特開2017-149782(P2017-149782A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-149782(P2017-149782A)
(43)【公開日】2017年8月31日
(54)【発明の名称】経皮吸収組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/12 20060101AFI20170804BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20170804BHJP
【FI】
   A61K47/12
   A61K9/70 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-113200(P2017-113200)
(22)【出願日】2017年6月8日
(62)【分割の表示】特願2016-558808(P2016-558808)の分割
【原出願日】2016年8月29日
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2015/074553
(32)【優先日】2015年8月29日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】302005628
【氏名又は名称】株式会社 メドレックス
(72)【発明者】
【氏名】三輪 泰司
(72)【発明者】
【氏名】濱本 英利
(72)【発明者】
【氏名】赤澤 直哉
【テーマコード(参考)】
4C076
【Fターム(参考)】
4C076AA72
4C076BB31
4C076CC01
4C076DD30
4C076DD34
4C076DD37
4C076DD38
4C076DD39
4C076DD41N
4C076DD43
4C076DD45
4C076DD47
4C076DD50
4C076EE03
4C076EE48
4C076EE49
4C076FF34
(57)【要約】
【課題】 本発明は、塩基性薬物の皮膚透過性が向上した、経皮吸収組成物及び、塩基性薬物の経皮吸収促進剤を提供することを目的とする。
【解決手段】
塩基性薬物又はその塩と、ソルビン酸及び/又はソルビン酸金属塩とを含有する経皮吸収組成物により、上記目的を達成しうる。
ソルビン酸成分の含有量は、塩基性薬物1モルに対して0.5〜2.5モルとするのが好ましい。
本発明の組成物は、さらに、有機塩基化合物及び/又は無機塩基成分を含むことが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基性薬物又はその塩と、ソルビン酸及び/又はソルビン酸金属塩とを含有する経皮吸収組成物。
【請求項2】
ソルビン酸成分の含有量が、塩基性薬物1モルに対して0.5〜2.5モルである、請求項1に記載の経皮吸収組成物。
【請求項3】
さらに、有機塩基化合物、無機塩基化合物、及び強塩基の塩からなる群より選択される塩基成分を含む、請求項1又は2に記載の経皮吸収組成物。
【請求項4】
塩基成分の含有量が、ソルビン酸成分1モルに対して、0.4〜3.0モルである、請求項3に記載の経皮吸収組成物。
【請求項5】
ソルビン酸及び/又はソルビン酸金属塩と、有機塩基化合物、無機塩基化合物、及び強塩基の塩からなる群より選択される塩基成分とを含む、塩基性薬物の経皮吸収促進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩基性薬物を含む外用製剤に関し、より詳細には、ソルビン酸を経皮吸収促進剤として含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
塩基性薬物の経皮吸収性を向上させる技術としては、塩基性薬物と有機酸塩との当モル塩を形成させて、塩基性薬物の脂溶性を適切な範囲に調整する技術(例えば、特許文献1)、脂肪酸と有機アミン化合物とからなるイオン液体を経皮吸収促進剤として用いる技術(例えば、特許文献2)が知られ、一定の成果を収めている。しかし、薬物の種類によっては、より高い皮膚透過性が要求されたり、従来の技術では長期安定な製剤を製造できない場合があった。
【0003】
ソルビン酸は防腐剤として知られ、パップ剤等の含水系貼付剤の防腐剤として用い得る(例えば、特許文献3)。しかし、ソルビン酸が塩基性薬物に対して優れた経皮吸収促進効果を有することは知られておらず、これを経皮吸収促進剤として使用すること及び、これを含む非水系の経皮吸収組成物は知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2010−016219号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2009−066457号パンフレット
【特許文献3】特開2014−125483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、塩基性薬物の皮膚透過性が向上した、経皮吸収組成物及び、塩基性薬物の経皮吸収促進剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、ソルビン酸が塩基性薬物の経皮吸収促進に優れた効果を有すること、及び、ソルビン酸と塩基成分とを組み合わせて用いることにより、さらにその効果が増大することを見出した。
【0007】
すなわち、本発明には下記(1)乃至(5)が含まれる。
(1) 塩基性薬物又はその塩と、ソルビン酸及び/又はソルビン酸金属塩とを含有する経皮吸収組成物。
(2) ソルビン酸成分の含有量が、塩基性薬物1モルに対して0.5〜2.5モルである、上記(1)に記載の経皮吸収組成物。
(3) さらに、有機塩基化合物、無機塩基化合物、強塩基の塩からなる群より選択される塩基成分を含む、上記(1)又は(2)に記載の経皮吸収組成物。
(4) 塩基成分の含有量が、ソルビン酸成分1モルに対して、0.4〜3.0モルである、上記(3)に記載の経皮吸収組成物。
(5) ソルビン酸及び/又はソルビン酸金属塩と、有機塩基化合物、無機塩基化合物、強塩基の塩からなる群より選択される塩基成分とを含む、塩基性薬物の経皮吸収促進剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、塩基性薬物の皮膚透過性に優れた経皮吸収組成物及び、優れた経皮吸収促進効果を発現する塩基性薬物の経皮吸収促進剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ある実施形態において、塩基性薬物又はその塩と、ソルビン酸成分とを含む経皮吸収組成物が提供される。ソルビン酸成分には、ソルビン酸及び/又はソルビン酸金属塩が含まれ得る。ある実施形態では、本開示の塩基性薬物の経皮吸収促進剤は、ソルビン酸成分を含む。ある実施形態では、経皮吸収促進剤は、さらに、塩基性成分を含むことができる。
【0010】
[塩基性薬物]
ある実施形態において、活性成分は、アミノ基等の塩基性の官能基を有する。具体的には、フルラゼパム、リルマザホン、メデトミジン、デクスメデトミジン等の催眠・鎮静剤;メタンフェタミン、メチルフェニデート等の興奮・覚醒剤;イミプラミン、ジアゼパム、セルトラリン、フルボキサミン、パロキセチン、シタロプラム、フルオキセチン、アルプラゾラム、ハロペリドール、クロミプラミン、アミトリプチリン、デシプラミン、アモクサピン、マプロチリン、ミルタザピン、セチプチリン、デュロキセチン、ジアゼパム、エチゾラム等の精神神経用剤;リドカイン、プロカイン、テトラカイン、ジブカイン等の局所麻酔剤;オキシブチニン、タムスロシン、プロピベリン、イミダフェナシン、ソリフェナシン、ダリフェナシン、トルテロジン等の泌尿器官用剤;チザニジン、エペリゾン、プリジノール、スキサメトニウム等の骨格筋弛緩剤;リトドリン、メルアドリン等の生殖器官用剤;カルプロニウム、ネオスチグミン、ベタネコール等の自律神経用剤;ペルゴリド、ブロモクリプチン、トリヘキシフェニジル、アマンタジン、ロピニロール、タリペキソール、プラミペキソール、ロチゴチン、カベルゴリン、セレギリン、ラサギリン等の抗パーキンソン病剤;ジヒドロエルゴタミン、スマトリプタン、エルゴタミン、フルナリジン、サイプロヘプタジン等の抗片頭痛剤;クレマスチン、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、ジフェニルピラリン等の抗ヒスタミン剤;ツロブテロール、プロカテロール、サルブタモール、クレンブテロール、フェノテロ−ル、テルブタリン、イソプレナリン等の気管支拡張剤;デノパミン等の強心剤;ニカメタート、トラゾリン等の末梢血管拡張剤;ニコチン、バレニクリン等の禁煙補助薬;アテノロール、ビソプロロール、メトプロロール、カルベジロール、カルテオロール、バルサルタン、クロニジン等の循環器官用剤;プロプラノロール、アルプレノロール、プロカインアミド、メキシレチン等の不整脈用剤;プログルミド、セトラキサート、スピゾフロン、シメチジン等の消化性潰瘍治療剤;ドンペリドン、シサプリド等の消化管運動改善剤;ケトチフェン、アゼラスチン、エメダスチン等の抗アレルギー剤;アシクロビル等の抗ウイルス剤;ドネペジル、タクリン、アレコリン、ガランタミン、リバスチグミン等の抗アルツハイマー剤;オンダンセトロン、グラニセトロン、ラモセトロン、アザセトロン等のセロトニン受容体拮抗制吐剤;モルヒネ、コデイン、フェンタニル、オキシコドン、ヒドロモルフォン等のオピオイド系鎮痛剤;テルビナフィン、ブテナフィン、アモロルフィン、ネチコナゾール、ミコナゾール、ルリコナゾール、イトラコナゾール等の抗真菌薬を例示できる。
【0011】
塩基性薬物は、遊離状態で用いてもよいが、安定性、皮膚刺激抑制等の観点から、それらの製剤学的に許容可能な酸付加塩で用いることもできる。酸付加塩としては、塩酸塩、硫酸塩、臭化水素酸塩等の無機酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩等の有機酸塩を例示できる。
【0012】
塩基性薬物又はその塩は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。ある実施態様において、塩基性薬物は、チザニジン塩酸塩、オキシコドン塩酸塩、リドカイン塩酸塩、又はそれらの組み合わせからなる群より選択し得る。ある実施態様において、塩基性薬物は、チザニジン塩酸塩、オキシコドン塩酸塩から選択される少なくとも1種であり得る。
【0013】
[ソルビン酸成分]
ソルビン酸は、塩基性薬物の経皮吸収を促進する。論証されてはいないものの、ソルビン酸は、組成物中で塩基性薬物にイオン的に結合してイオン液体を形成すると考えられる。ある実施形態において、イオン液体は、チザニジン‐ソルビン酸塩、オキシコドン‐ソルビン酸塩、又はリドカイン‐ソルビン酸塩であり得る。遊離酸状態のソルビン酸及び、ソルビン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸カルシウム等のソルビン酸金属塩のいずれを用いてもよい。さらに、遊離酸状態のソルビン酸とソルビン酸金属塩とを組み合わせて用いる事もできる。ソルビン酸とソルビン酸金属塩とを組み合わせて使用した場合は、『ソルビン酸成分』とは、ソルビン酸及びソルビン酸金属塩を総称する語である。この場合、本明細書において『ソルビン酸成分の含有量』とは、ソルビン酸の含有量とソルビン酸金属塩の含有量との総和を意味する。ソルビン酸又はソルビン酸金属塩を単独で用いる場合であれば、『ソルビン酸成分の含有量』はソルビン酸の含有量、又はソルビン酸金属塩の含有量を意味する。
【0014】
ソルビン酸成分の含有量は、塩基性薬物1モルに対し、例えば、約0.1〜3.0モル、約0.5〜2.5モル、又は約0.9〜2.1モルの範囲から選択することができる。ソルビン酸成分の含有量が塩基性薬物1モルに対して0.5〜2.5モルの範囲では経皮吸収促進効果が顕著であるが、3モルを超えて含有するとかえって薬物の皮膚透過性が劣る場合がある。
【0015】
[塩基成分]
本開示の組成物は、ある実施態様において、さらに、塩基成分を含んでいてもよい。塩基成分には、一種又は二種以上の有機塩基化合物、無機塩基化合物、及び強塩基の塩が含まれ得る。無機塩基化合物と強塩基の塩を総称して、無機塩基成分と称する場合がある。上述のソルビン酸成分と塩基成分とを組み合わせて用いることにより、塩基性薬物の経皮吸収促進作用がさらに増大する。従って、上記塩基成分とソルビン酸成分との組み合わせは、優秀な経皮吸収促進剤として用いることができる。
【0016】
ある実施態様において、前記有機塩基化合物は、モノエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、エチレンジアミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン(トロメタモール)等の炭素数2〜9のアルカノールアミン類、アルギニン等の塩基性アミノ酸であり得る。ある実施態様において、前記有機塩基化合物は、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン等の1分子中に水酸基を3つ有する有機アミンである。ある実施態様において、前記有機塩基化合物はトリエタノールアミンである。有機塩基化合物は、1種、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0017】
ある実施態様において、前記無機塩基成分は、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属を含む化合物を意味する。無機塩基化合物の例には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の水酸化物が含まれる。ある実施態様において、強塩基の塩には、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カルシウム、フマル酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム等のカルボン酸金属塩;乳酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム、クエン酸ナトリウム等のヒドロキシ酸金属塩;亜硫酸ナトリウム;ピロ亜硫酸ナトリウム等が含まれる。ある実施態様において、『ソルビン酸成分』としてソルビン酸カリウム等のソルビン酸金属塩を採用した場合は、ソルビン酸金属塩は、『ソルビン酸成分』だけでなく『無機塩基成分』にも分類される。したがって、含有量の算出においても、ソルビン酸金属塩は、『ソルビン酸成分』及び『無機塩基成分』の両方に加算される。
【0018】
ある実施態様において、活性成分として塩基性薬物の塩酸塩を使用し、組成物に無機塩基成分を配合した場合には、無機塩基化合物及び/又は強塩基の塩を構成する金属イオンは、『脱塩酸剤』としても作用し得る。金属イオンは塩基性薬物に付加した塩酸を捕捉して塩化物となり、塩基性薬物の遊離体を生成せしめる。これにより薬物の皮膚透過性が向上すると考えられる。
【0019】
有機塩基化合物及び/又は無機塩基成分の含有量は、ソルビン酸成分1モルに対して、約0.4〜約3.0モル、約0.5〜約2.5モル、約0.5〜約2.0モル、又は約0.5〜約1.6モルの範囲であり得る。
【0020】
[他の経皮吸収促進剤]
ある実施態様において、本開示の組成物は、さらに、薬物及びソルビン酸を溶解し、薬物の経皮吸収を促進する作用を有する一種又は2種以上の化合物を含むことができる。例えば、脂肪酸、アルコール、エステル化合物、アミド化合物等が有用である。本発明の組成物は、実質的に水を含有しない、非水系の外用剤組成物である。例えば、前記非水系の組成物は、約3.0%未満、又は1.0%未満の水を含有することができる。
【0021】
経皮吸収促進剤としての上記脂肪酸には、レブリン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸等の炭素数4〜20の飽和又は不飽和脂肪酸(ソルビン酸を除く)を例示できる。脂肪酸は1種又は2種以上を選択して用いることができる。ある実施態様において、組成物は少なくとも1種の不飽和脂肪酸をさらに含む。ある実施態様において、不飽和脂肪酸はオレイン酸である。組成物に脂肪酸を使用する際は、ソルビン酸と他の脂肪酸との総和が、塩基成分1モルに対して、約0.8〜約2.5モル、又は、約0.8〜約2.0モルの範囲から選択することができる。ある実施態様において、ソルビン酸成分及び脂肪酸の総重量は、粘着剤層の総重量に対して、約2.0〜約3.0重量%、又は約2.0〜約2.5重量%であり得る。
【0022】
ある実施態様において、組成物はさらにアルコールを含むことができる。上記アルコールとしては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、セチルアルコール等の1価アルコール;プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジイソブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ヘキシレングリコール等の2価アルコール;グリセリン、ヘキサントリオール等の3価アルコールであり得る。ある実施態様において、組成物は2種以上のアルコールを含むことができる。ある実施態様において、組成物はオレイルアルコールを含む。
【0023】
ある実施態様において、組成物はさらにエステル化合物を含むことができる。上記エステル化合物は、セバシン酸ジエチル、ラウリン酸メチル、アジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、炭酸プロピレン、中鎖脂肪酸トリグリセリド等であり得る。前記中鎖脂肪酸トリグリセリドには、脂肪酸がC6−12脂肪鎖を有するトリグリセリドが含まれる。ある実施態様において、組成物はさらにラウリン酸上記アミド化合物としては、ジエタノールアミド等を含みうる。
【0024】
ある実施態様において、組成物は、塩基性薬物又はその塩及びソルビン酸成分と、塩基成分とを、上述の溶媒に混合した、均一な溶液として提供され得る。ある実施態様において、組成物はさらに脂肪酸、アルコール及び/又はエステル化合物を含むことができる。
【0025】
[マトリクス型貼付製剤]
本開示の組成物は、上記溶液を適宜なポリマーにより構成された粘着剤層中に分散させて、マトリクス型の貼付製剤とすることができる。有用なポリマーには、アクリル系ポリマー、ゴム系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ビニルエーテル系ポリマーが含まれ得る。ある実施態様においては、スチレン‐イソプレン‐スチレンブロック共重合体、スチレン‐ブタジエン‐スチレンブロック共重合体、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエンなどのゴム系ポリマーを好適に使用できる。ゴム系ポリマーの含有量は、粘着剤層の乾燥総重量に対して、約5〜約40重量%、約10〜約30重量%、又は約5〜約25重量%であり得る。アクリルポリマー、及びシリコーン系ポリマーの含有量は、粘着剤層の乾燥総重量に対して、約45〜約95重量%、又は約50〜約90重量%であり得る。
【0026】
ある実施形態において、粘着剤層中にはさらに、充填剤を含むことができる。充填剤を含有すると、粘着剤層の粘着特性が改善されるとともに、活性成分の放出速度が向上する。充填剤の含有量は、例えば、粘着剤層の総重量に対して約0.5〜約5重量%の範囲から選択することができる。充填剤は、含水シリカ、フュームドシリカ、タルク、結晶セルロース、でんぷん、カルメロース、カルメロース金属塩から選択することができる。ある実施態様において、充填剤はフュームドシリカであり得る。フュームドシリカの市販の例としてはアエロジル(登録商標)を挙げることができる。
【0027】
粘着剤層にはさらに、粘着付与剤、軟化剤、酸化防止剤等他の添加剤を含んでいてもよい。粘着付与剤としては、例えば、ロジンエステル、水添ロジンエステル、マレイン化ロジン、脂環族飽和炭化水素樹脂、テルペン樹脂、ポリオレフィン樹脂等を挙げることができる。軟化剤としては、ナフテン系プロセスオイル;ツバキ油、ヒマシ油等の植物油;液状ポリブテン、液状イソプレンゴム等の液状ゴム;流動パラフィンを挙げることができる。酸化防止剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン、アスコルビン酸、没食子酸プロピル、亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム等を例示できる。
【0028】
上述の組成物を、マトリクス型の貼付製剤とする際は、塩基性薬物の含有量は、粘着層の総乾燥重量の、約0.5〜約10重量%、又は約1〜約5重量%の範囲であり得る。また、ある実施態様において、オレイルアルコール等の1価アルコールと、ブチレングリコール、プロピレングリコール等の2価アルコールと、グリセリン等の3価アルコールのうち少なくとも2種類のアルコールを組み合わせて用いられる。ある実施態様において、アルコールの含有量は、粘着剤層の総乾燥重量に対して、約15〜約35重量%、約20〜約30重量%、又は約22〜約28重量%であり得る。
【実施例】
【0029】
以下、実施例により本開示をより詳細に説明するが、本開示はこれら実施例により何ら限定されない。
【0030】
(実施例1)
[チザニジン及びソルビン酸を含む貼付剤の製造]
チザニジン塩酸塩、ソルビン酸、乳酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、トリエタノールアミン、セバシン酸ジエチル、ミリスチン酸イソプロピル、グリセリン、DiPG(ジプロピレングリコール)、BG(ブチレングリコール)、オレイルアルコール、没食子酸プロピル、流動パラフィンを混合して加熱(約60℃)溶解し、均一な溶液を得た。ここに、トルエンに溶解したテルペン樹脂、トルエンに溶解したスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS5002)、及びアエロジルを添加して均一に混合し、薬物含有粘着剤組成物を得た。得られた薬物含有粘着剤組成物を、剥離処理を施したPETフィルム上に塗布した。ついでトルエンを除去するために80℃で10分間加熱乾燥し、チザニジン及びソルビン酸を含有する貼付剤を製造した。各成分の組成(重量%)は表1に示される通りである。
【0031】
(比較例1)
[チザニジン及び高級脂肪酸を含み、ソルビン酸を含まない貼付剤の製造]
実施例1と同様の操作により、表1に示す組成(重量%)の貼付剤を製造した。
【0032】
(実施例2及び比較例2)
[オキシコドンを含む貼付剤の製造]
実施例1と同様の操作により、表1に示す組成(重量%)の、オキシコドンを含む貼付剤を製造した。
【0033】
[in vitro 皮膚透過性試験]
フランツセルを用いた皮膚透過性試験により、実施例及び比較例で製造した貼付剤について、薬物の皮膚透過性を評価した。各サンプリングポイントにおける累積皮膚透過量を表1に併せて示す。なお、実施例1及び比較例1で製造したチザニジンを含む貼付剤については、ヘアレスラット腹部皮膚を、実施例2及び比較例2で製造したオキシコドンを含む貼付剤については、ブタ皮膚を用いて試験を行った。
【0034】
【表1】
【0035】
ソルビン酸を含む実施例1‐1の貼付剤は、ソルビン酸を含まず、これに替えて高級脂肪酸を含む比較例1−1〜比較例1−4の貼付剤に比べ、高い皮膚透過性を示した。チザニジンに替えてオキシコドンを含む実施例2及び比較例2の貼付剤でも、チザニジンを含む貼付剤と同様に、ソルビン酸を含む本発明の貼付剤(実施例2−1及び実施例2−2)は、ソルビン酸を含まない貼付剤に比べて高い皮膚透過性を示した。
【0036】
(実施例3)
[ソルビン酸及び塩基成分の至適含有量の検討]
表2に示す組成(重量%)で、貼付剤を製造した。得られた貼付剤について、ラット皮膚を用いたin vitro皮膚透過性試験を行った。結果を併せて表2に示す。
【0037】
【表2】
【0038】
ソルビン酸を含有する実施例3−1〜実施例3−9の貼付剤はいずれも優れた皮膚透過性を示したが、実施例3−1の貼付剤は、塩基成分に対するソルビン酸の含有量が少ないため、やや皮膚透過性が劣っていた。チザニジンに対するソルビン酸の含有量が多い実施例3−7〜実施例3−9の貼付剤も、皮膚透過性がやや劣っていた。
【0039】
(実施例4)
[至適塩基成分の検討]
表3に示す組成(重量%)で、ソルビン酸及び種々の塩基性分を含む貼付剤を製造した。得られた貼付剤について、ラット皮膚を用いたin vitro皮膚透過性試験を行った。結果を併せて表3に示す。
【0040】
【表3】
【0041】
実施例4−1〜実施例4−8の貼付剤は、いずれもソルビン酸を含み、薬物に対するソルビン酸の含有比率及び、ソルビン酸に対する塩基性分の含有比率が適切であったため、優れた皮膚透過性を示した。
【0042】
(実施例5)
表4に示す組成(重量%)で、貼付剤を製造した。得られた貼付剤について、ブタ皮膚を用いたin vitro皮膚透過性試験を行った。結果を併せて表4に示す。
【0043】
【表4】
【0044】
ソルビン酸成分として、ソルビン酸カリウムを用いた場合も、ソルビン酸を用いた場合と同様に高い皮膚透過性を示した。
【0045】
(実施例6)
表5に示す組成(重量%)で、貼付剤を製造した。得られた貼付剤について、ブタ皮膚を用いたin vitro皮膚透過性試験を行った。結果を併せて表5に示す。
【0046】
【表5】
【0047】
ソルビン酸を含む実施例6‐1〜実施例6−4の貼付剤は、いずれも優れた皮膚透過性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の経皮吸収組成物は、例えば、チザニジン、オキシコドン等の塩基性薬物を含む貼付製剤として利用され得る。