特開2017-15179(P2017-15179A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2017015179-締め付け具 図000003
  • 特開2017015179-締め付け具 図000004
  • 特開2017015179-締め付け具 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-15179(P2017-15179A)
(43)【公開日】2017年1月19日
(54)【発明の名称】締め付け具
(51)【国際特許分類】
   F16B 31/02 20060101AFI20161222BHJP
   F16B 35/06 20060101ALI20161222BHJP
【FI】
   F16B31/02 H
   F16B31/02 Z
   F16B35/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-132659(P2015-132659)
(22)【出願日】2015年7月1日
【新規性喪失の例外の表示】申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】315010167
【氏名又は名称】ケーディークロート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 法章
(72)【発明者】
【氏名】日下部 元一
(72)【発明者】
【氏名】鳥山 武利
(57)【要約】
【課題】製造がより簡単で、且つ、締め付け時のボルトの進行方向に薄い締め付け具を提供する。
【解決手段】上板10、ローレット11、ローレットストッパ12及び底部材13の各部材を、平板状の部材で構成し、且つZ軸方向のサイズが比較的小さい構造にすることで、製造がより簡単で、且つ、Z軸方向において薄い締め付け具1を提供することが可能となる。さらに、ボルト14のねじ頭を収容するための穴123及び穴102をローレットストッパ12及び上板10に設けているため、これらの穴を設けない場合と比較すると、ボルト14がねじ込まれる方向(Z軸方向)において締め付け具1のサイズがより小さくなる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルトと、
前記ボルトが固定される底部材と、
中空筒状のローレット部と、
前記ローレット部に収容される平板状のローレットストッパと、
前記ローレットストッパと前記底部材とを固定する固定具とを備え、
前記ローレットストッパには、外周面から径方向の外側に向かって立ち上がって前記ボルトの締め付け方向へ延び、さらに前記径方向の外側に向かって屈曲する複数の弾性羽根が設けられ、
前記ローレットストッパの内周面には、前記弾性羽根の屈曲部に接触する凹凸部が設けられ、
前記ローレット部を前記ボルトの締め付け方向へ回転させると、前記屈曲部が前記凹凸部に接触して、前記ローレット部とともに、前記ローレットストッパ、前記底部材及び前記ボルトが前記締め付け方向に回転し、
前記ボルトの締め付けトルクが所定のトルクを超えると、前記弾性羽根が前記径方向の内側に向かって弾性変形することにより、前記ローレット部が前記ローレットストッパに対して空回りする
ことを特徴とする締め付け具。
【請求項2】
前記ボルトが前記底部材に設けられたねじ穴に締め付けられるとともに、前記底部材に設けられたねじ穴に締め付けられた止めねじが前記ボルトの外周面に接触することによって、前記ボルトが前記底部材に固定されており、
前記ローレット部を前記締め付け方向の逆方向へ回転させると、前記屈曲部が前記凹凸部に接触して、前記ローレット部とともに、前記ローレットストッパ、前記底部材及び前記ボルトが前記締め付け方向の逆方向に回転する
ことを特徴とする請求項1記載の前記締め付け具。
【請求項3】
前記ローレットストッパには、前記ボルトのねじ頭を収容するための穴が設けられている
ことを特徴とする請求項1又は2記載の締め付け具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一定のトルクによる締め付けに適した締め付け具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、前後方向へ延びる筒状部の径方向における中央部に回転不能にセットされたねじ部材及び筒状部の外周面から径方向の外側に向かって立ち上がってねじ部材の締め付け方向へ延びる複数の弾性羽根からなるインナー回転子と、前後方向において分離可能に組み付けられた前方回転子と後方回転子とに二分されたアウター回転子とを備えたノブが開示されている。この構成において、ノブを回転させてねじ部材を締め付けるトルクが大きくなると、弾性羽根が弾性変形し、アウター回転子がインナー回転子に対して空回りする。そのときアウター回転子は前方向へ移動させることができ、アウター回転子の溝部がルーフキャリヤのフック部材隆起部に嵌合してノブを回転不能にし、ねじ部材が緩むことを防ぐ。また、アウター回転子における第2作用部は、弾性羽根の前方に位置してノブが後方向へ移動することを防ぐ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−91381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のノブは、インナー回転子及びアウター回転子の形状が複雑であるため(より具体的には、インナー回転子及びアウター回転子における、締め付け時のノブの進行方向に垂直な断面形状が、その進行方向の各位置において異なっているため)、これらの部材を成型するための製造コストが高くなるという問題がある。また、インナー回転子及びアウター回転子の、締め付け時のノブの進行方向におけるサイズが比較的大きいため、ノブが配置される空間の大きさに制約がある場合には使用しづらいという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、製造がより簡単で、且つ、締め付け時のボルトの進行方向に薄い締め付け具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、ボルトと、前記ボルトが固定される底部材と、中空筒状のローレット部と、前記ローレット部に収容される平板状のローレットストッパと、前記ローレットストッパと前記底部材とを固定する固定具とを備え、前記ローレットストッパには、外周面から径方向の外側に向かって立ち上がって前記ボルトの締め付け方向へ延び、さらに前記径方向の外側に向かって屈曲する複数の弾性羽根が設けられ、前記ローレットストッパの内周面には、前記弾性羽根の屈曲部に接触する凹凸部が設けられ、前記ローレット部を前記ボルトの締め付け方向へ回転させると、前記屈曲部が前記凹凸部に接触して、前記ローレット部とともに、前記ローレットストッパ、前記底部材及び前記ボルトが前記締め付け方向に回転し、前記ボルトの締め付けトルクが所定のトルクを超えると、前記弾性羽根が前記径方向の内側に向かって弾性変形することにより、前記ローレット部が前記ローレットストッパに対して空回りすることを特徴とする締め付け具を提供する。
【0007】
上記締め付け具において、前記ボルトが前記底部材に設けられたねじ穴に締め付けられるとともに、前記底部材に設けられたねじ穴に締め付けられた止めねじが前記ボルトの外周面に接触することによって、前記ボルトが前記底部材に固定されており、前記ローレット部を前記締め付け方向の逆方向へ回転させると、前記屈曲部が前記凹凸部に接触して、前記ローレット部とともに、前記ローレットストッパ、前記底部材及び前記ボルトが前記締め付け方向の逆方向に回転するようにしてもよい。
【0008】
さらに、前記ローレットストッパには、前記ボルトのねじ頭を収容するための穴が設けられていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る締め付け具の分解斜視図。
図2図1のA−A線断面図。
図3】締め付け具を使用するときの例を説明する斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施形態]
[締め付け具の構造]
図1は、実施形態に係る締め付け具1の分解斜視図であり、図2図1のA−A線断面図である。締め付け具1は、上板10と、ローレット部11と、ローレットストッパ12と、底部材13と、ボルト14と、皿ねじ15と、ワッシャー16と、止めねじ17とを備えている。図に示すXYZ直交座標系のZ軸の負方向は、ボルト14の締め付けによって締め付け具1が進行する方向であり、Z軸の正方向は、その締め付けを解く(ボルト14を緩める)ときに締め付け具1が進行する方向である。
【0011】
上板10は、円形の平板部材であり、例えば樹脂成型によって製造されている。上板10には、固定具としての4本の皿ねじ15を挿入するためにZ軸方向に貫通した4つの穴115と、ボルト14のねじ頭を収容するためにZ軸方向に貫通した1つの穴116が設けられている。
【0012】
ローレット部11は、Z軸方向を軸方向として、Z軸の正方向及び負方向が開放した中空の筒状部材であり、例えば樹脂成型によって製造されている。ローレット部11のZ軸正方向の開放部位は、上板10が嵌めこまれるサイズ及び形状であり、Z軸負方向の開放部位は、底部材13が嵌めこまれるサイズ及び形状である。ローレット部11の外周部分は、いわゆるローレット加工が施されているが、この加工は、滑り止めのための加工であればどのようなものでもよい。ローレット部11の内周部分は、ローレットストッパ12の弾性羽根121と接触して噛み合う凹凸の形状となっている。この凹凸形状は、図2に示すように、Z軸方向に延びる凸部(山)111と凹部(谷)112が周方向に等間隔で繰り返し設けられた形状である。Z軸方向に平行な方向でローレット部11を見て、凹部112から時計回り方向に凸部111に向う傾斜面の傾斜角度と、凸部111から時計回り方向に凹部112に向う傾斜面の傾斜角度とを比較すると、前者は急峻であり後者はなだらかである。
【0013】
ローレットストッパ12は、ほぼ円形の平板部材の外周面に複数(ここでは4つ)の弾性羽根121が形成されている部材であり、例えば樹脂成型によって製造されている。ローレットストッパ12には、4本の皿ねじ15をそれぞれ挿入するためにZ軸方向に貫通した4つの穴122と、ボルト14のねじ頭を収容するためにZ軸方向に貫通した1つの穴123が設けられている。弾性羽根121は、ローレットストッパ12の周方向に等間隔で繰り返し形成されている。図2に示すように、それぞれの弾性羽根121は、ローレットストッパ12の外周面から径方向の外側に向かって立ち上がってから、時計周り方向(つまりボルト14の締め付け方向)へ所定長だけ延び、さらにその先端が径方向の外側に向かって屈曲している。この屈曲した部位を屈曲部124という。Z軸方向に平行な方向でローレットストッパ12を見て、屈曲部124の時計回り方向側にある斜面の傾斜角度と、反時計回り側にある斜面の傾斜角度とを比較すると、前者は急峻であり後者はなだらかである。また、屈曲部124に対して荷重がかかっていない状態において、その先端とローレット部11の凹部112との間には所定の空隙が設けられている。
【0014】
底部材13は、Z軸方向を軸方向とする内実の円柱部材であり、例えば樹脂成型によって製造されている。底部材13の上面には、ボルト14に対応したねじ山が形成された1つのねじ穴131と、4本の皿ねじ15のそれぞれに対応したねじ山が形成された4つのねじ穴132とが設けられている。底部材13の側面には、止めねじ17に対応したねじ山が形成された2つのねじ穴133が設けられている。ねじ穴131及びねじ穴132はZ軸方向に延び、ねじ穴133はZ軸方向に垂直な方向に延びている。ねじ穴133は、底部材13の側面からねじ穴131の内周面へと貫通している。
【0015】
[締め付け具の組み立て]
締め付け具1は、次のようにして組み立てられる。まず、利用者は、ボルト14を底部材13のねじ穴133にねじ込んで固定し、さらに、止めねじ17を底部材13のねじ穴132に入れ、その先端がボルト14のねじ山の外周面に強く接触するまで回転させて固定する。次に、利用者は、底部材13をローレット部11のZ軸負方向の開放部位に挿入する。次に、利用者は、ローレットストッパ12の穴123にボルト14のねじ頭を挿入するとともに、ローレットストッパ12の穴122と底部材13のねじ穴132とがZ軸方向に一直線に並ぶように、ローレットストッパ12を適宜回転させる。このとき、利用者は、ローレットストッパ12の弾性羽根121の屈曲部124先端がローレット部11の凹部112に位置するように、ローレット部11を適宜回転させる。
【0016】
そして、利用者は、ローレットストッパ12の穴122の各位置にそれぞれワッシャー16を挟み込みこむようにして、ローレットストッパ12と上板10とを重ねる。このとき、利用者は、ローレットストッパ12の穴122及び底部材13のねじ穴132と、上板10の穴101とがZ軸方向に一直線に並ぶように、上板10を適宜回転させる。最後に、利用者は、皿ねじ15を穴101及び穴122に挿入し、底部材13のねじ穴132にねじ込んで固定する。
【0017】
これにより、ボルト14、底部材13、ローレットストッパ12及び上板10は、固定具としての皿ねじ15によってお互いに固定され、ローレットストッパ12はローレット部11に収容された状態となる。ローレット部11は、底部材13及び上板10との間でローレットストッパ12と噛み合った状態で連結されているが、弾性羽根121の屈曲部124と、ローレット部11の凹部112との間に設けられた遊びの分だけ動くようになっている。
【0018】
[締め付け具の使用]
締め付け具1は次のようにして用いられる。まず、ボルト14を締め付けるときの締め付け具1の使用の仕方を説明する。図3は、締め付け具を使用するときの例を説明する斜視図である。締め付け具1のボルト14は、一方の対象物2を貫通する穴21に挿入され、さらに、他方の対象物3に設けられたねじ穴31にねじ込まれて固定される。このとき、矢印方向Cは、ボルト14の締め付け方向であり、図2における時計回り方向である。矢印方向Cの逆方向が、ボルト14を緩める方向であり、図2における反時計回り方向でもある。この図3の例において、さらに締め付け具1のZ軸正方向の位置には何らかの部材が配置されようになっており、このため、締め付け具1のZ軸方向のサイズを極力小さくする必要がある。
【0019】
利用者がボルト14をねじ穴31に差し込み、ローレット部11を握って矢印方向C(図3の時計周り方向であって、ボルト14の締め付け方向)へ回転させると、ローレット部11における凸部111の時計周り方向側の傾斜面が、弾性羽根121の屈曲部124の反時計回り方向側の傾斜面に接触して、時計回り方向に押すことにより(図2参照)、ローレットストッパ12、上板10、底部材13及びボルト14が矢印方向Cへ回転させられる。
【0020】
さらに締め付け具1を回転させることによってボルト14に所定の値のトルクがかかる時点になると、ローレット部11から弾性羽根121に加えられる力によって、弾性羽根121が径方向の内側へ向かって弾性変形する。さらにその力が大きくなって或る閾値を超えると、弾性羽根121の屈曲部124の先端がローレット部11における凸部111を乗り越え、ローレット部11がローレットストッパ12に対して空回りし始める。
【0021】
このような状態になると、ボルト14はこれ以上強い力で締め付けられるということがなくなり、弾性羽根121を所要量だけ弾性変形させることができる所定の値のトルクで締め付けられた状態になる。すなわち、ここでいう所定の値とは、弾性羽根121の屈曲部124の先端がローレット部11における凸部111を乗り越えることができるようになるまで弾性羽根121を変形させるのに要するトルクの大きさである。
【0022】
次に、ボルト14を緩めるときの締め付け具1の使用の仕方を説明する。利用者がローレット部11を握って矢印方向Cの逆方向(図2の反時計回り方向)へ回転させると、弾性羽根121の屈曲部124の時計回り方向側の傾斜面が、ローレット部11における凸部111の半時計周り方向側の傾斜面に接触して押すことにより(図2参照)、ローレットストッパ12、上板10、底部材13及びボルト14が反時計回り方向へ回転させられる。このとき、止めねじ17がボルト14に強く接触しているので、ボルト14が底部材13に対して反時計回り方向に回転して、底部材13に対して緩められるということにはならない。
【0023】
また、図2において説明したとおり、Z軸方向に平行な方向でローレット部11を見た場合において、凹部112から時計回り方向に凸部111に向う傾斜面の傾斜角度が急峻で、凸部111から時計回り方向に凹部112に向う傾斜面の傾斜角度がなだらかである。また、Z軸方向に平行な方向でローレットストッパ12を見た場合において、屈曲部124の時計回り方向側にある斜面の傾斜角度が急峻で、反時計回り側にある斜面の傾斜角度がなだらかである。このため、ボルト14を締め付ける場合に弾性羽根121の屈曲部124の先端がローレット部11における凸部111を乗り越えるときのトルクよりも、ボルトを緩める場合に弾性羽根121の屈曲部124の先端がローレット部11における凸部111を乗り越えるときのトルクが大きい。よって、ボルト14を締め付けるとき以上のトルクでそのボルト14を緩めることができる。
【0024】
このように、本実施形態によれば、上板10、ローレット部11、ローレットストッパ12及び底部材13の各部材を、平板状の部材で構成し、且つZ軸方向のサイズが比較的小さい構造にすることで、製造がより簡単で、且つ、Z軸方向において薄い締め付け具1を提供することが可能となる。さらに、ボルト14のねじ頭を収容するための穴123及び穴102をローレットストッパ12及び上板10に設けているため、これらの穴を設けない場合と比較すると、ボルト14がねじ込まれる方向(Z軸方向)において締め付け具1のサイズがより小さくなる。
【0025】
なお、本発明は上記実施形態の構成に限定されない。例えば上板10とローレットストッパ12が別々の構成ではなく、一体的に構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 締め付け具、2,3 対象物、21 穴、31 ねじ穴、10 上板、101,102 穴、11 ローレット部、12 ローレットストッパ、121 弾性羽根、122,123 穴、124 屈曲部、13 底部材、131,132,133 ねじ穴、14 ボルト、15 皿ねじ、16 ワッシャー、17 止めねじ
図1
図2
図3