【解決手段】基板6上に被着されたアモルファスシリコン膜にレーザ光を照射して結晶化するレーザアニール方法であって、前記基板6上の複数の第1及び第2のTFT形成部23,24に異なる照射光量のレーザ光を照射し、前記複数の第1及び第2のTFT形成部23,24の前記アモルファスシリコン膜を異なる結晶状態のポリシリコン膜に結晶化するものである。
前記第1及び第2の薄膜トランジスタ形成部の前記アモルファスシリコン膜の結晶化は、前記基板の搬送方向と交差する方向に並べて遮光マスクに設けられた複数のマスクパターンを介するレーザ光の1回照射により完了することを特徴とする請求項2記載のレーザアニール方法。
前記第1及び第2の薄膜トランジスタ形成部の前記アモルファスシリコン膜の結晶化は、前記基板の搬送方向及び同方向と交差する方向に並べて遮光マスクに設けられた複数のマスクパターンのうち、前記基板の搬送方向に並んだ複数の前記マスクパターンを介するレーザ光の多重照射により実施されることを特徴とする請求項2記載のレーザアニール方法。
前記第1及び第2の薄膜トランジスタ形成部に対する前記レーザ光の異なる照射光量は、複数の前記マスクパターンのうち、前記第2の薄膜トランジスタ形成部に対応するマスクパターンの透過光量が、前記第1の薄膜トランジスタ形成部に対応するマスクパターンの透過光量よりも小さくなるように調整して得られることを特徴とする請求項3又は4記載のレーザアニール方法。
前記第1及び第2の薄膜トランジスタ形成部に対する前記レーザ光の異なる照射光量は、複数の前記マスクパターンのうち、前記第2の薄膜トランジスタ形成部に対応して前記基板の搬送方向に並ぶ複数の前記マスクパターンの数が、前記第1の薄膜トランジスタ形成部に対応して同方向に並ぶ複数の前記マスクパターンの数よりも少なくなるように調整して得られることを特徴とする請求項4記載のレーザアニール方法。
前記基板への前記レーザ光の照射は、複数の前記マスクパターンに個別に対応させて前記遮光マスクの前記基板側に設けられた複数のマイクロレンズを介して行われることを特徴とする請求項3〜6のいずれか1項に記載のレーザアニール方法。
前記基板への前記レーザ光の照射は、複数の前記マスクパターンを前記基板上に縮小投影する投影レンズを介して行われることを特徴とする請求項3〜6のいずれか1項に記載のレーザアニール方法。
前記投影光学系は、複数の前記マスクパターンに個別に対応させて設けられた複数のマイクロレンズであることを特徴とする請求項9又は10記載のレーザアニール装置。
画素を駆動する複数の駆動用薄膜トランジスタと、前記画素を選択するために前記駆動用薄膜トランジスタを動作させる複数の選択用薄膜トランジスタと、を基板上に設けた薄膜トランジスタ基板であって、
前記駆動用薄膜トランジスタと前記選択用薄膜トランジスタとは、ポリシリコン半導体層の結晶状態が異なることを特徴とする薄膜トランジスタ基板。
前記駆動用薄膜トランジスタのポリシリコン半導体層の結晶粒径又は電子移動度は、前記選択用薄膜トランジスタのポリシリコン半導体層の結晶粒径又は電子移動度よりも大きいことを特徴とする請求項13記載の薄膜トランジスタ基板。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明によるレーザアニール装置の第1の実施形態を示す概略構成図である。また、
図2は第1の実施形態に使用するマイクロレンズアレイの一構成例を示す図で、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線断面図、(c)は(a)のB−B線断面図である。このレーザアニール装置は、基板上に被着されたアモルファスシリコン膜にレーザ光を照射して結晶化するもので、搬送手段1と、レーザ照明光学系2と、撮像手段3と、アライメント手段4と、制御装置5と、を備えて構成されている。
【0016】
上記搬送手段1は、複数の薄膜トランジスタ形成部が縦横に並べて配置され、表面にアモルファスシリコン膜を被着させた被アニール処理基板(以下、単に「基板」という)6の例えば縁部を保持し、搬送面からわずかに浮上させた状態で基板6を
図1に示す矢印方向に搬送するものであり、複数の浮上ユニット7を並べて配置し、基板6に均一な浮上力を付与することができるようになっている。
【0017】
なお、ここでは、上記基板6が有機EL用の薄膜トランジスタ基板を製造するための基板である場合について説明する。上記有機EL用の薄膜トランジスタ基板は、
図3に示すように縦横に設けられたデータライン8とセレクトライン9との交差部に、例えば同図に示すような有機EL駆動用の薄膜トランジスタ(以下「TFT」という)が形成されている。
【0018】
詳細には、
図3において、右側に位置するTFTが有機EL画素の駆動電流を制御する駆動用TFT10であり、ドレイン11を電源ライン12に接続し、ソース13を有機EL14のアノードに接続して設けられている。また、同図において、左側に位置するTFTが上記駆動用TFT10のゲート電圧を制御する選択用TFT15であり、ゲート16をセレクトライン9に接続し、ドレイン17をデータライン8に接続し、ソース18を駆動用TFT10のゲート19に接続して設けられている。さらに、駆動用TFT10のゲート19及びソース13間には保持容量20が設けられている。そして、有機EL14のカソードは接地されている。なお、上記各TFTのドレイン及びソースの配置は、逆であってもよい。
【0019】
上記基板6上には、
図4に示すように、データライン8、セレクトライン9及び電源ライン12が互いに絶縁された状態で設けられ、さらに、駆動用TFT10のゲート電極21及び選択用TFT15のゲート電極22が予め設けられており、それらの上に、図示省略のSiO
2等の絶縁膜を介してアモルファスシリコン膜が被着されている。この場合、駆動用TFT10のゲート電極21上が第1のTFT形成部23となり、選択用TFT15のゲート電極22上が第2のTFT形成部24となる。そして、本実施形態においては、基板6は、第1及び第2のTFT形成部23,24が交互に並ぶその並び方向と交差する方向(
図4に示す矢印方向)、即ちデータライン8に平行に搬送される。
【0020】
上記搬送手段1の上方には、レーザ照明光学系2が設けられている。このレーザ照明光学系2は、基板6上の第1及び第2のTFT形成部23,24に異なる照射光量のパルスレーザ光Lを照射し、第1及び第2のTFT形成部23,24のアモルファスシリコン膜を異なる結晶状態のポリシリコン膜に結晶化させるものであり、光進行方向上流からレーザ光源25と、カップリング光学系26と、マイクロレンズアレイ27と、を順に備えて構成されている。
【0021】
ここで、上記レーザ光源25は、例えば所定周波数のパルスレーザ光Lを放出するものであり、波長が355nmのYAGレーザや波長が308nmのエキシマレーザ等である。
【0022】
また、上記カップリング光学系26は、レーザ光源25から放射されたパルスレーザ光Lの光束径を拡張すると共に、輝度分布が均一にされた平行光を後述のマイクロレンズアレイ27に照射させるのもので、図示省略のビームエキスパンダ、フォトインテグレータ及びコリメータレンズ等を備えて構成されている。
【0023】
さらに、上記マイクロレンズアレイ27は、搬送手段1の搬送面に対向配置され、
図2(b)に示すように、例えば石英基板のような透明基板28の光入射側に、上記基板6上の第1及び第2のTFT形成部23,24に対応させて複数のマスクパターン29を有する遮光マスク30を設け、上記透明基板28の光射出側に、複数のマスクパターン29に個別に対応させて該マスクパターン29を基板6上に縮小投影する複数のマイクロレンズ(投影光学系)31を設けたものである。
【0024】
詳細には、マイクロレンズアレイ27は、
図2(a)に示すように、複数の上記マスクパターン29及び複数の上記マイクロレンズ31を基板6の搬送方向(同図の矢印方向)及び同方向と交差する方向に並べて有し、同図(a)に示すように第2のTFT形成部24に対応して基板6の搬送方向(以下、「基板搬送方向」という)に並ぶ複数のマスクパターン29及び複数のマイクロレンズ31の数が、第1のTFT形成部23に対応して同方向に並ぶ複数のマスクパターン29及び複数のマイクロレンズ31の数よりも少なくなるように調整されている。
【0025】
これにより、基板搬送方向に並んだ複数のマイクロレンズ31を介するパルスレーザ光Lの多重照射により、一つのTFT形成部のアニール処理が完了するようにすれば、第1及び第2のTFT形成部23,24に異なる照射光量(エネルギー)のパルスレーザ光Lを照射することができ、第1及び第2のTFT形成部23,24のアモルファスシリコン膜を異なる結晶状態のポリシリコン膜に結晶化させることができる。
【0026】
なお、本実施形態においては、パルスレーザ光Lの3回の多重照射により第1のTFT形成部23のレーザアニールが完了し、1回のレーザ光照射により第2のTFT形成部24のレーザアニールが完了する場合について説明するが、パルスレーザ光Lの照射回数はこれらに限定されない。また、第2のTFT形成部24に対応したマイクロレンズ31の数の調整は必ずしも必要ではないが、ここでは、マスクパターン29の数の調整と合せてマイクロレンズ31の数の調整も行った場合について説明する。
【0027】
上記レーザ照明光学系2によるパルスレーザ光Lの照射位置に対して基板搬送方向上流側には、撮像手段3が設けられている。この撮像手段3は、基板6に予め形成されたデータライン8及びセレクトライン9を撮影するもので、基板搬送方向と交差する方向に長軸を有するライン状の受光部を備えたラインカメラであり、上記搬送手段1の複数の浮上ユニット7間に配設されている。そして、上記基板6を裏面から透かして基板6の表面に設けられた上記データライン8及びセレクトライン9を撮影できるようになっている。また、撮像手段3は、後述のアライメント手段4によるレーザ照明光学系2又はマイクロレンズアレイ27の基板搬送方向と交差する方向へのアライメント動作に同期して一体的に同方向に微動するようになっている。
【0028】
上記レーザ照明光学系2又はマイクロレンズアレイ27を基板搬送方向と交差する方向に微動可能にアライメント手段4が設けられている。このアライメント手段4は、マイクロレンズアレイ27の複数のマスクパターン29と、基板6上の第1及び第2のTFT形成部23,24とを位置合わせさせるためのものであり、後述の制御装置5により制御されて基板6の基板搬送方向と交差する方向への横ずれを補正するようにレーザ照明光学系2又はマイクロレンズアレイ27を同方向に微動させるようになっている。以下の説明においては、アライメント手段4がマイクロレンズアレイ27を微動させる場合について述べる。
【0029】
上記搬送手段1、レーザ照明光学系2、撮像手段3及びアライメント手段4に電気的に接続して制御装置5が設けられている。この制御装置5は、基板6を浮上ユニット7上に所定量だけ浮上させた状態で基板6を、
図1に示す矢印方向に一定速度で搬送させるように搬送手段1を制御し、基板6が搬送されて基板6上の各第1及び第2のTFT形成部23,24がマイクロレンズアレイ27のマイクロレンズ31によるパルスレーザ光Lの集光位置に達する度に、レーザ光源25を駆動してレーザ発光させるように発光タイミングを制御し、撮像手段3から入力する画像データに基づいて基板6の横ずれ量を算出し、横ずれを補正するようにアライメント手段4を駆動制御するもので、
図5に示すように搬送手段駆動コントローラ32と、レーザ光源駆動コントローラ33と、画像処理部34と、アライメント手段駆動コントローラ35と、メモリ36と、演算部37と、制御部38と、を備えて構成されている。
【0030】
ここで、上記搬送手段駆動コントローラ32は、浮上ユニット7からのエアの噴出及び停止を制御すると共に、搬送手段1による基板6の搬送開始、搬送停止、搬送方向及び搬送速度を制御するものである。
【0031】
また、レーザ光源駆動コントローラ33は、後述の演算部37から入力する発光指令に基づいてレーザ光源25のパルスレーザ光Lの発光を制御するものである。
【0032】
さらに、画像処理部34は、撮像手段3から入力する画像データを処理して、基板6の搬送方向と交差する方向の輝度変化からデータライン8の位置を検出し、予め指定されたデータライン8の例えば右縁部の位置情報、及び基板6の搬送方向の輝度変化からセレクトライン9の、例えば搬送方向下流側の縁部検出情報を後述の演算部37に出力するようになっている。
【0033】
また、アライメント手段駆動コントローラ35は、演算部37によって算出された基板6の横ずれ量がゼロとなるようにアライメント手段4の駆動を制御するものである。
【0034】
さらに、メモリ36は、例えば搬送手段1の搬送速度、撮像手段3によりセレクトライン9が最初に検出されてからレーザ光源25が駆動されるまでに基板6が移動する距離の目標値、撮像手段3の受光部に予め定められた基準位置の位置情報、及び第1及び第2のTFT形成部23,24の搬送方向の配列ピッチW等を記憶するものであり、演算部37による演算結果も一時的に記憶することができるようになっている。
【0035】
さらにまた、演算部37は、搬送手段1の搬送速度と時間から基板6の移動距離を演算し、これをメモリ36から読み出した基板6の移動距離の目標値及び第1及び第2のTFT形成部23,24の搬送方向の配列ピッチWと比較し、パルスレーザ光Lの発光指令をレーザ光源駆動コントローラ33に出力すると共に、画像処理部34から入力したデータライン8の位置情報とメモリ36から読み出した撮像手段3に予め定められた基準位置の位置情報とにより両者間の距離を演算し、その演算結果と、両者間の基準距離としてメモリ36に保存された基準値とを比較し、そのずれ量を算出してアライメント手段駆動コントローラ35に出力するようになっている。なお、基板6の移動距離は、搬送手段1に設けたポジションセンサによって検出してもよく、基板6を移動させる移動機構のパルスモータのパルス数をカウントして算出してもよい。
【0036】
そして、制御部38は、装置全体を統合して制御するものであり、例えば制御用PC(パーソナルコンピュータ)である。
【0037】
次に、このように構成されたレーザアニール装置の第1の実施形態の動作及びレーザアニール方法について説明する。
先ず、基板6がアモルファスシリコン膜を被着した面を上にして搬送手段1の搬送面に設置され、基板6の縁部が移動機構に保持される。この場合、基板6は、データライン8が基板搬送方向と平行になるように設置される。
【0038】
次に、アニール開始のスイッチが投入されると、搬送手段1の浮上ユニット7からエアが噴出して基板6を浮上させ、上記移動機構によって
図1に示す矢印方向への基板6の搬送が開始される。
【0039】
次いで、撮像手段3により基板6の裏面側から基板6を透かして表面に形成されたデータライン8及びセレクトライン9が撮影される。撮像手段3により取得された画像データは、画像処理部34において処理される。画像処理部34では、基板搬送方向の輝度変化から基板搬送方向最下流に設けられたセレクトライン9の例えば上流側縁部を検出し、その検出情報を演算部37に出力する。
【0040】
演算部37では、画像処理部34から上記セレクトライン9の検出情報が入力されると、それをトリガーとして基板6の移動距離を演算する。そして、演算して得た基板6の移動距離とメモリ36から読み出した基板6の移動距離の目標値とを比較し、両者が合致するとパルスレーザ光Lの発光指令がレーザ光源駆動コントローラ33に出力される。この瞬間は、
図6に示すように、基板搬送方向最下流に位置する複数の第1及び第2のTFT形成部23,24がマイクロレンズアレイ27の基板搬送方向最上流に位置する複数のマイクロレンズ31(以下「第1のマイクロレンズ列31A」という)によるパルスレーザ光Lの集光位置に達したときである。
【0041】
レーザ光源駆動コントローラ33は、演算部37からパルスレーザ光Lの発光指令を受けると、レーザ光源25を駆動して所定周波数のパルスレーザ光Lをレーザ光源25から放出させる。レーザ光源25から放出されたパルスレーザ光Lは、カップリング光学系26により光束径が拡張された後、輝度分布が均一化され、平行光にされてマイクロレンズアレイ27を照明する。そして、マイクロレンズアレイ27の遮光マスク30に形成されたマスクパターン29を通過したパルスレーザ光Lがマイクロレンズ31によって基板6上に集光される。
【0042】
これにより、
図6に示すように、基板搬送方向最下流に位置する第1及び第2のTFT形成部23,24のアモルファスシリコン膜に対して、パルスレーザ光Lによる1回目のアニール処理が実行されてアモルファスシリコン膜が結晶化し、ポリシリコン膜となる。
【0043】
引き続き、演算部37においては、基板6の移動距離が演算される。そして、基板6の移動距離が第1及び第2のTFT形成部23,24の基板搬送方向における配列ピッチWに合致すると、再び、演算部37からパルスレーザ光Lの発光指令がレーザ光源駆動コントローラ33に出力される。
【0044】
これにより、レーザ光源駆動コントローラ33によりレーザ光源25が駆動されて、上記と同様にレーザ光源25からパルスレーザ光Lが放出され、このパルスレーザ光Lによってマイクロレンズアレイ27が照明される。
【0045】
パルスレーザ光Lは、マイクロレンズアレイ27のマスクパターン29を通過した後、マイクロレンズ31により基板6上に集光される。この場合、基板6は、第1及び第2のTFT形成部23,24の基板搬送方向における配列ピッチWに等しい距離だけ移動しているため、
図7に示すように、基板搬送方向最下流に位置する複数の第1及び第2のTFT形成部23,24は、マイクロレンズアレイ27の第1のマイクロレンズ列31Aに対して一つ下流に位置する複数のマイクロレンズ31(以下「第2のマイクロレンズ列31B」という)によるパルスレーザ光Lの集光位置に達した状態にある。
【0046】
また、基板搬送方向最下流に位置する複数の第1及び第2のTFT形成部23,24に対して一つ上流に位置する複数の第1及び第2のTFT形成部23,24は、
図7に示すように、マイクロレンズアレイ27の第1のマイクロレンズ列31Aによるパルスレーザ光Lの集光位置に達している。
【0047】
したがって、マイクロレンズアレイ27を通過したパルスレーザ光Lのうち、第2のマイクロレンズ列31Bを通過したパルスレーザ光Lは、基板搬送方向最下流に位置する複数の第1のTFT形成部23に集光し、当該部分に対して2回目のアニール処理を実行する。これにより、上記複数の第1のTFT形成部23に照射されるパルスレーザ光Lの照射光量(エネルギー)が増して、当該部分の結晶成長が促進される。
【0048】
一方、第2のマイクロレンズ列31Bには、第2のTFT形成部24に対応した位置にマスクパターン29及びマイクロレンズ31が存在しないため、基板搬送方向最下流に位置する複数の第2のTFT形成部24には、パルスレーザ光Lは照射されない。したがって、当該部分は、1回目のアニール処理の状態が維持され、ポリシリコン膜の結晶成長は進行しない。
【0049】
また、マイクロレンズアレイ27を通過したパルスレーザ光Lのうち、第1のマイクロレンズ列31Aを通過したパルスレーザ光Lは、基板搬送方向最下流に位置する複数の第1及び第2のTFT形成部23,24に対して一つ上流に位置する複数の第1及び第2のTFT形成部23,24に集光し、当該部分に対して1回目のアニール処理を実行する。これにより、当該部分のアモルファスシリコン膜が結晶化し、ポリシリコン膜となる。
【0050】
演算部37においては、継続して基板6の移動距離が演算される。そして、基板6の移動距離が第1及び第2のTFT形成部23,24の基板搬送方向における配列ピッチWに合致すると、再び、演算部37からパルスレーザ光Lの発光指令がレーザ光源駆動コントローラ33に出力される。
【0051】
これにより、レーザ光源駆動コントローラ33によりレーザ光源25が駆動されて、レーザ光源25からパルスレーザ光Lが放出され、このパルスレーザ光Lによってマイクロレンズアレイ27が照明される。
【0052】
パルスレーザ光Lは、マイクロレンズアレイ27のマスクパターン29を通過した後、マイクロレンズ31により基板6上に集光される。この場合、基板6は、第1及び第2のTFT形成部23,24の基板搬送方向における配列ピッチWに等しい距離だけさらに移動しているため、
図8に示すように、基板搬送方向最下流に位置する複数の第1及び第2のTFT形成部23,24は、マイクロレンズアレイ27の第1のマイクロレンズ列31Aに対して二つ下流に位置する複数のマイクロレンズ31(以下「第3のマイクロレンズ列31C」という)によるパルスレーザ光Lの集光位置に達した状態にある。
【0053】
また、基板搬送方向最下流に位置する複数の第1及び第2のTFT形成部23,24に対して一つ上流に位置する複数の第1及び第2のTFT形成部23,24は、
図8に示すように、マイクロレンズアレイ27の第2のマイクロレンズ列31Bによるパルスレーザ光Lの集光位置に達している。
【0054】
さらに、基板搬送方向最下流に位置する複数の第1及び第2のTFT形成部23,24に対して二つ上流に位置する複数の第1及び第2のTFT形成部23,24は、
図8に示すように、マイクロレンズアレイ27の第1のマイクロレンズ列31Aによるパルスレーザ光Lの集光位置に達している。
【0055】
したがって、マイクロレンズアレイ27を通過したパルスレーザ光Lのうち、第3のマイクロレンズ列31Cを通過したパルスレーザ光Lは、基板搬送方向最下流に位置する複数の第1のTFT形成部23に集光し、当該部分に対して3回目のアニール処理を実行する。これにより、上記複数の第1のTFT形成部23に照射されるパルスレーザ光Lの照射光量(エネルギー)がより増して、当該部分の結晶成長がより促進される。
【0056】
一方、第3のマイクロレンズ列31Cには、
図8に示すように、第2のTFT形成部24に対応した位置にマスクパターン29及びマイクロレンズ31が存在しないため、基板搬送方向最下流に位置する複数の第2のTFT形成部24には、パルスレーザ光Lは照射されない。したがって、当該部分は、1回目のアニール処理の状態が維持され、ポリシリコン膜の結晶成長は進行しない。
【0057】
また、マイクロレンズアレイ27を通過したパルスレーザ光Lのうち、第2のマイクロレンズ列31Bを通過したパルスレーザ光Lは、基板搬送方向最下流に位置する複数の第1のTFT形成部23に対して一つ上流に位置する第1のTFT形成部23に集光し、当該部分に対して2回目のアニール処理を実行する。これにより、上記複数の第1のTFT形成部23に照射されるパルスレーザ光Lの照射光量(エネルギー)が増して、当該部分の結晶成長が促進される。
【0058】
一方、第2のマイクロレンズ列31Bには、第2のTFT形成部24に対応した位置にマスクパターン29及びマイクロレンズ31が存在しないため、基板搬送方向最下流に位置する複数の第2のTFT形成部24に対して一つ上流に位置する複数の第2のTFT形成部24には、パルスレーザ光Lは照射されない。したがって、当該部分は、1回目のアニール処理の状態が維持され、ポリシリコン膜の結晶成長は進行しない。
【0059】
さらに、マイクロレンズアレイ27を通過したパルスレーザ光Lのうち、第1のマイクロレンズ列31Aを通過したパルスレーザ光Lは、基板搬送方向最下流に位置する複数の第1及び第2のTFT形成部23,24に対して二つ上流に位置する複数の第1及び第2のTFT形成部23,24に集光し、当該部分に対して1回目のアニール処理を実行する。これにより、当該部分のアモルファスシリコン膜が結晶化し、ポリシリコン膜となる。
【0060】
以降、同様にして第1のTFT形成部23に対して、3回のパルスレーザ光Lの多重照射によるアニール処理が実行され、第2のTFT形成部24に対しては、1回のパルスレーザ光Lの照射によるアニール処理が実行される。これにより、第1及び第2のTFT形成部23,24に対するパルスレーザ光Lの照射光量(パルスレーザ光Lの積算エネルギー)を異ならせることができ、第1及び第2のTFT形成部23,24のアモルファスシリコン膜を異なる結晶状態のポリシリコン膜に結晶化することができる。
【0061】
さらに、不要なアモルファスシリコン膜及びポリシリコン膜をエッチングして除去してゲート電極21,22上に半導体層を形成した後、ソース電極、ドレイン電極、保持容量20及び絶縁保護膜を順次形成することにより、
図9に示すように、ポリシリコン半導体層の結晶状態が異なる複数の駆動用TFT10及び選択用TFT15を備えた有機EL用TFT基板が製造される。
【0062】
この場合、パルスレーザ光Lの照射光量が多くて積算エネルギーの大きい駆動用TFT10(第1のTFT形成部23)のポリシリコン膜は、パルスレーザ光Lの照射光量が少なくて積算エネルギーの小さい選択用TFT15(第2のTFT形成部24)のポリシリコン膜に比して結晶粒径が大きくなる。したがって、駆動用TFT10の電気特性は、
図10(a)に示すように、OFFリーク電流がやや大きい(約1×10
−9A)ものの、電子移動度が大きくなり(約30cm
2/Vs)、有機ELに大きな電流を供給することが可能となる。
【0063】
一方、選択用TFT15(第2のTFT形成部24)のポリシリコン膜の結晶粒径は、駆動用TFT10(第1のTFT形成部23)のポリシリコン膜の結晶粒径に比して小さいため、選択用TFT15の電気特性は、
図10(b)に示すように、電子移動度が小さい(約2cm
2/Vs)ものの、OFFリーク電流が小さくなり(1×10
−11A)、駆動用TFT10のゲート電圧を一定に保持することが可能となる。
【0064】
このように本発明によるレーザアニール方法によると、1回のレーザアニール処理工程で基板6上の第1及び第2のTFT形成部23,24に異なる照射光量のパルスレーザ光Lを照射することができ、第1及び第2のTFT形成部23,24のアモルファスシリコン膜を異なる結晶状態のポリシリコン膜に結晶化することができる。したがって、本発明によるレーザアニール方法を有機EL用の薄膜トランジスタ基板の製造に適用した場合には、駆動用TFT10及び選択用TFT15に要求される、夫々異なる個別の電気特性を得ることができる。
【0065】
なお、基板6を搬送しながら行うレーザアニール中は、撮像手段3によりデータライン8が常時撮影され、これを画像処理部34で画像処理して、基板6の搬送方向と交差する方向における輝度変化から特定のデータライン8の位置が検出される。また、演算部37では、検出されたデータライン8の位置情報と撮像手段3に予め設定された基準位置の位置情報と基づいて両者間の距離が算出され、メモリ36に保存された基準置と比較して基板6の横ずれ量が算出される。さらに、アライメント手段駆動コントローラ35によってアライメント手段4が駆動され、上記横ずれ量がゼロとなるようにマイクロレンズアレイ27が撮像手段3と一体的に基板搬送方向と交差する方向に微動される。これにより、基板6の横ずれが補正されてパルスレーザ光Lが基板6上の複数の第1及び第2のTFT形成部23,24に位置精度よく照射され、アニール処理が実行される。
【0066】
上記第1の実施形態においては、マイクロレンズアレイ27は、複数のマスクパターン29及び複数のマイクロレンズアレイ27を基板6の搬送方向及び同方向と交差する方向に並べて有し、第2のTFT形成部24に対応して基板搬送方向に並ぶマスクパターン29及びマイクロレンズ31の数が、第1のTFT形成部23に対応して同方向に並ぶマスクパターン29の数よりも少なくなるように調整されている場合について説明したが、本発明はこれに限られず、
図11に示すように、第2のTFT形成部24に対応するマスクパターン29に所定の透過率の減光膜40を形成して透過光量が、第1のTFT形成部23に対応するマスクパターン29の透過光量よりも小さくなるように調整されてもよい。この場合、第1及び第2のTFT形成部23,24に対するアニール処理が複数のマイクロレンズ31を介するパルスレーザ光Lの多重照射により行われてもよいが、第1及び第2のTFT形成部23,24に対するアニール処理が1回のパルスレーザ光Lの照射で完了する場合には、マイクロレンズアレイ27は、基板搬送方向と交差する方向に複数のマスクパターン29及び複数のマイクロレンズ31を並べて配置した1組のマスクパターン列及びマイクロレンズ列を有するものであってもよい。
【0067】
図12は本発明によるレーザアニール装置の第2の実施形態を示す要部拡大正面図である。ここでは、上記第1の実施形態と異なる部分について説明する。
この第2の実施形態においては、第1の実施形態におけるような、遮光マスク30に形成された複数のマスクパターン29を、該複数のマスクパターン29に個別に対応させて設けられたマイクロレンズ31により基板6上に縮小投影する代わりに、上記複数のマスクパターン29を一つの投影レンズ(投影光学系)41を使用して基板6上に縮小投影するものである。上記投影レンズ41は、基板6上に遮光マスク30の倒立像を結像するレンズ構成であっても、正立像を結像するレンズ構成であってもよい。
【0068】
投影レンズ41が倒立像を結像するレンズ構成のときには、使用する遮光マスク30は、複数のマスクパターン29の配置が、
図2又は
図11に示すマスクパターン29の配置と、遮光マスク30の中心を軸とする180度の回転対称の関係となる。例えば
図13に示す遮光マスク30は、
図11に示す遮光マスク30をマスクの中心を軸に180度回転したものに対応する。即ち、この遮光マスク30は、
図13に示すように、複数のマスクパターン29のうち、第2のTFT形成部24に対応するマスクパターン29の透過光量が、第1のTFT形成部23に対応するマスクパターン29の透過光量よりも小さくなるように、第2のTFT形成部24に対応するマスクパターン29に減光膜40が設けられている。当然ながら、各マスクパターン29の配列ピッチは、第1及び第2のTFT形成部23,24の縦横配列ピッチを投影レンズ41の倍率で換算した値に設定される。
【0069】
この場合、パルスレーザ光Lの照射は、遮光マスク30に形成された複数のマスクパターン29の基板搬送方向と交差する方向に並ぶ、例えば
図13に示すマスクパターン列29A,29B,29Cのうち、基板搬送方向最下流に対応して位置するマスクパターン列29Aの結像位置と基板搬送方向最下流に位置する複数の第1及び第2のTFT形成部23,24とが合致したときから開始される。以降、第1の実施形態と同様に、基板6が第1及び第2のTFT形成部23,24の基板搬送方向の配列ピッチWと同じ距離だけ移動する度にパルスレーザ光Lが照射され、複数の第1及び第2のTFT形成部23,24のアモルファスシリコン膜がレーザアニールされてポリシリコン膜に結晶化される。
【0070】
また、投影レンズ41が正立像を結像するレンズ構成のときには、遮光マスク30として複数のマスクパターン29が、
図2又は
図11に示す複数のマスクパターン29と同様に配置されたマスクを使用することができる。この場合も、各マスクパターン29の配列ピッチは、第1及び第2のTFT形成部23,24の縦横配列ピッチを投影レンズ41の倍率で換算した値に設定される。そして、パルスレーザ光Lの照射は、複数のマスクパターン29が基板搬送方向と交差する方向に並ぶ複数のマスクパターン列のうち、基板搬送方向最上流に対応して位置するマスクパターン列の結像位置と基板搬送方向最下流に位置する複数の第1及び第2のTFT形成部23,24とが合致したときから開始される。以降のパルスレーザ光Lの照射タイミングは、第1の実施形態と同じである。
【0071】
なお、上記第1及び第2の実施形態においては、基板6を搬送しながらレーザアニールが実施される場合について説明したが、本発明はこれに限られず、設置固定された基板6に対して1ショット、又は複数ショットのレーザ光照射によりレーザアニールが実施されるものであってもよい。この場合、レーザアニールは、基板6上の複数のTFT形成部に対応して設けた複数のマスクパターン29、及び複数のマイクロレンズ31又は投影レンズ41を介して、上記複数のTFT形成部に異なる照射光量のパルスレーザ光Lを照射して行うとよい。そして、パルスレーザ光Lの異なる照射光量は、上記マスクパターン29の透過光量を調整して行うとよい。
【0072】
また、上記第1及び第2の実施形態においては、一つのレーザ光源25から放出されるパルスレーザ光Lを異なる照射光量で第1及び第2のTFT形成部23,24に照射させる場合について説明したが、本発明はこれに限られず、放射エネルギーの異なる二つのレーザ光源を備え、各レーザ光源から放出される放射エネルギーの異なるパルスレーザ光Lを夫々、第1及び第2のTFT形成部23,24に照射させるようにしてもよい。
【0073】
そして、以上の説明においては、有機EL用のTFT基板の形成について述べたが、本発明はこれに限られず、ポリシリコン半導体層の結晶状態の異なる複数のTFTを形成するために行われるアモルファスシリコン膜の如何なるレーザアニール処理にも適用することができる。