(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-148911(P2017-148911A)
(43)【公開日】2017年8月31日
(54)【発明の名称】段ボール用加工装置及び段ボールの加工方法
(51)【国際特許分類】
B26D 3/06 20060101AFI20170804BHJP
B26D 3/10 20060101ALI20170804BHJP
B26D 1/04 20060101ALI20170804BHJP
B26D 1/06 20060101ALI20170804BHJP
【FI】
B26D3/06
B26D3/10 L
B26D1/04 Z
B26D1/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-34790(P2016-34790)
(22)【出願日】2016年2月25日
(71)【出願人】
【識別番号】516058470
【氏名又は名称】セルカム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101742
【弁理士】
【氏名又は名称】麦島 隆
(72)【発明者】
【氏名】吉田 功
【テーマコード(参考)】
3C027
【Fターム(参考)】
3C027GG03
3C027HH03
3C027HH11
3C027HH14
(57)【要約】
【課題】略V字状の溝を形成する際の加工時間の短縮、加工精度の向上を図る。
【解決手段】 加工対象の段ボール100に対して垂直方向に移動するホルダー部200の先端付近において、対称位置に設けられる一対のカッター刃210,210を有している。各カッター刃210,210は、カッター刃作動機構220によって、両者が離間して待機している位置から接近する位置に至るまで斜めに変位するように支持されている。各カッター刃210,210が離間位置から接近位置へと変位することにより、両者が同時に、段ボール100に向かって斜めに差し込まれていく。斜めに差し込まれた後、段ボール100の面方向に沿ってホルダー部を平行移動させるように制御するだけで略V字状の溝を1回の工程で形成することができる。従来の手法に比較し、略V字状の溝を形成するための加工時間の短縮化を図ることができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象の段ボールが支持される加工テーブルと、前記加工テーブルに対して移動可能に支持される加工ヘッドと、制御部とを有して構成される段ボール用加工装置であって、
前記加工ヘッドが、
前記加工テーブルに対して垂直方向に移動可能なホルダー部と、
前記ホルダー部に、対称位置に設けられる一対のカッター刃と、
前記各カッター刃を、前記各カッター刃の各刃先が相互に離間している待機位置から、斜め方向に変位して相互に前記各刃先が接近するように支持するカッター刃作動機構と
を備え、
前記制御部により、前記ホルダー部が前記段ボールに垂直方向に接近するように制御されると、前記各カッター刃の刃先が接近して前記段ボールに共に差し込まれ、前記各カッター刃を前記段ボールに共に差し込んだ状態で、前記ホルダー部が前記段ボールの面方向に移動するように制御されて、略V字状の溝が形成される構成であることを特徴とする段ボール用加工装置。
【請求項2】
前記ホルダー部は、その下端部付近において、両外側部から内方に向かって、斜め下方に傾斜するように対称に設けられたテーパ面を有しており、
前記各カッター刃が前記各テーパ面に沿って移動可能である請求項1記載の段ボール用加工装置。
【請求項3】
前記カッター刃作動機構は、前記各カッター刃を、前記段ボールに対して40〜50度の範囲の傾斜角で斜めに変位させる構成である請求項1又は2記載の段ボール用加工装置。
【請求項4】
加工対象の段ボールが支持される加工テーブルと、前記加工テーブルに対して移動可能に支持される加工ヘッドと、制御部とを有し、
前記加工ヘッドが、
前記加工テーブルに対して垂直方向に移動可能なホルダー部と、
前記ホルダー部に、対称位置に設けられる一対のカッター刃と、
前記各カッター刃を、前記各カッター刃の各刃先が相互に離間している待機位置から、相互に前記各刃先が接近するように動作させるカッター刃作動機構と
を備えた段ボール用加工装置を用いて、前記段ボールに略V字状の溝を形成する段ボールの加工方法であって、
前記制御部により、
前記ホルダー部を、その下端部先端に設けたシート押さえ部材が前記段ボールに当接するまで、前記段ボールに対して垂直方向に移動させる工程と、
前記シート押さえ部材により前記段ボールを押さえた状態で、前記各カッター刃を、前記各刃先が相互に接近する方向に斜めに変位させ、前記段ボールに、前記各カッター刃により形成される各切り込みが交差するまで差し込む工程と、
前記ホルダー部を前記段ボールの面方向に移動させ、前記略V字状の溝を形成していく工程と
を実行するように制御して、前記段ボールに略V字状の溝を形成することを特徴とする段ボールの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段ボール用加工装置及び段ボールの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
梱包等に用いる段ボール(段ボールシート)は、通常、所定の形状にカットすると共に、折り曲げ用の筋押し加工を所定の位置に行う。一般段ボールの場合、筋押し加工により形成された折り目から折り曲げることで、箱や蓋などの所望形態のものを組み立てることができる。しかし、輸出用製品の梱包箱、冷蔵庫等の重量物の梱包箱等の場合、硬度の高い厚紙をライナーとして使用し、通常複数層で形成された強化段ボールが使用される。このような強化段ボールを所望の位置で折り曲げるためには、筋押しでは不十分で、折り曲げ箇所に略V字状の溝(V字溝)を形成している(
図5参照)。
【0003】
特許文献1は、強化段ボールを用いた組立式段ボール棺に関するものであるが、その段落番号0024に記載のように、折り曲げ箇所に溝角がほぼ90度となるV字溝を形成している。そして、このV字溝を形成する方法として、回転刃を用いる切削加工、プレス機による圧縮加工を挙げている。
【0004】
しかし、近年、種々のバリエーションのものを小ロットで生産することが増加しており、型が必要となるプレス機による加工ではコストがかかり過ぎる。また、回転刃を用いてV字溝を形成するには、
図7(a),(b)に示したように、例えば、形成予定のV字溝の中心に対して左側に45度傾斜させた回転刃a〜dを一方の回転軸に支持させ、他方側に45度傾斜させた回転刃a’〜d’を他方の回転軸に支持させ、一方の回転軸と他方の回転軸を加工対象の段ボールの進行方向に沿って間隔をおいて並列配置した装置を用いる必要ある。そして、
図7(a)に示したように、段ボールを一端側から送り込んで他方側の回転刃a’〜d’の下側を通過させ、さらに、一方側の回転刃a〜dの下側を通過させて、それにより、
図7(b)に示したようなV字溝を形成する。従って、構造が複雑で高価であり、小ロット生産や試作用に適さない。また、V字溝を形成するには、加工対象の段ボールの端から加工するしかなく、途中の所定の範囲のみにV字溝を形成することはできない。仮に、各回転刃を上下動させ、段ボールの中途においてV字溝を形成しようとしても、
図7(c)の側面図で示したように、回転刃が側面視で円形であるため、加工開始点より後方に不要な切り込み、いわゆるカットずれが生じてしまう。
一方、本出願人は、このような小ロット生産や試作用に適し、かつ、所望の位置にカットずれを生ずることなくV字溝を形成できる装置として、非特許文献1に示した装置を開発している。
【0005】
ここで、非特許文献1に示した装置は、V字カット用の治具として、
図6に示したよう構造のものを使用している。すなわち、軸部材5000と、この軸部材5000に45度で傾斜するカッター刃5100とを取り付けた治具である。この治具をプロッタに装着して、所定方向にスライドさせてカットするものである。カッター刃5100をスライドさせてカットしていく構成であるため、回転刃を用いる場合と比較してコンパクトな構造とすることができ、装置の製作コストを低く押さえることができる。
図6に示した治具は、加工面に平行に移動させる平行移動用と垂直に移動させる垂直移動用の2つのモータによって3次元に動作する構造であり、略V字状の溝を形成するには、まず、
図6(a)に示したように、加工対象の強化段ボール6000の表面上方に待機している位置(二点鎖線で示した位置)から、カッター刃5100の刃先5101が、加工予定の略V字状の溝の中心となる位置6101に至るように、平行方向の距離Aと垂直(下降)方向の距離Bを同じ速度で移動するように2つのモータを駆動する。これにより、結果的に、カッター刃5100は、45度の角度で強化段ボール6000の表面6001から斜め方向(矢印C方向)に差し込まれていき、略V字状の溝の中心となる位置(溝中心)6101に至る。刃先5101は、その後、軸部材5000が
図6(a)の奥行き方向に平行移動されることにより、45度の切り込み(
図6(b)の1本目の切り込み)を所定長さに亘って形成していく。
【0006】
所定長さに亘って切り込みを形成したならば、2つのモータを上記と逆方向に動かして、カッター刃5100を強化段ボール6000から引き抜く。軸部材5000及びカッター刃5100を180度反転させて、上記と同様に、平行方向に距離A及び垂直方向に距離Bを同じ速度で移動させると、
図6(b)の矢印D方向に沿って、カッター刃5100が差し込まれていく。刃先5101が溝中心6101に至ると、
図6(a)において矢印C方向に沿って差し込むことにより形成された1本目の切り込みに交差するため、その後、
図6(b)の奥行き方向に軸部材5000を移動させれば、
図6(c)に示したように溝角90度のV字溝6100が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−132300号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】セルカム株式会社、カッティングプロッタ、製品名「Progressive (プログレッシブ)」 のウエブページ(URL:http://www.shinoda-tec.co.jp/cutting_progressive.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、非特許文献1に開示の方法の場合、V字溝を形成するのに、向きを変えて往復2本の切り込みを形成する必要がある。そのため、加工時間がかかるという問題がある。また、2本目の切り込みを形成する際には、1本目の切り込みが既に入っているために、加工対象の段ボールがカット時の抵抗を受けて浮き上がったりして逃げやすくなっており、その結果、2本目の切り込みの形成位置にずれが生じ、部分的に切り残しが生じたり、切り込みが直線にならずに歪んだりする場合があるなど、加工精度の点で改善の余地があった。
【0010】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、コストの安いスライドカット方式を用いながら、略V字状の溝を形成する際の加工時間の短縮、加工精度の向上を図ることができる段ボール用加工装置及び段ボールの加工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の段ボール用加工装置は、
加工対象の段ボールが支持される加工テーブルと、前記加工テーブルに対して移動可能に支持される加工ヘッドと、制御部とを有して構成される段ボール用加工装置であって、
前記加工ヘッドが、
前記加工テーブルに対して垂直方向に移動可能なホルダー部と、
前記ホルダー部に、対称位置に設けられる一対のカッター刃と、
前記各カッター刃を、前記各カッター刃の各刃先が相互に離間している待機位置から、斜め方向に変位して相互に前記各刃先が接近するように支持するカッター刃作動機構と
を備え、
前記制御部により、前記ホルダー部が前記段ボールに垂直方向に接近するように制御されると、前記各カッター刃の刃先が接近して前記段ボールに共に差し込まれ、前記各カッター刃を前記段ボールに共に差し込んだ状態で、前記ホルダー部が前記段ボールの面方向に移動するように制御されて、略V字状の溝が形成される構成であることを特徴とする。
【0012】
前記ホルダー部は、その下端部付近において、両外側部から内方に向かって、斜め下方に傾斜するように対称に設けられたテーパ面を有しており、
前記各カッター刃が前記各テーパ面に沿って移動可能であることが好ましい。
【0013】
前記カッター刃作動機構は、前記各カッター刃を、前記段ボールに対して40〜50度の範囲の傾斜角で斜めに変位させる構成であることが好ましい。
【0014】
また、本発明の段ボールの加工方法は、加工対象の段ボールが支持される加工テーブルと、前記加工テーブルに対して移動可能に支持される加工ヘッドと、制御部とを有し、
前記加工ヘッドが、
前記加工テーブルに対して垂直方向に移動可能なホルダー部と、
前記ホルダー部に、対称位置に設けられる一対のカッター刃と、
前記各カッター刃を、前記各カッター刃の各刃先が相互に離間している待機位置から、相互に前記各刃先が接近するように動作させるカッター刃作動機構と
を備えた段ボール用加工装置を用いて、前記段ボールに略V字状の溝を形成する段ボールの加工方法であって、
前記制御部により、
前記ホルダー部を、その下端部先端に設けたシート押さえ部材が前記段ボールに当接するまで、前記段ボールに対して垂直方向に移動させる工程と、
前記シート押さえ部材により前記段ボールを押さえた状態で、前記各カッター刃を、前記各刃先が相互に接近する方向に斜めに変位させ、前記段ボールに、前記各カッター刃により形成される各切り込みが交差するまで差し込む工程と、
前記ホルダー部を前記段ボールの面方向に移動させ、前記略V字状の溝を形成していく工程と
を実行するように制御して、前記段ボールに略V字状の溝を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、加工対象の段ボールに対して垂直方向に移動するホルダー部の先端付近において、互いに対称位置に設けられる一対のカッター刃を有している。各カッター刃は、カッター刃作動機構によって、両者が離間して待機している位置から接近する位置に至るまで斜めに変位するように支持されている。そのため、各カッター刃が離間位置から接近位置へと変位することにより、両者が同時に、段ボールに向かって斜めに差し込まれていくことになる。斜めに差し込まれた後、段ボールの面方向に沿ってホルダー部を平行移動させるように制御するだけで略V字状の溝を1回の工程で形成することができる。
【0016】
従って、スライドカット方式で片側ずつ切れ込みを入れる従来の手法に比較し、略V字状の溝を形成するための加工時間の短縮化を図ることができる。また、2枚のカッター刃で同時に切り込みを入れていく構成であるため、2本の切り込みを別々に形成する従来の装置のように、段ボールの逃げによる位置ずれが生じにくく、切り残しが低減され、加工精度が向上する。それにより、段ボールの無駄も低減される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の一の実施形態に係る段ボール用加工装置の概略構成を示した斜視図である。
【
図2】
図2は、ホルダー部の詳細構造を説明するための図である。
【
図3】
図3は、上記実施形態段ボール用加工装置により断面略V字状の溝を形成していく工程を説明するための図であり、(a)はホルダー部が待機位置にいる状態を示し、(b)はホルダー部を断面略V字状の溝の形成位置に向けて下降させた状態を示し、(c)はカッター刃が段ボールに差し込まれた状態を示した図である。
【
図4】
図4は、段ボールに形成された断面略V字状の溝を示した図である。
【
図5】
図5は、断面略V字状の溝を形成した段ボールの一例を示した図である。
【
図6】
図6(a)〜(c)は、従来の段ボール用加工装置及びそれを用いた加工方法を説明するための図である。
【
図7】
図7(a)〜(c)は、回転刃を用いた従来の段ボール用加工装置及びそれを用いた加工方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を用いて、本発明の一の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態に係る段ボール用加工装置1の概略構成を示した図である。この図に示したように、本実施形態の段ボール用加工装置1は、加工テーブル10と、加工ヘッド20と、制御プログラムが組み込まれたコンピュータを含んでなる制御部30とを有して構成され、加工テーブル10には、加工対象の段ボール(段ボールシート)100がセットされる。なお、本実施形態では、段ボール100に折り曲げ部として、
図5に示したような断面略V字状の溝(以下、単に「V字溝」という場合がある)110を形成するものであり、典型的には、折り曲げ部にこのようなV字溝110を必要とする強化段ボールが加工対象であるが、一般段ボールにも適用可能である。
【0019】
加工ヘッド20は、X軸11、Y軸12に支持されて、縦横方向に移動可能に設けられている。加工ヘッド20には、
図2に示したように、垂直方向(Z方向)に沿ったホルダー支持溝20aが設けられており、このホルダー支持溝20aに沿って垂直方向に移動可能にホルダー部200が設けられている。なお、加工ヘッド20は、制御部30からの指令によって駆動するモータ(図示せず)により、X方向、Y方向、Z方向に移動する。ホルダー部200は、
図2に示したように、断面形状において略五角形に形成され、下端部付近において、両外側部から内方に向かって、斜め下方に傾斜するように対称に設けられたテーパ面201,201を有しており、この2つのテーパ面201,201に沿ってガイドレール202,202が設けられている。
【0020】
各ガイドレール202,202には、それぞれカッターホルダー203,203が移動可能に設けられており、各カッターホルダー203,203にカッター刃210,210が支持されている。具体的には、各カッターホルダー203,203は、テーパ面201,201寄りの内側部に、ガイドレール202,202に係合する係合部203a,203aが設けられ、外側部に設けられた保持部203b,203bに、カッター刃210,210が保持される。このとき、カッター刃210,210は、その長手方向が各ガイドレール202,202に沿った方向に延びるように支持され、その周縁に刃が形成されている。従って、各カッター刃210,210は、各ガイドレール202,202に沿って変位可能となっており、テーパ面201,201(ガイドレール202,202)の傾斜角度が段ボール100の切り込み角度となる。よって、交差角約90度のV字溝を形成するために、テーパ面201,201(ガイドレール202,202)の傾斜角度は、加工テーブル10(段ボール100)の面に対して40〜50度の範囲とすることが好ましく、45度することがより好ましい。
【0021】
なお、符号205は、2つのテーパ面201,201の交差部であるホルダー部200の下端部先端に設けられ、先端部205aが下方に突出するシート押さえ部材である。
【0022】
ホルダー部200には、カッター刃作動機構220が設けられている。カッター刃作動機構220は、リンク部材221,221及びリンク動作部材222を有して構成される。リンク部材221,221は、略く字状に形成され、内角側を下方に向けて配設されている。リンク部材221,221の内側端部は、第1軸部材221a,221aを介して、ホルダー部200に軸支されており、リンク部材221,221は、第1軸部材221a,221aを中心として、いずれも下方向に回動可能になっている。リンク部材221,221の外側端部付近には、リンク側長穴221b,221bが形成されており、このリンク側長穴221b,221bに第2軸部材221c,221cが挿通されている。第2軸部材221c,221cは、カッターホルダー203,203の各後部に設けられた連結片203c,203cに軸支されている。
【0023】
リンク動作部材222は、ホルダー部200の上面に開口する中央ガイド孔206内を上下動可能な上下動部材222aと、ガイドロッド222d,222dと、各ガイドロッド222d,222dを上方に付勢する復帰スプリング222e,222eとを有して構成される。上下動部材222aは、垂直部222bと該垂直部222bの上部で外方に突出するフランジ部222cとを備えた断面略T字状に形成され、ガイドロッド222d,222dの上端がフランジ部222bに連結されている。該ガイドロッド222d,222dは、中央ガイド孔206に隣接して設けられた側部ガイド孔207,207に挿入されて上下にガイドされる。上下動部材222aの垂直部222bにおける、第1軸部材221a,221aに対応する位置には、上下方向に長い動作部材側長穴222f,222fが形成されている。また、略く字状のリンク部材221,221の屈曲部は、第3軸部材221d,221dを介して垂直部222bに軸支されている。
【0024】
リンク動作部材222はこのように設けられているため、ホルダー部200のシート押さえ部材205が、加工対象の段ボール100に接触するまでは、例えば、制御部30からの信号によってホルダー部200を下降させることにより、リンク動作部材222も該ホルダー部200と共に下降動作する。一方、シート押さえ部材205が段ボール100に接触した後は、ホルダー部200がそれ以上下降できなくなるため、制御部30によってリンク動作部材222のみが復帰スプリング222e,222eの弾性力に抗して下降される。なお、制御部30によってホルダー部200を下降させたり、リンク動作部材222を下降させたりする手段は限定されるものではなく、例えば、ホルダー部200やリンク動作部材222に係合すると共に、制御部30からの指令によって駆動するモータの駆動軸にギヤ等を介して連結されて上下動する連結部材(図示せず)を用いて動作させることができる。
【0025】
次に、本実施形態に係る段ボール用加工装置1により、断面略V字状の溝(V字溝)を形成する方法について説明する。まず、加工対象の段ボール100を加工テーブル10にセットする(
図1及び
図3(a)に示した状態)。次いで、駆動を開始する。制御部30には、予め、段ボール100において略V字状の溝(V字溝)110を形成する位置が記憶されており、制御部30は、加工ヘッド20をX軸11及びY軸12に沿って、X方向、Y方向に所定量移動させる。このとき、加工ヘッド20は、段ボール100から離間した上昇位置にセットされており、ホルダー部200に支持された各カッター刃210,210は、各刃先211,211間の間隔が最も離間した位置(待機位置(
図2及び
図3(a)の位置))となっている。
【0026】
制御部30は、加工ヘッド20をX方向、Y方向に所定の位置に至るまで移動させたならば、加工ヘッド20のホルダー部200を下降させる指令を出し、それによりホルダー部200が、
図3(b)に示したように、段ボール100における所定の位置に向かって下降動作を開始する。ホルダー部200が下降していき、シート押さえ部材205の先端部205aが段ボール100の表面101に当接するとそれ以上下降できなくなり、ホルダー部200の下降動作は停止する。この時点までは、カッター刃作動機構220のリンク動作部材222もホルダー部200と共に下降動作する。
【0027】
制御部30は、引き続き、リンク動作部材222の下降を継続するように制御する。それにより、リンク動作部材222の上下動部材222aは、復帰スプリング222e,222eの弾性力に抗してさらに下降する。このとき、第1軸部材221a,221aは、下降動作できなくなったホルダー部200に軸支されているため、該第1軸部材221a,221aのホルダー部200に対する位置は変化しない。しかし、第1軸部材221a,221aは、リンク動作部材222の上下動部材222aの垂直部222bに形成された動作部材側長穴222f,222fに挿通されているため、該動作部材側長穴222f,222f内における相対位置が変化する。すなわち、第1軸部材221a,221aは、リンク動作部材222の上下動部材222aのみの下降動作の開始前は、
図3(a),(b)に示したように、動作部材側長穴222f,222fの下端寄りに位置しているが、リンク動作部材222の上下動部材222aがホルダー部200とは独立して下降すると、
図3(c)に示したように、動作部材側長穴222f,22fの上端寄りに位置することになる。
【0028】
その一方、リンク部材221,221の屈曲部は、第3軸部材221d,221dを介して上下動部材222aの垂直部222bに軸支されている。そのため、リンク部材221,221は、第1軸部材221a,221aを中心としていずれも下方向に、すなわち一方は時計回りに他方は反時計回りに回動する。リンク部材221,221が下方向に回動すると、リンク部材221,221の外側端部付近が、第2軸部材221c,221cを介して、カッターホルダー203,203の各後部に設けられた連結片203c,203cに軸支されているため、カッターホルダー203,203を、ガイドレール202,202に沿ってホルダー部200の下端部先端方向に移動させる。カッターホルダー203,203がホルダー部200の下端部先端方向に移動していくと、連結片203c,203cと第3軸部材221d,221dとの距離が短くなっていくため、第2軸部材221c,221cはそれに伴ってリンク側長穴221b,221b内を、
図3(b)のより外端寄りの位置から、
図3(c)に示したより内端寄りの位置へと移動していく。
【0029】
カッターホルダー203,203がこのように移動することにより、該カッターホルダー203,203に保持された各カッター刃210,210は、刃先211,211が相互に接近するようにほぼ同期して移動することになる。
【0030】
2枚のカッター刃210,210は、このように同期して共に接近する方向に変位していくため、テーパ面201,201(ガイドレール202,202)の傾斜角度である40〜50度の角度で、好ましくは45度の角度で、段ボール100の表面101から差し込まれていく。2枚のカッター刃210,210は、
図3(c)に示したように、断面で見て、各刃先211,211が略合致した位置まで差し込まれると、各カッター刃210,210によって形成される各切り込みが交差する。この交差位置(
図4に示したV字溝110の溝中心110aに相当)は、段ボール100が切断されないように、
図4の断面で見て、段ボール100における加工テーブル10に接している底面102から所定量、通常数mm上方にずれた位置となるように制御する。
【0031】
2枚のカッター刃210,210を
図3(c)に示したように差し込んだならば、制御部30からの指令により、加工ヘッド20をX方向又はY方向に移動させる。これにより、当該方向に沿って所定長さのV字溝110が形成されることになる。当該V字溝110を形成したならば、制御部30からの指令により、まず、リンク動作部材222を上方に動作させる。リンク動作部材222が上方に動作していくと、第1軸部材221a,221aが、相対的に、動作部材側長穴222f,22fの上端寄りから下端寄りへと移動すると共に、リンク部材221,221は
図3(c)状態から
図3(b)の状態へと上記と逆の上方向に回動していく。この結果、カッターホルダー203,203を介してカッター刃210,210がそれぞれ斜め上外方へと移動していき、段ボール100から離脱し、さらに上昇すると、各カッター部210,210は、刃先211,211が
図3(a)に示した最も離間した待機位置に至るまで変位する。この状態で、さらに別のV字溝110を形成する場合には、制御部30の制御によって加工ヘッド20を所定の位置まで移動させ、上記と同様の工程を繰り返す。
【0032】
本実施形態によれば、2枚のカッター刃210,210が同時に斜め方向に段ボール100に差し込まれる構成であるため、断面略V字状の溝(V字溝110)を、従来の片側ずつ切り込みを入れる構成と比較して迅速に形成することができる。また、カッター刃210,210を2枚用いるため、1枚だけを用いる従来の装置と比較して耐久性が向上し、さらに、片側だけに切り込みを設けた後に他方の側に切り込みを入れる際の段ボールの逃げがなくなる。それにより切り残しが低減され、加工精度が向上する。
【0033】
なお、カッター刃作動機構220は、各カッター刃210,210を同期して斜め下方の接近方向に動作させることができるものであればよく、上記に示した構造に限定されるものではない。また、各カッター刃210,210は微小振動を生じさせる構成とするとより円滑にカットすることができる。その手段は限定されるものではないが、例えば各リンク部材221,221に小型モータ(図示せず)を取り付け、それにより、微小な回動を生じさせることで、各カッター刃210,210に斜め方向に微小振動を生じさせることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 段ボール用加工装置
10 加工テーブル
20 加工ヘッド
200 ホルダー部
210 カッター刃
220 カッター刃作動機構
221 リンク部材
222 リンク用動作部材
100 段ボール
110 V字溝
110a 溝中心