【実施例】
【0015】
(装飾部材10について)
先ず、実施例の製造方法により製造された装飾部材10について、
図1〜
図3を引用して説明する。実施例の装飾部材10は、表側に意匠面14が設けられた所要形状の基材12と、該意匠面14を被覆するように形成された装飾部20とを備えている。装飾部20は、緯糸である第1カーボン繊維54および経糸である第2カーボン繊維52を交互に織った平織りの織組織をなすカーボンクロス50(
図8参照)に近似した織組織状模様に形成されたものである。
【0016】
(基材12について)
前記基材12は、合成樹脂材料からインジェクション成形されて、所定の外縁形状および外面形状をなすプレート状の部材である。そして、
図1および
図3に示すように、基材12の表側が意匠面14となっていると共に、該基材12の裏側が取付面16となっている。基材12の取付面16には、
図7に示す車両内装部材60,62等に取り付けるための固定部18が形成されている。これにより、基材12は、固定部18を車両内装部材60等に固定することで、意匠面14が表側に向いた姿勢で該車両内装部材60に取り付けられる。
【0017】
(装飾部20について)
前記装飾部20は、前記意匠面14に積層状態に形成された複数(実施例では2つ)の着色層(第2着色層22、第1着色層24)よりなる。すなわち装飾部20は、意匠面14に密着した状態で形成された第2着色層22と、該第2着色層22に密着した状態で積層された第1着色層24とにより形成されている。そして装飾部20は、所定の配列で交互に露出した第1着色層24および第2着色層22と、前記基材12の意匠面14において両着色層24,22に貫通した凹穴26を介して露出した部分とから構成されている。すなわち装飾部20は、表層に位置する第1着色層24を該第1着色層24の厚み以上の深さで切除することで、当該表層の第1着色層24および下層の第2着色層22の夫々を、基材12の意匠面14に沿う交差する2方向で交互に露出させて、一方向に列をなす第1着色層(一方の着色層)24および他方向に列をなす第2着色層(他方の着色層)22の夫々により緯糸状の模様および経糸状の模様を形成したものである。換言すると、第1着色層24および第2着色層22は、所謂碁盤目状(チェック柄状)に配列されている。なお、以降の説明では、
図8に示すカーボンクロス50における第1カーボン繊維54が延在する方向を「第1の方向」、この第1の方向と直交する方向で第2カーボン繊維52が延在する方向を「第2の方向」と指称する。
【0018】
前記第1着色層24からなる各配列単位は、第1の方向へ延在する前記第1カーボン繊維54において、カーボンクロス50の表側へ露出した繊維状の模様を表現するものである。また、前記第2着色層22からなる各配列単位は、第2の方向へ延在する前記第2カーボン繊維52において、カーボンクロス50の表側へ露出した繊維状の模様を表現するものである。そして、第1着色層24からなる矩形状の配列単位および第2着色層22からなる矩形状の配列単位が碁盤目状に配列されることで、装飾部20は、第1の方向に延在する複数の第1カーボン繊維54および第2の方向に延在する複数の第2カーボン繊維52が交互に織られた平織りの織組織に近似した織組織状模様に形成している。すなわち、第1着色層24からなる各配列単位および第2着色層22からなる各配設単位が、第1の方向および第2の方向において交互にかつ直列に配列されていることで、第1カーボン繊維54および第2カーボン繊維52を交互に組み合わせた平織りのカーボンクロス50の織組織に近似した織組織状模様が形成されている。なお、第2着色層22は、第1着色層24よりも該第1着色層24の厚み分だけ奥まって位置していることで、第1着色層24からなる各配列単位と第2着色層22からなる各配列単位が段差状に形成されており、これによりカーボンクロス50の表面の凹凸状態が表現されている。
【0019】
また、
図8に示すように、前記第1カーボン繊維54および第2カーボン繊維52を平織りした織組織のカーボンクロス50は、第2の方向において隣り合う第1カーボン繊維54,54間に適宜の隙間が形成されると共に、第1の方向において隣り合う第2カーボン繊維52,52間に適宜の隙間が形成される。このため、平織りのカーボンクロス50は、隣接する第1カーボン繊維54,54および隣接する第2カーボン繊維52,52の4つのカーボン繊維により囲まれた隙間56が、該カーボンクロス50の表裏に貫通した状態となっている。従って、前記装飾部20は、第2の方向で隣り合う第1着色層24,24の間でかつ第1の方向で隣り合う第2着色層22,22の間となる位置に、基材12の意匠面14が露出する深さで各着色層24,22を切除することで、前記カーボンクロス50の隙間56をなす凹穴26を形成してある。
【0020】
(第1着色層24および第2着色層22のサイズについて)
図2に示すように、第1着色層24からなる矩形状の各配列単位は、第1の方向の幅h1が、矩形状の第2着色層22における第1の方向の幅H1より大きい。すなわち、第1着色層24における第1の方向の幅h1は、第2着色層22からなる矩形状の各配列単位における第1の方向の幅H1よりも、前記凹穴26における第1の方向の幅の2倍に相当する分だけ大きい。また、第2着色層22からなる矩形状の各配列単位は、第2の方向の幅H2が、第1着色層24からなる矩形状の各配列単位における第2の方向の幅h2より大きい。すなわち、第2着色層22からなる各配列単位における第2の方向の幅H2は、第1着色層24からなる各配列単位における第2の方向の幅h2よりも、前記凹穴26における第2の方向の幅の2倍に相当する分だけ大きい。
【0021】
従って、
図2から明らかなように、第1着色層24からなる配列単位は、第1の方向における両端部側が、第2の方向において隣接する第1着色層24からなる配列単位の第1の方向における一方の端部側と、第1の方向において重なっている。また、第2の方向において互いに隣接する第1着色層24からなる配列単位は、前記凹穴26の開口幅分だけ第2の方向へ離間している。同様に、第2着色層22からなる配列単位は、第2の方向における両端部側が、第1の方向において隣接する第2着色層22からなる配列単位の第2の方向における一方の端部側と、第2の方向において重なっている。また、第1の方向において互いに隣接する第2着色層22からなる配列単位は、前記凹穴26の開口幅分だけ第1の方向へ離間している。
【0022】
(繊維模様について)
図2に示すように、第1着色層24からなる矩形状の各配列単位の表面には、第1の方向へ延在する複数の第1溝30が、該第1着色層24の厚みの範囲で、第2の方向へ並んで複数形成されている。各第1溝30は、第1の方向へ延在する第1カーボン繊維54の外表面模様を表現したものである。同様に、第2着色層22からなる矩形状の各配列単位の表面には、第2の方向へ延在する複数の第2溝28が、該第2着色層22の厚みの範囲で、第1の方向へ並んで複数形成されている。各第2溝28は、第2の方向へ延在する第2カーボン繊維52の外表面模様を表現したものである。
【0023】
(曲面部32,34について)
図1、
図3(a)および
図3(b)に示すように、第1着色層24からなる矩形状の各配列単位の表面には、第1の方向の両端部近傍に、端部に近づくにつれて表面から基材12側へ湾曲した第1曲面部34,34が、該第1着色層24の厚みの範囲で形成されている。これら第1曲面部34,34は、第1の方向へ延在する第1カーボン繊維54が第2の方向へ延在する第2カーボン繊維52の裏面側へ入り込んだ状態を表現したものである。これにより、第1の方向へ直列に整列した第1着色層24からなる各配列単位は、第1の方向へ延在する第1カーボン繊維54が、第2の方向へ延在すると共に第1の方向に整列した各第2カーボン繊維52に交互に編み込まれていることを表現している。また、
図3(c)に示すように、第2着色層22からなる矩形状の各配列単位の表面には、第2の方向の両端部近傍に、端部に近づくにつれて表面から基材12側へ湾曲した第2曲面部32,32が、該第2着色層22の厚みの範囲で形成されている。これら第2曲面部32,32は、第2の方向へ延在する第2カーボン繊維52が第1の方向へ延在する第1カーボン繊維54の裏面側へ入り込んだ状態を表現したものである。これにより、第2の方向へ直列に整列した第2着色層22からなる各配列単位は、第2の方向へ延在する第2カーボン繊維52が、第1の方向へ延在すると共に第2の方向に整列した各第1カーボン繊維54に交互に編み込まれていることを表現している。
【0024】
(装飾部20の色について)
そして、前記装飾部20は、前記基材12の色彩(基材12の意匠面14の色)と、第1着色層24の色彩と、第2着色層22の色彩とが夫々異なっており、これにより該装飾部20は3種類に色彩から構成されている。ここで、実施例の装飾部20は、第1カーボン繊維54および第2カーボン繊維52を平織りした前記織組織のカーボンクロス50に近似させるため、一例として、前記第1カーボン繊維54を表現する第1着色層24を黒系統の色とし、第2カーボン繊維52を表現する第2着色層22を茶系統の色とし、前記隙間56を表現する前記基材12をグレー系統の色としている。但し、前記基材12、第1着色層24および第2着色層22の各色彩は、これに限定されるものではなく、様々な色彩の組み合わせとすることも可能である。
【0025】
(クリア層36について)
前記装飾部20には、
図3に示すように、前記第1着色層24、第2着色層22、凹穴26を介して露出した基材12の意匠面14の夫々を全体的に覆うクリア層36が設けられている。このクリア層36は、透明または半透明な合成樹脂を塗布して形成されて透光性を有しており、前記第1着色層24、第2着色層22、前記凹穴26、該凹穴26を介して露出した基材12の意匠面14の夫々を透視可能である。また、クリア層36は、耐摩耗性や耐スクラッチ性を備えてキズが付き難い強度を備えており、前記第1着色層24、第2着色層22および凹穴26を保護する。そして、クリア層36は、全体の厚みが略均一に形成されており、第2着色層22を被覆する部分が、第1着色層24を被覆する部分よりも凹んでいて、外表面が凹凸状に形成されている。これにより、装飾部20は、クリア層36が設けられていても、カーボンクロス50の織組織における凹凸状態が表現されている。
【0026】
(装飾部材10の製造方法について)
次に、前述のように構成した装飾部材10の製造方法について、
図4〜
図6を引用して説明する。なお、前記基材12は、前工程において、図示しないインジェクション成形型により、予め所要の形状、サイズに形成される。
【0027】
(第2着色層22の形成工程)
先ず、
図4(a)に示すように、所要形状に形成された前記基材12の意匠面14に、基材12と異なる色彩の第2着色塗料(実施例では茶系統の着色塗料)を、第2塗布ノズル38により所要厚に塗布する。そして、意匠面14に塗布した第2着色塗料が硬化することで、該意匠面14を被覆した第2着色層22が所要厚に形成される。
【0028】
(第1着色層24の形成工程)
次いで、
図4(b)に示すように、前記基材12の意匠面14を被覆するように形成された前記第2着色層22の外面に、基材12および第2着色層22の夫々と異なる色彩の第1着色塗料(実施例では黒系統の着色塗料)を、第1塗布ノズル40により所要厚に塗布する。そして、第2着色層22の外面に塗布した第1着色塗料が硬化することで、該第2着色層22を被覆した第1着色層24が所要厚に形成される(
図4(c))。
【0029】
(第1着色層24の切除工程)
次いで、
図5(a)に示すように、前記第1着色層24の切除作業を行う。ここで、実施例では、第1着色層24を切除する切除手段としてレーザー加工機42が採用される。このレーザー加工機42による第1着色層24の切除作業では、該第1着色層24を、第1の方向の幅H1および第2の方向の幅H2(
図2参照)の矩形状で、かつ該第1着色層24の厚み以上に切除して、第2着色層22を矩形状に露出させる。そして、矩形状の切除部分を、第1の方向および第2の方向へ断続的に複数形成する。
【0030】
ここで、
図2に示すように、第1の方向における各切除部分の間隔は、第1着色層24における第1の方向の幅h1と同じである。また、第2の方向における各切除部分の間隔は、第1着色層24における第2の方向の幅h2である。このように、第1着色層24を切除することにより、第1着色層24からなる配列単位および第2着色層22からなる配列単位が、交差する(直交する)第1の方向および第2の方向の両方向において交互に配列された状態となる。
【0031】
(第2着色層22からなる各配列単位に対する外表面模様の形成)
また、前記レーザー加工機42により前記第1着色層24を切除する際には、
図5(a)に示すように、該レーザー加工機42を、第2の方向へ往復移動させて該第1着色層24を切除する。これにより、露出した第2着色層22からなる矩形状の各配列単位の表面に、第2の方向へ延在する直線状の第2溝28(
図2参照)を、第1の方向へ所要間隔毎に複数形成する。ここで、各第2溝28は、第2着色層22を、該第2着色層22の厚みの範囲で切削して形成する。これら複数条の第2溝28により、第2着色層22からなる各配列単位の表面に、第2の方向へ延在する経糸である第2カーボン繊維52の外表面模様(経糸模様)を形成する。
【0032】
(第2着色層22からなる各配列単位に対する第2曲面部32の形成)
また、前記レーザー加工機42により前記第1着色層24を切除する際には、
図5(a)に示すように、第2の方向へ往復移動させる該レーザー加工機42を、切除部分の第2の方向の両端部に近づくにつれて基材12の意匠面14側へ徐々に移動させる。これにより、切除部分に露出した第2着色層22からなる矩形状の各配列単位の外表面において、第2の方向における両端部に隣接する部分に、該第2着色層22の表面から端縁に近づくにつれて基材12側(裏面側)へ湾曲する第2曲面部32,32を、該第2着色層22の厚みの範囲で切削して形成する。このように、第2着色層22からなる矩形状の各配列単位の表面に第2曲面部32,32を形成することで、該第2カーボン繊維52が第1カーボン繊維54の裏面側へ入り込んだ状態を表現する。
【0033】
(第1着色層24からなる各配列単位に対する繊維模様の形成)
次いで、
図5(b)に示すように、切除されずに残った第1着色層24からなる矩形状の各配列単位の表面に、第1カーボン繊維54の繊維模様を形成する。すなわち、前記レーザー加工機42を第1着色層24の表面に近接させながら第1の方向へ往復移動させ、該第1着色層24の外表面に、第1の方向へ延在する直線状の第1溝30(
図2参照)を複数形成する。ここで、各第1溝30は、第1着色層24を、該第1着色層24の厚みの範囲で切削して形成する。これら複数条の第1溝30により、第1着色層24からなる各配列単位の表面に、第1の方向へ延在する緯糸である第1カーボン繊維54の外表面模様(緯糸模様)を形成する。
【0034】
(第1着色層24からなる各配列単位に対する第1曲面部34の形成)
また、前記第1着色層24からなる各配列単位の外表面に前記第1溝30を形成する際には、
図5(b)に示すように、第1の方向へ往復移動させるレーザー加工機42を、該第1着色層24における第1の方向の両端部に近づくにつれて、第2着色層22側へ徐々に移動させる。これにより、第1着色層24からなる矩形状の各配列単位の表面において、第1の方向における両端部に隣接する部分に、該配列単位の表面から端縁に近づくにつれて基材12側(裏面側)へ湾曲する第1曲面部34,34を、該第1着色層24の厚みの範囲で切削して形成する。このように、第1着色層24からなる矩形状の各配列単位の外表面に第1曲面部34,34を形成することで、第1カーボン繊維54が第2カーボン繊維52の裏面側へ入り込んだ状態を形成する。
【0035】
(凹穴26の形成工程)
次に、
図5(c)に示すように、前記レーザー加工機42により、第2の方向で隣接する第1着色層24,24からなる矩形状の各配列単位の間で、かつ第1の方向でかつ隣接する第2着色層22,22からなる矩形状の各配列単位の間となる位置(
図2参照)に、第1着色層24の表面から基材12の意匠面14に向けて、該第1着色層24および第2着色層22を合わせた厚みに相当する深さの凹穴26を、切削して形成する。これにより、基材12の意匠面14を凹穴26を介して視認し得るようにして、平織りの織組織をなす前記カーボンクロス50の表裏方向に開口する前記隙間56(
図8参照)を表現する。
【0036】
(クリア層36の形成工程)
前記第1着色層24および第2着色層22へのレーザー加工および凹穴26の形成作業が完了した後、
図6(a)に示すように、第1着色層24、第2着色層22、凹穴26を介して露出した基材12の意匠面14を被覆するように、透明または半透明の樹脂材料を噴射ノズル44により塗布する。そして、塗布した前記樹脂材料が硬化することで、
図6(b)に示すように、第1着色層24、第2着色層22、凹穴26を介して露出した基材12の意匠面14を被覆した所要厚のクリア層36を形成する。
【0037】
前記クリア層36の形成作業が完了することで、第1着色層24、第2着色層22およびクリア層36からなり、カーボンクロス50の織組織に近似した織組織状模様が形成された装飾部20を基材12の意匠面14に備えた装飾部材10が製造される。
【0038】
前述した実施例の装飾部材の製造方法によれば、第1の方向に配列した第1着色層24により緯糸状の模様が形成されると共に第2の方向に配設した第2着色層22により経糸状の模様が形成され、かつ前記緯糸状の模様の間でかつ経糸状の模様の間となる位置に積層方向の凹穴26が形成される。これにより、第1カーボン繊維54および第2カーボン繊維52を交互に組み合わせた平織りのカーボンクロス50の織組織に近似した織組織状模様が形成された装飾部20を備えた装飾部材10を製造することができる。すなわち、第1の方向に配列された第1着色層24からなる各配列単位により第1の方向へ延在する第1カーボン繊維54を表現し得ると共に、第2の方向に配列された第2着色層22からなる各配列単位により第2の方向へ延在する第2カーボン繊維52を表現し得るので、これら第1着色層24および第2着色層22により、平織りのカーボンクロス50の織組織をリアルに形成することができる。
【0039】
そして、前記第1着色層24、第2着色層22および基材12の色彩が夫々異なっているので、装飾部20における織組織状模様の表面の凹凸が一層強調されると共に、色調が多彩となって装飾性の向上が図られる。また、第1着色層24からなる各配列単位、第2着色層22からなる各配設単位、凹穴26を介して露出した意匠面14が、クリア層36により全面的に被覆されるので、各着色層24,22および意匠面14を該クリア層36により保護することができる。
【0040】
また、第1着色層24からなる各配列単位の外表面に複数条の第1溝30を形成することで、カーボンクロス50の第1カーボン繊維54の外表面模様(緯糸模様)を表現することができる。また、第2着色層22からなる各配列単位の表面に複数の第2溝28を形成することで、カーボンクロス50の第2カーボン繊維52の外表面模様(経糸模様)を表現することができる。よって、第1カーボン繊維54および第2カーボン繊維52を平織りしたカーボンクロス50の織組織に近似した織組織状模様をなす装飾部20に形成され、装飾部材10の装飾効果を向上させ得る。
【0041】
更に、第1着色層24からなる各配列単位における第1の方向の両端部に第1曲面部34,34を形成することにより、第1の方向へ延在する第1カーボン繊維54が第2の方向へ延在する第2カーボン繊維52の裏面側へ入り込んだ状態をリアルに表現することができる。また、第2着色層22からなる各配列単位における第2の方向の両端部に第2曲面部32,32を形成することにより、第2の方向へ延在する第2カーボン繊維52が第1の方向へ延在する第1カーボン繊維54の裏面側へ入り込んだ状態をリアルに表現することができる。これにより、第1着色層24からなる各配列単位および第2着色層22からなる各配列単位により、前記カーボンクロス50の織組織をより一層リアルに表現することができる。
【0042】
(変更例)
本発明に係る装飾部材の製造方法は、実施例に例示の形態に限らず種々の変更が可能である。
(1)本発明の装飾部材の製造方法は、3層以上に積層された着色層からなる装飾部を備えた装飾部材も製造可能である。すなわち、
基材と異なる色彩を呈する複数の着色層を当該基材の表面に積層状態に形成した後、前記積層状態の各着色層を所定の配列で露出させるように当該積層状態の着色層の表層側から切除することで、繊維の織組織状模様を形成する。次いで、前記織組織状模様の表面に透過性のクリア層を積層状態に形成する。
このような変更例の製造方法では、積層状態の複数の着色層を表層側から切除して各着色層を所定の配列で露出させることで、表面が凹凸状をなす織組織状模様が立体的に形成されて、繊維の織組織に近似した織組織状模様が形成された装飾部材を製造することができる。そして、各着色層の色彩が異なっているので、織組織状模様の表面の凹凸が一層強調されると共に、色調が多彩となって装飾性の向上が図られる。また、複数の着色層がクリア層により被覆されるので、各着色層を保護することができる。
【0043】
(2)本発明の製造方法は、表層の切除位置および切除形状を変更して、各着色層からなる配列単位の配列位置を変更することで、実施例で例示した平織りしたカーボンクロスの織組織に類似した織組織状模様に限らず、綾織り(斜文織り)したカーボンクロスの織組織に類似した織組織状模様や、カーボンクロス以外の様々な織布の織組織に類似した織組織状模様に形成した装飾部を備えた装飾部材を製造することが可能である。
(3)実施例では、第1着色層の切除工程と、露出した第2着色層からなる各配列単位の外表面に対する溝および曲面部の形成工程とを、同一工程で実施する製造方法を例示したが、第1着色層の切除工程、第2着色層からなる各配列単位の外表面に対する溝の形成工程、第2着色層からなる各配列単位の表面に対する曲面部の形成工程は、夫々別工程に分けて実施するようにしてもよい。
(4)実施例では、第2着色層からなる各配列単位の外表面に対する溝および曲面部の形成工程とを、同一工程で実施する製造方法を例示したが、溝の形成工程および曲面部の形成工程を別工程に分けて実施するようにしてもよい。
(5)第1着色層からなる各配列単位および第2着色層からなる各配列単位は、複数条の溝および曲面部の何れか一方のみを形成するようにしてもよいし、複数条の溝および曲面部の両方を形成しなくてもよい。
(6)装飾部を構成する各着色層は、塗料を塗布して形成するものに限らず、インジェクション成形による多色成形方法に基づいて形成したものであってもよい。
(7)本発明の製造方法により製造される装飾部材は、自動車の車両内装部材に取り付けて使用されるものに限らず、各種車両や家具等に取り付けて使用される装飾部材が対象とされる。