(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-148321(P2017-148321A)
(43)【公開日】2017年8月31日
(54)【発明の名称】インソール
(51)【国際特許分類】
A43B 17/00 20060101AFI20170804BHJP
A43B 7/14 20060101ALI20170804BHJP
【FI】
A43B17/00 E
A43B7/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-34929(P2016-34929)
(22)【出願日】2016年2月25日
(71)【出願人】
【識別番号】515194476
【氏名又は名称】株式会社DC
(74)【代理人】
【識別番号】100152700
【弁理士】
【氏名又は名称】泉谷 透
(74)【代理人】
【識別番号】100152700
【弁理士】
【氏名又は名称】泉谷 透
(72)【発明者】
【氏名】森村 良和
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050EA07
4F050EA23
(57)【要約】
【課題】
既成の一般的な靴に適用するだけで、無意識のうちに使用者に1軸歩行を促して爪先の内転や浮き指を矯正することで、骨盤後傾や猫背に起因する身体疾患を予防・改善できるインソールを提供する。
【解決手段】
踵部の表面を残余の部分の表面に対して高く構成し、土踏まずの内側が接する部位をさらに内側に湾曲させた湾曲部と、足の第1指及び第2指のMP関節(中足趾節関節)に沿った第1切欠部と、第3指から第5指のMP関節に沿った第2切欠部とを有するとともに、該第2切欠部先端の表面には第4指及び第5指のMP関節に沿って線状の凸部を、踵の外側の縁部には踵の外転を拘束する外縁輪郭とを備えたことを特徴とする、インソール。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴内に装着されて足の裏を支えるインソールであって、該インソールは、土踏まずの内側が接する部位をさらに内側に湾曲させた湾曲部を有するとともに、足の第4指及び第5指のMP関節に沿った表面には線状の凸部を、踵の外側の縁部には踵の外転を拘束する外縁輪郭とを備えたことを特徴とする、インソール。
【請求項2】
靴内に装着されて足の裏を支えるインソールであって、該インソールは、土踏まずの内側が接する部位をさらに内側に湾曲させた湾曲部と、足の第1指及び第2指のMP関節(中足趾節関節)に沿った第1切欠部と、第3指から第5指のMP関節に沿った第2切欠部とを有するとともに、該第2切欠部先端の表面には第4指及び第5指のMP関節に沿って線状の凸部を、踵の外側の縁部には踵の外転を拘束する外縁輪郭とを備えたことを特徴とする、インソール。
【請求項3】
靴内に装着されて足の裏を支えるインソールであって、該インソールは、土踏まずの内側が接する部位をさらに内側に湾曲させた湾曲部と、足の第1指及び第2指から第1中足骨にかけて内側に湾曲させた第1切欠部と、第3指から第5指のMP関節に沿った第2切欠部とを有するとともに、該第2切欠部先端の表面には第4指及び第5指のMP関節に沿って線状の凸部を、踵の外側の縁部には踵の外転を拘束する外縁輪郭とを備えたことを特徴とする、インソール。
【請求項4】
前記インソールは、さらに、踵部の表面を残余の部分の表面に対して高く構成して成ることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のインソール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴用インソールに関する。より詳細には、本発明は足裏の体性反射の作用を利用することにより、身体の姿勢の歪みを矯正するように構成した靴用インソールに関する。
【背景技術】
【0002】
靴用インソールは、防臭性や快適性、さらには大き目の靴を足にフィットさせるための調節を主目的とするが、本発明が取り扱うインソールは、一般的に二軸歩行に慣れた日本人が、本来的には一軸歩行を前提とする靴を履いて歩行する際に不可避的に生じる足先の内転・踵の外転による身体の姿勢の歪みを矯正し、これに起因する各種の疾患を予防・改善することを目的とする。
【0003】
身体の不適正な姿勢が、腰痛、肩凝り、頭痛、内臓の不調等の症状の原因となることが知られている。いわゆる猫背(脊柱の歪み)や骨盤後傾により、神経が圧迫されて上記の症状が生じるだけでなく、本来の全身の骨格・筋肉の動きが不全となるため、さらに身体の姿勢が悪化し、運動機能の低下や転倒等の事故につながり易くなる。
【0004】
人間の歩行の形態には民族性や歴史文化による特徴があり、いわゆる「靴文化」の歴史を持つ欧米人は1軸歩行が主流であるのに対し、いわゆる「草履文化」の日本人は2軸歩行の傾向が高いことが知られている。1軸歩行は、主に膝を伸ばす大腿四頭筋と踵を上げる下腿三頭筋を用いた「蹴って身体を押し出す動作」であり、踵を身体の重心直下の軸線に沿って着地させるため、爪先が外転する外股傾向の歩き方となる。ファッションモデルなどに特徴的な、背筋を伸ばして胸を張り両足を一直線上に踵から着地させる歩き方は、この1軸歩行を極端化させたものといえる。これに対して2軸歩行は、主にハムストリング(大腿二頭筋)を用いた「接地した脚に身体を引き寄せる動作」であり、爪先が内転し踵が外転する内股傾向の歩き方である。2軸歩行では、爪先が内転して膝蓋骨も内向きになることで、骨盤は後傾し、背中は猫背気味となり、頭部は肩よりも前方に出る姿勢が典型的となる。
【0005】
日本では、草履、わらじ、下駄といった鼻緒のある履物や、帯で骨盤を締めるために歩行時に脚を大きく前後させにくい着物を着用してきた歴史文化的な経緯から、2軸歩行の傾向が生じたとも考えられる。しかし、欧米から導入され普及した靴は、本来1軸歩行を前提とした構造であるのに、日本人の身体は習慣的に2軸で歩こうとすることから、様々な弊害が生じている。たとえば、靴は草履等とは異なり爪先が絞られた形状であるのに、これで2軸歩行をして爪先が内転すると、足の小指には前方圧が掛かり、踵の外転により親指には側方圧が掛かるため、内反小趾や外反母趾の原因となる。また、靴の踵の外側縁が集中的に減りがちな傾向が見られるのも、踵が外転する傾向によって体重が外側に掛かることによるものと考えられる。また、草履文化では親指で鼻緒を保持していたことから親指に力が入る傾向があるため、日本人が靴を履いた場合、小指側が浮いてしまう「浮き指」となりやすい。かかる「浮き指」では、指先での踏ん張りが効かないだけでなく、足裏の接地面積が狭くなって身体が安定しないため、無意識のうちにバランスをとろうと膝が曲がり、腰が落ちて骨盤後傾となり、肩や頭が前に出て猫背傾向となり、前述の各種の身体疾患の原因となる。
【0006】
また、人間の足は、土踏まずの部分、具体的には親指の付け根と踵とを結ぶ拇指外転筋に刺戟を受けると、無意識に爪先が内転する体性反射を生じることが知られている。現代の靴の靴底やインソールには、足裏へのフィット性を追求した結果、土踏まずの内側を盛り上げた形状が多く見られるが、これも爪先の内転を助長する要因となっている。かかる傾向は、女性用のハイヒールの如く土踏まず部分が強く絞られた形状の靴に顕著である。
【0007】
ところで、靴を履いた際の身体の姿勢矯正を目的とするインソールについては多数の先行技術が提案されている。たとえば、特許文献1に開示された靴用インソールは、足裏を立方骨に配置した凸部を支点として支持し、該凸部から前後左右に向かってインソールの厚みを漸減させる構成とすることで、立方骨を中心とした運動の許容を確保し、身体の姿勢変化に対する復元力を高めようとするものである。また、特許文献2に開示された靴用インソールは、足裏を第1中足骨種子骨、第5中足骨、踵骨の3点に対応する位置に配置した凸部で支持することで、身体の重心の安定を図るとともに適度な運動を許容するよう構成している。
【特許文献1】特開2013−150797号公報
【特許文献2】特開2006−102335号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、これら先行技術を含む既知のインソールの多くは、足の骨や筋肉の本来的な構造に着目して、足裏を支持するポイントの配置によって主に身体の重心の適正化を図るものであり、前述したように2軸歩行に慣れた日本人の歩行形態と1軸歩行を前提とした靴の構造との間の根本的な設計思想の乖離という問題点に着目したものではなかった。靴を履いて歩く以上、とりわけ草履や下駄とは異なり一定の踵の高さのある靴では、背筋を伸ばして胸を張り、爪先を外転させて歩く1軸歩行が2軸歩行よりも合理的であるが、身体的な習慣に抗して意識的に1軸歩行を行うことは実際には困難である。そのため、既成の一般的な靴に適用するだけで、無意識のうちに使用者に1軸歩行を促して爪先の内転や浮き指を矯正することで、骨盤後傾や猫背に起因する身体疾患を予防・改善できるインソールを提供することが本発明が解決しようとする課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明の請求項1に記載したインソールは、土踏まずの内側が接する部位をさらに内側に湾曲させた湾曲部を設けるとともに、足の第4指及び第5指のMP関節に沿った表面には線状の凸部を、踵の外側の縁部には踵の外転を拘束する外縁輪郭とを備えるように構成している。
【0010】
前述の通り、人間の足は、拇指外転筋に刺戟を受けると、無意識に爪先が内転する体性反射を生じるため、これを防ぐためには、靴の内部は土踏まずの内側部に刺戟を与えない構造とすることが第一のポイントとなる。しかし、一般的な靴では、土踏まずの内側部を盛り上げて土踏まずのアーチ形状に沿うように形成している場合が多く、また、特に女性用の靴、とりわけパンプス等では、靴自体が土踏まず部分で細くなり、甲革で足の側面を締め付けるような形状となっているものが多い。かかる形状は、もともと土踏まずのアーチ形状が明瞭な多くの欧米人の足では大きな問題とならなくても、一般的に偏平足の傾向が強い日本人の足に対しては、必要以上に土踏まずの内側面に刺戟を与える形となり、通常のインソールを装着した場合もこの点は変わらない。
【0011】
本発明の請求項1に記載したインソールは、靴底面の土踏まず内側部の盛り上がりを避ける形で内側に抉った湾曲部を設けているため盛り上がりが平準化される。そのため、偏平足気味の日本人の足であっても土踏まずの内側部への刺戟が低減され、体性反射による爪先の内転・踵の外転を抑制することができる。
【0012】
また、該インソールの、足の第4指及び第5指のMP関節に沿った表面に設けた線状の凸部は該足指の腹側のMP関節部分に当接し、歩行の都度刺戟を与える。かかる部位への刺戟は体性反射を惹起して当該2指を無意識に屈曲させ、すなわち指先が接地するよう促す効果を奏する。これにより、浮き指が防止又は改善され、指の本来の機能をしっかりと使った歩行が行われるようになる。
【0013】
さらに、該インソールの、踵の外側の縁部に設けた外縁輪郭は、機械的に踵の外側を拘束してその外転を防止するだけでなく、該外縁輪郭が踵の外側部に当接して刺戟を与えることにより踵を締める、すなわち踵を内転させる体性反射を惹起する。これにより、前述の足の第4指及び第5指のMP関節部分に当接する線状の凸部の効果と相まって、爪先の内転・踵の外転が効果的に防止又は改善される。
【0014】
次に、本発明の請求項2に記載したインソールは、土踏まずの内側が接する部位をさらに内側に湾曲させた湾曲部と、足の第1指及び第2指のMP関節(中足趾節関節)に沿った第1切欠部と、第3指から第5指のMP関節に沿った第2切欠部とを有するとともに、該第2切欠部先端の表面には第4指及び第5指のMP関節に沿って線状の凸部を、踵の外側の縁部には踵の外転を拘束する外縁輪郭とを備えるように構成している。
【0015】
線状の凸部と外縁輪郭の作用効果は請求項1に記載のインソールと同様であるが、さらに第1・第2の切欠部を設けることにより、切欠部より前方の足指直下の部分はインソールが無い形となる。かかる構成により、まず、インソール先端の厚み分だけ僅かではあっても段差が生じるから、すべての足指の先端がやや下垂し、指先をしっかり接地させるよう促す効果を奏する。また、インソールの前端を切り欠いたことで、靴の先端部の形状による制限を受けないため、先端が絞られたものを含め、靴の形を選ばずインソールを適用することが可能となる。
【0016】
次に、本発明の請求項3に記載したインソールは、土踏まずの内側が接する部位をさらに内側に湾曲させた湾曲部と、足の第1指及び第2指から第1中足骨にかけて内側に湾曲させた第1切欠部と、第3指から第5指のMP関節に沿った第2切欠部とを有するとともに、該第2切欠部先端の表面には第4指及び第5指のMP関節に沿って線状の凸部を、踵の外側の縁部には踵の外転を拘束する外縁輪郭とを備えるように構成している。
【0017】
上述の第1指及び第2指から第1中足骨にかけての足裏は一般的に「拇指球」と呼ばれる部位である。人間の足裏は、主にこの拇指球と、第5指から第5中足骨にかけての「小指球」と呼ばれる部位、そして踵骨すなわち踵の部位の3カ所で体重を支える。踵が高く爪先が絞られた靴、特に、女性用のパンプスやハイヒールでは、必然的に体重が靴底の前側に偏り、前述のように小指が退化気味で「浮き指」の傾向がある日本人の場合は、拇指球に体重の大部分が掛かることとなる。そして、爪先が絞られた靴では、体重が前方に掛かることによって甲革が上方から第1指を圧迫する形となり、足の甲側が痛くなったりタコが出来易く、外反母趾の原因となったり、重症の場合は第1中足骨やその上部の種子骨周辺の変形により各種の疾患を生じることになる。
【0018】
請求項3に記載したインソールでは、インソール自体に拇指球を避けるよう内側に湾曲させた第1切欠部を設けているため、拇指球はインソールの厚みだけ落ち込んで靴底に接する形となる。その分、上下方向の空間には余裕が生まれ、足の痛みやタコ、骨の変形等が生じにくくなる。しかも、拇指球が十分に靴底に接して体重を支えるため、足指を曲げて接地した歩き方ができるようになり、浮き指や爪先の内転・踵の外転も抑制できる。
【0019】
最後に、本発明の請求項4に記載したインソールは、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載したインソールについて、さらに踵部の表面を残余の部分の表面に対して高くして、両表面に高低差を設けるよう構成してなる。
【0020】
インソールの踵部、すなわち踵骨を支える部分を一段高くすることで、歩行時には爪先側に体重が掛かり易くなり、足指をしっかりと使った歩き方を促すだけでなく、2軸歩行特有の骨盤後傾、ひいては猫背の防止に効果を奏する。かかる効果は、踵が特段には高くない靴に適用する場合においてより有効となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るインソールは、人間の足に備わる体性反射の作用を利用することで、一般的に2軸歩行が身体的習慣となっている日本人に無意識のうちに自然に1軸歩行を促し、本来的に1軸歩行を前提とする欧米由来の一般的な靴の構造に適した歩き方を習慣づけることができる。これにより、靴を履いて歩行する際の爪先の内転・踵の外転、ひいては骨盤後傾や猫背を矯正し、これらに起因する各種疾患を防止又は改善する効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態について図を用いて説明する。
図1は、一般的な男性用の靴への適用を想定した本発明の第1実施形態に係るインソール1の右足用を、斜め前方上方から見た斜視図であり、
図2は同平面図、
図3は底面図、
図4は右側面図、
図5は左側面図、
図6は爪先側から見た正面図、
図7は踵側から見た背面図である。また、
図8は、一般的な男性用の靴の靴底S1上にインソール1を適用した状態の平面図であり、
図9はインソール1上での足及び足骨の位置関係を示す模式図である。
【0023】
インソール1の材料は、ウレタンその他の従来のインソールと同様の素材を適用可能であり、弾力性と復元性、一定の通気性を有するものであれば特に限定されない。インソール1は、前方部分10の厚さに対して踵部分11の厚さをやや大きくしており、段差となる境界部分を傾斜部12に形成している。インソール1の大きさや各部分の厚さは適用する靴の大きさや形状、さらにインソールの素材により適宜変更可能であり、特に限定されないが、一般的な男性用の靴、例えば紳士用革靴への適用には、前方部分10の厚さを5乃至6mm程度、踵部分11の厚さを8mm程度とすることが好適である。また、傾斜部12は、踵骨と立方骨の接続線に対応する形で、足の前後方向の軸線に対して内側に30°程度傾けて設けることが好適である。
【0024】
インソール1は、
図7・
図8に示す如く、土踏まずの内側が接する部位をさらに内側に湾曲させた湾曲部13を設け、前端部には、足の第1指及び第2指のMP関節に沿った第1切欠部14と、第3指から第5指のMP関節に沿った第2切欠部15を設けている。その結果、両切欠部から5指がインソールの前方に突出して靴底S1に直に当接し、足裏全体に対しては前方部分10と踵部分11の2段の段差を生じる。
【0025】
また、第2切欠部先端15の縁部表面には、第4指及び第5指のMP関節に沿って線状の凸部16を、さらに、踵の外側の縁部にはやはり線状の凸部である外縁輪郭17とをそれぞれ設けている。線状の凸部16と外縁輪郭17の材料は、インソール1自体に一体成型により構成しても良いが、インソール1の素材よりもより硬質かつ一定の弾力性を有するシリコン等で形成し、インソール1に接着その他の方法で取り付けることが好適である。なお、凸部16及び外縁輪郭17の幅や高さは特に限定されないが、幅3mm程度、高さ2mm程度とすることが好適である。
【0026】
以上のような構成のインソール1を一般的な靴に適用すれば、湾曲部13によってインソールの厚みが無い状態となる土踏まずの内側は開放された状態となり、たとえ靴底S1の土踏まず内側部が盛り上がっていたり、甲革が土踏まずの側面を締め付ける形状であったりした場合でも、扁平足気味の日本人の足の拇指外転筋が強く刺戟されることがなく、体性反射による爪先の内転・踵の外転が抑制される。
【0027】
また、第1切欠部14、第2切欠部15により、足の5指の先端はインソールを介さずに直接靴底S1に当接するから、インソールの厚みにより押し上げらることなく接地感が得られる。そのため、指先は足指本来の地面を掴む形となり、自然にしっかりと足指を接地させた歩行が促される。また、インソールの先端が無いため、爪先が締まった靴にも幅広く適用することができる。なお、先端を切り欠いたことにより全長が靴底S1よりも短いインソール1が歩行中に不用意に靴内で移動してずれることを防ぐために、インソール1の裏面に滑り止め加工を施しても良い。
【0028】
さらに、線状の凸部16が第4指・第5指のMP関節を下方から刺戟することで惹起される体性反射により、当該2指が無意識に屈曲して指先の接地が強まるため、浮き指が防止されるとともに爪先の外転を促す。同時に、外縁輪郭17が踵の外側を拘束してその外転を防止するだけでなく、やはり体性反射によって踵の内転を促す。そのため、歩行時には、踏み出した脚の爪先がしっかりと上がり、踵が身体の重心の移動線上に近い位置に着地する。すなわち、主にハムストリングの力に依存する二軸歩行ではなく、主に大腿四頭筋と下腿三頭筋を活用した、靴の本来的な構造に適した一軸歩行が無意識のうちに促されるようになる。これにより、骨盤が前傾して背中が伸び、猫背が矯正されるので、これに起因する各種の身体疾患の予防・改善が図られるのである。
【0029】
(第2実施形態)
図10は、女性用の踵が高く爪先が絞られた形状の靴、たとえばパンプスやハイヒールへの適用を想定した本発明の第2実施形態に係るインソール2の右足用を示す平面図であり、
図11は、パンプスやハイヒールの靴底S2上にインソール2を適用した状態の平面図であり、
図12はインソール2上での足及び足骨の位置関係を示す模式図である。
【0030】
図10に示す如く、インソール2は、足の第1指及び第2指から第1中足骨にかけて内側に湾曲させた第1切欠部を設けている。
図11、12に示す通り、第1切欠部は、拇指球を避けるよう内側に湾曲させているため、拇指球は靴底S2に直に当接する形となり、上下方向の空間には余裕が生まれる。なお、第1切欠部の形状の差異を除く残余の構成は、基本的に第1実施形態と同様である。
【0031】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明したが、本発明は、必ずしも上述した構成にのみ限定されるものではなく、本発明の目的を達成し、効果を有する範囲内において、適宜変更実施することが可能なものであり、本発明の技術的思想の範囲内に属する限り、それらは本発明の技術的範囲に属する。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明に係るインソールは、従来のインソールに代えて既存の靴に適用することができる。靴自体の構造を特段変更することなく、適用して歩行するだけで、自然に靴本来の構造に適した一軸歩行が促され、特に、日本人に多い偏平足気味の足で靴を履いた場合に生じ易い不適合の改善に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図6】第1実施形態に係るインソールを爪先側から見た正面図
【
図7】第1実施形態に係るインソールを踵側から見た背面図
【
図8】靴底上に第1実施形態に係るインソールを適用した状態の平面図
【
図9】第1実施形態に係るインソール上での足及び足骨の位置関係を示す模式図
【
図11】靴底上に第2実施形態に係るインソールを適用した状態の平面図
【
図12】第2実施形態に係るインソール上での足及び足骨の位置関係を示す模式図
【符号の説明】
【0034】
B 拇指球
S1、S2 靴底
1、2 インソール
10、20 前方部分
11、21 踵部分
12、22 傾斜部
13、23 湾曲部
14、24 第1切欠部
15、25 第2切欠部
16、26 線状の凸部
17、27 外縁輪郭