【解決手段】コイル部品10Aは、導線が巻回される巻枠部54を構成する鍔部53を備えるボビン50と、ボビン50に取り付けられるコア21と、鍔部53と一体的に設けられ、鍔部53と対向することで第1隙間S1を形成する押さえ板部562を備えると共に、その第1隙間S1にコア21の少なくとも一部を入り込ませることで、鍔部53と押さえ板部562との間でコア21を押さえるコア押さえ部56と、を備えている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態に係る、コイル部品としてのトランス10Aについて、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明においては、XYZ直交座標系を用いて説明することがある。そのうち、X方向は後述する端子台部41およびコア21の長手方向とし、X1側は
図1における右側かつ上側とし、X2側はそれとは逆の左側かつ下側とする。また、Z方向はトランス10Aが実装される基板に対して垂直な方向とし、Z1側は
図1における上側とし、Z2側は
図1における下側とする。また、Y方向はXZ方向に直交する方向(幅方向)とし、Y1側は
図1における右側かつ下側とし、Y2側はそれとは逆の左側かつ上側とする。
【0015】
<トランス10Aの全体構成について>
図1は、トランス10Aの構成を示す斜視図であり、一次巻線70および二次巻線80を省略した状態を示している。
図2は、
図1のI−I線に沿ってトランス10Aを切断した状態を示す断面図である。また、
図3は、トランス10Aの構成を示す平面図である。
図1から
図3に示すトランス10Aは、コア体20と、ベース体30と、端子部材60と、一次巻線70と、二次巻線80とを主要な構成要素としている。
【0016】
図1および
図2に示すように、コア体20は、一対のコア21を突き合わせることで構成されている。かかるコア21の構成を
図4に示す。
図4は、コア体20を構成するコア21の構成を示す斜視図である。
図4に示すように、本実施の形態では、コア21は、その外観が略E型となるE型コアとなっている。このコア21は、板状の連結基部211の両端の各々に外脚212を立設すると共に、それらの両外脚212の間に中脚213を立設している。一対のコア21の間では、その外脚212と中脚213とが突き合わされている。かかる突き合わせによってコア体20が構成され、そのコア体20によって、一次巻線70および二次巻線80における相互誘導に際しての磁路を構成する。
【0017】
なお、一対のコア21の中脚213は、後述するベース体30の中空部511(
図2参照)に差し込まれ、その中空部511の内部において突き合わされている。また、本実施の形態では、一対のコア21は、両方が同じ形状となっている。しかしながら、一対のコア21が互いに異なる形状であっても良い。また、以下の説明においては、一対のコア21同士を区別する必要がある場合には、上方側(Z1側)に位置するコア21をコア21aと称呼し、下方側(Z2側)に位置するコア21をコア21bと称呼する。しかしながら、両者を区別する必要がない場合には、単にコア21と称呼する。
【0018】
一対のコア21は、その材質を磁性材としているが、磁性材としては、たとえば、ニッケル系のフェライトまたはマンガン系のフェライト等の種々のフェライト、パーマロイ、センダスト等、各種の磁性材料および各種の磁性材料の混合物を用いることが可能である。
【0019】
図5は、ベース体30の構成を示す斜視図である。ベース体30は、たとえば樹脂のような電気的な絶縁性を備える材質から形成されている。このベース体30には、ベース部40と、ボビン部50とが設けられている。ベース部40は、ボビン部50を下方側(Z2側)で支持する部分である。このベース部40には、一対の端子台部41と、連結部43とが設けられている。
【0020】
端子台部41は、連結部43を挟んで、トランス10Aの幅方向(Y方向)の一方側(Y1側)および他方側(Y2側)にそれぞれ設けられている。この端子台部41は、端子部材60が取り付けられている部分である。具体的には、たとえばベース体30を形成する際に、端子部材60を金型内部に設置し、その後に射出成形することによって、端子台部41に端子部材60の上方側(Z1側)が埋め込まれた状態で取り付けられている。
【0021】
この端子台部41には、端末ガイド部42が設けられている。端末ガイド部42は、一次巻線70または二次巻線80の端末を、端子部材60に向けてガイドするための部分である。かかる端末が端子部材60に向かう際のガイド性を良好にするため、端末ガイド部42は、上下方向に対して傾斜した傾斜壁部421と、その傾斜壁部421の下方側で上下方向に沿うように連なる仕切壁422とを有している。
【0022】
また、端末ガイド部42には、隣接する端子部材60に向かう端末同士を仕切るための仕切壁422も設けられている。
図2に示すように、仕切壁422の存在する位置は、いずれかの端子部材60の近傍となっている。しかも、
図2に示すように、端子台部41の長手方向(X方向)の位置においては、仕切壁422の壁面は、端子部材60の外面に対して、端末の概ね直径の距離だけ離れるように配置されている。このため、仕切壁422によって端末がガイドされた端末が端子部材60に向かうと、その端末は、概ね幅方向(Y方向)に沿う状態となり、端末の位置決め性を向上させることができる。
【0023】
なお、仕切壁422のうち、端子台部41の長手方向(X方向)の中央部分に位置する仕切壁422aは、端子部材60には近接していない。しかしながら、仕切壁422aを利用して(引っ掛けて)、巻枠部から端子部材60に端末をガイドすることにより、一次巻線70側の端末と二次巻線80側の端末とが近接してしまうのを防止可能となる。
【0024】
また、一対の端子台部41を連結するように、連結部43が設けられている。連結部43は、板状部の部分であり、その上面側(Z1側)にはボビン部50が一体的に設けられている。
【0025】
また、ベース部40のうち連結部43の下面側(Z2側)には、コア取付凹部44も設けられている。
図5に示すように、コア取付凹部44は、下方側(Z2側)のコア21bを位置させるための部分であり、一対の端子台部41の間に位置している。なお、コア取付凹部44の凹み深さを、端子台部41の下端面から連結部43の下面までとすると、その凹み深さは、コア21bの連結基部211の厚み以上となっている。
【0026】
次に、ボビンに対応するボビン部50について説明する。
図2および
図5に示すように、ボビン部50には、筒状部51と、下鍔部52と、上鍔部53と、コア押さえ部56とが設けられている。筒状部51は、中空の円筒状に設けられている部分である。この筒状部51の中空部511(
図2参照)は、ボビン部50の全体を上下方向に貫くと共に、上述した連結部43も貫いている。
【0027】
また、筒状部51の上下方向の中途部分には、下鍔部52が連なっていて、さらに筒状部51の上端側(Z1側)には、上鍔部53が連なっている。下鍔部52および上鍔部53は、共に、筒状部51よりも外周側に突出するように設けられている部分である。そして、筒状部51、下鍔部52および上鍔部53で囲まれることにより、一次巻線70および二次巻線80を位置決めするための巻枠部54が構成される。なお、上鍔部53は、鍔部に対応する。
【0028】
ここで、下鍔部52には、ガイド切欠部521が設けられている。ガイド切欠部521は、下鍔部52を周方向における所定角度に亘って切り欠いた部分であり、それによって巻枠部54に巻回された一次巻線70および二次巻線80の端末を、端子部材60に向けて良好に導出するようにしている。
【0029】
なお、下鍔部52の下方側には、隙間部55が設けられている。この隙間部55には、一次巻線70または二次巻線80の端末を巻き付けることが可能であり、それによって端末の導出方向を適宜変更することが可能となる。なお、隙間部55に対して、一次巻線70と二次巻線80の少なくとも一方を巻回させることにより、隙間部55を巻枠部として利用するようにしても良い。
【0030】
図1から
図3および
図5に示すように、上鍔部53の上面側からは、一対のコア押さえ部56が上方側(Z1側)に突出するように設けられている。コア押さえ部56は、上鍔部53との間で、上方側(Z1側)に位置するコア21aの連結基部211を挟み込む部分である。かかるコア押さえ部56の存在により、コア21aの連結基部211にクラック等が生じて連結基部211が破損した場合でも、破損したコア断片が飛散するのを防止可能となっている。
【0031】
また、
図1から
図3および
図5に示すように、一対のコア押さえ部56の間には、所定の隙間(第2隙間S2とする)が存在している。この第2隙間S2は、コア21aを挿入可能な程度の幅に設けられている。すなわち、XY平面において、第2隙間S2の寸法をL1、コア21aの幅をL2とすると(
図3参照)、L1≧L2が成り立つように設けられている。ただし、コア押さえ部56を弾性的に変形させて、押さえ板部562と上鍔部53の間にコア21aを入り込ませる場合には、寸法L2が、寸法L1よりも小さくても良い。
【0032】
図1、
図3および
図5に示すように、コア押さえ部56は、円弧状の外周壁面を有している。このコア押さえ部56は、支持柱部561と、押さえ板部562とを備えているが、上鍔部53に対しては、支持柱部561のみが接続されている。すなわち、押さえ板部562は、上鍔部53には直接連なっておらず、支持柱部561によって支持されている。換言すれば、押さえ板部562の厚みは、支持柱部561の高さ方向の寸法よりも小さい板状となっている。したがって、押さえ板部562と上鍔部53の間の隙間(第1隙間S1とする)には、コア21aが入り込むことが可能となっている。
【0033】
なお、
図2に示すように、第1隙間S1の高さ方向(Z方向)の寸法をL3、連結基部211の厚み(Z方向の寸法)をL4とすると、L3≧L4が成り立つように設けられている。しかしながら、コア押さえ部56を弾性的に変形させて、押さえ板部562と上鍔部53の間にコア21aを入り込ませる場合には、コア21aを挿入する前の段階で寸法L3がL4よりも小さくても良い。
【0034】
また、支持柱部561と押さえ板部562の上面は、同一平面となるように設けられている。したがって、
図3に示すように、コア押さえ部56を上方から見た場合、円を直線でカットしたような形状(ただし、
図3に示す構成では、コア押さえ部56の円弧は半円の円弧より小さい)に設けられている。
【0035】
ここで、
図5に示すように、それぞれの支持柱部561には、角度の異なる2つの平面状の壁面がそれぞれ存在している。かかる壁面のうち、XY平面において端子台部41の長手方向(X方向)に沿うものを保持壁563とし、端子台部41の長手方向(X方向)に対して所定の角度をなすものを挿入ガイド壁564とする。本実施の形態では、
図3および
図5等から明らかなように、保持壁563と挿入ガイド壁564とが交差する頂点付近の角度は、鈍角となっている。かかる鈍角としては、90度よりも大きく160度以下とするものがある。しかしながら、上述した頂点付近の角度は、90度であっても良く、また180度よりも小さく160度以上であっても良い。
【0036】
図1および
図3から明らかなように、保持壁563は、取付状態におけるコア21aの連結基部211に対して近接対向するか、または接触する壁面である。そのため、保持壁563は、コア21aがXY平面内で回転してしまうのを抑える(回転方向の位置決めする)機能を有している。また、
図2に示すように、保持壁563と、上鍔部53と、押さえ板部562とによって、コア21aが入り込む第1隙間S1が形成されている。
【0037】
なお、
図3に示すように、端子台部41の長手方向(X方向)において、一対の保持壁563は、同一の位置には存在しておらず、異なる位置に存在している。この場合、一対の保持壁563は、端子台部41の長手方向(X方向)において、完全に異なる位置に存在しても良く、一部が異なる位置に存在していても良い。また、一対の保持壁563の間隔は、上述した寸法L1と同等の寸法となっているが、若干異なる寸法であっても良い。
【0038】
また、一対の挿入ガイド壁564は、上述したように、端子台部41の長手方向(X方向)に対して所定の角度を成して傾斜している壁面である。また、押さえ板部562の内側縁部562aも、挿入ガイド壁564と同一平面となるように設けられている。そして、一方側の挿入ガイド壁564と内側縁部562aと、他方側の挿入ガイド壁564と内側縁部562aの間に、上述した第2隙間S2が存在している。そして、コア21aをボビン部50に取り付ける場合、このコア21aは、先ず第2隙間S2に挿入することが可能となっている。なお、挿入ガイド壁564が端子台部41の長手方向(X方向)に対してなす角度は、上述の鈍角に対応したものであり、たとえば、90度よりも小さく20度以上とする(その中でも、たとえば90度よりも小さく30度以上とする)ものがある。しかしながら、かかる所定の角度は、何度であっても良い。
【0039】
なお、挿入ガイド壁564が端子台部41の長手方向(X方向)に対してなす角度が大きくなるとコア押さえ部56の強度が弱くなり、また上述の角度が小さくなるとコア21aを押さえる面積が小さくなるので、押さえる効果が低減される。ここで、押さえ板部562のうちコア21aを押さえる部分の斜辺に対する幅方向(Y方向)における寸法は、上述の角度が30度の場合に1/2となる。したがって、上述の角度の下限としては、30度とするものがあり、90度を超えない範囲で適宜の角度(たとえば35度、40度、45度(
図3における場合)、50度、55度、60度等)に設定することができる。
【0040】
なお、
図2に示すように、巻枠部54には、一次巻線70および二次巻線80が配置されている。なお、一次巻線70と二次巻線80の内の少なくとも一方は、巻線部に対応する。一次巻線70は、図示を省略する導線を巻回することにより形成されている。導線は、導体部分が絶縁層で覆われた構成となっていて、その導線の端末は、端子部材60に絡げられている。
【0041】
また、二次巻線80も、図示を省略する導線を巻回することにより形成されている。なお、
図2においては、巻枠部54に先ず一次巻線70を巻回し、その後に二次巻線80を巻回した状態が示されている。しかしながら、先に一次巻線70を巻枠部54に巻回し、その後に二次巻線80を巻回する構成としても良い。また、一次巻線70を最初に巻回した後に二次巻線80を巻回し、その後に再び一次巻線70を巻回しても良く、二次巻線80を最初に巻回した後に一次巻線70を巻回し、その後に再び二次巻線80を巻回しても良い。
【0042】
<製造方法について>
以上のような構成のトランス10Aを製造する場合、導線を巻枠部54に巻回することにより、一次巻線70および二次巻線80を巻枠部54に形成する(巻線部形成工程に対応)。このとき、導線の端末は、それぞれ端子部材60に絡げられると共に、たとえば半田付けやレーザ溶接等の手法により、導線と端子部材60との間で電気的に導通する状態として固定する。
【0043】
その後に、下方側(Z2側)のコア21bと、上方側(Z1側)のコア21aとを、ベース体30に取り付ける。この取り付けでは、コア21bと、コア21aの各部位(たとえば、ボビン部50とそれぞれのコア21a,21bが接触する部位やコア21a,21b同士が突き合わされる部位等)に接着剤を塗布する。
【0044】
ここで、上方側(Z1側)のコア21aを取り付ける場合、先ず、第2隙間S2にコア21aを入り込ませる(挿入工程に対応)。このとき、コア21aは、端子台部41の長手方向(X方向)に対して所定の角度だけ傾斜した状態となる。なお、所定の角度とは、上述したように、たとえば挿入ガイド壁564が長手方向(X方向)に対してなす角度がある。
【0045】
そして、第2隙間S2に入り込んでいるコア21aの一部が、第1隙間S1に入り込むように回転させる(回転工程に対応)。すると、コア21aは、端子台部41の長手方向(X方向)に沿う状態となり、また下方側(Z2側)に配置されているコア21bに対して、位置ずれすることなく突き合わされる状態となる。
【0046】
この後に、塗布された接着剤を乾燥させる等により、コア21a,21bをボビン部50に対して固定する(固定工程に対応)。また、その他の必要な加工を行う。それにより、トランス10Aが形成される。また、上述の固定工程では、コア押さえ部56によってコア21aが押さえられた状態となっている。このため、コア21aを上面側から押さえるための治具が不要となっている。
【0047】
<作用効果について>
以上のような構成のトランス10Aは、導線が巻回される巻枠部54を構成する上鍔部53を備えるボビン部50を備えている。また、トランス10Aは、コア押さえ部56を備えていて、そのコア押さえ部56は、ボビン部50に取り付けられるコア21aと、上鍔部53と対向することで第1隙間S1を形成する押さえ板部562を備え、その第1隙間S1にコア21aの少なくとも一部を入り込ませることで、上鍔部53と押さえ板部562との間で、コア21aを押さえることを可能としている。
【0048】
このため、トランス10Aにおいて、部品点数の増加を抑えながらも、コア21aが破損した場合に、割れたコア21aやその破損部分が飛散するのを防止可能となる。それにより、割れたコア21aや破損部分が飛散することで二次被害が生じるのを防止可能となる。特に、トランス10Aの小型化が進展する場合、コア21aが割れ易くなるが、そのようなトランス10Aであっても、二次被害を良好に防止可能となる。
【0049】
また、コア押さえ部56は、ボビン部50と一体的に設けられている。そのため、トランス10Aの部品点数が増加するのを防止可能となる。すなわち、コア21aが破損した場合に、割れたコア21aやその破損部分が飛散するのを防止するために、ケース等にコア21を収納する構成とすることが考えられる。しかしながら、本実施の形態では、ケース等のような別途の部品を要さずに、割れたコア21aやその破損部分が飛散するのを防止可能となる。
【0050】
また、本実施の形態では、コア押さえ部56は一対設けられると共に、一対のコア押さえ部56の間には、第1隙間S1と連通する第2隙間S2が設けられていて、その第2隙間S2には、コア21aの少なくとも一部が挿入可能である。また、第1隙間S1に挿入されたコア21aの長手方向と、第2隙間S2に挿入されたコア21aの長手方向とでは、回転方向における角度が異なっている。そして、一対のコア押さえ部56は、コア21aの長手方向(X方向)において異なる位置で、コア21aを押さえている。
【0051】
このため、先に第2隙間S2にコア21aを入り込ませ、その後に、第1隙間S1にコア21aが入り込むように当該コア21を回転させることにより、工数をさほど要さずに、一対のコア押さえ部56にて、コア21aを押さえる構成とすることができる。
【0052】
さらに、本実施の形態では、コア押さえ部56は、支持柱部561を有していて、その支持柱部561は、上鍔部53の表面から離間する方向(鉛直方向;Z方向)に向かって突出すると共に押さえ板部562を支持している。この支持柱部561には、保持壁563と挿入ガイド壁564とが設けられている。これらのうち、保持壁563は、第1隙間S1に挿入されたコア21aの回転方向の位置を規制すると共に、挿入ガイド壁564は、コア21aの第2隙間S2への挿入範囲を規定している。
【0053】
このように、保持壁563と挿入ガイド壁564とが存在することにより、上方側(Z1側)のコア21aをボビン部50に取り付ける際の、ガイド性および位置決め性を向上させることができる。そのため、トランス10Aの生産性を向上させることができる。
【0054】
また、本実施の形態では、一対の押さえ板部562のうち、互いに対向する内側縁部562aは、挿入ガイド壁564と面一に設けられている。したがって、コア21aを第2隙間S2に一層挿入し易くなり、トランス10Aの生産性を一層向上させることが可能となる。
【0055】
また、本実施の形態では、巻線部形成工程で巻線部(一次巻線70、二次巻線80)を形成した後に、挿入工程において第2隙間S2にコア21aを挿入している。さらに、回転工程においてコア21aを回転させて、上鍔部53とコア押さえ部56とが対向している第1隙間S1に、コア21aを入り込ませている。この回転工程の後に、固定工程においてコア21aをボビン部50に対して固定している。
【0056】
このため、トランス10Aを製造する場合に、コア21aを押さえるための別途の部材(テープ、ケース、カバー等)が不要となり、トランス10Aの生産に要するコストを低減することができると共に生産性を向上させることができる。また、固定工程では、コア押さえ部56によってコア21aが押さえられた状態となるので、コア21aを上面側から押さえるための治具を不要とすることができ、トランス10Aの生産性を一層向上させることができる。
【0057】
<変形例>
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形可能となっている。以下、それについて述べる。
【0058】
上述の実施の形態では、端子部材60は、ピンタイプのピン端子となっていて、実装されるプリント基板の孔部分に差し込まれる構成となっている。しかしながら、端子部材は、ピン端子以外のものであっても良い。このような構成のトランスを、
図6に示す。
図6に示すトランス10Bでは、
図1や
図5に示す端子部材60に代えて、端子部材60Bを備える構成が開示されている。端子部材60Bは、実装されるプリント基板の実装部位に対して平行または略平行となる状態で接触する実装部60B1を備えている。実装部60B1は、たとえば半田付けやレーザ溶接等の手法により、実装部位に対して電気的に接続される。
【0059】
また、端子部材60Bは、端子部材60Bよりも上方側(Z1側)に位置する絡げ端子部60B2も備えている。実装部60B1と絡げ端子部60B2とは、一つの端子部材60Bに存在するものであり、端子台部41の内部から突出している部分である。かかる絡げ端子部60B2は、一次巻線70の導線の端末や二次巻線80の導線の端末が絡げられる部分である。なお、絡げられた端末は、たとえば半田付けやレーザ溶接等の手法により、端子部材60Bとの間で電気的に導通する状態として固定する。
【0060】
また、上述の実施の形態では、トランス10Aにおいては、保持壁563と内側縁部562aの延伸方向が、端子台部41の長手方向(X方向)に対して傾斜するように設けられている。しかしながら、このような構成に代えて、たとえば
図7に示すような構成としても良い。
図7に示すトランス10Cは、
図1に示すコア押さえ部56と異なるコア押さえ部56Cを備えている。また、トランス10Cは、
図6に示す端子部材60Bと同様の端子部材60Cも備えていて、この端子部材60Cは、実装部60B1と同様の実装部60C1を備え、さらに絡げ端子部60B2と同様の絡げ端子部60C2も備えている。
【0061】
このコア押さえ部56Cにおいては、保持壁563C(
図7において保持壁563Cの図示は省略)の延伸方向は、端子台部41の長手方向(X方向)に沿うように設けられている。また、
図7に示す構成では、第2隙間S2に上方側(Z1側)のコア21aを入り込ませた後に、コア21aを90度程度回転させることにより、第1隙間S1にコア21aを入り込ませることが可能となっている。
【0062】
なお、
図1に示すトランス10Aと
図7に示すトランス10Cとを比較すると、
図7に示すトランス10Cでは、支持柱部561の周方向の寸法が短くなるものの、コア21aの幅方向(Y方向)の全体に亘って、押さえ板部562が比較的大面積で覆う状態となり、コア21aの保持の安定化を図ることができる。一方、
図1に示すトランス10Aでは、支持柱部561の周方向における長さを長くすることができる。したがって、コア21aを上方に移動させるような外部応力が加わった場合に、支持柱部561が破損し難い構成とすることができる。
【0063】
また、
図7に示す構成では、押さえ板部562のうち支持柱部561とは反対側が、コア21aの外方に突出する構成を容易に実現可能となっている。そのため、押さえ板部562のうちコア21aから飛び出している部分に、下方側(Z2側)に向かって突出するような突起を設ける構成とすることもできる。この場合、第1隙間S1にコア21aが嵌め込む場合には、スナップフィット機構に類する構成を実現できる。また、コア21aが第1隙間S1に嵌め込まれると、その嵌め込み状態から抜け難い構成となり、コア21aを一層安定的に保持することができる。なお、このようなスナップフィット機構に類する構成を、
図1のトランス10Aや
図6のトランス10B、またはその他のコイル部品に適用しても良いのは勿論である。
【0064】
また、上述した実施の形態においては、第2隙間S2に上方側(Z1側)のコア21aを入り込ませた後に、コア21aを回転させることによって、コア21aを第1隙間S1に入り込ませている。しかしながら、上方側(Z1側)のコア21aをスライドさせることで、第1隙間S1に入り込ませるようにしても良い。この場合、たとえば
図1に示す構成では、支持柱部561は、保持壁563と内側縁部562aの延伸方向のうち、いずれか一方側に位置する状態とすることができる。
【0065】
また、上述の各実施の形態では、ベース体30は、ベース部40とボビン部50とが一体的に構成されている。しかしながら、ベース部40とボビン部50とは、別体的な構成となっていても良い。
【0066】
また、上述の各実施の形態では、ボビン部50に取り付けられるコアは、E型コアとしている。しかしながら、コアは、E型コアに限られるものではない。たとえば外観が略U字形状のコアを組み合わせてコア体を構成したり、外観が略I字形状のコアを組み合わせてコア体を構成するようにしても良い。
【0067】
また、上述の実施の形態では、コイル品として、トランス10Aについて説明している。しかしながら、コイル部品は、トランス10Aに限られるものではなく、たとえば、インダクタ等のような他のコイル部品に本発明を適用しても良い。
【0068】
また、上述の実施の形態では、コアは一対用いられているが、1つのみのコアを用いる場合に本発明を適用しても良く、3つ以上のコアを組み合わせて用いる場合に本発明を適用しても良い。