【実施例1】
【0010】
図1−1は、本実施例のワインセラーの正面図およびその断面図であり、
図1−2は、本実施例のワインセラーの側面図およびその断面図である。
【0011】
図1−1および
図1−2において、1はワインセラーであり、このワインセラー1には、上下個別に温度管理が可能な上保存室2aと下保存室2bが設けられている。各保存室は固定の中仕切りプレート3により完全に独立し、たとえば、それぞれ5℃〜20℃の範囲内で1℃単位の温度設定が可能である。本実施例では、一例として、それぞれ12本のワインボトルの収納を可能とし、上下の有効内容量の合計が100Lクラス(小型)のワインセラーを想定する。上下2室の構成とすることにより、より高精度な温度管理が可能となり、たとえば、一方を短期保存用(7〜8℃程度)、もう一方を長期保存用(14℃程度)、等のように、目的に応じて上下2室を使い分けることが可能となる。
【0012】
また、
図1−1および
図1−2に示すとおり、本実施例のワインセラー1には、断熱性とインテリア性に優れた3層構造のフルフラットガラスが全面に採用されたガラス扉4が取り付けられている。また、ガラス扉4の上部部分には、タッチ式の操作パネル5が配置され、主電源やライト(各保存室のLED照明)のON/OFF,温度設定等の操作ができ、マニュアル操作で保存室内の環境を最適な状態に保つことが可能である。
図2は、タッチ式の操作パネル5の一例を示す図である。本実施例では、上保存室2aと下保存室2bが独立しているので、各保存室の温度を個別に設定可能である(
図2のUpper,Lowerに相当)。
【0013】
また、
図1−1および
図1−2の断面図に示すように、本実施例のワインセラー1は、太いワインボトル(シャンパーニュ径)をスムーズに出し入れできるような高さで棚ピッチが設定されており、上保存室2aには、寝かせた状態で3本のワインボトルを収納可能な棚が縦に4段構成で設けられ、計12本のワインボトルの収納を可能とする。また、下保存室2bには、後述する冷却サイクルに必要なコンプレッサー等が収納された収納庫6の段差を利用して、1番下の棚にワインボトル3本を斜めに配置することができ、さらに、寝かせた状態で3本のワインボトルを収納可能な棚が縦に3段構成で設けられ、計12本のワインボトルの収納が可能である。なお、各保存室の棚を仕切る棚板7は、スライドすることにより自由に取り外しおよび取り付けが可能な構成である。このように、各保存室において1つの棚にワインボトルを3本収納可能な構成をとることにより、一般的な4本収納タイプのものよりも設置幅を小さくすることができ、コンプレッサーを搭載したワインセラーとしては最小の設置面積を実現することができる。たとえば、本実施例のワインセラー1は、本体幅が400mm以下、奥行きが500mm以下となっている。また、上記構成により設置面積を小さくすると、その一方で本体の高さが増すことになるが、たとえば、短期保存用(飲用)のワインを上保存室2aに入れておくことにより、高い位置での出し入れが可能となり、下保存室2bに入れておく場合よりもワインの出し入れが容易になる、というメリットが得られる。
【0014】
また、
図1−2の断面図において、下保存室2bの奥には、階段状の段差を有する収納庫6が設けられており、この収納庫6には、後述する冷却サイクルにおいて使用されるコンプレッサーやキャピラリーチューブ等の機器が収納されている。また、各保存室の奥には、奥パネル8bにより各保存室と仕切られた空間である収納庫8aが設けられており、この収納庫8aには、たとえば、後述する冷却サイクルにおいて使用されるドライヤーや冷却器が収納され、さらに、加温ヒーター,LED等の照明,空気循環用のファンおよび各種温度センサー等も収納されている。
【0015】
また、
図3は、ワインセラー1の側面および天面の内部構造を示す図である。本実施例では、ワインセラー1の左右側面および天面について、外側からパネル鋼板9,後述するコンデンサー33(33a,33b)の収納部10,断熱材11,保存室(うち箱)の壁面12の順に構成されている。そして、本実施例では、冷却サイクルに必要な機器であるコンデンサー33を、収納庫8aではなく、間口部分(側面手前側)を含む側面の一部または全部および天面手前側に分散して配置する。これにより、コンデンサーを背面のスペースに配置する場合と比較して、ワインセラー1の本体の奥行寸法を小さくすることが可能となる。また、従来のワインセラーは、一般的にドアヒーターを設置することでガラス扉の結露を防止しているが、本実施例のワインセラー1は、冷却サイクルに使用されるコンデンサー33を本体の左右側面および天面に配置しているため、特にそれらの手前側(ガラス扉4側)に配置しているため、コンデンサー33の放熱によりガラス扉4まで熱が伝わり、この熱によりドアヒーターを設置しなくても結露を防止することができる。さらに、本体からドアヒーターを排除することで従来よりも消費電力を低く抑えることが可能である。
【0016】
つづいて、上記のように構成されるワインセラー1の電気回路構成およびその制御について説明する。
図4は、ワインセラー1の電気系統図の一例を示す図である。
【0017】
図4に示すとおり、本実施例のワインセラー1においては、制御回路21が、AC100Vを入力とし、ワインセラー1内の電子機器を制御する。すなわち、上保存室2a,下保存室2b用にそれぞれ設けられたLED22(22a,22b),温度センサー23(23a,23b),霜取り温度センサー24(24a,24b),加温ヒーター25(25a,25b),ファン26(26a,26b)、その他、冷却サイクルで使用されるコンプレッサー31と電磁弁(三方弁)32、およびガラス扉4に設けられた操作パネル5、を個別に制御する。
【0018】
図4において、LED22aは上保存室2a用の照明であり、LED22bは下保存室2b用の照明であり、それぞれ、操作パネル5のON/OFF操作に連動して、制御回路21によりON/OFF制御される。
【0019】
温度センサー23aは上保存室2a内の温度を検知するセンサーであり、温度センサー23bは下保存室2b内の温度を検知するセンサーであり、それぞれ、割り当てられた保存室内の温度を制御回路21に通知する。この通知を受けた制御回路21は、操作パネル5の操作により設定された温度と通知された温度とを比較し、設定温度が保持されるように冷却および加温に関する制御を行う。また、霜取り温度センサー24aは上保存室2a用の冷却器近傍に配置され、霜取り温度センサー24bは下保存室2b用の冷却器近傍に配置される。たとえば、制御回路21が定期的に霜取り制御を行う場合において、各霜取り温度センサー24a,24bは、それぞれ近傍の冷却器(エバポレーター)の霜取りが終了したこと(温度が上がったこと)を検知して制御回路21に通知する。
【0020】
加温ヒーター25aは上保存室2a用の冷却器に一体化して設置され、加温ヒーター25bは下保存室2b用の冷却器に一体化して設置され、これらのヒーターは、制御回路21の制御により、周辺温度を上昇させる。また、ファン26aは上保存室2aに設置され、ファン26bは下保存室2bに設置され、制御回路21の制御により、割り当てられた保存室内の空気を循環させる。たとえば、上記加温ヒーター25aとファン26aが上保存室2aにおいて連動し、加温ヒーター25aにより暖められた空気を循環させることにより、上保存室2a内の温度を設定温度まで上昇させることができる。なお、下保存室2bにおいても上記と同様の制御が可能である。たとえば、真冬の部屋等、外気温が特に低い場合には、ワインセラー1の各保存室内の温度が設定温度よりも大幅に低くなる場合が想定されるが、このような場合でも加温ヒーター25(25a,25b)によって温度管理が可能となる。
【0021】
また、
図4において、制御回路21は、コンプレッサー31および電磁弁32を電気的に制御し、本実施例のワインセラー1の冷却サイクルを、保存室毎に個別に制御する。
図5は、本実施例のワインセラー1の冷却サイクルを示す図であり、より詳細には、2つの冷却器36a,36bを上下2つの保存室に1つずつ割り当て、制御回路21が、上保存室2aの冷却サイクルおよび下保存室2bの冷却サイクルを個別に制御する。
【0022】
コンプレッサー(圧縮器)31は、気体冷媒を圧縮して高温高圧のガス冷媒を生成し出力する。ここで、たとえば、上保存室2a内の温度を下げるように制御を行う場合、制御回路21は、コンプレッサー31により生成されたガス冷媒がコンデンサー(凝縮器)33aに送られるように電磁弁32を制御する。コンプレッサー31から送られてきた高温高圧のガス冷媒は、コンデンサー33aで放熱しながら、常温高圧の液体冷媒に変化する。常温高圧の液体冷媒は、ドライヤー34にて水分等の異物が取り除かれ、その後、管径の細いキャピラリーチューブ35aを通過させることで、蒸発(気化)しやすいように圧力を下げる。そして、低温低圧となった液体冷媒は、冷却器36aに送られ、ここで、周辺の空気から熱を奪って蒸発(気化)する。冷却器36aにおいて気体となった冷媒はコンプレッサー31に戻る。このサイクルにより、冷却器36aの周囲が冷却される。
【0023】
一方、下保存室2b内の温度を下げるように制御を行う場合、制御回路21は、コンプレッサー31により生成されたガス冷媒がコンデンサー(凝縮器)33bに送られるように電磁弁32を制御する。コンプレッサー31から送られてきた高温高圧のガス冷媒は、コンデンサー33bで放熱しながら、常温高圧の液体冷媒に変化する。常温高圧の液体冷媒は、ドライヤー34にて水分等の異物が取り除かれ、その後、管径の細いキャピラリーチューブ35bを通過させることで、蒸発(気化)しやすいように圧力を下げる。そして、低温低圧となった液体冷媒は、冷却器36bに送られ、ここで、周辺の空気から熱を奪って蒸発(気化)する。冷却器36bにおいて気体となった冷媒はコンプレッサー31に戻る。このサイクルにより、冷却器36bの周囲が冷却される。
【0024】
そして、各保存室において上記冷却サイクルに使用される機器とファン26(26a,26b)が連動して、冷却器36a,36bにより冷やされた空気を循環させることにより、すなわち、その冷気が各保存室内に送り込まれることによって、各保存室内の温度を設定温度まで下げることができる。
【0025】
なお、上記冷却サイクルにおいては、説明の便宜上、制御回路21が電磁弁32を交互に操作することとしたが、これに限らず、上保存室2aの冷却サイクルと下保存室2bの冷却サイクルが同時に行われるように電磁弁32を調整することとしてもよい。
【0026】
図6は、各保存室内の空気の循環の様子を示す図であり、具体的には、上記冷却サイクルにより冷やされた空気および加温ヒーターにより暖められた空気の循環の様子が示されている。
図6において、41aは、上記加温ヒーター25aと冷却器36aが一体化されて配置された上保存室2a用のフィン型冷却器であり、41bは、上記加温ヒーター25bと冷却器36bが一体化されて配置された下保存室2b用のフィン型冷却器である。本実施例では、上記フィン型冷却器41(41a,41b)で暖められた空気および冷やされた空気を、図示の矢印に示すように、ファン26(26a,26b)で循環させることにより、保存室ごとに、操作パネル5により設定された温度を保持することができる。また、フィン構造を採用することにより、冷却効率を低下させることなく冷却器自体の小型化を実現させることができるため、設置面積をさらに小さくすることが可能となる。たとえば、本実施例のワインセラー1は、上記に示すとおり、本体幅が400mm以下、奥行きが500mm以下となっているが、その要因としては、上記ワインボトルを3本収納可能な棚構成にしたこと、および上記コンデンサー33の配置位置を工夫したことの他に、フィン構造を採用したことがあげられる。これにより、設置面積を小さくすることが可能であるとともに、コンプレッサーの運転時間を短くすることができ、省エネ効果を得ることができる。また、フィン構造を採用した冷却器は、構造上結露の発生が伴うが、フィンを通過した空気が湿気を含んで循環することで各保存室内を高湿度に保つことが可能となる。
【0027】
また、
図6に示すように、本実施のワインセラー1においては、本体背面に、それぞれ複数の外気交換穴42を設ける。これにより、収納庫8aおよび奥パネル8bを介して、外気に含まれる水分を上保存室2a内および下保存室2b内に取り入れることができ、また、余分な水分を保存室外に排出することができるため、各保存室内の湿度を最適な状態に保つことが可能となる。
【0028】
図7は、本実施例のワインセラー1の主要部品の展開図である。なお、
図7は、あくまでも本実施例のワインセラー1本体の主要部品を表示しているものであり、本体のすべての部品を表示しているものではない。
【0029】
このように、本実施例においては、ワインセラー1本体が、設定温度を個別に調整可能な2つの保存室(上保存室2a,下保存室2b)を備える構成とした。そして、冷却器36aが、上保存室2aの温度を設定温度まで下げるために割り当てられ、冷却器36bが、下保存室2bの温度を設定温度まで下げるために割り当てられている。また、加温ヒーター25aが、上保存室2aの温度を設定温度まで上げるために割り当てられ、加温ヒーター25bが、下保存室2bの温度を設定温度まで上げるために割り当てられている。また、ファン26aが、上保存室2a内の空気を循環させるために設置され、ファン26bが、下保存室2b内の空気を循環させるために設置されている。これにより、目的に応じて高精度に2つの保存室の温度を管理することができる。
【0030】
また、本実施例のワインセラー1は、コンプレッサー31から送られてきた高温高圧のガス冷媒を放熱しながら液体冷媒に変化させるコンデンサー33a,33bを、本体の左右側面に配置する構造とした。これにより、従来よりもワインセラー1本体の奥行寸法を小さくすることが可能となる。また、結露防止用のドアヒーターを設置しなくても、コンデンサー33a,33bの発する熱によりガラス扉4の結露を防止することができる。さらに、結露防止用のドアヒーターが不要となるため、消費電力を低く抑えることが可能となる。