(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-149815(P2017-149815A)
(43)【公開日】2017年8月31日
(54)【発明の名称】無溶剤耐熱性塗料
(51)【国際特許分類】
C09D 183/04 20060101AFI20170804BHJP
C09D 163/00 20060101ALI20170804BHJP
C09D 167/00 20060101ALI20170804BHJP
C09D 7/12 20060101ALI20170804BHJP
【FI】
C09D183/04
C09D163/00
C09D167/00
C09D7/12
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-31791(P2016-31791)
(22)【出願日】2016年2月23日
(71)【出願人】
【識別番号】503285058
【氏名又は名称】セラミックコート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141221
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 和明
(74)【代理人】
【識別番号】100091764
【弁理士】
【氏名又は名称】窪谷 剛至
(74)【代理人】
【識別番号】100103366
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 礼至
(72)【発明者】
【氏名】北岡 正宏
(72)【発明者】
【氏名】辺見 均
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038DB061
4J038DD181
4J038DL031
4J038HA166
4J038JA42
4J038JC22
4J038JC30
4J038KA03
4J038KA04
4J038KA05
4J038NA14
4J038PC02
(57)【要約】
【目的】600℃の高温域においても使用可能な無溶剤耐熱性塗膜を得る。
【構成】5〜30重量%のシリコーン樹脂、1〜10重量%のアルコキシシラン類、1〜10重量%のエポキシ樹脂、1〜10重量%のポリエステル樹脂、0〜20重量%のアルコール類やエステル類、1〜20重量%のリン酸塩、5〜30重量%の金属酸化物を主成分として、硬化触媒として0.5〜1.0重量%の金属塩、架橋剤として1〜10重量%の有機酸無水物からなる無溶剤耐熱性塗料、有機則に該当しない耐熱塗料を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5〜30重量%のシリコーン樹脂、1〜10重量%のアルコキシシラン類、1〜10重量%のエポキシ樹脂、1〜10重量%のポリエステル樹脂、1〜20重量%のリン酸塩、5〜30重量%の金属酸化物を主成分として、硬化触媒として0.5〜1.0重量%の金属塩、1〜10重量%の有機酸無水物を含むことを特徴とする無溶剤耐熱性塗料。
【請求項2】
前記シリコーン樹脂は、シリコーンオリゴマーからなることを特徴とする請求項1記載の無溶剤耐熱性塗料。
【請求項3】
前記アルコキシシラン類は、アルキルアルコキシシラン若しくはアリールアルコキシシランであり、アルキル基がメチル、ジメチル、n−プロピル、アリール基がフェニル、アルコキシ基がメトキシ、ジメトキシ、トリメトキシ、エトキシ、ジエトキシ、トリエトキシからなることを特徴とする請求項1記載の無溶剤耐熱性塗料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーンオリゴマーを主成分として使用し、汎用樹脂、金属酸化物並びに防食材を用いてなる600℃までの温度域で耐熱性と防食性を有し、加えて環境に優しく人体に悪影響を与えない無溶剤耐熱性塗料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、600℃対応の耐熱性塗料は殆どのビヒクルとしてメチルフェニルシリコーン、またはその変性シリコーン或いはシリコーンエポキシ変性ワニスなどを使用して製造されている。
それらの耐熱性塗料にはキシレンやトルエンなどの第2種有機溶剤(労働安全衛生法の規定に基づく有機溶剤中毒予防規則に準拠する)が含まれており、これは耐熱性塗料の操作性並びに塗布性を向上させるために使用されているのであるが、人体の健康に被害を与えない無溶剤耐熱性塗料の範疇には入らず、皮膚や粘膜、肺から吸収され中毒や障害を引き起こすなど人体に悪影響を与える恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−264028号公報
【0004】
【特許文献2】特開平10−195332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような従来技術の問題に対処してなされたもので、人体に悪影響を及ぼす恐れのある有機溶剤を使わないで操作性並びに塗布性を向上させるとともに、シリコーンオリゴマーを主剤として使用し、汎用固形樹脂や防食性材料を用いることにより安定した無溶剤耐熱性塗料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の無溶剤耐熱性塗料は、シリコーンオリゴマーからなるシリコーン樹脂に反応性を有するアルコキシシラン類並びに開始剤として金属塩を加えて架橋構造を付与させて耐熱性を向上させるものである。
【0007】
本発明において、エポキシ樹脂を加え、硬化触媒として有機酸無水物を加えることにより前記シリコーン樹脂に加えて架橋構造を付与させることにより更なる耐熱性向上に寄与させるものである。
【0008】
本発明において、銅鉄マンガン複合酸化物(黒色顔料)やタルクなどの金属酸化物を加えることにより塗布面への外力による影響、すなわち傷などの圧痕を少なくして見栄えを向上させるものである。
【0009】
本発明において、人体に悪影響を与えない溶剤としてn−プロピルアルコールやプロピレングリコールモノメチルアセテートなどを加えることにより、操作性や塗布性を向上させると同時に表面潤滑性に優れ、かつ可撓性が良好で表面のべたつきのない耐熱性塗膜を形成するものである。
【発明の効果】
【0010】
このように本発明の無溶剤耐熱性塗料においては、シリコーンオリゴマー並びに反応性の優れたアルコキシシラン類を含み、更にエポキシ樹脂を含んでいるので耐久性の優れた架橋構造を有しており、銅鉄マンガン複合酸化物やタルクなどの金属酸化物を含むことにより外力による傷や圧痕に対する耐久性に優れる無溶剤耐熱塗料を作ることができる。
また、人体に悪影響を与えない溶剤であるn−プロピルアルコールやプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含むことにより操作性や塗布性を向上させることを可能とした有機側に該当しない耐熱性塗料を完成させることができる。
【0011】
本発明は、メチルフェニルシリコーンオリゴマーからなるシリコーン樹脂(メトキシ基含有率10〜30重量%)5〜30重量%に架橋反応性を有するメチルトリメトキシシランやジメチルジメトキシシランなどのアルコキシシラン類を1〜5重量%配合させ、これらアルコキシシラン類の硬化触媒としてアルミニウムキレート並びにブチルチタネートを0.1〜1.0重量%加えて架橋構造を形成させて耐熱性を向上させる組成である。
【0012】
アルコキシシラン類としては前記のメチルトリメトキシシランやジメチルジメトキシシランに限定されるものではなく、エトキシ基やプロポキシ基などのアルコキシ基を分子内に2個以上有するものであれば使用することができる。
【0013】
硬化触媒としてのアルミニウムキレートはアルミニウムトリス(アセチルアセトネート)やアルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)を用い、テトラアルキルチタネートを混合して用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
前記シリコーン樹脂にビスフェノール系エポキシ樹脂からなるエポキシ樹脂を1〜10重量%加え、架橋剤として有機酸無水物を加えて架橋構造を形成させることによりシリコーン樹脂とエポキシ樹脂の相乗効果を発揮させて耐熱性を向上させる組成である。
【0015】
エポキシ樹脂としてはビスフェノール系エポキシ樹脂に限定されるものではなく、2個以上のエポキシ基を分子内に有するエポキシ化合物であれば使用することができる。
【0016】
架橋剤としての有機酸無水物としてはフタル酸無水物を用いることができるが、この化合物に限定されるものではない。
【0017】
シリコーン樹脂やエポキシ樹脂と相溶性の優れた銅鉄マンガン複合酸化物(黒色顔料)やタルクなどの金属酸化物を5〜30重量%配合させて塗布面への外力による影響、すなわち外力による傷や圧痕を少なくして見栄えの良い耐熱性を向上させる。
【0018】
金属酸化物は銅鉄マンガン複合残価物(黒色顔料)やタルクに限定されるものではなくシリコーン樹脂やエポキシ樹脂と相溶性のある金属酸化物を使用することができる。
【0019】
アルコール類としてn−プロピルアルコールやプロピレングリコールモノカルボン酸エステルを1〜20重量%加えて前記シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、金属酸化物などを均一に分散させることにより操作性や塗布性を向上させる性能を付与させると同時に人体に悪影響を与えない耐熱性塗料となる。
【0020】
アルコール類としてはn−プロピルアルコールに限定されるものではなく、人体と環境に優しいアルコール類は使用することができる。
【0021】
プロピレングリコールモノカルボン酸エステルとしては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0022】
防錆剤として前記シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、金属酸化物、アルコール類と相溶性の優れたリン酸アルミニウムやリン酸亜鉛を1〜20重量%加えることである。防錆剤としてリン酸アルミニウムやリン酸亜鉛に限定されるものではく、前記媒体と相溶性が良く且つ耐熱性の優れたリン酸塩を使用することができる。
【0023】
ポリエステル樹脂は1〜10重量%加えるのであるが、前記シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、金属酸化物、アルコール類、リン酸塩類と相溶性の優れた不飽和ポリエステルを使用することにより光り輝く表面を形成するが、これに限定されるものではない。
【実施例1】
【0025】
メチルフェニルシリコーンオリゴマー(メトシキ基 17重量%)20重量部、メチルトリメトキシシラン13重量部、ジメチルジメトキシシラン3重量部、メチルシリコーンオリゴマー(メトシキ基 25重量%)3重量部、ビスフェノール系エポキシ樹脂3重量部、ポリエステル樹脂3重量部を混合し、均一混合溶液とする。
この混合溶液に銅鉄マンガン複合酸化物25重量部とタルク5重量部を加えて均一混合懸濁液とし、リン酸亜鉛8重量部とリン酸アルミニウム8重量部を加えて均一混合懸濁液とする。
この均一混合懸濁液にアルミニウムトリス(アセチルアセトネート)0.5重量部とテトラブチルチタネート0.5重量部を加えて良く混合することにより無溶剤耐熱性塗料の溶液を作製する。
【0026】
100mm×100mm×0.5mmのSPCC−SD(冷延鋼板)上に前記無溶剤耐熱性塗料30μmの厚さに塗布し所定の温度で所定の時間加熱することにより耐熱性塗料の塗膜を作製した。表1に塗布膜の加熱条件並びに評価結果である外観普遍性、付着性、防食性を示した。
【0027】
外観普遍性は加熱後の表面の色調変化並びに凹凸を目視で観察し、色調の変化並びに凹凸が無ければ異常なしと判断した。
【0028】
付着性試験はJIS K5400−8.5に基づく碁盤目試験により評価した。表1に記載した加熱条件で調製した試料はいずれも付着性は良好で剥離現象は起こらなかった。
【0029】
表1に示した試料の防食性をJIS Z2371に基づいて行ったところいずれの試料においても腐食現象は起こらず、色調の変化並びに凹凸の発生は認められず良好な結果を与えた。
【手続補正書】
【提出日】2017年3月14日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5〜30重量%のシリコーン樹脂、1〜10重量%のアルコキシシラン類、1〜10重量%のエポキシ樹脂、1〜10重量%のポリエステル樹脂、1〜20重量%のリン酸塩、5〜30重量%の金属酸化物を主成分として、硬化触媒として0.5〜1.0重量%の金属塩、1〜10重量%の有機酸無水物を含むことを特徴とする耐熱性塗料。
【請求項2】
前記シリコーン樹脂は、シリコーンオリゴマーからなることを特徴とする請求項1記載の耐熱性塗料。
【請求項3】
前記アルコキシシラン類は、アルキルアルコキシシラン若しくはアリールアルコキシシランであり、アルキル基がメチル、ジメチル、n−プロピル、アリール基がフェニル、アルコキシ基がメトキシ、ジメトキシ、トリメトキシ、エトキシ、ジエトキシ、トリエトキシからなることを特徴とする請求項1記載の耐熱性塗料。
【請求項4】
溶剤であるアルコール類を含むことを特徴とする請求項1記載の耐熱性塗料。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーンオリゴマーを主成分として使用し、汎用樹脂、金属酸化物並びに防食材を用いてなる600℃までの温度域で耐熱性と防食性を有し、加えて環境に優しく人体に悪影響を与えない
耐熱性塗料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、600℃対応の耐熱性塗料は殆どのビヒクルとしてメチルフェニルシリコーン、またはその変性シリコーン或いはシリコーンエポキシ変性ワニスなどを使用して製造されている。
それらの耐熱性塗料には
エチルベンゼン、キシレンやトルエンなどの第2種有機溶剤(労働安全衛生法の規定に基づく有機溶剤中毒予防規則に準拠する)が含まれており、これは耐熱性塗料の操作性並びに塗布性を向上させるために使用されているのであるが、人体の健康に被害を与えない無溶剤耐熱性塗料の範疇には入らず、皮膚や粘膜、肺から吸収され中毒や障害を引き起こすなど人体に悪影響を与える恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−264028号公報
【0004】
【特許文献2】特開平10−195332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような従来技術の問題に対処してなされたもので、人体に悪影響を及ぼす恐れのある有機溶剤を使わないで操作性並びに塗布性を向上させるとともに、シリコーンオリゴマーを主剤として使用し、汎用固形樹脂や防食性材料を用いることにより安定した
耐熱性塗料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の
耐熱性塗料は、シリコーンオリゴマーからなるシリコーン樹脂に反応性を有するアルコキシシラン類並びに開始剤として金属塩を加えて架橋構造を付与させて耐熱性を向上させるものである。
【0007】
本発明において、エポキシ樹脂を加え、硬化触媒として有機酸無水物を加えることにより前記シリコーン樹脂に加えて架橋構造を付与させることにより更なる耐熱性向上に寄与させるものである。
【0008】
本発明において、銅鉄マンガン複合酸化物(黒色顔料)やタルクなどの金属酸化物を加えることにより塗布面への外力による影響、すなわち傷などの圧痕を少なくして見栄えを向上させるものである。
【0009】
本発明において、人体に悪影響を与えない溶剤としてn−プロピルアルコールやプロピレングリコールモノメチルアセテートなどを加えることにより、操作性や塗布性を向上させると同時に表面潤滑性に優れ、かつ可撓性が良好で表面のべたつきのない耐熱性塗膜を形成するものである。
【発明の効果】
【0010】
このように本発明の
耐熱性塗料においては、シリコーンオリゴマー並びに反応性の優れたアルコキシシラン類を含み、更にエポキシ樹脂を含んでいるので耐久性の優れた架橋構造を有しており、銅鉄マンガン複合酸化物やタルクなどの金属酸化物を含むことにより外力による傷や圧痕に対する耐久性に優れる
耐熱塗料を作ることができる。
また、人体に悪影響を与えない溶剤である
アルコール類を含むことにより操作性や塗布性を向上させることを可能とした有機側に該当しない耐熱性塗料を完成させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、メチルフェニルシリコーンオリゴマーからなるシリコーン樹脂(メトキシ基含有率10〜30重量%)5〜30重量%に架橋反応性を有するメチルトリメトキシシランやジメチルジメトキシシランなどのアルコキシシラン類を1〜5重量%配合させ、これらアルコキシシラン類の硬化触媒としてアルミニウムキレート並びにブチルチタネートを0.1〜1.0重量%加えて架橋構造を形成させて耐熱性を向上させる組成である。
【0012】
アルコキシシラン類としては前記のメチルトリメトキシシランやジメチルジメトキシシランに限定されるものではなく、エトキシ基やプロポキシ基などのアルコキシ基を分子内に2個以上有するものであれば使用することができる。
【0013】
硬化触媒としてのアルミニウムキレートはアルミニウムトリス(アセチルアセトネート)やアルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)を用い、テトラアルキルチタネートを混合して用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
前記シリコーン樹脂にビスフェノール系エポキシ樹脂からなるエポキシ樹脂を1〜10重量%加え、架橋剤として有機酸無水物を加えて架橋構造を形成させることによりシリコーン樹脂とエポキシ樹脂の相乗効果を発揮させて耐熱性を向上させる組成である。
【0015】
エポキシ樹脂としてはビスフェノール系エポキシ樹脂に限定されるものではなく、2個以上のエポキシ基を分子内に有するエポキシ化合物であれば使用することができる。
【0016】
架橋剤としての有機酸無水物としてはフタル酸無水物を用いることができるが、この化合物に限定されるものではない。
【0017】
シリコーン樹脂やエポキシ樹脂と相溶性の優れた銅鉄マンガン複合酸化物(黒色顔料)やタルクなどの金属酸化物を5〜30重量%配合させて塗布面への外力による影響、すなわち外力による傷や圧痕を少なくして見栄えの良い耐熱性を向上させる。
【0018】
金属酸化物は銅鉄マンガン複合残価物(黒色顔料)やタルクに限定されるものではなくシリコーン樹脂やエポキシ樹脂と相溶性のある金属酸化物を使用することができる。
【0019】
アルコール類としてn−プロピルアルコールやプロピレングリコールモノカルボン酸エステルを1〜20重量%加えて前記シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、金属酸化物などを均一に分散させることにより操作性や塗布性を向上させる性能を付与させると同時に人体に悪影響を与えない耐熱性塗料となる。
【0020】
アルコール類としてはn−プロピルアルコールに限定されるものではなく、人体と環境に優しいアルコール類は使用することができる。
【0021】
プロピレングリコールモノカルボン酸エステルとしては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0022】
防錆剤として前記シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、金属酸化物、アルコール類と相溶性の優れたリン酸アルミニウムやリン酸亜鉛を1〜20重量%加えることである。防錆剤としてリン酸アルミニウムやリン酸亜鉛に限定されるものではく、前記媒体と相溶性が良く且つ耐熱性の優れたリン酸塩を使用することができる。
【0023】
ポリエステル樹脂は1〜10重量%加えるのであるが、前記シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、金属酸化物、アルコール類、リン酸塩類と相溶性の優れた不飽和ポリエステルを使用することにより光り輝く表面を形成するが、これに限定されるものではない。
【実施例1】
【0025】
メチルフェニルシリコーンオリゴマー(メトシキ基 17重量%)20重量部、メチルトリメトキシシラン13重量部、ジメチルジメトキシシラン3重量部、メチルシリコーンオリゴマー(メトシキ基 25重量%)3重量部、ビスフェノール系エポキシ樹脂3重量部、ポリエステル樹脂3重量部を混合し、均一混合溶液とする。
この混合溶液に銅鉄マンガン複合酸化物25重量部とタルク5重量部を加えて均一混合懸濁液とし、リン酸亜鉛8重量部とリン酸アルミニウム8重量部を加えて均一混合懸濁液とする。
この均一混合懸濁液にアルミニウムトリス(アセチルアセトネート)0.5重量部とテトラブチルチタネート0.5重量部を加えて良く混合することにより
耐熱性塗料の溶液を作製する。
【0026】
100mm×100mm×0.5mmのSPCC−SD(冷延鋼板)上に前記
耐熱性塗料30μmの厚さに塗布し所定の温度で所定の時間加熱することにより耐熱性塗料の塗膜を作製した。表1に塗布膜の加熱条件並びに評価結果である外観普遍性、付着性、防食性を示した。
【0027】
外観普遍性は加熱後の表面の色調変化並びに凹凸を目視で観察し、色調の変化並びに凹凸が無ければ異常なしと判断した。
【0028】
付着性試験はJIS K5400−8.5に基づく碁盤目試験により評価した。表1に記載した加熱条件で調製した試料はいずれも付着性は良好で剥離現象は起こらなかった。
【0029】
表1に示した試料の防食性をJIS Z2371に基づいて行ったところいずれの試料においても腐食現象は起こらず、色調の変化並びに凹凸の発生は認められず良好な結果を与えた。
【手続補正書】
【提出日】2017年6月1日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5〜30重量%のシリコーン樹脂、1〜10重量%のアルコキシシラン類、1〜10重量%のエポキシ樹脂、1〜10重量%のポリエステル樹脂、1〜20重量%のリン酸塩、5〜30重量%の金属酸化物を主成分として、硬化触媒として0.5〜1.0重量%の金属塩、1〜10重量%の有機酸無水物を含むことを特徴とする無溶剤耐熱性塗料。
【請求項2】
前記シリコーン樹脂は、シリコーンオリゴマーからなることを特徴とする請求項1記載の無溶剤耐熱性塗料。
【請求項3】
前記アルコキシシラン類は、アルキルアルコキシシラン若しくはアリールアルコキシシランであり、アルキル基がメチル、ジメチル、n−プロピル、アリール基がフェニル、アルコキシ基がメトキシ、ジメトキシ、トリメトキシ、エトキシ、ジエトキシ、トリエトキシからなることを特徴とする請求項1記載の無溶剤耐熱性塗料。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーンオリゴマーを主成分として使用し、汎用樹脂、金属酸化物並びに防食材を用いてなる600℃までの温度域で耐熱性と防食性を有し、加えて環境に優しく人体に悪影響を与えない
無溶剤耐熱性塗料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、600℃対応の耐熱性塗料は殆どのビヒクルとしてメチルフェニルシリコーン、またはその変性シリコーン或いはシリコーンエポキシ変性ワニスなどを使用して製造されている。
それらの耐熱性塗料にはキシレンやトルエンなどの第2種有機溶剤(労働安全衛生法の規定に基づく有機溶剤中毒予防規則に準拠する)が含まれており、これは耐熱性塗料の操作性並びに塗布性を向上させるために使用されているのであるが、人体の健康に被害を与えない無溶剤耐熱性塗料の範疇には入らず、皮膚や粘膜、肺から吸収され中毒や障害を引き起こすなど人体に悪影響を与える恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−264028号公報
【0004】
【特許文献2】特開平10−195332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような従来技術の問題に対処してなされたもので、人体に悪影響を及ぼす恐れのある有機溶剤を使わないで操作性並びに塗布性を向上させるとともに、シリコーンオリゴマーを主剤として使用し、汎用固形樹脂や防食性材料を用いることにより安定した
無溶剤耐熱性塗料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の
無溶剤耐熱性塗料は、シリコーンオリゴマーからなるシリコーン樹脂に反応性を有するアルコキシシラン類並びに開始剤として金属塩を加えて架橋構造を付与させて耐熱性を向上させるものである。
【0007】
本発明において、エポキシ樹脂を加え、硬化触媒として有機酸無水物を加えることにより前記シリコーン樹脂に加えて架橋構造を付与させることにより更なる耐熱性向上に寄与させるものである。
【0008】
本発明において、銅鉄マンガン複合酸化物(黒色顔料)やタルクなどの金属酸化物を加えることにより塗布面への外力による影響、すなわち傷などの圧痕を少なくして見栄えを向上させるものである。
【発明の効果】
【0009】
このように本発明の
無溶剤耐熱性塗料においては、シリコーンオリゴマー並びに反応性の優れたアルコキシシラン類を含み、更にエポキシ樹脂を含んでいるので耐久性の優れた架橋構造を有しており、銅鉄マンガン複合酸化物やタルクなどの金属酸化物を含むことにより外力による傷や圧痕に対する耐久性に優れる
無溶剤耐熱塗料を作ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、メチルフェニルシリコーンオリゴマーからなるシリコーン樹脂(メトキシ基含有率10〜30重量%)5〜30重量%に架橋反応性を有するメチルトリメトキシシランやジメチルジメトキシシランなどのアルコキシシラン類を1〜5重量%配合させ、これらアルコキシシラン類の硬化触媒としてアルミニウムキレート並びにブチルチタネートを0.1〜1.0重量%加えて架橋構造を形成させて耐熱性を向上させる組成である。
【0011】
アルコキシシラン類としては前記のメチルトリメトキシシランやジメチルジメトキシシランに限定されるものではなく、エトキシ基やプロポキシ基などのアルコキシ基を分子内に2個以上有するものであれば使用することができる。
【0012】
硬化触媒としてのアルミニウムキレートはアルミニウムトリス(アセチルアセトネート)やアルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)を用い、テトラアルキルチタネートを混合して用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
前記シリコーン樹脂にビスフェノール系エポキシ樹脂からなるエポキシ樹脂を1〜10重量%加え、架橋剤として有機酸無水物を加えて架橋構造を形成させることによりシリコーン樹脂とエポキシ樹脂の相乗効果を発揮させて耐熱性を向上させる組成である。
【0014】
エポキシ樹脂としてはビスフェノール系エポキシ樹脂に限定されるものではなく、2個以上のエポキシ基を分子内に有するエポキシ化合物であれば使用することができる。
【0015】
架橋剤としての有機酸無水物としてはフタル酸無水物を用いることができるが、この化合物に限定されるものではない。
【0016】
シリコーン樹脂やエポキシ樹脂と相溶性の優れた銅鉄マンガン複合酸化物(黒色顔料)やタルクなどの金属酸化物を5〜30重量%配合させて塗布面への外力による影響、すなわち外力による傷や圧痕を少なくして見栄えの良い耐熱性を向上させる。
【0017】
金属酸化物は銅鉄マンガン複合残価物(黒色顔料)やタルクに限定されるものではなくシリコーン樹脂やエポキシ樹脂と相溶性のある金属酸化物を使用することができる。
【0018】
防錆剤として前記シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、金属酸化物、アルコール類と相溶性の優れたリン酸アルミニウムやリン酸亜鉛を1〜20重量%加えることである。防錆剤としてリン酸アルミニウムやリン酸亜鉛に限定されるものではく、前記媒体と相溶性が良く且つ耐熱性の優れたリン酸塩を使用することができる。
【0019】
ポリエステル樹脂は1〜10重量%加えるのであるが、前記シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、金属酸化物、アルコール類、リン酸塩類と相溶性の優れた不飽和ポリエステルを使用することにより光り輝く表面を形成するが、これに限定されるものではない。
【実施例1】
【0021】
メチルフェニルシリコーンオリゴマー(メトシキ基 17重量%)20重量部、メチルトリメトキシシラン13重量部、ジメチルジメトキシシラン3重量部、メチルシリコーンオリゴマー(メトシキ基 25重量%)3重量部、ビスフェノール系エポキシ樹脂3重量部、ポリエステル樹脂3重量部を混合し、均一混合溶液とする。
この混合溶液に銅鉄マンガン複合酸化物25重量部とタルク5重量部を加えて均一混合懸濁液とし、リン酸亜鉛8重量部とリン酸アルミニウム8重量部を加えて均一混合懸濁液とする。
この均一混合懸濁液にアルミニウムトリス(アセチルアセトネート)0.5重量部とテトラブチルチタネート0.5重量部を加えて良く混合することにより
無溶剤耐熱性塗料の溶液を作製する。
【0022】
100mm×100mm×0.5mmのSPCC−SD(冷延鋼板)上に前記
無溶剤耐熱性塗料30μmの厚さに塗布し所定の温度で所定の時間加熱することにより耐熱性塗料の塗膜を作製した。表1に塗布膜の加熱条件並びに評価結果である外観普遍性、付着性、防食性を示した。
【0023】
外観普遍性は加熱後の表面の色調変化並びに凹凸を目視で観察し、色調の変化並びに凹凸が無ければ異常なしと判断した。
【0024】
付着性試験はJIS K5400−8.5に基づく碁盤目試験により評価した。表1に記載した加熱条件で調製した試料はいずれも付着性は良好で剥離現象は起こらなかった。
【0025】
表1に示した試料の防食性をJIS Z2371に基づいて行ったところいずれの試料においても腐食現象は起こらず、色調の変化並びに凹凸の発生は認められず良好な結果を与えた。