特開2017-14861(P2017-14861A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2017-14861残存型枠施工用治具及びその治具を用いた残存型枠施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-14861(P2017-14861A)
(43)【公開日】2017年1月19日
(54)【発明の名称】残存型枠施工用治具及びその治具を用いた残存型枠施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 29/02 20060101AFI20161222BHJP
【FI】
   E02D29/02 309
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-135253(P2015-135253)
(22)【出願日】2015年7月6日
(71)【出願人】
【識別番号】312002358
【氏名又は名称】海洋土木株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085464
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 繁雄
(72)【発明者】
【氏名】吉川 智景
(72)【発明者】
【氏名】三上 和弘
【テーマコード(参考)】
2D048
【Fターム(参考)】
2D048AA92
(57)【要約】
【課題】残存型枠の施工効率を向上させるとともに、背面側に設置された鋼矢板との間の空間が狭小であっても残存型枠の設置を容易に行なうことができるようにする。
【解決手段】残存型枠施工用治具は、コンクリートを打設する現場に設置された鋼矢板の前方に設置されるフレームと、フレームを構成する支柱の複数の位置に固定され、フレームの鋼矢板とは反対側の面に配置された矩形の型枠パネルの裏面に締結されるボルトを鋼矢板側から貫通させるボルト固定用の貫通穴を有するパネル固定金具と、を備えている。この治具は、複数の型枠パネルを互いに連続させた状態で固定する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートを打設する現場に設置された鋼矢板の前方に設置される金属製かつ梯子状又は格子状のフレームと、
前記フレームを構成する支柱の複数の位置に固定され、前記フレームの前記鋼矢板とは反対側の面に配置される矩形の型枠パネルの背面に締結されるボルトを前記鋼矢板側から貫通させるボルト固定用の貫通穴を有するパネル固定金具と、を備え、
複数の型枠パネルを互いに連続させた状態で固定する残存型枠施工用治具。
【請求項2】
前記型枠パネルの裏面四隅に前記ボルトを締結するための雌ネジが形成されており、
前記パネル固定金具は、4枚の型枠パネルの角部を連結させつつ固定するものである請求項1に記載の残存型枠施工用治具。
【請求項3】
コンクリートを打設する現場に設置された鋼矢板の前方に請求項1又は2に記載の残存型枠施工用治具を設置し、支持鉄筋の溶接により該残存型枠施工用治具を前記鋼矢板に固定する工程と、
鋼矢板に固定された前記残存型枠施工用治具の前記鋼矢板とは反対側の面に前記型枠パネルを配置し、前記型枠パネルを固定するためのボルトを、前記鋼矢板側から前記パネル固定金具に設けられた貫通穴に通し、該ボルトを前記型枠パネルに締結することによって、前記型枠パネルを前記残存型枠施工用治具に固定する工程と、を含む残存型枠施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの打設現場に設置され、コンクリートの打設後もその現場の表面に残存する残存型枠を施工するための治具とその治具を用いた残存型枠の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
砂防ダムや治山ダムの施工や河川の岸壁の施工を行なう際、コンクリートを打設する前に型枠を設置する。かかる型枠として、コンクリートの打設後もその表面に残存して施工物の化粧面となる残存型枠が一般に用いられる。
【0003】
残存型枠の施工は、通常、一定の大きさをもつ矩形の型枠パネルを下方から配列することにより行なう。各型枠パネルはセパレータと呼ばれる支持鉄筋によって設置場所に固定され、また、隣接する型枠パネル間は所定の金具によって連結される。型枠パネルを連結する金具としては、例えば、4枚の型枠パネルの角部を一つの金具で固定し、その金具にセパレータを溶接するようになっているものが挙げられる(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−86564号公報
【特許文献2】特開2009−250021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
型枠パネルを配列していく残存型枠の施工方法では、型枠パネルの位置合わせ、型枠パネルの連結、型枠パネルや連結金具へのセパレータの溶接、所定位置へのセパレータの固定という作業を行なう必要があった。そのため、型枠パネルの施工に長期間を要していた。
【0006】
残存型枠の施工効率を向上させる方法として、複数の窓枠が設けられたコンクリート製のフレームを先に設置し、そのフレームの窓枠に裏面側から型枠パネルを嵌め込んで固定することにより、残存型枠を施工することが提案されている(特許文献2参照。)。
【0007】
河川の岸壁等の施工では、地山の崩落を防止する鋼矢板を設置し、その鋼矢板の前方に残存型枠を施工することが一般的であるが、残存型枠とその背面の鋼矢板との間に人が入り込むスペースがない場合があり、そのような場合、フレームの裏面側から型枠パネルを嵌め込んでいく方法による施工は不可能である。また、コンクリート製のフレームは重く、重機を用いて設置する必要がある。
【0008】
そこで、本発明は、残存型枠の施工効率を向上させるとともに、背面側に設置された鋼矢板との間の空間が狭小であっても残存型枠の設置を容易に行なうことができるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る残存型枠施工用治具は、コンクリートを打設する現場に設置された鋼矢板の前方に設置されるフレームと、フレームを構成する支柱の複数の位置に固定され、フレームの鋼矢板とは反対側の面に配置される矩形の型枠パネルの裏面に締結されるボルトを鋼矢板側から貫通させるボルト固定用の貫通穴を有するパネル固定金具と、を備え、複数の型枠パネルを互いに連続させた状態で固定するものである。
【0010】
本発明に係る残存型枠施工方法は、コンクリートを打設する現場に設置された鋼矢板の前方に上記の残存型枠施工用治具を設置し、支持鉄筋の溶接により該残存型枠施工用治具を鋼矢板に固定する工程と、鋼矢板に固定された残存型枠施工用治具の鋼矢板とは反対側の面に型枠パネルを配置し、型枠パネルを固定するためのボルトを、鋼矢板側からパネル固定金具に設けられた貫通穴に通し、該ボルトを型枠パネルに締結することによって、型枠パネルを残存型枠施工用治具に固定する工程と、を含むものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る残存型枠施工用治具は、鋼矢板の前方に設置される金属製かつ梯子状又は格子状のフレームと、フレームの複数の位置に設けられ、フレームの鋼矢板とは反対側の面に配置された矩形の型枠パネルの裏面に締結されるボルトを鋼矢板側から貫通させるボルト固定用の貫通穴を有するパネル固定金具と、を備え、複数の型枠パネルを互いに連続させた状態で固定するようになっているので、フレームと鋼矢板の間に作業者が入り込むことなく、フレームに複数の型枠パネルを設置することができる。残存型枠施工位置にフレームを先に設置してから、ボルトの締結によってそのフレームに複数の型枠パネルを固定していくので、型枠パネルの設置が容易になり、残存型枠の施工効率を向上させることができる。
【0012】
また、フレームが金属製のため、任意の位置に支持鉄筋の一端を溶接可能であり、その支持鉄筋によって鋼矢板に固定することができる。したがって、残存型枠の施工場所へのフレームの設置が容易になる。また、金属フレームはコンクリート製のフレームに比べて軽量であるため、人手によって運搬可能なフレームを構成でき、その場合には、重機を用いることなく残存型枠の施工を行なうことができる。
【0013】
本発明に係る残存型枠施工方法は、上記の残存型枠施工用治具を鋼矢板に固定した後、その残存型枠施工用治具の鋼矢板とは反対側の面に型枠パネルを配置し、型枠パネルを固定するためのボルトを、鋼矢板側からパネル固定金具に設けられた貫通穴に通し、該ボルトを型枠パネルに締結することによって、型枠パネルを残存型枠施工用治具に固定するものであるので、フレームと鋼矢板の間に作業者が入り込むことなく、効率よく型枠パネルの設置を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】残存型枠施工用治具の一実施例を示す斜視図である。
図2】同実施例におけるパネル固定金具を裏面側から見た斜視図である。
図3】同実施例の残存型枠施工用治具に1つの型枠パネルを取り付けたときの背面側から見た斜視図である。
図4】残存型枠の施工手順を説明するための図であって、残存型枠施工用治具を設置する前の状態を示す斜視図である。
図5】残存型枠の施工手順を説明するための図であって、鋼矢板の前方に残存型枠施工用治具を設置した状態を示す斜視図である。
図6】残存型枠の施工手順を説明するための図であって、鋼矢板の前方に設置された残存型枠施工用治具に型枠パネルを設置していく状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の残存型枠施工用治具では、型枠パネルとして、裏面の四隅にボルトを締結するための雌ネジが形成されているものを用い、パネル固定金具は、4枚の型枠パネルの角部を連結させつつ固定するものであることが好ましい。そうすれば、互いに隣接する型枠パネル間の連結が容易になされる。
【0016】
以下、本発明に係る残存型枠施工用治具(以下、治具)及びその治具を用いた残存型枠の施工方法の一実施例について、図面を用いて説明する。
【0017】
図1に示されているように、この実施例の治具2は、梯子状のフレーム3と、そのフレーム3を構成する支柱4のうち、水平に設けられた支柱4の複数の位置に等間隔に設けられたパネル固定金具6を備えている。フレーム3は鋼鉄製であり、パネル固定金具6は溶接によりフレーム3の一方側の面に固定されている。治具2においてパネル固定金具6が設けられている面を前面、その反対側の面を背面とする。
【0018】
図2に示されているように、パネル固定金具6には4つの貫通穴8が設けられている。貫通穴8は、図3に示されているように、型枠パネル10を治具2の前面側に固定するためのボルト12を治具2の背面側から貫通させるものである。この治具2に固定される型枠パネル10は矩形であり、その裏面の四隅にボルト12を締結するための雌ネジ(図示は省略)が形成されている。型枠パネル10は表面が鋼矢板14とは反対側を向くようにして治具2に固定される。型枠パネル10は、例えば横幅寸法が500mm、縦幅寸法が500mm、厚み寸法が40mmであり、重量が18kg程度のものである。
【0019】
1枚の型枠パネル10は4つのパネル固定金具6の貫通穴8を貫通するボルト12によってフレーム3に固定されるようになっている。1つのパネル固定金具6には4枚の型枠パネル10の角部が互いに隙間を生ずることなく連続した状態で固定されるようになっており、これによって隣接する型枠パネル10の連結がなされる。この構造により、作業者は、治具2の背面側に回り込むことなく、型枠パネル10を治具2の前面側で押えつつ裏面側に手を伸ばしてボルト12により固定することができる。
【0020】
フレーム3の大きさは、例えば高さ及び横幅の寸法がともに2m程度である。フレーム3の各支柱4としては、断面形状がL字型、U字型のもの又は中空の角柱を用いることができる。これにより、治具2全体の重量が43kg程度となっている。これにより、作業者が重機を用いることなく治具2の運搬や現場への設置を行なうことができる。
【0021】
各治具2のフレーム3の側面に、隣接する2つの治具2を連結するための緊張ボルトを貫通させる貫通穴20が設けられている。各治具2を固定する前に、隣接する治具2の間を緊張ボルトによって緊張することで、各治具2が同一直線上に配置されやすくなり、残存型枠を真っ直ぐに施工しやすくなる。
【0022】
次に、上記実施例の治具2を用いた残存型枠の施工方法について図4図6を用いて説明する。
【0023】
図4に示されているように、治具2は、地山の崩落を防止するために設置された鋼矢板14の前方に配置される。まず、鋼矢板14の前方の基準高さの位置に取付アングル16を溶接により取り付ける。基準高さとは、取付アングル16によって治具2を所定の高さに保持するための高さである。取付アングル16は、フレーム3を所定の高さに保持させることによって治具2を仮固定しておくためのものである。
【0024】
次に、治具2の前面が鋼矢板14とは反対側を向くようにしてフレーム3の支柱を取付アングル16に引っ掛け、治具2が鉛直方向に配置されるように調整してから、アングル16の先端部をフレーム3の支柱に溶接し、仮固定する。複数の治具2を並べて設置する場合には、基準となる位置に第1の治具2を設置した後、その治具2を基準に次の治具2の位置合わせを行なってから取付アングル16の溶接による仮固定を行なう。位置合わせ方法としては、先に仮固定した治具2に設けられているパネル固定金具6のうち、次に仮固定を行なう治具2側の端部のパネル固定金具6に型枠パネル10の一端側を取り付け、その型枠パネル10の他端側に次の治具2のパネル固定金具6を取り付けることによって行なう方法が挙げられる。隣接する治具2の位置合わせを型枠パネル10を利用して行なうことで、治具2の寸法誤差や治具2の位置ずれによる型枠パネル10の取付時の不具合を防止することができる。
【0025】
上記方法によって必要な数の治具2を仮固定した後、図5に示されているように、支持鉄筋18の一端をフレーム3の支柱に溶接し、他端を鋼矢板14に溶接することで本固定を行なう。支持鉄筋18の他端の固定は、鋼矢板5の凹凸を利用し、鋼矢板5の凸部の側面に支持鉄筋18の他端を溶接することで行なうことができる。フレーム3の各支柱4は鋼鉄製のため、支持鉄筋18の一端を支柱4の任意の位置に溶接することができ、治具2の鋼矢板5への固定が容易である。
【0026】
すべての治具2を鋼矢板14に固定した後、図6に示されているように、各治具2に型枠パネル10を下方から取り付けていく。型枠パネル10を取り付ける際、作業者は、治具2の背面側に回り込むことなく、型枠パネル10を治具2の前面側で押えつつ背面側に手を伸ばしてボルト12を締結することができる。したがって、鋼矢板14と治具2との間に人が入り込むようなスペースが存在しない場合でも、残存型枠の施工を容易に行なうことができる。
【0027】
以上において説明した治具2のフレーム3は水平方向に配置される複数の支柱を梯子状に有するものであるが、本発明はこれに限定されるものでなく、鉛直方向に配置される複数の支柱を梯子状に有するものであってもよいし、互いに直交する複数の支柱を格子状に有するものであってもよい。
【符号の説明】
【0028】
2 残存型枠施工用治具
3 フレーム
4 支柱
6 パネル固定金具
8 貫通穴
10 型枠パネル
12 ボルト
14 鋼矢板
16 取付アングル
18 支持鉄筋
図1
図2
図3
図4
図5
図6