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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-153538(P2017-153538A)
(43)【公開日】2017年9月7日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/539 20060101AFI20170810BHJP
【FI】
   A61F13/539
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-37105(P2016-37105)
(22)【出願日】2016年2月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100186679
【弁理士】
【氏名又は名称】矢田 歩
(74)【代理人】
【識別番号】100189186
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏弘
(74)【代理人】
【識別番号】100204755
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100196645
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 陽子
(72)【発明者】
【氏名】蓑田 哲宏
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200BA04
3B200DB05
3B200DB22
3B200DB23
(57)【要約】
【課題】2回目以降の排泄による体液であっても、迅速に拡散させて吸収することができ、吸収性物品に圧力がかかった状態で体液が排泄された場合にも、体液の漏れを生じにくい吸収性物品を提供すること。
【解決手段】液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、トップシート及びバックシートの間に配置された吸収体と、を有する吸収性物品であって、前記吸収体は、少なくとも2層の層状吸収体からなり、前記吸収体は、吸収体の幅方向略中心部において、長手方向に延在する中央スリットを有し、前記層状吸収体のうち、トップシート側の最上層に位置する層状吸収体においてのみ、前記中央スリットの両脇に、前記中央スリットと略平行に配置された一対のサイドスリットが形成されている、吸収性物品。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、トップシート及びバックシートの間に配置された吸収体と、を有する吸収性物品であって、
前記吸収体は、少なくとも2層の層状吸収体からなり、
前記吸収体は、吸収体の幅方向略中心部において、長手方向に延在する中央スリットを有し、前記層状吸収体のうち、トップシート側の最上層に位置する層状吸収体においてのみ、前記中央スリットの両脇に、前記中央スリットと略平行に配置された一対のサイドスリットが形成されている、吸収性物品。
【請求項2】
前記中央スリットの長手方向の寸法が、前記サイドスリットの長手方向の寸法よりも大きい、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記中央スリットの幅方向の寸法が20mm以上35mm以下であり、前記サイドスリットの幅方向の寸法が10mm以上20mm以下である、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収体が、3層以上の層状吸収体からなる、請求項1から3のいずれかに記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排泄された体液の吸収性が改善された吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に吸収性物品には、テープ止めタイプ紙おむつ、軽失禁パッド、尿取りパッド、パンツタイプ紙おむつ等が知られており、これらの吸収性物品は着用対象者の排泄における介護の必要度に応じて適宜選択されて使用される。これらの吸収性物品は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、両シートの間に配置された吸収体と、で構成されている。このような構成を採用することにより、尿等の体液は、吸収性物品のトップシートを透過して吸収体に吸収され、バックシートにより外部へ漏れないようになっている。
【0003】
ここで、吸収性物品においては、着用者への装着感の向上や排泄物の漏れ防止のため、従来、様々な工夫がなされていた。例えば、特許文献1には、吸収体の幅方向略中心部に、長手方向に延在する中央スリット、中央スリットの両端に、長手方向に延在するサイドスリットが形成され、中央スリット及びサイドスリットの形成位置において吸収体が屈曲できるようになっている吸収性物品が開示されている。また、特許文献2には、長手方向に延在する一対のサイドスリットと、この一対のサイドスリットの間で、ウエスト域まで延びる屈曲案内スリットとしての中央スリットを有する吸収体を備えた吸収性物品が開示されている。これらの吸収性物品においては、吸収体に3本のスリットを形成することにより、着用時にスリットの周辺が屈曲し、屈曲により形成される凸部が排泄口と密着して、屈曲により形成される凹部に排泄物が保持され、排泄物と着用者の肌との接触を回避することができるものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−014726号公報
【特許文献2】特開2006−346439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般に、吸収性物品において、吸収体を構成する高吸収性ポリマーが体液を吸収して膨潤した場合、膨潤した高吸収性ポリマーが、体液の吸収体内での拡散経路を塞いでしまうため、体液の吸収速度が低下する問題があった。このような問題は、破砕タイプの高吸収性ポリマーを用いた場合と比較して、パールタイプの高吸収性ポリマーを用いた場合に顕在化する傾向にあった。そして、このように体液の吸収速度が低下した場合、2回目以降の排泄により排泄される体液を迅速に吸収できず、体液の漏れにつながるおそれがあった。特に、臥位で着用されている場合に比較して、吸収性物品に圧力がかかる座位での着用の場合には、体液を一度吸収した後に体液の拡散性が低下した吸収性物品において2回目以降の排泄による体液の吸収をする場合、体液の漏れが生じやすい。これに加えて、車椅子使用時等の動きに伴う排泄位置のずれが生じたり、動きに伴う圧力が生じたりする場合には、より体液の漏れが生じやすくなっていた。
【0006】
したがって、本発明は以上の課題に鑑みてなされたものであり、2回目以降の排泄による体液であっても、迅速に拡散させて吸収することができ、吸収性物品に圧力がかかった状態で体液が排泄された場合にも、体液の漏れを生じにくい吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究を行った。その結果、吸収体を、少なくとも2層の層状吸収体からなるものとするとともに、吸収体が、長手方向に延在する中央スリットを設け、層状吸収体のうち、トップシート側の最上層に位置する層状吸収体においてのみ、中央スリットの両脇に一対のサイドスリットを設けることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0008】
(1)本発明の第1の態様は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、トップシート及びバックシートの間に配置された吸収体と、を有する吸収性物品であって、前記吸収体は、少なくとも2層の層状吸収体からなり、前記吸収体は、吸収体の幅方向略中心部において、長手方向に延在する中央スリットを有し、前記層状吸収体のうち、トップシート側の最上層に位置する層状吸収体においてのみ、前記中央スリットの両脇に、前記中央スリットと略平行に配置された一対のサイドスリットが形成されている、吸収性物品である。
【0009】
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載の吸収性物品であって、前記中央スリットの長手方向の寸法が、前記サイドスリットの長手方向の寸法よりも大きいことを特徴とするものである。
【0010】
(3)本発明の第3の態様は、(1)又は(2)に記載の吸収性物品であって、前記中央スリットの幅方向の寸法が20mm以上35mm以下であり、前記サイドスリットの幅方向の寸法が10mm以上20mm以下であることを特徴とするものである。
【0011】
(4)本発明の第4の態様は、(1)から(3)のいずれかに記載の吸収性物品であって、前記吸収体が、3層以上の層状吸収体からなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の吸収性物品は、吸収体が、少なくとも2層の層状吸収体からなり、幅方向略中心部において、長手方向に延在する中央スリットを有するとともに、トップシート側の最上層に位置する層状吸収体が、中央スリットの両脇に、中央スリットと略平行に配置されたサイドスリットを有する。このため、1回目の排泄による体液の吸収により、吸収体中の高吸収性ポリマーが膨潤した場合においても、吸収体に形成された中央スリットや、トップシート側の最上層に位置する層状吸収体に形成されたサイドスリットを介して、体液が吸収体の内部にまで拡散・浸透するので、2回目以降の排泄においても、体液の漏れを効果的に防止することができるとともに、サイドスリットがトップシート側の最上層に位置する層状吸収体のみに形成されているので、吸収性物品に圧力がかかった状態で体液が排泄された場合にも、体液の漏れを効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の吸収性物品の平面図である。
図2図1におけるB−B断面図を示す図面である。
図3】繰り返し吸収速度の評価のための試験装置を示す図面である。
図4】荷重下での漏れ評価のための試験装置を示す図面であって、(a)平面模式図、(b)斜視図、(c)側面図である。
図5】繰り返し吸収速度評価の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
<吸収性物品>
本明細書の説明において、吸収性物品1の着用時とは、吸収性物品1の装着時及び装着後の少なくとも一方をいう。吸収性物品1の長手方向とは、吸収性物品1が着用されたときに着用者の前後に亘る方向であり、図中、符号Yで示す方向である。また、吸収性物品1の幅方向とは、長手方向に対して横又は直交する方向であり、図中、符号Xで示す方向である。さらに、身体側表面とは、吸収体23等の各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側に配される面であり、衣類側表面とは、吸収体23等の各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側とは反対側に向けられる面である。体液とは、尿、血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。さらに、吸収性物品1の用途は、特に限定されるものではなく、一般には、幼児又は成人用を問わず、テープ止めタイプの使い捨ておむつ、パンツタイプの使い捨ておむつ、尿取りパッド、軽失禁パッド、生理用品等であってもよい。
【0016】
図1は、本発明の吸収性物品1の平面図であり、図2は、図1におけるB−B断面図を示す図面である。吸収性物品1は、身体側表面に配された液透過性のトップシート21と、トップシート21に対向して配置された液不透過性のバックシート22と、トップシート21とバックシート22との間に配置された吸収体23と、を備えている。
【0017】
また、吸収性物品1には、使用者の排泄した体液の横漏れを防止するため、吸収性物品1の長手方向に沿って、トップシート21上に、立体ギャザー用弾性部材26aを有する一対の立体ギャザー26を備えていてもよい。吸収性物品1の幅方向における立体ギャザー26の外端は、バックシート22に固定され、その内端はトップシート21に固着され、その中央はトップシート21に固定されない自由端となるように、立体ギャザーシート26bが配される。立体ギャザー用弾性部材26aを長手方向に沿って設けることで、立体ギャザー26が起立性を有し、着用者の体型に合わせて変形可能なものとなる。立体ギャザー用弾性部材26aとしては、例えば、ポリウレタン糸、帯状のポリウレタンフィルム、糸状又は帯状の天然ゴム等が使用され、立体ギャザーシート26bとしては、疎水性繊維にて形成された撥水性又は不透液性の不織布、例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンドを積層した複合不織布等が使用される。
【0018】
[トップシート]
トップシート21は、体液が吸収体へと移動するような液透過性を備えた基材から形成すればよく、例えば、エアスルー不織布、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布等の不織布、サーマルボンド/スパンボンドを積層した複合不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム、あるいは、これらを積層した複合シートといった材料から形成される。また、トップシート21には、液透過性を向上させるために、表面にエンボス加工や穿孔加工を施してもよい。これらのエンボス加工や穿孔加工を施すための方法としては、公知の方法を制限なく実施することができる。また、肌への刺激を低減させるため、トップシート21には、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を含有させてもよい。さらに、強度及び加工性の点から、トップシート21の坪量は、18g/m以上40g/m以下であることが好ましい。トップシート21の形状としては特に制限はないが、漏れがないように体液を吸収体23へと誘導するために必要とされる、吸収体23を覆う形状であればよい。
【0019】
[バックシート]
バックシート22は、吸収体23が保持している体液が衣類を濡らさないような液不透過性を備えた基材を用いて形成すればよく、樹脂フィルムや、樹脂フィルムと不織布とを積層した複合シートといった材料から形成される。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、あるいは、スパンボンド/メルトブロー、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンドを積層した複合不織布及びこれらの複合材料が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等が挙げられる。
【0020】
強度及び加工性の点から、バックシート22の坪量は、15g/m以上40g/m以下であることが好ましい。また、装着時の蒸れを防止するため、バックシート22には、通気性を持たせることが好ましい。バックシート22に通気性を備えさせるためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシート22にエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては炭酸カルシウムを挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。
【0021】
[吸収体]
吸収体23は、基材としての吸収性繊維と、高吸収性ポリマー(SAP)と、を含有することが好ましい。吸収性繊維は、一般に生理用ナプキンや紙おむつ、尿取りパッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュ、吸収紙、親水性不織布等を挙げることができる。これらの中でも、吸収性の観点から、フラッフパルプを使用することが好ましい。斯かるフラッフパルプとしては、木材パルプ(例えば、サウザンパインやダグラスファー等のB−BKP)、合成繊維、ポリマー繊維、非木材パルプ等を綿状に解繊したものを挙げることができる。吸収体23の吸収性繊維は、吸収性能及び肌触りを損なわないよう、吸収体23全体で、150g/m以上350g/m以下の坪量とすることが好ましい。
【0022】
吸収体23の高吸収性ポリマーとしては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸ナトリウム系、ポリアスパラギン酸塩系、(デンプン−アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸−ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン−無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等の材料から形成されたものを使用することができる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸ナトリウム系が好ましい。吸収体23のSAP量は、吸収性能及び肌触りを損なわないよう、吸収体23全体で、150g/m以上250g/m以下の坪量とすることが好ましく、15質量%以上50質量%以下の含有量とすることが好ましい。
【0023】
吸収体23において、吸収性繊維及びSAPの形態は、吸収性繊維中にSAP粒子を混合して形成したもの、あるいは、吸収性繊維間にSAP粒子を固着したSAPシートとしたものであることが好ましい。吸収体23全体の坪量は、400g/m以上500g/m以下であることが好ましい。また、SAP粒子の漏洩防止や吸収体23の形状の安定化の目的から、吸収体23をキャリアシートに包むことが好ましい。キャリアシートの基材としては親水性を有するものであればよく、ティシュ、吸収紙、エアレイド不織布等の親水性不織布を挙げることができる。キャリアシートを複数備える場合は、キャリアシートの基材は同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0024】
(層状吸収体)
本発明の吸収性物品1において、吸収体23は、少なくとも2層の層状吸収体からなる。ここで、吸収体23は、上層吸収体、中間層吸収体、及び下層吸収体の3層以上の層状吸収体からなるものであってもよいが、以下の説明においては、簡略化のため、吸収体23が、図2に示すような上層吸収体231及び下層吸収体232の、2層の層状吸収体からなるものとして、吸収体23及び各層状吸収体の構成を説明するものとする。
【0025】
(中央スリット)
図1及び図2に示すように、吸収体23には、その幅方向略中心部において、長手方向に延在する中央スリット24を有している。換言すれば、中央スリット24は、上層吸収体231及び下層吸収体232の全てを一体とした吸収体23に設けられており、上層吸収体231の中央スリット24の位置と、下層吸収体232の中央スリット24の位置とは、略一致するものとなっている。このような中央スリット24を設けることにより、吸収体23に到達した体液が、中央スリット24に保持され、中央スリット24の輪郭を構成する上層吸収体231及び下層吸収体232の壁面から、吸収体23内部に向けて体液が拡散することとなる。これにより、吸収体23中の高吸収性ポリマーが、体液を既に吸収して膨潤した状態にあっても、中央スリット24を介して体液が拡散可能となるので、体液の迅速な拡散が担保され、体液の漏れを防止することができる。
【0026】
(サイドスリット)
図2に示すように、本発明の吸収性物品1には、層状吸収体のうち、トップシート21側の最上層に位置する層状吸収体である上層吸収体231においてのみ、中央スリット24の両脇に、中央スリット24と略平行に配置された一対のサイドスリット25が形成されている。つまり、一対のサイドスリット25は、上層吸収体231には形成されているものの、下層吸収体232には形成されておらず、上層吸収体231及び下層吸収体232の間に、層状吸収体が更に設けられる場合においては、当該層状吸収体にも形成されないものである。このような構成を採用することにより、上層吸収体231と下層吸収体232とを積層した状態において、上層吸収体231におけるサイドスリット25の輪郭を構成する上層吸収体231の壁面と、下層吸収体232のトップシート21側の上面とによる凹みが形成され、この凹みに保持された体液は、上層吸収体231と下層吸収体232とに迅速に拡散されることとなる。サイドスリット25が上層吸収体231のみに形成されていることにより、特に、吸収性物品1に圧力がかかった状態で、体液が排泄されたときにおいても、体液の漏れを効果的に防止することができる。
【0027】
本発明においては、吸収体23に形成される中央スリット24の長手方向の寸法は、上層吸収体231に形成されるサイドスリット25の長手方向の寸法よりも大きいことが好ましい。このような構成を採用することにより、体液が排泄される吸収体23の中央部に位置する中央スリット24において、より多くの体液を保持することができる。吸収体23に形成される中央スリット24の長手方向の寸法は、145mm以上315mm以下であることが好ましく、上層吸収体231に形成されるサイドスリット25の長手方向の寸法は、95mm以上200mm以下であることが好ましい。中央スリット24及びサイドスリット25の長手方向の寸法を上記の範囲内のものとすることにより、体液の吸収速度を効果的に向上させつつ、中央スリット24及びサイドスリット25が過剰量の体液を保持することによる体液の漏れ等も効果的に防止することができる。
【0028】
吸収体23に形成される中央スリット24の幅方向の寸法は、上層吸収体231に形成されるサイドスリット25の幅方向の寸法よりも大きいことが好ましい。このような構成を採用することにより、体液が排泄される吸収体23の中央部に位置する中央スリット24において、より多くの体液を保持することができる。吸収体23に形成される中央スリット24の幅方向の寸法は、20mm以上35mm以下であることが好ましく、上層吸収体231に形成されるサイドスリット25の幅方向の寸法は、10mm以上20mm以下であることが好ましい。中央スリット24及びサイドスリット25の幅方向の寸法を上記の範囲内のものとすることにより、体液の吸収速度を効果的に向上させつつ、中央スリット24及びサイドスリット25が過剰量の体液を保持することによる体液の漏れ等も効果的に防止することができる。
【0029】
<吸収性物品の製造方法>
吸収性物品1の製造方法は、周知の方法を採用することができ、例えば、(A)吸収性繊維を高吸収性ポリマーとともに積繊して吸収体マットを作成し、吸収体23を形成する工程、(B)トップシート21と立体ギャザー26をホットメルト系接着剤で固定・一体化する工程、(C)トップシート21、立体ギャザー26、及びバックシート22の内側にホットメルト系接着剤を塗工する工程、(D)集合ドラムにおいて、吸収体23の上部にトップシート21を、吸収体23の下部にバックシート22を配置し、各構成部材を固定・一体化する工程、(E)吸収性物品1の半製品をカッター装置により製品寸法でカットし、個々の吸収性物品1を切り離す工程、を有する製造方法等を挙げることができる。そして、本発明において吸収性物品1の吸収体23を成形する際には、中央スリット24及びサイドスリット25が設けられた上層吸収体231、並びに中央スリット24が設けられ、サイドスリット25が設けられていない下層吸収体232を含む、層状吸収体を積層して、中央スリット24及びサイドスリット25を有する吸収体23を形成すればよい。
【実施例】
【0030】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0031】
<実施例1>
(吸収性物品の作製)
パルプシートを粉砕して解繊したフラッフパルプ20gと、高吸収性ポリマー8gとをともに積繊した吸収体マットを準備し、長さ400mm、幅200mmにカットして、中央スリットとサイドスリットとを表1に示すように設けた上層吸収体を用意した。同様に、フラッフパルプ10gと、高吸収性ポリマー5gとをともに積繊した吸収体マットを準備し、長さ400mm、幅100mmにカットして、中央スリットのみを有する下層吸収体を用意した。これらの上層吸収体及び下層吸収体を積層させた吸収体を用いて、長さ500mm、幅300mmの尿取りパッドを作製し、実施例1のサンプルとした。なお、中央スリットは長さ200mm、幅20mm、サイドスリットは長さ120mm、幅15mmで、トップシートとしては、エアスルー不織布(坪量20g/m)を用い、バックシートとしては、通気性ポリエチレンフィルム(坪量35g/m)を用いた。得られた尿取りパッドの繰り返し吸収速度、荷重下での漏れ評価、及び車椅子使用者による装着時のべたつき官能評価を以下に従って実施した。得られた結果を表1及び表2に示す。
【0032】
<比較例1から3>
下層吸収体に中央スリットを形成しなかった点(比較例1)、吸収体に中央スリット及びサイドスリットを形成しなかった点(比較例2)、並びに下層吸収体にサイドスリットを形成して、吸収体の全体に中央スリットとサイドスリットとを設けた点(比較例3)以外は、実施例1と同様にして吸収性物品を作製し、各評価項目について評価を行った。
【0033】
[繰り返し吸収速度]
図3に示すように、尿取りパッドを水平な平滑面に広げた状態で固定し、尿取りパッド上にアクリル板を載せ、30g/cmの圧力をかけた状態で、内径30mmの筒より1回あたり150mLの生理食塩水を注水し、液面が尿取りパッドへ吸収されるまでの時間を計測した。次いで3分放置した後、150mLの生理食塩水を再び注水し、同様に時間を測定した。これを5回繰り返した。結果を表1及び図5に示す。
【0034】
[荷重下での漏れ評価]
図4に示すように、尿取りパッドを水平な平滑面に広げた状態で固定し、尿取りパッド上にアクリル板を載せ、20度傾斜させた。20kgのおもりによりアクリル板に局部的に最大150g/cmの圧力をかけた状態で、アクリル板に接続された内径30mmの筒より、尿取りパッドの幅方向中心部より30mmずらした位置へ、1回あたり150mLの生理食塩水を注水した。その後、5分間隔で注水を繰り返し、各回で漏れが発生した尿取りパッドの枚数を記録するとともに、漏れが発生するまでの注入回数の平均値を算出した。結果を表2に示す。
【0035】
[車椅子使用者による装着時のべたつき官能評価]
日常生活において車椅子を使用する8人のパネラーの協力の下、尿取りパッドの装着時のべたつき官能評価を行った。中央スリット及びサイドスリットを設けた尿取りパッドを装着後、生理食塩水150mLを3回、5分の間隔を置いてチューブから排尿口付近に注入し、注入完了後1時間を過ごした後でべたつき官能評価を行った。以下の基準で、各尿取りパッドをランク付けした。結果を表3に示す。
○ 8人中、6人以上8人以下がべたつきがないと回答
△ 8人中、3人以上5人以下がべたつきがないと回答
× 8人中、1人又は2人がべたつきがないと回答するか、べたつきがないと回答した人がいない
【0036】
【表1】
【表2】
【表3】
【0037】
表1から分かるように、上層吸収体及び下層吸収体を貫通する中央スリットと、上層吸収体を貫通するサイドスリットとを設けることにより、生理食塩水を繰り返し注水した場合においても、生理食塩水の吸収速度の低下を抑制することができた。このような効果は、上層吸収体にのみ中央スリット及びサイドスリットを設けた場合や、中央スリット及びサイドスリットを設けなかった場合には観察されなかった。また、表2から分かるように、上層吸収体及び下層吸収体を貫通する中央スリットに加えて、上層吸収体のみを貫通するサイドスリットを設けることにより、下層吸収体に中央スリットを設けない場合、中央スリット及びサイドスリットを設けない場合、並びに上層吸収体及び下層吸収体を貫通するサイドスリットを設けた場合のいずれの場合と比較しても、生理食塩水の漏れが効果的に防止された。
【0038】
さらに、表3から分かるように、中央スリットを上層吸収体及び下層吸収体に、サイドスリットを上層吸収体のみに設けた尿取りパッドは、車椅子使用時に生理食塩水を繰り返し注水した場合においても、べたつき感を感じさせにくいものであった。
【符号の説明】
【0039】
1 吸収性物品
21 トップシート
22 バックシート
23 吸収体
231 上層吸収体
232 下層吸収体
24 中央スリット
25 サイドスリット
26 立体ギャザー
26a 立体ギャザー用弾性部材
26b 立体ギャザーシート
Y 長手方向
X 幅方向
図1
図2
図3
図4
図5