【解決手段】柵などの構造物を地面に固定する固定装置1は、アンカー2と、さや管8と、貫通孔7bを有する支圧板7と、支圧板7に固定された構造物連結部9と、さや管8とアンカー2の第2端部5bとを連結するアンカー連結部18とを備えている。さや管8は、貫通孔7bを通して支圧板7を貫通するとともに当該さや管8の上部が支圧板7の上に突出した状態で、支圧板7に溶接されている。さや管8における支圧板7の上に突出した部分は、アンカー連結部18によって、アンカー2の第2端部5bに連結されている。
前記アンカーは、前記第1端部および前記第2端部を有するアンカー本体と、前記第1端部と前記第2端部との間において当該アンカー本体の外周面から当該アンカー本体の外側へ突出する突出部とを有している、
請求項1に記載の固定装置。
前記支圧板は、地面に当接する本体部分と、当該本体部分の縁のうち前記貫通孔を貫通した前記さや管と前記構造物連結部とが並ぶ方向に延びる縁で折れ曲がった折曲部分とを有する、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の固定装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記の固定装置では、アンカーおよび支圧板はアームを介して連結されている。具体的には、アームの下側端部がアンカーに設けられた支持部とピンで連結され、アームの上側端部が支圧板に対してUボルトなどで拘束されている。
【0007】
このような構造では、柵などの構造物が落石などを受けて大きな衝撃を受けた場合などにおいて、当該構造物からワイヤを経由して大きな引張力がアームに作用したときに、アームの下側端部とアンカー側の支持部との間を連結するピン、およびアームの上側端部と支圧板とを連結するUボルトに対して局所的に大きな力がかかるので、アンカーと支圧板とを連結するピンやUボルトなどの部材が変形や損傷するおそれがある。そのため、構造物を安定して保持することができないおそれがある。
【0008】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、支圧板とアンカーとを連結する部分の変形や損傷のおそれを低減し、構造物を安定して保持することが可能な固定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためのものとして、本発明の固定装置は、構造物を地面に固定する固定装置であって、前記地面に打ち込むことが可能な形状を有する第1端部、および当該第1端部と反対側の第2端部を有するアンカーと、前記アンカーの前記第2端部の外径よりも大きい内径を有する管形状を有し、当該第2端部の外周部を覆うように配置されたさや管と、前記地面に沿って配置される支圧板であって、前記さや管の外径よりも大きい内径を有する貫通孔を有する支圧板と、前記支圧板に固定され、前記構造物に対して連結可能な構造を有する構造物連結部と、前記さや管と前記アンカーの前記第2端部とを連結するアンカー連結部とを備えており、前記さや管は、前記貫通孔を通して前記支圧板を貫通するとともに当該さや管の上部が前記支圧板の上に突出した状態で、前記支圧板に溶接されており、前記さや管における前記支圧板の上に突出した部分は、前記アンカー連結部によって、前記アンカーの前記第2端部に連結されていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、以下のように、アンカーの外周に嵌められるさや管を介して支圧板とアンカーとが連結されることによって、支圧板とアンカーとを連結する部分の変形や損傷のおそれを低減するものである。
【0011】
このアンカーは、その第1端部を先頭にして地面に打ち込まれるとともに第2端部を地面よりも上に突出した状態にされる。支圧板は地面に設置され、支圧板に対して貫通した状態で溶接されたさや管は、アンカーの第2端部の外周に嵌められる。支圧板の上に突出した突出部分は、アンカー連結部によってアンカーの第2端部に連結される。これにより、支圧板が構造物連結部を介して構造物から引張力を受けたときには、支圧板はさや管を介して当該さや管が接触するアンカーの外周面の広範囲に分散して引張力を伝達することが可能である。その結果、支圧板が構造物から大きな引張力を受けた場合であっても、支圧板とアンカーとの間で力を伝達する部分、すなわち、さや管などの部分は、曲げや凹みなどの変形をするおそれが低減する。その結果、構造物を安定して保持することが可能になる。
【0012】
前記アンカーは、前記第1端部および前記第2端部を有するアンカー本体と、前記第1端部と前記第2端部との間において当該アンカー本体の外周面から当該アンカー本体の外側へ突出する突出部とを有しているのが好ましい。
【0013】
かかる構成によれば、アンカーは、アンカー本体の外周面から当該アンカー本体外側へ突出する突出部を有しているので、当該アンカーを地面に打ち込んだ状態では、突出部が地中において広範囲で土に接触するので、アンカーにおける土との接触面積が増える。そのため、当該アンカーが土から受ける反力(例えば、当該アンカーの引っ張り方向および曲げ方向に対する抵抗力)を高めることが可能である。
【0014】
さらに、前記突出部は、前記アンカー本体から前記構造物連結部へ向かう方向に対して傾斜した方向へ当該アンカー本体の外周面から突出しているのが好ましい。
【0015】
かかる構成によれば、構造物連結部が構造物から引張力を受けたときに、アンカーの突出部は構造物連結部が引張力を受けた方向に対して反対方向へ地中の土から反力を受けることにより、固定装置の抵抗力が向上し、構造物を安定して支持することが可能である。
【0016】
また、前記突出部は、前記アンカー本体の前記第2端部における前記さや管に連結される部分よりも下方の位置に配置されているのが好ましい。
【0017】
かかる構成によれば、地面に打ち込まれたアンカー本体の上部に位置する第2端部に対してさや管が連結されたときに、アンカーの突出部は、さや管に干渉しないので、さや管をアンカーに連結したときに突出部の変形や破損が発生するおそれがない。また、突出部は第2端部におけるさや管に連結される部分よりも下方の位置にあることによって、土から受ける当該アンカーの引っ張り方向に対する抵抗力を向上させることが可能である。
【0018】
前記支圧板は、地面に当接する本体部分と、当該本体部分の縁のうち前記貫通孔を貫通した前記さや管と前記構造物連結部とが並ぶ方向に延びる縁で折れ曲がった折曲部分とを有するのが好ましい。
【0019】
かかる構成によれば、前記支圧板は、地面に当接する本体部分の縁のうちさや管と構造物連結部とが並ぶ方向に延びる縁が折れ曲がった折曲部分を有することにより、平板形状の支圧板と比較して、さや管と構造物連結部とが並ぶ方向から反れる方向への支圧板の曲げに対する剛性が向上する。
【0020】
前記折曲部分は、前記支圧板の下方を向いているのが好ましい。
【0021】
かかる構成によれば、支圧板を地面に設置したときに、当該支圧板の折曲部分が地中に挿入されることにより、構造物から受ける当該支圧板の引っ張り方向に対する抵抗力を向上させることが可能である。
【0022】
前記アンカーから離間した位置で前記支圧板に連結された補助アンカーをさらに備えているのが好ましい。
【0023】
かかる構成によれば、アンカーおよび補助アンカーが地面に打ち込まれた状態では、支圧板が構造物連結部を介して構造物から引張力を受けたときに、その引張力をアンカーおよび補助アンカーの両方で分散して受けることが可能である。これにより、支圧板が引張力の方向へずれるおそれを低減し、それとともにアンカーの負担を軽減して当該アンカーの曲げなどの変形のおそれを低減することが可能である。
【0024】
前記支圧板は、前記貫通孔を貫通した前記さや管と前記構造物連結部とが並ぶ方向に延びる形状を有しており、前記補助アンカーは、前記構造物連結部における前記さや管と反対側の位置で前記支圧板に連結されているのが好ましい。
【0025】
かかる構成によれば、構造物連結部を挟んでさや管と構造物連結部とが並ぶ方向における両側においてアンカーおよび補助アンカーがそれぞれ支圧板に連結されるので、支圧板を安定して地面に固定することが可能である。
【0026】
また、前記補助アンカーは、長尺のアンカー本体と、当該アンカー本体の外周面から当該アンカー本体の外側へ突出する突出部とを有しているのが好ましい。
【0027】
かかる構成によれば、補助アンカーは、アンカー本体の外周面から当該アンカー本体外側へ突出する突出部を有しているので、当該補助アンカーを地面に打ち込んだ状態では、突出部が地中において広範囲で土に接触するので、補助アンカーにおける土との接触面積が増える。その結果、当該補助アンカーが土から受ける反力(例えば、当該補助アンカーの曲げ方向に対する抵抗力)を高めることが可能である。
【0028】
さらに、前記突出部は、前記アンカー本体から前記構造物連結部へ向かう方向に対して傾斜した方向へ当該アンカー本体の外周面から突出しているのが好ましい。
【0029】
かかる構成によれば、構造物連結部が構造物から引張力を受けたときに、補助アンカーの突出部は構造物連結部が引張力を受けた方向に対して反対方向へ地中の土から反力を受けることにより、固定装置の抵抗力が向上し、構造物を安定して支持することが可能である。
【0030】
本発明の構造物の固定方法は、構造物を地面に固定する構造物の固定方法であって、管形状のさや管が支圧板に形成された貫通孔を通して当該支圧板を貫通するとともに当該さや管の上部が前記支圧板の上に突出した状態で前記支圧板に溶接されたものを準備する工程と、アンカーをその上側の端部が地面よりも上に突出するように地面に打ち込む工程と、前記支圧板を前記地面に設置するとともに前記さや管を前記アンカーの前記上側の端部の外周に嵌める工程と、前記さや管における前記支圧板の上に突出した部分を前記アンカーの前記上側の端部に連結する工程と、前記支圧板に前記構造物を連結する工程とを含むことを特徴とする。
【0031】
上記の固定方法では、アンカーを地面に打ち込む工程と、支圧板を地面に設置するとともにさや管をアンカーの外周に嵌める工程とを別個に行うことによって、アンカーの打ち込みも支圧板の設置も容易に行うことができ、しかも支圧板やさや管の破損や変形のおそれを低減することが可能である。しかも、これらの工程の後に、アンカー連結部によってさや管とアンカーの上側の端部に連結することにより、アンカーとさや管と支圧板とが一体に結合されるので、簡単な施工によって剛性の高い固定装置を得ることが可能である。
【0032】
さらに、前記アンカーから離間した位置で前記支圧板に連結しながら、補助アンカーを地面に打ち込む工程をさらに含むのが好ましい。
【0033】
この場合、アンカーとの干渉を避けながら補助アンカーを地面に容易に打ち込むとともに支圧板に連結することが可能である。
【発明の効果】
【0034】
以上説明したように、本発明の固定装置によれば、支圧板とアンカーとを連結する部分の変形や損傷のおそれを低減し、構造物を安定して保持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照しながら本発明の固定装置の実施形態についてさらに詳細に説明する。
【0037】
図1〜2に示される固定装置1は、ワイヤWなどの線状体を介して柵などの構造物を地面Gに固定する構成を有する。具体的には、固定装置1は、メインアンカー2と、支圧板アセンブリ3と、補助アンカー4と、アンカー連結部18とを備えている。
【0038】
支圧板アセンブリ3は、支圧板7と、さや管8と、構造物連結部9とを有している。さや管8および構造物連結部9が溶接によって支圧板7に結合されることにより、支圧板アセンブリ3が構成される。
【0039】
メインアンカー2は、本発明のアンカーに対応するものであり、
図1〜2および
図4に示されるように、アンカー本体である長尺の筒状のパイプアンカー5と、当該パイプアンカー5の外周面に固定された突起部である羽根6とを有している。
【0040】
パイプアンカー5は、メインアンカー2における上下両側の端部、すなわち、下側の第1端部5aと、その反対側(すなわち上側)の第2端部5bとを有する。第1端部5aは、地面Gに打ち込むことが可能な形状を有し、例えば、円錐などの先細りの形状を有する。第2端部5bには、水平方向に延びる貫通孔5cが形成されている。なお、メインアンカー2(アンカー)のアンカー本体として、パイプアンカー5以外にも棒状のアンカーを用いることも可能である。
【0041】
羽根6は、一枚の板状の部材であり、パイプアンカー5の外周面における第1端部5aと第2端部5bとの間の位置に溶接などによって固定されている。羽根6は、当該パイプアンカー5の外周面から当該パイプアンカー5の外側へ突出する方向に延びている。この羽根6により、メインアンカー2の土に接触面積は増大する。
【0042】
羽根6は、パイプアンカー5から構造物連結部9へ向かう方向Dに対して傾斜した方向(本実施形態では直交する方向)へ当該パイプアンカー5の外周面から突出している。なお、羽根6の突出する方向は、方向Dに対して傾斜していればよく、本発明では方向Dに直交することに限定されない。
【0043】
羽根6は、パイプアンカー5の第2端部5bにおけるさや管8に連結される部分よりも下方の位置に配置されているので、さや管8との干渉のおそれがない。
【0044】
つぎに、支圧板アセンブリ3を構成する支圧板7、さや管8、および構造物連結部9について説明する。
【0045】
支圧板7は、
図1〜2に示されるように、貫通孔7bを貫通したさや管8と構造物連結部9とが並ぶ方向Dに延びる長尺の形状を有している。支圧板7は、地面Gに沿って配置される。
【0046】
支圧板7は、地面Gに当接する本体部分7aと、当該本体部分7aの縁に形成された一対の折曲部分7cとを有する。
【0047】
支圧板7の本体部分7aにおける長手方向(上記方向D)について一方の端部には、さや管8の外径よりも大きい内径を有する貫通孔7bが形成されている。
【0048】
折曲部分7cは、当該本体部分7aの縁のうち 貫通孔7bを貫通したさや管8と構造物連結部9とが並ぶ方向Dに延びる縁で下方に折れ曲がっている。折曲部分7cは、下方に向いているので、支圧板7の本体部分7aが地面Gに当接された状態では、当該折曲部分7cは地中に埋め込まれる。
【0049】
さや管8は、パイプアンカー5の第2端部5bの外径よりも大きい内径を有する管形状を有する。さや管8は、当該第2端部5bの外周部を覆うように配置されている。
【0050】
さや管8は、支圧板7の貫通孔7bを通して当該支圧板7を貫通している。それとともに、さや管8は、当該さや管8の上部が支圧板7の上に突出した状態で、支圧板7に溶接されている。具体的には、さや管8の外周面と支圧板7の貫通孔7bの縁とは、当該さや管8の全周または一部において溶接される。また、
図1に示されるように、支圧板7およびさや管8の補強のために、板状のリブ10が支圧板7の下面およびさや管8の外周面にそれぞれ溶接されている。
【0051】
構造物連結部9は、支圧板7に固定され、構造物に対して連結可能な構造を有する。具体的には、支圧板7に立設された縦板13と、当該縦板13にピンなどで結合されたシャックル14と、縦板13の倒れ込みを防止する補強板15とを有する。シャックル14は、柵などの構造物に接続されたワイヤWの端部に連結される。
【0052】
上記のさや管8における支圧板7の上に突出した部分は、アンカー連結部18によって、メインアンカー2側のパイプアンカー5の第2端部5bに連結されている。
【0053】
アンカー連結部18は、さや管8とパイプアンカー5の第2端部5bとを連結する構成を有していればよく、例えば、ボルト11と、当該ボルト11に螺合するナット12とによって構成される。ボルト11は、パイプアンカー5の第2端部5bに形成された貫通孔5cおよびさや管8の上部に形成された貫通孔8aをそれぞれ貫通可能な長さ(すなわち、さや管8の外径を超える長さ)を有する。
【0054】
補助アンカー4は、
図1〜3および
図5に示されるように、長尺の棒状アンカー16と、当該棒状アンカー16の外周面から当該棒状アンカー16の外側へ突出する羽根17とを有している。羽根17は、一枚の板状の部材であり、棒状アンカー16の外周面に溶接などによって固定されている。羽根17は、棒状アンカー16の外周面から当該棒状アンカー16外側へ突出する。
【0055】
補助アンカー4は、メインアンカー2から離間した位置で支圧板7に連結されている。補助アンカー4は、上記の方向Dに延びる形状を有する長尺の支圧板7に対して、構造物連結部9におけるさや管8と反対側の位置で連結されている。具体的には、長尺の支圧板7における貫通孔7bが設けられた端部と反対側には、その反対側の端面7eに一部連通する貫通孔7dが形成されている。補助アンカー7の棒状アンカー16は、貫通孔7dに挿入され、棒状アンカー16の外周面に固定された羽根17は、上記の端面7eに当接した状態で配置される。棒状アンカー16と羽根17との溶接部分は、貫通孔7dにおける端面7eに開放された開口7fに挿入される。
【0056】
羽根17は、補助アンカー4から構造物連結部9へ向かう方向(方向Dと反対方向)に対して傾斜した方向(本実施形態では直交する方向)へ当該棒状アンカー16の外周面から突出している。なお、羽根17の突出する方向についても、上記羽根6と同様に、方向Dに対して傾斜していればよく、本発明では方向Dに直交することに限定されない。
【0057】
羽根17の両端部には、上記の方向Dに向かって折れ曲がる折曲部分17aが形成されている。
【0058】
羽根17は、支圧板7が構造物から当該構造物連結部9を介して方向Dに力を受けたときには、土からの反力により、支圧板7が方向Dへずれることを防ぐ。また、方向Dを向く折曲部分17aは土にめり込むことにより、土から受ける反力を増大させる。
【0059】
上記のように構成された本実施形態の固定装置1では、メインアンカー2側のパイプアンカー5の外周に嵌められるさや管8を介して支圧板7とメインアンカー2とが連結されることによって、支圧板7とメインアンカー2とを連結する部分、すなわち、さや管8およびアンカー連結部18などの部分の変形や損傷のおそれを低減することが可能である。
【0060】
すなわち、このメインアンカー2は、パイプアンカー5の第1端部5aを先頭にして地面Gに打ち込まれるとともに第2端部5bを地面Gよりも上に突出した状態にされる。支圧板7は地面Gに設置され、支圧板7に対して貫通した状態で溶接されたさや管8は、パイプアンカー5の第2端部5bの外周に嵌められる。支圧板7の上に突出した突出部分は、アンカー連結部18によってパイプアンカー5の第2端部5bに連結される。これにより、支圧板7が構造物連結部9を介して構造物から引張力を受けたときには、支圧板7はさや管8を介して当該さや管8が接触するメインアンカー2の外周面の広範囲に分散して引張力を伝達することが可能である。その結果、支圧板7が構造物から大きな引張力を受けた場合であっても、支圧板7とメインアンカー2との間で力を伝達する部分であるさや管8およびアンカー連結部18などの部分は、曲げや凹みなどの変形をするおそれが低減する。その結果、構造物を安定して保持することが可能になる。
【0061】
また、本実施形態の固定装置1では、メインアンカー2は、パイプアンカー5の外周面から当該パイプアンカー5外側へ突出する羽根6を有しているので、当該メインアンカー2を地面Gに打ち込んだ状態では、羽根6が地中において広範囲で土に接触するので、メインアンカー2における土との接触面積が増える。そのため、当該メインアンカー2が土から受ける反力(例えば、当該メインアンカー2の引っ張り方向および曲げ方向に対する抵抗力)を高めることが可能である。
【0062】
さらに、本実施形態の固定装置1では、羽根6は、パイプアンカー5から構造物連結部9へ向かう方向Dに対して傾斜した方向(本実施形態では直交する方向)へ当該パイプアンカー5の外周面から突出している。そのため、構造物連結部9が構造物から方向Dと同じ方向Tで引張力を受けたときに、メインアンカー2の羽根6は方向Tに対して反対方向へ地中の土から反力を受けることにより、固定装置1の抵抗力が向上し、構造物を安定して支持することが可能である。
【0063】
本実施形態の固定装置1では、羽根6は、パイプアンカー5の第2端部5bにおける さや管8に連結される部分よりも下方の位置に配置されている。そのため、地面Gに打ち込まれたパイプアンカー5の上部に位置する第2端部5bに対してさや管8が連結されたときに、メインアンカー2の羽根6は、さや管8に干渉しないので、さや管8をメインアンカー2に連結したときに羽根6の変形や破損が発生するおそれがない。また、羽根6は第2端部5bにおけるさや管8に連結される部分よりも下方の位置にあることによって、土から受ける当該メインアンカー2の引っ張り方向に対する抵抗力を向上させることが可能である。
【0064】
本実施形態の固定装置1では、支圧板7は、地面Gに当接する本体部分7aの縁のうちさや管8と構造物連結部9とが並ぶ方向Dに延びる縁が折れ曲がった折曲部分7cを有することにより、平板形状の支圧板7と比較して、さや管8と構造物連結部9とが並ぶ方向Dから反れる方向への支圧板7の曲げに対する剛性が向上する。
【0065】
さらに、本実施形態の固定装置1では、折曲部分7cは、支圧板7の下方を向いているので、支圧板7を地面Gに設置したときに、当該支圧板7の折曲部分7cが地中に挿入されることにより、構造物から受ける当該支圧板7の引っ張り方向に対する抵抗力を向上させることが可能である。なお、折曲部分7cは、上方を向いている場合でも、さや管8と構造物連結部9とが並ぶ方向Dから反れる方向への支圧板7の曲げに対する剛性が向上する。
【0066】
本実施形態の固定装置1は、メインアンカー2から離間した位置で支圧板7に連結された補助アンカー4を備えている。これにより、メインアンカー2および補助アンカー4が地面Gに打ち込まれた状態では、支圧板7が構造物連結部9を介して構造物から引張力を受けたときに、その引張力をメインアンカー2および補助アンカー4の両方で分散して受けることが可能である。これにより、支圧板7が引張力の方向へずれるおそれを低減し、それとともにメインアンカー2の負担を軽減して当該メインアンカー2の曲げなどの変形のおそれを低減することが可能である。
【0067】
また、本実施形態の固定装置1では、支圧板7は、貫通孔7bを貫通したさや管8と構造物連結部9とが並ぶ方向Dに延びる形状を有している。補助アンカー4は、支圧板7におけるさや管8と反対側の位置で支圧板7に連結されている。このため、構造物連結部9を挟んでさや管8と構造物連結部9とが並ぶ方向Dにおける両側においてメインアンカー2および補助アンカー4がそれぞれ支圧板7に連結されるので、支圧板7を安定して地面Gに固定することが可能である。
【0068】
本実施形態の固定装置1では、補助アンカー4は、棒状アンカー16の外周面から当該棒状アンカー16の外側へ突出する羽根17を有しているので、当該補助アンカー4を地面Gに打ち込んだ状態では、羽根17が地中において広範囲で土に接触するので、補助アンカー4における土との接触面積が増える。その結果、当該補助アンカー4が土から受ける反力(例えば、当該補助アンカー4の曲げ方向に対する抵抗力)を高めることが可能である。
【0069】
また、本実施形態の固定装置1では、羽根17は、棒状アンカー16から構造物連結部9へ向かう方向Dに対して傾斜した方向へ当該棒状アンカー16の外周面から突出している。そのため、構造物連結部9が構造物から方向Dと同じ方向Tで引張力を受けたときに、補助アンカー4の羽根17は構造物連結部9が引張力を受けた方向Tに対して反対方向へ地中の土から反力を受けることにより、固定装置1の抵抗力が向上し、構造物を安定して支持することが可能である。
【0070】
以下、上記のように構成された固定装置1を用いた構造物の固定方法について説明する。
【0071】
まず、準備段階として、貫通孔7bを有する支圧板7と管形状のさや管8とを連結したものを準備する。具体的には、さや管8が貫通孔7bを通して支圧板7を貫通するとともに、さや管8が当該さや管8の上部が支圧板7の上に突出した状態で支圧板7に溶接されたものを準備する。本実施形態では、さらに構造物連結部9が支圧板7に溶接などで結合されることにより、支圧板7、さや管8および構造物連結部9とが一体になった支圧板アセンブリ3を準備する。
【0072】
つぎに、
図6(a)、(b)に示されるように、メインアンカー2を地面Gに打ち込む。このとき、メインアンカー2は、パイプアンカー5の第1端部5aを下側にした状態で、パイプアンカー5の上側の第2端部5bが地面Gよりも上に突出するように、地面Gに打ち込まれる。
【0073】
ついで、
図7(a)、(b)に示されるように、支圧板7を地面Gに設置するとともにさや管8をメインアンカー2側のパイプアンカー5の上側の第2端部5bの外周に嵌める。このとき、支圧板7は、
図1〜2に示されるように、当該支圧板7の延びる方向(方向Dと同じ方向)と構造物に接続されるワイヤWの引張方向Tとが一致する方向に向けられる。
【0074】
そして、同
図7(a)、(b)に示されるように、さや管8における支圧板7の上に突出した部分を、アンカー連結部18を構成するボルト11およびナット12によってメインアンカー2の上側の端部に連結する。具体的には、ボルト11をパイプアンカー5の上側の第2端部5bに形成された貫通孔5cおよびさや管8の上部に形成された貫通孔8aをそれぞれ貫通し、ナット12がボルト11の先端に螺合することにより、さや管8とパイプアンカー5の第2端部5bとが連結される。
【0075】
ついで、
図8(a)、(b)に示されるように、メインアンカー2から離間した位置で支圧板7に連結しながら、補助アンカー4を地面Gに打ち込む。具体的には、補助アンカー4の棒状アンカー16を、支圧板7の端面7eに一部開放された貫通孔7d(
図3および
図8参照)に通しながら地面Gに打ち込む。このとき、補助アンカー4の羽根17は、支圧板7の端面7eに当接しながら地面Gに埋め込まれる。
【0076】
その後、支圧板7に構造物を連結する。具体的には、柵などの構造物に接続されたワイヤWなどの線状体を構造物連結部9のシャックル14(
図1参照)に連結することにより、支圧板7に対する構造物の連結が完了する。
【0077】
上記の構造物の固定方法では、メインアンカー2を地面Gに打ち込む工程と、支圧板7を地面Gに設置するとともにさや管8をメインアンカー2の外周に嵌める工程とを別個に行う。そのため、メインアンカー2の打ち込みも支圧板7の設置も容易に行うことができ、しかも支圧板7やさや管8の破損や変形のおそれを低減することが可能である。しかも、これらの工程の後に、アンカー連結部18によってさや管8とメインアンカー2の上側の端部(すなわち、パイプアンカー5の第2端部5b)に連結することにより、メインアンカー2とさや管8と支圧板7とが一体に結合されるので、簡単な施工によって剛性の高い固定装置1を得ることが可能である。
【0078】
また、上記の構造物の固定方法では、メインアンカー2から離間した位置で支圧板7に連結しながら、補助アンカー4を地面Gに打ち込む。これにより、メインアンカー2との干渉を避けながら補助アンカー4を地面Gに容易に打ち込むとともに支圧板7に連結することが可能である。
【0079】
上記の固定装置1では、地面Gに対して固定される構造物に対してワイヤWなどの線状体を介して接続されているが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の固定装置は、構造物を構成する支柱などの部材を直接固定することが可能な構成であってもよい。
【0080】
例えば、
図9〜10に示される固定装置21は、
図11〜13に示される落石防止柵31などを構成する支柱32に連結可能な構造物連結部22を備えている。構造物連結部22は、支柱32に連結される一対の縦板23と、
図11〜13に示される落石防止柵31の下部ケーブル34などに連結可能なケーブル連結部24とを有する。固定装置21のその他の構成は、
図1〜3に示される固定装置1の構成と同じであるので、説明を省略する。構造物連結部22は、支圧板7の上面に配置されている。具体的には、一対の縦板23は、互いに離間した状態で支圧板7の上面に立設されている。ケーブル連結部24は、縦板23から離れた位置で支圧板7の上面に固定されている。
【0081】
図11〜13には、落石による大きな荷重に耐えられるように上記の固定装置1および固定装置21を備えた落石防止柵31が示される。
【0082】
具体的には、落石防止柵31は、複数の支柱32と、1本の上部ケーブル33と、1本の下部ケーブル34と、支柱32の間を覆う金網35と、各支柱32の上端から山側を向く方向A1に延びる保持ケーブル36と、複数の支柱32のうち両端に位置する支柱32の上端に取り付けられたサイドケーブル37と、支柱32の間で互いに交叉する複数の補強ケーブル40と、上記のケーブル33、34、36、37の端部にそれぞれ連結された上記の固定装置1と、各支柱32の下端部に連結された上記の固定装置21とを備えている。
【0083】
金網35は、複数の箇所において、上部ケーブル33、下部ケーブル34、および補強ケーブル40に対して、結合コイルなどの結合部材を用いて結合されている。
【0084】
上部ケーブル33の両端部33aおよび下部ケーブル34の両端部34a、ならびにサイドケーブル37の外側の端部は、複数の支柱32の列から両端に離れた位置で固定装置1の構造物連結部9に連結されている。保持ケーブル36の山側A1の端部は、支柱32よりも山側A1に設置された固定装置1の構造物連結部9に連結されている。
【0085】
また、金網35の下側の隙間を覆うために、補助金網38が設けられ、固定金具39によって地面Gに固定されている。
【0086】
落石防止柵31は、斜面に設けられることにより、斜面に沿って落下する落石を支柱32および金網35で受け止めることが可能である。それとともに当該支柱32および金網35に連結された上記のケーブル33、34、40が伸びることによって落石の運動エネルギーを分散して吸収することが可能である。
【0087】
複数の支柱32は、地面Gに、山側を向く方向A1とは直交する方向に、間隔をあけて立設されている。支柱32は、H型鋼などが用いられる。
【0088】
支柱32の上部の谷側A2を向く端部は、
図13に示されるように、シャックル41を介して、金網35の上端に結合コイルなどで連結された上部ケーブル33に連結されている。また、支柱32の上部の山側A1を向く端部は、保持ケーブル36の一方の端部に連結されている。保持ケーブル36の他方の端部は、上記のように支柱32よりも山側A1に設置された固定装置1の構造物連結部9に連結されている。
【0089】
支柱32の下部は、上記の固定装置21を介して地面Gに固定されている。具体的には、以下の通りである。
図13に示される固定装置21では、メインアンカー2は、パイプアンカー5の第1端部5aを先頭にして地面Gに打ち込まれるとともに第2端部5bを地面Gよりも上に突出した状態にされる。支圧板7は地面Gに設置され、支圧板7に対して貫通した状態で溶接されたさや管8は、パイプアンカー5の第2端部5bの外周に嵌められる。支圧板7の上に突出した突出部分は、アンカー連結部18によってパイプアンカー5の第2端部5bに連結されている。また、メインアンカー2から谷側の方向A2に離間した位置で支圧板7に連結しながら、補助アンカー4が面Gに打ち込まれている。
【0090】
この固定装置21は、支圧板7が斜面の上下方向に沿って延びるように配置されている。すなわち、支圧板は、その両端部が山側A1の方向および谷側A2の方向を向く方向をそれぞれ向くように、配置されている。そして、構造物連結部22から山側A1の方向に離れた位置には、さや管8が嵌められたメインアンカー2が地面Gに打ち込まれ、構造物連結部22から谷側A2の方向に離れた位置には、補助アンカー4が地面Gに打ち込まれている。
【0091】
そして、構造物連結部22の一対の縦板23の間には、支柱32が立てられた状態で、当該支柱32の下端部が縦板23に形成された貫通孔23aの部位でボルトなどによって搖動自在に締結されている。
【0092】
また、構造物連結部22のケーブル連結部24は、シャックル41を介して、金網35の下端に結合コイルなどで連結された下部ケーブル34に連結されている。
【0093】
上記のように支柱32を支持する固定装置21では、落石防止柵31の支柱32が落石による谷側A2方向への大きな引張力を受けたときに、支圧板7が構造物連結部22の一対の縦板23を介して当該引張力を受ける。また、支圧板7は、構造物連結部22のケーブル連結部24を介して金網35に結合された下部ケーブル34からも谷側A2方向への引張力も受ける。そのとき、支圧板7はさや管8を介して当該さや管8が接触するメインアンカー2の外周面の広範囲に分散してこれらの引張力を伝達することが可能である。その結果、支圧板7が支柱32および下部ケーブル34から大きな引張力を受けた場合であっても、支圧板7とメインアンカー2との間で力を伝達する部分であるさや管8およびアンカー連結部18などの部分は、曲げや凹みなどの変形をするおそれが低減する。その結果、落石防止柵31を安定して保持することが可能になる。
【0094】
上記の固定装置21と同様に、
図11に示される支柱32の山側A1に設置された固定装置1では、落石防止柵31の支柱32が落石による谷側A2方向への大きな引張力を受けたときに、支柱32の上部に連結された保持ケーブル36およびそれに連結された構造物連結部9を介して、
図1の支圧板7が当該引張力を受ける。そのとき、支圧板7はさや管8を介して当該さや管8が接触するメインアンカー2の外周面の広範囲に分散してこれらの引張力を伝達することが可能である。その結果、支圧板7が保持ケーブル36から大きな引張力を受けた場合であっても、支圧板7とメインアンカー2との間で力を伝達する部分であるさや管8およびアンカー連結部18などの部分は、曲げや凹みなどの変形をするおそれが低減する。その結果、落石防止柵31を安定して保持することが可能になる。
【0095】
また、
図11〜12に示される複数の支柱32の列の両端側に設置された固定装置1においても、上記の支柱32の山側A1に設置された固定装置1と同様の効果を奏することが可能である。
【0096】
(変形例)
上記の実施形態では、本発明のアンカーおよび補助アンカーの突起部の一例として、羽メインアンカー2(本発明のアンカー)および補助アンカー4が一枚の板状の羽根6、17を備えた例を挙げて説明しているが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の突起部は、アンカー本体の外周面から当該アンカー本体の外側へ突出する形状であればよい。したがって、本発明の突起部は、例えば、アンカー本体の外周面から外側へ十字形状や放射状に延びる形状であってもよい。