特開2017-152356(P2017-152356A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東莞新能源科技有限公司の特許一覧 ▶ 寧徳新能源科技有限公司の特許一覧

<>
  • 特開2017152356-リチウムイオン電池の充電方法 図000012
  • 特開2017152356-リチウムイオン電池の充電方法 図000013
  • 特開2017152356-リチウムイオン電池の充電方法 図000014
  • 特開2017152356-リチウムイオン電池の充電方法 図000015
  • 特開2017152356-リチウムイオン電池の充電方法 図000016
  • 特開2017152356-リチウムイオン電池の充電方法 図000017
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-152356(P2017-152356A)
(43)【公開日】2017年8月31日
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池の充電方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/44 20060101AFI20170804BHJP
   H01M 10/42 20060101ALI20170804BHJP
   H01M 10/0525 20100101ALI20170804BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20170804BHJP
【FI】
   H01M10/44 A
   H01M10/42 P
   H01M10/0525
   H01M4/58
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-154038(P2016-154038)
(22)【出願日】2016年8月4日
(31)【優先権主張番号】201610099461.8
(32)【優先日】2016年2月23日
(33)【優先権主張国】CN
(71)【出願人】
【識別番号】514257398
【氏名又は名称】東莞新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Dongguan Amperex Technology Limited
(71)【出願人】
【識別番号】513054978
【氏名又は名称】寧徳新能源科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】駱福平
(72)【発明者】
【氏名】王昇威
(72)【発明者】
【氏名】高潮
(72)【発明者】
【氏名】鄭強
【テーマコード(参考)】
5H029
5H030
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ05
5H029AK02
5H029AL07
5H029AL08
5H029AM02
5H029CJ16
5H029HJ02
5H029HJ14
5H029HJ17
5H029HJ18
5H030AA06
5H030AA10
5H030AS18
5H030AS20
5H030BB02
5H030BB03
5H050AA07
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA15
5H050CB02
5H050HA14
5H050HA17
5H050HA18
5H050HA20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】リチウムイオン電池の陽極のリチウム析出を改善し、リチウムイオン電池の使用安全性能とサイクル寿命を向上させることができる充電方法を提供する。
【解決手段】以下のステップを有するリチウムイオン電池の充電方法であって、(1)選択された電池系の陽極にリチウムが析出しない最大の充電電流Iと陽極にリチウムが析出しない最低の陽極の電位を確定し、(2)Iより大きい定電流Iで充電し、充電時間はtであり、(3)Iより小さい定電流Iで放電し、放電時間はtであり、且つ、5≦t/t≦50であり、(4)電池のカットオフ電圧までステップ(2)〜(3)を繰り返し、その後、静置する。静置時間はtである。さらに、(5)カットオフ電圧まで電流Iで定電流充電し、その後、カットオフ電流Iまで定電圧充電する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン電池の充電方法であって、
(1)選択された電池系の陽極にリチウムが析出しない最大の充電電流Iと陽極にリチウムが析出しない最低の陽極の電位ηを確定し、
(2)Iより大きい定電流Iで充電し、充電時間はtであり、
(3)Iより小さい定電流Iで放電し、放電時間はtであり、且つ、5≦t/t≦50であり、
(4)電池のカットオフ電圧Vまでステップ(2)〜(3)を繰り返し、その後、静置し、静置時間はtであり、及び、
(5)カットオフ電圧Vまで電流Iで定電流充電し、その後、カットオフ電流Iまで定電圧充電するステップを備えることを特徴とするリチウムイオン電池の充電方法。
【請求項2】
前記ステップ(2)における定電流Iの電流値は0.7C以上3C以下であり、充電時間tは0.1s以上20s以下であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池の充電方法。
【請求項3】
前記ステップ(3)における定電流Iの電流値は0C以上0.2C以下であり、放電時間tは0.01s以上2s以下であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池の充電方法。
【請求項4】
前記ステップ(4)における静置時間tは1s以上10s以下であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池の充電方法。
【請求項5】
前記ステップ(5)における定電流Iの電流値は0.01C以上0.1C以下であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池の充電方法。
【請求項6】
前記カットオフ電圧Vは3.6V≦V<4.5Vを満たすことを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池の充電方法。
【請求項7】
前記電池系は陰極がLiCoO、LiFePO又はLiNiCoMnAl1−xのうちの一つ又は複数を採用し、但し、0≦x≦1であり、陽極が黒鉛、ハードカーボン又はメソカーボンマイクロビーズのうちの一つ又は複数を採用し、陽極にリチウムが析出しない最大の充電電流Iの電流値は0.5C以上2.0C以下であり、陽極にリチウムが析出しない最低の陽極の電位ηは−5mV以上−100mV以下であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のリチウムイオン電池の充電方法。
【請求項8】
前記リチウムイオン電池の充電方法は25±3℃において行うことを特徴とする請求項7に記載のリチウムイオン電池の充電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリチウムイオン電池の技術分野に関し、特に、リチウムイオン電池の陽極のリチウム析出を改善し、リチウムイオン電池の安全性能とサイクル寿命を向上させることができるリチウムイオン電池の充電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池のエネルギー密度は、20数年の発展を経って、著しく向上していたが、現在、リチウムイオン電池のエネルギーは、既にボトルネックになっている。限られたエネルギー密度の状況下でリチウムイオン電池の充電速度を高めるのは、使用者の体験を効果的に向上させることができるため、急速充電を実現できる高エネルギー密度のリチウムイオン電池は、将来の競争の中で目立つようになる。
【0003】
リチウムイオン電池は充電中に、陽極にリチウムが析出するように、陽極の電位がある過電位以下に低下し、且つ、一定の時間に継続する必要がある。この電位はいわば陽極においてリチウムが析出しない最低の陽極の電位となり、通常ηで表示する。従来のリチウムイオン電池の充電方法は、通常、一定の電位になるまで定電流で持続的に充電した後、該電位において定電圧で充電することを採用するが、このような充電方法は、リチウムイオン電極の陰極の電位を上昇させ続け、リチウムイオン電極の陽極の電位を低下させ続ける。陽極の電位が0V以下になった際、リチウムイオンは陽極の表面においてリチウムに還元して析出する。特に、低温度条件下で、リチウムイオン電池自身のイオンと電子の導電性能が低下するため、充電中に、分極の程度の激化を引き起こし、持続的に充電すると、分極がより顕著になり、リチウム析出になる可能性を増加させる。析出したリチウムデンドライトは、電極の表面に蓄積することになり、リチウムイオン電池の安全性を大きく脅かす。
【0004】
一つの電池系は、その安全充電区間は一定であり、即ち、陽極にリチウムが析出しない最大倍率が存在している。充電倍率が該最大倍率よりも高い場合、陽極はリチウムが析出することになり、リチウムイオン電池の安全性能と使用寿命に影響を与える。リチウムイオン電池の充電速度を向上させるために、充電方法の最適化によって、高倍率での陽極におけるリチウム析出の問題を改善することができ、これにより、その安全充電区間を拡大させ、陽極にリチウムが析出しない最大充電倍率を高めることができる。
【0005】
上述した問題を鑑みて、リチウムイオン電池の陽極におけるリチウム析出を改善し、リチウムイオン電池の安全充電倍率を高め、リチウムイオン電池の使用安全性能とサイクル寿命を向上させるために、リチウムイオン電池の充電方法を提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、リチウムイオン電池の陽極におけるリチウム析出を改善し、リチウムイオン電池の安全充電倍率を高め、リチウムイオン電池の使用安全性能とサイクル寿命を向上させることができるリチウムイオン電池の充電方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した本発明の目的を達成するため、本発明は、以下のステップを有するリチウムイオン電池の充電方法を提供する。
(1)選択された電池系の陽極にリチウムが析出しない最大の充電電流Iと陽極にリチウムが析出しない最低の陽極の電位ηを確定し、
(2)Iより大きい定電流Iで充電し、充電時間はtであり、
(3)Iより小さい定電流Iで放電し、放電時間はtであり、且つ、5≦t/t≦50であり、
(4)電池のカットオフ電圧Vまでステップ(2)〜(3)を繰り返し、その後、静置し、静置時間はtであり、及び、
(5)カットオフ電圧Vまで電流Iで定電流充電し、その後、カットオフ電流Iまで定電圧充電する。
【0008】
本発明のリチウムイオン電池の充電方法に対する一つの改良としては、前記ステップ(2)における定電流Iの電流値は0.7C以上3C以下であり、充電時間tは0.1s以上20s以下である。
【0009】
本発明のリチウムイオン電池の充電方法に対する一つの改良としては、前記ステップ(3)における定電流Iの電流値は0C以上0.2C以下であり、放電時間tは0.01s以上2s以下である。
【0010】
本発明のリチウムイオン電池の充電方法に対する一つの改良としては、前記ステップ(4)における静置時間tは1s以上10s以下である。
【0011】
本発明のリチウムイオン電池の充電方法に対する一つの改良としては、前記ステップ(5)における定電流Iの電流値は0.01C以上0.1C以下である。
【0012】
本発明のリチウムイオン電池の充電方法に対する一つの改良としては、前記カットオフ電圧Vは3.6V≦V<4.5Vを満たす。
【0013】
本発明のリチウムイオン電池の充電方法に対する一つの改良としては、前記電池系は陰極がLiCoO、LiFePO又はLiNiCoMnAl1−x(0≦x≦1、以下、NCX(X=Mn、Al)と略称する))のうちの一つ又は複数を採用し、陽極が黒鉛、ハードカーボン又はメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)のうちの一つ又は複数を採用し、陽極にリチウムが析出しない最大の充電電流Iの電流値は0.5C以上2.0C以下であり、陽極にリチウムが析出しない最低の陽極の電位ηは−5mV以上−100mV以下である。
【0014】
本発明のリチウムイオン電池の充電方法に対する一つの改良としては、前記リチウムイオン電池の充電方法は、25±3℃において行う。
【発明の効果】
【0015】
従来技術に比べて、本発明に係るリチウムイオン電池の充電方法は、以下のメリットを有する。幅の広い大電流パルスで充電し、そして幅の狭い小電流パルスで放電することにより、リチウムイオン電池が大電流で充電される場合の陽極がη電位以下にある時間を大幅に短縮し、大電流での充電による陽極表面のリチウムイオンの濃度の上昇を減少させ、陽極が低電位にある時間を短縮するため、陽極のリチウム析出による安全問題を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
以下、図面と実施例を参照しながら、本発明のリチウムイオン電池の充電方法について詳しく説明する。
図1】本発明に係るリチウムイオン電池の充電方法の充電方案を示す模式図である。
図2】LiCoOと黒鉛系を採用した本発明の実施例1において1.3Cで充電する場合のフル電池電圧と陽極の電位を示す模式図である。
図3】本発明に係る実施例1の充電を示す模式図である。
図4】比較例1の充電を示す模式図である。
図5】実施例1の充電時の陽極の電位を示すグラフである。
図6】比較例2の充電時の陽極の電位を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の発明目的、技術案及び技術効果をより明確にするために、図面および実施例を参照しながら、本発明についてさらに詳しく説明する。なお、本明細書に記載されている実施例は、本発明を説明するためのものにすぎない。本発明は、明細書に記載されている実施例に限定されない。
【0018】
実施例1〜実施例7、比較例1〜比較例2において採用された電池系は、LiCoOを陰極とし、黒鉛を陽極とし、さらに、セパレータ、電解液及びパッケージシェルを加えて、実装、化成及びエイジング等のプロセスにより、製造される。ここで、陰極は、96.7%LiCoO(陰極活物質として)+1.7%PVDF(接着剤として)+1.6%SP(導電剤として)が混合されることにより構成される。陽極は、98%人造黒鉛(陽極活物質として)+1.0%SBR(接着剤として)+1.0%CMC(増粘剤として)が混合されることにより構成される。セパレータはPP/PE/PP複合膜である。電解液は、有機溶剤(30%EC+30%PC+40%DEC)と1mol/L LiPFに加えて、さらに添加剤(0.5%VC、5%FEC、4%VEC)を添加することにより、構成される。
【0019】
25℃の場合、リチウムイオン電池は、満充電容量(SOC)が3400mAh(0.2C)であり、カットオフ電圧Vが4.4Vである。電池系は、25℃の温度において、陽極にリチウムが析出しない最大の充電電流は1.3Cであり、リチウムが析出しない最低の陽極の電位は−70mVである。
【0020】
実施例1
25℃の温度において、本発明のリチウムイオン電池の充電方法に従って電池を充電する。充電プロセスは、図3に示すように、具体的に以下のステップを備える。
(1)定電流2Cで充電し、充電時間は0.1sであり、
(2)定電流0.02Cで放電し、放電時間は0.01sであり、
(3)電池のカットオフ電圧4.4Vまでステップ(1)〜(2)を繰り返し、その後、静置し、静置時間は10sであり、
(4)電流1.3Cで定電流充電し、カットオフ電圧4.4Vに到達した後、カットオフ電流0.05Cまで定電圧で充電する。
【0021】
実施例2
25℃の温度において、本発明のリチウムイオン電池の充電方法に従って電池を充電し、具体的に以下のステップを備える。
(1)定電流1.5Cで充電し、充電時間は10sであり、
(2)定電流0.1Cで放電し、放電時間は0.2sであり、
(3)電池のカットオフ電圧4.4Vまでステップ(1)〜(2)を繰り返し、その後、静置し、静置時間は10sであり、
(4)電流1.3Cで定電流充電し、カットオフ電圧4.4Vに到達した後、カットオフ電流0.05Cまで定電圧で充電する。
【0022】
実施例3
25℃の温度において、本発明のリチウムイオン電池の充電方法に従って電池を充電し、具体的に以下のステップを備える。
(1)定電流1.5Cで充電し、充電時間は2sであり、
(2)定電流0.2Cで放電し、放電時間は0.05sであり、
(3)電池のカットオフ電圧4.4Vまでステップ(1)〜(2)を繰り返し、その後、静置し、静置時間は10sであり、
(4)電流1.3Cで定電流充電し、カットオフ電圧4.4Vに到達した後、カットオフ電流0.05Cまで定電圧で充電する。
【0023】
実施例4
25℃の温度において、本発明のリチウムイオン電池の充電方法に従って電池を充電し、具体的に以下のステップを備える。
(1)定電流1.5Cで充電し、充電時間は20sであり、
(2)定電流0.1Cで放電し、放電時間は2sであり、
(3)電池のカットオフ電圧4.4Vまでステップ(1)〜(2)を繰り返し、その後、静置し、静置時間は10sであり、
(4)電流1.3Cで定電流充電し、カットオフ電圧4.4Vに到達した後、カットオフ電流0.05Cまで定電圧で充電する。
【0024】
実施例5
25℃の温度において、本発明のリチウムイオン電池の充電方法に従って電池を充電し、具体的に以下のステップを備える。
(1)定電流2Cで充電し、充電時間は1sであり、
(2)定電流0.01Cで放電し、放電時間は0.1sであり、
(3)電池のカットオフ電圧4.4Vまでステップ(1)〜(2)を繰り返し、その後、静置し、静置時間は10sであり、
(4)電流1.3Cで定電流充電し、カットオフ電圧4.4Vに到達した後、カットオフ電流0.01Cまで定電圧で充電する。
【0025】
実施例6
25℃の温度において、本発明のリチウムイオン電池の充電方法に従って電池を充電し、具体的に以下のステップを備える。
(1)定電流2Cで充電し、充電時間は5sであり、
(2)定電流I=0で放電し、放電時間は1sであり、
(3)電池カットオフ電圧4.4Vまでステップ(1)〜(2)を繰り返し、その後、静置し、静置時間は1sであり、
(4)電流1.3Cで定電流充電し、カットオフ電圧4.4Vに到達した後、カットオフ電流0.1Cまで定電圧で充電する。
【0026】
実施例7
25℃の温度において、本発明のリチウムイオン電池の充電方法に従って電池を充電し、具体的に以下のステップを備える。
(1)定電流2Cで充電し、充電時間は3sであり、
(2)定電流0.1Cで放電し、放電時間は0.5sであり、
(3)電池のカットオフ電圧4.4Vまでステップ(1)〜(2)を繰り返し、その後、静置し、静置時間は30sであり、
(4)電流1.3Cで定電流充電し、カットオフ電圧4.4Vに到達した後、カットオフ電流0.05Cまで定電圧で充電する。
【0027】
比較例1
25℃の温度において、リチウムイオン電池に対して通常の定電流定電圧の充電を行い(充電プロセスは図4に示すように)、具体的に以下のステップを備える。
(1)定電流1.3Cで充電し、
(2)カットオフ電圧4.4Vに到達した後、カットオフ電流0.05Cまで定電圧で充電する。
【0028】
比較例2
25℃の温度において、リチウムイオン電池に対して通常の定電流定電圧の充電を行い、具体的に以下のステップを備える。
(1)定電流1.8Cで充電し、
(2)カットオフ電圧4.4Vに到達した後、カットオフ電流0.05Cまで定電圧で充電する。
【0029】
表1において、LiCoOと黒鉛系を採用した実施例1〜実施例7と、比較例1〜比較例2のリチウムイオン電池の充電パラメータ及びリチウム析出と充電時間の比較が示されている。
【0030】
【表1】
【0031】
実施例8〜実施例14、比較例3〜比較例4で採用された電池系は、LiCoOを陰極とし、ハードカーボンを陽極とし、さらに、セパレータ、電解液及びパッケージシェルを加えて、実装、化成及びエイジング等のプロセスにより製造される。ここで、陰極は、96.7%LiCoO(陰極活物質として)+1.7%PVDF(接着剤として)+1.6%SP(導電剤として)が混合されることにより構成される。陽極は、98%ハードカーボン(陽極活物質として)+1.0%SBR(接着剤として)+1.0%CMC(増粘剤として)が混合されることにより構成される。セパレータはPP/PE/PP複合膜である。電解液は、有機溶剤(30%EC+30%PC+40%DEC)と1mol/L LiPFに加えて、さらに添加剤(0.5%VC、5%FEC、4%VEC)を添加することにより、構成される。
【0032】
25℃の場合、リチウムイオン電池は、満充電容量(SOC)が3150mAh(0.2C)であり、カットオフ電圧Vが4.4Vである。電池系は、25℃の温度において、陽極にリチウムが析出しない最大の充電電流は2Cであり、リチウムが析出しない最低の陽極の電位は−100mVである。
【0033】
実施例8〜実施例14、比較例3〜比較例4は、何れも25℃の温度において電池を充電する。実施例8〜実施例14において、本発明のリチウムイオン電池の充電方法が採用されたが、比較例3〜比較例4において、通常の定電流定電圧の充電方法が採用された。各実施例及び比較例の充電の関連するパラメータは、表2に示されている。
【0034】
【表2】
【0035】
実施例15〜実施例21、比較例5〜比較例6で採用された電池系は、LiCoOを陰極とし、メソカーボンマイクロビーズを陽極とし、さらに、セパレータ、電解液及びパッケージシェルを加えて、実装、化成及びエイジング等のプロセスにより製造される。ここで、陰極は、96.7%LiCoO(陰極活物質として)+1.7%PVDF(接着剤として)+1.6%SP(導電剤として)が混合されることにより構成される。陽極は、98%MCMB(陽極活物質として)+1.0%SBR(接着剤として)+1.0%CMC(増粘剤として)が混合されることにより構成される。セパレータはPP/PE/PP複合膜である。電解液は、有機溶剤(30%EC+30%PC+40%DEC)と1mol/L LiPFに加えて、さらに添加剤(0.5%VC、5%FEC、4%VEC)を添加するこいと」により、構成される。
【0036】
25℃の場合、リチウムイオン電池は、満充電容量(SOC)が3250mAh(0.2C)であり、カットオフ電圧Vが4.4Vである。電池系は、25℃の温度において、陽極にリチウムが析出しない最大の充電電流は1Cであり、リチウムが析出しない最低の陽極の電位は−50mVである。
【0037】
実施例15〜実施例21、比較例5〜比較例6は、何れも25℃の温度において電池を充電する。実施例15〜実施例21において、本発明のリチウムイオン電池の充電方法が採用されたが、比較例5〜比較例6において、通常の定電流定電圧の充電方法が採用された。各実施例及び比較例の充電の関連するパラメータは、表3に示されている。
【0038】
【表3】
【0039】
実施例22〜実施例28、比較例7〜比較例8で採用された電池系は、LiFePOを陰極とし、黒鉛を陽極とし、さらに、セパレータ、電解液及びパッケージシェルを加えて、実装、化成及びエイジング等のプロセスにより製造される。ここで、陰極は、95.4%LiFePO(陰極活物質として)+2%PVDF(接着剤として)+2.6%SP(導電剤として)が混合されることにより構成される。陽極は、98%人造黒鉛(陽極活物質として)+1.0%SBR(接着剤として)+1.0%CMC(増粘剤として)が混合されることにより構成される。セパレータはPP/PE/PP複合膜である。電解液は、有機溶剤(30%EC+30%PC+40%DEC)と1mol/L LiPFに加えて、さらに添加剤(0.5%VC、5%FEC、4%VEC)を添加することにより構成される。
【0040】
25℃の場合、リチウムイオン電池は、満充電容量(SOC)が3200mAh(0.2C)であり、カットオフ電圧Vが3.7Vである。電池系は、25℃の温度において、陽極にリチウム析出しない最大の充電電流は0.7Cであり、リチウムが析出しない最低の陽極の電位は−20mVである。
【0041】
実施例22〜実施例28、比較例7〜比較例8は、何れも25℃の温度において電池を充電する。実施例22〜実施例28において、本発明のリチウムイオン電池の充電方法が採用されたが、比較例7〜比較例8において、通常の定電流定電圧の充電方法が採用された。各実施例及び比較例の充電の関連するパラメータは、表4に示されている。
【0042】
【表4】
【0043】
実施例29〜実施例35、比較例9〜比較例10で採用された電池系は、LiFePOを陰極とし、ハードカーボンを陽極とし、さらに、セパレータ、電解液及びパッケージシェルを加えて、実装、化成及びエイジング等のプロセスにより製造される。ここで、陰極は、95.4%LiFePO(陰極活物質として)+2%PVDF(接着剤として)+2.6%SP(導電剤として)が混合されることにより構成される。陽極は、98%ハードカーボン(陽極活物質として)+1.0%SBR(接着剤として)+1.0%CMC(増粘剤として)が混合されることにより構成される。セパレータはPP/PE/PP複合膜である。電解液は、有機溶剤(30%EC+30%PC+40%DEC)と1mol/L LiPFに加えて、さらに添加剤(0.5%VC、5%FEC、4%VEC)を添加することにより構成される。
【0044】
25℃の場合、リチウムイオン電池は、満充電容量(SOC)が2800mAh(0.2C)であり、カットオフ電圧Vが3.7Vである。電池系は、25℃の温度において、陽極にリチウムが析出しない最大の充電電流は1.2Cであり、リチウムが析出しない最低の陽極の電位は−20mVである。
【0045】
実施例29〜実施例35、比較例9〜比較例10は、何れも25℃の温度において電池を充電する。実施例29〜実施例35において、本発明のリチウムイオン電池の充電方法が採用されたが、比較例9〜比較例10において、通常の定電流定電圧の充電方法が採用された。各実施例及び比較例において充電に使用された関連するパラメータは、表5に示されている。
【0046】
【表5】
【0047】
実施例36〜実施例42、比較例11〜比較例12で採用された電池系は、LiFePOを陰極とし、MCMBを陽極とし、セパレータ、電解液及びパッケージシェルを加えて、実装、化成及びエイジング等のプロセスにより製造される。ここで、陰極は、95.4%LiFePO(陰極活物質として)+2%PVDF(接着剤として)+2.6%SP(導電剤として)が混合されることにより構成される。陽極は、98%MCMB(陽極活物質として)+1.0%SBR(接着剤として)+1.0%CMC(増粘剤として)が混合されることにより構成される。セパレータはPP/PE/PP複合膜である。電解液は、有機溶剤(30%EC+30%PC+40%DEC)と1mol/L LiPFに加えて、添加剤(0.5%VC、5%FEC、4%VEC)を添加することにより構成される。
【0048】
25℃の場合、リチウムイオン電池は、満充電容量(SOC)が3000mAh(0.2C)であり、カットオフ電圧Vが3.7Vである。電池系は、25℃の温度において、陽極にリチウムが析出しない最大の充電電流は0.5Cであり、リチウムが析出しない最低の陽極の電位は−20mVである。
【0049】
実施例36〜実施例42、比較例11〜比較例12は、何れも25℃の温度において電池を充電する。実施例36〜実施例42において、本発明のリチウムイオン電池の充電方法が採用されたが、比較例11〜比較例12において、通常の定電流定電圧の充電方法が採用された。各実施例及び比較例において充電に使用された関連するパラメータは、表6に示されている。
【0050】
【表6】
【0051】
実施例43〜実施例49、比較例13〜比較例14で採用された電池系は、NCX(X=Mn、Al)を陰極とし、黒鉛を陽極とし、さらに、セパレータ、電解液及びパッケージシェルを加えて、実装、化成及びエイジング等のプロセスにより製造される。ここで、陰極は、96.4%NCX(陰極活物質として)+1.8%PVDF(接着剤として)+1.8%SP(導電剤として)が混合されることにより構成される。陽極は、98%黒鉛(陽極活物質として)+1.0%SBR(接着剤として)+1.0%CMC(増粘剤として)が混合されることにより構成される。セパレータはPP/PE/PP複合膜である。電解液は、有機溶剤(30%EC+30%PC+40%DEC)と1mol/LのLiPFに加えて、さらに添加剤(0.5%VC、5%FEC、4%VEC)を添加することにより構成される。
【0052】
25℃の場合、リチウムイオン電池は、満充電容量(SOC)が3000mAh(0.2C)であり、カットオフ電圧Vが4.2Vである。電池系は、25℃の温度において陽極にリチウムが析出しない最大の充電電流は1Cであり、リチウムが析出しない最低の陽極の電位は−40mVである。
【0053】
実施例43〜実施例49、比較例13〜比較例14は、何れも25℃の温度において電池を充電する。実施例43〜実施例49において、本発明のリチウムイオン電池の充電方法が採用されたが、比較例13〜比較例14において、通常の定電流定電圧の充電方法が採用された。各実施例及び比較例において充電に使用された関連するパラメータは、表7に示されている。
【0054】
【表7】
【0055】
実施例50〜実施例56、比較例15〜比較例16で採用された電池系は、NCX(X=Mn、Al)を陰極とし、ハードカーボンを陽極とし、セパレータ、電解液及びパッケージシェルを加えて、実装、化成及びエイジング等のプロセスにより製造される。ここで、陰極は、96.4%NCX(陰極活物質として)+1.8%PVDF(接着剤として)+1.8%SP(導電剤として)が混合されることにより構成される。陽極は、98%黒鉛(陽極活物質として)+1.0%SBR(接着剤として)+1.0%CMC(増粘剤として)が混合されることにより構成される。セパレータはPP/PE/PP複合膜である。電解液は、有機溶剤(30%EC+30%PC+40%DEC)と1mol/L LiPFに加えて、添加剤(0.5%VC、5%FEC、4%VEC)を添加することにより構成される。
【0056】
25℃の場合、リチウムイオン電池は、満充電容量(SOC)が2900mAh(0.2C)であり、カットオフ電圧Vが4.2Vである。電池系は、25℃の温度において陽極にリチウムが析出しない最大の充電電流は1.5Cであり、リチウムが析出しない最低の陽極の電位は−60mVである。
【0057】
実施例50〜実施例56、比較例15〜比較例16は、何れも25℃の温度において電池を充電する。実施例50〜実施例56において、本発明のリチウムイオン電池の充電方法が採用されたが、比較例15〜比較例16において、通常の定電流定電圧の充電方法が採用された。各実施例及び比較例において充電に使用された関連するパラメータは、表8に示されている。
【0058】
【表8】
【0059】
実施例57〜実施例63、比較例17〜比較例18で採用された電池系は、NCX(X=Mn、Al)を陰極とし、MCMBを陽極とし、さらに、セパレータ、電解液及びパッケージシェルを加えて、実装、化成及びエイジング等のプロセスにより製造される。ここで、陰極は、96.4%NCX(陰極活物質として)+1.8%PVDF(接着剤として)+1.8%SP(導電剤として)が混合されることにより構成される。陽極は、98%黒鉛(陽極活物質として)+1.0%SBR(接着剤として)+1.0%CMC(増粘剤として)が混合されることにより構成される。セパレータはPP/PE/PP複合膜である。電解液は、有機溶剤(30%EC+30%PC+40%DEC)と1mol/L LiPFに加えて、添加剤(0.5%VC、5%FEC、4%VEC)を添加することにより構成される。
【0060】
25℃の場合、リチウムイオン電池は、満充電容量(SOC)が2950mAh(0.2C)であり、カットオフ電圧Vが4.2Vである。電池系は、25℃の温度において陽極にリチウムが析出しない最大の充電電流は0.8Cであり、リチウムが析出しない最低の陽極の電位は−30mVである。
【0061】
実施例57〜実施例63、比較例17〜比較例18は、何れも25℃の温度において電池を充電する。実施例57〜実施例63において、本発明のリチウムイオン電池の充電方法が採用されたが、比較例17〜比較例18において、通常の定電流定電圧の充電方法が採用された。各実施例及び比較例において、充電に使用された関連するパラメータは、表9に示されている。
【0062】
【表9】
【0063】
図2は、LiCoOと黒鉛系を採用した本発明の実施例1において1.3Cで充電する場合のフル電池電圧と陽極の電位を示すグラフである。図2により分かるように、電池系は、陽極にリチウムが析出しない最低の陽極の電位ηが−90mVである。
【0064】
表1〜9において、異なる電池系の比較例と実施例のリチウム析出の状況、及び80%のSOCまで充電するために必要な時間が示されている。これらにより分かるように、一つの電池系として、従来の定電流定電圧の充電方法が採用された場合、充電電流が当該電池系が負担できる最大の安全な充電電流を超えると、陽極にリチウムが析出することになる。本発明のリチウムイオン電池の充電方法を採用して充電する場合、電池の陽極のリチウム析出を効果的に改善し、該電池系が負担できる最大の安全充電電流を大きくすることができる。従って、本発明のリチウムイオン電池の充電方法により、充電速度を高めることができる。
【0065】
充電中の陽極の電位を観測することにより、本発明のリチウムイオン電池の充電方法による改善の効果を説明することができる。図5図6はそれぞれ実施例1と比較例2において充電中の陽極の電位を示すグラフであり、これらの図により分かるように、1.8Cで定電流定電圧で充電する場合、その陽極がリチウムの析出しない最低の陽極の電位以下にある時間は約28minである。本発明のリチウムイオン電池の充電方法が採用された場合、陽極がリチウムの析出しない最低の陽極の電位以下にある時間は大幅に短縮され(約0.5minである)、一方で、本発明のリチウムイオン電池の充電方法は、一つの大電流パルスで充電した後、直ちに小電流パルスで放電するため、大電流パルスによる陽極表面のリチウムイオンの濃度の上昇を減少させ、リチウム析出の発生を回避することができる。
【0066】
なお、上述した明細書の記載及び開示に基づき、当業者は上記の実施形態に対して、変更及び改変を行うことができる。従って、本発明は、上記のように説明された具体的な実施形態に限定されるものではなく、本発明に対する等価な改変及び変更も本発明の特許請求の範囲に含まれる。また、本明細書において特定の用語が使用されているが、これらの用語は、説明の便宜のために用いられたものに過ぎず、本発明を限定するものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6