【解決手段】ランプユニット60と、p行、q列のマトリックス状に配列された複数のレンズ素子65aを有するフライアイレンズ65と、反射面の形状を変更するミラー変形ユニット70を備える平面ミラー68と、フライアイレンズ65のマトリックスに沿って互いに直交配置され、光路EL及び線材92X,92Yの長手方向に対して直交する方向に移動可能に配設された複数本の線材92X,92Yから構成される第1及び第2のワイヤ群91X,91Yを有し、ランプユニット60とフライアイレンズ65との間に配置されるワイヤフィルタ90と、を備える。
前記ワイヤフィルタは、前記露光面での照度分布が均一化されるように、前記反射鏡の反射面の形状に応じて、前記各ワイヤ群の線材を前記光の光軸及び前記線材の長手方向に対して直交する方向に移動させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の露光用照明装置。
請求項9に記載の露光装置を使用し、前記光源からの露光光を前記マスクを介して前記ワークに照射して前記マスクの露光パターンを前記ワークに露光転写することを特徴とする露光方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、曲率補正機構(ミラー曲げ機構)によって反射鏡の曲率を補正すると、反射鏡の反射面が凸面状になった部分では、反射光が拡散して照度が低下し(暗くなる)、反射鏡の反射面が凹面状になった部分では、反射光が収束して照度が高まり(明るくなる)、露光面での照度分布がばらつき露光精度に影響を及ぼす可能性がある。特許文献2に記載の露光装置は、照度分布補正フィルタの各液晶セルを制御してレチクルに照射する光の照度分布を均一にする装置であり、反射鏡の曲率補正に起因する照度分布のばらつきについて言及されていない。
【0006】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ミラー曲げに起因する露光面での照度分布のばらつきを抑制することができる露光用照明装置、露光装置及び露光方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 光源と、
p行、q列(p,qは、整数)のマトリックス状に配列された複数のレンズ素子を有し、前記光源からの光を均一にして出射するフライアイレンズと、
反射面の形状を変更可能なミラー曲げ機構を備え、前記フライアイレンズから出射された前記光を反射する反射鏡と、
を備え、
露光パターンが形成されたマスクを介して前記光源からの露光光をワーク上に照射して前記露光パターンを前記ワークに露光転写するための露光用照明装置であって、
前記光源と前記フライアイレンズとの間に配置されて露光面での照度分布を変更可能なワイヤフィルタを更に備え、
前記ワイヤフィルタは、平行に配置された複数本の線材からそれぞれ構成される第1及び第2のワイヤ群を備え、
前記第1及び第2のワイヤ群の前記線材は、互いに直交して、前記フライアイレンズのマトリックスに沿ってそれぞれ配設されてなり、
前記各ワイヤ群の前記線材は、それぞれ前記光の光軸及び前記線材の長手方向に対して直交する方向に移動可能であることを特徴とする露光用照明装置。
(2) 前記第1のワイヤ群は、第1の本数の線材からそれぞれ構成されるp+1行のパターンを有し、
前記第2のワイヤ群は、第2の本数の線材からそれぞれ構成されるq+1列のパターンを有し、
前記第1のワイヤ群の線材は、前記線材間の間隔が前記p+1行のパターンにおいてそれぞれ同じであるように、移動可能であり、
前記第2のワイヤ群の線材は、前記線材間の間隔が前記q+1列のパターンにおいてそれぞれ同じであるように、移動可能であることを特徴とする(1)に記載の露光用照明装置。
(3) 前記p+1行のパターンは、前記パターン毎に中央部よりも両端部において前記線材間の間隔が広がるように配置され、
前記q+1列のパターンは、前記パターン毎に中央部よりも両端部において前記線材間の間隔が広がるように配置されることを特徴とする(2)に記載の露光用照明装置。
(4) 前記第1のワイヤ群では、前記p+1行のパターンを構成する全ての線材が、前記光の光軸及び前記線材の長手方向に対して直交する方向に一体で移動可能であり、
前記第2のワイヤ群では、前記q+1列のパターンを構成する全ての線材が、前記光の光軸及び前記線材の長手方向に対して直交する方向に一体で移動可能であることを特徴とする(2)又は(3)に記載の露光用照明装置。
(5) 前記ワイヤフィルタは、前記露光面での照度分布が均一化されるように、前記反射鏡の反射面の形状に応じて、前記各ワイヤ群の線材を前記光の光軸及び前記線材の長手方向に対して直交する方向に移動させることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の露光用照明装置。
(6) 前記線材は、その線幅を変更可能であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の露光用照明装置。
(7) 前記ワイヤフィルタは、前記光の光軸に沿って移動可能であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の露光用照明装置。
(8) 前記光源と前記フライアイレンズとの間に配置されて露光面での照度分布を変更可能な光学フィルタを更に備え、
前記光学フィルタは、p+1行、q+1列のマトリックス状に配列され、中心部から周辺部に向かって、次第に光透過率が高くなる光透過率分布を持った複数のセルを有し、前記光の光軸に直交する方向に移動可能であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の露光用照明装置。
(9) マスクを支持するマスク支持部と、
ワークを支持するワーク支持部と、
前記(1)〜(8)のいずれかに記載の露光用照明装置と、
を備え、
前記光源からの露光光を前記マスクを介して前記ワークに照射して前記マスクの露光パターンを前記ワークに露光転写することを特徴とする露光装置。
(10) (9)に記載の露光装置を使用し、前記光源からの露光光を前記マスクを介して前記ワークに照射して前記マスクの露光パターンを前記ワークに露光転写することを特徴とする露光方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の露光用照明装置によれば、光源と、p行、q列のマトリックス状に配列された複数のレンズ素子を有するフライアイレンズと、反射面の形状を変更するミラー曲げ機構を備える反射鏡と、互いに直交してフライアイレンズのマトリックスに沿って配設されると共に、光の光軸及び線材の長手方向に対して直交する方向に移動可能にされた複数本の線材から構成される第1及び第2のワイヤ群を有し、光源とフライアイレンズとの間に配置されて露光面での照度分布を変更可能なワイヤフィルタと、を備える。これにより、ワイヤフィルタの第1及び第2のワイヤ群の線材を、光軸及び線材の長手方向に対して直交する方向に移動させて、ミラー曲げ機構による反射面の形状変更に起因する露光面における照度分布のばらつきを補正することができる。
【0009】
また、本発明の露光装置及び露光方法によれば、マスク支持部で支持されるマスクと、ワーク支持部で支持されるワークと、ミラー曲げ機構による反射面の形状変更に起因する露光面での照度分布のばらつきを補正可能なワイヤフィルタを有する露光用照明装置と、を備え、ワイヤフィルタで補正された光源からの露光光を、マスクを介してワークに照射して露光パターンをワークに露光転写するので、高精度な露光結果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る露光装置の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1に示すように、近接露光装置PEは、被露光材としてのワークWより小さいマスクMを用い、マスクMをマスクステージ(マスク支持部)1で保持すると共に、ワークWをワークステージ(ワーク支持部)2で保持し、マスクMとワークWとを近接させて所定の露光ギャップで対向配置した状態で、露光用照明装置3からパターン露光用の光をマスクMに向けて照射することにより、マスクMのパターンをワークW上に露光転写する。また、ワークステージ2をマスクMに対してX軸方向とY軸方向の二軸方向にステップ移動させて、ステップ毎に露光転写が行われる。
【0012】
ワークステージ2をX軸方向にステップ移動させるため、装置ベース4上には、X軸送り台5aをX軸方向にステップ移動させるX軸ステージ送り機構5が設置されている。X軸ステージ送り機構5のX軸送り台5a上には、ワークステージ2をY軸方向にステップ移動させるため、Y軸送り台6aをY軸方向にステップ移動させるY軸ステージ送り機構6が設置されている。Y軸ステージ送り機構6のY軸送り台6a上には、ワークステージ2が設置されている。ワークステージ2の上面には、ワークWがワークチャック等で真空吸引された状態で保持される。また、ワークステージ2の側部には、マスクMの下面高さを測定するための基板側変位センサ15が配設されている。従って、基板側変位センサ15は、ワークステージ2と共にX、Y軸方向に移動可能である。
【0013】
装置ベース4上には、複数(図に示す実施形態では4本)のX軸リニアガイドのガイドレール51がX軸方向に配置され、それぞれのガイドレール51には、X軸送り台5aの下面に固定されたスライダ52が跨架されている。これにより、X軸送り台5aは、X軸ステージ送り機構5の第1リニアモータ20で駆動され、ガイドレール51に沿ってX軸方向に往復移動可能である。また、X軸送り台5a上には、複数のY軸リニアガイドのガイドレール53がY軸方向に配置され、それぞれのガイドレール53には、Y軸送り台6aの下面に固定されたスライダ54が跨架されている。これにより、Y軸送り台6aは、Y軸ステージ送り機構6の第2リニアモータ21で駆動され、ガイドレール53に沿ってY軸方向に往復移動可能である。
【0014】
Y軸ステージ送り機構6とワークステージ2の間には、ワークステージ2を上下方向に移動させるため、比較的位置決め分解能は粗いが移動ストローク及び移動速度が大きな上下粗動装置7と、上下粗動装置7と比べて高分解能での位置決めが可能でワークステージ2を上下に微動させてマスクMとワークWとの対向面間のギャップを所定量に微調整する上下微動装置8が設置されている。
【0015】
上下粗動装置7は後述の微動ステージ6bに設けられた適宜の駆動機構によりワークステージ2を微動ステージ6bに対して上下動させる。ワークステージ2の底面の4箇所に固定されたステージ粗動軸14は、微動ステージ6bに固定された直動ベアリング14aに係合し、微動ステージ6bに対し上下方向に案内される。なお、上下粗動装置7は、分解能が低くても、繰り返し位置決め精度が高いことが望ましい。
【0016】
上下微動装置8は、Y軸送り台6aに固定された固定台9と、固定台9にその内端側を斜め下方に傾斜させた状態で取り付けられたリニアガイドの案内レール10とを備えており、該案内レール10に跨架されたスライダ11を介して案内レール10に沿って往復移動するスライド体12にボールねじのナット(図示せず)が連結されると共に、スライド体12の上端面は微動ステージ6bに固定されたフランジ12aに対して水平方向に摺動自在に接している。
【0017】
そして、固定台9に取り付けられたモータ17によってボールねじのねじ軸を回転駆動させると、ナット、スライダ11及びスライド体12が一体となって案内レール10に沿って斜め方向に移動し、これにより、フランジ12aが上下微動する。
なお、上下微動装置8は、モータ17とボールねじによってスライド体12を駆動する代わりに、リニアモータによってスライド体12を駆動するようにしてもよい。
【0018】
この上下微動装置8は、Z軸送り台6aのY軸方向の一端側(
図1の左端側)に1台、他端側に2台、合計3台設置されてそれぞれが独立に駆動制御されるようになっている。これにより、上下微動装置8は、ギャップセンサ27による複数箇所でのマスクMとワークWとのギャップ量の計測結果に基づき、3箇所のフランジ12aの高さを独立に微調整してワークステージ2の高さ及び傾きを微調整する。
なお、上下微動装置8によってワークステージ2の高さを十分に調整できる場合には、上下粗動装置7を省略してもよい。
【0019】
また、Y軸送り台6a上には、ワークステージ2のY方向の位置を検出するY軸レーザ干渉計18に対向するバーミラー19と、ワークステージ2のX軸方向の位置を検出するX軸レーザ干渉計に対向するバーミラー(共に図示せず)とが設置されている。Y軸レーザ干渉計18に対向するバーミラー19は、Y軸送り台6aの一側でX軸方向に沿って配置されており、X軸レーザ干渉計に対向するバーミラーは、Y軸送り台6aの一端側でY軸方向に沿って配置されている。
【0020】
Y軸レーザ干渉計18及びX軸レーザ干渉計は、それぞれ常に対応するバーミラーに対向するように配置されて装置ベース4に支持されている。なお、Y軸レーザ干渉計18は、X軸方向に離間して2台設置されている。2台のY軸レーザ干渉計18により、バーミラー19を介してY軸送り台6a、ひいてはワークステージ2のY軸方向の位置及びヨーイング誤差を検出する。また、X軸レーザ干渉計により、対向するバーミラーを介してX軸送り台5a、ひいてはワークステージ2のX軸方向の位置を検出する。
【0021】
マスクステージ1は、略長方形状の枠体からなるマスク基枠24と、該マスク基枠24の中央部開口にギャップを介して挿入されてX,Y,θ方向(X,Y平面内)に移動可能に支持されたマスクフレーム25とを備えており、マスク基枠24は装置ベース4から突設された支柱4aによってワークステージ2の上方の定位置に保持されている。
【0022】
マスクフレーム25の中央部開口の下面には、枠状のマスクホルダ26が設けられている。即ち、マスクフレーム25の下面には、図示しない真空式吸着装置に接続される複数のマスクホルダ吸着溝が設けられており、マスクホルダ26が複数のマスクホルダ吸着溝を介してマスクフレーム25に吸着保持される。
【0023】
マスクホルダ26の下面には、マスクMのマスクパターンが描かれていない周縁部を吸着するための複数のマスク吸着溝(図示せず)が開設されており、マスクMは、マスク吸着溝を介して図示しない真空式吸着装置によりマスクホルダ26の下面に着脱自在に保持される。
【0024】
図2に示すように、本実施形態の露光装置PEの露光用照明装置3は、紫外線照射用の光源としてのランプユニット60と、光路ELの向きを変えるための平面ミラー63と、露光面での照度分布を変更するためのワイヤフィルタ90と、照射光路を開閉制御する露光制御用シャッターユニット64と、露光制御用シャッターユニット64の下流側に配置され、ランプユニット60からの光を均一にして出射するフライアイレンズ65と、フライアイレンズ65から出射された光路ELの向きを変えるための平面ミラー66と、高圧水銀ランプ61からの光を平行光として照射するコリメーションミラー67と、該平行光をマスクMに向けて照射する平面ミラー68と、を備える。
【0025】
ランプユニット60は、例えば高圧水銀ランプ61と、この高圧水銀ランプ61から照射された光を集光するリフレクタ62をそれぞれ複数有する。なお、光源としては、単一の高圧水銀ランプ61とリフレクタ62の構成であってもよく、或いは、LEDによって構成されてもよい。
【0026】
フライアイレンズ65は、p行、q列(p、qは、整数)のマトリックス状に配列された複数のレンズ素子65aを備え、リフレクタ62で集光された光を照射領域においてできるだけ均一な照度分布となるようにして出射する。
【0027】
図3及び
図4に示すように、ワイヤフィルタ90は、複数本の線材92Xが平行にX方向にそれぞれ配置されてなる第1のワイヤ群91Xと、複数本の線材92Yが平行にY方向にそれぞれ配置されてなる第2のワイヤ群91Yと、から構成されている。第1のワイヤ群91Xの線材92Xと,第2のワイヤ群91Yの線材92Yは、互いに直交するように配置されて、p行、q列のマトリックス状に配列されたフライアイレンズ65の複数のレンズ素子65aに沿って配設されている。線材92X,92Yは、ワイヤや、細長く形成された板材などが適用可能であり、その断面形状は、円形、半円形、楕円形、三角形、四角形、その他多角形など、特に限定されない。
なお、
図4では、説明のため、
図3の線材92Xと線材92Yの本数よりも少なく示されている。
【0028】
第1のワイヤ群91Xは、線材92Xの両端部が駆動装置93Xにより支持されて、駆動装置93Xにより一体として光路EL及び線材92Xの長手方向に対して直交する方向(即ち、Y方向)に移動可能に構成されている。また、第2のワイヤ群91Yは、線材92Xの両端部が駆動装置93Yにより支持されて、駆動装置93Yにより一体として光路EL及び線材92Yの長手方向に対して直交する方向(即ち、X方向)に移動可能に構成されている。更に、第1及び第2のワイヤ群91X,91Y(ワイヤフィルタ90)は、光路ELに沿った方向にも移動可能であり、これにより露光面における照度の強さを調節することができる。
なお、
図3では、駆動装置93X,93Yを模式的に、92X,92Yの一端部側のみで示している。
また、駆動装置93X,93Yは、ワイヤフィルタ90を光路ELから退避させる不使用状態の位置へ移動させることもできる。
【0029】
第1のワイヤ群91Xは、p+1行(
図4の実施例では4行)のパターンPxを有する。このうち、1つのパターンPxは、第1の本数の線材92Xが、中央部から両端部に掛けて線材92X間の間隔d1が徐々に広がるように構成されている。
【0030】
第2のワイヤ群91Yは、q+1列(
図4の実施例では4列)のパターンPyを有する。このうち、1つのパターンPyは、第2の本数の線材92Yが、中央部から両端部に掛けて線材92Y間の間隔d2が徐々に広がるように構成されている。
【0031】
このようなパターンPx,Pyを有するワイヤフィルタ90は、互いに重ねられて複数(
図4の実施例では4行×4列)の領域Pを構成し、各領域Pの中央部の光透過率が周辺部の光透過率より低い、具体的には、中央部から周辺部に向かって、次第に光透過率が高くなる光透過率分布を有している。
なお、第1及び第2のワイヤ群91X,91Yの線材92X,92Yは、中央部から両端部に掛けて線材92X,92Y間の間隔d1,d2が徐々に広がるように配置されているが、第1及び第2のワイヤ群91X,91Yの線材92X,92Yは、中央部よりも両端部において線材92X,92Y間の間隔d1,d2が広がるように配置されるものでもよい。
【0032】
更に、第1のワイヤ群91Xの各線材92Xは、第1のワイヤ群91Xを一体に移動する駆動装置93Xの他に、それぞれの線材92Xの端部(例えば、
図4の左右端)に設けられた、例えばバイメタルやピエゾ素子などの不図示の駆動機構により、それぞれ独立してY方向に移動可能とすることができる。また、第2のワイヤ群91Yの各線材92Yも、第2のワイヤ群91Yを一体に移動する駆動装置93Yの他に、それぞれの線材92Yの端部(例えば、
図4の上下端)に設けられた、例えばバイメタルやピエゾ素子などの不図示の駆動機構により、それぞれ独立してX方向に移動可能とすることができる。
【0033】
これにより、第1及び第2のワイヤ群91X,91Yの線材92X,92Yは、パターンPx、及びパターンPy内における位置を変更することが可能である。また、線材92X,92Y間の間隔d1,d2が、全てのパターンPx及びパターンPyにおいてそれぞれ同じになるように線材92X,92Yを移動させることで、パターンPx及びパターンPyのパターン形状、即ち、光透過率分布を任意に変更することができる。
【0034】
1つのパターンPxと1つのパターンPyとが重なる領域Pの大きさは、フライアイレンズ65のレンズ素子65aの大きさと略同じ大きさとなっており、複数のレンズ素子65aがp行、q列のマトリックス状に配列されたフライアイレンズ65に対しては、1行1列だけ大きい、即ち、p+1行、q+1列のパターンPx,Pyを有するワイヤフィルタ90が適用される。これにより、第1のワイヤ群91X、及び第2のワイヤ群91Yを光路ELに直交する方向に1パターン分の範囲で移動させても、フライアイレンズ65のレンズ素子65aの全面が、ワイヤフィルタ90のパターンPx,Pyと対向している。
【0035】
その他、露光用照明装置3では、ワイヤフィルタ90と露光制御用シャッターユニット64の設置順は、逆であってもよい。さらに、フライアイレンズ65と露光面との間には、DUVカットフィルタ、偏光フィルタ、バンドパスフィルタが配置されてもよい。
【0036】
また、
図5に示すように、平面ミラー68は、正面視矩形状に形成されたガラス素材からなる。平面ミラー68は、平面ミラー68の裏面側に設けられた複数のミラー変形ユニット(ミラー曲げ機構)70によりミラー変形ユニット保持枠71に支持されている。
【0037】
各ミラー変形ユニット70は、平面ミラー68の裏面に接着剤で固定されるパッド72と、一端がパッド72に固定された支持部材73と、支持部材73を駆動するアクチュエータ74と、を備える。
【0038】
支持部材73には、保持枠71に対してパッド72寄りの位置に、±0・5deg以上の屈曲を許容する屈曲機構としてのボールジョイント76が設けられており、保持枠71に対して反対側となる他端には、アクチュエータ74が取り付けられている。
【0039】
さらに、マスク側のアライメントマーク(図示せず)の位置に露光光を反射する平面ミラー68の各位置の裏面には、複数の接触式センサ77が取り付けられている。
【0040】
これにより、平面ミラー68は、信号線81により各アクチュエータ74に接続されたミラー制御部80からの指令に基づいて(
図2参照)、接触式センサ77によって平面ミラー68の変位量をセンシングしながら、各ミラー変形ユニット70のアクチュエータ74を駆動して、各支持部材73の長さを変えることによって、平面ミラー68の形状を変更し、反射面の曲率を局部的に変更することで、平面ミラー68のデクリネーション角を補正することができる。
【0041】
その際、各ミラー変形ユニット70には、ボールジョイント76が設けられているので、支持部側の部分を三次元的に回動可能とすることができ、各パッド72を平面ミラー68の表面に沿って傾斜させることができる。このため、各パッド72と平面ミラー68との接着剥がれを防止するすると共に、移動量の異なる各パッド72間における平面ミラー68の応力が抑制され、平均破壊応力値が小さいガラス素材からなる場合であっても、平面ミラー68の形状を局部的に変更する際、平面ミラー68を破損することなく、10mmオーダーで平面ミラー68を曲げることができ、曲率を大きく変更することができる。
【0042】
このように構成された露光装置PEでは、露光用照明装置3において、露光時に露光制御用シャッターユニット64が開制御されると、高圧水銀ランプ61から照射された光が、平面ミラー63で反射されてフライアイレンズ65の入射面に入射される。そして、フライアイレンズ65の出射面から発せられた光は、平面ミラー66、コリメーションミラー67、及び平面ミラー68によってその進行方向が変えられるとともに平行光に変換される。そして、この平行光は、マスクステージ1に保持されるマスクM、さらにはワークステージ2に保持されるワークWの表面に対して略垂直にパターン露光用の光として照射され、マスクMのパターンがワークW上に露光転写される。
【0043】
ここで、
図2も参照して、ワークWの露光済みのパターンに対応してワークW上に露光転写されるマスクMのパターンを補正するため、ミラー制御部80から平面ミラー68の各アクチュエータ74に対して駆動信号を伝達すると、各ミラー変形ユニット70のアクチュエータ74は、各支持部材73の長さを変えて、平面ミラー68の形状を局部的に変更して、平面ミラー68のデクリネーション角を補正する。
【0044】
このとき、平面ミラー68の局部的な形状変更により、マスクMに照射される露光光の照度も局部的に変化する。即ち、露光面における照度分布が悪化し、ワークWの露光精度に影響を及ぼす可能性がある。具体的には、アクチュエータ74によって平面ミラー68が裏面から押されて、平面ミラー68の反射面が凸面状になった部分では、反射光が拡散して照度が低下する(暗くなる)。また、アクチュエータ74によって平面ミラー68の裏面が引かれて、平面ミラー68の反射面が凹面状になった部分では、反射光が収束して照度が高まる(明るくなる)。
【0045】
一方、中央部の光透過率が周辺部のものより低い複数のパターンPx,Pyを備えたワイヤフィルタ90は、
図6(a)に示すように、光路ELに直交する方向(第1のワイヤ群91XはY方向,第2のワイヤ群91YはX方向)に移動させると、各パターンPx,Pyとが重なる領域Pの光透過率が低い部分(中央近傍)を通った光が、フライアイレンズ65の各レンズ素子65aを通って重なり合うことで露光面での照度分布が変化し、露光面での一部の照度が低下する(
図6(b))。
【0046】
このため、ワイヤフィルタ90を光路EL上に配置し、平面ミラー68の形状変更により、露光面における照度が高い部分に対応する各レンズ素子65aの部分に、パターンPx,Pyとが重なる領域Pの光透過率が低い中央部を対向させるように、ワイヤフィルタ90(第1及び第2のワイヤ群91X,91Y)を移動させる。これにより、露光面における照度分布のばらつきは、照度が高い部分の照度をワイヤフィルタ90を用いて低下させることで補正することができ、照度分布を改善することができる。
【0047】
また、必要に応じて、第1及び第2のワイヤ群91X,91Yの各線材92X,92Yの内、必要な線材92X,92Yを独立して移動させることにより、パターンPx,Pyとが重なる領域P内での光透過率を部分的に変更して、光透過率分布を変更することもできる。
【0048】
なお、フライアイレンズ65のマトリックス配置されたレンズ素子65aの数(目の数)が多くなると平均化されて露光面での照度分布の変化も小さくなる。レンズ素子65aは、縦方向に3個以上、横方向に3個以上で並ぶように配置されるものから適宜設定されればよく、ワイヤフィルタ90のパターンPx,Pyの数も、フライアイレンズ65の数に応じて適宜設計される。
【0049】
以下、
図7及び
図8を用いて、平面ミラー68を形状変更させた場合に、ワイヤフィルタ90を用いて照度分布を補正したシミュレーション結果について説明する。
平面ミラー68がフラット状態(形状変更前)のとき、
図7(a)に示すように、露光面における露光光の照度分布は、51.6mW/cm
2〜56.0mW/cm
2、平均照度は、54.2mW/cm
2であり、均一度は、4.10%である。
【0050】
ここで、露光パターンの形状を補正するため、
図8に示すように、各アクチュエータ74を、例えば、0〜0.5mmだけ駆動させて平面ミラー68の形状を局部的に変更して、平面ミラー68のデクリネーション角を補正する。このときの露光面における露光光の照度分布は、
図7(b)に示すように、52.36mW/cm
2〜59.04mW/cm
2、平均照度は、55.20mW/cm
2であり、均一度は、6.00%となって、照度分布のばらつきが大きくなる。
【0051】
このような照度分布の補正は、ワイヤフィルタ90を略1/4ピッチだけ図中上方に相対移動させて、パターンPxとパターンPyとが重なる領域Pの中央部、即ち光透過率が低くなっている部分を、フライアイレンズ65の各レンズ素子65aの上部に対向させる。これにより、
図7(c)に示すように、照度が高い部分の照度が低下して露光面における照度分布は、52.27mW/cm
2〜55.94mW/cm
2、平均照度は、54.10mW/cm
2、均一度は、3.39%となり、照度分布が全体として均一化され、露光精度が向上する。なお、必要に応じて、ワイヤフィルタ90を光路ELに沿って移動させてワイヤフィルタ90とフライアイレンズ65との距離を調節することで、露光光の強度を調節することができる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態の露光用照明装置3によれば、ランプユニット60と、p行、q列のマトリックス状に配列された複数のレンズ素子65aを有するフライアイレンズ65と、反射面の形状を変更するミラー変形ユニット70を備える平面ミラー68と、ランプユニット60とフライアイレンズ65との間に配置されて露光面での照度分布を変更可能なワイヤフィルタ90と、を備える。そして、ワイヤフィルタ90は、互いに直交して、フライアイレンズ65のマトリックスに沿って配設されると共に、光路EL及び線材92X,92Yの長手方向に対して直交する方向に移動可能にされた複数本の線材92X,92Yからそれぞれ構成される第1及び第2のワイヤ群91X,91Yを有する。この結果、ミラー変形ユニット70による反射面の形状変更に起因する露光面での照度分布のばらつきを、ワイヤフィルタ90により抑制することができる。
【0053】
また、第1のワイヤ群91Xは、複数の線材92Xからそれぞれ構成される4行のパターンPxを有し、第2のワイヤ群91Yは、複数の線材92Yからそれぞれ構成される4列のパターンPyを有し、第1及び第2のワイヤ群91X,91Yの線材92X,92Yは、それぞれ線材92X,92Y間の間隔d1,d2が4行のパターンPx及び4列のパターンPyにおいてそれぞれ同じであるように、移動可能であるので、ミラー変形ユニット70による反射面の形状変更に起因する露光面での照度分布のばらつきに応じて線材92X,92Yを移動させて露光面における照度分布のばらつきを補正することができる。
【0054】
また、パターンPx,Py毎に中央部よりも両端部において線材92X,92Y間の間隔d1,d2が広がるように配置されるので、間隔d1,d2が比較的狭い中央部を照度が高い各レンズ素子65aの部分と対向させることで、露光面における照度分布のばらつきを補正することができる。
【0055】
さらに、一対のワイヤ群91X,91Yでは、それぞれ、4行のパターンPxを構成する全ての線材、及び4列のパターンPyを構成する全ての線材が、光路EL及び線材92X,92Yの長手方向に対して直交する方向に一体で移動可能であるので、露光面での照度を補正する位置を容易に調節することができる。
【0056】
また、ワイヤフィルタ90は、露光面での照度分布が均一化されるように、平面ミラー68の反射面の形状に応じて、各ワイヤ群91X,91Yの線材92X,92Yを光路EL及び線材92X,92Yの長手方向に対して直交する方向に移動させるので、露光面での照度分布のばらつきを、ワイヤフィルタ90により抑制することができる。
【0057】
また、線材92X,92Yは、その線幅を変更可能であるので、線材92X,92Yの間隔d1,d2を同じ間隔で保持したまま、露光面での照度分布のばらつきを効果的に補正することができる。
【0058】
更に、ワイヤフィルタ90は、光路ELに沿って移動可能であるので、露光面における照度の強さを調節することができる。これにより、露光面における照度分布のばらつきを効果的に補正することができる。
【0059】
更にまた、本実施形態の露光装置PE及び露光方法によれば、マスクステージ1で支持されるマスクMと、ワークステージ2で支持されるワークWと、ミラー変形ユニット70による反射面の形状変更に起因する露光面での照度分布のばらつきを補正可能なワイヤフィルタ90を有する露光用照明装置3と、を備え、ランプユニット60からの露光光をワイヤフィルタ90で補正し、マスクMを介してワークWに照射して露光パターンをワークWに露光転写するので、高精度な露光結果が得られる。
【0060】
(変形例)
図9は、上記実施形態で用いたワイヤフィルタに加え、光学フィルタを備える変形例の露光用照明装置の斜視図である。
【0061】
光学フィルタ100は、ワイヤフィルタ90と平行に配置されて、ワイヤフィルタ90とフライアイレンズ65との間に配設される。なお、ワイヤフィルタ90と光学フィルタ100の配置順は、逆であってもよい。
【0062】
光学フィルタ100は、周囲に設けられたフレーム102を駆動装置103によって駆動することで、各方向(光路ELに直交する方向、及び光路ELに沿う方向)に移動可能である。また、駆動装置103は、光学フィルタ100を光路ELから退避させる不使用状態の位置へ移動させることもできる。光学フィルタ100のセル101は、フライアイレンズ65のレンズ素子65aの大きさと略同じ大きさであり、ワイヤフィルタ90と同様に、p+1行、q+1列のマトリックス状に配列されている。
【0063】
図9(b)に示すように、光学フィルタ100の複数のセル101はそれぞれ、中心部の光透過率が周辺部の光透過率より低い、具体的には、中心部から周辺部に向かって、次第に光透過率が高くなる同一の光透過率分布を有している。光学フィルタ100は、ワイヤフィルタ90と同様に、反射面の形状変更により照度が高くなった部分に、各セル101の中心部が一致するように、光路ELに直交する方向に移動させて照度が高い部分の照度を低下させることで、照度分布のばらつきを補正することができる。この結果、ミラー変形ユニット70による反射面の形状変更に起因する露光面での照度分布のばらつきが抑制される。また、光路ELに沿って移動させることで、露光面における照度の強さを調節することができる。
【0064】
なお、中心部から周辺部に向かう光透過率の変化は、線形的変化、正弦波的変化、指数関数的変化など、任意に設定可能である。光透過率分布は、光学フィルタ100の石英基板にクロムのドットパターンを蒸着するものや、蒸着多層膜により中心から放射状に透過率が変化する光学フィルタなどによって設けることができる。光透過率は、ドットパターンの大きさや密度を変えることで任意に設定することができる。
【0065】
従って、ワイヤフィルタ90と光学フィルタ100のそれぞれの特徴を有効に活用して、連続的に照度分布を変更することが容易な光学フィルタ100と、露光現場での要望に合わせて線材92X,92Yを移動することで、照度分布の調整の自由度が高いワイヤフィルタ90と、を組み合わせることで、露光面での照度分布のばらつきをより効果的に抑制することが可能となる。
【0066】
以上説明したように、変形例の露光用照明装置3によれば、ランプユニット60とフライアイレンズ65との間に配置されて露光面での照度分布を変更可能な光学フィルタ100を、ワイヤフィルタ90に加えて更に備える。光学フィルタ100は、4行、4列のマトリックス状に配列され、中心部から周辺部に向かって、次第に光透過率が高くなる光透過率分布を持った複数のセル101を有し、光路ELに直交する方向に移動可能であるので、照度分布のばらつきを、ワイヤフィルタ90と光学フィルタ100とが協働して補正することができ、ミラー変形ユニット70による反射面の形状変更に起因する露光面での照度分布のばらつきを、より効果的に抑制することができる。
【0067】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が
可能である。
上記実施形態では、p行、q列のマトリックス状に配列された複数のレンズ素子65aを有するフライアイレンズ65に対して、ワイヤフィルタ90は、p+1行、q+1行のパターンPx,Pyを有するものとしたが、各線材92X,92Yをそれぞれ独立して移動させて各パターンPx,Py内の光透過率分布を変更すれば、レンズ素子65aと同数のp行、q列のパターンPx,Pyを有するワイヤフィルタ90での対応も可能となる。
【0068】
また、各ワイヤ群の線材の駆動方法は、上記実施形態のものに限定されず、線材92X,92Y間の間隔d1,d2が、全てのパターンPx及びパターンPyで同じになるように移動させれば、任意に設計することができる。例えば、各パターンPx,Py内での同じ位置にある線材92X,92Yを1つの駆動機構によりユニット化して、ユニット毎に駆動させてもよい。