【解決手段】下記一般式(I)で表されるベンゾトリアゾール誘導体;下記一般式(II)で表されるベンゾトリアゾール誘導体中の水酸基に重合性基を導入することにより、前記ベンゾトリアゾール誘導体を製造することを特徴とする、ベンゾトリアゾール誘導体の製造方法(式中、Y
【背景技術】
【0002】
2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類は紫外線吸収剤として知られており、例えば、市販品として2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール等の化合物が挙げられる。これらは、合成樹脂、合成ゴム、フィルム、塗料、染料、化粧品、場合により医農薬などの幅広い分野で使用されている。
【0003】
先に挙げたベンゾトリアゾール類は比較的分子量が小さいため、高温加工を行う分野では加工中に揮発減量する、あるいは、樹脂加工を行う分野では水や有機溶剤に抽出されるため、使用に適していない。そのため、グリシジルエーテルや(メタ)アクリレートを導入することにより、重合性を有するベンゾトリアゾール化合物の誘導体を合成し、それをそのまま添加する、若しくは、ポリマーにして添加することにより、揮発減量や溶剤抽出を防ぐ方法が考えられる。
しかしながら、先に挙げたベンゾトリアゾール類の紫外線吸収機構を考慮すると、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール骨格中の水酸基をグリシジルエーテル化や(メタ)アクリレート化した場合、ベンゾトリアゾール類の紫外・可視吸収スペクトルの吸収帯が短波長側にシフトし、紫外線吸収能が弱くなるおそれがある。そのため、ベンゾトリアゾール化合物の紫外線吸収に関係する水酸基を残して、グリシジルエーテルやアクリレート等の重合性基を導入する検討もなされている。例えば特許文献1には、6−(2−ベンゾトリアゾール)−4−メタクリロキシエチル−6’−t−ブチル−4’−メチル−2,2’−メチレンビスフェノール等の、フェノール骨格のオルト位にベンゾトリアゾールを有し、且つ、フェノール骨格のパラ位に重合性基を有する化合物が開示されている。
【0004】
一方、先に挙げたグリシジルエーテルや(メタ)アクリレート化合物はその透明性を活かして光学材料等として、例えば、液晶ディスプレイ用パネル、カラーフィルター、眼鏡レンズ、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、TFT用プリズムレンズシート、光ファイバー、光ディスク等の光学用物品の高屈折率の樹脂材料として使用されている。
【0005】
例えば、高屈折率を有する(メタ)アクリレートとして、ベンゼン環を導入したアクリレートが知られている(特許文献2参照)。その屈折率は1.58程度であり、光学用物品の高屈折率の樹脂材料としてさらなる高屈折率の化合物が求められている。
また、フェノールのパラ位(4位)にベンゾトリアゾールを有している化合物はフェノールの水酸基を修飾しても紫外線吸収能を有することが特許文献3に記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る新規ベンゾトリアゾール誘導体は、下記一般式(I)で表されるベンゾトリアゾール誘導体である。以下、一般式(I)で表される化合物を「化合物(I)」と略記することがある。他式で表される化合物に関しても同様である。
一般式(I)で表される化合物は合成樹脂、合成ゴム、フィルム、塗料、染料、化粧品、医農薬などとして有用な紫外線吸収剤であり、特に、高温加工において揮発減量の少ない新規のベンゾトリアゾール誘導体である。また、液晶ディスプレイ用パネル、カラーフィルター、眼鏡レンズ、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、TFT用プリズムレンズシート、光ファイバー、光ディスク等の光学用物品の高屈折率の樹脂材料などとして有用な重合性モノマーである。
【0020】
式中、Y
1はアルキル基、アリール基又はアラルキル基である。Y
2は水素原子又はハロゲン原子である。
【0021】
式中、Y
1はアルキル基、アリール基又はアラルキル基である。
本明細書及び特許請求の範囲において「アルキル基」とは、脂肪族(非芳香族)炭化水素基から1つの水素原子を除いた1価の基を意味する。
Y
1におけるアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状等の鎖状の基であってもよく、単環式基、多環式基等の環式基であってもよく、鎖状の基と環式基との組み合わせであってもよい。
前記アルキル基として具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、n−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、2,2−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、3,3−ジメチルペンチル基、3−エチルペンチル基、2,2,3−トリメチルブチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基等の炭素数が1〜10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、トリシクロデシル基等が例示できる。本発明の効果を得るためには、炭素数が大きいことが好ましく、炭素数が3以上であることが好ましく、4以上がより好ましく、5以上がさらに好ましく、15以下がさらに好ましく、10以下が特に好ましい。
原料の入手性を考慮すると、前記アルキル基はシクロヘキシル基であることがより好ましい。
【0022】
Y
1における前記アリール基は、芳香族炭化水素基の芳香環から1つの水素原子を除いた1価の基であれば特に限定されるものではなく、単環状及び多環状のいずれでもよい。
前述の理由から炭素数が6以上であることが好ましく、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基(ジメチルフェニル基)等が例示できる。
さらに、Y
1におけるアリール基は、これらアリール基の1個以上の水素原子が、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基、あるいはアリール基で置換されたものであってもよい。ここで、水素原子を置換する直鎖状、分岐鎖状及び環状のアルキル基、及び環状のアルキル基(環式基)としては、前述したアルキル基の説明において挙げたものが例示でき、アリール基としては、上記で例示したものが挙げられる。
原料の入手性を考慮すると、前記アリール基はフェニル基であることがより好ましい。
【0023】
Y
1におけるアラルキル基を、アリール基がアルキレン基に結合してなる1価の基と考えた場合に、前記アリール基は単環状及び多環状のいずれでもよく、Y
1のアリール基と同様のものが例示できる。また、前記アルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれでもよく、鎖状構造及び環状構造が混在していてもよいが、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。
【0024】
前記アルキレン基としては、前述したアルキル基の説明において挙げたものから、1個の水素原子が除かれてなる2価の基が例示できる。
【0025】
前記アラルキル基は、前述の理由から炭素数が6以上、15以下であることが好ましく、ベンジル基(フェニルメチル基)、о−メチルベンジル基、m−メチルベンジル基、p−メチルベンジル基、フェネチル基(フェニルエチル基)等が例示できる。原料の入手性を考慮すると、前記アラルキル基はベンジル基であることがより好ましい。
【0026】
式中、Y
2は水素原子又はハロゲン原子である。
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が例示でき、原料の入手性を考慮すると、前記ハロゲン原子は塩素原子であることがより好ましい。
【0027】
式中、Xは重合性基である。
重合性基としては、ラジカル重合、イオン重合、開環重合等をし得る基であれば特に限定されるものではなく、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、フルオロビニル基、ジフルオロビニル基、トリフルオロビニル基、ジフルオロトリフルオロメチルビニル基、トリフルオロアリル基、パーフルオロアリル基、トリフルオロメチルアクリロイル基、ノニルフルオロブチルアクリロイル基、ビニルエーテル基、アリルエーテル基、ノルボルニル基、含フッ素ノルボルニル基、シリル基、エポキシ基などが挙げられる。
なかでも、Xの重合性基としては、下記式(x−1)又は(x−2)で表される基が好ましい。
【0029】
式中、Aはエチレン基又はイソプロピレン基である。nは0乃至2の整数を示す。Bは水素原子又はメチル基である。なお、式(x−1)、(x−2)で表される基は、上記式中の左端において、前記式(I)中の酸素原子と結合する。
【0030】
化合物(I)は、高屈折率で紫外線吸収能と重合性モノマーを有するベンゾトリアゾール誘導体であることから、原料となるベンゾトリアゾール化合物として、下記式(II)−101で表されるベンゾトリアゾール化合物(4−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−ベンジル−2−フェニルフェノール、以下、「化合物(II)−101」と略記することがある);下記式(II)−201で表されるフェノール化合物(4−(2H−4−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)−6−ベンジル−2−フェニルフェノール、以下、「化合物(II)−201と略記することがある);下記式(II)−301で表されるフェノール化合物(4−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−2,6−ジフェニルフェノール、以下、化合物(II)−301と略記することがある);又は、下記式(II)−401で表されるベンゾトリアゾール化合物(4−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−シクロヘキシル−2−フェニルフェノール、以下、「化合物(II)−401」と略記することがある)を用いることが好ましい。
【0032】
化合物(II)−101乃至化合物(II)−401の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、以下に示す方法によって得ることができる。以下、一般式(I)においてXとして水素原子を有する化合物(以下、「化合物(II)」という。)を製造する際の例を示す。
【0033】
まず、一般式(01)に示される化合物を原料として用いて、先行技術文献に記されている公知の方法に則り、o−ニトロベンゼンジアゾニウム塩を製造する。下記式中では、塩酸を用いることにより、一般式(02)で表されるo−ニトロベンゼンジアゾニウム塩を得ているが、使用する酸はこれに限定されるものではない。このo−ニトロベンゼンジアゾニウム塩を、一般式(03)のフェノール類とジアゾカップリング反応させて一般式(04)で表されるアゾ化合物とする。
次に、一般式(04)で表されるアゾ化合物を、例えば、アルカリ性条件、又は酸性条件において、亜鉛粉末やヒドラジン、パラホルムアルデヒド等で還元して、一般式(05)で表される還元反応の中間体であるN−オキシド化合物を経て、一般式(II)で表される化合物を得ることができる。
【0034】
【化8】
(式中、Y
1、Y
2は基前記同様である。)
【0035】
化合物(II)を得る工程において、一般式(04)のアゾ化合物、又は一般式(05)で表されるN−オキシド化合物を系外に取り出しても良く、取り出さずに次の工程に進んでも良い。
化合物(II)を得る工程において、各段階の反応の終了後は、それぞれの化合物の物性、使用した原料や有機溶剤の種類及び量を考慮し、公知の手法によって、必要に応じて後処理を行い、それぞれの化合物を取り出せばよい。すなわち、適宜必要に応じて、濾過、洗浄、抽出、pH調製、脱水、濃縮等の後処理操作をいずれか単独で、又は2種以上組み合わせて行い、濃縮、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー等により、それぞれの化合物を取り出せばよい。また、取り出したそれぞれの化合物は、さらに必要に応じて、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、抽出、溶剤による結晶の攪拌洗浄等の操作をいずれか単独で、又は2種以上組み合わせて1回以上行うことで、精製してもよい。
【0036】
また、本発明の化合物(I)は以下に示す方法によって合成することができる。本発明の化合物(I)は、式中のXの重合性基の種類に応じて適切な方法を選択して製造することができる。
【0037】
例えば、化合物(I)において、前記Xとして式(x−1)で表される基を有する場合、下記一般式(IV)で表される化合物(以下、「化合物(IV)」と略記することがある。)は、化合物(II)と、エピハロヒドリンを反応させる方法、又は、ハロアリルと反応させて一般式(III)の化合物(以下、「化合物(III)」と略記することがある。)を合成した後に酸化させて、化合物(IV)を得る工程を有する方法で製造できる。
【0038】
【化9】
(式中、Y
1はアルキル基、アリール基又はアラルキル基である。Y
2は水素原子又はハロゲン原子である。Y
3はハロゲン原子である。)
【0039】
一般式(IV)において、Y
1及びY
2は、一般式(I)におけるY
1及びY
2と同じである。
【0040】
化合物(III)又は化合物(IV)を得る工程においては、化合物(II)と、エピハロヒドリン又はハロアリルとの反応を、無溶媒で、又は有機溶媒中で行う。また、かかる反応は触媒を用いてもよいし、無触媒で行ってもよい。
【0041】
エピハロヒドリン又はハロアリルとしては、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、塩化アリル、臭化アリル等が例示できる。
【0042】
エピハロヒドリン又はハロアリルの総使用量は、化合物(II)に対して、1乃至6倍モル量であることが好ましく、2乃至4倍モル量であることがより好ましい。
【0043】
化合物(III)又は化合物(IV)を得る工程における前記溶媒は、特に限定されないが、好ましいものとして、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル等のエステル;ジクロロメタン、トリクロロメタン等のハロゲン化炭化水素;アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)等のアミドが例示できる。
前記有機溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0044】
化合物(III)又は化合物(IV)を得る工程における前記触媒は特に限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の金属水酸化物やテトラメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド等の塩基性化合物が例示できる。
前記触媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0045】
化合物(III)を酸化させて化合物(IV)を得る工程における酸化剤としては、限定されないが、過酢酸、過酸化水素水等の過酸化物や過マンガン酸カリウム、ニクロム酸カリウム等の金属塩が例示できる。
前記酸化剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0046】
化合物(III)又は化合物(IV)を得る工程において、反応温度は−10℃乃至150℃であることが好ましい。高温で反応を行うと副生成物が生じる可能性あり、且つ、反応温度が低すぎると反応時間がかかり過ぎるため、20℃乃至130℃であることがより好ましい。また、反応時間は、反応温度に応じて調節することが好ましいが、1乃至15時間であることが好ましい。
【0047】
一般式(I)の化合物において、前記Xとして式(x−2)で表される基を有する場合、n=0であるか否かに応じて、以下に示す方法で製造できる。
一般式(I)且つ式(x−2)の化合物のうち、n=0で表される化合物は、化合物(II)と、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸クロリドもしくはジ(メタ)アクリル酸無水物からなる群から選択される1種以上とを反応させて、一般式(V)の化合物(以下、「化合物(V)」と略記することがある)を得る工程を有する方法で製造できる。
一般式(I)且つ式(x−2)の化合物のうち、n=0でない場合の化合物は、化合物(II)とエチレンオキシド、炭酸エチレン、プロピレンオキシド及び炭酸プロピレンからなる群から選択される1種以上との反応によって、一般式(VI)の化合物(以下、「化合物(VI)」と略記することがある)を合成した後に(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸クロリドもしくはジ(メタ)アクリル酸無水物からなる群から選択される1種以上とを反応させて、一般式(VII)の化合物(以下、「化合物(VII)」と略記することがある)を得る工程を有する方法で製造できる。
【0048】
【化10】
(式中、Y
1はアルキル基、アリール基又はアラルキル基である。Y
2は水素原子又はハロゲン原子である。Aはエチレン基又はイソプロピレン基である。n’は1又は2の整数を示す。Bは水素原子又はメチル基である。)
【0049】
一般式(V)〜(VII)において、Y
1、Y
2、A及びBは、一般式(I)、(x−2)におけるY
1、Y
2、A及びBと同じである。
【0050】
化合物(V)、もしくは、化合物(VII)を得る工程においては、化合物(II)もしくは化合物(VI)と、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸クロリドもしくはジ(メタ)アクリル酸無水物からなる群から選択される1種以上との反応を無溶媒もしくは、有機溶媒中で行う。また、かかる反応は触媒を用いてもよいし、無触媒で行ってもよい。
【0051】
化合物(V)、化合物(VI)又は化合物(VII)を得る工程における前記溶媒は、特に限定されないが、好ましい物として、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル等のエステル;ジクロロメタン、トリクロロメタン等のハロゲン化炭化水素;アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素が例示できる。
前記有機溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0052】
化合物(V)もしくは、化合物(VII)を得る工程における前記触媒は、特に限定されないが、塩酸、硫酸等の無機酸;酢酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の有機酸等が例示できる。
前記触媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0053】
化合物(VI)は化合物(II)とエチレンオキシド、炭酸エチレン、プロピレンオキシド及び炭酸プロピレンからなる群から選択される1種以上との反応をさせて得られるが、化合物(VI)を得る工程における触媒は、特に限定されないが、塩酸、硫酸等の無機酸;酢酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の有機酸、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸塩又は炭酸水素塩等の無機塩基が例示できる。
前記触媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0054】
化合物(V)、化合物(VI)もしくは、化合物(VII)を得る工程において、反応温度は−20℃乃至200℃であることが好ましく、高温で反応を行うと副生成物が生じる可能性あり、且つ、反応温度が低すぎると反応時間がかかり過ぎるため、0℃乃至180℃であることがより好ましい。また、反応時間は、反応温度に応じて調節することが好ましいが、1乃至15時間であることが好ましい。
【0055】
化合物(III)乃至化合物(VII)を得る工程において、各段階の反応の終了後は、それぞれの化合物の物性、使用した原料や有機溶剤の種類及び量を考慮し、公知の手法によって、必要に応じて後処理を行い、それぞれの化合物を取り出せばよい。すなわち、適宜必要に応じて、濾過、洗浄、抽出、pH調製、脱水、濃縮等の後処理操作をいずれか単独で、又は2種以上組み合わせて行い、濃縮、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー等により、それぞれの化合物を取り出せばよい。また、取り出したそれぞれの化合物は、さらに必要に応じて、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、抽出、溶剤による結晶の攪拌洗浄等の操作をいずれか単独で、又は2種以上組み合わせて1回以上行うことで、精製してもよい。
【実施例】
【0056】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0057】
[実施例1]
4−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−ベンジル−2−フェニルフェノールグリシジルエーテル(化合物(I)−101)の製造
【0058】
100mLの4口フラスコに、化合物(II)−101(26.4g、0.070モル)、エピクロロヒドリン(19.4g、0.21モル)、そしてベンジルトリエチルアンモニウムクロリド(0.80g、0.0035モル)を加えて110℃で5時間撹拌を行った。その後、過剰量のエピクロロヒドリンを留出させ、トルエン52.8gを加え、その後、48%水酸化ナトリウム水溶液(14.0g)を滴下し、110℃、2時間撹拌を行い、反応を完了させた。反応後、水洗、共沸脱水、そして、熱濾過を行った。その濾液を冷却しながら種結晶を加えて晶析を行い、固液分離して白色の結晶(26.5g、収率87.5%)を得た。得られた化合物の融点は158℃、屈折率は1.651であった。得られた化合物の紫外可視吸収スペクトルを
図1に示した。紫外線吸収の極大波長(λmax)は317nmで、そのモル吸光係数(ε)は25400であった。
1H−NMR(300MHz,DMSO−d
6):σ8.25−8.18(2H),σ7.91−7.68(2H),σ7.68−7.64(2H),σ7.48−7.18(10H),σ4.22−4.16(2H),σ3.49−3.31(2H),σ2.93−2.88(1H),σ2.64−2.61(1H),2.31−2.28(1H)
【0059】
[実施例2]
4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−ベンジル−2−フェニルフェノールグリシジルエーテル(化合物(I)−201)の製造
【0060】
実施例1の化合物(II)−101の代わりに化合物(II)−201(28.8g、0.070モル)を使用した以外は実施例1と同様に実施した結果、白色の結晶(26.1g、収率79.6%)を得た。得られた化合物の融点は158℃、屈折率は1.646であった。得られた化合物の紫外可視吸収スペクトルを
図2に示した。紫外線吸収の極大波長(λmax)は325nmで、そのモル吸光係数(ε)は27400であった。
1H−NMR(300MHz,DMSO−d
6):σ8.21−8.20(1H),σ8.14−8.13(1H),σ7.88−7.87(1H),7.83−7.80(1H),σ7.64−7.63(2H),σ7.48−7.17(9H),σ4.26−4.16(2H),σ3.50−3.45(1H),σ3.36−3.31(1H),σ2.95−2.89(1H),2.65−2.62(1H),σ2.34−2.29(1H)
【0061】
[実施例3]
4−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−2,6−ジフェニルフェノールグリシジルエーテル(化合物(I)−301)の製造
【0062】
実施例1の化合物(II)−101の代わりに化合物(II)−301(25.4g、0.070モル)を使用した以外は実施例1と同様に実施した結果、白色の結晶(24.4g、収率83.0%)を得た。得られた化合物の融点は187℃、屈折率は1.666であった。得られた化合物の紫外可視吸収スペクトルを
図3に示した。紫外線吸収の極大波長(λmax)は317nmで、そのモル吸光係数(ε)は27800であった。
1H−NMR(300MHz,DMSO−d
6):σ8.40−8.37(2H),σ7.93−7.89(2H),σ7.74−7.70(4H),7.50−7.24(8H),σ3.42−3.29(2H),σ2.68−2.62(1H),σ2.45−2.42(1H),σ2.05−2.02(1H)
【0063】
[実施例4]
4−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−シクロヘキシル−2−フェニルフェノールグリシジルエーテル(化合物(I)−401)の製造
【0064】
実施例1の化合物(II)−101の代わりに化合物(II)−401(25.9g、0.070モル)を使用した以外は実施例1と同様に実施した結果、白色の結晶(24.9g、収率83.6%)を得た。得られた化合物の融点は187℃、屈折率は1.628であった。得られた化合物の紫外可視吸収スペクトルを
図4に示した。紫外線吸収の極大波長(λmax)は317nmで、そのモル吸光係数(ε)は27200であった。
1H−NMR(300MHz,DMSO−d
6):σ8.25−8.18(2H),σ7.96−7.89(2H),σ7.69−7.65(2H),7.48−7.25(5H),σ3.60−3.46(2H),σ3.23−3.14(1H),σ3.05−2.99(1H),σ2.71−2.2.68(1H),σ2.40−2.38(1H),σ1.97−1.29(10H)
【0065】
[実施例5]
〔5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−3−ベンジルビフェニル−2−イル〕アクリレート(化合物(I)−501)の製造
【0066】
200mLの4口フラスコに、化合物(II)−101(18.9g、0.050モル)、ジメチルアセトアミド(85.4g)、トリエチルアミン(8.4g)、そして、p−メトキシフェノール(3.4mg)を加えて溶解し、10℃で2時間かけてアクリル酸クロリド(8.8g、0.084モル)を滴下して反応を行った。その後、トルエン100gを加えて目的物を抽出し、水洗、共沸脱水、そして、熱濾過を行った。その濾液を冷却しながら種結晶を加えて晶析を行い、固液分離して白色の結晶(16.4g、収率75.9%)を得た。得られた化合物の融点は216℃、屈折率は1.672であった。得られた化合物の紫外可視吸収スペクトルを
図5に示した。紫外線吸収の極大波長(λmax)は320nmで、そのモル吸光係数(ε)は25300であった。
1H−NMR(300MHz,DMSO−d
6):σ8.34−8.33(2H),σ8.24−8.23(2H),σ7.92−7.20(12H),σ6.40−6.34(1H),σ6.13−6.04(1H),σ5.88−5.84(1H),σ4.03(2H)
【0067】
[実施例6]
〔5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−3−ベンジルビフェニル−2−イル〕メタアクリレート(化合物(I)−601)の製造
【0068】
実施例5のアクリル酸クロリドの代わりにメタクリル酸クロリド(8.8g、0.084モル)を使用した以外は実施例5と同様に実施した結果、白色の結晶(18.6g、収率83.2%)を得た。得られた化合物の融点は219℃、屈折率は1.666であった。得られた化合物の紫外可視吸収スペクトルを
図6に示した。紫外線吸収の極大波長(λmax)は313nmで、そのモル吸光係数(ε)は28700であった。
1H−NMR(300MHz,DMSO−d
6):σ8.34−8.33(1H),σ8.25−8.24(1H),σ7.93−7.87(2H),7.50−7.19(12H),σ6.10−6.09(1H),σ5.59−5.58(1H),σ4.04(2H),σ1.80−1.79(3H)
【0069】
[実施例7]
2−〔4−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−ベンジル−2−フェニルフェノキシ〕エチルアクリレート(化合物(I)−701)の製造
【0070】
化合物(I)−701の中間体、2−〔4−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−ベンジル−2−フェニルフェノキシ〕エタノール(化合物(VI)−701)の製造
【0071】
【化11】
【0072】
100mLの4口フラスコに、化合物(II)−101(30.2g、0.080モル)、炭酸エチレン(9.7g、0.11モル)そして、炭酸ナトリウム(0.15g)を加えて溶解し、180℃で12時間反応を行った。その後、トルエン70.0gを加えた後、熱濾過を行った。その濾液を冷却しながら種結晶を加えて晶析を行い、固液分離して白色の結晶(29.1g、収率84.6%)を得た。得られた化合物は化合物(II)−101に対して炭酸エチレンが1モル反応した化合物(VI)−701が80%、化合物(II)−101に対して炭酸エチレンが2モル反応した化合物(VI)−702が20%含まれている混合物であった。得られた化合物の融点は174℃、屈折率は1.667あった。
【0073】
化合物(I)−701の製造
200mLの4口フラスコに、先に得られた化合物(VI)−701と化合物(IV)−702の混合物(21.1g、0.049モル)、トルエン(63.3g)、メタンスルホン酸(0.9g)、そして、p−メトキシフェノール(12.0mg)を加えて溶解し、85℃で7時間かけてアクリル酸(7.9g、0.11モル)を滴下して反応を行った。その後、水洗、共沸脱水、そして、熱濾過を行った。その濾液を冷却しながら種結晶を加えて晶析を行い、固液分離して白色の結晶(20.7g、収率87.3%)を得た。得られた化合物は上述した割合で含まれる化合物(VI)−701と化合物(VI)−702がアクリレート化された混合物であった。得られた化合物の融点は125℃、屈折率は1.637であった。得られた化合物の紫外可視吸収スペクトルを
図7、赤外吸収スペクトルを
図8に示した。紫外線吸収の極大波長(λmax)は317nmで、そのモル吸光係数(ε)は25800であった。
【0074】
上述のように一般式(I)で表される化合物は紫外線吸収能を有し、重合性の官能基を有する化合物であり、且つ、高い屈折率を有する化合物であり、高温加工での用途や高屈折率が望まれる光学用樹脂材料等に適していることが示された。