【課題】比較的低い温度帯域(例えば50℃程度)でも十分な発電量が確保できる新しい発電素子を自動車のエンジンルーム内に設置して、エンジンルーム内において発生した廃熱を電力として有効活用したエンジンモニタリング装置を提供する。
【解決手段】エンジンのモニタリングセンサ32から出力されるモニタリング信号を入力するモニタリング信号入力部21と、熱エネルギーを受けて発電を行う発電素子12と、発電素子において発電された電力を蓄電する蓄電池14とを備え、モニタリング信号入力部が蓄電池からの電力で機能する、エンジンモニタリング装置10に関する。
エンジンのモニタリングセンサから出力されるモニタリング信号を入力するモニタリング信号入力部と、熱エネルギーを受けて発電を行う発電素子と、発電素子において発電された電力を蓄電する蓄電池とを備え、モニタリング信号入力部が蓄電池からの電力で機能する、エンジンモニタリング装置。
モニタリング信号をもとにエンジンを電子的に制御するエンジン電子制御ユニットを備え、エンジン電子制御ユニットがモニタリング信号入力部を有し、エンジン電子制御ユニットが蓄電池からの電力で機能する、請求項1に記載のエンジンモニタリング装置。
モニタリング信号をモニタリング情報として表示する表示装置にモニタリング信号を無線送信する無線送信機を備え、無線送信機が蓄電池からの電力で機能し、無線送信機によるモニタリング信号の送信動作が、連続的に、または所定時間毎に実行される構成であることを特徴とする、請求項1または2に記載のエンジンモニタリング装置。
モニタリング信号入力部および/またはエンジン電子制御ユニットが遮熱部材の内側に封止され、発電素子が遮熱部材の外側に設置された、請求項1〜4のいずれかに記載のエンジンモニタリング装置。
【背景技術】
【0002】
近年、エンジン電子制御ユニットに接続するワイヤーハーネスなどを省略する観点から、エンジン電子制御ユニットをエンジンと一体化させるなどして、エンジンルームの中に設置する試みが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
エンジン電子制御ユニットには、エンジンのモニタリングセンサから出力されるモニタリング信号を入力するモニタリング信号入力部が備えられているが、このモニタリング信号入力部等によって構成されるエンジンモニタリング装置は、車載用バッテリーからの電力で機能する構成のものである。
【0004】
一方、自動車などのエンジンルーム内においては、エンジンを駆動させることで廃熱が発生するが、この廃熱における熱エネルギーは有効活用されずに放熱されて失われていた。
【0005】
熱エネルギーを電力として有効活用する方法には、熱電発電素子や温度差発電素子等の発電素子を用いる方法が挙げられるが、これらの発電素子には種々の問題があった。
【0006】
熱電発電素子は、熱を電力に変換する熱電素子の一種であり、2種類の異なる金属又は半導体を接合して、両端に温度差を生じさせると起電力が生じるゼーベック効果を利用するものである。しかし、一般的な熱電発電素子は、発電のために100℃以上の高温の熱源を必要とするものが多く、比較的低温の熱源を利用した発電には適していないという問題があった。
【0007】
温度差発電素子は、2種類の異なった半導体を用いた熱電変換素子(ペルチェ素子)を用いて、起電力を発生させるものである。しかし、温度差発電素子は、温度差を維持するための冷却機構が必要となるため、発電システムの構造が複雑化したり、設置コストが高くなってしまったりする問題があった。
【0008】
以上のように、従来の発電素子では、自動車などのエンジンルーム内において、エンジンが駆動することによって生じる廃熱を有効活用することができないという問題があった。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明のエンジンモニタリング装置の実施形態について、図面を用いて説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0020】
図1には、本発明の実施形態に係るエンジンモニタリング装置10を示している。このエンジンモニタリング装置10は、自動車やバイクなど、エンジンによって駆動するものに広く適用できる。
【0021】
本発明のエンジンモニタリング装置10を設置する場所は、特に限定されないが、エンジンルーム内など、エンジン31の近傍に設置することができる。
【0022】
本発明の実施形態に係るエンジンモニタリング装置10は、例えば、遮熱部材11、発電素子12、充電回路13、蓄電池14、無線送信機15、エンジン電子制御ユニット20を備えて構成することができる。
【0023】
遮熱部材11は、充電回路13、蓄電池14、無線送信機15、エンジン電子制御ユニット20を内包する構造となっている。
【0024】
遮熱部材11には、上述のような電子機器類が内蔵されているため、電子機器類がエンジンルーム内の熱によって故障したり劣化したりしないようにするための遮熱性能を有している。遮熱部材の種類は、特に限定されず、公知のものを用いることができる。
【0025】
本発明に用いる発電素子12は、熱エネルギーを受けて発電を行うことができる発電素子であり、遮熱部材11の外面を略被覆するようにして設置することができる。本実施形態のエンジンモニタリング装置10の遮熱部材11においては、エンジン31に最も近い面に発電素子12を設置した態様を示している。
【0026】
発電素子12は、遮熱部材11の外面または内面のいずれに設置してもよい。発電素子12を遮熱部材11の外面に設置する場合は、発電素子12に与えられる熱エネルギーが、遮熱部材11によって遮られることがないため、発電素子12における発電量が向上する。発電素子12を遮熱部材11の内面に設置する場合は、発電素子12と充電回路13を結ぶ配線を通す孔を遮熱部材11に設ける必要がなくなり、全ての配線を遮熱部材11の内部に収めることができる。また、発電素子12を遮熱部材11の内面に設置する場合は、エンジン電子制御ユニット20自体が発生する熱も発電に利用することができる。
【0027】
また、エンジンモニタリング装置10を、発電素子12において発電された電力によって機能させる構成とすることにより、車両用バッテリーとエンジンモニタリング装置10を接続するためのワイヤーハーネスなどが不要となるため、ワイヤーハーネスの断線などによる故障リスクを軽減したり、ワイヤーハーネスの設置コストを低減したり、ワイヤーハーネスを設置するためのスペースを削減したりすることもできるようになる。
【0028】
発電素子12の発電に用いる熱エネルギーとしては、エンジン31において生じる廃熱が利用される。そのため、発電素子12において発電を行うための熱エネルギーが、車両走行中に持続的に供給されることにより、エンジンモニタリング装置10が持続的に機能する構成となっている。
【0029】
本発明に用いる発電素子12は、熱エネルギーを受けて発電を行うことができるものであるが、得られる熱エネルギー量に応じて発電量も異なってくる。そのため、蓄電池14に一定の電力を供給するために充電回路13を設けることが好ましい。
【0030】
充電回路21としては、DC/DCコンバータなどを用いることができる。
【0031】
蓄電池14は、充電回路13において変圧された電力を蓄電する。蓄電池14において蓄電された電力は、エンジン電子制御ユニット20に供給され、必要に応じて無線送信機15にも供給される。
【0032】
蓄電池14には、エンジンモニタリング装置10を設置する際に、一定量以上の電力が蓄電されていることが好ましく、蓄電池14の消費電力分を発電素子12において発電した電力で補填する態様とすることが好ましい。
【0033】
エンジン電子制御ユニット20は、モニタリング信号入力部21、コントロール信号出力部22、CPU(Central Processing Unit)23、ROM(Read Only Memory)24、RAM(Random Access Memory)25、バス26などによって、エンジン31を電子的に制御するためのユニットを構成している。
【0034】
エンジン電子制御ユニット20は、エンジン31をモニタリングするために、エンジン31に接続された各種モニタリングセンサ32から出力されるモニタリング信号をモニタリング信号入力部21において入力する。そして、エンジン31をコントロールするために、コントロール信号出力部22から、エンジン31に接続された各種コントロール機構33に、コントロール信号を出力する。以上のような仕組みによって、エンジン電子制御ユニット20は、エンジン31を電子的に制御する。
【0035】
エンジンルームには、エンジン31をモニタリングするための各種モニタリングセンサ32として、エンジン回転数センサ、エアフロメータ、吸気温センサ、スロットル開度センサ、冷却水温センサ、アクセル開度センサ、および燃料温度センサなどが備えられている。
【0036】
これらの各種モニタリングセンサ32は、各種モニタリングセンサ32における各種モニタリング結果を表す各種モニタリング信号を、エンジン電子制御ユニット20のモニタリング信号入力部21にそれぞれ出力する。
【0037】
なお、エンジンモニタリング装置10がエンジン31の近傍に位置しており、エンジン電子制御ユニット20がエンジン31の近傍に位置していない設置態様、例えば、エンジンモニタリング装置10をエンジンルーム内に設置し、エンジン電子制御ユニット20を助手席や運転席などの車室内に設置する態様とすることもできる。
【0038】
上記のように、モニタリング信号入力部21とエンジン電子制御ユニット20を別々に設置する場合は、エンジンルーム内のモニタリング信号入力部21を車室内のエンジン電子制御ユニット20に電力配線で接続する態様としてもよい。
【0039】
エンジン回転数センサは、エンジンのクランクシャフトの回転数を検出できる位置に配置され、エンジン回転数に係るモニタリング信号を、エンジン電子制御ユニット20のモニタリング信号入力部21に出力する。
【0040】
エアフロメータは、スロットルバルブよりも吸気上流側に配置され、吸入空気量に係るモニタリング信号を、エンジン電子制御ユニット20のモニタリング信号入力部21に出力する。
【0041】
吸気温センサは、吸気マニホールドに配置され、吸気温に係るモニタリング信号を、エンジン電子制御ユニット20のモニタリング信号入力部21に出力する。
【0042】
スロットル開度センサは、スロットルバルブの開度を検出できる位置に配置され、スロットル開度に係るモニタリング信号を、エンジン電子制御ユニット20のモニタリング信号入力部21に出力する。
【0043】
冷却水温センサは、エンジン31のシリンダブロックに形成されたウォータージャケットに配置され、エンジン31の冷却水温に係るモニタリング信号を、エンジン電子制御ユニット20のモニタリング信号入力部21に出力する。
【0044】
アクセル開度センサは、アクセルペダルの踏み込み量を検出できる位置に配置され、アクセル開度に係るモニタリング信号を、エンジン電子制御ユニット20のモニタリング信号入力部21に出力する。
【0045】
燃料温度センサは、燃料通路内の温度を検出できる位置に配置され、燃料温度に係るモニタリング信号を、エンジン電子制御ユニット20のモニタリング信号入力部21に出力する。
【0046】
エンジン電子制御ユニット20において、モニタリング信号入力部21およびコントロール信号出力部22は、バス26によって、CPU23、ROM24、RAM25と接続されている。
【0047】
ROM24は、エンジン31のコントロールを実行するためのプログラムを含む各種プログラムや、これらの各種プログラムを実行する際に参照される各種参照情報などを記憶している。
【0048】
CPU23は、ROM24に記憶された各種プログラムや各種参照情報、各種モニタリングセンサ32から入力されたモニタリング信号に基づいて、各種の演算処理を実行する。
【0049】
より具体的には、エンジン回転数と吸入空気量とに基づき、燃料噴射量や点火時期に関する基本制御量を算出し、その基本制御量を、吸気温、冷却水温、空燃比、ノッキング発生頻度などに基づいて補正することで、エンジン31における最適な燃料噴射量や点火時期を決定する。そして、最適な燃料噴射量や点火時期を実現するために、インジェクタからの燃料噴射量や点火プラグによる点火時期をコントロールするための情報を、コントロール信号としてコントロール信号出力部22に出力する。
【0050】
RAM25は、CPU23による演算結果や、各種モニタリングセンサ32から入力されたモニタリング信号を一時的に記憶する。
【0051】
コントロール信号出力部22は、インジェクタや点火プラグなどの各種コントロール機構33に接続されており、各種コントロール機構33によって、エンジン31の運転状態がコントロールされる。
【0052】
インジェクタは、液体燃料を吸入空気に霧状に噴射する装置であり、コントロール信号出力部33から出力されたコントロール信号に基づいて、空気に対して正確な量の燃料を噴射させることにより、最適な空燃比の混合気を生成する。
【0053】
点火プラグは、混合気に点火して燃焼サイクルのきっかけを作る装置であり、コントロール信号出力部33から出力されたコントロール信号に基づいて、点火のタイミングを最適化することにより、最適な燃焼サイクルを形成する。
【0054】
上記のように、コントロール信号出力部33から出力されたコントロール信号に基づいて、燃料噴射量や点火時期などがコントロールされる。
【0055】
エンジン電子制御ユニット20のモニタリング信号入力部21に入力されたモニタリング信号は、無線送信機15にも出力される。
【0056】
無線送信機15は、モニタリング信号入力部21から入力されたモニタリング信号を、表示装置40に無線送信する。なお、無線送信機15は、モニタリング信号入力部21に接続させずに、コントロール信号出力部22やバス26に接続させる態様としてもよい。
【0057】
また、無線送信機15におけるモニタリング信号の送信動作は、必要に応じて連続的に、または所定時間毎に間欠的に(例えば、数分〜数時間に1回程度)、実行するような構成とすることができる。すなわち、エンジン31のモニタリング形態を、連続的なモニタリング形態または間欠的なモニタリング形態に任意に設定することができる。
【0058】
モニタリング信号の送信動作を連続的に実行することで、エンジン31の変化状態を継続的にモニタリングすることができる。また、モニタリング信号の送信動作を所定時間毎に実行すれば、送信動作を連続的に実行する場合に比べて、送信動作に要する消費電力を抑えることができ、蓄電池14の電力消費等を軽減することができる。
【0059】
上記以外に蓄電池の電力消費等を軽減させる方法としては、モニタリング信号を、無線送信によって能動的に発信せずに、RF−ID等によって受動的に外部から取り出す方法が挙げられる。この場合は、無線送信機15に代えてFlashメモリ等の不揮発メモリを設ける等した上で、モニタリング信号を一旦不揮発メモリに蓄えておけば、外部から電波で不揮発メモリにアクセスしてモニタリング信号を取り出すことができるようになる。
【0060】
表示装置40は、無線受信機41において受信したモニタリング信号を、表示画面42にモニタリング情報として表示することにより、ドライバー等がモニタリング情報を認識することができるようになる。
【0061】
表示装置40としては、車両に搭載されたカーナビゲーションシステムやドライバーの有するスマートフォンなどが挙げられる。また、ドライバー以外の第三者にエンジン31の異常を認識させるためには、車両管理会社の管理画面などを表示装置40とする態様が挙げられる。
【0062】
表示画面42に表示するモニタリング情報は、特に限定されないが、エンジン回転数、吸入空気量、吸気温、スロットル開度、冷却水温、アクセル開度、または燃料温度などが挙げられる。表示画面42にモニタリング情報を表示する態様は、特に限定されないが、メータ、ゲージ、または数値などの視認性が良好な態様が挙げられる。
【0063】
なお、本発明のエンジンモニタリング装置10に用いる発電素子として、例えば、温度差によって発電を行う温度差発電素子を用いようとすると、温度差を設けるために温度差発電素子を冷却するための機構が必要となるため、現実的ではない。
【0064】
また、本発明で用いている発電素子は、熱エネルギーを受けて発電を行う発電素子であるが、熱エネルギーを受けて発電を行う発電素子であっても、従来の発電素子では、発電のために100℃以上の高温を必要とすることが多かったため、エンジンルーム内の熱源を用いて発電を行い、エンジンモニタリング装置10に電力を供給するという構成をとることはできなかった。一方、本発明のエンジンモニタリング装置10は、以下のような構成の発電素子によって実現できるものとなっている。
【0065】
本発明のエンジンモニタリング装置に用いる発電素子6は、
図2または
図3に示すように、正極1と負極5との間に、p型半導体と、n型半導体とを有するものであれば、特に限定されず、正極1と負極5との間に、さらに、強誘電体を有するものであってもよく、強誘電体を有さないものであってもよい。
【0066】
発電素子6は、例えば、
図2に示すように、正極1と、p型半導体層2と、強誘電体層3と、n型半導体層4と、負極5とがその順で配置された構造形態を有している。また、
図3に示すように、p型半導体層2と、強誘電体層3と、n型半導体層4とは、接触界面を増やすために混合したヘテロジャンクション構造をとっていてもよい。こうした発電素子6は、従来の発電素子とは異なる新しい発電素子であり、高い電流を発生する発電現象を起こす。特に恒温槽中で常温(例えば25℃)から昇温することにより実現できる。
【0067】
正極1及び負極5は、導電性材料であり、正極1の仕事関数が負極5の仕事関数と同じか高い材料を用いる。正極1の仕事関数が負極5の仕事関数より高い方が望ましい。正極1としては、銅、銅合金、SUS430等のステンレス鋼、錫めっき銅、銀、白金、金等を一例として挙げることができるが、これらの材料は、仕事関数を考慮して決定することができ、列記した正極材料に限定されない。負極5は、正極1とは異なる材料であればよく、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金、Mg−Al等のマグネシウム合金等の金属材料や、インジウム錫酸化物(ITO)等の導電性酸化物材料等を挙げることができるが、これらの材料は、仕事関数を考慮して決定することができ、列記した負極材料に限定されない。
【0068】
正極1及び負極5の形状も特に限定されず、発電素子6の形状に応じた形状に加工することができる。例えば、発電素子6が、平面配置型用の発電素子6である場合には、正極1と負極5とを、p型半導体層2、強誘電体層3及びn型半導体層4を挟んで対向配置して構成できる。なお、この平面配置型の発電素子6は、正極1と負極5とを順次直列接続して直列配置型の発電素子複合体にしたり、正極1と負極5とを順次並列接続して並列配置型の発電素子複合体にしたりすることができる。また、発電素子6を、乾電池型用の発電素子としてもよく、その場合は、中心を負極棒とし、周りを正極管として構成できる。
【0069】
p型半導体層2は、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホン酸)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(ビニルスルホン酸)、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(p−フェニレン)、ポリフルオレン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリチエニレンビニレン、グラフェン、CuAlO
2、CuGaO
2、LiNiO
2から選ばれるp型半導性高分子であることが好ましい。なお、ホール伝導が観測されれば、列記したp型半導体材料に限定されない。
【0070】
p型半導体層2の厚さは、発電素子6の作製方法によって異なり、特に限定されないが、例えば10μm以上、1000μm以下の範囲内であることが好ましい。なお、発電素子6中でのp型半導体層2の境界は、そのp型半導体特性を奏する限り、
図2に示すようにはっきり区分けされていてもよいし、
図3に示すように、p型半導体層2が強誘電体層3とn型半導体層4ともに、接触界面を増やすために混合したヘテロジャンクション構造をとっていてもよい。したがって、上記の厚さ範囲も、p型半導体層2の作用を奏する範囲での厚さとして表すことができる。
【0071】
強誘電体層3は、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛、チタン酸ビスマスランタン、チタン酸カドミウム、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、ビスマスフェライト、及びリチウムドープ酸化亜鉛から選ばれるいずれかの粒子を含むことが好ましい。なお、強誘電性が観測されれば、列記した強誘電性材料に限定されない。強誘電体層3は、材料の1種を単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。この強誘電体層3は、強誘電性を有する層であり、強誘電性を有するので発電をし、また、その強誘電体層3がさらにn型半導性を有する場合には電子(キャリア)の移動も容易であり、発電素子の構成要素として極めて望ましい。
【0072】
強誘電体粒子の形状や粒径は特に限定されないが、全体的な形状が球形状又は略球形状、楕円形状又は略楕円形状であればよく、その表面がなめらかでも凹凸であってもよい。強誘電体粒子の平均粒径は、入手の容易さや素子作製上の問題がない範囲で各種の大きさのものを選択することができるが、平均粒径の大きいものほど誘電率も高いので好ましく用いることができる。また、強誘電体粒子の平均粒径を所望の値に設定することにより、表面積をコントロールできるという利点がある。強誘電体粒子の平均粒径は、原料の段階では走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定することができ、強誘電体層3を構成した後も走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定することができる。
【0073】
強誘電体層3は、強誘電体粒子で構成されているが、本発明の効果を阻害しない範囲で、強誘電性を有する他の無機物を含んでいてもよい。また、本発明の効果を阻害しない範囲で、導電性やn型半導性を有する他の無機物を含んでいてもよい。
【0074】
n型半導体層4は、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ、フッ素ドープ酸化スズ、ガリウムドープ酸化亜鉛、アルミドープ酸化亜鉛、ニオブドープチタン酸ストロンチウム、及び酸化カルシウムドープ酸化ジルコニウムから選ばれるいずれかの粒子を含むことが好ましい。なお、電子伝導が観測されれば、列記したn型半導体材料に限定されない。この粒子は、n型半導体粒子であり、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0075】
n型半導体粒子の粒子形状や粒径は特に限定されないが、全体的な形状が球形状又は略球形状、楕円形状又は略楕円形状であればよく、その表面がなめらかでも凹凸であってもよい。n型半導体粒子の平均粒径は、入手の容易さや素子作製上の問題がない範囲で各種の大きさのものを選択することができるが、平均粒径の大きいものほど導電率が高いので好ましく用いることができる。また、n型半導体粒子の平均粒径を所望の値に設定することにより、表面積をコントロールできるという利点がある。n型半導体粒子の平均粒径は、原料の段階では走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定することができ、n型半導体層4を構成した後も走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定することができる。
【0076】
n型半導体層4は、n型半導体粒子で構成されているが、本発明の効果を阻害しない範囲で、n型になり得る他の無機物を含んでいてもよい。
【0077】
n型半導体層4の抵抗は特に限定されないが、例えば2Ω以上、7Ω以下程度の範囲内が好ましい。n型半導体層4をこうした範囲の抵抗にすることによって、内部インピーダンスを下げて電流を取り出しやすくするという利点がある。n型半導体層4の抵抗は、LCRハイテスタによって測定することができる。n型半導体層4の抵抗が2kΩ未満の場合、より具体的には例えば1kΩ未満や100kΩ未満の場合は、そのn型半導体層4上に設けられる導電性のp型半導体層2がn型半導体層4中に浸入してショート状態になってしまい、発電素子として作動しないことがある。
【0078】
発電素子6は、上記構成を備えるものであれば、各種の方法で作製することができる。
図2に示す発電素子6は、正極1と、p型半導体層2と、強誘電体層3と、n型半導体層4と、負極5とがその順で配置された構造形態であり、
図3に示す発電素子6は、正極1と負極5とが、p型半導体層2と強誘電体層3とn型半導体層4とが混合したヘテロジャンクション構造である。
【0079】
この発電素子6の作製は特に限定されないが、正極1上に、n型半導体層4、強誘電体層3、p型半導体層2を順に形成する。p型半導体層2は、p型半導性高分子を例えば滴下又は塗布して形成することができる。強誘電体層3とn型半導体層4は、それぞれの粒子を例えば加圧成形して形成することができる。
【0080】
こうして作製された発電素子部材は、平面的な直列構造又は並列構造になるように接続することができる。発電素子部材を直列接続して発電素子複合体を構成する場合、隣り合う発電素子部材の正極1と負極5とを、カシメ、圧接、ロウ付け等で接続して直列構造にすることができる。また、発電素子部材を並列接続して発電素子複合体を構成する場合、長く延びる電極に、発電素子部材の正極1と負極5をそれぞれ、カシメ、圧接、ロウ付け等で接続して並列構造にすることができる。
【0081】
このような発電素子複合体は、複数の発電素子部材を接続して1次元的(直列配置)又は二次元的(並列配置)に作製することができるが、厚さ方向に積層して三次元的な立体構造にすることもできる。
【0082】
なお、乾電池型用の発電素子としてもよく、その場合、底のある正極管の中に、n型半導体粒子や強誘電体粒子の投入と、p型半導性高分子材料の滴下又は塗布とを繰り返し、それらを層状に形成することができる。なお、負極棒は、n型半導体層4と強誘電体層3とp型半導体層2との層状構造の形成前又は形成後に、正極管の中央に、その正極管に接触しないようにして挿入すればよい。
【0083】
本発明に用いる発電素子では、例えば、正極1は、厚さ0.2mm、縦10mm、横10mmの平板状の銅部材とし、負極5は、厚さ0.2mm、縦10mm、横10mmの平板状のアルミニウム部材とすることができる。負極5の上に、ニオブ酸リチウム粒子からなる厚さ2mmのn型半導体層4を形成し、この強誘電性を有するn型半導体層4の上から、液状のp型半導性高分子であるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホナート))を滴下し、n型半導体層4上にp型半導体層2を設け、その上から負極5を載せて発電素子6を作製することができる。以上のようにして、電極間抵抗が25kΩとなる発電素子6を得ることができる。
【0084】
発電素子6を恒温糟に入れ、負荷抵抗10Ωを接続し、恒温層中の温度を変化させながら、発電素子6の性能を評価すると、表1および表2に示すような結果を得ることができる。
【0087】
本発明に用いる発電素子としては、高い電流を発生する発電現象を起こすことができ、特に恒温槽中で常温(例えば25℃)から昇温した場合であっても発電することが可能な発電素子を用いることができる。
【0088】
発電素子は、p型半導体と強誘電体とn型半導体とを混合した粉末を、銅などの正極板とアルミニウムなどの負極板とでラミネートして封止したバルク型の態様として、エンジンモニタリング装置に設置することができる。また、p型半導体と強誘電体とn型半導体とを混合してペースト状にしたものを、銅などの正極板とアルミニウムなどの負極板とでラミネートして封止したフィルム型の態様として、エンジンモニタリング装置に設置することもできる。
【0089】
上記のようなバルク型またはフィルム型の発電素子は、数mm角のものを直列または並列に連結して用いてもよいし、数cm角のものを直列または並列に連結して用いてもよい。また、本発明に用いる発電素子は、任意の形状に成形できるため、発電素子を設置する基材の表面は、平坦である必要はなく、曲面状であってもよいし、凹凸を有するものであってもよい。