)を示している。また、
図6は、
図2(a)に示す空調機器の斜視図である。
【0011】
図1から
図6に示すように、本実施の形態の空調機器1は、ケーシング2と、ケーシング2の内部に収納された送風ファン44、制御部47、脱臭部60等の機器とを備えている。ケーシング2は、空調機器1の外郭を構成するもので、樹脂材料により箱形状に形成されている。ケーシング2は、前パネル10、前ケース20及び後ケース40等を備えている。前ケース20は、
図2及び
図3に示すように、空調機器1の前方からみて長方形の枠状に形成されたフレーム21を備えている。
【0012】
フレーム21は、所定の奥行き寸法をもって前後方向に延びている。フレーム21の前端部には、長方形状の前開口22が開口している。また、フレーム21の後端部は、空調機器1の上下方向及び左右方向に延びた平板状の仕切板23により覆われている。仕切板23には、円形状の後開口24が形成されている。即ち、前ケース20は、前開口22及び後開口24によって前後方向の両側に開口している。なお、仕切板23の後開口24は、後述する送風ファン44のファン開口44dの周囲にベルマウスを形成している。
【0013】
フレーム21の下辺全体には、左右の2辺よりも前方に突出した下突出部25が形成されている。フレーム21の上辺には、左右の2辺よりも前方に突出した上突出部28が形成されている。また、フレーム21の上面部には、空調機器1を操作するための操作部26が配置されている。操作部26は、ユーザが操作する複数の操作ボタンと、各種の情報を表示する表示部及びLEDとが実装された操作基板(図示せず)を備えている。この操作基板は、フレーム21の上面部の内側に取付けられ、制御部47と電気的に接続されている。
【0014】
前パネル10は、ケーシング2の前面部を構成するもので、空調機器1の前方からみて前ケース20のフレーム21と同様の長方形状に形成されている。そして、前パネル10は、フレーム21の前部側に着脱可能に取付けられ、前開口22を覆っている。また、前パネル10には、例えば左右方向に延びた複数のスリットが形成されている。これらのスリットは、前パネル10の前方からケーシング2の内部に向けて室内の空気を吸込むための吸込口11を構成している。
【0015】
また、空調機器1は、
図3及び
図4に示すように、後述する枠体61の内側に嵌め込まれたHEPAフィルタ12及びプレフィルタ13を備えている。これらのフィルタ12,13は、空調機器1の前方からみて、長方形状に形成されると共に、枠体61の開口と同程度の大きさを有し、前パネル10と重なり合う位置に配置されている。HEPAフィルタ12は、空気中に含まれる花粉、ダニの糞、カビの胞子、ハウスダスト等の微細な塵埃を捕集して除去するためのフィルタである。プレフィルタ13は、HEPAフィルタ12が空気を濾過する前に予め大きな塵埃を除去しておくことにより、HEPAフィルタ12の寿命を延ばすためのフィルタである。プレフィルタ13は、HEPAフィルタ12よりも粗い目を有し、HEPAフィルタ12の上流側に配置されている。
【0016】
一方、後ケース40は、ケーシング2の後部側を構成するもので、空調機器1の前方からみてフレーム21と同様の外形を有する箱形状に形成されている。後ケース40の前端部には、長方形状の前開口41が開口している。後ケース40の上面部には、ケーシング2の内部に吸込まれた空気を吹出すための吹出口42が形成されている。また、後ケース40の後端部は、平板状の後面板43により閉塞されている。後面板43のうちケーシング2内の空間に面した前面部には、
図4に示すように、送風ファン44、仕切部材45及びルーバー46が配置されている。
【0017】
送風ファン44は、室内の空気をケーシング2内に吸込んで脱臭部60に流通させるための送風機であり、例えば多翼式ファン(シロッコファン)により構成されている。送風ファン44は、回転中心から一定の寸法だけ径方向に離れた位置に配置された複数の羽根44aと、これらの羽根44aを回転させるモータ44bとを備えている。各羽根44aは、回転方向に対して所定の幅寸法を有し、全周にわたって一定の間隔で並んでいる。モータ44bは、前方に向けて水平方向に延びた回転軸44cを有している。また、送風ファン44は、円形状に並んだ各羽根44aの内側で前方に向けて開口したファン開口44dを有している。そして、送風ファン44は、前方の空気をファン開口44dから吸込み、この空気を各羽根44aの間から径方向に吹出すように構成されている。
【0018】
仕切部材45は、送風ファン44から吹出した空気を吹出口42に導くための風路を形成するもので、スクロール形状を有している。仕切部材45は、
図3に示すように、後ケース40の後面板43から前方に向けて突出すると共に、送風ファン44の周囲を取囲んでいる。また、仕切部材45の上端部は、吹出口42の右端42a及び左端42bに連結されている。即ち、仕切部材45は、下部側が送風ファン44の周囲を取囲み、上部側が吹出口42と接続された袋状のダクトとして形成されている。
【0019】
ルーバー46は、吹出口42から室内に吹出す空気の風向を変えたり、吹出口42を閉じたりするものである。ルーバー46は、
図4に示すように、後ケース40内の上部で吹出口42の近傍に配置されている。ルーバー46は、平板状に形成された複数の風向板46aと、各風向板46aを相互に連結した状態で風向板46aの角度を変更するリンク機構46cと、リンク機構46cを駆動するモータ等の駆動部(図示せず)とを備えている。各風向板46aは、吹出口42から離れた位置で互いに一定の間隔をもって平行に並んでおり、風向板46aの両端に連結された軸46dを介して後ケース40の上面部に支持されている。そして、ルーバー46は、制御部47によりリンク機構46cの駆動部が制御されることで、各風向板46aの向きが変化する。なお、吹出口42には、ユーザがルーバー46に直接触れるのを防止する格子が取付けられている。
【0020】
制御部47は、空調機器1を制御するもので、例えば仕切部材45の下側で後ケース40の下端部に収納されている。制御部47は、マイクロコンピュータにより構成され、各種のプログラムが予め記憶された記憶部と、前記プログラムを実行するプロセッサとを備えている。制御部47の入力側には、後述する加熱ユニット63の温度を検出する温度センサを含めて、空調機器1に搭載された各種のセンサ類(図示せず)が接続されている。制御部47の出力側には、送風ファン44、ルーバー46の駆動部、後述の加熱ユニット63、駆動機構64等を含めて、空調機器1に搭載された各種のアクチュエータが接続されている。また、制御部47は、操作部26と相互通信可能に接続されている。そして、制御部47は、前記各センサ類及び操作部26からの入力信号等に基いて、前記アクチュエータの動作を制御することにより、空調機器1の運転を行う。この運転には、後述の空気清浄運転及びフィルタ再生運転が含まれている。
【0021】
次に、
図7及び
図8を参照して、空調機器1の空気浄化部を構成する脱臭部60について説明する。
図7は、本発明の実施の形態1による空調機器の脱臭部を前方からみた斜視図(a)及び後方からみた斜視図(b)である。
図8は、
図7(b)に示す脱臭部の分解斜視図である。脱臭部60は、ケーシング2の内部に吸込んだ室内の空気から臭気成分を取除き、空気を清浄化する部位である。脱臭部60は、枠体61、脱臭フィルタ62、加熱ユニット63及び駆動機構64を備えている。
【0022】
枠体61は、脱臭部60の構成部品が取付けられる取付ベースを構成するもので、
図3及び
図7(a)に示すように、前ケース20よりも一回り小さな長方形の枠状に形成され、所定の奥行き寸法を有している。枠体61は、前ケース20の内側に嵌め込んだ状態で使用される。また、枠体61の内側には、枠体61の内部を前側空間と後側空間とに仕切る中仕切板65が配置されている。中仕切板65には、
図8に示すように、上述の前側空間と後側空間とを相互に連通する円形状の開口65aと、開口65aの中心位置に固定された中央支持体65bと、中央支持体65bから放射状に延びて開口65aの周縁部に連結された複数の梁部65cとが形成されている。
【0023】
また、中央支持体65bには、
図4及び
図8に示すように、後方に突出する軸65jが形成されている。さらに、開口65aの前側には、
図8に示すように、同心円状に形成された複数の環状体からなる枠65hが配置されている。枠65hは、開口65aの通気性を保持しつつ、ユーザーが枠体61の後側から脱臭フィルタ62に直接触れるのを防止するものである。また、中仕切板65の後面部には、
図7(b)に示すように、開口65aを取囲む位置に環状のガイド部65eが形成されている。ガイド部65eは、開口65aの周囲で中仕切板65から後方に突出している。
【0024】
ガイド部65eの内径寸法は、開口65aの直径よりも所定の寸法だけ大きく、かつ、脱臭フィルタ62をガイド部65eの内周側に嵌め込むことが可能となるように設定されている。中仕切板65の後面部のうち、ガイド部65eの内周側かつ開口65aの外側に位置する部分は、
図8に示すように、環状のフィルタ保持面65kを構成している。また、ガイド部65eには、
図7(b)及び
図8に示すように、脱臭フィルタ62を保持する複数のフィルタ保持部65fが着脱可能に取付けられている。各フィルタ保持部65fは、ガイド部65eの周方向に間隔をもって配置され、ガイド部65eの内周側に突出している。
【0025】
また、中仕切板65の開口65aのうち中央支持体65bの下側に位置する扇形領域は、この扇形領域と同様の扇形状に形成された蓋体65dにより覆われている。蓋体65d及び開口65aの扇形領域は、中央支持体65bを基準として所定の中心角を有し、かつ、鉛直方向に対して左右対称に広がっている。蓋体65dは、例えば高密度PE、PP、PC(高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート)等のような樹脂材料により形成され、100℃以上の耐熱性を有している。
【0026】
蓋体65dは、中仕切板65の後面側から開口65aの扇形領域を覆った状態で、螺子等の取付部品を用いて梁部65cに取付けられている。この状態で、蓋体65dの後面部は、脱臭フィルタ62を挟んで加熱ユニット63と対向しており、加熱ユニット63と蓋体65dとの間には、脱臭フィルタ62を加熱するための扇形状の加熱空間が形成されている。なお、蓋体65dの少なくとも後面部には、加熱ユニット63から受けた熱を効率よく放射して前記加熱空間内での熱放射率を向上させるために、黒色の耐熱塗装等を施す構成としてもよい。
【0027】
脱臭フィルタ62は、通気性を有する円板状の部品として形成され、中仕切板65のガイド部65eの内周側に嵌め込まれた状態で、フィルタ保持面65kと各フィルタ保持部65fとの間に保持されている。脱臭フィルタ62は、蜂の巣のような複数の開口が形成されたハニカムコアと、このハニカムコアに塗布または含浸された無機性の吸着材及び触媒とを備えている。ハニカムコアは、例えばセラミック、アルミニウム、ステンレス鋼材等の材料により形成されている。吸着材は、ゼオライト、シリカ等の材料により形成され、無機バインダとしての機能を有している。このように、ハニカムコア及び吸着材は、加熱しても燃焼、発火の虞れがない材料により形成されている。
【0028】
また、脱臭フィルタ62が備える触媒は、空気中の臭気成分(特に、アンモニア)を吸着したり、加熱により臭気成分を酸化分解する機能を有している。このような触媒の材料としては、主として、白金、酸化マンガン等の貴金属、または、酸化金属等が用いられる。なお、本実施の形態において、脱臭フィルタ62が備える触媒は、OMS−2(octahedral molecular sieve)と呼ばれる結晶構造をもつMnO
2を含有し、これによって低温でも脱臭フィルタ62の再生が可能となるように構成されている。また、触媒は、ドーピングにより添加されたCs、Cu等の金属を含んでいてもよいし、アモルファス形状を有していてもよい。
【0029】
また、脱臭フィルタ62は、
図7(a)及び
図8に示すように、エレメントフレーム62a、ギア部62b及び開口部62cを備えている。エレメントフレーム62aは、脱臭フィルタ62の前面部に配置され、高密度PE、PP、PC等の樹脂材料により形成されている。また、エレメントフレーム62aには、脱臭フィルタ62の通気性を確保するための開口が形成されている。ギア部62bは、駆動機構64により脱臭フィルタ62を回転させるための被駆動部であり、脱臭フィルタ62の周縁部に全周にわたって形成されている。開口部62cは、脱臭フィルタ62の中心位置に形成されている。開口部62cは、枠体61の軸65jに回転可能に嵌合され、軸受として機能する。脱臭フィルタ62の外径寸法は、中仕切板65の開口65aの直径寸法よりも大きく、かつ、ガイド部65eの内径寸法よりも小さく設定されている。
【0030】
次に、
図9及び
図10を参照して、加熱ユニット63について説明する。加熱ユニット63は、脱臭フィルタ62の少なくとも一部を加熱して当該脱臭フィルタ62を再生する加熱再生機構を構成している。
図9(a)は、空調機器の加熱ユニットを後方からみた背面図であり、
図9(b)は、
図9(a)中における加熱ユニットのZ−Z線断面図である。また、
図10(a)は、加熱ユニットを後方からみた斜視図であり、
図10(b)は、加熱ユニットを前方からみた斜視図である。
【0031】
加熱ユニット63は、
図9及び
図10に示すように、ヒータとしてのヒータユニット63aと、ヒータ保持部としてのユニットケース63bとを備えている。ヒータユニット63aは、脱臭フィルタ62を加熱する加熱手段であり、ユニットケース63bの内部に収納されている。ヒータユニット63aは、中仕切板65の蓋体65dよりも一回り小さな扇形状に形成され、脱臭フィルタ62を挟んで蓋体65dと対向した状態では、空調機器1の前方からみて蓋体65dと重なり合う位置に配置される。ヒータユニット63aは、制御部47と電気的に接続されており、ヒータユニット63aの発熱量は、制御部47からの通電状態に応じて制御される。
【0032】
また、ヒータユニット63aは、
図9に示すように、扇形状の平板により形成された発熱体63fと、発熱体63fの後面部に取付けられた例えば2個のヒータ素子63gとを備えている。発熱体63fは、ヒータ素子63gにより加熱されるものである。発熱体63fの前面部は、脱臭フィルタ62を挟んで中仕切板65の蓋体65dと対向する部位であり、この前面部には、ヒータ素子63gから受けた熱の放射率を向上させるために、例えば黒色の耐熱塗装が施されている。これにより、ヒータユニット63aは、ヒータ素子63gで発生した熱を板状の発熱体63fの全体から脱臭フィルタ62に向けて放射することにより、脱臭フィルタ62のうちヒータユニット63aと対向する部分を効率よく加熱し、脱臭フィルタ62の加熱ムラを抑制することができる。
【0033】
ヒータ素子63gは、例えばチタン酸バリウムを主成分とした半導体セラミックであるPTCヒータ等により構成されている。PTCヒータは、自己温度制御性があり、外部からの温度制御を必要としないので、サーモスタットのように断続的な制御を行わなくても、安定した温度で使用することができる。なお、ヒータユニット63aが脱臭フィルタ62を挟んで中仕切板65の蓋体65dと対向した状態では、発熱体63fと脱臭フィルタ62との間に所定寸法の隙間が形成される。この状態で、ヒータユニット63aは、所定の時間だけ通電されることにより、脱臭フィルタ62のうち発熱体63fと対向する部位を規定の温度まで加熱する機能を有している。ここで、規定の温度とは、脱臭フィルタ62に吸着された臭気成分を取り除くことが可能な温度である。
【0034】
一方、ユニットケース63bは、
図10(b)に示すように、例えばヒータユニット63aよりも一回り大きな扇形状の外形を有している。そして、ユニットケース63bは、ヒータユニット63aを内部に保持する凹部63cと、凹部63cの開口周縁から外側に向けて突出したフランジ部63dとを備えている。凹部63cは、ヒータユニット63aの外形状に対応して扇形状に形成され、脱臭フィルタ62と対面する位置に開口している。フランジ部63dには、ユニットケース63bを固定する螺子が挿通される複数の螺子穴63eが形成されている。
【0035】
次に、
図7(b)を参照して、駆動機構64について説明する。駆動機構64は、加熱ユニット63と脱臭フィルタ62との相対的な位置関係を変化させることにより、脱臭フィルタ62のうち加熱ユニット63の発熱体63fが対向する加熱対象部位を変更する位置変更手段を構成している。駆動機構64は、モータ64aと、モータ64aを保持するブラケット64bとを備えている。モータ64aの回転軸には、駆動ギアが固定されており、この駆動ギアは、脱臭フィルタ62のギア部62bと噛み合うように構成されている。また、モータ64aは、制御部47と電気的に接続されており、制御部47により回転角度が制御される。これにより、駆動機構64は、中仕切板65の軸65jを中心として脱臭フィルタ62を回転させ、その回転角度に応じて脱臭フィルタ62の全ての部位をヒータユニット63aと対向する位置に移動させることができる。
【0036】
次に、
図4、
図7及び
図8を参照して、脱臭部60の組立について説明する。脱臭部60の組立時には、
図8に示す状態から
図7に示す状態となるように、脱臭フィルタ62、加熱ユニット63及び駆動機構64を枠体61に取付けることにより、脱臭部60を組立てる。具体的には、まず、枠体61の中仕切板65に蓋体65dを取付けた上で、脱臭フィルタ62を枠体61の後面側からガイド部65eの内周側に嵌め込むと共に、脱臭フィルタ62の開口部62c内に枠体61の軸65jを嵌合させる。
【0037】
次に、各フィルタ保持部65fを、脱臭フィルタ62の後面側からガイド部65eに取付ける。これにより、脱臭フィルタ62は、中仕切板65の開口65aに面した位置でフィルタ保持面65kと各フィルタ保持部65fとの間に保持され、枠体61に取付けられた状態となる。この状態において、フィルタ保持面65kとフィルタ保持部65fは、脱臭フィルタ62の回転を阻害しない程度の緩やかさで脱臭フィルタ62を軸方向に対して位置決めしている。なお、「軸方向」とは、軸65jの伸張方向であり、空調機器1の前後方向に相当している。
【0038】
次の処理では、加熱ユニット63を、脱臭フィルタ62の一部を覆う所定の位置(前記扇形領域)で枠体61に取付ける。このとき、加熱ユニット63は、脱臭フィルタ62の開口部62cの位置で露出した中央支持体65bと、脱臭フィルタ62の外側で中仕切板65に形成された取付部とにそれぞれ螺子止めされる。これにより、加熱ユニット63を構成するヒータユニット63aの発熱体63fは、前記扇形領域において、脱臭フィルタ62と軸方向で対向すると共に、脱臭フィルタ62を挟んで蓋体65dと軸方向で対向した状態となる。即ち、脱臭フィルタ62の一部は、加熱ユニット63と蓋体65dとの間に形成された加熱空間に配置された状態となる。この状態で、脱臭フィルタ62の両面側には、それぞれ適度な寸法をもつ軸方向の隙間が確保されている。
【0039】
これにより、脱臭フィルタ62は、中仕切板65の軸65jを中心として回転可能となり、脱臭フィルタ62のうち発熱体63f及び蓋体65dと対向する部位は、脱臭フィルタ62の回転角に応じて変化するように構成される。なお、本実施の形態では、枠体61の軸65jを脱臭フィルタ62の開口部62c内に嵌合させることで、脱臭フィルタ62を回転可能に構成する場合を例示した。しかし、本発明では、必ずしも開口部62c及び軸65jを備える必要はなく、例えば中仕切板65のガイド部65eの内周側に環状の溝等を設け、この溝により脱臭フィルタ62を保持した状態で脱臭フィルタ62が回転可能となるように構成してもよい。
【0040】
このように、本実施の形態では、互いに対向した加熱ユニット63と蓋体65dとの間に形成される加熱空間に脱臭フィルタ62の一部を配置することができ、加熱空間に熱を溜めて脱臭フィルタ62の一部を効率よく加熱することができる。また、加熱ユニット63の発熱体63fと蓋体65dとに熱の放射率を向上させる塗装を施した場合には、ヒータ素子63gで発生した熱を加熱空間に効率よく放射し、脱臭フィルタ62の加熱を更に効率よく行うことができる。このように、加熱ユニット63は、脱臭フィルタ62のうち加熱空間に配置される部分を効率よく加熱できるように構成されている。
【0041】
一方、駆動機構64は、モータ64aがブラケット64bに固定された状態で、中仕切板65の後面部に取付けられる。この取付位置は、
図8において、例えば中仕切板65の開口65aと角65gとの間となる位置である。この状態で、モータ64aの駆動ギアは、脱臭フィルタ62のギア部62bと噛み合わされる。これにより、駆動機構64の配置時には、長方形をなす中仕切板65の開口65aの周囲において、角65gの近傍に生じるデッドスペースを有効に活用することができる。また、駆動機構64は、中仕切板65が備える4つの角65gのうち、上側に位置する何れかの角65gと開口65aとの間に取付けるのが好ましい。これにより、加熱ユニット63と駆動機構64を開口65aの中心に対して下側と上側に離して配置することができ、加熱ユニット63で発生する熱が駆動機構64に影響するのを抑制することができる。
【0042】
次に、
図3を参照して、空調機器1の組立について説明する。空調機器1の組立時には、まず、前開口41を前方に向けた状態の後ケース40を前ケース20の後部側に取付ける。このとき、後ケース40に取付けられた送風ファン44のファン開口44dと、前ケース20の仕切板23に形成された後開口24とは、前後方向において互いに重なり合うように配置される。また、後開口24の開口中心は、送風ファン44の回転軸と同軸に配置される。
【0043】
次に、脱臭部60の枠体61を前ケース20の前開口22から内部に挿入し、枠体61の外周を前ケース20に嵌め込むことにより、脱臭部60を前ケース20に取付ける。このように、脱臭部60を前ケース20に取付けた状態では、脱臭部60の後面側(加熱ユニット63側)が、前ケース20の後開口24を向くように配置され、脱臭フィルタ62と後開口24の間に加熱ユニット63が配置される。この状態で、送風ファン44のファン開口44dの周囲にベルマウスを形成する仕切板23及び後開口24と、脱臭フィルタ62とは、
図4に示すように、予め設定された軸方向の間隔Dをもって対向するように配置される。この間隔Dは、脱臭フィルタ62から後開口24へと流れる空気の流れを妨げないために形成されるものである。加熱ユニット63は、このようにして形成された間隔Dに対応する空間に配置されている。
【0044】
次の処理では、脱臭部60の枠体61の内側にHEPAフィルタ12及びプレフィルタ13を配置する。そして、プレフィルタ13の前側において、前ケース20の上突出部28と下突出部25との間に挟むように前パネル10を取付ける。これにより、空調機器1を組立てることができる。なお、上述した組立の説明は、主要な部品についてのみ記載したものである。
【0045】
(空気清浄運転)
次に、
図4を参照しつつ、空調機器1により実行される通常の空気清浄運転について説明する。まず、ユーザが操作部26により所定の操作を行うと、制御部47は、送風ファン44を作動させることにより、空気清浄運転を開始する。これにより、室内の空気が吸込口11から吸込まれ、この空気は、
図4中に示す風路Rに沿って流通しつつ、清浄化される。詳しく述べると、吸込口11から吸込まれた空気は、まず、プレフィルタ13、HEPAフィルタ12を順次通過する。この結果、空気中の大きな塵埃は、プレフィルタ13により除去され、小さな塵埃は、HEPAフィルタ12により除去される。
【0046】
HEPAフィルタ12を通過した空気は、脱臭部60に流入し、脱臭フィルタ62を通過する。この空気は、脱臭フィルタ62のハニカムコアに形成された多数の開口を通過するときに、各開口の壁面に塗布された触媒と接触する。従って、空気中に臭気成分が含まれていると、この臭気成分は触媒により吸着され、空気中から取り除かれる。なお、「脱臭フィルタ62により空気中の臭気成分を取り除く」とは、空気中の臭気成分を少なくとも減少させることを意味し、臭気成分が完全に除去されない状態も含むものである。
【0047】
次に、脱臭部60から流出した空気は、前ケース20の後開口24を経由して送風ファン44に流入し、送風ファン44の前側からファン開口44dに吸込まれる。この空気は、送風ファン44の外周側から径方向に吹出された後に、仕切部材45により後ケース40の上部に案内される。そして、ルーバー46を通過することにより風向が整えられた状態で、吹出口42から上方に向けて室内に吹出される。このように、空気清浄運転によれば、室内の空気中に含まれる塵埃及び臭気成分を取り除くことができ、空気を清浄化することができる。
【0048】
上述したように、本実施の形態の空調機器1は、ケーシング2の前面に開口する吸込口11から後部側の仕切部材45に向けて水平方向に伸張し、仕切部材45の位置で上方に向きを変えて吹出口42に至る風路Rを備えている。そして、風路Rにおいては、空気の流れを基準として、脱臭フィルタ62の上流側にプレフィルタ13及びHEPAフィルタ12からなる塵埃濾過フィルタを配置している。また、脱臭フィルタ62の下流側で風路Rを水平方向から上向きに屈曲させると共に、風路Rの屈曲部には、シロッコファンからなる送風ファン44を配置している。
【0049】
シロッコファンは、ファンの軸方向から吸込んだ空気を径方向に吹出すので、室内の空気をケーシング2の前面から後方に吸込む直線的な流れを形成すると共に、この空気の流れ方向を吹出口42に向けて効率よく変えることができる。また、脱臭フィルタ62、プレフィルタ13、及びHEPAフィルタ12及び送風ファン44のファン開口44dの前面は、風路Rを流れる空気の流れ方向に対して、垂直に配置されている。これにより、脱臭フィルタ62まで空気の流れがまっすぐで、各フィルタ12,13,62に対して空気が垂直に通過するので、空気の吸込及び濾過を効率よく行うことができる。
【0050】
ここで、中仕切板65の開口65aは、ケーシング2の前方からみた正面視において、上下方向の中央に配置されている。そして、正面視において、ケーシング2の投影面積Xと、開口65aの投影面積Yとの関係は、下記(1)式を満たすように構成されている。これにより、ケーシング2の大きさに対して開口65aの開口面積を十分に確保することができ、ケーシング2内に空気を効率よく流通させることができる。
【0052】
(フィルタ再生運転)
一方、空気清浄運転が行われると、脱臭フィルタ62には、吸着した臭気成分が蓄積されることになり、脱臭フィルタ62の脱臭性能は、臭気成分の蓄積量が増えるに従って低下していく。このため、制御部47は、脱臭フィルタ62の脱臭性能を回復させるフィルタ再生運転を実行する。以下、フィルタ再生運転について説明する。
【0053】
フィルタ再生運転は、制御部47により所定のタイミングで実行される。このタイミングとは、例えば空気清浄運転を開始してからの累積運転時間、または、前回のフィルタ再生運転が終了してからの空気清浄運転の累積運転時間が予め設定された再生必要時間を超えた場合等である。より具体的には、例えば24時間に1回以上のフィルタ再生運転を行うことが好ましい。
【0054】
フィルタ再生運転では、まず、空気清浄運転が終了し、送風ファン44が停止した状態において、加熱ユニット63に通電する。これにより、脱臭フィルタ62のうち加熱ユニット63と対向した部分を加熱し、この部分の温度を規定温度まで上昇させた状態に保持する。そして、この状態を規定時間だけ継続する。このときの規定温度及び規定時間は、例えば実測等により求められ、脱臭フィルタ62に吸着された臭気成分を除去するのに十分な値に設定されている。ここで、加熱ユニット63の温度と、脱臭フィルタ62の温度との間には、両者間に存在する空気等が原因で温度差が生じるので、上記の規定温度及び規定時間は、この温度差を考慮した上で、脱臭フィルタ62を再生するのに十分な値となるように設定する必要がある。なお、具体的な温度制御については後述する。
【0055】
ここで、脱臭フィルタ62の加熱対象部分は、前述したように、それぞれ熱の放射率を高める塗装が施された発熱体63fと蓋体65dとにより両側から覆われた状態で加熱される。これにより、ヒータユニット63aから発生する熱と、蓋体65dから放射される熱とにより、脱臭フィルタ62を効率よく加熱することができる。また、発熱体63f及び蓋体65dから放出される熱を両者間の狭い加熱空間に溜めることができる。この結果、加熱空間に配置された脱臭フィルタ62の加熱効率を更に高めることができる。
【0056】
上記の加熱処理により脱臭フィルタ62の部分的な再生が完了した後には、制御部47により駆動機構64のモータ64aに通電し、駆動機構64を作動させる。これにより、モータ64aの駆動力が駆動ギア及びギア部62bを介して脱臭フィルタ62に伝達され、脱臭フィルタ62が中仕切板65の軸65jを中心として回転するので、制御部47は、予め設定された単位移動角度分だけ脱臭フィルタ62を回転させる。
【0057】
ここで、単位移動角度とは、脱臭フィルタ62のうち加熱処理が完了した部分が加熱ユニット63との対向位置から回転方向に移動し、加熱処理が済んでいない新たな部分が加熱ユニット63との対向位置に移動する角度である。なお、単位移動角度は、軸65jを中心として扇形状に形成されたヒータユニット63aの中心角と一致させるか、または、ヒータユニット63aの中心角よりも小さな角度に設定するのが好ましい。
【0058】
このように、本実施の形態では、脱臭フィルタ62を回転させることにより、脱臭フィルタ62と加熱ユニット63の相対的な位置関係を変更する駆動機構64を備えている。これにより、フィルタ再生運転では、加熱ユニット63により脱臭フィルタ62を部分的に加熱しながら、駆動機構64により脱臭フィルタ62を1回転させることができる。これにより、脱臭フィルタ62の全体に対して加熱処理を行うことができ、全体の脱臭性能を再生させることができる。なお、フィルタ再生運転において、脱臭フィルタ62を回転させるタイミングは、1部分の加熱処理が完了した直後であってもよいし、1部分の加熱処理が完了した後に最初に行われる空気清浄運転の直前であってもよい。
【0059】
次に、
図11を参照して、脱臭フィルタ62を加熱するときの加熱制御について説明する。
図11は、本発明の実施の形態1において、フィルタ再生運転により実現される脱臭フィルタの温度特性を示す特性線図である。加熱制御では、脱臭フィルタ62の性能を効率よく回復させるために、加熱ユニット63による加熱動作を断続に行う。即ち、加熱制御では、脱臭フィルタ62の温度を前述の規定温度αまで上昇させるが、その途中の設定温度a,bにおいて、加熱ユニット63への通電を一時的に停止して加熱を中断する。なお、設定温度a,bは、規定温度αよりも低い温度として設定され、設定温度a,bでの加熱の中断時間は、例えば4、5分程度に設定されている。
【0060】
また、脱臭フィルタ62の温度が設定温度a,bに達して加熱を中断したときには、例えば加熱ユニット63に配置された温度検出手段(図示せず)により温度を検出し、加熱ユニット63に急激な温度上昇が生じていないことを確認する。ここで、「急激な温度上昇」とは、例えばヒータユニット63aの加熱による温度上昇速度が10秒あたり3〜5℃程度の基準速度である場合において、温度検出手段により検出された温度の上昇速度が基準速度以上となる状態を意味している。
【0061】
脱臭フィルタ62は、ヒータユニット63aにより加熱されるので、通常であれば、ヒータユニット63aへの通電が停止されてから余熱によりある程度の温度上昇は生じ得るが、基準速度の温度上昇は生じ得ないと考えられる。従って、急激な温度上昇が検出された場合には、加熱ユニット63を直ちに停止させてフィルタ再生運転を終了し、エラーメッセージの発信等を行うことによりユーザに異常を報知する。一方、急激な温度上昇が検出されない場合には、ヒータユニット63aへの通電の再開を許可する。
【0062】
そして、脱臭フィルタ62の温度が規定温度αに到達した後には、急激な温度上昇の発生を監視しながらヒータユニット63aに対して断続的な通電を行う処理を実行する。この処理は、前述の規定時間tが経過するまで継続される。なお、規定時間tの長さは、例えば空調機器1の使用環境、温度、脱臭対象となる臭気成分、脱臭フィルタ62への触媒の添着有無、触媒の種類等に基いて設定されるものであり、加熱制御の開始時点または規定温度αへの到達時点を起点として計測される。
【0063】
次に、
図12を参照して、フィルタ再生運転中に脱臭フィルタ62の各部で行われる加熱制御の具体的な処理について説明する。
図12は、本発明の実施の形態1において、脱臭フィルタを加熱して再生するための加熱制御の一例を示すフローチャートである。この図に示す加熱制御では、まず、ステップS1において、ヒータユニット63aへの通電を開始し、脱臭フィルタ62の加熱を開始する。
【0064】
次に、ステップS2では、温度検出手段による検出温度が前述の設定温度aよりも高いか否かを判定し、この判定が成立した場合には、ステップS3に移行してヒータユニット63aへの通電を停止する。一方、ステップS2の判定が不成立の場合には、当該判定が成立するまでステップS2の判定を継続する。次に、ステップS4では、前記検出温度に基いて、急激な温度上昇が生じたか否かを判定し、この判定が成立した場合には、ステップS16に移行してエラーを報知する。一方、ステップS4の判定が不成立の場合には、ステップS5に移行し、ヒータユニット63aへの通電を開始する。
【0065】
次に、ステップS6では、温度検出手段による検出温度が前述の設定温度bよりも高いか否かを判定し、この判定が成立した場合には、ステップS7に移行してヒータユニット63aへの通電を停止する。一方、ステップS6の判定が不成立の場合には、当該判定が成立するまでステップS6の判定を継続する。次に、ステップS8では、前記検出温度に基いて、急激な温度上昇が生じたか否かを判定し、この判定が成立した場合には、ステップS16に移行してエラーを報知する。一方、ステップS8の判定が不成立の場合には、ステップS9に移行し、ヒータユニット63aへの通電を開始する。
【0066】
次に、ステップS10では、温度検出手段による検出温度が規定温度αに到達したか否かを判定する。この判定が不成立の場合には、当該判定が成立するまでステップS10の判定を継続する。また、ステップS10の判定が成立した場合には、ステップS11に移行してヒータユニット63aへの通電を停止し、ステップS12において急激な温度上昇が生じたか否かを判定する。そして、ステップS12の判定が成立した場合には、ステップS16に移行してエラーを報知する。また、ステップS12の判定が不成立の場合には、ステップS13に移行する。
【0067】
次に、ステップS13では、温度検出手段による検出温度が規定温度α以下であるか否かを判定し、この判定が成立した場合には、ステップS14に移行してヒータユニット63aへの通電を開始する。また、ステップS13の判定が不成立の場合には、当該判定が成立するまで判定を継続する。次に、ステップS15では、例えばステップS1でヒータユニット63aへの通電を開始してから、規定時間tが経過したか否かを判定する。この判定が成立した場合には、脱臭フィルタ62のうちヒータユニット63aと対向する部分に対して十分な加熱処理が行われたと判断し、ヒータユニット63aを停止して加熱制御を終了する。一方、ステップS15の判定が不成立の場合には、ステップS10に戻り、ステップS10〜S15の処理を繰返す。
【0068】
以上の処理を行うことにより、
図11に示す温度特性を得ることができる。なお、上記ステップS15では、規定時間tの起算点をヒータユニット63aへの通電開始(ステップS1)とした場合を例示した。しかし、本発明はこれに限らず、規定時間tの起算点は、温度検出手段による検出温度が規定温度αに到達した時点(ステップS10の判定成立時点)としてもよい。
【0069】
また、
図11及び
図12に示す加熱制御では、規定温度αに到達するまでの間に設定温度a,bで加熱を2回中断する処理を例示した。しかし、本発明はこれに限らず、加熱を中断する温度及び回数は、空調機器1の使用環境、処理対象となる臭気成分の物性値等に応じて任意の値に設定すればよいものである。また、加熱を中断する回数は、規定温度αが高いほど、増加させるのが好ましい。
【0070】
具体例を挙げると、空調機器1をアセトアルデヒドが多い環境で使用し、規定温度αがアセトアルデヒドの除去に適した温度領域の最低温度α′以上の場合には、加熱を中断する設定温度として前記最低温度の50〜60%、75〜85%、90〜98%となる3つの温度値を設定する。そして、加熱制御では、これらの温度値で加熱を中断して急激な温度上昇の検出を行いながら、脱臭フィルタ62の加熱を3段階に分けて実行してもよい。
【0071】
また、規定温度αが前記最低温度α′よりも低い場合には、加熱を中断する設定温度として前記最低温度の35〜45%、50〜60%となる2つの温度値を設定する。そして、加熱制御では、これらの温度値で加熱を中断しながら、脱臭フィルタ62の加熱を2段階に分けて実行してもよい。なお、上述した設定温度の具体値は一例であり、最低温度α′に対する設定温度の具体的な割合は、規定温度αと最低温度α′との大小関係、処理対象となる臭気成分の物性値等に応じて任意の値に設定すればよい。
【0072】
また、上述したフィルタ再生運転の実行中、特に、脱臭フィルタ62の温度が規定温度αに到達した後には、送風ファン44を停止しておくのが好ましい。これにより、脱臭フィルタ62の温度を効率よく上昇させることができ、また、規定温度αに到達した状態を安定的に保持することができる。
【0073】
以上のことから、本実施の形態によれば、次のような効果を得ることができる。まず、脱臭フィルタ62は、ゼオライト、シリカ等を主成分として使用することにより加熱による燃焼及び発火の虞れがない無機系吸着材と、少なくともOMS−2型の結晶構造を有するMnO
2触媒と、ステンレス、アルミ、セラミック等を原料とすることにより燃焼及び発火の虞れがない母材であるハニカムコアとを備えている。そして、これらの無機系吸着材とMnO
2触媒とをハニカムコアに塗布または含浸させる構成としている。これにより、脱臭フィルタ62は、高い耐熱性能を有し、加熱により再生可能に構成されている。
【0074】
MnO
2触媒を含む殆どの酸化金属触媒は、140℃以上の高温領域において、エタノール、アセトアルデヒド等をCO
2に転化する触媒機能を発揮する。これに対し、OMS−2構造のMnO
2触媒は、90℃前後の低温領域からCO
2を転化することができる。例えばエタノールを触媒に対して流通するワンパス流通系において、触媒を100℃に加熱した状態では、一般的なMnO
2触媒のCO
2転化率が0%なのに対し、OMS−2構造のMnO
2触媒のCO
2転化率は3%となることが確認されている。さらに、アモルファスOMS−2では、濃度にもよるが、CO
2転化率が10%となることが確認されている。
【0075】
即ち、本実施の形態によれば、OMS−2構造のMnO
2触媒を担持した脱臭フィルタ62を用いることにより、100℃以下の低温状態でも、臭気成分を効率よく除去して脱臭フィルタ62の加熱及び再生処理を安定的に行うことができる。このとき、脱臭フィルタ62の触媒以外の部分は、耐熱性が高い材料により形成しているので、加熱温度に関係なく、フィルタ再生運転中に燃焼及び発火が発生するのを確実に抑制することができ、高い信頼性を実現することができる。
【0076】
本実施の形態1では、臭気成分が吸着された脱臭フィルタ62の再生処理を目的としていることから、例えば1%でも分解が可能な機能を有していれば、加熱時間を調整することによりCO
2までの分解を行うことが可能となる。エタノールは、その分解過程において、酢酸、アセトアルデヒド等の中間性生物を臭気成分として発生させる。特に、アセトアルデヒドは、調理臭、タバコ臭等のように多様な生活臭に含まれているので、生活臭の除去を目的とする脱臭機器においては、OMS−2構造のMnO
2触媒を用いることにより、その再生効果を十分に得ることができる。
【0077】
MnO
2触媒がOMS−2構造をもつか否かは、X線解析により特定することが可能である。
図13は、OMS−2構造のMnO
2触媒をXRDによって測定したときの波形パターンを示す特性線図である。この図に示すように、特に、5,15,29,37(2theta/degree)付近に現れるピークを有するのがOMS−2構造のMnO
2触媒の特徴である。従って、
図13に示す波形パターンに基いて、OMS−2構造のMnO
2触媒が含まれるかどうかを判別することができる。
【0078】
なお、脱臭フィルタ62は、加熱により再生させる構成としているので、加熱による発火及び燃焼の虞れがないことが望ましい。本実施の形態1の使用環境は多種多様で有り、熱を溜め込み自己発火する恐れのある物等を吸い込む可能性が有る為、加熱箇所より燃焼が広がり、火災などが起こる危険性を可能な限り低減する必要が有る為である。特に、脱臭フィルタ62は、本実施の形態のように、空調機器1の内部で加熱されることが多いため、脱臭フィルタ62の周囲には、難燃処理が施された部品又は不燃性の材料を用いた部品を使用するのが使用するのが望ましい。
【0079】
次に、脱臭フィルタ62の再生温度が100℃以下であることの利点について説明する。脱臭フィルタ62が100℃以下の低温であれば、脱臭フィルタ62及びヒータユニット63aを保持する保持部品に金属を用いる必要がなくなる。例えば前述の高密度PE、PP、PCに加えて、ABS、PS、PET、POM(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリアセタール)等の樹脂材料は、100℃前後の融点を有しており、これらの樹脂材料を用いて前記保持部品を形成することができる。なお、本実施の形態において、保持部品とは、ヒータユニット63aを保持するユニットケース63b、脱臭フィルタ62を保持する中仕切板65(ガイド部65e、フィルタ保持面65k、フィルタ保持部65f)等である。
【0080】
さらに、脱臭フィルタ62の再生温度が80℃以下である場合には、例えばPVC、PVAL(ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール)等の一部を除いた全ての樹脂材料を用いて前記保持部品を形成することができ、脱臭フィルタ62を保持するための金属材料が不要となる。これにより、空調機器1の小型軽量化を促進し、かつ、空調機器1の部品を樹脂成形等により容易に形成することができる。
【0081】
また、実施の形態1に搭載されているHEPAフィルタ12をより目の粗い圧損の低いフィルタと交換する事も可能となる。100℃以上の加熱を行う場合はその温度の高さから、小さな塵埃でも発熱による燃焼の恐れが有った。しかし、100℃以下、特に80℃以下に下げられれば、燃焼の恐れが無くなり、塵埃が多少付着しても発火の危険性を考慮する必要が無くなる。
【0082】
また、脱臭フィルタ62の再生温度が100℃である場合に、実際のフィルタ再生運転では、規定温度αを100℃として、ヒータユニット63aにより規定温度α以上の加熱が必要となる。一例を挙げると、脱臭フィルタ62は、軸方向に一定の厚みを有しているので、フィルタ再生運転では、脱臭フィルタ62の内部温度が規定温度αとなるように、脱臭フィルタ62の表面を規定温度α以上に加熱する。これにより、脱臭フィルタ62の内部に熱を浸透させ、当該内部を規定温度αに保持することができる。特に、脱臭フィルタ62の母材としてセラミック等を用いた場合には、表面の熱が内部に伝わり難いため、ヒータユニット63aによる加熱温度は、高めに設定するのが好ましい。
【0083】
また、脱臭フィルタ62に使用される吸着剤は、例えばシリカとアルミナとが適度な比率で混合されたゼオライトである。このゼオライトは、アルミナよりもシリカの方が多く配合され、疎水性を有していることが望ましい。OMS−2構造のMnO
2触媒は、水分を多く保有する状態では性能が低下する傾向にある。具体例を挙げると、OMS−2構造のMnO
2触媒に相対湿度50%程度の空気を流通させると、乾燥状態の空気を流通させた場合と比較してCO
2転化率が半減する場合がある。従って、脱臭フィルタ62は、水分を含まない構成とするのが好ましく、吸着材は疎水性を有していることが好ましい。更に、細孔径については5Å以上を中心径とするのが望ましい。対象としているガス成分から、ベンゼン環を有するようなガス成分までサポートする必要が有り、ベンゼン等よりも大きな細孔径を有する物がある必要がある為である。
【0084】
次に、脱臭フィルタ62を備えた空調機器1の効果について説明する。空調機器1は、脱臭フィルタ62を80℃以上の高温に加熱する加熱ユニット63と、脱臭フィルタ62に空気を流通させる送風ファン44とを備えている。80℃以上の加熱は、脱臭フィルタ62を再生するのに最低限必要な温度条件であり、この温度未満では、脱臭フィルタ62の再生が困難となる。送風ファン44は、空気中の臭気成分を脱臭フィルタ62に効率よく接触させる機能を有し、脱臭フィルタ62から人の臭覚で感じられない程度の臭気を放出することにより、脱臭フィルタ62を長持ちさせる効果も有している。
【0085】
また、送風ファン44は、フィルタ再生運転時(加熱ユニット63の作動時)に作動し続ける構成としてもよい。フィルタ再生運転時には、加熱により脱臭フィルタ62から脱離した臭気成分の一部が再び脱臭フィルタ62に吸着されてしまうことがある。これに対し、送風ファン44が作動していれば、脱離した臭気成分を送風ファン44の風により脱臭フィルタ62から離れた位置に移動させることができ、加熱による脱臭フィルタ62の再生を効率よく行うことができる。
【0086】
また、本実施の形態では、円形状に形成された脱臭フィルタ62の一部である扇形状の加熱対象部位を加熱ユニット63により加熱可能な構成とし、駆動機構64により脱臭フィルタ62を回転させて加熱対象部位を変更することで、脱臭フィルタ62の全体を加熱するように構成している。これにより、脱臭フィルタ62全体を複数の部位に区分し、加熱ユニット63により各部位の加熱を分けて行うことができる。従って、1回の加熱で脱臭フィルタ62から脱離する臭気成分の量を抑制し、フィルタ再生運転時に周囲の環境を良好に保持することができる。また、加熱ユニット63は、1回の加熱で脱臭フィルタ62の一部分のみを加熱できればよいので、脱臭フィルタ62の大きさと比較して加熱ユニット63を小型化することができる。
【0087】
なお、本実施の形態では、吸込口11の付近にガスセンサを配置してもよい。脱臭フィルタ62は、生活臭、特にアルデヒド類、アルコール類等の臭気成分に対して再生機能を有するが、灯油等の燃焼により発生するデカン、ドデカン等のような直鎖型の高分子ガス成分に対しては、再生機能が低い傾向がある。このため、ガスファンヒータ等を用いる低温地域においては、脱臭フィルタ62の前段に交換式の専用除去フィルタを別途設置する必要がある。従って、このような直鎖型の高分子ガス成分を検出するガスセンサを備える構成とすれば、ガスセンサにより前記高分子ガス成分を検出した場合には、送風ファン44を停止させることができる。これにより、専用フィルタ等を用いなくても、脱臭フィルタ62の再生機能が劣化するのを防止することができる。従って、空調機器1の小型軽量化を更に促進することができる。
【0088】
また、本実施の形態では、吸込口11の付近に塵埃を検出する埃センサを配置してもよい。この結果、塵埃の検出量に応じて送風ファン44の風量を低下させたり、送風ファン44を停止させることができるので、HEPAフィルタ12を省略した構成を採用した際の影響を更に低減することができる。従って、空調機器1の小型軽量化を更に促進することができる。
【0089】
以上のことから、本実施の形態によれば、低温でも臭気ガスを分解する機能を有し、温度ムラがあっても低い温度領域で再生することが可能な脱臭フィルタ62を実現することができ、このような脱臭フィルタ62を搭載した小型で軽量な空調機器1を提供することができる。
【0090】
なお、前記実施の形態1は、本発明に係る構成の一例に過ぎず、本発明は、この構成に限定されるものではない。即ち、本発明は、100℃以下の低温で再生する脱臭フィルタと、送風機と、加熱再生機構とを備えていればよいものである。具体的に述べると、本発明の空気清浄設備機器には、例えばレンジフードファン等の天井設置機器、IHクッキングヒータ等の調理機器、エアコン等の空調機器、扇風機等の送風機器が含まれる。また、本発明の脱臭フィルタは、脱臭フィルタ62に限定されるものではなく、上記各機器に搭載される各種のフィルタが含まれるものである。