【課題】突部のみがインサイドレバーのオープン作動に連動してリリース方向に移動しうるようにし、ハウジング内に組み込まれる各種部品の配置や設計の自由度を高めうるようにしたチャイルドロック機構付きドアラッチ装置を提供する。
【解決手段】チャイルドレバー36のガイド長孔366により、待機位置からリリース位置まで移動可能に支持されたリリース作動部材37は、チャイルドレバー36がチャイルドアンロック位置にあって、インサイドレバー21がオープン作動された場合に、突部371がインサイドレバー21に当接してオープン方向へ移動することにより、付勢手段38に抗してリリース位置まで移動する。
前記ガイド部をガイド長孔とし、かつ前記リリース作動部材は、前記突部の突出方向と反対側に形成され、前記ガイド長孔に移動可能に嵌合される被ガイド軸部と、このガイド軸部を挟んで対向し、前記チャイルドレバーにおける前記ガイド長孔の形成部の両側面を挟む1対の鍔部と、前記突部の反対方向に突出し、付勢手段としてのねじりコイルばねの一方の足片が圧接するばね受け突部とを備えることを特徴とする請求項1に記載のチャイルドロック機構付きドアラッチ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のチャイルドレバーは、カバーに設けられた前後方向を向く直線状のガイド部に摺動かつ回動可能に組み付けられ、かつ突部も、インサイドレバーのオープン作動と連動して、チャイルドレバーと一体的にリリース方向に移動するようになっている。そのため、カバーに、ガイド部や、突部の回動を許容するための逃げ孔を設ける必要があり、カバーの形状が複雑化してコスト高となる。また、ハウジング内に、チャイルドレバーと突部が一体的に回動するための空間を確保しなければならないので、チャイルドレバーに隣接してハウジング内に組み込まれるレバー等の各種部品の配置や設計上の自由度が制約される。
【0006】
さらに近年、ドアラッチ装置の組立効率を向上させるために、自動組立てが行われているが、特許文献1に記載のチャイルドレバーは、カバーに設けられた前後方向を向く直線状のガイド部(長溝)に、カバーの後方より移動可能に組み付けられているので、チャイルドレバーの組付け方向と、ハウジング内に車内方向から組み付けられるレバー等の各種部品との組付け方向とが異なっている。そのため、チャイルドレバーと各種部品の組付作業を、組み立てライン等において同方向から自動的に行うことが難しくなり、ドアラッチ装置の組立効率が低下する原因となる。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑み、突部のみが、インサイドレバーのオープン作動に連動してリリース方向に移動しうるようにし、ハウジング内に組み込まれる各種部品の配置や設計の自由度を高めうるようにするとともに、組立効率を向上させうるようにした、チャイルドロック機構付きドアラッチ装置及びチャイルドロック機構の組付方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
第1の発明は、車内側の開口面がカバーにより閉塞されるハウジングと、車内側のインサイドハンドルのドア開操作に基づいてオープン方向に作動するインサイドレバーと、前記インサイドレバーのオープン作動を伝達可能とするチャイルドアンロック状態、及び伝達不能とするチャイルドロック状態に切り替え可能なチャイルドロック機構とを備えるドアラッチ装置において、
前記チャイルドロック機構は、前記ハウジングにより支持され、チャイルドアンロック位置及びチャイルドロック位置に回動可能なチャイルドレバーと、前記チャイルドレバーに形成されたガイド部により待機位置からリリース位置まで移動可能に支持され、前記チャイルドレバーが前記チャイルドアンロック位置にある場合には、前記インサイドレバーのオープン方向の回動軌跡内に進入し、前記チャイルドレバーが前記チャイルドロック位置にある場合には、前記インサイドレバーの前記回動軌跡から退避する突部を有するリリース作動部材と、前記リリース作動部材を前記待機位置に向かって常時付勢する付勢手段とを備え、
前記リリース作動部材は、前記チャイルドレバーが前記チャイルドアンロック位置にあって、前記インサイドレバーがオープン作動した場合に、前記突部が前記インサイドレバーに当接してオープン方向へ移動することにより、前記付勢手段に抗して、前記リリース位置まで移動するようになっていることを特徴としている。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、前記ガイド部をガイド長孔とし、かつ前記リリース作動部材は、前記突部の突出方向と反対側に形成され、前記ガイド長孔に移動可能に嵌合される被ガイド軸部と、このガイド軸部を挟んで対向し、前記チャイルドレバーにおける前記ガイド長孔の形成部の両側面を挟む1対の鍔部と、前記突部の反対方向に突出し、付勢手段としてのねじりコイルばねの一方の足片が圧接するばね受け突部とを備えることを特徴としている。
【0010】
第3の発明は、上記第1または第2の発明に記載のチャイルドロック機構をドアラッチ装置のハウジングに組み付ける組付方法であって、前記チャイルドレバーの前記ガイド部に、前記リリース作動部材を組み付けるとともに、前記チャイルドレバーに前記付勢手段を組付けて、前記リリース作動部材を前記待機位置に付勢した状態に保持することにより、前記チャイルドロック機構をサブアッセンブリー状態とし、前記ハウジングに組み付けることを特徴としている。
【0011】
第4の発明は、上記第1または第2の発明に記載のチャイルドロック機構をドアラッチ装置のハウジングに組み付ける組付方法であって、前記チャイルドレバーの前記ガイド部に、前記リリース作動部材を組み付けるとともに、前記チャイルドレバーに前記付勢手段を組付けて、前記リリース作動部材を前記待機位置に付勢した状態に保持することにより、前記チャイルドロック機構をサブアッセンブリー状態とし、前記カバーにおける前記ハウジングとの対向面に設けた軸に組み付け、前記チャイルドロック機構を前記カバーと共に前記ハウジングに組み付けることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明のチャイルドロック機構付きドアラッチ装置によると、突部を含むリリース作動部材を、チャイルドレバーとは別体に形成して、突部を含むリリース作動部材のみが、インサイドレバーのオープン作動と連動してリリース方向に独立して移動するようになっているので、従来のように、ハウジングに、チャイルドレバーと突部とがリリース方向に回動するための空間を確保する必要はなく、チャイルドレバーに隣接してハウジング内に組み込まれる各種部品の配置や設計の自由度が高まる。
【0013】
また、本発明のチャイルドロック機構の組付方法によると、チャイルドロック機構を構成しているチャイルドレバー、リリース作動部材、及び付勢手段を予め組み付けたサブアッセンブリー状態としておいて、チャイルドロック機構を、ハウジングに、他の部品の組付け方向と同じ方向から組み付けることができるので、自動組み立てライン等でのドアラッチ装置の組立効率が向上する。
サブアッセンブリー状態としたチャイルドロック機構をカバーの軸に組み付ける方法の場合にも、カバーをハウジングに装着するのと同時に、チャイルドロック機構も、カバーの装着方向と同方向からハウジング内に組み込むことができるので、ドアラッチ装置の組立効率が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1〜
図4に示すように、本発明に係るチャイルドロック機構付きドアラッチ装置(以下、ドアラッチ装置と略称する)1は、例えば車両の右側のリヤドア(以下、ドアと略称する)D内において、ドアDのインナパネルD1の後端面に固定されるもので、ドアDを閉状態に保持するための噛合ユニット2と、噛合ユニット2に結合された操作ユニット3とからなっている。
【0016】
噛合ユニット2は、後面が開口された合成樹脂製の箱状のボディ4と、ボディ4の開口面を覆うようにその後面に固定され、かつ3本のボルト5により、ボディ4と共にドアD内のインナパネルD1の後端面に固定される金属製のカバープレート6とを備えている。ボディ4とカバープレート6との間の内部空間には、前後方向のラッチ軸7に枢支され、車体側のストライカSが係合可能なストライカ進入溝81を有するラッチ8と、同じく前後方向のポール軸9と共に回動し、ラッチ8に係合することにより、ラッチ8のオープン方向(ストライカSとの係合を解除する方向)への回動を阻止するポール10とからなる噛合機構が収容されている。
【0017】
操作ユニット3は、ボディ4に平面視ほぼL字状をなすように固定され、車内側の開口面が合成樹脂製のカバー11により閉塞された合成樹脂製のハウジング12を備えている。ハウジング12内には、その前上部に組み込まれた正逆回転可能な施解錠用のモータ13と、モータ13の後方を向く回転軸に固着されたウォーム14と、ウォーム14に噛合し、車内外方向の軸15によりハウジング12に枢支されたウォームホイール16と、ウォームホイール16の下方においてハウジング12に車内外方向の軸17により枢支され、ドアDの開操作を可能とするアンロック位置、及び不能とするロック位置に回動可能な施解錠レバー18と、施解錠レバー18と連動してアンロック位置及びロック位置に回動可能なリリースレバー19と、上端部がハウジング12内の後下部に車内外方向の軸20により枢支され、ドアDの車内側に設けられるインサイドハンドル(図示略)のドア開操作によりオープン方向(
図4において時計方向)へ回動させられるインサイドレバー21と、施解錠レバー18の車内側の側面と近接するようにして、施解錠レバー18の軸17と同軸に枢支され、インサイドレバー21のオープン作動を、リリースレバー19及び噛合ユニット2のポール10に伝達可能とするチャイルドアンロック状態、及び伝達不能とするチャイルドロック状態に切り替え可能なチャイルドロック機構22とが組み付けられている。なお、カバー11は、ハウジング12の一部を構成している。
【0018】
ウォーム14が取付けられたモータ13、ウォームホイール16、施解錠レバー18、リリースレバー19、インサイドレバー21、及びチャイルドロック機構22は、全て車内方向からハウジング12内に組み付けることができる。
【0019】
施解錠レバー18の上部は、ウォームホイール16の車外側の中心部に設けられた歯部(図示略)に噛合し、モータ13の回転に基づいてウォームホイール16が正逆回転することにより、施解錠レバー18は、ドアのアウトサイドハンドル及びインサイドハンドル(いずれも図示略)によるドアDの開操作を可能とするアンロック位置(
図4に示す位置)、及び不能とするロック位置(
図4において時計方向)に自動で回動させられる。
施解錠レバー18の下端部は、一端部がドアDの車内側に設けられるロックノブ(図示略)に連結された第1ボーデンケーブル23におけるインナケーブル23aの他端部に連結され、施解錠レバー18は、ロックノブのアンロック操作及びロック操作に基づいても、アンロック位置とロック位置とに手動で回動させることができる。
【0020】
インサイドレバー21の上部には、チャイルドロック機構22の後述する突部371に当接可能な斜め前上方に向かって延出するオープン作用部211が一体的に形成されている(
図15参照)。インサイドレバー21の下端部は、一端部がドアDのインサイドハンドルに連結された第2ボーデンケーブル24におけるインナケーブル24aの他端部に連結されている。
【0021】
インサイドハンドルのドア開操作に基づいて、インサイドレバー21がオープン方向(
図4において時計方向)に回動させられると、施解錠レバー18がアンロック位置にあって、かつチャイルドロック機構22がチャイルドアンロック状態にある場合には、インサイドレバー21のオープン作用部211がチャイルドロック機構22の突部371に下方より当接し、リリースレバー19が突部371を介して上方のリリース位置まで移動させられることにより(
図17参照)、ポール10とラッチ8との係合が解除され、ドアDを開くことができる。
【0022】
ボディ4の裏面側(前面側)には、ドアのアウトサイドハンドルに、第3ボ−デンケーブル25のインナケーブル25aを介して連結され、アウトサイドハンドルの開操作により、
図2おいて反時計方向に回動するアウトサイドレバー26と、このアウトサイドレバー26に連係され、アウトサイドレバー26の回動と連動して後面視時計方向に回動するアウトサイドサブレバー27とが、それぞれ前後方向の軸(図示略)により枢支されている。アウトサイドサブレバー27の車内側の端部は、上述したリリースレバー19に連結され、施解錠レバー18がアンロック位置にあるとき、アウトサイドハンドルを開操作すると、アウトサイドレバー26及びアウトサイドサブレバー27を介してリリースレバー19が上方のリリース位置まで移動し、ポール10がラッチ8から外れる方向へ回動することにより、ドアDを開くことができる。
【0023】
図2に示すように、第3ボーデンケーブル25におけるアウタケーシング25bの下端部は、アウトサイドレバー26の上方において、ボディ4の車外側の側面上部に形成された、後面が開口する平面視U字状のケーブル保持部41内に上下方向に移動不能に嵌合されて保持されている。第3ボーデンケーブル25のインナケーブル25aの下端部は、噛合ユニット2の車外側の側面と近い位置においてアウトサイドレバー26の突出部に連結され、アウトサイドハンドルを開操作すると、アウトサイドレバー26がオープン方向(上方)に引かれてドアが開かれるようになっている。
【0024】
アウトサイドレバー26には、インナケーブル25aの連結部から車外方向に延出する延出部261が形成されており、この延出部261を含むアウトサイドレバー26の車外側の側部は、アウトサイドハンドルを開操作しない待機状態のとき、斜め下方に向かって傾斜している。延出部261の先端部には、前方を向く前向折曲部262が形成されている。このように、延出部261を含むアウトサイドレバー26の車外側の側部を斜め下方に傾斜させ、その先端部に前向折曲部262を形成すると、
図2の2点鎖線で示すように、例えば車両の衝突等により、ドアDのアウタパネルD2が車内方向に変形し、その変形部がアウトサイドレバー26の車外側の端部の回動軌跡内に進入した場合に、前向折曲部262がアウタパネルD2の変形部の下方に位置することとなる。従って、衝突時の慣性等によってアウトサイドレバー26がオープン方向(反時計方向)に回動しても、前向折曲部262がアウタパネルD2の変形部の下面に当接するので、ドアDが不意に開放されるのが防止される。
【0025】
図5に示すように、カバープレート6が固定されているインナパネルD1の後端部は、その内面(前面)に板状のレインフォースD3を固着することにより補強されている。レインフォースD3を含むインナパネルD1におけるカバープレート6が固定される部分には、上述した3本のボルト5の軸部が挿入される3個の挿入孔28が穿設されている。挿入孔28の直径は、ボルト5の基軸部51の直径よりも若干大径とされている。なお、挿入孔28は、カバープレート6側に向かって突出するテーパ部のない円形孔とされ、またボルト5の頭部52の前部側にもテーパ部はなく、比較的厚さの薄い円板状の頭部52とされている。
【0026】
ドアラッチ装置1をドア内に挿入した状態で、インナパネルD1の各挿入孔28に挿入したボルト5を、カバープレート6に形成された、テーパ孔部29と連続する雌ねじ孔30に螺合させて締め付けることにより、ドアラッチ装置1全体は、インナパネルD1の後端部に固定される。なお、ボルト5の頭部52の直径は、一般的なドアラッチ装置固定用のボルトの頭部よりも大径とされ、インナパネルD1と頭部52との接触面積を大として、インナパネルD1に対しカバープレート6の結合力が高められるようにしてある。
【0027】
図2及び
図6に示すように、カバープレート6の上方かつハウジング12の車外側寄りの上面には、上向突部121が一体的に形成され、この上向突部121には、レインフォースD3の後述する係合片32に係合可能な、上記挿入孔28と同方向(前後方向)に開口する被係合孔31が設けられている。
【0028】
一方、インナパネルD1におけるレインフォースD3には、被係合孔31が係合可能な前上方に向かって上向き鉤状に折曲された係合片32が設けられている。この係合片32は、レインフォースD3の一部を切り起すなどして一体的に形成することができる。被係合孔31と係合片32は、係合片32に被係合孔31を嵌合させたとき、カバープレート6の3個の雌ねじ孔30と、インナパネルD1の3個の挿入孔28とを整合させて位置決めしうる位置に設けてある。なお、係合片32に被係合孔31を係合させた状態で、ドアラッチ装置1を車内外方向に若干動かせるように、係合片32の車内外方向の幅寸法を、被係合孔31の車内外方向の開口幅よりも小さくしてある。
【0029】
図6に示すように、ドア内においてレインフォースD3の係合片32にハウジング12の被係合孔31を嵌合して係合させると、カバープレート6の後面がレインフォースD3の前面に当接するとともに、カバープレート6の3個の雌ねじ孔30と、インナパネルD1の3個の挿入孔28とを整合させた状態で、ドアラッチ装置1をドア内に吊支した状態で仮保持することができる。
【0030】
図1、
図3及び
図7に示すように、カバー11における車内側の側面の前端部には、上面と下面が平坦をなす筒状のコネクタ連結部33が、車内方向を向くように一体的に突設されている。このコネクタ連結部33には、ハウジング12内のモータ等に通電するためのワイヤハーネスの雌型コネクタ(図示略)が連結される。
【0031】
コネクタ連結部33の平坦をなす上面には、コネクタ連結部33の車内側の先端から車外方向に向かって斜め上向きに傾斜する上部弾性係合片331が、また、コネクタ連結部33の平坦をなす下面には、コネクタ連結部33の車内側の先端から車外方向に向けて斜め下向きに傾斜する下部弾性係合片332が、それぞれ一体的に形成されている。上部弾性係合片331と下部弾性係合片332の前後寸法は、コネクタ連結部33の上下の平坦面の前後幅よりも小さく、かつ長さは、コネクタ連結部33の突出寸法の半分程度とされている。上部弾性係合片331は下方に、下部弾性係合片332は上方に、それぞれ弾性変形することができる。
【0032】
車内側のインナパネルD1には、コネクタ連結部33が嵌合される円形の開口部34が形成されている。
図7に示すように、コネクタ連結部33を囲むようにカバー11の車外側の側面に弾性シール材35を貼着した状態で、コネクタ連結部33を開口部34に車外側から嵌合すると、上部弾性係合片331と下部弾性係合片332とがそれぞれ下方と上方に弾性変形させられる。上部弾性係合片331と下部弾性係合片332が開口部34を通過するまでさらに押し込むと、上部弾性係合片331は上方に、下部弾性係合片332は下方に、それぞれ弾性復元し、両弾性係合片331、332の車外側の端面が開口部34の車内側の開口縁部に係合することにより、コネクタ連結部33は開口部34から抜け止めされる。なお、コネクタ連結部33を押し込む際、弾性シール材35は若干圧縮されるので、コネクタ連結部33が車内外方向に動くのが防止されるとともに、コネクタ連結部33の周囲のシール性が保持される。
【0033】
上記実施形態のドアラッチ装置1をドアD内に組付けるには、まず、車内側のインナパネルD1に設けられた作業孔よりドアラッチ装置1をドアD内に挿入し、インナパネルD1のレインフォースD3に設けられた係合片32に、ドアラッチ装置1のハウジング12に設けた被係合孔31を嵌合して係合させるとともに、カバー11に設けられたコネクタ連結部33及びそれに一体的に形成された上部弾性係合片331と下部弾性係合片332を、車内側のインナパネルD1に設けた開口部34に車外側から嵌合する。
【0034】
これにより、上述したように、カバープレート6の3個の雌ねじ孔30と、インナパネルD1の3個の挿入孔28とを整合させることができ、この状態で、ドア内にドアラッチ装置1が吊支されて仮保持されるとともに、カバー11のコネクタ連結部33における上部弾性係合片331と下部弾性係合片332が、開口部34の車内側の開口縁部に係合して抜け止めされることにより、ハウジング12の前端部がインナパネルD1によって保持される。このため、ドアラッチ装置1をドア内に片手で保持しておく必要はなく、ドアラッチ装置1から手を離した状態でボルト5の締め付け作業を容易に行うことができるので、ドア内へのドアラッチ装置1の組付作業性及び組付効率を大幅に向上させることができる。
【0035】
次に、
図8〜
図20を参照して、上述したチャイルドロック機構22の構成及びその作用について詳細に説明する。
図8〜
図13に示すように、チャイルドロック機構22は、前部寄り側が施解錠レバー18が支持されている車内外方向の軸17に同軸をなして枢支される、ほぼ前後方向を向く合成樹脂製のチャイルドレバー36と、このチャイルドレバー36に取り付けられる合成樹脂製のリリース作動部材37と、リリース作動部材37を常時下方の待機位置に付勢する付勢手段であるねじりコイルばね38とを備えている。
【0036】
チャイルドレバー36は、後方に向かって末広がり状に拡幅する形状をなし、前部寄りには、ハウジング12の軸17に嵌合される軸孔361が形成されている。また、チャイルドレバー36の後部寄りには、上下両端部の車外側の側面がチャイルドレバー36の後部寄りの車内側の側面に結合された、前後幅の小さな上下方向の補助レバー部362が、チャイルドレバー36の車内側の側面と所要寸法離間して対向するように一体的に形成されている。
【0037】
補助レバー部362の上部の車内側の側面には、車内方向に向かって突出する軸状の手動操作部363が一体的に形成され、この手動操作部363は、
図1及び
図3に示すように、カバー11及び車内側のインナパネルD1に形成された上下方向の長孔39、39を貫通して、ドアの車内側に突出するようになっている。なお、手動操作部363は、ドアを閉じた際に車体により隠蔽されて、車内からは操作できない位置に設けられている。
【0038】
チャイルドレバー36における軸孔361を囲む車内側の側面には、ねじりコイルばね38を保持するためのばね保持部364、364と、ねじりコイルばね38の一方の足片381が係止される係止突部365とが突設されている。チャイルドレバー36のやや後方寄りには、リリース作動部材37が嵌合されるとともに、インサイドレバー21のオープン作動に基づいて、リリース作動部材37が軸17を中心として移動可能な円弧状のガイド長孔366が形成されている。ガイド長孔366の上部には、リリース作動部材37の後述する小径鍔部374が挿入可能な大きさの拡径孔部367が、ガイド長孔366と連続するようにほぼ後向きに連設されている。
【0039】
図8及び
図13に示すように、リリース作動部材37は、車外方向を向くリリース用の突部371と、やや車内側寄りに形成され、チャイルドレバー36のガイド長孔366に摺動可能に嵌合される被ガイド軸部372と、この被ガイド軸部372を挟んで対向する1対の大径鍔部373及び小径鍔部374と、小径鍔部374から、突部371の突出方向と反対方向である車内方向に突出するばね受け突部375とを備え、小径鍔部374は、チャイルドレバー36の拡径孔部367に挿入可能な外径とされている。ばね受け突部375の車内方向への突出寸法は、被ガイド軸部372をガイド長孔366に嵌合させた際に、補助レバー部362の内面に接触しない長さとしてある。
【0040】
大径鍔部373と小径鍔部374の対向面間には、チャイルドレバー36におけるガイド長孔366形成部付近の板厚よりも若干大きい隙間が形成され、被ガイド軸部372をガイド長孔366に嵌合させた際、チャイルドレバー36のガイド長孔366形成部付近の両側面が大径鍔部373と小径鍔部374により挟まれることにより、リリース作動部材37がガイド長孔366に沿って円滑に移動しうるようになっている。
【0041】
チャイルドロック機構22は、ハウジング12に組み付ける前に、次のようにして予め組み立てておくことができる。
図8〜
図12に示すように、まずチャイルドレバー36の拡径孔部367に、リリース作動部材37の小径鍔部374を、車外方向より挿入した後、リリース作動部材37の被ガイド軸部372をチャイルドレバー36のガイド長孔366に嵌合し、リリース作動部材37をガイド長孔366に沿ってその下端部まで移動させておく。なお、チャイルドレバー36には、ガイド長孔366と連続する拡径孔部367が形成されているとともに、リリース作動部材37には、拡径孔部367に嵌合可能な小径鍔部374が設けられているので、リリース作動部材37をガイド長孔366に容易に組み付けることができる。
【0042】
次いで、ねじりコイルばね38を、チャイルドレバー36のばね保持部364、364により保持し、その一方の足片381をチャイルドレバー36の係止突部365に係止させるとともに、長寸とした他方の足片382の先端部を、リリース作動部材37のばね受け突部375の上面に圧接させる(
図12、
図15参照)。これにより、チャイルドロック機構22の組み立てが完了し、リリース作動部材37は、ねじりコイルばね38の下向き付勢力により、ガイド長孔366の下端である待機位置に常時付勢された状態に保持される。なお、ねじりコイルばね38を組み付けると、その他方の足片382が補助レバー部362の内面に近接するので、他方の足片382がばね受け突部375から外れるおそれはない(
図13参照)。
【0043】
このように、予めサブアッセンブリー状態に組み立てられたチャイルドロック機構22は、
図4に示すように、施解錠レバー18とインサイドレバー21とを、それぞれハウジング12の軸17と軸20により枢支した後、チャイルドレバー36に形成された軸孔361を軸17に車内方向から嵌合することにより、ハウジング12内に容易に組み付けることができる。すなわち、上述したように、モータ13や各種レバー等とチャイルドロック機構22とを、ハウジング12内に車内方向(一定方向)から組み付けることができるので、組み立てライン等での各部品の自動組立てが可能となり、ドアラッチ装置1の組立効率が向上する。
【0044】
このようにして、チャイルドロック機構22をハウジング12内に組み付けると、車外方向より見た側面図である
図16に示すように、リリースレバー19と近接する下方にリリース作動部材37の突部371が位置するとともに、突部371と近接する下方に、インサイドレバー21のオープン作用部211の先端部が位置するようになる。
【0045】
次に、
図16〜
図20を参照して、チャイルドロック機構22の作用について説明する。
図16は、チャイルドロック機構22のチャイルドレバー36がチャイルドアンロック位置(
図4に示す位置)に回動操作され、チャイルドロック機構22がチャイルドアンロック状態にある場合を示す。この場合には、待機位置に付勢されているリリース作動部材37の突部371がリリースレバー19方向に移動して、インサイドレバー21のオープン作用部211の先端の回動軌跡内に進入する。すなわち、リリース作動部材37の突部371が、リリースレバー19の下端と近接する下方まで移動するとともに、突部371と近接する下方に、インサイドレバー21のオープン作用部211の先端部が位置するようになる。なお、チャイルドアンロック位置に回動操作されたチャイルドレバー36は、次のようにしてその位置に停止保持される。
【0046】
図8及び
図14に示すように、チャイルドレバー36には、軸孔361形成部付近から前方に先細り状に延出する前向延出部368が形成され、この前向延出部368の先端部(前端部)の車内側の側面には、半球状の被停止部369が突設されている。一方、カバー11の車外側の側面には、被停止部369が乗り越えて上方または下方に移動可能な山形状停止部111が形成されている。
【0047】
図14の実線で示すように、 チャイルドレバー36がチャイルドアンロック位置に回動操作された場合、被停止部369は、山形状停止部111の頂部を乗り越えて下方に移動し、上方への移動が阻止されることにより、チャイルドレバー36は、チャイルドアンロック位置に停止保持される。
一方、チャイルドレバー36がチャイルドロック位置(
図4、
図15において時計方向)に回動操作された場合は、
図14の2点鎖線で示すように、被停止部369が山形状停止部111の頂部を乗り越えて上方に移動し、下方への移動が阻止されることにより、チャイルドレバー36は、チャイルドロック位置に停止保持される。
【0048】
図17に示すように、上記チャイルドアンロック状態において、施解錠レバー18がアンロック位置(
図4に示す位置)にある場合に、インサイドハンドルのドア開操作に基づいて、インサイドレバー21が矢印で示すオープン方向(
図4、
図15において時計方向)まで回動すると、インサイドレバー21のオープン作用部211の先端が、その回動軌跡内に進入している突部371に下方より当接し、突部371がオープン方向である上方に移動することにより、ガイド長孔366の下端の待機位置に付勢させられているリリース作動部材37は、ねじりコイルばね38の付勢力に抗してガイド長孔366に沿って上方のリリース位置まで移動する。
【0049】
これにより、リリースレバー19は、突部371を介して上方のリリース位置まで移動させられ、リリースレバー19の上端がポール10に当接して、インサイドレバー21のオープン作動が、ポール10とラッチ8よりなる噛合機構に伝達されることにより、ドアを車内側から開くことができる。
ドアの開操作を途中で停止した場合、リリース作動部材37は、ガイド長孔366の途中で停止することなく、ねじりコイルばね38の下向きの付勢力により下端の待機位置まで戻される。
【0050】
なお、リリース作動部材37が、ねじりコイルばね38により下方に付勢されていると、リリース作動部材37がガイド長孔366に沿って上方へ移動する際に、チャイルドレバー36も
図16において時計方向(
図4、
図15においては反時計方向)に回動しようとする。しかし、
図1に示すように、チャイルドレバー36の手動操作部363は、カバー11に形成された上下方向の長孔39を貫通して、その上端に当接または近接しているので、チャイルドレバー36が
図4、
図15において反時計方向に回動するのが阻止され、リリース作動部材37はガイド長孔366に沿って上方へ確実に移動する。また、ねじりコイルばね38によるリリース作動部材37の下向き付勢力を小さくすれば、リリース作動部材37をガイド長孔366に沿って、より確実に上方へ移動させることができる。
【0051】
図18に示すように、チャイルドレバー36をチャイルドロック位置まで反時計方向(
図4、
図15においては時計方向)に回動操作して、チャイルドロック機構22をチャイルドロック状態とすると、ガイド長孔366の下端の待機位置にあるリリース作動部材37の突部371は、インサイドレバー21のオープン作用部211の先端の回動軌跡から退避する。
【0052】
図19に示すように、上記チャイルドロック状態においては、インサイドハンドルのドア開操作により、インサイドレバー21が矢印で示すオープン方向に回動しても、オープン作用部211の先端が突部371と当接せず、空振り状態となる。従って、突部371を介してリリースレバー19が上方のリリース位置まで移動されることはなく、ポール10とラッチ8よりなる噛合機構にインサイドレバー21のオープン作動が伝達不能となるので、ドアを車内側から開けることができなくなる。
【0053】
なお、通常の操作で行われることはないが、
図19に示す状態のとき、インサイドハンドルを開操作したまま(インサイドレバー21がオープン方向へ回動されている状態)で、チャイルドレバー36をチャイルドアンロック位置に回動させようとした場合、
図20に示すように、リリース作動部材37の突部371が、インサイドレバー21のオープン作用部211と当接するので、チャイルドロック機構22はチャイルドロック状態に維持される。
【0054】
以上説明したように、上記実施形態のドアラッチ装置においては、チャイルドロック機構22を、チャイルドアンロック位置及びチャイルドロック位置に回動可能なチャイルドレバー36と、チャイルドレバー36に設けたガイド長孔366に移動可能に支持され、インサイドレバー21のオープン作動を噛合機構に伝達可能な突部371を有するリリース作動部材37と、リリース作動部材37を待機位置に常時付勢するねじりコイルばね38とを備えるものとし、突部371を含むリリース作動部材37を、チャイルドレバー36とは別体に形成して、突部371を含むリリース作動部材37のみが、インサイドレバー21のオープン作動と連動してリリース方向に独立して移動するようにしてある。
そのため、従来のように、ハウジング12内に、突部371がチャイルドレバー36と共にリリース方向に回動するための空間を確保する必要はなく、チャイルドレバー36に隣接してハウジング12内に組み込まれる施解錠レバー18やリリースレバー19等の配置や設計上の自由度が高まる。
【0055】
また、チャイルドロック機構22を構成しているチャイルドレバー36、リリース作動部材37、及びねじりコイルばね38を予め組み付けたサブアッセンブリー状態としておいて、チャイルドロック機構22を、ハウジング12内に、他の部品の組付け方向と同じ方向から組み付けることができるので、自動組み立てライン等でのドアラッチ装置の組立効率が向上する。
【0056】
なお、サブアッセンブリー状態としたチャイルドロック機構22を組み付ける方法としては、上記のように施解錠レバー18の軸17に嵌合する以外に、カバー11に組み付ける方法もある。
すなわち、
図21に示すように、カバー11における車外側の側面(ハウジング12と対向する面)に、軸53を、施解錠レバー18の軸17と同軸をなすように突設し、この軸53に、チャイルドレバー36の軸孔361を嵌合することにより、チャイルドロック機構22をカバー11に組み付けることができる。なお、軸53からチャイルドロック機構22が外れるのを防止するために、チャイルドレバー36の軸孔361に近い部分に設けた突片54を、カバー11に突設した保持片55により保持するのがよい。
【0057】
このように、サブアッセンブリー状態としたチャイルドロック機構22をカバー11に組み付けるようにすると、カバー11をハウジング12に装着するのと同時に、チャイルドロック機構22も、カバー11の装着方向と同方向からハウジング12内に組み込むことができるので、ドアラッチ装置の組立効率が向上する。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、本実施形態に対して、次のような種々の変形や変更を施すことが可能である。
上記実施形態では、チャイルドレバー36に補助レバー部362を設け、この補助レバー部362に手動操作部363を一体的に設けているが、補助レバー部362を省略して、手動操作部363をチャイルドレバー36自体に設けることもできる。補助レバー部362を省略した際には、実施例とは反対に、突部371側の鍔部373を小径として、リリース移動部材37を車内方向からガイド長孔366に組み付けることができる。
【0059】
また、実施形態では、チャイルドレバー36に設けた拡径孔部367に、リリース移動部材37の小径鍔部374を嵌合させて、リリース移動部材37をチャイルドレバー36に組み付けるようにしているが、拡径孔部367を設けないで、ガイド長孔366のリリース位置側の端部をチャイルドレバー36の後端まで延出して開口させ、その開口端から被ガイド軸部372をガイド長孔366に嵌合させてリリース移動部材37を組み付けることもできる。この際には、大径鍔部373と小径鍔部374の外径を等しくすることができる。
【0060】
さらに、実施形態では、チャイルドレバー36に設けたガイド部を、ガイド長孔366としているが、例えばチャイルドレバー36の車外側の側面に、互いに対向するあり溝状の1対のガイド溝を有する円弧状の凹部を設け、リリース作動部材37における突部371と反対側に設けた互いに反対方向に突出する1対の被ガイド突部を、凹部内において1対のガイド溝に移動可能に嵌合させるようにしてもよい。この際には、ねじりコイルばね38をチャイルドレバー36の車外側に配置して、その足片382をリリース作動部材37の適所に圧接させればよい。