(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-151070(P2017-151070A)
(43)【公開日】2017年8月31日
(54)【発明の名称】溶液の固化面に試料の形状の転写を繰り返すプレパラ−ト
(51)【国際特許分類】
G01N 1/28 20060101AFI20170804BHJP
G09B 23/22 20060101ALI20170804BHJP
【FI】
G01N1/28 M
G01N1/28 U
G09B23/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】書面
【全頁数】4
(21)【出願番号】特願2016-50239(P2016-50239)
(22)【出願日】2016年2月25日
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ポリセ−ム
(71)【出願人】
【識別番号】598025902
【氏名又は名称】高橋 昌義
(72)【発明者】
【氏名】高橋 昌義
【テーマコード(参考)】
2C032
2G052
【Fターム(参考)】
2C032BE00
2G052FD04
2G052GA32
2G052JA03
2G052JA04
2G052JA16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】簡単な手法で作れるプレパラ−トを提供する
【解決手段】溶解や固化が早いネイル化粧液(以下・Aと記す)に着目し、プラスチック片に、固化しているAを、アルコ−ル(以下・Bと記す)で溶解したら、直ちに試料を密着して、その形状をAに転写する。これを観察後、A面の残留痕をBで払拭し、Aが固化するまえに次の新試料をAに圧着する。というパタ−ンを繰り返す。一滴のAは10数枚のプレパラ−トに能率的に再利用ができ、鏡像も鮮明で遜色がない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固化や溶解が早い特性をもつネイル化粧液の固化面・以下Aと記す・を先ずアルコ−ル・以下Bと記す・で溶解後、試料を圧着して、接触面の形状をAに転写残留させる。これを観察後、Aに残っている形状痕をBで払拭し、次の試料の形状転写に備える。このパタ−ンで次々にプレパラ−トを作成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
顕微鏡観察の能率化に役立つプレパラ−トの開発
【背景技術】
【0002】
さまざまな生物の各部の薄片を作り、組織や細胞を固定液で固定したり、染色液を潜らせ、バルサムでカバ−グラスを接着するなどの、従来の手法は、理科の教師でさえ敬遠者が多いといわれ、したがって、専門家による高価なプレパラ−トに依存し、その観察だけで終わることが多く、市井の高学歴の人のなかにも、身近にある植物の葉の気孔などを顕微鏡で観察したことがない、という方も多い。
学校の理科備品室には立派な顕微鏡が、ずらりと並んでいるが、学童たちに安価な材料で簡単に作れるプレパラ−トが普及しない限り、顕微鏡の利用頻度は変わらないであろう。
【0003】
従来のプレパラ−トの複雑な手法を簡略化すべく開発されたのが、プリント方式のスンプというプレパラ−トであった。これは、当時、玩具の原料だったセルロイドが、酢酸エチルなどの溶剤に溶けやすい性質に着目したもので、先ず、5円玉ほどの円形セルロイド片に溶剤を塗布したら、溶解面に試料を圧着し、次第に凝固したら試料を剥離し、次にセルロイド片を円穴つきの厚紙プレ−トに嵌め込む。という手順が不可欠であった。時間のロスとコストの面でも課題があった。
好奇心が強い学童たちは、より多くの試料を観察したいと渇望しているが、そのニ−ズに応えるには、なお不十分であった。
試行錯誤のすえ、凝固が早くアルコ−ルによって極めて溶解しやすい特性をもつ、ネイル化粧液を転用して、学童たちに応えられる簡易プレパラ−トの開発に的を絞った。
直接の課題は、1、従来よりも手順が少なく簡単に作れるか。2、特別な材料を必要としないか。3、観察済みプレパラ−トを再活用できないか。4、野外や随所で、即時にプレパラ−トが作成できないか。の4点で、この解決が目標である。
【0004】
本発明にはプラスチック片に、あらかじめ固化させてあるAと、
図1のごとくA面を溶解するためのBを満たした3のごときマ−カ−が必要品である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明の試作に用いたプラスチック片は、ポリセ−ムの厚さ約0、2mmで、淡い青緑色つきを選択した。視力の保護も考慮したからである。また、Aは酢酸ブチル、酢酸エチル、ニトロセルロ−ス、アセチルトリプチル、イソプロバノ−ル、クエン酸などの混合体で、凝固しやすくBによって急速に溶解する。固化しているA面をBで軟泥化させ、用意してある試料を圧着し、細かな形状をA面に転写する。というパタ−ンが実施の形態である。
図1の1は、薄いプラスチック片。2は固化しているA液で、3はAを溶解するB液入りのマ−カ−、4は浸出部、5は軟化した一部を示した。
図2は軟化した5の面に試料6を、指先7で圧着している状態。
図3は5が再び固化するまえに6を剥離すればAの表面の8には、6の接触部の形状が固化残留して、プレパラ−トは完成するが、この方法では毎回プラスチック片と固化したA面が必要であり、念願のスピ−ドアップは期待できなかった。検討のすえ、紙面の文字は消しゴムで消去すれば、紙面は何回も再利用できるではないか。というヒントを得て。このヒントを本発明に転用した。即ち、観察が終わったプレパラ−トを廃棄せずに、プラスチック片に残留しているAの再利用を考えた。まず、まえの試料の形状痕が残っているAの表面を、
図1のようにBで溶解したら、ただちに新試料を圧着し、A面にその形状を転写残留させれば、以下、上記の手順を繰り返えすことによって、学童たちにもプレパラ−トの自作が可能となった。
【0006】
ごく身近にある動植物たちの、微細な形状を観察して、好奇心を燃やすには、簡単ながら鮮明な視野が次々に得られる本方式は便利である。このほか、飛散花粉や色とりどりの花びらの中に潜む花粉、無数の昆虫の各部の形状、蝶や蛾の美しい鱗粉、水辺に棲む微小生物たちの意外な特徴や、魚族たちの鱗片。あるいは浜辺の砂粒や微細な鉱物粒の輝き、各種の繊維の特徴など、さまざまな物象の観察にも、即座に対応できる利点がある。
ただし、バクテリアや微細な組織や細胞などの、高倍率が要求される対象には不適である。なお、Aは溶解や固化を繰り返すため摩耗しやすく、数枚程度が限界ではないかという不安もあったが、10枚以上に十分対応でき、視野も鮮明で予想以上の期待がもてた。学童たちの観察学習の場合、一人に10枚以上のプレパラ−トは、45分乃至50分の1学習時間に観察するには十分な枚数であるはず、したがって、一人に
図1のAつきの一枚と、3を配布するだけで顕微鏡観察学習の準備は完了である。
【0007】
従来、即席プレパラ−トの代表とも言われてきたスンプなどは、便利ではあるが、円形のセルロイドの薄片を溶剤で溶かす時間や、この薄片を厚紙の枠に貼り付けるなど、完成までの工程やロス時間も多く、例えば授業時間内に完成するのは、わずかに数枚程度であり、あれもこれも観察したいという貪欲な好奇心を満たすには不十分だった。
本発明では、上記のようなネックを迂回する手法によって、好奇心を満たし、初心者や学童たちにも自作のプレパラ−トで未知の世界を次々に観察できる。
【図面の簡単な説明】
【
図1】 プラスチック面のAを、B入りのマ−カ−で溶解する状態。
【
図2】 溶解部に試料を圧着し、形状を転写中の状態。
【
図4】 観察後、Aに残る形状痕をマ−カ−で払拭する。
【
図5】
図2と同じ。ここでは新試料に蝶を用いた。
【符号の説明】
1・プラスチック片
2・Aの固化部
3・B入りのマ−カ−
5・Aの溶解部
6・試料
8・試料の形状痕が残るA
9・新試料の蝶