特開2017-148748(P2017-148748A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2017-148748大気浄化システムおよび大気浄化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-148748(P2017-148748A)
(43)【公開日】2017年8月31日
(54)【発明の名称】大気浄化システムおよび大気浄化方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/56 20060101AFI20170804BHJP
   B01D 53/82 20060101ALI20170804BHJP
【FI】
   B01D53/56ZAB
   B01D53/82
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-34481(P2016-34481)
(22)【出願日】2016年2月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000195971
【氏名又は名称】西松建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591043581
【氏名又は名称】東京都
(74)【代理人】
【識別番号】110000420
【氏名又は名称】特許業務法人エム・アイ・ピー
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 恵一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 忠彦
【テーマコード(参考)】
4D002
【Fターム(参考)】
4D002AA12
4D002AC10
4D002BA02
4D002BA04
4D002BA06
4D002CA07
4D002DA02
4D002DA03
4D002DA13
4D002DA41
4D002DA51
4D002DA70
4D002GA02
4D002GA03
4D002GB01
4D002GB02
4D002GB06
(57)【要約】
【課題】 大気中の窒素酸化物濃度が変化しても、その窒素酸化物の除去性能を維持することができるシステムや方法を提供する。
【解決手段】 このシステムは、大気中の窒素酸化物を除去し、該大気を浄化する大気浄化システムであり、大気中の窒素酸化物の濃度を検出する検出装置10と、風路内に大気を流通させる送風装置13と、風路11内に設置され、窒素酸化物を除去するための脱硝材が充填された脱硝装置12と、検出装置10により検出された濃度に応じて、送風装置13により風路11内を流通させる大気の風量を制御する制御装置14とを含む。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気中の窒素酸化物を除去し、該大気を浄化する大気浄化システムであって、
前記大気中の窒素酸化物の濃度を検出する検出装置と、
風路内に前記大気を流通させる送風装置と、
前記風路内に設置され、前記窒素酸化物を除去するための脱硝材が充填された脱硝装置と、
前記検出装置により検出された前記窒素酸化物の濃度に応じて、前記送風装置により前記風路内を流通させる前記大気の風量を制御する制御装置とを含む、大気浄化システム。
【請求項2】
前記風路内であって、前記脱硝装置の前段に設置され、前記窒素酸化物を酸化するためのオゾンを発生させる酸化装置を含み、
前記制御装置は、前記送風装置が前記風路内に流通させる前記大気の風量と前記酸化装置が発生させる前記オゾンの量とを用いて該オゾンの濃度を計算し、前記検出装置により検出された前記窒素酸化物の濃度と計算した前記オゾンの濃度とに応じて、前記風量を制御する、請求項1に記載の大気浄化システム。
【請求項3】
前記検出装置は、前記大気中の窒素酸化物に含まれる一酸化窒素の濃度も検出可能であり、
前記制御装置は、前記検出装置により検出された前記窒素酸化物の濃度と前記一酸化窒素の濃度とを用いて前記脱硝材の該窒素酸化物の除去率を計算し、計算した前記除去率に基づき、前記風量を決定する、請求項1に記載の大気浄化システム。
【請求項4】
前記検出装置は、前記大気中の窒素酸化物に含まれる一酸化窒素の濃度も検出可能であり、
前記制御装置は、前記検出装置により検出された前記窒素酸化物の濃度と前記一酸化窒素の濃度と前記オゾンの濃度とを用いて前記脱硝材の該窒素酸化物の除去率と該一酸化窒素の除去量とを計算し、計算した前記除去率と前記除去量とに基づき、前記風量を決定する、請求項2に記載の大気浄化システム。
【請求項5】
前記酸化装置は、単位時間当たりに一定量の前記オゾンを発生させる、請求項2または3に記載の大気浄化システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記風量を調整するためのダンパを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の大気浄化システム。
【請求項7】
前記送風装置は、前記風量を変更することを可能にする可変手段を含み、
前記制御装置は、前記可変手段に対して前記風量を変更するように指示する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の大気浄化システム。
【請求項8】
大気中の窒素酸化物を除去し、該大気を浄化する大気浄化方法であって、
前記大気中の窒素酸化物の濃度を検出する工程と、
前記窒素酸化物を除去するための脱硝材が充填された脱硝装置を設置した風路内に、送風装置により前記大気を流通させる工程と、
検出された前記窒素酸化物の濃度に応じて、前記送風装置により前記風路内を流通させる前記大気の風量を制御する工程とを含む、大気浄化方法。
【請求項9】
前記風路内であって、前記脱硝装置の前段に設置された酸化装置により、前記窒素酸化物を酸化するためのオゾンを発生させる工程を含み、
前記制御する工程は、前記送風装置が前記風路内に流通させる前記大気の風量と前記酸化装置が発生させる前記オゾンの量とから該オゾンの濃度を計算する工程と、検出された前記窒素酸化物の濃度と計算された前記オゾンの濃度とに応じて、前記風量を制御する工程とを含む、請求項8に記載の大気浄化方法。
【請求項10】
前記検出する工程は、前記大気中の窒素酸化物に含まれる一酸化窒素の濃度を検出する工程を含み、
前記制御する工程は、検出された前記窒素酸化物の濃度と前記一酸化窒素の濃度とを用いて前記脱硝材の該窒素酸化物の除去率を計算する工程と、計算された前記除去率に基づき、前記風量を決定する工程とを含む、請求項8に記載の大気浄化方法。
【請求項11】
前記検出する工程は、前記大気中の窒素酸化物に含まれる一酸化窒素の濃度を検出する工程を含み、
前記制御する工程は、検出された前記窒素酸化物の濃度と前記一酸化窒素の濃度と前記オゾンの濃度とを用いて前記脱硝材の該窒素酸化物の除去率と該一酸化窒素の除去量とを計算する工程と、計算された前記除去率と前記除去量とに基づき、前記風量を決定する工程とを含む、請求項9に記載の大気浄化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気中の窒素酸化物(NOx)を除去し、該大気を浄化するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両が通行するトンネル内や屋内駐車場等では、車両から排出される排気ガスが大気中に含まれ、その排気ガス中には、大気を汚染する煤等の浮遊物質や、一酸化窒素(NO)や二酸化窒素(NO2)を主成分とするNOxが含まれている。
【0003】
このNOxを除去するための技術として、前段にNOをNO2に酸化するために必要なオゾンを発生するオゾナイザを設置し、その後段にNO2をNO2吸収フィルタで吸収する技術や、NOxを活性炭等の脱硝材を用いて除去する技術が知られている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−127400号公報
【特許文献2】特開2013−180257号公報
【特許文献3】特開2012−211471号公報
【特許文献4】特開2012−40496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トンネル内や屋内駐車場等における大気中のNOx濃度は、交通量によって大きく変化する。脱硝材は、除去する対象であるNOxの濃度に依存する。このため、そのNOx濃度が変化すれば、脱硝材のNOx除去性能も変化する。
【0006】
しかしながら、従来の技術では、NOx濃度が変化しても、その除去性能を一定に維持するような制御は行われておらず、その結果、設計で想定したNOx濃度が低下すると、その除去性能が低下するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の問題に鑑み、大気中の窒素酸化物を除去し、該大気を浄化する大気浄化システムであって、大気中の窒素酸化物の濃度を検出する検出装置と、風路内に大気を流通させる送風装置と、風路内に設置され、窒素酸化物を除去するための脱硝材が充填された脱硝装置とを含み、検出装置により検出された窒素酸化物の濃度に応じて、送風装置により風路内を流通させる大気の風量を制御する制御装置とを含む、大気浄化システムが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、大気中の窒素酸化物の濃度が変化しても、その窒素酸化物の除去性能を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】大気浄化システムの第1の構成例を示した図。
図2】NOx除去率と風量との関係を表すグラフを示した図。
図3】大気浄化システムにより実行される第1の処理の流れを示したフローチャート。
図4】大気浄化システムの第2の構成例を示した図。
図5】NO除去量と風量との関係を表すグラフを示した図。
図6】大気浄化システムにより実行される第2の処理の流れを示したフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、大気浄化システムの第1の構成例を示した図である。大気浄化システムは、大気中のNOxを除去し、大気を浄化する装置である。NOxは、車両等が燃料を燃焼して排出する排気ガス等に含まれるNO、NO2、亜酸化窒素(N2O)、三酸化二窒素(N2O3)、四酸化二窒素(N2O4)、五酸化二窒素(N2O5)等であり、その主成分は、NO、NO2である。NOxは、光化学スモッグや酸性雨等を引き起こす大気汚染の原因となる物質であり、大気汚染防止法により環境基準が定められている。この大気浄化装置は、大気中のNOx濃度を、この環境基準で定められる基準値以下の濃度に下げるべく、NOxを除去する。
【0011】
大気浄化システムは、大気中のNOxの濃度を検出する検出装置10と、大気が流通する風路11内に設置され、NOxを除去するための脱硝材が充填された脱硝装置12と、風路11内に大気を流通させる送風装置13と、検出装置10により検出されたNOx濃度に応じて、送風装置13により風路11内を流通させる大気の風量を制御する制御装置14とを含んで構成される。
【0012】
検出装置10は、浄化する対象の大気が存在するトンネル内や屋内駐車場等に設置される。検出装置10としては、化学発光法を利用したNOx測定装置を用いることができる。化学発光法は、NOとオゾン(O3)との反応によって生じる化学発光強度がNO濃度と比例関係にあることを利用し、NO濃度を測定する方法である。
【0013】
この方法を利用したNOx測定装置では、NOxをコンバータに通さずにNO濃度を測定し、また、コンバータを通してNOに変換してNOx濃度も測定し、このNOx濃度からNO濃度を差し引くことで、NO2濃度も測定することができるようになっている。
【0014】
なお、NOxの測定は、上記の化学発光法に限られるものではなく、ザルツマン試薬を用いる吸光光度法等の他の方法を使用することもできる。
【0015】
風路11は、トンネル内や屋内駐車場等と連続して構築され、トンネル内や屋内駐車場等の大気を外部へ排出することを可能にする。風路11は、例えば小径のトンネルやダクト等とすることができる。
【0016】
トンネル内や屋内駐車場等の大気は、ファンやブロワー等の送風装置13により風路内へ供給され、外部へ排出される。送風装置13は、風路11内の入口側に設置され、脱硝装置12へ向けて送風してもよいし、風路11内の出口側に設置され、脱硝装置12から排出される大気を吸引してもよい。
【0017】
脱硝装置12は、NOxを除去するための脱硝材が充填されており、NOxを含む大気がこの脱硝材に接触して反応することによりNOxをその大気中から除去する。脱硝材は、適切にNOxを除去することができれば、活性炭等のいかなる材料で作製されていてもよい。脱硝材としては、NO2を還元反応により窒素(N2)に変化させる活性炭に中性塩類を添加したものを用いることができる。中性塩類としては、例えば、酸と塩基の中和反応により生成される亜硝酸カリウム(KNO2)、亜硝酸ナトリウム(NaNO2)、亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)等を挙げることができる。
【0018】
例えば、中性塩類としてNaSO3を用いた場合、脱硝材の表面では、下記化学式1の還元反応が生じる。
【0019】
【化1】
【0020】
脱硝装置12は、還元反応によりN2に変化させることに限られるものでなく、脱硝材として吸着材を用い、吸着して除去してもよいし、吸収液を用い、吸収液に吸収して除去してもよい。ただし、吸着材や吸収液を用いる場合は、適当な時期において再生液による吸着材や吸収液の再生が必要となる。
【0021】
脱硝装置12の周囲には、風路11内を流通するすべての大気がこの脱硝装置12を通過するように、風路11を遮断する隔壁を設けることができる。
【0022】
制御装置14は、検出装置10と送風装置13と有線または無線により接続され、検出装置10により検出されたNOx濃度を取得し、そのNOx濃度に基づき、送風装置13により風路11内を流通させる適切な大気の風量を決定し、その風量に制御する。なお、この送風装置13の周囲にも、送風装置13が脱硝装置12から排出される大気を適切に吸引し、外部へと排出するために、脱硝装置12と同様の隔壁を設けることができる。
【0023】
上記の還元反応で充分にN2に変化させるためには、充分な反応速度あるいは反応時間が必要である。これらは、NOx濃度に依存する。このため、制御装置14は、NOx濃度が低下した場合は、充分な反応時間を確保すべく、風路11内の風量を下げるように制御することができる。この制御により、脱硝装置12のNOx除去性能を一定に維持することができる。なお、一定といっても、必ずしも一定の値でなくてもよく、所定の範囲内にあれば一定に維持できていると判定することができる。
【0024】
制御装置14は、CPU、メモリ、通信I/Fを備えるコントローラを含むことができ、通信I/Fにより検出装置10からNOx濃度、必要に応じてNO濃度を取得し、これらの情報に基づき、適切な風量を決定することができる。
【0025】
送風装置13が、羽根の回転数が一定で、一定の風量で送風または吸引する装置である場合、制御装置14は、風路11の入口あるいは出口に、風路11内の風量を調整するためのダンパを備えることができる。制御装置14は、決定した風量になるようにダンパの開度を変更することで、適切な風量に制御することができる。なお、ダンパは、複数の板状物から構成され、各板状物の面を風路11の長手方向に平行に向けるように回転することで開き、その長手方向に対して垂直に向けるように回転することで閉じるものを採用することができる。また、ダンパは、風路11の入口、出口に限定されるものではなく、風路11の長手方向の途中に設けられていてもよい。
【0026】
送風装置13は、羽根の回転数を変えて風量を変えることが可能な可変手段としてのインバータを備えることができ、送風装置13がこのインバータを備える場合、制御装置14は、上記で決定した風量になるようにインバータに対して指示することができる。この場合、制御装置14は、その風量に対応する回転数を求め、その回転数に変更するようにインバータに対して指示することができる。なお、インバータを備える送風装置13は、上記のダンパが不要になることから、制御装置14の構成を簡素化することができる。
【0027】
図2を参照して、脱硝装置12のNOx除去率と風量との関係について説明する。図2の縦軸は、NOxの除去率(%)を表し、横軸は、風路11内を流通させる風量(m3/s)を表す。除去率R(%)は、所定の風量の大気中に含まれるNOx量をNOxtotalとし、脱硝装置12により除去されたNOx量をNOxremとし、下記数式1により算出することができる。
【0028】
【数1】
【0029】
NOxtotalは、NOxがNOとNO2が大部分を占めることから、これらのみで構成されるものとして近似し、NO量とNO2量とを加算して求めることができる。NOxremは、脱硝材による反応の反応係数をnとし、NO2量をNO2とした場合、下記数式2により算出することができる。ここでは、NO2量を用いて計算しているが、NO2濃度を用いて計算してもよい。
【0030】
【数2】
【0031】
図2は、大気中のNOx濃度が、0.3ppm、0.5ppm、0.7ppmの場合のNOx除去率と風量との関係を曲線で表している。ちなみに、この図は、NOx中のNO濃度が90%、NO2濃度が10%とし、後述する単位時間当たりに一定量のオゾンを添加した場合の図である。この例では、単位時間当たりに一定量のオゾンを添加しているが、添加がない場合でも同様の結果を得ることができ、いずれの濃度においても、風量を下げていくことで、NOx除去率を上げることができる。また、風量を上げることで、NOx除去率を低下させることもできる。ここでは、NO:NO2を9:1の濃度比率としているが、他の濃度比率でも同様に、風量を下げれば、NOx除去率を上げることができ、風量を上げれば、NOx除去率を低下させることができる。
【0032】
したがって、制御装置14が、各NOx濃度に応じたNOx除去率と風量との関係を表す情報を保持することで、その情報に基づき、所望のNOx除去率を実現することができる風量を決定し、その風量に制御することができる。また、各NOx濃度に加えて、NOx中のNO濃度やNO2濃度にも応じたNOx除去率と風量との関係を表す情報を保持することで、より細かく制御することができる。これにより、脱硝装置12のNOx除去性能を一定に維持することができる。
【0033】
図1に示す大気浄化システムが実行する処理の流れについて、図3を参照して説明する。ステップ100から開始し、ステップ110では、検出装置10が浄化対象の大気中のNOx濃度を検出する。NOx濃度は、開始時に測定したNOx濃度であってもよいし、開始から一定時間にわたって測定したNOx濃度の平均値であってもよい。
【0034】
ステップ120では、脱硝装置12を設置した風路11内に、送風装置13により大気の流通を開始させる。風量は、予め設定された値(デフォルト)の風量とすることができる。ステップ130では、制御装置14が、検出されたNOx濃度に応じて、送風装置13により風路11内を流通させる風量を調整する。ステップ110とステップ120の処理は、どちらが先であってもよい。
【0035】
制御装置14は、上記のNOx濃度に応じたNOx除去率と風量との関係を表す情報を保持し、その中から、検出されたNOx濃度に対応するNOx除去率と風量との関係を表す情報を取得する。そして、制御装置14は、取得した情報を用い、所望のNOx除去率に対応する風量を求め、ダンパの開度を変更する等してその風量に調整する。
【0036】
ステップ140では、検出装置10が大気中のNOx濃度を検出し、ステップ150で、制御装置14が、検出装置10により検出されたNOx濃度が一定以上変化したかを判断し、変化しない場合、ステップ140に戻り、変化するまでこの判断を繰り返す。一方、変化した場合は、ステップ160へ進み、ステップ130と同様の方法で風量を調整する。このような制御により、脱硝装置12のNOx除去性能を、例えば最大NOx除去性能で一定に維持することができる。
【0037】
これまで、脱硝装置12を用いてNOxを除去し、大気を浄化するシステムについて説明してきたが、NOxの除去性能を向上させるために、種々の装置を追加することができる。図4は、大気浄化システムの第2の構成例を示した図である。図4に示す構成では、風路11内の、脱硝装置12の前段に、NOxのうちのNOを酸化するための上述したオゾンを発生させる酸化装置15が設けられている。その他の構成は、図1に示した構成と同様であるため、その説明は省略する。
【0038】
酸化装置15は、大気中のNOxのうちNOの濃度が高い場合に設置することができる。酸化装置15は、例えば1組の電極とその間に設けられるガラス等の誘電体とを備え、電極間に酸素または乾燥空気を供給し、その電極間に交流電圧を印加し、放電させる方式の装置を採用することができる。この方式では、放電により放出された電子が酸素分子に衝突し、酸素原子に解離し、それが他の酸素分子と結び付くことにより、オゾンを生成する。
【0039】
オゾンを発生させる方式は、これに限られるものではなく、硫酸等の水溶液を使用し、電気分解でオゾンを発生させる電解法、放射線を照射し、その電離作用によりオゾンを発生させる放射線照射法、紫外線を用いる光化学反応法等を採用することも可能である。
【0040】
また、NOを酸化し、NO2を生成させることができれば、オゾン以外の酸化剤を使用して酸化させてもよい。
【0041】
酸化装置15は、風路11内の風量に関係なく、単位時間当たりに一定量のオゾンを発生させ、風路11内に供給することができる。NOx濃度が低下し、風量を制御して下げたとしても、オゾン量を一定にすることで、風路11内の大気中のオゾン濃度が上がり、これによって、より多くのNOが酸化され、脱硝装置12入口でのNO2濃度が高くなるからである。ちなみに、脱硝装置12入口でのNO2濃度が高くなると、反応速度が上がり、NOx除去率を上げることができる。
【0042】
NOの酸化によりNO濃度が減少するが、その減少量D(ppm)は、大気のNO濃度をA(ppm)、オゾン濃度をB(ppm)、NOとオゾンとが反応する反応時間をt(s)、その反応係数をmとすると、下記数式3により求めることができる。
【0043】
【数3】
【0044】
NOxがNOとNO2から構成されるものと考えた場合、上記のNO濃度減少量DとNOx除去率R(%)との関係は、下記数式4で表すことができる。なお、数式4中、Cは、大気中のNO2濃度である。
【0045】
【数4】
【0046】
上記の反応係数m、nは、試験や実際の運転実績等から得ることができ、例えばmに対しては20、nに対しては0.1を与えることができる。これらの数値は一例であるため、これらの数値に限定されるものではない。
【0047】
オゾン濃度の増加は、NOをNO2に酸化させ、脱硝装置12に供給する大気中のNO2濃度を増加させて除去性能を高めることができるが、酸化に使用されずに残留した場合は、大気浄化システムから排出される大気中のオゾン濃度が増加する。オゾン濃度は、0.1ppmを超えると、鼻や喉が刺激されて不快感を与え、1ppmを超えると、短気暴露となり、催涙、頭痛、胸部痛等が起こり、この暴露を繰り返すと、慢性中毒になる。このため、日本産業衛生学会では、人体へのオゾンの許容濃度を0.1ppmとし、本発明でも、排気する大気中のオゾン濃度0.1ppmを人体へ影響を与えるオゾン臭気域として設定する。
【0048】
図5は、大気中のNO濃度に応じたNO除去量(ml)と風量(m3/s)との関係を示した図である。図5の縦軸は、NO除去量(ml)を表し、横軸は、風量(m3/s)を表す。実線は、大気中のNO濃度が0.21ppmの場合、破線は、NO濃度が0.43ppmの場合、一点鎖線は、NO濃度が0.6ppmの場合の各風量に対するNO除去量を表している。また、図5には、オゾン臭気域の上限と、脱硝材の処理限界を示す除去不能域も示している。除去不能域は、NO除去量が0.7ml以上である。なお、NO除去量は、大気中のNO濃度から上記数式3で求められるD(ppm)を減算し、それに風量を乗算することで、算出することができる。
【0049】
図5によれば、大気中のNO濃度が0.6ppmの場合、風量を約20m3/sに制御して風路11内を流通させれば、最大除去性能が得られることを示している。また、大気中のNO濃度が0.43ppmの場合、風量を約13 m3/sに制御して風路11内を流通させれば、最大除去性能が得られることを示している。
【0050】
大気中のNO濃度が0.21ppmの場合は、どの風量でも、脱硝材の処理限界である0.7mlに達していないので、最大除去性能を得ることはできないが、約5 m3/sに制御して風路11内を流通させることで、風量10 m3/s や20 m3/s等に比較して、高いNOx除去率を得ることができるとともに、より多くのNOを除去することができる。
【0051】
この場合、風量を約5 m3/sからさらに下げていくと、NOx除去率を上げることができる。しかしながら、NO除去量は、急激に下がり、オゾン臭気域に入ってくる。このため、上記の約5 m3/sに制御して風路11内を流通させることが望ましい。
【0052】
なお、NOx濃度が低い環境において風量を常時低減させると、送風装置13が消費する電力を下げることができ、ランニングコストの低下に寄与することができる。ちなみに、送風装置13として電動ファンを使用する場合、電力が風量の3乗に比例するため、風量を低減させることで、消費電力を大幅に低減させることができる。
【0053】
図4に示す大気浄化システムが実行する処理の流れについて、図6を参照して説明する。ステップ200から開始し、ステップ210では、検出装置10が浄化対象の大気中のNOx濃度およびNO濃度を検出する。NOx濃度およびNO濃度は、開始時に測定したNOx濃度およびNO濃度であってもよいし、開始から一定時間にわたって測定したNOx濃度の平均値およびNO濃度の平均値であってもよい。
【0054】
ステップ220では、脱硝装置12を設置した風路11内に、送風装置13により大気の流通を開始させる。風量は、デフォルトの風量とすることができる。ステップ210とステップ220の処理は、どちらが先であってもよい。ステップ230では、風路11内の、脱硝装置12の前段に設置された酸化装置15により、NOを酸化するためのオゾンを発生させる。これにより、大気中のNOは、NO2に酸化される。
【0055】
ステップ240では、制御装置14が、検出されたNOx濃度およびNO濃度と酸化装置15が発生させるオゾン量に応じて、送風装置13により風路11内を流通させる風量を調整する。
【0056】
具体的には、制御装置14は、酸化装置15が発生させたオゾン量および風量からオゾン濃度を計算し、検出されたNO濃度と計算したオゾン濃度とを用い、上記数式3を使用して、NO濃度減少量D(ppm)を算出する。制御装置14は、検出されたNOx濃度とNO濃度からNO2濃度を算出し、NO濃度、算出したNO2濃度およびNO濃度減少量Dを用い、上記数式4を使用して、NOx除去率を算出する。また、NO除去量は、NO濃度減少量Dを用い、上記の方法で算出する。
【0057】
制御装置14は、NOx濃度に応じたNOx除去率と風量との関係を表す情報およびNO除去量と風量との関係を表す情報を保持し、その中から、検出されたNOx濃度に対応するNOx除去率と風量との関係を表す情報およびNO除去量と風量との関係を表す情報を取得する。制御装置14は、取得したNOx除去率と風量との関係を表す情報を用い、検出されたNOx濃度に対応する風量を決定し、取得したNO除去量と風量との関係を表す情報を用い、決定した風量が、オゾン臭気域に入らない風量であるかどうかを確かめ、入らない風量である場合、ダンパの開度を変更する等してその風量に調整する。
【0058】
確かめた結果、決定した風量が、オゾン臭気域に入る風量である場合、オゾン臭気域に入らない、最大のNO除去量となる風量を、調整すべき風量として決定し、ダンパの開度を変更する等してその風量に調整する。
【0059】
ステップ250では、検出装置10が大気中のNOx濃度を検出し、ステップ260で、制御装置14が、検出装置10により検出されたNOx濃度が一定以上変化したかを判断し、変化しない場合、ステップ250に戻り、変化するまでこの判断を繰り返す。一方、変化した場合は、ステップ270へ進み、ステップ240と同様の方法で風量を調整する。このような制御により、脱硝装置12のNOx除去性能を、例えば最大NOx除去性能で一定に維持することができるとともに、オゾン濃度を人体に影響を与えない濃度として外部に排出することができる。
【0060】
なお、上記のNOxの除去性能を向上させるために追加することができる装置としては、浮遊物質を除去する集塵装置や、脱硝材に吸着したNO2の還元離脱を抑制するために加湿する加湿装置等を挙げることができる。
【0061】
これまで本発明の大気浄化システムおよび大気浄化方法について図面に示した実施形態を参照しながら詳細に説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態や、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。したがって、各装置の材質やサイズ等も、風路11や流通する大気の成分等に合わせて適切な材質やサイズのものを採用することができるものである。
【符号の説明】
【0062】
10…検出装置、11…風路、12…脱硝装置、13…送風装置、14…制御装置、15…酸化装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6