【解決手段】厚さ方向に貫通する貫通孔15aを有する厚板状の偏光子保持枠15に、貫通孔15aを覆うように偏光子14及びガラスが設けられることにより、偏光子保持枠15の内部に内部空間が形成され、偏光子の導電体グリッドは内部空間に露出する。内部空間に不活性ガスを注入する注入管17aは、偏光子保持枠15の第1の面及び前記第2の面と直交する第3の面に設けられ、第3の面には、不活性ガスを内部空間から排出する貫通孔である排出孔15gが注入管17aに隣接して形成される。
光を偏光する導電体グリッドが表面に形成された板状の偏光子と、板状のガラスとが偏光子保持枠に形成された貫通孔を覆うことにより、前記偏光子保持枠の内部に形成された内部空間であって、前記導電体グリッドが露出する内部空間に、前記内部空間内で不活性ガスが攪拌するように、前記偏光子保持枠の側面から前記不活性ガスを連続して注入し、
前記不活性ガスを前記側面から前記内部空間の外へ排出することを特徴とする偏光子ユニットのガス充填方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液晶素子の配向膜や紫外線硬化型液晶を用いた光学フィルムの配向層等(以下、配向膜という)の形成に、感光性樹脂膜に特定の波長(例えば紫外光)の偏光光を照射する光配向処理が用いられている。偏光光は、例えば、光源から照射された短波長紫外光(例えば、254nm波長光)を、偏光子を用いて偏光させることにより得られる。
【0006】
偏光子には、石英ガラスなどの透明基板に導電体グリッドの格子状パターンを形成し、導電体グリッドのピッチを入射する光の波長以下にすることで、グリッドの長手方向に平行な偏光成分を反射し、それと直交する偏光成分を通過させるワイヤーグリッド型偏光子が用いられる。
【0007】
しかしながら、導電体グリッドはアルミニウムなどの金属によって形成されるため、導電体グリッドが酸素と触れている場合には、導電体グリッドが紫外光を受けて酸化等を起こし、ワイヤーグリッド偏光子の性能が劣化する(消光比が低下する)という問題がある。
【0008】
特許文献1に記載の発明では、ワイヤーグリッド偏光子の性能が劣化するのを防止するため、グリッドに窒化チタンや酸窒化チタンを用いるものである。しかしながら、窒化チタンや酸窒化チタンを用いたグリッドは、アルミニウム等の通常のグリッドと比べて製造工程が多いうえ、高価であるという問題がある。
【0009】
特許文献2に記載の発明は、ランプハウス内からガスが流出する構造となっている。そして、特許文献2に記載の発明では、ランプハウス内の広い空間に大量のガスを供給するため、大量のガスがランプハウスから流出するおそれがあり、安全性が問題となる。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、少量のガスでワイヤーグリッド型の偏光子の劣化を防止することができる偏光子ユニット、偏光光照射装置及び偏光子ユニットのガス充填方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る偏光子ユニットは、例えば、光を偏光する導電体グリッドが表面に形成された板状のワイヤーグリッド型の偏光子と、板状のガラスと、厚さ方向に貫通する貫通孔を有する厚板状の偏光子保持枠であって、前記貫通孔を覆うように前記偏光子及び前記ガラスが設けられた偏光子保持枠と、前記偏光子及び前記ガラスが前記貫通孔を覆うことにより前記偏光子保持枠の内部に形成された内部空間に不活性ガスを供給するガス供給部であって、前記内部空間と連通する注入管を有するガス供給部と、を備え、前記偏光子は、前記導電体グリッドが前記内部空間に露出するように、前記偏光子保持枠の最も大きな面である第1の面に設けられ、前記ガラスは、前記第1の面と平行な前記第2の面に設けられ、前記偏光子保持枠の前記第1の面及び前記第2の面と直交する第3の面には、前記第3の面を貫通し、前記内部空間と連通する排出孔が形成され、前記排出孔に隣接して前記注入管が設けられることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る偏光子ユニットによれば、厚さ方向に貫通する貫通孔を有する厚板状の偏光子保持枠に、貫通孔を覆うように偏光子及びガラスが設けられることで、偏光子保持枠の内部に内部空間が形成され、内部空間には偏光子の導電体グリッドが露出している。不活性ガスは、注入管から内部空間の内部に注入され、注入管に隣接する排出孔から内部空間の外部へ排出される。これにより、予め内部空間Sを真空にすることなく、少量の不活性ガスで内部空間内を不活性ガス雰囲気にすることができる。そのため、導電体グリッドが酸素等と触れなくなり、ワイヤーグリッド型の偏光子の劣化を防止することができる。
【0013】
ここで、前記注入管は、前記第3の面の長手方向の中央部に設けられてもよい。これにより、不活性ガスを内部空間内で効率的に拡散させ、内部空間内を確実に不活性ガス雰囲気とすることができる。
【0014】
ここで、前記注入管の外径は、前記排出孔の内径より小さく、前記注入管が前記排出孔の内部に挿入されることで、前記注入管と前記排出孔が隣接してもよい。これにより、不活性ガスを内部空間内で効率的に拡散させ、内部空間内を確実に不活性ガス雰囲気とすることができる。
【0015】
ここで、前記注入管は、直径が略0.5mmであり、前記ガス供給部は、前記注入管から流出するときの流速が毎秒略25m以上となるように前記不活性ガスを供給してもよい。これにより、不活性ガスが内部空間内で攪拌され、不活性ガスを供給する前に内部空間を真空にすることなく、内部空間が不活性ガスで満たされる。
【0016】
ここで、本発明に係る偏光光照射装置は、例えば、光源と、これらの偏光子ユニットと、を備えてもよい。これにより、少量のガスでワイヤーグリッド型の偏光子の劣化を防止することができる。
【0017】
上記課題を解決するために、本発明に係る偏光子ユニットのガス充填方法は、例えば、光を偏光する導電体グリッドが表面に形成された板状の偏光子と、板状のガラスとが偏光子保持枠に形成された貫通孔を覆うことにより、前記偏光子保持枠の内部に形成された内部空間であって、前記導電体グリッドが露出する内部空間に、前記内部空間内で不活性ガスが攪拌するように、前記偏光子保持枠の側面から前記不活性ガスを連続して注入し、前記不活性ガスを前記側面から前記内部空間の外へ排出することを特徴とする。これにより、少量の不活性ガスで内部空間内を不活性ガス雰囲気にすることができる。そのため、導電体グリッドが酸素等と触れなくなり、ワイヤーグリッド型の偏光子の劣化を防止することができる。
【0018】
ここで、前記不活性ガスの流速は、毎秒略25m以上であり、前記不活性ガスの1分あたりの流量は、前記内部空間の体積の略5倍以上であってもよい。これにより、不活性ガスが内部空間内で攪拌され、不活性ガスを供給する前に内部空間を真空にすることなく、不活性ガスが内部空間内で満たされる。また、内部空間から不活性ガスが流出したとしても、内部空間内を常時不活性ガスで満たすことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、少量のガスでワイヤーグリッド型の偏光子の劣化を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
<第1の実施の形態>
図1は、第1の実施の形態に係る偏光光照射装置1の概略を示す正面図である。偏光光照射装置1は、例えば、光源からの光を偏光膜を通過させて偏光を得、この偏光をガラス基板等の被露光面に照射して、液晶パネル用の配向膜等を生成するものである。
【0023】
以下、被露光対象物Wの搬送方向をy方向とし、搬送方向に直交する方向をx方向とし、鉛直方向をz方向とする。
【0024】
偏光光照射装置1は、主として、偏光照射部10と、駆動部20と、撮像部30と、を有する。
【0025】
偏光照射部10は、被露光対象物Wに偏光を照射する。
図2は、偏光照射部10の概略を示す平面図である。
図3は、偏光照射部10の概略を示す側面図である。なお、
図3の2点鎖線は、光が照射される範囲を示すものである。
【0026】
偏光照射部10は、主として、光源11と、偏光子ユニット12と、を有する。
【0027】
光源11は、棒状のランプであり、偏光していない光(例えば、紫外光)を出射する。光源は、長手方向がy方向に沿うように、かつx方向に複数並べて配置される。光源11として、光配向処理に必要な短波長紫外光(例えば、254nm波長光)を効率よく発光するロングアークランプを用いることができる。なお、光源11の形態はこれに限られず、例えばx方向に沿って長い1本のランプであっても良い。
【0028】
偏光子ユニット12は、光源11から出射された無偏光の光を偏光するものであり、光源11の下側(−z側)に設けられる。偏光子ユニット12は、主として、特定波長透過フィルタ13と、偏光子14と、を有する(
図3参照)。
【0029】
偏光子ユニット12は、光源11毎に1つずつ設けられてもよいし、光源11毎に2つ以上設けられてもよい。偏光子ユニット12については、後に詳述する。
【0030】
図1の説明に戻る。駆動部20は、主として、ステージ21と、ステージガイドレール22と、を有する。
【0031】
ステージ21は、図示しない駆動手段により、ステージガイドレール22に沿って移動可能に設けられる(
図1の太矢印参照)。ステージ21の上面には、被露光対象物Wが載置される。
【0032】
撮像部30は、ステージ21上に載置された被露光対象物Wのアライメントに使用するカメラである。
【0033】
このように構成された偏光光照射装置1の作用について説明する。偏光光照射装置1は、被露光対象物Wを走査方向であるy方向に移動させながら、偏光照射部10から照射された光を被露光対象物Wの被露光面に照射して配向膜等を生成する。この偏光光照射装置1の作用は、すでに公知であるため、詳細な説明を省略する。なお、走査は、偏光照射部10を移動させてもよいし、被露光対象物W(ステージ21)を移動させてもよいし、それらの両方を相対的に移動させてもよい。
【0034】
露光時には、光源11からの光が照射されることにより偏光子14が劣化する。本発明は、偏光子14の劣化を防止する点に特徴がある。以下、偏光子ユニット12について詳細に説明する。
【0035】
図4、5は、偏光子ユニット12の一例を示す斜視図である。
図4は偏光子ユニット12を斜め上方から見た図であり、
図5は偏光子ユニット12を斜め下方から見た図である。
図4、5においては、1つの光源11に対して2つの偏光子ユニット12が設けられている。
【0036】
偏光子ユニット12は、特定波長透過フィルタ13と、偏光子14と、特定波長透過フィルタ13及び偏光子14を保持する偏光子保持枠15と、押さえ板16と、ガス供給部17と、を有する。
【0037】
特定波長透過フィルタ13は、特定の波長範囲の光だけを透過し、他の波長の光を吸収するようにつくられたフィルタである。特定波長透過フィルタ13は、板状のガラス(石英ガラス等)である透明基板上に、特定の波長範囲の光だけ透過させるバンドパスフィルタのフィルタ層が形成されている。ただし、透明基板上に形成されるフィルタはバンドパスフィルタに限られず、例えばローカットフィルタや反射フィルタであってもよい。
【0038】
偏光子14は、入射角度依存性の少ないワイヤーグリッド型偏光子であり、特定波長透過フィルタ13の下側(−z側)に設けられる。ワイヤーグリッド偏光子は、透明基板14a(
図8参照)に導電体グリッド14b(
図8参照)の格子状パターンを形成し、導電体グリッドのピッチを入射する光の波長以下にすることで、グリッドの長手方向に平行な偏光成分を反射し、それと直交する偏光成分を通過させるものである。導電体グリッドは、アルミニウムなどの金属によって形成される。
【0039】
偏光子保持枠15は、厚板状の部材であり、例えば金属で形成される。偏光子保持枠15は、厚さ方向(z方向)に貫通する貫通孔15aを有する。
【0040】
貫通孔15aは、特定波長透過フィルタ13及び偏光子14により覆われる。特定波長透過フィルタ13は、偏光子保持枠15の上側(+z側)の面15bに設けられる。偏光子14は、偏光子保持枠15の下側(−z側)の面15cに設けられる。
【0041】
図6は、偏光子保持枠15の平面図である。
図7は、偏光子保持枠15の側面図であり、内部の構造を点線で示す。
【0042】
偏光子保持枠15には、厚さ方向に貫通する貫通孔15aが形成される。貫通孔15aは、偏光子保持枠15の最も大きな面である面15b、15cに開口する。
【0043】
面15b、15cには、それぞれ、貫通孔15aの周囲に凹部15e、15fが形成される。凹部15e、15fの周囲には、押さえ板16が載置される凹部15hが形成される。
【0044】
面15b、15cに直交する面15d(偏光子保持枠15の側面に相当)には、面15dを貫通する貫通孔である排出孔15gが形成される。排出孔15gは、偏光子保持枠15の外側と、偏光子保持枠15の内側である内部空間S(後に詳述)とを連通する。排出孔15gは、面15dの長手方向の中央部に設けられる。
【0045】
図4、5の説明に戻る。特定波長透過フィルタ13及び偏光子14は、貫通孔15aを覆うように偏光子保持枠15に設けられる。凹部15e(
図6、7、8参照)の底面に特定波長透過フィルタ13を載置し、凹部15f(
図7、8参照)の底面に偏光子14を載置し、特定波長透過フィルタ13及び偏光子14を覆うように凹部15hの底面に押さえ板16を載置して、押さえ板16を偏光子保持枠15に固定することにより、特定波長透過フィルタ13が面15bに設けられ、偏光子14が面15cに設けられる。その結果、貫通孔15aの両端が覆われ、偏光子保持枠15の内部に内部空間Sが形成される。なお、偏光子14は、導電体グリッド14bが内部空間Sに露出するように(
図8参照)、面15cに設けられる。
【0046】
ガス供給部17は、内部空間Sに不活性ガスを供給する。不活性ガスは、例えば、窒素、アルゴン等であり、本実施の形態では窒素を用いる。ガス供給部17は、内部空間Sと連通する注入管17aを有する。
【0047】
図8は、
図4のA−A断面図である。
図9は、面15dの部分拡大図であり、注入管17aのみ面15dの位置で切断している。
【0048】
偏光子保持枠15の面15dには、注入管17aが設けられる。注入管17aは、円筒管であり、排出孔15gの内部に挿入される。これにより、排出孔15gと注入管17aとが隣接する。
【0049】
注入管17aは内径が略0.5mmであり、排出孔15gは内径が略3.0mmである。そのため、面15dと略平行な断面において、排出孔15gの内側かつ注入管17aの外側の面積(内部空間Sから不活性ガス等が排出される部分の面積)は、注入管17aの内側の面積(内部空間Sへ不活性ガス等が注入する部分の面積)より大きい。
【0050】
注入管17aは、注入管17aの先端が排出孔15gの内部に位置するように設けられる。ただし、注入管17aの先端位置はこれに限られず、注入管17aの先端が内部空間Sに多少突出してもよい。
【0051】
ガス供給部17は、内部空間Sに連続して不活性ガスを供給する。言い換えると、注入管17aからは、内部空間Sに不活性ガスが連続して注入される。注入管17aから内部空間Sに注入されるときの不活性ガスの流速は、毎秒略25mである。したがって、不活性ガスは、内部空間S内で攪拌される。内部空間S内で攪拌された不活性ガスは、内部空間Sと連通する排出孔15gから排出される。
【0052】
注入管17aからは、毎分300ミリリットル(mL)の不活性ガスが供給される。300mLとは、内部空間Sの容量(略50mL)の略5倍である。そのため、内部空間Sから不活性ガスが流出したとしても、内部空間S内は、常時、不活性ガスにより充填される。したがって、導電体グリッド14bには、常時不活性ガスが接触し、酸化等による劣化が防止される。
【0053】
図10〜12は、注入管17aから注入された不活性ガスが内部空間S内でどのような挙動をするかを示す図である。
図10は、比較例にかかる偏光子ユニット12’であり、注入管17aと排出孔15gとが異なる位置にある場合である。
図11は、比較例にかかる偏光子ユニット12’’であり、排出孔15gを形成しない場合である。
図12は、本実施の形態にかかる偏光子ユニット12である。
図10〜12において、不活性ガスの流れを2点鎖線で示す。なお、
図10〜
図12において、注入管17a、排出孔15gの位置等以外の条件(流速、流量等)は同じである。
【0054】
図10に示すように、注入管17aと排出孔15gとが異なる位置にある場合は、不活性ガスが注入管17aから排出孔15gに向かって流れ、不活性ガスが内部空間S内で拡散しない。
【0055】
また、
図11に示すように、排出孔15gを形成しない場合にも、不活性ガスが注入管17aから直線的に流れ、不活性ガスが内部空間S内で拡散しない。
【0056】
それに対し、
図12に示すように、排出孔15gが注入管17aに隣接する場合には、不活性ガスの流路(注入管17aの先端から排出孔15gまでの距離)が長くなるため、注入管17aから注入された不活性ガスが内部空間S内全体に拡散する。したがって、内部空間S内が確実に不活性ガス雰囲気となり、内部空間Sの残留酸素濃度が低くなる。
【0057】
本実施の形態によれば、排出孔15gと注入管17aとを隣接して設けることで、予め内部空間Sを真空にすることなく、少量の不活性ガスで内部空間S内を不活性ガス雰囲気にすることができる。そして、導電体グリッド14bを内部空間Sに露出させることにより、導電体グリッドが酸素等と触れなくなる。したがって、少量の不活性ガスでワイヤーグリッド型の偏光子の劣化を防止することができる。また、導電体グリッド14bに酸化防止膜等を設けることなく、ワイヤーグリッド型の偏光子の劣化を防止することができる。特に、注入管17aを排出孔15gの内部に挿入する場合には、不活性ガスの流路が最も長くなるため、不活性ガスを内部空間S内で効率よく拡散させることができる。
【0058】
また、本実施の形態では、内部空間Sに連続して不活性ガスを供給することで、内部空間S内を確実に不活性ガス雰囲気にすることができる。偏光光照射装置1においては、使用時に高温となるため、ゴム製や樹脂製のシール材を用いることができない。また、ガスが発生するため、耐熱シリコン製のシール材を用いることもできない。したがって、特定波長透過フィルタ13及び偏光子14と偏光子保持枠15との間に隙間が存在し(内部空間Sの密封は不可能)、不活性ガスが漏れ続ける。しかしながら、内部空間Sに不活性ガスを連続して供給することで、内部空間S内を不活性ガス雰囲気に保ち、ワイヤーグリッド型の偏光子の劣化を防止することができる。ただし、内部空間Sに不活性ガスを断続的に供給することも可能である。
【0059】
また、本実施の形態によれば、流速を上げて内部空間Sに不活性ガスを注入することで、内部空間Sを不活性ガスで充填させることができる。例えば、排出孔15gが注入管17aに隣接する場合においても、注入管17aの内径を大きくして(例えば略1.0mm)流速を遅くすると、同じ量の不活性ガスを供給しても不活性ガスが内部空間S内全体に拡散せず、不活性ガス以外の空気が内部空間Sの内部に部分的に残る場合がある。したがって、注入管17aから流出するときの不活性ガスの流速を毎秒略25m以上と早くすることが望ましい。
【0060】
なお、本実施の形態では、排出孔15g及び注入管17aは、面15dの長手方向の中央部に設けられたが、排出孔15g及び注入管17aの位置はこれに限られない。例えば、排出孔15g及び注入管17aは、面15dの端部近傍に設けられてもよい。ただし、不活性ガスを内部空間Sで効率的に拡散させるためには、排出孔15g及び注入管17aを面15dの長手方向の中央部に設けることが望ましい。
【0061】
<第2の実施の形態>
本発明の第1の実施の形態は、注入管17aを排出孔15gの内部に挿入することで、排出孔15gと注入管17aとを隣接させたが、排出孔15gと注入管17aとの位置関係はこれに限られない。
【0062】
第2の実施の形態は、注入管17aを排出孔15gの内部に挿入しない形態である。以下、第2の実施の形態の偏光光照射装置について説明する。第1の実施の形態の偏光光照射装置1と、第2の実施の形態の偏光光照射装置2との差異は、偏光子ユニットにおける排出孔の位置のみであるため、以下偏光子ユニットについてのみ説明する。また、第1の実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0063】
図13は、第2の実施の形態の偏光光照射装置2(全体図省略)における偏光子ユニット12Aの概略を示す側面図であり、偏光子保持枠15Aの面15dの部分拡大図である。
図13においては、注入管17aのみ面15dの位置で切断している。
【0064】
注入管17aは、面15dの長手方向の中央部に設けられる。ただし、第1の実施の形態と同様、注入管17aの位置はこれに限られない。
【0065】
排出孔15gは、注入管17aの両側に隣接して設けられる。本実施の形態では、排出孔15gを注入管17aの両側に設けたが、排出孔15gを注入管17aの片側にのみ設けてもよい。
【0066】
このように、注入管17aを排出孔15gの内部に挿入せず、排出孔15gを注入管17aに隣接して形成する場合においても、第1の実施の形態と同様に、不活性ガスの流路が長くなるため、注入管17aから注入された不活性ガスが内部空間S内全体に拡散し、少量の不活性ガスで内部空間S内を不活性ガス雰囲気にすることができる。そして、導電体グリッド14bを内部空間Sに露出させることにより、導電体グリッドが酸素等と触れなくなるため、少量の不活性ガスでワイヤーグリッド型の偏光子の劣化を防止することができる。
【0067】
なお、排出孔15gの位置、数及び形状は、
図13に示す場合に限られない。
図13では、排出孔15gを2個設けたが、排出孔15gの数は1個でもよいし、3個以上でもよい。また、排出孔15gの位置は、注入管17aに隣接していれば、
図13に示す位置に限られないし、形状も円筒形状に限られない。例えば、排出孔が形成される位置は、注入管17aの左又は右に限られず、排出孔の上又は下でもよい。また、排出孔の面15dにおける形状は、円形に限らず、楕円形等としてもよい。ただし、面15dと略平行な断面における、排出孔の内側の面積(内部空間Sから不活性ガス等が排出される部分の面積)は、注入管17aの内側の面積(内部空間Sへ不活性ガス等が注入する部分の面積)より大きくすることが望ましい。
【0068】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0069】
また、本発明において、「略」とは、厳密に同一である場合のみでなく、同一性を失わない程度の誤差や変形を含む概念である。例えば、略中央とは、厳密に中央の場合には限られない。また、例えば、単に平行、直交等と表現する場合において、厳密に平行、直交等の場合のみでなく、略平行、略直交等の場合を含むものとする。また、本発明において「近傍」とは、例えばAの近傍であるときに、Aの近くであって、Aを含んでもいても含んでいなくてもよいことを示す概念である。