(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-150114(P2017-150114A)
(43)【公開日】2017年8月31日
(54)【発明の名称】織物
(51)【国際特許分類】
D03D 11/02 20060101AFI20170804BHJP
【FI】
D03D11/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-35724(P2016-35724)
(22)【出願日】2016年2月26日
(71)【出願人】
【識別番号】516060565
【氏名又は名称】武田 栄次
(71)【出願人】
【識別番号】516059581
【氏名又は名称】武田 安弘
(74)【代理人】
【識別番号】100066267
【弁理士】
【氏名又は名称】白浜 吉治
(74)【代理人】
【識別番号】100134072
【弁理士】
【氏名又は名称】白浜 秀二
(72)【発明者】
【氏名】武田 栄次
【テーマコード(参考)】
4L048
【Fターム(参考)】
4L048BA01
4L048BA05
4L048BA13
4L048BB06
4L048BC06
4L048CA00
4L048DA15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】複数条の隆起部が、外圧によって立体感を損なうことのない織物の提供。
【解決手段】縦糸と横糸とを織り込んで形成された、縦方向Yへ延びる複数条の隆起部20と、横方向Xにおいて隣り合う隆起部20間において縦方向Yへ延びる複数条の平坦部30とを含む織物10。隆起部20は、管状であって、横方向Xにおいて隣り合う平坦部30をつなぐ凹部22を有し、縦方向Yへ延びる芯糸18が隆起部20内に配置されており、凹部22において、縦糸と横糸とによる網目に芯糸18が織り込まれている織物10。隆起部20内において、凹部22においてのみ、芯糸18が固定されていることが好ましい織物10。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向と横方向とを有し、上面と、下面と、縦糸と横糸とを織り込んで形成された、前記縦方向へ延びる複数条の隆起部と、前記横方向において隣り合う前記隆起部の間において前記縦方向へ延びる複数条の平坦部とを含む織物において、
前記隆起部は、管状であって、前記横方向において隣り合う前記平坦部をつなぐ凹部を有し、
前記縦方向へ延びる芯糸が前記隆起部内に配置されており、
前記凹部において、前記縦糸と前記横糸とによる網目に前記芯糸が織り込まれていることを特徴とする前記織物。
【請求項2】
前記芯糸が、前記隆起部内において前記凹部においてのみ固定されている請求項1に記載の織物。
【請求項3】
前記横方向において隣り合う前記隆起部に位置する前記凹部が、前記横方向において位置ずれしている請求項1又は2に記載の織物。
【請求項4】
前記隆起部が複数の前記凹部を有し、前記凹部間の前記縦方向における離間寸法が、10.0〜20.0cmである請求項1〜3のいずれかに記載の織物。
【請求項5】
前記隆起部内に複数の芯糸が位置し、前記複数の芯糸は、前記凹部において前記横方向に並んで位置しており、前記隆起部のうちの前記凹部を除く部分において集束状に位置する請求項1〜4のいずれかに記載の織物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シーツ等に使用される織物は、公知である。例えば、特許文献1には、縦方向へ延びる複数の隆起部と、隆起部間において縦方向へ延びる複数条の平坦部とを有する織物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭55−62589号
【0004】
特許文献1に開示の織物においては、管状の隆起部の内部に縦方向へ延びる複数条の芯糸が配置されていることから、立体感に優れ、使用者の体圧等の外圧が加えられても隆起部が圧潰されるおそれはない。
【0005】
しかしながら、芯糸は、互いに独立した又は連結された複数の糸から形成された集束体であって、隆起部を形成する上下布に固定されていないことから、隆起部内に自由に動くことが可能である一方、織物全体に折り曲げたり捩じったりする力が加えられたときに、隆起部内において芯糸が変形したり偏倚したりして、隆起部の立体感が損なわれるおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来の発明の改良であって、複数条の隆起部が、外圧によって立体感を損なうことのない織物を提供することを課題にしている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に開示の発明は、縦方向と横方向とを有し、上面と、下面と、縦糸と横糸とを織り込んで形成された、前記縦方向へ延びる複数条の隆起部と、前記横方向において隣り合う前記隆起部の間において前記縦方向へ延びる複数条の平坦部とを含む織物に関する。
【0008】
本発明に係る織物は、前記隆起部は、管状であって、前記横方向において隣り合う前記平坦部をつなぐ凹部を有し、前記縦方向へ延びる芯糸が前記隆起部内に配置されており、前記凹部において、前記縦糸と前記横糸とによる網目に前記芯糸が織り込まれていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る織物の実施態様の一つにおいて、前記芯糸が、前記隆起部内において前記凹部においてのみ固定されている。
【0010】
本発明に係る織物の他の実施態様の一つにおいて、前記横方向において隣り合う前記隆起部に位置する前記凹部が、前記横方向において位置ずれしている。
【0011】
本発明に係る織物のさらに他の実施態様の一つにおいて、前記隆起部が複数の前記凹部を有し、前記凹部間の前記縦方向における離間寸法が、10.0〜20.0cmである。
【0012】
本発明に係る織物のさらに他の実施態様の一つにおいて、前記隆起部内に複数の芯糸が位置し、前記複数の芯糸は、前記凹部において前記横方向に並んで位置しており、前記隆起部のうちの前記凹部を除く部分において集束状に位置する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る織物によれば、凹部において、縦糸と横糸とによる網目に芯糸が織り込まれていることから、芯糸が隆起部内において安定的に配置され、外圧によって隆起部の立体感が損なわれることはない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図4】
図1のIV線で囲んだ領域の一部拡大斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1〜
図3を参照すると、織物10は、縦方向Yと、横方向Xと、厚さ方向Zと、上下面11,12とを有し、互いに並行して縦方向Yへ延びる複数条の隆起部20と、隣り合う隆起部(肉厚部分)20間にあって縦方向Yへ延びる複数条の平坦部(肉薄部分)30とを含む。隆起部20は、織物10の上下面11,12のうちの少なくとも一方において平坦部30から隆起するように膨らんでいればよく、図示例では、上下面11,12において隆起している。なお、説明の便宜上、織物10の平面上の方向として縦方向Yと横方向Xとを用いているが、織物10は裁断する形状によって外形が変化するので、縦横の相違がないものを含み、「縦方向Yと横方向Xと」は、単に平面上において交差する方向を意味する。
【0016】
織物10は、縦糸14と横糸15とで織られたものであって、平坦部30を形成する縦糸14と横糸15とが隆起部20では上下に分かれて、上面11側に位置する上側部分16と下面12側に位置する下側部分17とを形成している。隆起部20は、縦糸14と横糸15とが上下に分かれることによって、上下側部分16,17によって形成された管状をなし、その内部には、縦方向Yへ延びる複数条の芯糸18が位置している。かかる織り込み態様を有することから、縦糸14と横糸15とが交差することによって画成される網目19A,19Bは、平坦部30に形成される網目19Aに比べて、隆起部20に形成される網目19Bが大きくなっている。芯糸18は、縦糸14と横糸15よりも繊度が大きく、より好ましくは、両糸14,15の繊度の約2倍以上の繊度を有する複数の糸からなる組み紐であって、少なくとも2条以上の芯糸18が、隆起部20の内部に配置されている。本実施形態では、7本の芯糸18が隆起部20の内部に配置されている。
【0017】
図2及び
図3を参照すると、複数の芯糸18は、隆起部20内において集束状に配置されている。それによって、隆起部20は、立体感を有するとともに、縦方向Yへ連続的に延びる芯糸18の集束体が内部に位置することによって、織物10に対して縦方向Y及び横方向Xに対する一定のコシを付与するとともに、外圧によっても圧潰されることはなく、圧縮復元性に優れる。また、芯糸18は、それぞれ互いに接合されることなくそれぞれ独立されており、複数の芯糸18からなる集束体と隆起部20の内周面との間にはわずかに隙間40が形成されており、隆起部20内は、集束体が隙間40なく収容されている場合に比べて、通気性及び保湿性に優れる。芯糸18は、その両端が、織物10の縦方向Yにおいて互いに対向する両端縁部(図示せず)において、縦糸14及び横糸15とともにミシン目によって接合されているが、隆起部20内において(後記の凹部22を除く)固定されておらず、比較的に自由に動くことができる。したがって、芯糸18全体が固定されている場合に比べて、隆起部20は圧縮弾性に優れるといえる。芯糸18を形成する組紐は、製造工程中に機械方向へ伸長されて縮径されるが、ワッシャー加工によって嵩回復されて、隆起部20内において僅かな隙間を形成する程度にその内部で膨らんで位置する。
【0018】
芯糸18としては、撚糸のほかに、フィラメント糸、紐、リボン状の不織布片、合成樹脂線状物、合成樹脂発泡線状物等であってもよい。また、縦糸14と横糸15の素材として、天然繊維、合成繊維、カーボン繊維、ガラス繊維、金属繊維、導電性繊維等を単独又は混合して使用することができる。
【0019】
織物10において、平坦部30及び隆起部20の横方向Xの寸法W1,W2は、必要に応じて適宜自由に設定することができるが、両寸法W1,W2が等しく、又は、平坦部30の横方向Xの寸法W1が隆起部20の横方向Xの寸法W2よりも大きいことが好ましい。本実施形態においては、平坦部30の横方向Xの寸法W1は、1.0〜2.5cmであって、隆起部20の横方向Xの寸法(幅寸法)W2は、0.5〜2.0cmである。隆起部20の横方向Xの寸法W2が0.5cm以下の場合には、織物10を寝具のシーツとして使用したときに、比較的に広い範囲に肌が体圧によって圧迫されることによって、使用者(特に、比較的に長時間寝臥状態にある高齢者の)の身体に線状の圧迫跡が付いてしまうおそれがある。隆起部20の横方向Xの寸法W2が2.0cm以上の場合には、相対的に平坦部30の横方向Xの寸法W1が小さくなり、所要の通気性を発揮することができなくなるおそれがある。
【0020】
また、織物10において、平坦部30の厚さ寸法D1は、2.0〜5.0mmであって、隆起部20の厚さ寸法D2は、3.0〜15.0mmである。隆起部20の厚さ寸法D2が3.0mm以下の場合には、使用者の身体と平坦部30との間に空気の流れる通気路が十分に形成されず通気性が低下するおそれがある。一方、隆起部20の厚さ寸法D2が、15.0mm以上の場合には、凸状の隆起部が使用者に違和感を与えるとともに、体圧によって身体に圧迫跡が付くおそれがある。
【0021】
図1〜
図4を参照すると、隆起部20は、さらに、他の領域(凸部)に比べて肉薄の凹部22を有する。凹部22は、平坦部30とほぼ同じ又はそれより僅かに大きな厚さ寸法を有し、隆起部20を介して横方向Xに隣り合う平坦部30どうしを互いに連結している。芯糸18は、凹部22において、縦糸14と横糸15とによって画成された網目19Bに織り込まれており、上側部分16と下側部分17とに一体化されている。具体的には、凹部22において、複数条(図示例では、7本)の芯糸18が横方向Xにおいてそれぞれ並んで位置し、各芯糸18が縦方向Yへ並ぶ網目19Aに織り込まれている。芯糸18の繊度は、隆起部20の網目19Bよりも大きいことから、網目19Bを押し広げるようにして織り込まれており、織り込まれた部分が網目19Bから上方及び/又は下方へ膨らんでいる。このように芯糸18が織り込まれたことによって、凹部22に位置する芯糸18の一部は、隆起部20の他の部分に位置する芯糸18のようにワッシャー加工をしても嵩回復しないことから、凹部22が平坦部30とほぼ同じ又はそれよりも僅かに大きな厚さ寸法となっている。
【0022】
芯糸18は、隆起部20内において非固定であって自由に動くことができるので、使用中や搬送中等において、織物10全体又は隆起部20に対してそれを折り曲げたり捩じったりする力が加えられたときに、隆起部20内において偏倚したり変形したりして集束状態が崩れて立体感が損なわれるおそれがある。しかしながら、本実施形態においては、芯糸18が、凹部22において上下側部分16,17に織り込まれて局所的に固定されることから、かかる事態を避けることができる。したがって、芯糸18は、隆起部20内において凹部22以外の部分において自由に動きうる状態で集束されて圧縮復元性を発揮することができるとともに、凹部22において上下側部分16,17に織り込まれていることから、立体感を損なうような偏倚や変形を生じることはない。
【0023】
凹部22は、各隆起部20において、縦方向Yへ離間して複数配置されていることが好ましく、
図4を参照すると、例えば、任意の隆起部20における凹部22Aと凹部22Bとの縦方向Yの離間寸法Rは、10.0〜20.0cmである。離間寸法Rが10.0cm以下の場合には、芯糸18のうちの自由に動ける部分が少なくなって隆起部20の外圧に応じる変形性が低下するおそれがあり、一方、離間寸法Rが20.0cm以上の場合には、凹部22以外の部分において芯糸18が集束状を維持することができず、立体感を損なうおそれがある。なお、凹部22において、隆起部20内に位置する芯糸18のすべてが上下側部分16,17の網目19Bに織り込まれているが、芯糸18のうちの半数又はそれ以下のものが網目19Bに織り込まれていなくてもよい。
【0024】
また、例えば、病院や介護施設等の比較的に長時間寝臥状態となる高齢者用のシーツとして織物10を用いた場合には、圧縮復元性に優れた隆起部20が身体に当接して使用感が良好であるとともに、織物10の全体が当接されず、身体と平坦部30との間に外気が流れ込む通気スペース(通気路)が形成されることによって蒸れが抑制されて、褥瘡の発生を抑制することができる。また、隆起部20に複数の凹部22が形成されていることによって、身体に当接されている隆起部20においても部分的に身体に当接されず、身体が縦方向Yへ連続的に圧迫されることがないので、褥瘡の発生を抑制することができる。さらに、凹部22は、平坦部30とほぼ同じかそれよりも僅かに大きな厚さ寸法であることから、横方向Xにおいて隣り合う平坦部30どうしをつなぐとともに、すべての平坦部30が凹部22によって連通されるので、各平坦部30が独立している場合に比べて、空気の流れが良好であって、通気性に優れる。
【0025】
凹部22の配置数、配置パターンは、適宜自由に選択することができるが、本実施形態においては、隣り合う隆起部20の凹部22が、横方向Xにおいて位置ずれしている。凹部22が、横方向Xにおいて並んで位置する場合には、凹部22が位置する部分において織物10の横方向Xにおける強度が低下するおそれがあるが、このように位置ずれしていることによって、織物10の横方向Xにおける強度が部分的に低下するのを抑制することができる。
【0026】
本明細書において、織物10を構成する各構成材料には、特に記述がなされている場合を除き、この種の分野において通常用いられている、各種の公知の材料を制限なく用いることができる。
【符号の説明】
【0027】
10 織物
11 上面
12 下面
18 芯糸
20 隆起部
22 凹部
30 平坦部
R 隆起部における凹部間の離間寸法
X 横方向
Y 縦方向