【課題】航空宇宙および自動車産業において、繊維強化複合材料の需要が拡大している。自動テープ積層(ATL)及び自動繊維配置(AFP)で使用するために好適である、使用される繊維質材料に対して、樹脂注入によってマトリックス樹脂を受容しやすくする、柔軟かつ予備成形可能な繊維用バインダーの提供。
【解決手段】ポリヒドロキシエーテル―ポリウレタンコポリマーと、メトキシアルキルメラミン架橋剤と、ブロックされたスルホン酸触媒とを含む、水性分散液からなるバインダー組成物。
前記ポリイソシアネートが、エチレンジイソシアネート、1,4―テトラメチレンジイソシアネート、1,6―ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4―トリメチル―1,6―ヘキサメチレンジイソシアネート、1,12―ドデカンジイソシアネート、シクロブタン―1,3―ジイソシアネート、シクロヘキサン―1,3―ジイソシアネート、1―イソシアネート―2―イソシアネートメチルシクロペンタン、イソホロンジイソシアネート、2,4―および/または2,6―ヘキサヒドロトルイレンジイソシアネート、2,4’―および/または4,4’―ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、a,a,a’,a―テトラメチル―1,3―および/または―1,4―キシリレンジイソシアネート、1,3―および1,4―キシリレンジイソシアネート、1―イソシアネート―1―メチル―4(3)―イソシアネートメチルシクロヘキサン、1,3―および1,4―フェニレンジイソシアネート、2,4―および/または2,6―トルイレンジイソシアネート、ジフェニルメタン―2,4’―および/または―4,4’―ジイソシアネート、ナフタレン―1,5―ジイソシアネート、トリフェニルメタン―4,4’,4”―トリイソシアネート、ポリフェニルポリメエチレンポリイソシアネートからなる群から選択される、請求項1に記載のバインダー組成物。
ポリヒドロキシエーテル部分が、ビスフェノールA(2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン)とエピクロロヒドリンに由来する、請求項11に記載のバインダー組成物。
【背景技術】
【0001】
本開示は、構造的複合物成分の予備成形および樹脂注入製造の分野に関する。
【0002】
近年、航空宇宙および自動車産業は、構造的構成要素を製造するための樹脂注入過程用途に増大する関心を示した。
【0003】
乾式の、柔軟かつ予備成形可能な繊維生成物は、実際のところ、より長い貯蔵寿命およびより複雑な幾何学的形状および周囲の狭い区域への適用性のために、標準的な事前含浸された(材料に対して著しい利点を有し得る。
【0004】
材料選択および処理段階の相互依存性および重大性の態様は、自動積層/注入過程において特に重要であり、繊維配置、予備成形、および樹脂射出の段階は様相において別個であるが、材料選択および処理に関する態様に結合される。
【0005】
サイジング剤およびバインダーは、実際のところ、複合構造体の処理および熱機械的性能に同時に影響を与える可能性がある。
【0006】
組成物硬化動力学および熱機械的特性は、実際のところ、繊維質成分とホストマトリックスとの間の界面領域の形成によって影響され得る。加えて、注入段階中に生じる繊維/サイジング剤/樹脂相互作用は、化学両論的および組成的不均衡領域の展開によってウェットアウトおよび局所流動作に影響を与える可能性がある。
【0007】
組成物中に使用される大抵の繊維および繊維質生成物は、取扱い、圧縮および過程で誘発される損傷からの繊維の保護、樹脂による繊維の適合性および湿潤の補助、および組成物性能の全体的向上を容易にすることを含む、複数の目的に役立つ、サイジング剤、バインダー、および/または上塗りでコーティングされる。
【0008】
いくつかの乾式単方向テープ生成物は、単方向炭素繊維を支持するために担体織布またはスクリムに熱または接着結合された、単方向炭素繊維の炭素ウェブを利用する。いくつかの商業版は、V2 Composites、Sigmatex、および他のテキスタイル生産者から市販される。これらの現在の生成物の限界は、これらの生成物を切れ目をいれ、縁部を変形させ、ほつれさせることなく、自動積層過程によって適用することができないことにある。
【0009】
NCFテキスタイル(ノンクリンプ織布)等の他の従来の材料において、単方向(UD)繊維トウは、いくつかの炭素トウを交差する縫糸によって一緒に保持される。いくつかの場合において、非常に細い繊維は、UD繊維トウにより多くの横方向の安定性を提供するために、ウェブを交差する方向全体に積層される。この場合において、トウは拡幅されず、2mmもの幅のトウ間間隙が存在する。SaertexおよびSigmatexは、この種類の生成物を供給する。
【0010】
乾式単方向テープを形成する別の従来の方法は、繊維のウェブを拡幅することと、低い熱活性点を有する、通常はエポキシコーティングされたガラス糸またはポリエステルもしくはポリアミド糸から作製されるバインダー化された細い糸で拡幅された繊維を保持し、テープ幅全体に通して、拡幅された繊維を一緒に保持することとを含む、技術である。保持する糸は、ウェブ繊維で織られるのではなく、ウェブの上面および/または底面上に堆積される。この種類の生成物において、ウェブ繊維は通常、十分に拡幅され、事前含浸テ
ープ機で生産された標準的拡幅テープと同様に、トウ画定およびトウ間間隙をほとんど残さない。
【0011】
最新式バインダー組成物または材料の解決法のいずれも、複合部品製造における後続する樹脂注入のためのプリフォームを形成するために、自動テープ積層(ATL)および自動繊維配置(AFP)で使用するために好適である、乾式繊維質材料の生産のための物理的、熱機械的、および過程要求項目を満たさないと考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
自動積層過程のため好適な狭い幅の繊維質生成物の製造に関連付けられる技術的挑戦、より詳細には、ATLおよびAFPは、切れ目をいれ、取扱い、および積層過程中、繊維に結合力および一貫性を提供し、過程速度および過程能力に劇的に影響を与え得るほぐれた縁部の生成を阻止することができる、バインダー組成物の必要性を決定した。
【0016】
本開示の一態様は、独自の液体バインダー組成物で処理された構造繊維の乾式自立性繊維質材料にあり、もたらされるバインダー処理された繊維質材料は、液体樹脂に対して透過性であり、バインダー組成物は、繊維質材料の表面に連続フィルムを形成しない。バインダー組成物は、15重量%以下、例えば、繊維質材料の全重量に基づき0.1〜15重量%の量で存在し、構造繊維は、繊維質材料の主要な成分である(例えば、繊維質材料の全重量に基づく50重量%超)。バインダー組成物で処理される初めの繊維質材料は、繊維(単方向または多方向繊維を含む)、ヤーン、トウ、織布または不織布の形態であってもよい。
【0017】
一実施形態において、最新式の事前含浸テープと一致する面積重量の単方向構造繊維(例えば、炭素繊維)から構成される乾式単方向繊維ウェブは、ホットメルト型生産ラインで連続的過程を使用して、熱可塑性繊維の不織ベールに結合される。次いで、単方向テープ/ベールの結合された構造体は、本明細書に開示される液体バインダー組成物でコーテ
ィングされる。一実施形態において、不織ベールは、無作為に配列されたエポキシ樹脂に溶解可能である熱可塑性繊維を含有する。樹脂溶解可能なベールの詳細な説明は、例えば、米国公開特許出願第2006/0252334号に見出され得る。単方向テープは、構造繊維のウェブを拡幅し、それを行うテープ機を使用する従来の事前含浸方法によって作製されてもよい。次いで、樹脂溶解可能な熱可塑性ベールは、テープ形態を維持するように拡幅された構造繊維に積層される。
【0018】
別の実施形態において、構造繊維から構成される不織ベール(例えば、炭素繊維)は、繊維ウェブ(すなわち、拡幅された繊維のウェブ)に積層され、熱可塑性変性エポキシ系バインダーは、ベール上にコーティングまたは堆積され、次いで、ベールは、乾式テープを形成するために事前含浸テープ機を使用して、繊維ウェブに積層される。次に、乾式テープは、本明細書に開示される水性バインダー組成物を用いるディップコーティングによってコーティングされる。本明細書に開示される水性バインダー組成物は、変性エポキシ系バインダーを完全にはコーティングしない。もたらされるバインダーコーティングテープは、例えば、24インチ以下、または1.5インチ以下のATL/AFPのために好適である狭いテープまたはトウの所望される幅に切れ目をいれる。一実施形態において、変性エポキシ系バインダーは、1つまたは複数の多官能基性エポキシ樹脂および熱可塑性ポリマーを含有し、粒子または膜の形態であってもよい。繊維ウェブおよびベールの表面上での変性エポキシ系バインダーの組み込みは、スリットテープ/トウの成形面または先に積層されたテープ/トウへの結合を更に容易にし得る。
【0019】
本明細書に開示される独自の液体バインダー組成物は、繊維質材料をコーティングまたは浸潤するために使用される。バインダー処理された繊維質材料は、プリフォームの製造のために好適であり、これは、次に、液体樹脂と共に注入される。したがって、バインダー処理された繊維質材料は、樹脂注入前は、非常に低い樹脂含有量(すなわち、後に射出されるマトリックス樹脂ではなく、バインダー樹脂含有量)である、流体透過性の生成物である。次いで、樹脂注入されたプリフォームは硬化されて、複合部品を形成する。
【0020】
上述の液体バインダー組成物は、(i)ポリヒドロキシエーテル、ポリウレタン、それらのコポリマー、それらの反応生成物、もしくはそれらの組み合わせから選択される1つまたは複数のポリマー、(ii)架橋剤、ならびに任意選択で(iii)触媒を含有する水性分散液に基づく。
【0021】
一実施形態において、バインダー組成物は、常温で繊維ヤーン/トウまたは繊維質テキスタイルをコーティングまたは浸潤するためのポリマー乳濁液として適用される。次いで、水は、所望される物理的特性バランスを得るために制御時間/温度プロファイルに従って除去/蒸発される。もたらされるコーティングヤーン/トウまたは繊維質テキスタイルは、自動テープならびにプリフォームを製造するための自動テープ積層(ATL)および自動繊維配置(AFP)等の繊維積層技術と共に使用するために好適であり、これは後続する樹脂注入過程において液体マトリックス樹脂を受容するように構成される。バインダー組成物は、最終生成物の全重量に対して0.1〜15重量%の濃度のヤーン/トウまたはテキスタイルに適用される。
【0022】
バインダー組成物が大きな寸法で繊維質材料に適用されるとき、もたらされるバインダー過程された材料は、ATLおよびAFP過程によって乾式繊維プリフォームの生産において使用するために好適であるように、狭い幅を有する細長いテープまたはトウに切れ目をいれることができる。本発明のバインダー組成物は、樹脂と共に注入される前にコーティングまたは浸潤されるヤーン/トウまたは繊維質テキスタイルのより狭い生成物への取り扱いおよび切れ目をいれ、ならびにプリフォームへの成形を一貫して改善する。バインダー組成物は、また、乾燥ならびに高温/湿度(H/W)状態、ならびに機械的性能にお
けるガラス転移温度(Tg)等の重要な積層の物理的特性を過度に犠牲にすることなく、注入および硬化後のコーティング繊維質成分と複合マトリックスとの間の結合強度における改善を提供する。
【0023】
プリフォームおよび複合部品を生成する際の性能は、狭いテープに切れ目をいれるための単方向構造繊維テキスタイルを安定化することに役立ち、テープ積層過程およびプリフォーム製造に役立ち、樹脂注入過程も最終複合部品の機械的性能も妨げない、バインダーを使用することによって増大する。更に、いくつかの実施形態において、バインダーコーティングし、切れ目をいれる前に、非常に軽い不織ベールが単方向構造繊維テキスタイルに結合される。ベールは、樹脂射出サイクル中の面内樹脂拡散を高める。いくつかの態様において、単方向構造繊維テキスタイルの穿通は、樹脂注入過程中、テキスタイル材料の厚さを介する樹脂拡散を改善するために役立つ場合がある。
【0024】
ATL/AFP過程において乾式単方向テープを使用することのもたらされる利益は、低減された接触労力による必要とされるプリフォームの効率的生成、高い積層率、および原位置様式でプリフォームを生成する能力を含み、熱および圧力のいずれの専用予備成形サイクルの必要性も取り除く。より伝統的テキスタイル手順と比較して、乾式ATL/AFPは、テキスタイルロールから大きいプライを入れ子状にするいずれの必要性も取り除くため、非常に低減された水準の材料スクラップを生み出すことを期待される。
【0025】
伝統的テキスタイルに勝る、乾式単方向テープから作製される組成物に対してもたらされる利益は、改善された機械的特性、非常に良好な繊維体積分率、および非常に軽いベールの追加によって劣化されない優れた硬化プライの厚さ(CPT)を含む。複合繊維体積分率は、以下の方程式を使用して計算され、
【数1】
式中、
V
f=繊維体積分率、
W
f=繊維重量、
W
m=マトリックス樹脂重量、
ρ
f=繊維密度、
ρ
m=マトリックス樹脂密度である。
【0026】
CPTは個々のプライの理論的厚さであり、これは繊維面積重量、樹脂含有量、繊維密度、および樹脂密度の関数である。
【0027】
付加的利益として、ベールは、構造繊維のプライの間の層間領域に位置付けられ、かつ樹脂で高度に充填されており、もたらされる複合体の更なる強靭化用の強靭化粒子または強靭化繊維等の材料のための担体として機能する場合がある。
【0028】
高品質のスリットテープおよびスリットトウは、微繊維の間の十分に高い結合力によって得られる場合がある。良好な結合力は、個々の微繊維が切れ目をいれる過程およびテープ/トウが自動機によって処理されるとき等の他の後続する取り扱い中に、スリットテープ/トウが分離することを阻止する場合がある。
【0029】
いくつかの態様において、本明細書に開示される液体バインダー組成物は、切れ目をいれる前に単方向テープの構造体に浸透し、微繊維をまとめる。この浸透は、もたらされる
スリットテープの幅を制御するためにも役立つ。
【0030】
いくつかの実施形態において、バインダーおよび/またはサイジング剤の種類および量は、特定の樹脂射出における自動積層過程または複合製造を阻害せず、複合体またはT
gの機械的性能を変更しない。
【0031】
いくつかの実施形態において、良好な積層性能および高い処理能力は、良好な結合力および安定性、特定の撹拌および摩擦での過程に対する良好な堅固さ、ならびに金型または第1のプライおよび後のプライに留める能力等のスリットテープ/トウの属性により得られる。
【0032】
繊維質材料のプライを金型または先のプライに留めることは、積層過程中、熱活性化されるバインダーを使用して達成される。バインダーが積層過程、複合体製造、複合体の機械的性能またはT
gを阻害しないことが好ましい。
【0033】
樹脂射出サイクル中のプリフォームによる樹脂拡散は、プリフォームの透過性および透過性の分布と比較される樹脂の移動の方向の関数であってもよい。例えば、いくつかの例において、単方向構造炭素繊維テキスタイルのプライに平行する注入は容易に得られ得るが、一方で厚さを通して樹脂を拡散させることは、例えば単方向テープの繊維の間の間隙または非常に小さい間隙のためにより難しく、したがって厚さを通した樹脂の流れを限定する場合がある。1cm
2毎に約10等のウェブの穿通を提供することは、樹脂がZ方向に十分に流れることを可能にする。片側テープ層の製造モードは、穿通に樹脂の流れを容易にさせる望ましさに影響を与える場合がある。例えば、25cc/分を超える厚さを通した空気透過性がプリフォームのために必要とされる場合があり、使用される樹脂システムの過程ウィンドウおよび注入されるプリフォームの厚さに応じて、50cc/分超が好ましい場合がある。
バインダー複合体
【0034】
バインダーは、構造繊維の結合力、結合構造繊維、および材料が積層過程中に静的位置に留まるように留めを提供するため等、様々な目的を有する。バインダーは、切れ目をいれる過程中に単方向またはテキスタイル材料層を形成する繊維の結合力を維持することを補助するように、選択されてもよい。バインダーが積層過程または複合製造、そして特に樹脂射出過程を阻害しなければ、有益である。繊維を結合するためのバインダーは、複合材料を形成するとき、樹脂マトリックスについて反応性または非反応性である場合があり、例としては、熱可塑性バインダーが挙げられる。一般的に、バインダーは、もたらされる複合体の機械的性能に影響を与え、そのT
gを低下させるべきではない。加えて、バインダーは処理し易く、低コストを有することが好ましい。
【0035】
本明細書に開示される目的のために構造繊維/テキスタイル材料を処理するためのバインダー組成物は、少なくとも1つのアミノプラスト架橋剤、および任意選択により、架橋反応を触媒するために十分な酸強度の触媒と組み合わせる、ポリウレタン、芳香族ポリヒドロキシエーテル、コポリマー、混合物、反応生成物、またはその配合物からなる群から選択される1つまたは複数のポリマーを含有する、水性バインダー組成物である。酸性触媒としては、カルボン酸、リン酸、酸性リン酸エステル、スルホン酸、ジスルホン酸等のプロトンを供与する酸、および/または塩化アルミニウム、ブロマイドもしくはハライド、鉄ハライド、ホウ素三ハロゲン化物等のルイス酸、ならびに当業者に周知である、両方のカテゴリーにある多くの他のものが挙げられ得るが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、架橋剤は、メラミン系架橋剤、例えば、三〜ヘキサ―メトキシアルキルメラミン級のアミノプラスト架橋剤である。
【0036】
ポリウレタンは、脂肪族または芳香族ポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオール、ならびに任意選択により、
陰イオンを形成することができ、かつイソシアネート基に反応性である少なくとも2つの基を有する化合物、
60〜400g/モルのM
nを有する低いモル質量のポリオール、
その組み合わせからなる群から選択される少なくとも400g/モルの数平均モル質量(M
n)を有する1つまたは複数のポリオールを用いてポリイソシアネートを反応させ、合成され得る。
【0037】
ポリウレタンを調整するために好適なポリイソシアネート(複数のイソシアネート基を有する化合物を意味する)は、任意の有機ポリイソシアネート、好ましくは単量体ジイソシアネートを含む。芳香族結合されたイソシアネート基を有するポリイソシアネートは除外されず、また、使用されてもよいが、ポリイソシアネート、特に、脂肪族および/または環状脂肪族結合されたイソシアネート基を有するジイソシアネートが特に好ましい。
【0038】
使用されてもよい好適なポリイソシアネートの例としては、エチレンジイソシアネート、1,4―テトラチレンジイソシアネート、1,6―ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4―トリメチル―1,6―ヘキサメチレンジイソシアネート、1,12―ドデカンジイソシアネート、シクロブタン―1,3―ジイソシアネート、シクロヘキサン―1,3―および/もしくは―1,4―ジイソシアネート、1―イソシアネート―2―イソシアネートメチルシクロペンタン、1―イソシアネート―3,3,5―トリメチル―5―イソシアネートメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネートまたはIPDI)、2,4―および/もしくは2,6―ヘキサヒドロトルイレンジイソシアネート、2,4’―および/もしくは4,4’―ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、a,a,a’,a―テトラメチル―1,3―および/もしくは―1,4―キシリレンジイソシアネート、1,3―および1,4―キシリレンジイソシアネート、1―イソシアネート―1―メチル―4(3)―イソシアネートメチルシクロヘキサン、1,3―および1,4―フェニレンジイソシアネート、2,4―および/もしくは2,6―トルイレンジイソシアネート、ジフェニルメタン―2,4’―および/または―4,4’―ジイソシアネート、ナフタレン―1,5―ジイソシアネート、トリフェニルメタン―4,4’,4”―トリイソシアネート、ホルムアルデヒドを有するアニリンを縮合することによって得た後、ホスゲン化した種類のポリフェニルポリメチレンポリイソシアネート、ならびに上記ポリイソシアネートの混合物が挙げられる。
【0039】
好適なポリオールは、400g/モル〜5000g/モルの数平均モル質量(M
n)を有することが好ましい。好適なポリオールの例としては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、またはそのような単位の混合ポリマー等の脂肪族ポリエーテルポリオール、ジカルボン酸またはポリカルボン酸を用いるジオールまたはポリオールの重縮合によって得られたポリエステルポリオール、ポリエチレンアジペート、エチレングリコール由来の混合ポリエステル、ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、アジピン酸およびテレフタル酸等を含むそのようなポリエステルポリオールが挙げられる。ポリエステルポリオールを構成し、またはそれに含まれ得る他の基本単位は、ヒドロキシ酪酸もしくはヒドロキシカプロン酸またはそれらのラクトン等のヒドロキシカルボン酸である。
【0040】
好適な芳香族ポリエーテルポリオールは、エポキシ樹脂もしくはフェノキシ樹脂、またはそれらの混合物である。
【0041】
用語「ポリ(ヒドロキシエーテル)」および「フェノキシ」は、本明細書において、実質的に線形のポリマーを指し、次の一般式を有する。
【化1】
式中、Dは二価フェノールの残留ラジカルであり、Eはエポキシドのヒドルキシル含有残留ラジカルであり、nは重合の程度を表し、少なくとも30であり、好ましくは80以上である。用語「熱可塑性ポリ(ヒドロキシエーテル)」は、少なくとも2つの熱可塑性ポリ(ヒドロキシエーテル)の混合物を含むことを意図される。
【0042】
フェノール残留ラジカルDを提供する二価フェノールは、次の一般式を有するもの等の二価単核または二価多核フェノールのいずれかであってもよく、
【化2】
式中、Arはナフチレン等の芳香族二価炭化水素、好ましくはフェニレンであり、同一または異なっていてもよいXおよびYは、好ましくは1〜4つの炭素原子、ハロゲン原子、すなわち、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素を有するアルキルラジカル、または好ましくは1〜4つの炭素原子を有するアルコキシラジカルであり、aおよびbは0から置換基によって置き換えられることができる芳香族ラジカル(Ar)上の水素原子の数に対応する最大値の値を有する整数であり、Rはジヒドロキシジフェニル中のように隣接する炭素原子の間の結合であるか、または例えば、次式、
【化3】
およびアルキレン、アルキリデン等の二価炭化水素ラジカル、環状脂肪族、例えばシクロアルキリデン、ハロゲン化アルコキシまたはアリールオキシ置換アルキレン、アルキリデンおよび環状脂肪族ラジカル、ならびにハロゲン化アルキルを含むアルカリーレン(alkarylene)および芳香族ラジカル、アルコキシもしくはアリールオキシ置換芳香族ラジカル、およびAr基に融合された環を含む、二価ラジカルであり、あるいはR1は、ポリアルコキシもしくはポリシロキシ、または芳香族環によって分離された2つもしくはそれ以上のアルキリデンラジカル、3級アミノ基、エーテル結合、カルボニル基、またはスルホキシド等の硫黄含有基であり得る。
【0043】
具体的な二価多核フェノールの例としては、とりわけ、
【0044】
2,2―ビス―(4―ヒドロキシフェノール)プロパン、2.4’―ジヒドロキシジフェニルメタン、ビス(2―ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4―ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4―ヒドロキシ―2,6―ジメチル―3―メトキシフェニル)メタン、1,1―ビス(4―ヒドロキシフェニルエタン、1,2―ビス(4―ヒドロキシフェニル)―エタン、1,1―ビス(4―ヒドロキシ―2―クロロフェニル)エタン、1,1―ビス―(3―メチル―4―ヒドロキシフェニル)エタン、1,3―ビス(3―メチル―4―ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2―ビス(3―フェニル―4―ヒドロキシフェニル)―プロパン、2,2―ビス(3―イソプロピル―4―ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2―ビス(2―イソプロピル―4―ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2―ビス―(4―ヒドルキシルナフチル)プロパン、2,2―ビス(4―ヒドロキシフェニル)―ペンタン、3,3―ビス(4―ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2―ビス(4―ヒドロキシフェニル)ヘプタン、ビス(4―ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4―ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、1,2―ビス(4―ヒドロキシフェニル―1,2―ビス(フェニル)プロパン、2,2,―ビス(4―ヒドロキシフェニル)―l―フェニル―プロパン等のビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、
【0045】
ビス(4―ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’―ジヒドロキシジフェニルスルホン、5’―クロロ―2,4’―ジヒドロキシジフェニルスルホン、5’―クロロ―4,4’―ジヒドロキシジフェニルスルホン等のジ(ヒドロキシフェニル)スルホン、
【0046】
ビス(4―ヒドロキシフェニル)エーテル、4,3’―,4,2’―,2,2’―,2,3’―,ジ―ヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’―ジヒドロキシ―2,6―ジメチルジフェニルエーテル、ビス(4ヒドロキシ―3―イソブチルフェニル)エーテル、ビス(4―ヒドロキシ―3―イソプロピルフェニル)エーテル、ビス(4―ヒドロキシ―3―クロロフェニル)―エーテル、ビス(4―ヒドロキシ―3フルオロフェニル)エーテル、ビス(4―ヒドロキシ―3―ブロモフェニル)エーテル、ビス(4―ヒドロキシナフチル)エーテル、ビス(4―ヒドロキシ―3―クロロナフチルエーテル、ビス(2―ヒドロキシジフェニル)―エーテル、4,4’―ジヒドロキシ―2,6―ジメトキシジフェニルエーテル、4,4―ジヒドロキシ―2,5―ジエトキシジフェニルエーテル等のジ(ヒドロキシフェニル)エーテルが挙げられる。
【0047】
また、4―ビニルシクロヘキセンおよびフェノール、例えば、1,3―ビス(p―ヒドロキシフェニル)―1―エチルシクロヘキサン等のビスフェノール反応生成物およびジペンテンまたはその異性体のビス―フェノール生成物、ならびに1,2―ビス(p―ヒドロキシフェニル)―l―メチル―4―イソプロピルシクロヘキサン等のフェノール、ならびに1,3,3’トリメチル―1―(4―ヒドロキシフェニル)―6―ヒドロキシインダンおよび2,4―ビス(4―ヒドロキシフェニル)―4―メチルペンタン等のビスフェノールが好適である。
【化4】
式中、XおよびYは先に定義された通りであり、aおよびbは0〜4を含む値を有し、Rは、二価脂肪族飽和炭化水素ラジカル、特に1〜3つの炭素原子を有するアルキレンおよびアルキリデンラジカル、ならびに最大10個を含む炭素原子を有するシクロアルキレンラジカルである。
【0048】
二価フェノールの混合物も使用されてもよく、用語「二価フェノール」または「二価多核フェノール」が本明細書で使用されるときは常に、これらの化合物の混合物が含まれることを意図される。
【0049】
ヒドルキシル含有残留ラジカルを提供するエポキシド、Eは、モノエポキシドまたはジエポキシドであり得る。モノエポキシドは1つのそのようなオキシラン基を含有し、単一のヒドルキシル基を含有する残留ラジカルEを提供し、ジエポキシドは2つのそのようなオキシラン基を含有し、2つのヒドルキシル基を含有する残留ラジカルEを提供する。用
語が、エチレン系不飽和がないジエポキシド、すなわち>C−C<、およびアセチレン系不飽和、すなわち、−C≡C−であることを意味される、飽和エポキシドが好ましい。炭素、水素、および酸素のみを含有するハロゲン置換飽和モノエポキシド、すなわち、エピクロルヒドリンおよび飽和ジエポキシド、特に、近接または隣接する炭素原子が脂肪族炭酸水素鎖の一部を形成するものが、特に好ましい。そのようなジエポキシド中の酸素は、オキシラン酸素に加えて、エーテル酸素―0―、オキサカルボニル酸素、カルボニル酸素等であり得る。
【0050】
モノエポキシドの具体的例としては、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、1,2―エポキシ―1―メチル―3―クロロプロパン、1,2―エポキシ―l―ブチル―3―クロロプロパン、1,2―エポキシ―2―メチル―3―フルオロプロパン等のエピクロロヒドリンが挙げられる。
【0051】
例示的なジエポキシドとしては、ジエチレングリコールビス(3,4―エポキシシクロヘキサン―カルボキシレート)、ビス(3,4―エポキシシクロヘキシル―メチル)アジペート、ビス(3,4―エポキシシクロヘキシル―メチル)フタレート、6―メチル―3,4―エポキシシクロヘキシルメチル―6―メチル―3,4―エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2―クロロ―3,4―エポキシシクロヘキシルメチル―2―クロロ―3,4―エポキシシクロヘキサン―カルボキシレート、ジグリシジルエーテル、ビス(2,3―エポキシシクロペンチル)―エーテル、1,5―ペンタンジオ―ルビス(4―メチル―3,4―エポキシシクロヘキシル―メチル)エーテル、ビス(2,3―エポキシ―2―エチルヘキシル)アジペート、ジグリシジルマレアート、ジグリシジルフタレート、3―オキサ―テトラシクロ[4.4.0.17,10.0 2,4]―ウンデク―8―イル2,3―エポキシ―プロピルエーテル、ビス(2,3―エポキシシクロペンチル)スルホン、ビス(3,4―エポキシヘキソキシプロピル)スルホン、2,2’―スルホニルジエチル、ビス(2,3―エポキシシクロペンタンカルボキシレート)、3―オキサテトラシクロ―[4.4.0.1 7,10 .0 2,4]―ウンデク―8―イル2,3―エポキシブチレート、4―ペンテナール―ジ―(6―メチル―3,4―エポキシシクロヘキシルメチル)アセタール、エチレングリコールビス(9,10―エポキシステアレート)、ジグリシジルカルボネート、ビス(2,3―エポキシブチルフェニル)―2―エチルヘキシルホスフェート、ジエポキシジオキサン、ブタンジオン二酸化物、および2,3―ジメチルブタンジオン二酸化物が挙げられる。
【0052】
陰イオンを形成することができる化合物の例としては、ポリオール、具体的にはジオール、およびポリアミン、具体的にはジアミン、または1分子毎に1〜3つのカルボキシルまたはスルホン酸基を保有するヒドロキシアミンが挙げられる。
【0053】
この組成のカルボキシレート含有化合物の例としては、ヒドルキシル含有カルボン酸とイソシアン化終結したポリオールプレポリマー(ヒドルキシル含有プレポリマーと過剰ジイソシアネートの反応によって得られた)の反応が挙げられる。本発明の陽イオン性終結した化合物の例としては、4級アンモニウムまたはホスホニウムプレポリマーが挙げられる。そのような陽イオン性組成物は、上記の該イソシアン化終結プレポリマーと3級アミン含有アルコールの反応によって調整されることができ、その後、当業者によって知られるジメチルサルフェートまたはアルキルハライド等の四級化剤との反応が生じる。
【0054】
好ましくは60〜400のモル質量を有する低モル質量ポリオールの例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4―ブタンジオール、シクロ―ヘキサンジオール、および当業者に既知のその他のジオールが挙げられる。
【0055】
好ましい水性フェノキシ樹脂の例は、次の構造式を有するビスフェノール―A(2,2
―ビス(p―ヒドロキシフェニル)プロパンおよびエピクロロヒドリン由来の縮合ポリマーである。
【化5】
【0056】
ポリヒドロキシエーテル分散液の例は、InChemによってPKHW34、35、および38の商品名で市販されるフェノキシPKHB、PKHH、およびPKHCである。
【0057】
好適な架橋剤としては、アミノプラスト、またはホルムアルデヒドおよびアルコールを伴う尿素またはメラミンのいずれかの反応生成物であるアミノ樹脂架橋剤が挙げられる。尿素およびメラミン以外に、ベンゾグアナミン、グリコールウリル、環式尿素、ヒダントイン、1級および2級アミド、カルバメート等の類似の官能性を有する他の化合物も、ある特性の利点が必要とされる場合に、使用されてもよい。
【0058】
架橋反応(「硬化」)は、主として、1級ポリマー部分上のヒドルキシル基とアミノ樹脂上のアルコキシメチルまたはアルコキシブチル基との間のトランスエーテル化の1つである。トランスエーテル化反応に加えて、アミノ樹脂は、多かれ少なかれアミノ樹脂の種類に応じて、いくらかの程度で自己縮合反応をほぼ常に経験する。
【0059】
アミノプラスト架橋剤の別の属性は、親水性または疎水性の特性が、アミノ樹脂架橋剤が分散液の有機相または水性相に優勢に存在するかどうかを選択することが当業者によって可能であるように、適合され得ることである。特に、1つまたは両方の相が硬化前に基材上に留まる事を所望され、または消耗されない場合があるディッピング、ローラーコーティング、または吹き付け等の異なる方法によって、組成物を適用することが所望されるとき、アミノ樹脂架橋剤が一方の相または他方の相に存在するある利点が存在する場合がある。
【0060】
硬化反応の主要な副生物としては、メタノールおよび/またはブタノール、ならびに水が挙げられる。硬化温度は、典型的に、温度範囲の下限の15〜30分から上限の恐らく数秒のみまで変動する時間中、180〜465°F(82〜232℃)の範囲である。木材およびプラスチックコーティング産業で見られるもの等、常温で硬化する高度に触媒されたアミノ樹脂調合が存在するが、市販される調合の大部分は、典型的に、高温度で硬化させ、本発明において記載される。
【0061】
本発明の好ましい実施形態において、メチレン、―N―CH
2N―、またはメチレンオキシ―NCH
2OCH
2N―架橋のいずれかを通して結合される、低レベルの二量体および三量体類似体(それぞれ化学構造2および3)を有する単量体アルキルオキシメチルメラミン(化学構造1)が使用されてもよい。
【0062】
構造1.アルキル化メラミンアミノプラストの単量体
【化6】
式中、Rは、アルキルオキシメチルおよび好ましくはメトキシメチル反応性基である。
【0063】
構造2.アルキル化メラミンアミノプラストの二量体
【化7】
式中、Rは、アルキルオキシメチルおよび好ましくはメトキシメチル反応性基である。
【0064】
構造3.アルキル化メラミンアミノプラストの三量体
【化8】
式中、Rはアルキルオキシメチルおよび好ましくはメトキシメチル反応性基である。
【0065】
いくつかの触媒は、任意選択により、硬化温および使用される特定のアミノ樹脂に応じて、組成物の架橋反応を加速させるために使用されてもよい。好適な触媒としては、超酸およびそのブロックされたバージョンを含む、アミノプラストと樹脂との間の反応を触媒することができる強酸が挙げられる。好ましい実施形態において、ブロックされた酸は、高い反応率を得るために使用されるが、一方で改善された調合安定性を提供し、pH値を変化しない状態に維持し得る。ブロックされたスルホン酸触媒、例えば、アミン―ブロックされたスルホン酸触媒は、特に好適である。
【0066】
好ましい実施形態において、液体バインダー組成物は、ポリヒドロキシエーテル―ポリ
ウレタンコポリマーと、アミノプラスト架橋剤としてのメトキシアルキルメラミン(例えば、トリ〜ヘクサ―メトキシアルキルメラミン)と、ブロックされた酸触媒(ブロックされたスルホン酸触媒等)とを含有する分散液であり、
a. コポリマーは、10000〜100000Da範囲の数モル重量(M
n)お
よび1.1〜5の範囲の多分散性(M
w/M
n)を有してもよく、
b. コポリマーは、0.1〜50ミクロンの範囲の平均粒度(d50)を有して
もよい。
【0067】
繊維に適用されるバインダーの量は、約15重量%未満、好ましくは10重量%未満、より好ましくは4重量%、3重量%、2重量%、または1重量%等、5重量%未満であってもよい。
【0068】
いくつかの実施形態において、コポリマーのポリヒドロキシエーテル部分はビスフェノール―Aを含有し、コポリマーのポリウレタン部分は、脂肪族もしくは芳香族ポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールからなる群から選択される、ポリイソシアネートおよびポリオールに基づく。
【0069】
開示されるバインダー組成物は、生成物幅への制限をせずに、自動積層過程(例えば、ATL/AFP)のために好適な自立性乾式繊維質生成物の常温での含浸のために使用されてもよい。バインダーは、繊維ウェブ上への液体ディップコーティング、ローラーコーティング、または吹き付けによって繊維質生成物に適用されてもよい。更に、バインダー組成物は、標準的製造過程を使用して、繊維質生成物の全体または特定の区域に適用されてもよい。
【0070】
乾式自立性単方向またはテキスタイル材料が樹脂射出過程において使用される場合、バインダーが単方向またはテキスタイル材料の表面に、樹脂が樹脂射出サイクル中、単方向またはテキスタイル材料を含むプリフォームの厚さを通して十分に浸透することを阻止し得る連続フィルムを形成しなければ、有益である。
繊維質材料
【0071】
本明細書に開示される液体バインダーを用いて処理される初期の繊維質材料は、例えば、約数インチ幅から1/4インチもの狭い幅の範囲の幅を有する自立性単方向テープ、また
はノンクリンプ織布の形態であってもよい。自立式単方向テープはスプール上に巻かれてもよく、ATL/AFP過程において使用され得る。ノンクリンプ織布(NCF)は、一緒に縫合される単方向トウを含む。トウは、間隙がトウの間に存在し、したがって材料中に透過性を提供するように互いに接触し、または接触しなくてもよい。対照的に、単方向テープは、繊維をまとめる一種のバインダー化学物質を含むため、縫合を含まない。Unifiberは、間隙または透過性が存在しないように繊維を一緒に結合する、細い糸を含む生成物に対する製品名である。
【0072】
ある実施形態において、無作為に配列された繊維から構成される不織ベールは、構造繊維の繊維ウェブに積層して乾式テープを形成し、これは次に、本明細書に開示される液体バインダー組成物でコーティングされる。ベールは、バインダーコーティング繊維質材料に透過性を提供してもよい。いくつかの態様において、ベールは、炭素、ガラス、およびアラミド等の構造繊維として使用されるものに類似する構造材料から作製される。ベールの他の目的は、繊維を保持するための手段を含むが、これは本出願におけるベールの一次的重要性ではない。ベール自体は、付加的結合または強靭化剤/粒子を含有してもよい。
【0073】
本明細書で使用される用語「繊維質材料」は、組成物を構造的に補強するように適合される構造繊維または繊維質材料を含んでもよい。構造繊維は、炭素、ガラス、およびアラ
ミド等の高強度材料から作製されてもよい。繊維は、短繊維、連続繊維、繊維シート、織布、およびそれらの組み合わせのうちの任意の一つの形態を取ってもよい。繊維は、更に、単方向、多方向(例えば、二または三方向)、不織布、織布、編成、縫合、巻き付き、および編組構成、ならびにスワールマット、フェルトマット、およびチョップマット構造体のいずれも採用してもよい。織布繊維構造体は、約1000未満の微繊維、約3000未満の微繊維、約6000未満の微繊維、約12000未満の微繊維、約24000未満の微繊維、約48000未満の微繊維、約56000未満の微繊維、約125000未満の微繊維、および約125000を超える微繊維を有する複数の不織トウを含んでもよい。更なる実施形態において、トウは、交差トウ縫合、緯入れ編成縫合、またはサイジング剤等の少量の樹脂によって定位置に保持されてもよい。
【0074】
本開示に従ってバインダー組成物で処理された繊維質生成物は、乾式自立性繊維質材料である。本明細書で使用される用語「乾式」は、乾いた感触を有すると見なされ得る材料を指し、これは接触に対して粘着性ではなく、かつ実質的にいずれのマトリックス樹脂も有しない。用語「自立性」は、例えば、繊維質生成物が自動機によって処理されるとき等、切れ目をいれる過程および他の後続の取り扱い中の、互いに分離しない繊維または微繊維の凝集性の形態を指す。例えば、自立性は、架橋繊維、地毛、またはバインダー処理が使用されない場合に、別法で切れ目をいれる過程中に生じ得る、他の観察される欠陥を伴わない、好ましいエッジ品質、すなわち、整ったエッジ等の繊維質材料の一貫性を維持する、乾式自立性繊維質生成物の能力を指す。いくつかの態様において、自立性繊維質生成物は、突出する乾式微繊維が実質的にない、切れ目をいれた後のエッジを有する。
【0075】
バインダー処理された繊維質材料は、一般的に、繊維が分離することを阻止するための追加の担体織布またはスクリムを必要とせずに、位置を保持し得る。更に、乾式自立性繊維質材料は、常温で貯蔵されることができ、事前含浸材料とは対照的に、実質的量のマトリックス樹脂を含まない事実のために、冷蔵される必要がない。
ベール
【0076】
いくつかの実施形態において、不織ベールは、材料の面内透過性を改善し、かつ面内樹脂の流れを助長するためのバインダー組成物に加えて、使用されてもよい。いくつかの態様において、ベールは、積層される乾式自立性繊維質材料の1平方メートル毎に約1g〜8gの非常に軽重量のベールであってもよい。
【0077】
加えて、ベールは、単方向テープ等の単方向またはテキスタイル材料にウェブ方向全体の安定性を提供してもよい。
【0078】
更なる有益な態様において、ベールは、層間領域における複合強靭化粒子または繊維のための担体として使用されてもよい。
【0079】
ベールは単方向もしくはテキスタイル材料の繊維と同一の材料の性質のものであってもよく、または任意選択によりいくつかの強靭化熱可塑性材料等の1つまたは複数の有機材料から作製され得る。加えて、ベールは、同じ種類の繊維および少なくとも1つの有機材料の両方のハイブリッド混合体を含んでもよい。
【0080】
ベールおよびバインダー組成物は、圧縮ローラーを介する熱(熱風、レーザー、またはIR)および圧力の適用によって繊維質材料の機械積層に役立つように使用される。ポリマーベールが使用される場合、ポリマーベールおよびバインダーの好ましい軟化点は、材料が結合し、許容可能な機械速度で稠密化プレフォームを形成することを可能にするために150℃以下である。
【0081】
いくつかの態様において、面内樹脂射出サイクルは、軽重量ベールを用いない類似の複合物よりも3倍速く、結果として、達成可能なプライ流動長は7倍に著しく改善される。
穿通
【0082】
いくつかの実施形態において、バインダー処理された繊維質材料は、中に穿通を含む。本明細書で使用される「穿通」は、繊維質材料の厚さ全体を通る穿通を含んでもよい。穿通材料は、50cc/分を超える空気透過性を提供してもよく、合理的な注入時間、例えば<4時間で30mmを超える厚さを有するプリフォームの注入を可能にする。
【0083】
穿通は、ニードルパンチ、レーザー放射、またはその他の利用可能な方法のいずれかによって行われ、厚さを通して材料を穿刺してもよい。穿通孔の寸法、通常は直径が期待される空気透過性を達成するように穿通密度と組み合わされる。より多くの空気透過性は、より薄いプリフォームについてよりも厚いプリフォーム、すなわち、より多くのプライを有するものを形成するために必要とされる。
【0084】
通常、20cc/分の最小値が樹脂の効果的な流れのために所望である。しかし、25mm(1インチ)を超える厚さを有するプリフォームのために、50cc/分の最小値が所望である。勿論、所望される空気透過性は、また、特定の温度および部品の複雑度における樹脂の粘性および処理条件の関数であってもよい。
【0085】
穿通材料については、単方向(UD)繊維ウェブを形成する繊維は、穿通ステップが行われた後、穿通孔を移動または被覆しないことが好ましく、そのようにしないと、空気透過性の獲得が減少し、または皆無になってしまうであろう。本明細書で開示されるバインダー組成物は、繊維を事前にまとめ、それらが穿通孔を被覆することを阻止する。
【0086】
繊維質材料の穿通は、UD繊維ウェブを形成する処理中、繊維の間にいくつかの小さいスリットまたは間隙を作製することも含む。
プリフォーム
【0087】
本明細書で使用される用語「プリフォーム」または「繊維プリフォーム」は、樹脂注入過程において液体樹脂を受容する準備ができている単方向繊維および不織布等、繊維、繊維の層、または織布プライの集合体を含む。
【0088】
自立性バインダー処理された繊維質材料を使用することは、いくつかの場合において、樹脂注入過程によって作製される高性能組成物をもたらすことが発見されている。
実施例
【0089】
以下の実施例は、ATL/AFP用途のための乾式単方向(UD)繊維材料に関する。
実施例1
【0090】
本実施例において以下の織布を使用した。
(1)
図1に示す、Saertexによって供給される単方向ノンクリンプ織布(UD
NCF)。この織布は50インチ幅で生産される。炭素トウの画定は非常に明瞭であり、トウ間の間隙は最大2mm幅である。ポリエステル縫糸は、炭素トウをまとめる。細いポリエステル糸は、織布全体に積層して、織布に横方向の一貫性および安定性を提供する。
(2)
図2に示すバインダーヤーン(Sigmatex Unifiberの織布)を有する拡幅したウェブ。炭素トウは、拡幅し、エポキシコーティングしたガラス糸によってテープの両側に保持する。トウ間の間隙または周辺部の間隙は存在しない。
【0091】
両方の織布を熱可塑性変性エポキシ系バインダー(Cytec Engineered
MaterialsのCycom(登録商標)7720)でバインダーコーティングした。パウダー散布法を使用して、それぞれの織布の両面上に約5gsmのバインダー組成物を堆積させた。散布パウダー付き織布をダブルベルトプレスに通して、バインダーを繊維ウェブに更に押し込み、UD繊維ウェブの良好な結合力を確実にした。これは、安定化ステップと呼ばれる。加えて、バインダーを固定するために織布をダブルプレスに通すのと同時に、4gsmの織布面積重量を有する非常に軽重量の炭素ベールをそれぞれの織布の表面のうちの1つへと積層した。ダブルベルト処理条件は、2m/分の速度および210℃の温度であった。積層した安定化織布は非常に安定性があるが、展性であり、繊維の喪失またはエッジのほつれを伴わずに所望される形状への操作を可能にした。
【0092】
次いで、安定化織布を+/−1.0mm未満の幅変動を有する50mm幅のテープへと切れ目をいれた。スリットテープのエッジの品質は、限定的な架橋繊維、地毛、または他の観察される欠陥を伴うものの、十分に整っていた。しかし、製品品質は、高速自動生産過程を使用して、大きな航空機の構成要素の製造のために更に改善することができた。
実施例2
【0093】
ポリヒドロキシエーテルもしくはポリウレタン系統群、コポリマー、またはそれらの組み合わせに基づく一連の異なる触媒および無触媒結合剤を、表1に開示する組成物に従って混合した。EP1は、COIM(イタリア)によって市販される53%の固体の脂肪族エポキシのノボラック乳濁液である。PU1は、〜30000ダルトンの数平均モル質量を有する2,2―ビス(4―ヒドロキシフェニル)プロパン変性ポリウレタンの52%の固体の分散液である。ポリウレタン部分は、イソホロンジイソシアネートおよびポリプロピレングリコールの反応によって得た。PU2は、BASFによって市販される、水中で40%の固体の自己架橋可能な熱可塑性ポリウレタン分散液であるが、一方でPU3およびPU4は、それぞれ、Bayer Material Scienceから市販される、水中で43%および34%の固体の自己架橋可能なポリエステルウレタン分散液である。PHE1は、Inchem(米国)から入手可能な水中で34%の固体のポリヒドロキシエーテル乳濁液である。
【表1】
【0094】
結合剤を使用して、実施例1に記載された同一の単方向ノンクリンプ織布(Saertex,ドイツ)をディップコーティングした。
【0095】
バインダーコーティング織布をドレープ能力、ほつれ止め動作、収縮、および自己結合能力について評価した。ドレープは、145℃(常温から3℃/分の温度傾斜率)で1分間、真空下(試験中、60mmHgの真空)で、350x350mmのコーティング織布を円錐形金型(高さ=86mm、内径=120mm、外径=310mm)にホットドレープすることによって判定し、クリースの数を判定した。6クリース未満を出す材料を良好(A)と見なし、6〜12クリースをもたらす材料を許容可能(B)と見なし、一方で12クリース超を生成する材料を許容不可(C)と見なした。
【0096】
ほつれ止め動作は、4つのセクション(送り出し、摩擦ローラー、キャッチプレート、および巻き取り)を有し、20m/分の速度で走行する発達制御伸張地毛試験機で判定した。5分の期間に渡ってキャッチプレート上に蓄積した地毛の重量を測定し、それに応じて材料をランク分けした。地毛は、摩擦ローラーに対して擦るトウによって発生し、キャッチプレートによって収集したデブリである。500mg超の地毛をもたらす材料を許容不可(C)と見なし、200mg〜500mgを発生させる材料を許容可能(B)と見なし、一方で200mg未満の地毛を生成する材料を良好(A)と見なした。収縮は、熱処理(100℃で3分+130℃で4分)後、プリスティーンおよびバインダーコーティング織布の幅を測定することによって判定した。1%の収縮をもたらす材料を良好(A)と見なし、1〜2%を出す材料を許容可能(B)と見なし、一方で2%超を出す材料を許容不可(C)と見なした。自己結合能力は、100℃の温度で5秒間、圧縮ローラーを使用して10Nの圧力を適用することによって判定した。結果を表2に示す。
【表2】
【0097】
繊維質生成物上のバインダー組成物および含有量に応じて、表1に記載するバインダー組成物を使用して、特定のパターンの物理的特性を得ることができる。
実施例3
【0098】
表1に開示するバインダー組成物のいくつかを使用して、実施例1に記載した同一の単方向ノンクリンプ織布(Saertex―ドイツ)を常温でディップコーティングした。次いで、全てのコーティング織布を炉内で、100℃で3分間、次いで130℃で4分間乾燥した。
【0099】
次いで、バインダーコーティングノンクリンプ織布をより小さいプライに切断し、プライを積み重ねる順序で積層した。次いで、積層を130℃で30分間、炉内で事前形成し、Prism(登録商標)EP2400(Cytec Engineered Materialsから入手可能な強靭化エポキシシステム)を用いて注入した。2時間、180℃で注入したプリフォームを硬化した後、55%〜57%の範囲のV
f(繊維体積分率)を有するパネルを生成した。
【0100】
比較の目的のために、同一のプリスティーン(コーティングされない)単方向ノンクリ
ンプ織布を使用して、別法で同一の試験パネル(対照1)を準備した。様々な機械的試験をパネル上で実行し、結果を下の表3に示す
【表3】
実施例4
【0101】
事前含浸テープ機を使用して中間弾性率炭素繊維(Tenax IMS 65)を196gsmの12インチ幅の単方向ウェブに形成し、一方で同一の事前含浸テープ機上で4gsmの炭素ベールおよび5gsmの熱可塑性変性エポキシ系バインダーを単方向ウェブに積層した。次に、もたらされる単方向テープを実施例2dに記載したバインダーを用いて液体コーティングして、3gsmのバインダーコーティングを得た。
図3および4のSEM写真は、ベール側および繊維ウェブ側の両方に、膜を形成せず、それぞれが実施例2dに記載するバインダーと別個の形態を有し、炭素繊維の直径より小さい液滴を形成するバインダーの存在を示すが、一方で他のバインダーは、いくつかの繊維と重なるが膜を形成しない、はるかにより大きいバインダー粒度を形成する。
【0102】
次いで、この単方向テープを異なる幅の複数のトウに切れ目をいれた。非常に精密な解像度のデジタルカメラを装備する電子自動測定装置を使用して、それぞれのトウの幅を測定した。それぞれのトウの幅について、約2900の測定値を収集した。下の表4は測定分析を要約する。
【表4】
【0103】
表4において、COVは変動係数であり、標準偏差(Std dev)を平均(Avg)で割ることによって計算する。
実施例5
比較的実施例―Z方向の透過性評価
【0104】
実施例4に記載される材料(6.35mm〜1/4インチ幅)のz方向の樹脂透過性を
、等しい幅および類似の面積重量の市販のバインダーコーティング/成形炭素トウ(IMS60 24K)のうちの1つと比較した。
【0105】
およそ100Nの圧力および120℃〜180℃の範囲の局所的表面温度を適用することによって乾式織布を圧縮するためのレーザーヘッドを有するAFP機を使用して、プリフォームを製造した。隣接するトウ間の0mmの目標間隙設定で、およそ10mmの150x150mmの半等方性のプリフォームを積層した。
【0106】
次いで、厚さを通して樹脂の流れおよび<5mbarの真空を促進するための袋詰め装置を使用して、100℃でPrism(登録商標)EP2400(Cytec Engineered Materialsから入手可能な強靭化エポキシシステム)を用いてプリフォームを注入した。注入した樹脂の体積を経時で監視した。
【0107】
図5は、プリフォームの厚さを通して注入した樹脂の相対的体積を時間関数として示す。
【0108】
実施例4に記載した材料を使用して製造したプリフォームは、最良の透過性値をもたらし、樹脂全体が1時間未満でプリフォームの厚さを通して流れることを可能にしたが、一方で生成物の劣った幅の公差、積層過程中に入れ子になる傾向、および局所的CPTにおいてもたらされる高い変動のために、1時間超で樹脂体積の20%のみが形成したトウのプリフォームに浸透した。