特開2017-149999(P2017-149999A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-149999(P2017-149999A)
(43)【公開日】2017年8月31日
(54)【発明の名称】熱処理設備
(51)【国際特許分類】
   C21D 1/00 20060101AFI20170804BHJP
   C21D 1/773 20060101ALI20170804BHJP
   F27B 17/00 20060101ALI20170804BHJP
【FI】
   C21D1/00 117
   C21D1/773 D
   F27B17/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-30563(P2016-30563)
(22)【出願日】2016年2月22日
(71)【出願人】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087572
【弁理士】
【氏名又は名称】松川 克明
(72)【発明者】
【氏名】大下 修
(72)【発明者】
【氏名】寺田 真
(72)【発明者】
【氏名】神田 啓
【テーマコード(参考)】
4K034
【Fターム(参考)】
4K034AA15
4K034AA16
4K034CA06
4K034DB04
4K034EB41
4K034GA12
(57)【要約】
【課題】 搬送ユニットと処理室とを密封状態で連結させた連結部分を減圧させて、被処理物を搬送ユニットと処理室との間で受け渡す作業が適切に行えるようにする。
【解決手段】 被処理物Wを熱処理させる処理室Hと対面する位置に被処理物を搬送させる搬送ユニット30を導き、伸縮可能な連結部材34により搬送ユニット30と処理室Hとを密封状態で連結させた状態で、被処理物Wを搬送ユニット30と処理室Hとの間で受け渡す熱処理設備において、連結部材34により連結された搬送ユニット30と処理室Hとの連結部分の内部を減圧させた場合に、搬送ユニット30と処理室Hとの間に力を作用させて搬送ユニット30と処理室Hとを一定の距離に維持させる維持手段40を設けた。
【選択図】 図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を熱処理させる処理室と、被処理物を前記の処理室に搬送させる搬送ユニットが設けられ、前記の搬送ユニットを前記の処理室と対面する位置に移動させた状態で、搬送ユニットと処理室とが対面する何れかの対面部に設けられた伸縮可能な連結部材を伸張させて、この連結部材により搬送ユニットと処理室とを密封状態で連結させ、前記の被処理物を連結された搬送ユニットと処理室との間で受け渡しする熱処理設備において、連結部材により連結された搬送ユニットと処理室との連結部分を減圧させた場合に、搬送ユニットと処理室との間に力を作用させて搬送ユニットと処理室とを一定の距離に維持させる維持手段を設けたことを特徴とする熱処理設備。
【請求項2】
請求項1に記載の熱処理設備において、前記の維持手段として、前記の連結部材を伸張させて搬送ユニットと処理室とを密封状態で連結させる伸縮装置を用いたことを特徴とする熱処理設備。
【請求項3】
請求項1に記載の熱処理設備において、前記の維持手段として、前記の連結部材を伸張させて搬送ユニットと処理室とを密封状態で連結させる伸縮装置の他に、連結部材により連結された搬送ユニットと処理室との間に押圧力を作用させる押圧装置を設けたことを特徴とする熱処理設備。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の熱処理設備において、前記の維持手段は、前記のように減圧させた搬送ユニットと処理室との連結部分の内部の圧力に応じて、搬送ユニットと処理室との間に作用させる力を調整することを特徴とする熱処理設備。
【請求項5】
請求項4に記載の熱処理設備において、搬送ユニットと処理室との間に作用させる力を調整するにあたり、連結部分の内部の圧力が下がるのにつれて、搬送ユニットと処理室との間に作用させる力を上げていくことを特徴とする熱処理設備。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の熱処理設備において、被処理物を処理室に搬送させる搬送ユニットに、前記の連結部材と維持手段とを設けたことを特徴とする熱処理設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理物を熱処理させる処理室と、被処理物を前記の処理室に搬送させる搬送ユニットが設けられ、前記の搬送ユニットを前記の処理室と対面する位置に移動させた状態で、搬送ユニットと処理室とが対面する何れかの対面部に設けられた伸縮可能な連結部材を伸張させて、この連結部材により搬送ユニットと処理室とを密封状態で連結させ、被処理物を連結された搬送ユニットと処理室との間で受け渡しするようにした熱処理設備に関するものであり、連結部材により連結された搬送ユニットと処理室との連結部分を減圧させた際に、搬送ユニットや処理室の位置がずれたりすることがなく、搬送ユニットと処理室とが適切に連結された状態で維持されて、被処理物を連結された搬送ユニットと処理室との間で適切に受け渡しできるようにした点に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、被処理物に対して浸炭焼入れ等を行う熱処理設備としては、被処理物を長い連続炉内に順々に導入させ、この連続炉内において被処理物を順々に移動させて、被処理物に対して加熱、均熱、冷却等の熱処理を連続的に行うようにした連続炉形式の熱処理設備と、独立したバッチ炉内において被処理物を移動させずに加熱、均熱、冷却等の熱処理を行うようにしたバッチ炉式の熱処理設備とが知られている。
【0003】
ここで、連続炉形式の熱処理設備の場合、被処理物を一定した熱処理パターンで連続して熱処理するため、生産性は良好であるが、昇温,降温等の熱処理パターンが一定化してしまい、近年のように、昇温,降温等の熱処理パターンを多様化させて、様々な種類の製品を少量生産するという要請に対して柔軟に対応することができないという問題があった。
【0004】
一方、前記のバッチ炉式の熱処理設備では、1つの炉において加熱、均熱、冷却等の熱処理の条件を変更させて熱処理を行うため、1つの被処理物の処理に多くの時間が必要になって、生産性が悪いという問題があった。
【0005】
このため、近年においては、特許文献1〜4等に示されるように、被処理物を熱処理させる処理室として、少なくとも被処理物を加熱させる加熱室と、加熱された被処理物を冷却させる冷却室とを分離して設けると共に、被処理物を前記の処理室に搬送させる搬送ユニットを設け、この搬送ユニットをこれらの処理室と対面する位置に移動させて、この搬送ユニットを対面する処理室に密封状態で連結させて減圧させ、この状態で、前記の被処理物を連結された搬送ユニットと処理室との間で受け渡しするようにした熱処理設備が提案されている。
【0006】
ここで、前記のように搬送ユニットを加熱室や冷却室からなる処理室と対面する位置に移動させて、搬送ユニットを対面する処理室に密封状態で連結させるにあたり、特許文献1,2のものにおいては、搬送ユニット全体を対面した状態にある加熱室や冷却室からなる処理室に向けてスライドさせて、搬送ユニットをこれらの処理室に密封状態で連結させるようにしている。
【0007】
しかし、特許文献1,2に示されるように、搬送ユニット全体を対面した状態にある加熱室や冷却室からなる処理室に向けてスライドさせる場合、搬送ユニット全体の重量が大きいため、搬送ユニット全体をスライドさせるのに、大型の駆動装置やガイド機構等が必要になり、コストが非常に高く付くと共に、装置が大型化するという問題があった。
【0008】
また、特許文献3,4に示されるものにおいては、搬送ユニットと処理室とが対面する何れかの対面部に伸縮可能な連結部材を設け、この連結部材を伸張させて搬送ユニットと処理室とを密封状態で連結させ、その後、連結部材により連結された搬送ユニットと処理室との連結部分を減圧させるようにしている。
【0009】
ここで、前記のように連結部材により連結された搬送ユニットと処理室との連結部分を減圧させた場合、搬送ユニットと処理室とが連結部分を介して相互に引っ張られて近づこうとする力が発生し、床面に強固に固定していても、経年的に搬送ユニットや処理室の位置がずれたりするおそれがあった。
【0010】
また、特許文献4に示されるものにおいては、連結部材を伸縮させるシリンダー等の伸縮装置を設け、この伸縮装置によって連結部材を伸張させて、この連結部材により搬送ユニットと処理室とを密封状態で連結させ、この状態で搬送ユニットと処理室との連結部分を減圧させるようにしている。
【0011】
しかし、特許文献4に示される伸縮装置は、連結部材を伸張させて単に搬送ユニットと処理室とを連結させるだけの力しかなく、前記のように搬送ユニットと処理室との連結部分を減圧させた場合に、搬送ユニットと処理室とが連結部分を介して相互に引っ張られて、これらが移動するのに抵抗することはできず、また、前記の伸縮装置により連結部材を伸張させて、搬送ユニットと処理室との間にこれらの移動に抵抗できる大きな圧力を作用させたとしても、その圧力が大きすぎて、搬送ユニットや処理室の位置がずれたり、シール部材を強く押しすぎて、弾力を失わせ、適切にシールできなくなるという問題が有った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−63363号公報
【特許文献2】特開2014−86475号公報
【特許文献3】特開平5−86416号公報
【特許文献4】特許第5686918号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、被処理物を熱処理させる処理室と、被処理物を前記の処理室に搬送させる搬送ユニットが設けられ、前記の搬送ユニットを前記の処理室と対面する位置に移動させた状態で、搬送ユニットと処理室とが対面する何れかの対面部に設けられた伸縮可能な連結部材を伸張させて、この連結部材により搬送ユニットと処理室とを密封状態で連結させ、前記の被処理物を連結された搬送ユニットと処理室との間で受け渡しするようにした熱処理設備における前記のような問題を解決することを課題とするものである。
【0014】
すなわち、本発明は、前記のような熱処理設備において連結部材により連結された搬送ユニットと処理室との連結部分を減圧させた際に、搬送ユニットや処理室の位置がずれたりすることがなく、搬送ユニットと処理室とが適切に連結された状態で維持されて、被処理物を連結された搬送ユニットと処理室との間で適切に受け渡しできるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明における熱処理設備においては、前記のような課題を解決するため、被処理物を熱処理させる処理室と、被処理物を前記の処理室に搬送させる搬送ユニットが設けられ、前記の搬送ユニットを前記の処理室と対面する位置に移動させた状態で、搬送ユニットと処理室とが対面する何れかの対面部に設けられた伸縮可能な連結部材を伸張させて、この連結部材により搬送ユニットと処理室とを密封状態で連結させ、前記の被処理物を連結された搬送ユニットと処理室との間で受け渡しする熱処理設備において、連結部材により連結された搬送ユニットと処理室との連結部分を減圧させた場合に、搬送ユニットと処理室との間に力を作用させて搬送ユニットと処理室とを一定の距離に維持させる維持手段を設けた。
【0016】
そして、本発明における熱処理設備においては、前記のように連結部材により連結された搬送ユニットと処理室との連結部分を減圧させる場合に、前記の維持手段により、搬送ユニットと処理室との間に力を作用させて、搬送ユニットと処理室とを一定の距離に維持させるようにする。
【0017】
ここで、本発明における熱処理設備において、前記の維持手段としては、前記の連結部材を伸張させて搬送ユニットと処理室とを密封状態で連結させる伸縮装置を用いることができる。
【0018】
また、維持手段としては、前記のような伸縮装置の他に、連結部材により連結された搬送ユニットと処理室との間に押圧力を作用させる押圧装置を設けるようにすることができる。このように、伸縮装置の他に、連結部材により連結された搬送ユニットと処理室との間に押圧力を作用させる押圧装置を設けると、シール部材の付いた連結部材を伸張させて搬送ユニットと処理室とを密封状態で連結させる動作と、搬送ユニットと処理室との連結部分を減圧させた際に、搬送ユニットと処理室とを維持させる動作とを別に行うことができ、連結部材に大きな圧力をかけて、シール部材の弾性を失わせて、適切なシールができなくなるという心配がなくなる。
【0019】
また、本発明における熱処理設備においては、減圧させた搬送ユニットと処理室との連結部分の内部の圧力に応じて、前記の維持手段により、搬送ユニットと処理室との間に作用させる力がバランスするように調整させることができる。
【0020】
そして、このように搬送ユニットと処理室との間に作用させる力を調整するにあたり、連結部分の内部の圧力が下がるのにつれて、搬送ユニットと処理室との間に作用させる力を上げていくことが好ましい。そのようにすれば、作用させる力が小さかったり、大きすぎたりして、搬送ユニットや処理室の位置がずれるのを適切に防止できる。
【0021】
また、本発明における熱処理設備において、前記の搬送ユニットによって被処理物を複数の処理室に搬送させる場合、被処理物を処理室に搬送させる搬送ユニットの方に、前記の連結部材と維持手段とを設けることが好ましい。このように、搬送ユニットに連結部材と維持手段とを設けると、複数の処理室にそれぞれ個別に連結部材と維持手段とを設ける場合に比べてコスト等が大幅に低減される。
【発明の効果】
【0022】
本発明における熱処理設備においては、搬送ユニットを処理室と対面する位置に移動させて、連結部材により搬送ユニットと処理室とを密封状態で連結させ、このように連結部材により連結された搬送ユニットと処理室との連結部分を減圧させた状態で、被処理物を連結された搬送ユニットと処理室との間で受け渡すにあたり、維持手段によって、連結された搬送ユニットと処理室との間に作用させる力を調整して、搬送ユニットと処理室とを安定した状態に維持させるようにしたため、搬送ユニットと処理室との連結部分の内部を減圧させた際に、搬送ユニットや処理室の位置がずれたりすることがなく、搬送ユニットと処理室とが適切に連結された状態で維持されて、被処理物を連結された搬送ユニットと処理室との間で適切に受け渡しできるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る熱処理設備において、搬送ユニットが走行される走行レールの片側に、複数の加熱室と冷却室とからなる処理室を直線状に配列させた状態を示した概略平面図である。
図2】前記の実施形態に係る熱処理設備において、搬送ユニットを加熱室や冷却室と対面させた状態を示した縦方向の断面説明図である。
図3】前記の実施形態に係る熱処理設備において、搬送ユニットを加熱室や冷却室と対面させた状態を示した横方向の断面説明図である。
図4】前記の実施形態に係る熱処理設備において、搬送ユニットを加熱室や冷却室に連結させる装置構成を示したブロック図である。
図5】前記の実施形態に係る熱処理設備において、搬送ユニットの前面側に設けた伸縮装置によって連結部材を加熱室や冷却室に向けて移動させて、この連結部材により搬送ユニットと加熱室や冷却室とを密封状態で連結させる状態を示し、(A)は縦方向の断面説明図、(B)は横方向の断面説明図である。
図6】前記の実施形態に係る熱処理設備において、図5(A),(B)に示す状態から、搬送ユニットの前面側に設けた押圧装置における伸縮ロッドを伸張させて加熱室や冷却室の前面側の部分に当接させ、搬送ユニットと加熱室や冷却室との間に押圧力を作用させる状態を示し、(A)は縦方向の断面説明図、(B)は横方向の断面説明図である。
図7】前記の実施形態に係る熱処理設備において、図6(A),(B)に示す状態から、連結部材により連結された搬送ユニットと加熱室や冷却室との連結部分を減圧させて、搬送ユニット及び連結された加熱室や冷却室における各開閉扉を開けて、被処理物を搬送ユニットと連結された加熱室や冷却室との間で受け渡しさせる状態を示し、(A)は縦方向の断面説明図、(B)は横方向の断面説明図である。
図8】前記の実施形態に係る熱処理設備において、搬送ユニットが走行される走行レールの両側に、複数の加熱室と冷却室とからなる処理室を配列させた状態を示した概略平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態に係る熱処理設備を添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明に係る熱処理設備は、下記の実施形態に示したものに限定されず、発明の要旨を変更しない範囲において、適宜変更して実施できるものである。
【0025】
この実施形態に係る熱処理設備においては、図1に示すように、被処理物Wを熱処理させる処理室Hとして、被処理物Wを加熱させる複数(図に示す例では3つ)の加熱室10と、加熱室10において加熱された被処理物Wを冷却させる冷却室20とを、搬送ユニット30が走行される走行レールLの片側に所要間隔を介して配置させている。また、このように配置された加熱室10や冷却室20と同じ走行レールLの片側に、被処理物Wを搬送ユニット30に供給する供給部Pを設けている。
【0026】
そして、この実施形態に係る熱処理設備においては、図2及び図3等に示すように、前記の加熱室10や冷却室20において、前記の搬送ユニット30と対面する対面部に、それぞれ搬送ユニット30との間で被処理物Wを受け渡す開口部11、21を設けると共に、これらの開口部11、21に対応させて、開口部11、21の開閉を行う密封式の開閉扉12、22と、前記の開閉扉12、22を収容させる戸袋13,23とを設けている。
【0027】
また、前記の搬送ユニット30においては、前記の加熱室10や冷却室20と対面する対面部側に、加熱室10や冷却室20との間で被処理物Wを受け渡す開口部31を設けると共に、この開口部31の開閉を行う密封式の開閉扉32と、この開閉扉32を収容させる戸袋33とを設けている。
【0028】
また、この実施形態においては、前記の加熱室10や冷却室20と対面する前記の搬送ユニット30における戸袋33の前面側に伸縮可能な連結部材34を設けている。そして、後述するように、この連結部材34を伸張させて、前記の搬送ユニット30と前記の加熱室10や冷却室20とを、この連結部材34によって密封状態で連結させるようにしている。
【0029】
また、このように連結部材34により搬送ユニット30を加熱室10や冷却室20と密封状態で連結させた状態で、連結部材34によって連結された搬送ユニット30と加熱室10や冷却室20との連結部分を、後述するように減圧装置35によって減圧させた後、後述するように、前記の加熱室10や冷却室20に設けられた開閉扉12、22と、搬送ユニット30に設けられた開閉扉32とを開け、搬送ユニット30における開口部31と加熱室10や冷却室20における開口部11、21とを通して、被処理物Wを連結された搬送ユニット30と加熱室10や冷却室20との間で受け渡しするようにしている。
【0030】
また、前記のように連結部材34により連結された搬送ユニット30と加熱室10や冷却室20との連結部分を減圧させた場合に、維持手段40により、搬送ユニット30と加熱室10や冷却室20との間に力を作用させて、搬送ユニット30と加熱室10や冷却室20とを一定の距離に維持させるようにしている。
【0031】
ここで、この実施形態においては、加熱室10や冷却室20と対面する搬送ユニット30における戸袋33の前面側に伸縮可能な連結部材34を設けるにあたっては、加熱室10や冷却室20と対面する搬送ユニット30における戸袋33の前面に、筒状になった突出部材341を前記の加熱室10や冷却室20に向けて所要長さ突出させると共に、この突出部材341の外周側において突出部材341と摺動可能なシール部材(図示せず)を用いて密接状態で加熱室10や冷却室20に向けて移動される筒状になった可動部材342を設け、この可動部材342において前記の加熱室10や冷却室20と対面する前面側の鍔部342aに、この可動部材342と前記の加熱室10や冷却室20との間をシールするシール部材343を設けている。
【0032】
そして、前記の連結部材34における可動部材342を加熱室10や冷却室20に向けて移動させるにあたっては、搬送ユニット30における戸袋33の前面側にシリンダーからなる伸縮装置41を設け、この伸縮装置41における伸縮ロッド41aの先端を可動部材342に取り付け、この伸縮ロッド41aを伸縮させて前記の可動部材342を加熱室10や冷却室20に向けて移動させ、可動部材342を前記の加熱室10や冷却室20に連結させたり、加熱室10や冷却室20から離間させたりするようにしている。
【0033】
なお、この実施形態においては、伸縮可能な連結部材34として、加熱室10や冷却室20に向けて筒状になった突出部材341を所要長さ突出させると共に、この突出部材341の外周側において突出部材341と密接状態で加熱室10や冷却室20に向けて移動される筒状になった可動部材342を設けるようにしたが、伸縮可能な連結部材34はこのようなものに限定されない。例えば、図示していないが、伸縮可能な連結部材として、蛇腹式の伸縮可能な連結部材を設けるようにすることもできる。
【0034】
また、この実施形態においては、前記の搬送ユニット30において、加熱室10や冷却室20と対面する戸袋33の前面側であって、前記の可動部材342よりも外側の位置にシリンダーからなる押圧装置42を設け、この押圧装置42における伸縮ロッド42aを伸張させた場合に、この伸縮ロッド42aの先端部が接触する加熱室10や冷却室20における戸袋13,23の前面側の部分に当て部材14、24を設けている。
【0035】
そして、この実施形態においては、前記の維持手段40として、前記の伸縮装置41と押圧装置42とを利用し、前記のように伸縮装置41によって連結部材34における可動部材342を加熱室10や冷却室20に向けて移動させ、搬送ユニット30を連結部材34により加熱室10や冷却室20と密封状態で連結させると共に、このように連結された搬送ユニット30と前記の加熱室10や冷却室20との間の連結部分を減圧させた場合に、前記のように押圧装置42によって連結された搬送ユニット30と前記の加熱室10や冷却室20との間に押圧力を作用させ、搬送ユニット30と加熱室10や冷却室20とを一定の距離に維持させるようにしている。このようにすると、連結部材34により連結された搬送ユニット30と前記の加熱室10や冷却室20との間の連結部分を減圧させた場合に、搬送ユニット30と加熱室10や冷却室20との間における距離等の位置が近づく方向にずれるのが防止されるようになる。
【0036】
ここで、前記のように搬送ユニット30と加熱室10や冷却室20との間の連結部分を減圧装置35によって減圧させた場合に、前記の押圧装置42により、連結された搬送ユニット30と前記の加熱室10や冷却室20との間に押圧力を作用させるにあたっては、図4に示すように、減圧装置35によって減圧された連結部分の内部における圧力を圧力センサー43によって検知し、このように検知した結果を制御装置44に出力して、この制御装置44により前記の押圧装置42を制御し、この押圧装置42によって連結された搬送ユニット30と前記の加熱室10や冷却室20との間に作用させる押圧力を調整することができる。
【0037】
具体的には、連結部分の内部の減圧を開始し、所定の圧力まで徐々に下がっていくのに合わせて、連結部分における圧力に応じて、連結された搬送ユニット30と加熱室10や冷却室20との間に作用させる押圧力を徐々に上げていくように調整する。そうすることにより、押圧装置42の押圧力が、減圧によって搬送ユニット30と加熱室10や冷却室20とが近づこうとする力よりも大きくなって、搬送ユニット30と加熱室10や冷却室20との間における距離等の位置が離れる方向にずれたりするのも防止されるようになり、搬送ユニット30と加熱室10や冷却室20とを元のままの位置に維持させることが簡単に行えるようになる。
【0038】
なお、この実施形態においては、前記のように維持手段40として、伸縮装置41と押圧装置42とを利用するようにし、押圧装置42によって連結された搬送ユニット30と前記の加熱室10や冷却室20との間に作用させる押圧力を前記のように調整するようにしたが、前記の伸縮装置41だけで、搬送ユニット30と加熱室10や冷却室20とを一定の距離に維持させるようにすることも可能である。その場合は、押圧力が大きくなり過ぎないようにし、シール部材343を繰り返して押し付けても弾力を失わない材質とする。
【0039】
次に、この実施形態における熱処理設備において、前記の搬送ユニット30と前記の加熱室10や冷却室20との間で、被処理物Wを酸化させないように減圧状態で受け渡す場合について説明する。
【0040】
先ず、搬送ユニット30における前記の開閉扉32を閉じて、搬送ユニット30内を非酸化雰囲気にすると共に、被処理物Wを受け渡しする加熱室10や冷却室20における前記の開閉扉12、22を閉じて、被処理物Wを受け渡しする加熱室10や冷却室20内を非酸化雰囲気にし、前記の図2及び図3に示すように、前記の搬送ユニット30を、被処理物Wを受け渡す加熱室10や冷却室20と所要間隔を介して対面する位置に移動させる。
【0041】
次いで、図5(A),(B)に示すように、加熱室10や冷却室20と対面する搬送ユニット30の前面側に設けた前記の伸縮装置41における伸縮ロッド41aを伸張させて、この伸縮ロッド41aの先端に取り付けられた連結部材34における可動部材342を前記の突出部材341に密接させた状態で加熱室10や冷却室20に向けて移動させ、この可動部材342の前面側の鍔部342aに設けたシール部材343を、前記の加熱室10や冷却室20の前面側における戸袋13,23に密接させてシールさせる。
【0042】
次いで、このように可動部材342の前面側の鍔部342aに設けたシール部材343を、前記の加熱室10や冷却室20の前面側における戸袋13,23に密接させてシールさせた状態で、図6(A),(B)に示すように、搬送ユニット30の前面側に設けた前記の押圧装置42における伸縮ロッド42aを伸張させて、この伸縮ロッド42aの先端部を、加熱室10や冷却室20における戸袋13,23の前面側の部分に設けられた当て部材14、24に当接させるようにする。
【0043】
そして、この状態で、前記のように減圧装置35によって搬送ユニット30と加熱室10や冷却室20との間の連結部分の内部を減圧させると共に、前記の押圧装置42によって連結された搬送ユニット30と前記の加熱室10や冷却室20との間に押圧力を作用させ、搬送ユニット30と加熱室10や冷却室20とを一定した状態で維持させるようにする。このようにすると、搬送ユニット30と加熱室10や冷却室20との間の連結部分の内部を減圧させた場合に、従来のように搬送ユニット30と加熱室10や冷却室20の位置がずれたりすることがなく、搬送ユニット30と加熱室10や冷却室20とが所定の位置において安定した状態で維持されるようになる。
【0044】
なお、この実施形態においては、前記のように伸縮装置41における伸縮ロッド41aを伸張させて、可動部材342の前面側の鍔部342aに設けられたシール部材343を、加熱室10や冷却室20の前面側における戸袋13,23に密接させてシールさせた後、押圧装置42における伸縮ロッド42aを伸張させて、この伸縮ロッド42aの先端部を、加熱室10や冷却室20における戸袋13,23の前面側の部分に設けられた当て部材14、24に当接させるようにしたが、可動部材342の前面側の鍔部342aに設けられたシール部材343を、加熱室10や冷却室20の前面側における戸袋13,23に密接させてシールさせる動作と、押圧装置42における伸縮ロッド42aを伸張させて、この伸縮ロッド42aの先端部を、加熱室10や冷却室20における戸袋13,23の前面側の部分に設けられた当て部材14、24に当接させる動作とを同時に行うようにすることもできる。なお、当て部材14、24は、設けても、設けなくてもよい。
【0045】
次に、前記のように搬送ユニット30と加熱室10や冷却室20との間の連結部分の内部を減圧させて、搬送ユニット30と加熱室10や冷却室20とを所定の位置に維持させた状態で、図7(A),(B)に示すように、搬送ユニット30における前記の開閉扉32及び連結された加熱室10や冷却室20における前記の開閉扉12、22を開けて、被処理物Wを前記の搬送ユニット30と前記の加熱室10や冷却室20との間で受け渡しさせる。
【0046】
この時、連結部分の内部の圧力が、所定の圧力まで徐々に下がっていくのに合わせて、押圧装置42の圧力を徐々に上げていき、搬送ユニット30と加熱室10や冷却室20とが減圧によって近づこうとする力とできるだけ同圧となるようにバランスさせるのが好ましい。
【0047】
そして、このように被処理物Wを搬送ユニット30と加熱室10や冷却室20との間で受け渡した後は、前記の場合とは逆に、搬送ユニット30における開閉扉32及び連結された加熱室10や冷却室20における開閉扉12、22を閉じると共に、減圧状態にある搬送ユニット30と加熱室10や冷却室20との間の連結部分の内部を大気圧に戻すようにする。
【0048】
この時も、連結部分の内部の圧力が、大気圧まで徐々に上がっていくのに合わせて、押圧装置42の圧力を徐々に下げていき、搬送ユニット30と加熱室10や冷却室20とが減圧によって近づこうとする力とバランスさせるのが好ましい。
【0049】
次いで、前記の押圧装置42における伸縮ロッド42aを収縮させて、この伸縮ロッド42aの先端部を、加熱室10や冷却室20における戸袋13,23の前面側の部分から離間させ、さらに前記の伸縮装置41における伸縮ロッド41aを収縮させて、この伸縮ロッド41aの先端に取り付けられた連結部材34における可動部材342を加熱室10や冷却室20の前面側における戸袋13,23から離間させるようにする。
【0050】
なお、この実施形態においては、前記のように押圧装置42における伸縮ロッド42aを収縮させて、この伸縮ロッド42aの先端部を、加熱室10や冷却室20における戸袋13,23の前面側の部分から離間させた後、伸縮装置41における伸縮ロッド41aを収縮させて、この伸縮ロッド41aの先端に取り付けられた連結部材34における可動部材342を加熱室10や冷却室20の前面側における戸袋13,23から離間させるようにしたが、押圧装置42における伸縮ロッド42aを収縮させる動作と、伸縮装置41における伸縮ロッド41aを収縮させる動作を同時に行うようにすることも可能である。
【0051】
そして、この実施形態における熱処理設備においては、前記のように搬送ユニット30と加熱室10や冷却室20との間の連結部分を減圧状態にして、被処理物Wを搬送ユニット30と加熱室10や冷却室20との間で受け渡す操作を繰り返して行い、被処理物Wを順々に処理させるようにする。
【0052】
なお、前記の実施形態における熱処理設備においては、被処理物Wを熱処理させる処理室Hとして、被処理物Wを加熱させる複数の加熱室10と、加熱室10において加熱された被処理物Wを冷却させる冷却室20とを、搬送ユニット30が走行される走行レールLの片側に配置させるようにしただけであるが、被処理物Wを熱処理させる処理室Hの種類や数は特に限定されない。
【0053】
例えば、図8に示すように、被処理物Wを熱処理させる処理室Hとして、被処理物Wを加熱させる複数の加熱室10と、加熱室10において加熱された被処理物Wを冷却させる冷却室20とを、搬送ユニット30が走行される走行レールLの両側に配置させるようにすることができる。
【0054】
また、前記の実施形態における熱処理設備においては、前記のような連結部材34と維持手段40とを搬送ユニット30に設けるようにしたが、図示していないが、被処理物Wを熱処理させる処理室Hに前記のような連結部材34と維持手段40とを設けるようにすることも可能である。
【符号の説明】
【0055】
10 :加熱室
11 :開口部
12 :開閉扉
13 :戸袋
14 :当て部材
20 :冷却室
21 :開口部
22 :開閉扉
23 :戸袋
24 :当て部材
30 :搬送ユニット
31 :開口部
32 :開閉扉
33 :戸袋
34 :連結部材
35 :減圧装置
40 :維持手段
41 :伸縮装置
41a :伸縮ロッド
42 :押圧装置
42a :伸縮ロッド
43 :圧力センサー
44 :制御装置
341 :突出部材
342 :可動部材
342a :鍔部
343 :シール部材
H :処理室
L :走行レール
P :供給部
W :被処理物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8