【課題】脂環式エポキシ化合物を使用するカチオン重合性の異方性導電フィルムに対し、今までと変わらない硬化温度と接続信頼性とを担保しながらも、今まで以上に優れた保管ライフ性を実現できるようにする。
【解決手段】成膜用成分とカチオン重合性成分とを含有するバインダ組成物と、カチオン重合開始剤と、導電粒子とを含有する異方性導電フィルムは、カチオン重合開始剤として、第4級アンモニウム塩系熱酸発生剤を使用し、カチオン重合成分として、脂環式エポキシ化合物と低極性オキセタン化合物とを含有している。
第4級アンモニウム塩系熱酸発生剤が、第4級アンモニウムカチオンと、6フッ化アンチモン酸アニオン、6フッ化リン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、パーフルオロブタンスルホン酸アニオン、ジノニルナフタレンスルホン酸アニオン、ジノニルナフタレンスルホン酸アニオン、p−トルエンスルホン酸アニオン、ドデシルベンゼンスルホン酸アニオン、またはテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンとの塩である請求項1〜3のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
脂環式エポキシ化合物が、ジグリシジルヘキサヒドロビスフェノールA又はジエポキシビシクロヘキシルであり、低極性オキセタン化合物が、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン又は4,4′−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニルである請求項1〜5のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
示差走査熱量計で測定した反応ピークの反応開始温度が60〜80℃であり、反応終了温度が155〜185℃である請求項1〜7のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一例を、詳細に説明する。
【0011】
<異方性導電フィルム>
本発明の異方性導電フィルムは、成膜用成分とカチオン重合性成分とを含有するバインダ組成物と、カチオン重合開始剤と、導電粒子とを含有している。
【0012】
(バインダ組成物)
本発明において、導電粒子を含有保持するバインダ組成物は、成膜用成分とカチオン重合性成分とを含有している。
【0013】
(成膜用成分)
成膜用成分は、異方性導電フィルムをフィルム化するために使用される成分であり、膜形成能を有する成分である。このような成膜用成分としては、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂等を挙げることができ、これらの2種以上を併用することができる。これらの中でも、製膜性、加工性、接続信頼性の観点から、フェノキシ樹脂を好ましく使用することができる。
【0014】
バインダ組成物中の成膜用成分の配合割合は、好ましくは10〜70質量%、より好ましくは20〜50質量%である。この範囲であれば、十分なフィルム形成能を発揮することができる。
【0015】
(カチオン重合性成分)
カチオン重合性成分は、異方性導電フィルムを硬化させる成分であり、脂環式エポキシ化合物と低極性オキセタン化合物とを含有している。バインダ組成物中におけるカチオン重合性成分の配合量は、好ましくは10〜80質量%、より好ましくは20〜60質量%である。この範囲であれば、より高い硬化速度を有するバインダ組成物を与えることができる。
【0016】
(脂環式エポキシ化合物)
脂環式エポキシ化合物を使用する理由は、汎用のグリシジルエーテル型エポキシ化合物よりも高いその反応性を利用して、異方性導電フィルムに良好な低温速硬化性を付与するためである。このような脂環式エポキシ化合物としては、分子内に2つ以上のエポキシ基を有するものが好ましく挙げられる。これらは液状であっても、固体状であってもよい。具体的には、ジグリシジルヘキサヒドロビスフェノールA、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3′,4′−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ジエポキシビシクロヘキシル等を挙げることができる。中でも、硬化物の光透過性を確保でき、速硬化性にも優れている点から、ジグリシジルヘキサヒドロビスフェノールA、中でもジエポキシビシクロヘキシルを好ましく使用することができる。
【0017】
(低極性オキセタン化合物)
本発明においては、脂環式エポキシ化合物に低極性オキセタン化合物を併用する。低極性オキセタン化合物は、双極子モーメントが3.0d以下のオキセタン化合物であり、表面張力が比較的低く、異方性導電フィルムの膜に良好なレベリング性を付与することができ、結果的に異方性導電フィルムの保管ライフ性を向上させることが可能となる。他方、低極性オキセタン化合物は、脂環式エポキシ化合物に由来する異方性導電フィルムの示差走査熱量計(DSC)で測定される反応開始温度と反応終了温度とを上昇させる作用を有する。このような低極性オキセタン化合物としては、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル、4,4′−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル等が挙げられる。なかでも、表面張力が低く、濡れ性に優れることから、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、特に4,4′−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニルが好ましい。
【0018】
脂環式エポキシ化合物と低極性オキセタン化合物との配合割合は、質量基準で好ましくは25:75〜60:40、より好ましくは45:55〜60:40、特に好ましくは50:50〜55:45である。この範囲よりも低極性オキセタン化合物の配合量が増加すると、反応開始温度と反応終了温度とを上昇させる傾向があり、逆に減少すると保管ライフが低下する傾向がある。従って、脂環式エポキシ化合物と低極性オキセタン化合物との配合割合を調整することにより、異方性導電フィルムの反応開始温度と反応終了温度とをコントロールすることが可能となり、更に、反応時の昇温速度等を調整することにより、反応時間をコントロールすることも可能となる。
【0019】
バインダ組成物は、必要に応じ、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、それらの変性エポキシ樹脂等の他のエポキシ樹脂、シランカップリング剤、充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤(顔料、染料)、有機溶剤、イオンキャッチャー剤などを含有することができる。また、必要に応じて、(メタ)アクリレート化合物とラジカル重合開始剤とを含有することができる。ここで、(メタ)アクリレート化合物としては、従来公知の(メタ)アクリレートモノマーを使用することができる。例えば、単官能(メタ)アクリレート系モノマー、二官能以上の多官能(メタ)アクリレート系モノマーを使用することができる。ここで、(メタ)アクリレートには、アクリレートとメタクリレートとが包含される。また、ラジカル重合開始剤としては、有機過酸化物、アゾビスブリトニトリル等の公知のラジカル重合開始剤を含有することができる。
【0020】
(導電粒子)
本発明の異方性導電フィルムは、異方性導電接続を可能とするために、バインダ組成物中に導電粒子を含有する。導電粒子としては、従来公知の異方性導電フィルムに用いられているものの中から適宜選択して使用することができる。例えばニッケル、コバルト、銀、銅、金、パラジウムなどの金属粒子、ハンダなどの合金粒子、金属被覆樹脂粒子などが挙げられる。2種以上を併用することもできる。
【0021】
導電粒子の平均粒径としては、配線高さのばらつきに対応できるようにし、また、導通抵抗の上昇を抑制し、且つショートの発生を抑制するために、好ましくは2.5μm以上30μm以下、より好ましくは3μm以上9μm以下である。導電粒子の粒径は、一般的な粒度分布測定装置により測定することができ、また、その平均粒径も粒度分布測定装置を用いて求めることができる。
【0022】
なお、導電粒子が金属被覆樹脂粒子である場合、樹脂コア粒子の粒子硬さ(20%K値;圧縮弾性変形特性K
20)は、良好な接続信頼性を得るために、好ましくは100〜1000kgf/mm
2、より好ましくは200から500kgf/mm
2である。圧縮弾性変形特性K
20は、例えば、微小圧縮試験機(MCT−W201、(株)島津製作所製)を使用して測定温度20℃で測定することができる。
【0023】
導電粒子の異方性導電フィルム中の存在量は、導電粒子捕捉効率の低下を抑制し、且つショートの発生を抑制するために、好ましくは1平方mm当たり50個以上100000個以下、より好ましくは200個以上70000個以下である。この存在量の測定は材料の薄膜を光学顕微鏡で観察することにより行うことができる。なお、異方性導電接続前において、異方性導電フィルム中の導電粒子がバインダ組成物中に存在しているために光学顕微鏡で観察し難い場合がある。そのような場合には、異方性導電接続後の異方性導電フィルムを観察してもよい。この場合には、接続前後のフィルム厚変化を考慮して存在量を割り出すことができる。
【0024】
なお、導電粒子の異方性導電フィルム中の存在量は質量基準で表すこともができる。この場合、その存在量は、異方性導電フィルムの全質量を100質量部としたときに、その100質量部中に好ましくは1質量部以上30質量部以下、より好ましくは3質量部以上10質量部以下となる量である。
【0025】
(カチオン重合開始剤)
本発明の異方性導電フィルムは、カチオン重合開始剤として、スルホニウム塩系熱酸発生剤ではなく第4級アンモニウム塩系熱酸発生剤を含有する。保管ライフ性を向上させるためである。このような第4級アンモニウム塩系熱酸発生剤としては、第4級アンモニウムカチオンと、6フッ化アンチモン酸アニオン、6フッ化リン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、パーフルオロブタンスルホン酸アニオン、ジノニルナフタレンスルホン酸アニオン、ジノニルナフタレンスルホン酸アニオン、p−トルエンスルホン酸アニオン、ドデシルベンゼンスルホン酸アニオン、またはテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンとの塩等を挙げることができる。また、第4級アンモニウムカチオンとしては、NR1R2R3R4
+で表されるカチオンを挙げることができる。ここで、R1、R2、R3及びR4は、直鎖、分岐鎖または環状の炭素数1〜12のアルキル基またはアリール基であり、それぞれ水酸基、ハロゲン、アルコキシル基、アミノ基、エステル基等を有していてもよい。
【0026】
第4級アンモニウム塩系熱酸発生剤の具体例としては、King Industries,Inc.製造のCXC−1612、CXC−1733、CXC−1738、TAG−2678、CXC−1614、TAG−2689、TAG−2690、TAG−2700、CXC−1802−60、CXC−1821等が挙げられる。これらは、楠本化成(株)から入手可能である。
【0027】
本発明の異方性導電フィルムが、フィルムである場合、その層厚は、好ましくは3〜50μm、より好ましくは5〜20μmである。
【0028】
(異方性導電フィルムの製造)
本発明の異方性導電フィルムは、上述したバインダ組成物に導電粒子とカチオン重合開始剤とを、トルエン等の有機溶媒に溶解して塗料とし、その塗料を公知のフィルム化手法を利用してフィルム化することにより製造することができる。
【0029】
なお、本発明の異方性導電フィルムは、単層であってもよいが、異方性導電接続時の粒子捕捉性を低下させることなく、導電粒子の使用量を減じて製造コストを減少させ、且つアンダーフィル充填操作を省くために、絶縁性樹脂層を積層させてもよい。その場合、本発明の異方性導電フィルムは、導電粒子含有層/絶縁性樹脂層の2層構成となる。このような絶縁性樹脂層は、基本的には異方性導電フィルムで使用したバインダ組成物に、導電粒子を含有させることなくカチオン重合開始剤を配合させた組成物から形成することができる。
【0030】
本発明の異方性導電フィルムは、反応速度コントロールとの観点から、示差走査熱量計で測定した反応ピークの反応開始温度を60〜80℃に調整し、また、反応終了温度を155〜185℃に調整することが好ましい。これらの調整は、脂環式エポキシ化合物と低極性オキセタン化合物との配合割合を調整すること等により行うことができる。
【0031】
<接続構造体>
本発明の異方性導電フィルムは、ICチップ、ICモジュール、FPCなどの第1電子部品と、プラスチック基板、ガラス基板、リジッド基板、セラミック基板、FPCなどの第2電子部品とを異方性導電接続する際に好ましく適用することができる。このような本発明の異方性導電フィルムで、第1電子部品と第2電子部品とが異方性導電接続されている接続構造体も本発明の一部である。なお、異方性導電フィルムを用いた電子部品の接続方法としては、公知の手法を利用することができる。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0033】
実施例1
(導電粒子含有層の形成)
フェノキシ樹脂(YP−50、新日鉄住金化学(株))60質量部、脂環式エポキシ化合物としてジエポキシビシクロヘキシル(セロキサイド8000、(株)ダイセル)10質量部、低極性オキセタン化合物(OXBP、宇部興産(株))20質量部、熱カチオン重合開始剤(第4級アンモニウム塩系熱酸発生剤、商品名CXC−1612、楠本化成(株))2質量部、および平均粒径3μmの導電性粒子(Ni/Auメッキ樹脂粒子、AUL704、積水化学工業(株))50質量部を、トルエンに添加し、固形分が50質量%となるよう混合液を調製した。
【0034】
得られた混合液を、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート剥離フィルム(PET剥離フィルム)上に、乾燥厚が6μmとなるよう塗布し、60℃のオーブン中で5分間乾燥することにより、導電粒子含有層を形成した。
【0035】
(絶縁性樹脂層の形成)
導電粒子を用いない以外は、導電粒子含有層の形成の際に使用した原材料と同じ原材料をトルエンに添加し、固形分が50質量%となるよう混合液を調製した。
【0036】
得られた混合液を、厚さ50μmのPET剥離フィルム上に、乾燥厚が12μmとなるよう塗布し、60℃のオーブン中で5分間乾燥することにより、絶縁性樹脂層を形成した。
【0037】
(異方性導電フィルムの作成)
導電粒子含有層に絶縁性樹脂層を、60℃、5MPaでラミネー卜することにより、厚さ50μmの一対のPET剥離フィルムで挟持された異方性導電フィルムを得た。
【0038】
実施例2〜4
導電粒子含有層および絶縁性樹脂層における脂環式エポキシ化合物(セロキサイド8000、(株)ダイセル)と低極性オキセタン化合物として4,4′−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル(0XBP、宇部興産(株))との配合量(比率)を、表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様に異方性導電フィルムを得た。
【0039】
比較例1〜4
導電粒子含有層および絶縁性樹脂層における熱カチオン重合開始剤を、表1に示すようにスルホニウム塩系熱酸発生剤(SI−60L、三新化学工業(株))に代えた以外は、実施例1〜4と同様に異方性導電フィルムを作成した。
【0040】
実施例5〜13、比較例5
導電粒子含有層及び絶縁性樹脂層における脂環式エポキシ化合物(セロキサイド8000、(株)ダイセル)と低極性オキセタン化合物(0XBP、宇部興産(株))との配合量(比率)を、表1に示すよう変更した以外は、実施例1と同様に異方性導電フィルムを作成した。
【0041】
<<評価>>
各実施例及び比較例で得られた異方性導電フィルムについて、以下に説明するように「保管ライフ特性」、「硬化温度」、「密着特性」及び「反応時間」を試験もしくは測定し、評価した。
【0042】
<保管ライフ特性>
一対のPET剥離フィルムに挟持されている異方性導電フィルムを、湿度40%、温度25℃又は30℃に設定されている恒温恒湿室に投入し、投入後24時間毎にサンプリングを行い、以下の仮張り評価および圧着評価を実施し、それらの評価結果から総合的に保管ライフ特性を評価した。得られた結果を表1に示す。
【0043】
(仮張り評価)
異方性導電フィルムの導電粒子含有層側のPET剥離フィルムを剥離し、導電粒子含有層側から異方性導電フィルムを素ガラスに貼り付け、素ガラスと異方性導電フィルムとの積層体を作製した。この積層体をその素ガラス側が45℃に設定したホットプレートに接触するように載置し、異方性導電フィルム側から手で圧力をかけ、その後、室温にまで冷却した。冷却後、積層体から絶縁性樹脂層側のPET剥離フィルムを剥がし、素ガラスから異方性導電フィルムが剥がれることなく、PET剥離フィルムだけが剥がれるか否かを確認した。
【0044】
(圧着評価)
テスト用ICチップとテスト用基板との間に、ICチップ側に絶縁性樹脂層が配置されるよう異方性導電フィルムを挟み、加熱加圧(120℃、60MPa、5秒)し、評価用接続物を作成した。作成した接続物の圧痕状態を確認し、圧痕が薄くならず、消失せずに残存するかを確認した。
【0045】
(保管ライフ特性評価)
仮張り評価において、素ガラスから異方性導電フィルムが剥がれた時点を保管ライフとした。また、仮張り評価において、素ガラスから異方性導電フィルムが剥がれなかった場合でも、圧着評価において、圧痕が薄くなった(消失した)時点を保管ライフとした。
【0046】
<硬化温度>
テスト用ICチップとテスト用基板との間に、ICチップ側に絶縁性樹脂層が配置されるよう異方性導電フィルムを挟み、加熱加圧(80℃、90℃、100℃、110℃、又は120℃、60MPa、5秒)し、評価用接続物を得た。この接続物における異方性導電フィルムの反応率を以下に説明するように測定し、その測定結果から硬化温度を決定した。得られた結果を表1に示す。
【0047】
(反応率測定)
評価用接続物のICチップを手で摘まんで剥がし、硬化した異方性導電フィルムを露出させ、異方性導電フィルムをサンプリングした。得られたサンプルを、濃度0.1g/mLとなるようアセトニトリルに溶解した。別途、硬化前の異方性導電フィルムを同様の濃度となるようアセトニトリルに溶解し、HPLC−MS(WaterS社製)を用いて、以下の条件にて各モノマーのピーク強度を確認した。硬化後のピーク強度の減少量より各温度での反応率を求め、反応率80%以上となる温度を、硬化温度とした。
【0048】
溶媒:水/アセ卜ニトリル混合溶液(90/10)60質量部に、アセトニトリル40質量部を混合した混合溶媒
流量:0.4mL/min
カラム:10cm、40℃C
注入量:5μL
解析波:210−410nm
【0049】
<密着特性>
テスト用ICチップとテスト用基板との間に、ICチップ側に絶縁性樹脂層が配置されるよう異方性導電フィルムを挟み、加熱加圧(120℃、60MPa、5秒)し、評価用接続物を得た。この接続物に対して、エタック社製、型式EHS−411Mを用いて、プレッシャークッカーテスト(PCT)を実施した。具体的には、得られた評価用接続物を、121℃、2atm、飽和水蒸気雰囲気という条件に設定された恒温恒湿槽に接続物を投入し、24時間毎に以下の密着評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0050】
(密着評価)
PCT試験に投入した接続物の外観確認を行い、異方性導電フィルムとICチップもしく基板との層間で剥離が生じているかを目視観察した。
ランク 基準
〇: IC圧着後、48時間のPCTでも剥離が観察されない場合
△: IC圧着後、24時間のPCTでは剥離が観察されないが、48時間のPCT試験では剥離が観察された場合
×: IC圧着後、PCTを行う前にすでに剥離が観察されていたか、24時間のPCTで剥離が観察された場合
【0051】
<反応時間>
得られた異方性導電フィルムから切り出した約5mgのサンプルを、アルミPAN(TA Instruments Inc.)に格納し、それをDSC測定装置(Q2000,TA Instruments Inc.)にセットし、30℃から250℃まで、10℃/分の昇温速度で示差走査熱量計(DSC)測定を行った。得られたDSCチャートから、発熱ピークが立ち上がった時点の温度を反応開始温度として読み取り、発熱ピークがベースラインに変化した時点の温度を反応終了温度として読み取った。また、反応時間を以下の式に従って算出した。得られた結果を表1に示す。
【0052】
【数1】
【0053】
【表1】
【0054】
<<評価結果の考察>>
表1の結果(実施例1と比較例1との対比、実施例2と比較例2との対比、実施例3と比較例3との対比、実施例4と比較例4との対比)から、スルホニウム塩系熱酸発生剤に代えて第4級アンモニウム塩系熱酸発生剤を使用すると、脂環式エポキシ化合物と低極性オキセタン化合物との間の配合比に変動があっても、硬化温度や接続信頼性の評価指標となる密着特性を変化させずに保管ライフを大きく向上させ得ることがわかる。
【0055】
また、実施例1、5〜7及び比較例5の対比から、脂環式エポキシ化合物に対して低極性オキセタン化合物の配合割合が増加するにつれ、保管ライフが向上する傾向があるが、相対的に脂環式エポキシ化合物の配合量が減少すると密着特性が低下する傾向があることがわかる。逆に、実施例8〜13の対比から、脂環式エポキシ化合物に対して低極性オキセタン化合物の配合割合が減少するにつれ、保管ライフが低下する傾向があることがわかる。
【0056】
なお、実施例1、実施例5〜13、比較例5において行ったDSC測定結果の対比から、低極性オキセタン化合物の配合量が増加すると、反応開始温度と反応終了温度とを上昇させる傾向があることが分かる。