【課題】表面が平面ではない表示面を持つ表示装置等や変形可能な表示装置等であっても、形状に追従して貼着することが可能であり、繰り返し変形を受けても復元性に優れた、耐擦傷性に優れ、防眩性やギラツキ防止性に優れた保護フィルムの提供。
【解決手段】基材10の上に、保護層30を積層してなる保護フィルム1であって、基材10がウレタン系樹脂又はウレタン系樹脂及びアクリル樹脂のブレンド樹脂を含み、試験片(100mm×10mm)を引張速度400mm/minで10%伸長した後に引張時間と同時間放置することにより復元した後の変位が2%未満である保護フィルム1。保護層30が平均粒子径2〜10μmの粒子31を4〜50重量%とウレタン系樹脂或いはアクリル樹脂又は両樹脂のブレンド樹脂を含むバインダー樹脂32を含む保護フィルム1。変位=(復元時の試験片の長さ−初期の試験片の長さ)×100/初期の試験片の長さ(式1)
基材の上に、保護層を積層してなる保護フィルムであって、前記基材がウレタン系樹脂、またはウレタン系樹脂およびアクリル樹脂のブレンド樹脂を含み、試験片(100mm×10mm)を引張速度400mm/minで10%伸長した後に引張時間と同時間放置することにより復元した後の変位が2%未満であることを特徴とする保護フィルム。
変位=(L1−L0)×100/L0
L0=初期の試験片の長さ
L1=復元後の試験片の長さ
請求項3に記載の保護フィルムであって、前記粒子は、平均粒子径が2〜10μmであって前記保護層中に4重量%以上50重量%以下含まれることを特徴とする保護フィルム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された保護フィルムは、形状追従性はあるものの、光透過性や防眩性など表示装置用保護フィルムとしての特性を備えていない。また一般に特許文献1に記載されるようなウレタン樹脂は、耐擦傷性が低く、傷つきやすいという問題がある。耐擦傷性や防眩性を有するハードコート層をウレタン樹脂フィルムの上に設けることが考えられるが、一般にウレタン樹脂フィルムは耐溶剤性が低いため、各種コーティングを行う場合の制限が大きい。また仮にハードコート層を形成したとしても、ハードコート層を形成することにより、ウレタン樹脂フィルム本来の形状追従性が損なわれる可能性も高い。
【0007】
一方、特許文献2に記載された保護フィルムは、光透過性や防眩性を備えているが、柔軟樹脂層が形成される基材(ポリエステル)の形状追従性がウレタン樹脂等に比べ乏しいため、曲面や変形する対象への適用には不向きである。特に変形を繰り返す用途では、単に材料の伸びだけでなく復元性が高いことが要求されるが、ポリエステルフィルムなどの復元性が低い。
【0008】
本発明は、表面が平面ではない表示面を持つ表示装置等や変形可能な表示装置等であっても、形状に追従して貼着することが可能であり、繰り返し変形を受けても復元性に優れた保護フィルムを提供することを課題とする。また、本発明は、耐擦傷性に優れた保護フィルムを提供することを課題とする。また、本発明は、防眩性やギラツキ防止性に優れた保護フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の保護フィルムは、基材の上に、保護層を積層してなる保護フィルムであって、基材がウレタン系樹脂、またはウレタン系樹脂およびアクリル樹脂のブレンド樹脂を含み、試験片(100mm×10mm)を引張速度400mm/minで10%伸長した後に引張時間と同時間放置することにより復元した後の変位が2%未満であることを特徴とする。
変位=(復元時の試験片の長さ−初期の試験片の長さ)×100/初期の試験片の長さ (式1)
【0010】
本発明の保護フィルムは、好適には、試験片(100mm×10mm)を引張速度400mm/minで50%伸長した後に引張時間と同時間放置することにより復元させる引張履歴を10回繰り返した後、30分放置した後の復元率が90%以上である。
復元率=100−{(L
10−L
0)×100/L
0} (式2)
L
0=初期の試験片の長さ
L
10=30分放置後の試験片の長さ
【0011】
また、本発明の保護フィルムの好適な態様は、保護層が粒子およびバインダー樹脂を含む。
【0012】
また、本発明の保護フィルムの好適な態様は、保護層に含まれる粒子が、平均粒子径が2〜10μmであって保護層中に4重量%以上50重量%以下含まれる。
【0013】
また、本発明の保護フィルムの好適な態様は、保護層に含まれるバインダー樹脂が、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、またはウレタン系樹脂およびアクリル樹脂とのブレンド樹脂を含む。
【0014】
また、本発明の保護フィルムの好適な態様は、保護層は、前記基材の上に、水系ウレタン樹脂エマルジョンを塗工することにより形成された層である。
【0015】
また、本発明の保護フィルムの好適な態様は、保護層の厚みは1μm以上10μm以下である。
【0016】
また、本発明の保護フィルムの好適な態様は、基材の厚みが25μm以上400μm以下である。
【0017】
また、本発明の保護フィルムの好適な態様は、基材の、保護層が形成された面と反対側の面に粘着層を備える。
【0018】
また、本発明の保護フィルムの好適な態様は、保護フィルムが、基材と保護層との間に中間層を備える。
【0019】
また、本発明の保護フィルムの好適な態様は、中間層がウレタン系樹脂を含み、保護層がウレタン系樹脂と粒子とを含む。
【0020】
また、本発明の保護フィルムの好適な態様は、中間層の厚みは10μm以上30μm以下である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、形状追従性及び復元性に優れた保護フィルムが提供される。また、本発明によれば、耐擦傷性の優れた保護フィルムが提供される。また、本発明によれば、防眩性やギラツキ防止性に優れ、表示装置等への用途に適した保護フィルムが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の保護フィルムの実施形態を説明する。
本発明の保護フィルム1は、基本的な構成として、
図1に示すように、基材10と基材10の上に形成されたハードコート層30を備える。ハードコート層30は、本発明の保護フィルム1を表示装置等に用いたときにその表面を保護する保護層として機能する層であり、粒子31とバインダー樹脂32を含む。
【0024】
本発明の保護フィルム1は、パーソナルコンピューター、液晶表示装置、携帯通信機器、ウェラブル機器、スクリーン等各種機器の表示面や携帯電話のキーボードのような凹凸形状を有する装置の表面に、直接或いは接着剤又は粘着層を介して貼着されるものであり、
図2に示すように、基材10の、ハードコート層が形成された面と反対側の面(以下、裏面という)に剥離性のフィルム40(
図2(a))が積層されていてもよいし、裏面に粘着層50(
図2(b))が形成されていてもよい。
【0025】
基材10は、光透過性と柔軟性を有する材料で構成される。光透過性は、具体的には、全光線透過率として85%以上、好適には90%以上である。また柔軟性は、伸び率(JIS K7127)で200%以上、好適には300%以上である。このような特性を有する材料として、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、およびウレタン系樹脂とアクリル系樹脂とのブレンド樹脂などが挙げられる。ウレタン系樹脂は、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させた樹脂であり、芳香族系ポリイソシアネートおよび脂肪族系ポリイソシアネートを用いることができる。芳香族系ポリイソシアネートの例としては、トルエンジイソシアネート(TDI)系ポリイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)系ポリイソシアネート、およびキシリレンジイソシアナート(XDI)系ポリイソシアネートが挙げられる。脂肪族系ポリイソシアネートの例としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)系ポリイソシアネート、およびヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)系ポリイソシアネートが挙げられる。特に、XDI系、IPDI系、HDI系は、紫外線によって黄変しにくいため好ましい。
市販のものとしては、BASF社のElastollan(商標名)やHUNTSMAN社のIROGRAN(商標名)などを用いることができる。
【0026】
基材10の厚みは、特に限定されないが、保護フィルム1としての光透過性、低着色度などの光学特性及び引張強度、剛性、および硬度などの機械的特性を考慮すると、下限値は25μm以上、好ましくは50μm以上、より好ましくは75μm以上であり、上限値は400μm以下、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下である。特に、所定のエリクセン硬度を得るという観点から、基材10の厚みの下限値は、100μm以上、150μm以上がより好ましく、200μm以上がさらに好ましい。150μm以上の厚みで1N以上のエリクセン硬度が得られ、300μ以上の厚みで2N以上のエリクセン硬度がられる。なお、エリクセン硬度は、ボールチップ式のペンで引掻いたときに傷が発生するときの引掻き力を表したもので、耐擦傷性の尺度となる。具体的には、エリクセン硬度が0.5N以上であれば、通常の使用形態では表面にほとんど引掻き傷は発生せず、1N以上であれば、比較的強い力で引掻いてもほとんど引掻き傷は発生しない。
【0027】
ハードコート層(保護層)30は、保護フィルム1に耐擦傷性、防眩性、ぎらつき防止性などの特性を付与するために形成される層で、基材10に積層したときに、基材10の伸びを阻害せず且つ伸び後の復元性が良好な材料からなる。
【0028】
これら特性を満足する好適な構成として、ハードコート層30は粒子31とバインダー樹脂32を含み、バインダー樹脂32としてウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、または、ウレタン系樹脂とアクリル系樹脂とのブレンド樹脂を含むものを用いる。ウレタン系樹脂としては、熱可塑性ウレタンが好ましく、特に伸び率が高く、硬度のあるカーボネート系ウレタン樹脂が好ましい。具体的には、第一工業製薬から提供されているスーパーフレックス420、650、アデカから提供されているHUX−386、561S、三洋化成から提供されているユーコートUX−485、パーマリンUA−368Tなどが挙げられる。アクリル系樹脂としては、日本合成化学工業から提供される紫光1700B、日本化薬株式会社から提供されるKAYANOVA SCP−027Aなどが挙げあれる。
伸び率(JIS K7127)は、具体的には10%以上のものが好ましい。10%以上の伸び率を有することにより後述するヘーズ変化率を100%以下にすることができる。このような伸び率を有する材料として、具体的には、ウレタン樹脂として、スーパーフレックス420があげられ、アクリル樹脂として、KAYANOVA SCP−027Aがあげられる。なお、10%以上の伸び率を有する樹脂を本明細書において伸張性樹脂という。
【0029】
粒子31は、ハードコート層30の表面に凹凸を付与し、防眩性やぎらつき防止性を付与するとともに、ハードコート層の硬度を調節する機能を有する。粒子としては、シリカ等の無機粒子やシリコーン系、アクリル系、ポリエステル系、或いはウレタン系などの有機粒子を用いることができる。
有機粒子は、バインダー樹脂32を構成する樹脂と同系にすることで、光学特性良好であるほか、分散性や、樹脂と有機粒子の密着性が良好であり、表面硬度が得られやすいことから好適である。アクリル系樹脂粒子としては、市販されている、アートパール SEシリーズ、Jシリーズ(根上工業)、ケミスノー MXシリーズ、MZシリーズ(綜研化学)、テクポリマー MBXシリーズ、SSXシリーズ、MSXシリーズ、SMXシリーズ(積水化成品)を使用することができる。ウレタン系樹脂粒子としては、市販されているアートパール CEシリーズ、Uシリーズ(根上工業)、ダイミックビーズ CMシリーズ(大日精化)を使用することができる。これらのうちでも特に、上述したハードコート層のバインダー樹脂を構成するウレタン系樹脂に対する分散性が良好で、ウレタン系樹脂中で良好な光学特性を発揮しやすいウレタン系樹脂粒子が好適である。
【0030】
粒子の平均粒子径は、防眩性やぎらつき防止性の観点と、ハードコート層2の耐擦傷性の観点から決定される。ぎらつき防止性を得るためには粒子径は小さい方が好ましく、耐擦傷性および防眩性を高めるためには粒子径は大きいほうが好ましい。このため具体的には平均粒子径は、2〜10μmであることが好ましく、3〜6μmであることが特に好ましい。本発明の保護フィルム1を高精細化した表示装置に用いる場合には、ぎらつき防止効果が高い平均粒子径の小さい粒子を用いることが好ましい。具体的には平均粒子径が4μm以下であることが好ましい。
【0031】
また、粒子31として、平均粒子径の大きい粒子(4〜10μm)と、平均粒子径の小さい粒子(2〜4μm)とを組み合わせて用いてもよい。大きい粒子を添加することで、耐擦傷性や防眩性が向上するものの、ギラツキが発生しやすくなるが、大きい粒子と小さい粒子とを組み合わせることにより、耐擦傷性と防眩性、ギラツキ防止性をともに良好にすることができる。
【0032】
粒子の平均粒子径の変動係数は、特に限定されるものではないが、20%以下、好ましくは、10%以下である。20%以下とすることにより、塗膜中に埋もれる粒子を少なくすることができる。また粒子の形状は真球状であることが好ましい。真球状の粒子を用いることにより、ギラツキや異物感の発生を少なくすることができる。
【0033】
ハードコート層30における粒子31の含有量は、ハードコート層を構成するバインダー樹脂32(固形分)の4重量%〜50重量%であることが好ましく、5〜35重量%がより好ましく、6〜20重量%であることがさらに好ましい。粒子の含有量を4重量%以上とすることにより、防眩性やぎらつき防止性を得ることができる。50重量%以下であることにより、硬度を保つことができる。35重量%以下であることにより、ハードコート層30が伸びた時に白化し戻った後に白化したままになることを防止でき、また硬度がよく(高く)なる。
【0034】
ハードコート層30は、上述したバインダー樹脂及び粒子の他に、その光学的及び機械的特性を阻害しない範囲で、界面活性剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、レベリング剤等の添加剤を含むことができる。レベリング剤としては、例えばシリコン系レベリング剤を用いることができ、これにより滑り性を付与できる。
【0035】
ハードコート層30の厚みは、ハードコート層30に含まれる粒子の平均粒子径より小さいことが好ましく、好ましくは1〜10μm、より好ましくは5μm以下とする。ハードコート層30の厚みを10μm以下とすることにより、粒子31を前述した範囲で含んでいても、本発明の保護フィルム1を表示装置に適用したときに、表示面の視認性を低下させない。またハードコート層30の厚みを1μm以上とすることにより、防眩性、ぎらつき防止性などを保護フィルム1に付与することができる。ここでハードコート層30の厚みとは、基材の表面に塗布し、乾燥したハードコート層30のSEM(Scanning Electron Microscope(走査型電子顕微鏡))断面写真により算出した値である。また、ハードコート層30の厚みは、基材10とハードコート層30との界面から、粒子31が存在していないハードコート層30の表面(基材10とは反対側の面)までの厚みであり(
図1のLで示す矢印参照)、粒子31のハードコート層から突出した部分の高さは含まれない。
【0036】
ハードコート層30は、本発明の保護フィルム1の表面層であり、硬度が、ペンシル型引掻き硬度計を用いた引掻き硬度(エリクセン硬度)で1N以上であることが好ましく、1.5N以上であることがより好ましく、2N以上であることがさらに好ましい。1N以上であれば、比較的強い力で引掻いてもほとんど引掻き傷は発生しない。
【0037】
また、本発明の保護フィルム1は、
図3に示すように、ハードコート層30と基材10との間に、クッション層(中間層)20を備えることができる。クッション層(中間層)20は、
図2に示す実施形態(基材10の裏面に剥離性のフィルム40が積層されている場合および裏面に粘着層50が形成されている場合)でもハードコート層30と基材10との間に備えることができる(
図4参照)。
【0038】
本発明の保護フィルム1は、ハードコート層30と基材10との間にハードコート層30より比較的厚みの厚いクッション層(中間層)20を介在させることにより本発明の保護フィルム1はエリクセン硬度を高めることができる。エリクセン硬度は、ハードコート層30の厚みが厚い方が高くなるが、光学的な特性の点でハードコート層30の厚みには制限があるため、クッション層を用いる利点がある。また、基材10の厚みの観点から述べると、クッション層を用いることにより、基材10の厚さが薄い場合でもエリクセン硬度を高くすることができる利点がある。
【0039】
クッション層20は、その上に設けられるハードコート層30の硬度を補強する機能を有するとともに、ハードコート層30に対する外部からの衝撃を吸収する層として機能する。またクッション層20を設けることにより、基材10とハードコート層30に伸び率の差があっても、クッション層20がこの差を吸収し、基材10とハードコート層30が剥離するのを防止できる。
【0040】
クッション層20の材料としては、上述したハードコート層30のバインダー樹脂32の例として列挙した樹脂と同様の樹脂を用いることが好ましい。この列挙した樹脂の例において、クッション層20に用いる樹脂は、バインダー樹脂32に用いる樹脂と同種の樹脂でもよく、バインダー樹脂32に用いる樹脂と異なる樹脂を用いてもよい。
【0041】
クッション層20は、ハードコート層30に含まれる表面凹凸を付与する粒子を含まないことが好ましいが、クッション層20としての機能や用途によっては透明性を阻害しない範囲で粒子を含んでもよい。その場合、粒子の平均粒子径は、ハードコート層30の粒子の平均粒子径に比べ小さく、また含有量はハードコート層30における含有量より少ないことが好ましい。
【0042】
クッション層20の厚みは、限定されるものではないが、保護フィルム1の伸び率を高くする観点から、クッション層20の厚みは、ハードコート層30より厚いほうが好ましい。具体的な厚みとしては、数μm〜30μm程度であり、求められる硬度や保護フィルム1全体の厚み等を考慮して適宜決定される。例えば、2μm程度の厚みでも、上述したクッション層20の機能が得られるが、硬度が要求される用途ではクッション層20の厚みを比較的厚く、例えば10μm以上、好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上にする。
【0043】
次に本発明の保護フィルム1が備える光学的特性及び機械的特性について説明する。
【0044】
まず、保護フィルム1として全光線透過率が85%以上であることが好ましい。このような保護フィルム1を構成する各層、即ち基材10は、単独の全光線透過率(JISK7136)が85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。ハードコート層30は、単独の全光線透過率が85%以上であることが好ましい。保護フィルム1がクッション層を有する場合、クッション層20は、単独の全光線透過率(JISK7136)が90%以上であることが好ましい。このような光透過性を備えることにより、保護フィルム1が貼着される表示装置等の視認性を妨げることなく、耐擦傷性、防眩性、ぎらつき防止性などのハードコート層30に由来する特性を付与することができる。
【0045】
保護フィルム1の伸長前および伸長後のヘーズ(JISK7136)は好ましくは、5〜30%、より好ましくは、10〜25%とする。また、次の式により算出される保護フィルム1の伸長前および伸長後のヘーズの変化率は0〜100%が好ましい。
ヘーズ変化率(%)=(H
1−H
0)×100/H
0 (式3)
ここで、H
0は保護フィルムの伸長前のヘーズ値であり、H
1は保護フィルムの伸長後のヘーズ値である。
【0046】
本発明の保護フィルム1は、被着体である表示装置等の表示面の形状に追従するとともに、表示面が変形する範囲で弾性変形し復元するものである。
伸び率(JIS K7127)については、保護フィルム1としての伸び率が20%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましい。
【0047】
復元性の一つの指標として、所定の伸び率で伸長させた後に、自然に復元したときの変位があり、変位が少ないほど復元性が高いと言える。本発明では、復元性の評価方法として、試験片(100mm×10mm)を引張速度400mm/minで10%伸長した後に引張時間と同時間放置することにより復元した後の変位を測定する方法を採用した。ここで、変位を、(復元時の試験片の長さ−初期の試験片の長さ)×100/初期の試験片の長さと定義する。本発明の保護フィルム1は、この方法で測定した変位が2%未満である。
【0048】
このような評価方法で測定した変位が2%未満であることにより、変形によるひずみが抑制され、被着体からの剥離がなく、表面への密着性に優れた保護フィルム1が得られる。
【0049】
さらに復元性については、次の評価方法による繰り返し復元性(復元率)が90%以上であることが好ましい。この評価方法では、まず所定の長さL
0(100mm×10mm)の試験片に対し、上述した復元性の評価方法と同様の引張試験(試験片に与える伸び50%)を10回繰り返し、繰り返し後に自由に収縮させて一定時間(30分)経過後の長さL
10を測定する。ここで、試験片に与える伸び50%とは、伸ばした試験片の全体の長さが自然長(Lo)の長さの150%(1.5倍)の長さになった時の伸びをいう。復元率を100−{(L
10−L
0)×100/L
0}と定義する。
【0050】
このような復元率が90%以上であることにより、繰り返し変形されても、ひずみが抑制され、被着体からの剥離がなく、また例えばタッチパネルやキーボードのように押圧変形する用途に用いた場合にも、表面の弾性を保つ保護フィルム1が得られる。
【0051】
次に本実施形態の保護フィルム1の製造方法について説明する。
まずポリオレフィンフィルムやポリエステルフィルム(PET)等の支持体を用意し、その上に、基材の材料、例えば、芳香族ウレタンフィルムを成膜し、ウレタン樹脂からなる基材を作製する。成膜方法は、例えば、ウレタン系樹脂を含む塗布液を所定の厚みになるようにコーティングしてもよいし、別途製造或いは入手した所定の厚みのウレタン系樹脂フィルムを貼り合わせてもよい。支持体は、粘着性があるウレタン系樹脂フィルムを製造工程や使用前に取り扱いやすくするために用いられる。従って、支持体は保護フィルム1を使用する際には剥離されるものであるが、用途によっては、支持体を剥離せずに用いることもあり得る。
【0052】
次に、保護フィルム1がクッション層20を備える場合は、クッション層20を構成する塗布液を基材にコーティングし、クッション層20を形成する。クッション層20を構成する塗布液にはウレタン系樹脂の水系エマルジョンを用いることが好ましい。基材であるウレタン系樹脂は耐溶剤性が悪いため溶剤系コーティング液は適していないが、水系エマルジョンを用いることで、ウレタン系樹脂の基材が溶剤によって侵されることを防止し、基材の上にウレタン系樹脂を含む層を積層することができる。
【0053】
ここで、クッション層20を構成する塗布液は、バー塗工による塗膜凹凸(バーすじ)を整えるためにレベリング剤を含んでよい。この場合、該塗布液は水系溶剤を用いる場合は、水系レベリング剤を用いることが好ましい。また、ハードコート層30の塗工不良や、密着性不良を防ぐために、レベリング剤は、レベリング剤の添加により該塗布液の表面張力が変化しにくいものを用いることが好ましい。
【0054】
クッション層20のコーティング液を塗布、乾燥した後、クッション層20と同様のコーティング液に所定量の粒子を含むハードコート層用塗布液を塗布、乾燥し、ハードコート層30を積層する。
【0055】
保護フィルム1がクッション層を備えない場合は、基材10に、樹脂と粒子を含むハードコート層用塗布液を塗布、乾燥しハードコート層30を積層する。ハードコート層用塗布液にウレタン系樹脂の水系エマルジョンを用いる場合は、ウレタン系樹脂の基材が溶剤によって侵されることを防止して、ハードコート層を積層できる。
【0056】
なお、基材用塗布液、クッション層用塗布液、またはハードコート層用塗布液の塗布方法は、ロールコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、エアナイフコーティング法などの公知の方法を用いてよい。
【0057】
また、上述した製造方法は、一例であり、他の製造方法で製造された保護フィルム1も本発明に包含されることは言うまでもない。例えば、PET等の耐溶剤性のある支持体の上に、ハードコート層或いはクッション層用の塗布液を塗布してハードコート層を形成し、その上に、基材である芳香族ウレタンフィルムを積層して一体化する。基材の上に、別の支持体を載せた後、ハードコート層を形成した支持体を剥離する、などの方法を採用してもよい。また、ハードコート層のバインダー樹脂は、UV硬化型の樹脂を用いてもよい。この場合、塗布された塗布液は乾燥後、紫外線照射を行って、ハードコート層を積層する。
【0058】
本発明の保護フィルム1は、ウレタン系樹脂、アクリル樹脂、またはこれらのブレンド樹脂を基材として、その柔軟性を損なわない、ハードコート層あるいはハードコート層およびクッション層を設けたことにより、形状追従性および復元性に優れ、また、防眩性やぎらつき防止性などの光学特性及び耐擦傷性の光学的/機械的特性に優れており、曲面を持つ表示体や形状が変化する表示体に好適に適用できる。従来の表示面が平面である表示体にも適用できることは言うまでもない。
【実施例】
【0059】
以下、本発明の保護フィルム1の実施例を説明する。なお以下の実施例において、特に断らない限り、「%」及び「部」はいずれも重量基準である。
【0060】
[実施例1]
次に示す処方のハードコート層用塗工液を混合し撹拌した後、基材であるウレタン樹脂フィルム(商品名:Elastllan 890N、BASF社、厚み:150μm)の表面に塗布し、乾燥して、ハードコート層の乾燥厚み3μmの実施例1の保護フィルムを製造した。
【0061】
<ハードコート層用塗工液>
ウレタン樹脂 50部
(スーパーフレックス420、第一工業製薬、固形分33%)
ウレタン粒子 1.32部
(アートパール C1000、根上工業、平均粒子径3μm)
水 10部
イソプロピルアルコール(IPA) 4部
シリコン系レベリング剤 0.2部
(KP109、信越シリコーン、固形分50%)
【0062】
[実施例2]
基材であるウレタン樹脂フィルムの厚みを200μmに変更する以外は実施例1と同様にして実施例2の保護フィルムを製造した。
【0063】
[実施例3]
基材であるウレタン樹脂フィルムの厚みを300μmに変更する以外は実施例1と同様にして実施例3の保護フィルムを製造した。
【0064】
[実施例4]
基材であるウレタン樹脂フィルムの厚みを50μmに変更する以外は実施例1と同様にして実施例4の保護フィルムを製造した。
【0065】
[実施例5]
実施例1のハードコート層用塗工液のうちウレタン粒子の量を2.48部にした以外は実施例1と同様にして実施例5の保護フィルムを製造した。
【0066】
[実施例6]
実施例1のハードコート層用塗工液のうちウレタン粒子の量を4.95部にした以外は実施例1と同様に実施例6の保護フィルムを製造した。
【0067】
[実施例7]
実施例1のハードコート層用塗工液のウレタン粒子を、平均粒径3μmのウレタン粒子と平均粒径6μmのウレタン粒子(アートパールCE800、根上工業)とを8:2の割合で混合した物に変更し、その混合物の1.32部を添加した。これ以外は実施例1と同様にして実施例7の保護フィルムを製造した。
【0068】
[実施例8]
実施例7のウレタン粒子を、平均粒径3μmのウレタン粒子と平均粒径15μmのウレタン粒子とを8:2で混合した物に変更する以外は実施例7と同様に実施例8の保護フィルムを製造した。
【0069】
[実施例9]
次に示す処方のハードコート層用塗工液を用いて、基材であるウレタン樹脂フィルムの表面に塗布し、乾燥後に紫外線照射を行った以外は実施例1と同様にして、実施例9の保護フィルムを製造した。
【0070】
<ハードコート層用塗工液>
UV硬化性アクリル樹脂 16.5部
(紫光1700B、日本合成化学工業、固形分100%)
ウレタン粒子 1.32部
(アートパール C1000、根上工業、平均粒子径3μm)
メチルエチルケトン(MEK) 47部
シリコン系レベリング剤 0.2部
(KP109、信越シリコーン、固形分50%)
【0071】
[実施例10]
実施例9のハードコート層用塗工液のうち、16.5部のUV硬化性アクリル樹脂を23.5部のUV硬化性アクリル樹脂(SCP−027、日本化薬、固形分70%)に変更した以外は実施例9と同様にして、実施例10の保護フィルムを製造した。
【0072】
[実施例11]
下記処方の中間層用塗工液を混合し撹拌したあと、基材であるウレタン樹脂フィルム(商品名:Elastllan 890N、BASF社、厚み:150μm)の表面に塗布し、乾燥して、ウレタン基材上に乾燥後厚さ15μmの中間層を設けた。中間層の表面に実施例1のハードコート層を塗布し、乾燥して、ハードコート層の乾燥厚み3μmの実施例11の保護フィルムを製造した。これにより、製造された実施例11の保護フィルムは、実施例1の保護フィルムの基材とハードコート層との間に中間層を備えた。
【0073】
<中間層用塗工液>
ウレタン樹脂 10部
(スーパーフレックス420、第一工業製薬、固形分33%)
イソプロピルアルコール(IPA) 1部
水系レベリング剤 0.1部
(FS−XB2725、東レダウコーニング社、固形分10%)
【0074】
[比較例1]
実施例1の基材を125μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(コスモシャインA4300、東洋紡)にする以外は実施例1と同様にして比較例1の保護フィルムを製造した。
【0075】
各例で使用した粒子、バインダー樹脂、および基材の情報等を表1に示す。
【表1】
【0076】
上述した実施例および比較例で製造した保護フィルムについて下記の特性を評価した。
【0077】
1.復元性
復元性について万能試験機EZ−L(島津製作所)を用いて下記に説明するように二種類の評価を行った。なお、追従性があることは復元性の前提であるため、復元性の評価には追従性評価も含む。
(1)復元性の変位
各保護フィルムの試験片(100mm×10mm)を引張速度400mm/minで10%伸長した後に引張時間と同時間放置することにより復元した後の変位を測定し、次の式を用いて変位を算出した。
変位=(L
1−L
0)×100/L
0 (式1)
ここで、L
0は初期の試験片の長さであり、L
1は復元時の試験片の長さである。
算出した変位が2%未満を「○」、2%以上を「×」と評価した。
【0078】
(2)繰り返し復元性(復元率)
各保護フィルムの試験片(100mm×10mm)に対し、上述した復元性の変位の評価方法と同様の引張試験(試験片に与える伸び50%)を10回繰り返し、繰り返し後に各試験片をそのまま放置し、自由に収縮させて30分経過後の長さ(L
10)を測定した。ここで、試験片に与える伸び50%とは、伸ばした試験片の全体の長さが150mmの長さになった時の伸びをいう。測定結果および次の式を用いて復元率を算出した。
復元率=100−{(L
10−L
0)×100/L
0} (式2)
ここで、L
10は30分経過後の試験片の長さであり、L
0は初期の試験片の長さである。
復元率が90%以上を「○」、90%未満を「×」と評価した。
【0079】
2.光学特性
JISK7136測定方法に従って、ヘーズメーター(スガ試験機社、型式HGM−2K)、カラーコンピューター(スガ試験機社、型式SM−4)により、各保護フィルムのハードコート層を入光面として、全光線透過率(Tt)およびヘーズ(Haze)を測定した。
また、各保護フィルムの伸び前後のヘーズ変化率を次の式を用いて算出した。
ヘーズ変化率(%)=(H
1−H
0)×100/H
0 (式3)
ここで、H
0は保護フィルムの伸長前のヘーズであり、H
1は保護フィルムの伸長後のヘーズである。
ヘーズ変化率が100%以内を「○」、100%を超えた場合は「×」と評価した。
【0080】
3.ギラツキ防止性
サイズ:3インチ、解像度:480×854dpiのワイドVGA液晶表示装置の表示画面全面をグリーン表示した上で、表示画面上に各保護フィルムを載置し、目視で液晶表示画面の観察を行った。その結果、スパークルが全く視認できなかったものを「〇」、スパークルを視認できたものを「×」とした。
【0081】
4.耐擦傷性
エリクセンペン(ペンシル型引掻き硬度計318/318S、エリクセン社)を用いて、各保護フィルムのハードコート層面上を引っ掻き、引掻き傷が発生したときの力(N)を測定した。
【0082】
結果を表2に示す。なお、目視で防眩性について確認したところ、すべての実施例および比較例の保護フィルムは良好な防眩性を有していた。
【表2】
【0083】
追従性および復元性については、比較例1と実施例1から実施例11とを比較してわかるように、ウレタン基材上に保護層を有する保護フィルムは優れた追従性および復元性を有した。
【0084】
耐擦傷性については、実施例1から実施例4の結果より、基材の厚みが大きくなるにしたがって、エリクセン硬度も大きくなり、耐擦傷性が向上した。基材の厚みが150μm以上(実施例1〜3、5〜11)を有する保護フィルムは、耐擦傷性を満足するエリクセン硬度を有していた。実施例1および実施例1と同じ基材の厚みを有する実施例11の結果からわかるように、中間層を備えることで耐擦傷性が向上した。中間層(厚み15μm)を備えた基材の厚み150μmである保護フィルム(実施例11)のエリクセン硬度は、中間層の無い基材の厚みが300μmの保護フィルム(実施例3)の硬度と同等であった。したがって、中間層を備えることにより、基材の厚みが薄くても高い耐擦傷性が得られることがわかる。また、実施例1、実施例9、および実施例10の結果から、バインダー樹脂がUV硬化性アクリル樹脂を含む保護フィルムは、熱硬化性ウレタン樹脂を含む保護フィルムの同程度以上の耐擦傷性を有することがわかる。
【0085】
光学的性については、実施例9以外の保護フィルムはヘーズ変化率が100%以内であった。実施例9以外の樹脂の伸び率(JIS K7127)を測定すると10%以上であった。このことから、ハードコート層を構成する樹脂の伸び率が10%以上あれば伸び前後のヘーズの上昇を妨げられると考えられた。
【0086】
また、実施例1から実施例7および実施例9から実施例11の保護フィルムはギラツキ防止効果が良好であった。実施例8の保護フィルムは、ギラツキを充分に防止ができなかったが、ハードコート層に平均粒径の大きい粒子を含むため、耐擦傷性が向上した(実施例1、実施例7、および実施例8参照)。