特開2017-152703(P2017-152703A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2017-152703蓄電モジュール及び蓄電モジュールの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-152703(P2017-152703A)
(43)【公開日】2017年8月31日
(54)【発明の名称】蓄電モジュール及び蓄電モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 11/84 20130101AFI20170804BHJP
   H01M 2/20 20060101ALI20170804BHJP
   H01G 11/10 20130101ALI20170804BHJP
   H01G 11/74 20130101ALI20170804BHJP
   H01G 2/04 20060101ALI20170804BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20170804BHJP
   B23K 26/323 20140101ALI20170804BHJP
【FI】
   H01G11/84
   H01M2/20 A
   H01G11/10
   H01G11/74
   H01G1/03 Z
   B23K26/21 G
   B23K26/323
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-48985(P2017-48985)
(22)【出願日】2017年3月14日
(62)【分割の表示】特願2016-252469(P2016-252469)の分割
【原出願日】2016年7月11日
(31)【優先権主張番号】特願2015-196034(P2015-196034)
(32)【優先日】2015年10月1日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-224448(P2015-224448)
(32)【優先日】2015年11月17日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】土屋 孝之
(72)【発明者】
【氏名】石井 信治
【テーマコード(参考)】
4E168
5E078
5H043
【Fターム(参考)】
4E168BA02
4E168BA87
4E168BA89
4E168CB04
4E168DA28
5E078AA03
5E078AA10
5E078AB12
5E078HA02
5E078JA02
5E078JA07
5E078KA05
5H043AA01
5H043AA03
5H043AA12
5H043AA19
5H043BA16
5H043BA18
5H043CA05
5H043FA04
5H043FA40
5H043HA17F
5H043JA12F
5H043JA13F
5H043KA08F
5H043KA09F
5H043LA22F
(57)【要約】
【課題】蓄電セルとバスバーの接触抵抗が小さく、かつ接続強度に優れる蓄電モジュール、金属接合体及び金属接合体の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明に係る蓄電モジュールは、蓄電セルと、フレームとを具備する。蓄電セルは、正極及び負極を有する蓄電素子と、電解質と共に蓄電素子を封止する外装フィルムと、第1の金属材料からなり、正極に電気的に接続された正極タブと、第2の金属材料からなり、負極に電気的に接続された負極タブを備える。フレームは、蓄電セルを収容する収容空間を形成し、第2の金属材料からなるバスバーを備える。正極タブとバスバーは溶接によって互いに接合され、正極タブとバスバーの界面に、第1の金属材料と第2の金属材料が混合した材料混合部が形成されている。
【選択図】図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極及び負極を有する蓄電素子と、前記蓄電素子を封止する外装体と、第1の金属材料からなり、前記正極に電気的に接続された正極タブと、前記第1の金属材料とは異なる第2の金属材料からなり、前記負極に電気的に接続された負極タブを備える蓄電セルと、
前記第2の金属材料からなるバスバーとを具備し、
前記正極タブと前記バスバーの界面に、前記第1の金属材料と前記第2の金属材料が混合した材料混合部が、前記界面方向に中心がずれながら連続する弧を描くように形成されている
蓄電モジュール。
【請求項2】
正極及び負極を有する蓄電素子と、前記蓄電素子を封止する外装体と、第1の金属材料からなり、前記正極に電気的に接続された正極タブと、前記第1の金属材料とは異なる第2の金属材料からなり、前記負極に電気的に接続された負極タブを備える蓄電セルと、
前記第1の金属材料からなるバスバーとを具備し、
前記負極タブと前記バスバーの界面に、前記第1の金属材料と前記第2の金属材料が混合した材料混合部が、前記界面方向に中心がずれながら連続する弧を描くように形成されている
蓄電モジュール。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の蓄電モジュールであって、
前記第1の金属材料はアルミニウムであり、前記第2の金属材料は銅である
蓄電モジュール。
【請求項4】
正極及び負極を有する蓄電素子と、前記蓄電素子を封止する外装体と、第1の金属材料からなり、前記正極に電気的に接続された正極タブと、前記第1の金属材料とは異なる第2の金属材料からなり、前記負極に電気的に接続された負極タブとを備える蓄電セルの前記正極タブを前記第2の金属材料からなるバスバーに当接させ、
前記正極タブに、中心を一方向に移動させながら中心とは逆向きに移動する経路を含む走査経路で高エネルギー線を前記正極タブが前記バスバーに当接する方向に照射し、前記正極タブを前記バスバーに溶接する
蓄電モジュールの製造方法。
【請求項5】
正極及び負極を有する蓄電素子と、前記蓄電素子を封止する外装体と、第1の金属材料からなり、前記正極に電気的に接続された正極タブと、前記第1の金属材料とは異なる第2の金属材料からなり、前記負極に電気的に接続された負極タブとを備える蓄電セルの前記正極タブを前記第2の金属材料からなるバスバーに当接させ、
前記正極タブに、弧を描きながら弧の中心を一方向に移動させる走査経路で高エネルギー線を前記正極タブが前記バスバーに当接する方向に照射し、前記正極タブを前記バスバーに溶接する
蓄電モジュールの製造方法。
【請求項6】
正極及び負極を有する蓄電素子と、前記蓄電素子を封止する外装体と、第1の金属材料からなり、前記正極に電気的に接続された正極タブと、前記第1の金属材料とは異なる第2の金属材料からなり、前記負極に電気的に接続された負極タブとを備える蓄電セルの前記負極タブを前記第1の金属材料からなるバスバーに当接させ、
前記負極タブに、中心を一方向に移動させながら中心とは逆向きに移動する経路を含む走査経路で高エネルギー線を前記負極タブが前記バスバーに当接する方向に照射し、前記負極タブを前記バスバーに溶接する
蓄電モジュールの製造方法。
【請求項7】
正極及び負極を有する蓄電素子と、前記蓄電素子を封止する外装体と、第1の金属材料からなり、前記正極に電気的に接続された正極タブと、前記第1の金属材料とは異なる第2の金属材料からなり、前記負極に電気的に接続された負極タブとを備える蓄電セルの前記負極タブを前記第1の金属材料からなるバスバーに当接させ、
前記負極タブに、弧を描きながら弧の中心を一方向に移動させる走査経路で高エネルギー線を前記負極タブが前記バスバーに当接する方向に照射し、前記負極タブを前記バスバーに溶接する
蓄電モジュールの製造方法。
【請求項8】
請求項4から7のうちいずれか一つに記載の蓄電モジュールの製造方法であって、
前記高エネルギー線はファイバーレーザーの照射光である
蓄電モジュールの製造方法。
【請求項9】
請求項4から8のうちいずれか一つに記載の蓄電モジュールの製造方法であって、
前記正極タブ又は前記負極タブを前記バスバーに溶接する工程では、複数本の溶接痕が形成されるような走査経路で前記高エネルギー線が照射される
蓄電モジュールの製造方法。
【請求項10】
正極及び負極を有する蓄電素子と、前記蓄電素子を封止する外装体と、第1の金属材料からなり、前記正極に電気的に接続された正極タブと、前記第1の金属材料とは異なる第2の金属材料からなり、前記負極に電気的に接続された負極タブとを備える蓄電セルの前記正極タブを前記第2の金属材料からなるバスバーに当接させ、
前記正極タブに高エネルギー線を前記正極タブが前記バスバーに当接する方向に照射して前記正極タブに前記第1の金属材料が融解した融解池を形成し、かつ前記バスバーの前記融解池に当接する箇所において前記第2の金属材料を軟化させ、
前記正極タブに高エネルギー線を前記正極タブが前記バスバーに当接する方向に照射して前記融解池を撹拌し、軟化した前記第2の金属材料を前記融解池に混合させる
蓄電モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電セルを内蔵する蓄電モジュール、金属接合体及び金属接合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電池やキャパシタ等の蓄電セルを制御回路と共に筐体に収容し、一体化した蓄電モジュールは広く普及している。蓄電セルの正極と負極は、筐体内に設けられたバスバーにネジによる締結より接合され、バスバーを介して蓄電モジュールの端子に電気的に接続された構成が一般的である(例えば特許文献1)。
【0003】
一方で、蓄電モジュールは高容量化が求められており、蓄電セルとバスバーの電気的接続は大電流への対応が求められている。当該電気的接続の接触抵抗が大きければ発熱が問題となる。このため、蓄電セルの正極と負極をバスバーに溶接し、接触抵抗の低減及び接続強度の向上を図った蓄電モジュールも実現されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−229564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、蓄電セルには、近年に開発されたリチウムイオンキャパシタ等のように正極と負極の材質が異なるものが存在する。このため、正極と負極の少なくとも一方は、バスバーと材質が異なる。異種金属を溶接すると金属間化合物が界面に形成されるため、溶接は困難である。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、蓄電セルとバスバーの接触抵抗が小さく、かつ接続強度に優れる蓄電モジュール、金属接合体及び金属接合体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る蓄電モジュールは、蓄電セルと、フレームとを具備する。
上記蓄電セルは、正極及び負極を有する蓄電素子と、電解質と共に上記蓄電素子を封止する外装フィルムと、第1の金属材料からなり、上記正極に電気的に接続された正極タブと、第2の金属材料からなり、上記負極に電気的に接続された負極タブを備える。
上記フレームは、上記蓄電セルを収容する収容空間を形成し、上記第2の金属材料からなるバスバーを備える。
上記正極タブと上記バスバーは溶接によって互いに接合され、上記正極タブと上記バスバーの界面に、上記第1の金属材料と上記第2の金属材料が混合した材料混合部が形成されている。
【0008】
この構成によれば、異なる金属材料からなる正極タブとバスバーの界面に材料混合部によるアンカー効果が発生し、正極タブとバスバーの界面に強固な結合が形成される。一般に異なる金属材料を溶接すると、異なる金属材料が化合した金属化合物が形成され、接合強度が不足するが、上記構成によれば材料混合部によって正極タブとバスバーの接合強度が確保されている。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る蓄電モジュールは、蓄電セルと、フレームとを具備する。
上記蓄電セルは、正極及び負極を有する蓄電素子と、電解質と共に上記蓄電素子を封止する外装フィルムと、第1の金属材料からなり、上記正極に電気的に接続された正極タブと、第2の金属材料からなり、上記負極に電気的に接続された負極タブを備える。
上記フレームは、上記蓄電セルを収容する収容空間を形成し、上記第1の金属材料からなるバスバーを備える。
上記負極タブと上記バスバーは溶接によって互いに接合され、上記負極タブと上記バスバーの界面に、上記第1の金属材料と上記第2の金属材料が混合した材料混合部が形成されている。
【0010】
この構成によれば、異なる金属材料からなる負極タブとバスバーの界面に材料混合部によるアンカー効果が発生し、負極タブとバスバーの界面に強固な結合が形成される。
【0011】
上記第1の金属材料はアルミニウムであり、上記第2の金属材料は銅であってもよい。
【0012】
リチウムイオンキャパシタやリチウムイオン二次電池は、正極タブと負極タブを同じ金属材料とすると、電気化学的作用により一方が溶解するため、正極タブと負極タブは異なる金属材料からなる。具体的には正極タブはアルミニウムを利用することができ、負極タブは銅を利用することができる。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る蓄電モジュールの製造方法は、
正極及び負極を有する蓄電素子と、電解質と共に上記蓄電素子を封止する外装フィルムと、第1の金属材料からなり、上記正極に電気的に接続された正極タブと、第2の金属材料からなり、上記負極に電気的に接続された負極タブとを備える蓄電セルを、上記第2の金属材料からなるバスバーを備えるフレームに収容して上記正極タブを上記バスバーに当接させ、
上記正極タブに、中心を一方向に移動させながら中心とは逆向きに移動する経路を含む走査経路で高エネルギー線を照射し、上記正極タブを上記バスバーに溶接する。
【0014】
この製造方法によれば、正極タブとバスバーが、同一又は近接する領域において短時間で複数回溶接されるため、正極タブとバスバーの界面に、第1の金属材料と第2の金属材料が混合した材料混合部を形成することが可能となる。
【0015】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る蓄電モジュールの製造方法は、
正極及び負極を有する蓄電素子と、電解質と共に上記蓄電素子を封止する外装フィルムと、第1の金属材料からなり、上記正極に電気的に接続された正極タブと、第2の金属材料からなり、上記負極に電気的に接続された負極タブとを備える蓄電セルを、上記第2の金属材料からなるバスバーを備えるフレームに収容して上記正極タブを上記バスバーに当接させ、
上記正極タブに、弧を描きながら弧の中心を一方向に移動させる走査経路で高エネルギー線を照射し、上記正極タブを上記バスバーに溶接する。
【0016】
この製造方法によれば、正極タブとバスバーの溶接面積が増加すると共に同一又は近接する領域が短時間で複数回溶接されるため、正極タブとバスバーの界面に、第1の金属材料と第2の金属材料が混合した材料混合部を形成することが可能となる。
【0017】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る蓄電モジュールの製造方法は、
正極及び負極を有する蓄電素子と、電解質と共に上記蓄電素子を封止する外装フィルムと、第1の金属材料からなり、上記正極に電気的に接続された正極タブと、第2の金属材料からなり、上記負極に電気的に接続された負極タブとを備える蓄電セルを、上記第1の金属材料からなるバスバーを備えるフレームに収容して上記負極タブを上記バスバーに当接させ、
上記負極タブに、中心を一方向に移動させながら中心とは逆向きに移動する経路を含む走査経路で高エネルギー線を照射し、上記負極タブを上記バスバーに溶接する。
【0018】
この製造方法によれば、負極タブとバスバーが、同一又は近接する領域において短時間で複数回溶接されるため、負極タブとバスバーの界面に、第1の金属材料と第2の金属材料が混合した材料混合部を形成することが可能となる。
【0019】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る蓄電モジュールの製造方法は、
正極及び負極を有する蓄電素子と、電解質と共に上記蓄電素子を封止する外装フィルムと、第1の金属材料からなり、上記正極に電気的に接続された正極タブと、第2の金属材料からなり、上記負極に電気的に接続された負極タブとを備える蓄電セルを、上記第1の金属材料からなるバスバーを備えるフレームに収容して上記負極タブを上記バスバーに当接させ、
上記負極タブに、弧を描きながら弧の中心を一方向に移動させる走査経路で高エネルギー線を照射し、上記負極タブを上記バスバーに溶接する。
【0020】
この製造方法によれば、負極タブとバスバーの溶接面積が増加すると共に同一又は近接する領域が短時間で複数回溶接されるため、負極タブとバスバーの界面に、第1の金属材料と第2の金属材料が混合した材料混合部を形成することが可能となる。
【0021】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る金属接合体は、第1の部材と第2の部材を具備する。
上記第1の部材は、第1の金属材料からなる。
上記第2の部材は、上記第1の金属材料とは異なる第2の金属材料からなる。
上記第1の部材と上記第2の部材は溶接によって互いに接合され、上記第1の部材と上記第2の部材の界面において、上記第2の金属材料が上記第1の金属材料中に不規則に入り込んでいる。
【0022】
この構成によれば、異なる金属材料からなる第1の部材と第2の部材の間で、第2の金属材料が第1の金属材料中に不規則に入り込んでいるため、アンカー効果が発生し、第1の部材と第2の部材の界面に強固な結合が形成され、第1の部材と第2の部材の接合強度が確保されている。
【0023】
上記第1の金属材料は上記第2の金属材料より融点が低い金属材料であってもよい。
【0024】
高エネルギー線による溶接によって上記構造を形成することが可能であるが、第1の金属材料の融点が第2の金属材料の融点より低いと、第1の部材に形成される融解池に第2の金属材料が入り込みやすく、上記構造を形成しやすいため好適である。
【0025】
上記第1の金属材料はアルミニウムであり、上記第2の金属材料は銅であってもよい。
【0026】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る金属接合体の製造方法は、
第1の金属材料からなる第1の部材を上記第1の金属材料とは異なる第2の金属材料に当接させ、
上記第1の部材に、中心を一方向に移動させながら中心とは逆向きに移動する経路を含む走査経路で高エネルギー線を照射し、上記第1の部材を上記第2の部材に溶接する。
【0027】
第1の部材に、中心を一方向に移動させながら中心とは逆向きに移動する経路を含む走査経路で高エネルギー線を照射することにより、第1の部材と第2の部材が、同一又は近接する領域において短時間で複数回溶接されるため、第1の金属材料の融解池が撹拌され、軟化又は融解した第2の金属材料の表層部が上記第1の金属材料中に不規則に入り込んだ構造が形成される。
【0028】
上記第1の部材を上記第2の部材に溶接する工程は、上記第1の部材に、弧を描きながら弧の中心を一方向に移動させる走査経路で高エネルギー線を照射してもよい。
【0029】
この製造方法によれば、第1の部材と第2の部材の溶接面積が増加すると共に同一又は近接する領域が短時間で複数回溶接されるため、第1の金属材料の融解池が撹拌され、軟化又は融解した第2の金属材料の表層部が上記第1の金属材料中に不規則に入り込んだ構造が形成される。
【0030】
上記第1の金属材料は上記第2の金属材料より融点が低い金属材料であってもよい。
【0031】
第1の金属材料の融点が第2の金属材料の融点より低いと、第1の部材に高エネルギー線を照射した際に第1の部材に形成される融解池に第2の金属材料が入り込みやすく、上記構造を形成しやすいため好適である。
【0032】
上記高エネルギー線はファイバーレーザーの照射光であってもよい。
【0033】
ファイバーレーザーは連的な軌跡を描くことが可能であり、中心を一方向に移動させながら中心とは逆向きに移動する経路を含む走査経路でレーザーを走査することが可能である。
【0034】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る蓄電モジュールの製造方法は、正極及び負極を有する蓄電素子と、電解質と共に前記蓄電素子を封止する外装フィルムと、第1の金属材料からなり、前記正極に電気的に接続された正極タブと、第2の金属材料からなり、前記負極に電気的に接続された負極タブとを備える蓄電セルを、前記第2の金属材料からなるバスバーを備えるフレームに収容して前記正極タブを前記バスバーに当接させる。
前記正極タブに高エネルギー線を照射して前記正極タブに前記第1の金属材料が融解した融解池を形成し、かつ前記バスバーの前記融解池に当接する箇所において前記第2の金属材料を軟化させる。
前記正極タブに高エネルギー線を照射して前記融解池を撹拌し、軟化した前記第2の金属材料を前記融解池に混合させる。
【0035】
この製造方法によれば、バスバーを構成する第2の金属材料が正極タブを構成する第1の金属材料中に不規則に入り込み、アンカー効果によって正極タブとバスバーとの間に強固な結合が形成されるため、正極タブとバスバーの接合強度を確保することができる。
【0036】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る金属接合体の製造方法は、第1の金属材料からなる第1の部材を前記第1の金属材料とは異なる第2の金属材料に当接させる。
前記第1の部材に高エネルギー線を照射して前記第1の部材に前記第1の金属材料が融解した融解池を形成し、かつ前記第2の部材の前記融解池に当接する箇所において前記第2の金属材料を軟化させる。
前記第1の部材に高エネルギー線を照射して前記融解池を撹拌し、軟化した前記第2の金属材料を前記融解池に混合させる。
【0037】
この製造方法によれば、第2の部材を構成する第2の金属材料が第1の部材を構成する第1の金属材料中に不規則に入り込み、アンカー効果によって第1の部材と第2の部材との間に強固な結合が形成されるため、第1の部材と第2の部材の接合強度を確保することができる。
【発明の効果】
【0038】
以上のように本発明によれば、蓄電セルとバスバーの接触抵抗が小さく、かつ接続強度に優れる蓄電モジュール、金属接合体及び金属接合体の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明の実施形態に係る蓄電モジュールの斜視図である。
図2】同蓄電モジュールの分解斜視図である。
図3】同蓄電モジュールが備えるフレームの構成を示す模式図である。
図4】同蓄電モジュールが備えるフレームの平面図である。
図5】同蓄電モジュールが備えるフレームの平面図である。
図6】同蓄電モジュールが備えるフレームの平面図である。
図7】同蓄電モジュールが備える蓄電セルの斜視図である。
図8】同蓄電モジュールが備える蓄電セルの断面図である。
図9】同蓄電モジュールが備えるフレーム及び蓄電セルの平面図である。
図10】同蓄電モジュールが備えるフレーム及び蓄電セルの断面図である。
図11】同蓄電モジュールにおける蓄電セルとバスバーの接続関係を示す模式図である。
図12】同蓄電モジュールにおける蓄電セルとバスバーの溶接箇所の平面図である。
図13】同蓄電モジュールにおける蓄電セルとバスバーの溶接箇所の拡大図である。
図14】同蓄電モジュールにおける蓄電セルとバスバーの溶接の際のレーザーの走査経路を示す模式図である。
図15】同蓄電モジュールにおける蓄電セルとバスバーの溶接の際のレーザーの走査経路を示す模式図である。
図16】同蓄電モジュールにおける蓄電セルとバスバーの溶接箇所の断面図である。
図17】異種金属材料の溶接によって生じる金属間化合物を示す模式図である。
図18】同蓄電モジュールにおける蓄電セルとバスバーの溶接の際のレーザーの走査経路を示す模式図である。
図19】本発明の実施形態に係る金属接合体の断面図である。
図20】同金属接合体の溶接プロセスを示す模式図である。
図21】本発明の実施形態に係る金属接合体の断面図である。
図22】同金属接合体の溶接プロセスを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の実施形態に係る蓄電モジュールについて説明する。
【0041】
[蓄電モジュールの構成]
図1は、本実施形態に係る蓄電モジュール10の斜視図であり、図2は蓄電モジュール10の分解斜視図である。なお、以下の図面において、X方向、Y方向及びZ方向は互いに直交する三方向である。
【0042】
図1及び図2に示すように、蓄電モジュール10は、フレーム11、蓄電セル12(12A〜12D)、第1電圧検出基板13、第2電圧検出基板14、コネクタ基板15、第1プレート16、第2プレート17、第1伝熱絶縁シート18及び第2伝熱絶縁シート19を備える。蓄電モジュール10は4つの蓄電セル12を備えており、各蓄電セル12を蓄電セル12A、12B、12C及び12Dとする。
【0043】
フレーム11は、中空の枠状部材であり、蓄電セル12の収容空間を形成する。図1及び図2に示すように、フレーム11の一面には、コネクタ孔11a、ネジ孔11b、正極端子11c、負極端子11d及び極性表示11eが設けられている。コネクタ孔11aは、フレーム11に二つが設けられているが、一つ又は三つ以上が設けられてもよい。
【0044】
ネジ孔11bは、フレーム11に二つが設けられており、正極端子11c及び負極端子11dはネジ孔11bの周囲にそれぞれ設けられている。極性表示11eは正極端子11c及び負極端子11dの近傍に一つずつが設けられており、正極端子11c及び負極端子11dの極性(+又は−)を表す表示である。
【0045】
フレーム11は、インサート成型により形成され、合成樹脂からなる樹脂部材の内部にバスバー110が埋設された構成を有する。図3は、フレーム11及びバスバー110の模式図であり、図4乃至図6は、フレーム11を各方向からみた平面図である。
【0046】
これらの図に示すように、バスバー110は、第1バスバー111、第2バスバー112、第3バスバー113、第4バスバー114及び第5バスバー115の五つのバスバーを含む。それぞれのバスバーは、離間した状態でフレーム11に埋設され、一部はフレーム11から露出している。
【0047】
第1バスバー111は、図4に示すように、フレーム11の上面側(第1プレート16側)において露出すると共に、図6に示すように一方のネジ孔11bの周囲において露出し、正極端子11cを形成する。第2バスバー112は、図5に示すように、フレーム11の下面側(第2プレート17側)において露出すると共に、図6に示すように他方のネジ孔11bの周囲において露出し、負極端子11dを形成する。
【0048】
第3バスバー113は、図4に示すようにフレーム11の上面側の2箇所において露出し、第4バスバー114は、図5に示すようにフレーム11の下面側の2箇所において露出する。第5バスバー115は、図4及び図5に示すように、フレーム11の上面側及び下面側に露出する。
【0049】
バスバー110は、銅からなるものとすることができる。またこの他にもバスバー110は、導電性の高い金属材料からなるものとすることができる。
【0050】
蓄電セル12(12A〜12D)は、蓄電及び放電が可能なセルであり、リチウムイオンキャパシタ又はリチウムイオン二次電池等である。図7は蓄電セル12の斜視図であり、図8は蓄電セル12の断面図である。
【0051】
これらの図に示すように、蓄電セル12は、蓄電素子121、外装フィルム122、正極タブ123、負極タブ124、正極導体125及び負極導体126を備える。
【0052】
蓄電素子121は、正極127、負極128及びセパレータ129から構成され、正極127及び負極128はセパレータ129を介して交互に積層されている。
【0053】
正極127は、正極活物質を含み、金属からなる正極集電体の表裏両面に、正極活物質が積層されて構成されたものとすることができる。正極活物質は例えば活性炭であり、蓄電セル12の種類に応じて適宜変更することができる。
【0054】
負極128は、負極活物質を含み金属からなる負極集電体の表裏両面に、負極活物質が積層されて構成されたものとすることができる。負極活物質は例えば炭素系材料であり、蓄電セル12の種類に応じて適宜変更することができる。
【0055】
セパレータ129は、正極127と負極128の間に配置され、電解質を通過させると共に正極127と負極128の接触を防止(絶縁)する。セパレータ129は、織布、不織布又は合成樹脂微多孔膜等であるものとすることができ、セルロース系やポリオレフィン系の材料を使用できる。
【0056】
蓄電素子121を構成する正極127及び負極128の数は特に限定されず、正極127と負極128がセパレータ129を介して交互に積層された構成であればよい
【0057】
蓄電素子121は、電解質と共に外装フィルム122によって封止されている。電解質は特に限定されず、蓄電セル12の種類に応じて適宜変更することができる。外装フィルム122は、金属箔の表裏に合成樹脂を積層したラミネートフィルムとすることができ、二枚の外装フィルム122が蓄電素子121の周縁において融着され、内部を封止する。
【0058】
外装フィルム122には、正極タブ123および負極タブ124が互いに離間して挟みこまれている。正極タブ123は、配線又は箔である正極導体125によって正極127に電気的に接続し、負極タブ124は、配線又は箔である負極導体126によって負極128に電気的に接続する。
【0059】
正極タブ123と負極タブ124は、互いに異なる金属材料からなる。具体的には正極タブ123はアルミニウムからなり、負極タブ124は銅からなるものとすることができる。これは、蓄電セル12がリチウムイオンキャパシタやリチウムイオン二次電池である場合、正極タブ123と負極タブ124を同じ金属材料とすると、電気化学的作用により一方が溶解するためである。
【0060】
図2に示すように、第1プレート16側の蓄電セル12(12A及び12B)と第2プレート17側の蓄電セル12(12C及び12D)がそれぞれZ方向に積層され、蓄電モジュール10に収容されている。蓄電モジュール10は4つの蓄電セル12を備えるものとすることができるが、これに限定されず、二つの蓄電モジュール10がZ方向に積層された組を一つ又は複数備えるものとすることができる。即ち蓄電モジュール10は、偶数個の蓄電モジュール10を備えるものとすることができる。
【0061】
各蓄電セル12の正極タブ123及び負極タブ124は、バスバー110を介して、正極端子11c及び負極端子11dに接続されている。図9は、フレーム11に収容された蓄電セル12を示す平面図である。図10は、フレーム11に収容された蓄電セル12を示す断面図であり、図9のA−A線での断面図である。図11は、各蓄電セル12の正極タブ123及び負極タブ124とバスバー110の接続関係を示す模式図である。
【0062】
図11に示すように、蓄電セル12Aの正極タブ123Aは第1バスバー111に、蓄電セル12Aの負極タブ124Aは第3バスバー113にそれぞれ接続される。蓄電セル12Bの正極タブ123Bは、第3バスバー113に、蓄電セル12Bの負極タブ124Bは、第5バスバー115にそれぞれ接続される。
【0063】
また、蓄電セル12Cの正極タブ123Cは第4バスバー114に、蓄電セル12Cの負極タブ124Cは第2バスバー112にそれぞれ接続される。蓄電セル12Dの正極タブ123Dは、第5バスバー115に、蓄電セル12Dの負極タブ124Dは第4バスバー114にそれぞれ接続される。各蓄電セル12の正極タブ123及び負極タブ124と各バスバーの接続の詳細については後述する。
【0064】
第1電圧検出基板13は、第1プレート16側の蓄電セル12(12A及び12B)の電圧を監視する。第1電圧検出基板13はフレーム11に固定され、蓄電セル12A及び12Bの正極タブ123及び負極タブ124に電気的に接続されている。
【0065】
第2電圧検出基板14は、第2プレート17側の蓄電セル12(12C及び12D)の電圧を監視する。第2電圧検出基板14は、フレーム11に固定され、蓄電セル12C及び12Dの正極タブ123及び負極タブ124に電気的に接続されている。
【0066】
コネクタ基板15は、コネクタ151及びコネクタ152及び信号処理回路等を備える。コネクタ151は、配線を介して第1電圧検出基板13及び第2電圧検出基板14に接続され、各蓄電セル12において検出された電圧が入力される。コネクタ152は、コネクタ孔11aに挿通され、検査用の外部機器が接続される。
【0067】
第1プレート16は、アルミニウム等の金属材料からなる平板状の部材であり、フレーム11に接合される。第1プレート16は、ネジによってフレーム11にネジ止めされるものとすることができるが、他の固定方法によってフレーム11に接合されてもよい。
【0068】
第2プレート17は、アルミニウム等の金属材料からなる平板状の部材であり、フレーム11に接合される。第2プレート17は、ネジによってフレーム11にネジ止めされるものとすることができるが、他の固定方法によってフレーム11に接合されてもよい。
【0069】
第1伝熱絶縁シート18は、第1プレート16に貼付されているシート状の部材であり、熱伝導性及び絶縁性が高い材料からなる。第1伝熱絶縁シート18は、第1プレート16がフレーム11に固定されると第1プレート16側の蓄電セル12(12A及び12B)と第1プレート16によって挟持され、これらの蓄電セル12の熱を第1プレート16に伝達する。
【0070】
第2伝熱絶縁シート19は、第2プレート17に貼付されているシート状の部材であり、熱伝導性及び絶縁性が高い材料からなる。第2伝熱絶縁シート19は、第2プレート17がフレーム11に固定されると第2プレート17側の蓄電セル12(12C及び12D)と第2プレート17によって挟持され、これらの蓄電セル12の熱を第2プレート17に伝達する
【0071】
[蓄電セルとバスバーの接続について]
上記のように、各蓄電セル12の正極タブ123と負極タブ124は、バスバー110に接続されている。正極タブ123と負極タブ124は、互いに異なる金属材料からなるため、少なくともいずれか一方は、バスバー110とは異なる金属材料からなる。具体的には、バスバー110は銅からなるが、正極タブ123はアルミニウムからなるものとすることができる。
【0072】
ここで、蓄電モジュール10では、正極タブ123及び負極タブ124は、レーザー溶接によってバスバー110(第1バスバー111〜第5バスバー115のいずれか)に溶接されている。図12は、正極タブ123及びバスバー110の溶接箇所を示す模式図であり、図13は同溶接箇所の拡大図である。
【0073】
図12に示すように、正極タブ123には、複数本の溶接痕Lが形成されており、図13に示すように各溶接痕Lは、一方向に沿って連続的に配列する円弧状に形成されている。なお、溶接痕Lの本数は特に限定されず、溶接面積に応じて適宜選択される。
【0074】
図14及び図15は、レーザーの走査経路を示す模式図である。これらの図に示すように、レーザーは、正極タブ123表面に照射され、走査される。ここでレーザーは、中心が進む方向と逆向きに進む軌跡を描くような走査経路で走査される。
【0075】
図14において、レーザーの走査経路Sと、レーザーの中心が進む経路Fを示す。また、レーザーの走査経路S上において、経路Fと同じ向きを向きP1とし、経路Fと逆向きを向きP2として示す。同図に示すように、レーザーは、弧を描きながら弧の中心を一方向(経路F)に移動させる走査経路で走査され、走査経路Sの一部は向きP2に沿って進行する。
【0076】
これにより、正極タブ123上の同一箇所に複数回レーザーが照射され、図15に示すように、一方向(経路F)に沿って連続的に配列する円弧状の溶接痕Lが形成される。
【0077】
図16は、正極タブ123とバスバー110の溶接箇所の模式的な断面図である。同図に示すように、正極タブ123とバスバー110の界面には、レーザー溶接によって生成した材料混合部Mが形成されている。材料混合部Mは、正極タブ123とバスバー110の構成材料が混合した部分である。
【0078】
一方、図17は、銅からなる部材Aと、アルミニウムからなる部材Bを一般的なレーザー溶接(点溶接又は線溶接)によって溶接した場合の溶接痕を示す断面図である。同図に示すように、溶接箇所には、部材Aの組織が溶接熱によって変化した組織変化部Cと部材Bの組織が溶接熱によって変化した組織変化部Dが形成され、組織変化部Cと組織変化部Dの界面にはこれらの化合物である金属間化合物Eが形成されている。この金属間化合物Eによって部材Aと部材Bの接合強度が不足する。
【0079】
これに対し、上記のように連続的に弧を描きなが弧の中心を一方向に移動させる走査経路でレーザー溶接をすることで溶接面積が増加するほか、異種金属同士が混ざり合い複雑に結合される。これにより金属間化合物が界面に発生せず、アンカー効果が発生する。従って、合金化にならないまでも強固な結合が可能となる。なお、レーザーの走査経路は上記ような走査経路に限られず、中心が進む方向と逆向きに進む軌跡を描くような走査経路を設けることにより材料混合部が形成されればよい。
【0080】
図18は、レーザーの走査経路の他の例である。同図に示すように、レーザーの走査経路Sは、直線状であり、レーザーの中心が進む方向と逆向き及びレーザーの中心が進む方向に対して垂直方向に進む軌跡を描くような走査経路であってもよい。走査経路Sがレーザーの中心が進む方向と垂直な方向へ進行することにより、溶接面積が増加するという効果が得られる。この他にも、レーザーの走査経路は、同じ直線状を一方向とその逆方向に進行することを交互に繰り返すものであってもよい。
【0081】
上記のレーザー溶接に用いられるレーザーの種類は特に限定されない。しかしながら、連続的な軌跡を描くことが可能なファイバーレーザーが好適である。
【0082】
また、強度確認においてアルミニウムからなる正極タブ123と銅からなるバスバー110の引き剥がしを行ったところ、正極タブ123自体が破壊され、溶接部はバスバー110に接続された状態となり、溶接部が母材強度を上回ることが確認されている。
【0083】
また、ここでは正極タブ123とバスバー110の溶接について説明したが、負極タブ124とバスバー110についても、正極タブ123と同様にレーザー溶接することが可能である。一方で、負極タブ124とバスバー110が同種の金属材料からなる場合には、金属間化合物が形成されないため、一般的な溶接方法によって溶接してもよい。
【0084】
また、上記説明では、正極タブ123とバスバー110の構成材料が異なる場合について説明したが、負極タブ124とバスバー110の構成材料が異なる場合についても上記のような方法でレーザー溶接を行うことができる。
【0085】
具体的には、正極タブ123とバスバー110がアルミニウムからなり、負極タブ124が銅からなる場合である。この場合にも負極タブ124に上記のような走査経路でレーザーを照射することにより、負極タブ124とバスバー110の間に材料混合部が形成され、両者が十分な接合強度で溶接される。この他にも本発明は、正極タブ123と負極タブ124のうち少なくともいずれか一方の構成材料がバスバー110の構成材料と異なっている場合に適用することが可能である。
【0086】
[金属接合体について]
上記説明においては、蓄電モジュールの正極タブ又は負極タブとバスバーのレーザー溶接について説明したが、本実施形態は他の金属部材の接合に利用することも可能である。
【0087】
図19は、本実施形態に係る金属接合体200の断面図である。同図に示すように、金属接合体200は、第1部材210及び第2部材220が接合されて構成されている。
【0088】
第1部材210は第1の金属材料からなり、第2部材220は第1の金属材料とは異なる第2の金属材料からなる。第1の金属材料は第2の金属材料より融点の低い材料からなり、第1の金属材料はアルミニウム(融点:約650℃)、第2の金属材料は銅(融点:約1050℃)であるものとすることができる。
【0089】
第1部材210と第2部材220は、レーザー溶接によって接合されており、図19に示すように、第1部材210と第2部材220の界面において、第2の金属材料が第1の金属材料中に不規則に入り込んでいる。
【0090】
第1部材210と第2部材220は、第1部材210と第2部材220を当接させ、第1部材210に、中心を一方向に移動させながら中心とは逆向きに移動する経路を含む走査経路(図14参照)でレーザーを照射することで溶接される。
【0091】
具体的には、レーザーの走査経路は、中心が進む方向と逆向きに進む軌跡を描くような走査経路(図15参照)や直線状であり、レーザーの中心が進む方向と逆向き及びレーザーの中心が進む方向に対して垂直方向に進む軌跡を描くような走査経路(図18参照)とすることができる。
【0092】
図20は、レーザー溶接のプロセスを示す模式図である。同図に示すように、第1部材210にレーザーGを照射すると、第1の金属材料が融解し、融解池210aが形成される。同時に、レーザー照射のエネルギーによって、軟化又は融解した第2の金属材料の表層部が融解池210aに向けて不規則に立ち上がり(図中、矢印220a)、融解池210aに流れ込む。
【0093】
レーザーGの照射が終了すると、第1の金属材料と第2の金属材料は凝固し、図19に示すような第2の金属材料が第1の金属材料中に不規則に入り込んだ構造が形成される。この構造により、第1部材210と第2部材220の間でアンカー効果が発生し、両部材が強固に接合される。
【0094】
レーザーGの走査経路は、上記のように中心を一方向に移動させながら中心とは逆向きに移動する経路を含む走査経路であり、このような走査経路によって融解池210aが撹拌され、軟化又は融解した第2の金属材料表層の立ち上がりが発生する。これに対し、一般的なレーザー溶接(点溶接又は線溶接)では融解池210aが撹拌されず、第2の金属材料の立ち上がりは発生しない。
【0095】
また、上記説明では、1本のレーザーによって二つの金属部材を接合するものとしたが、複数本のレーザー走査によって二つの金属部材を接合してもよい。具体的には、第1部材210にレーザーを照射して第1の金属材料を融解させ、図18に示すように、融解池210aを形成する。この際、第2部材220の融解池210aに当接する箇所では第2の金属材料が軟化する。
【0096】
続いて、融解池210aに2本目のレーザーを照射し、融解池210aを撹拌する。これにより、軟化した第2の金属材料が融解池210aに混合される。レーザーの照射が終了すると、第1の金属材料と第2の金属材料は凝固し、図19に示すような第2の金属材料が第1の金属材料中に不規則に入り込んだ構造が形成される。この構造により、第1部材210と第2部材220の間でアンカー効果が発生し、両部材が強固に接合される。
【0097】
上述の蓄電モジュール100の構成において、バスバー110が第2部材220であり、正極タブ123と負極タブ124のうちバスバー110と材料が異なる方が第1部材210であるものとすると、通常のレーザー溶接に比べて正極タブ123又は負極タブ124とバスバー110の接触抵抗が小さくなり、接合強度も向上させることができる。
【0098】
また、上記説明では融点が低い第1の金属材料にレーザーを照射したが、融点が高い第2の金属材料にレーザーを照射してもよい。図21は、本実施形態に係る金属接合体300の断面図である。同図に示すように、金属接合体300は、第1部材310及び第2部材320が接合されて構成されている。
【0099】
第1部材310を構成する第1の金属材料は、第2部材320を構成する第2の金属材料より融点が小さい材料からなり、第1の金属材料はアルミニウム(融点:約650℃)、第2の金属材料は銅(融点1050℃)であるものとすることができる。
【0100】
第1部材310と第2部材320は、レーザー溶接によって接合されており、図21に示すように、第1部材310と第2部材320の界面において、第2の金属材料が第1の金属材料中に不規則に入り込んでいる。
【0101】
第1部材310と第2部材320は、第1部材310と第2部材320を当接させ、第2部材320に、中心を一方向に移動させながら中心とは逆向きに移動する経路を含む走査経路(図14参照)でレーザーを照射することで溶接される。
【0102】
具体的には、レーザーの走査経路は、中心が進む方向と逆向きに進む軌跡を描くような走査経路(図15参照)や直線状であり、レーザーの中心が進む方向と逆向き及びレーザーの中心が進む方向に対して垂直方向に進む軌跡を描くような走査経路(図18参照)とすることができる。
【0103】
図22は、レーザー溶接のプロセスを示す模式図である。同図に示すように、第2部材320にレーザーGを照射すると、第2部材320を構成する第2の金属材料が融解し、融解池320aが形成される。また、第1部材310を構成する第1の金属材料も融解し、融解池310aが形成される。ここで、第1の金属材料は第2の金属材料より融点が小さいため、融解池310aの粘度は融解池320aの粘度より低くなる。
【0104】
第2の金属材料はレーザーによって粘度が低い融解池310aに押し込まれ、融解池320a中に不規則に流れ込む。レーザーGの照射が終了すると、第1の金属材料と第2の金属材料は凝固し、図21に示すような第2の金属材料が第1の金属材料中に不規則に入り込んだ構造が形成される。この構造により、第1部材310と第2部材320の間でアンカー効果が発生し、両部材が強固に接合される。
【0105】
レーザーGの走査経路は、上記のように中心を一方向に移動させながら中心とは逆向きに移動する経路を含む走査経路である。上述の蓄電モジュール100の構成において、バスバー110が第1部材310であり、正極タブ123と負極タブ124のうちバスバー110と材料が異なる方が第2部材320であるものとすると、通常のレーザー溶接に比べて正極タブ123又は負極タブ124とバスバー110の接触抵抗が小さくなり、接合強度も向上させることができる。
【0106】
レーザー溶接に用いられるレーザーの種類は特に限定されない。しかしながら、連続的な軌跡を描くことが可能なファイバーレーザーが好適である。
【0107】
また、上記説明では、レーザー照射によって溶接を行うものとしたが、必ずしもレーザー照射でなくてもよく、高エネルギー線照射であればよい。例えば、レーザー照射の代わりに電子ビーム照射を行っても同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0108】
10…蓄電モジュール
11…フレーム
12…蓄電セル
110…バスバー
121…蓄電素子
122…外装フィルム
123…正極タブ
124…負極タブ
127…正極
128…負極
129…セパレータ
200…金属接合体
210…第1部材
220…第2部材
300…金属接合体
310…第1部材
320…第2部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22