(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-15364(P2017-15364A)
(43)【公開日】2017年1月19日
(54)【発明の名称】太陽熱地中蓄熱融雪システム、およびその制御方法。
(51)【国際特許分類】
F24J 2/42 20060101AFI20161222BHJP
E01C 11/26 20060101ALI20161222BHJP
E01C 3/06 20060101ALI20161222BHJP
F28D 20/02 20060101ALI20161222BHJP
F24J 2/34 20060101ALI20161222BHJP
F24J 3/08 20060101ALI20161222BHJP
【FI】
F24J2/42 T
E01C11/26 Z
E01C3/06
F28D20/02 D
F24J2/34 Z
F24J3/08
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-135443(P2015-135443)
(22)【出願日】2015年7月6日
【新規性喪失の例外の表示】申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】515184835
【氏名又は名称】株式会社 トラストプラン
(71)【出願人】
【識別番号】515184846
【氏名又は名称】株式会社 弘前水道
(74)【代理人】
【識別番号】100083437
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 實
(74)【代理人】
【識別番号】100131026
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 博
(72)【発明者】
【氏名】猪 股 千 丈
(72)【発明者】
【氏名】阿 保 秀 樹
【テーマコード(参考)】
2D051
【Fターム(参考)】
2D051AA04
2D051AA06
2D051AD04
2D051AF03
2D051AG13
2D051AG15
2D051AG18
2D051GA05
2D051GB03
2D051GB04
2D051GB08
2D051GC04
(57)【要約】
【課題】 融雪対象区画の面積に比較し、地中蓄熱帯の設置区画面積を縮小化して省スペース化可能とする上、蓄熱効率および断熱効率を高め、格段の消雪性能および経費節減を達成できる新たな蓄熱型の融雪システム技術を提供する。
【解決手段】 地中所定深さに埋設した地中蓄熱帯1の天面に上部断熱層2、天面下周囲側部に地中断熱壁3を配し、融雪対象区画に地中熱交換器6を敷設し、太陽熱集熱板7を設置すると共に、当該地中蓄熱帯1と太陽熱集熱板7、および、地中蓄熱帯1と地中熱交換器6の各放熱用循環路80および集熱用循環路81を夫々接続し、該放熱用循環路80中途適所に夫々太陽熱集熱板用ポンプ95および地中熱交換器用ポンプ96を設けた上、それら熱交換流体4用ポンプ95,96を統合的に制御可能な制御装置90を設けてなる太陽熱地中蓄熱融雪システムである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中所定深さに埋設した地中蓄熱帯の天面に上部断熱層、天面下周囲側部に地中断熱壁を配し、融雪対象区画に地中熱交換器を敷設し、太陽熱集熱板を設置すると共に、当該地中蓄熱帯と太陽熱集熱板、および、地中蓄熱帯と地中熱交換器の各放熱用循環路および集熱用循環路を夫々接続し、当該地中蓄熱帯と太陽熱集熱板との間の放熱用循環路および集熱用循環路少なくとも何れか一方の中途適所に太陽熱集熱板用ポンプを設け、当該地中蓄熱帯と地中熱交換器との間の放熱用循環路および集熱用循環路少なくとも何れか一方の中途適所に地中熱交換器用ポンプを設けた上、それら太陽熱集熱板用ポンプおよび地中熱交換器用ポンプを統合的に制御可能な制御装置を設けてなるものとしたことを特徴とする太陽熱地中蓄熱融雪システム。
【請求項2】
地中所定深さに埋設した地中蓄熱帯の天面に上部断熱層、天面下周囲側部に地中断熱壁を配し、融雪対象区画に地中熱交換器を敷設し、太陽熱集熱板を設置すると共に、当該地中蓄熱帯と太陽熱集熱板、および、地中蓄熱帯と地中熱交換器の各放熱用循環路および集熱用循環路を夫々接続し、当該地中蓄熱帯と太陽熱集熱板との間の放熱用循環路および集熱用循環路少なくとも何れか一方の中途適所に太陽熱集熱板用ポンプを設け、当該地中蓄熱帯と地中熱交換器との間の放熱用循環路および集熱用循環路少なくとも何れか一方の中途適所に地中熱交換器用ポンプを設けた上、それら太陽熱集熱板用ポンプおよび地中熱交換器用ポンプを統合的に制御可能な制御装置を設け、当該地中蓄熱帯の天面および地上寄り周囲側部から地上へ放熱するのを防止し、夏期および冬期の太陽熱を当該太陽熱集熱板および地中熱交換器から集熱し、当該地中蓄熱帯に長期間蓄熱し、冬期の降雪に際し、地中熱交換器を介して融雪対象区画の地上に迅速に放熱するよう制御可能なものとしたことを特徴とする太陽熱地中蓄熱融雪システム。
【請求項3】
互いに適宜間隔を隔てた縦姿勢、複数本の蓄熱パイプを地中所定深さに埋設した地中蓄熱帯を設け、同地中蓄熱帯の天面に上部断熱層、天面下周囲側部に地中断熱壁を配し、該地中蓄熱帯近接適所の所望融雪対象区画内舗装版肉厚中に、熱交換流体を流通および熱交換可能な地中熱交換器を敷設し、それら地中蓄熱帯および地中熱交換器の近接適所に、熱交換流体を流通および熱交換可能な太陽熱集熱板を設置すると共に、当該地中蓄熱帯と太陽熱集熱板との間、および、地中蓄熱帯と地中熱交換器との間の各放熱用循環路および集熱用循環路を、夫々熱交換流体用断熱パイプで循環可能に接続し、当該地中蓄熱帯と太陽熱集熱板との間の放熱用循環路および集熱用循環路少なくとも何れか一方の中途適所に太陽熱集熱板用ポンプを設け、当該地中蓄熱帯と地中熱交換器との間の放熱用循環路および集熱用循環路少なくとも何れか一方の中途適所に地中熱交換器用ポンプを設けた上、それら熱交換流体用ポンプを統合的に制御可能な制御装置を設けてなるものとしたことを特徴とする太陽熱地中蓄熱融雪システム。
【請求項4】
潜熱蓄熱材を充填した蓄熱縦管の周囲に、熱交換流体を流通および熱交換可能な集・放熱用スパイラル管を熱伝達可能に外装してなる複数本の蓄熱パイプを、地中1ないし20m望ましくは4mの深さに達する如く、互いに適宜間隔を隔てて埋設した地中蓄熱帯を設け、同地中蓄熱帯には、天面範囲を覆う上部断熱層、および地中1ないし2mの深さとなる天面下周囲側部を包囲する地中断熱壁を垂設し、該地中蓄熱帯の上部断熱層直上舗装版、および、近隣舗装版の少なくとも何れか一方の所望融雪対象区画内にわたる舗装版肉厚上下間適所に、熱交換流体を流通および熱交換可能な地中熱交換器を敷設し、それら地中蓄熱帯および地中熱交換器の近接適所に、熱交換流体を流通および熱交換可能な太陽熱集熱板を設置すると共に、当該地中蓄熱帯と太陽熱集熱板との間、および、地中蓄熱帯と地中熱交換器との間の各放熱用循環路および集熱用循環路を、夫々熱交換流体用断熱パイプで循環可能に接続し、当該地中蓄熱帯と太陽熱集熱板との間の放熱用循環路中途適所に太陽熱集熱板用ポンプを設け、当該地中蓄熱帯と地中熱交換器との間の放熱用循環路中途適所に地中熱交換器用ポンプを設けた上、それら熱交換流体用ポンプを統合的に制御可能な制御装置を設けてなるものとしたことを特徴とする太陽熱地中蓄熱融雪システム。
【請求項5】
地中蓄熱帯が、50cmないし25m望ましくは1mの深さの地中温度を検知可能、且つ、検知信号を制御装置に出力可能な地中温度センサーを設けてなる、請求項1ないし4何れか一項記載の太陽熱地中蓄熱融雪システム。
【請求項6】
太陽熱集熱板が、地中蓄熱帯との間の放熱用循環路および集熱用循環路の各適所に、熱交換流体の温度を検知可能、且つ、検知信号を制御装置に出力可能な流体温度センサーを設けてなる、請求項1ないし5何れか一項記載の太陽熱地中蓄熱融雪システム。
【請求項7】
地中熱交換器設置箇所の近傍に、降雪を検知可能、且つ、検知信号を制御装置に出力可能な降雪センサー、および、地中熱交換器設置箇所の路面温度を検知可能、且つ検知信号を制御装置に出力可能な路面温度センサーを設けてなる、請求項1ないし6何れか一項記載の太陽熱地中蓄熱融雪システム。
【請求項8】
4月ないし7月の夏期に、制御装置の起動後、路面温度センサーの検知信号、および、地中温度センサーの検知信号を一定時間毎に受信し、路面温度センサーの検知温度が地中温度センサーの検知温度よりも高い場合に、地中熱交換器用ポンプを起動し、路面温度センサーの検知温度が地中温度センサーの検知温度と同じ場合、および、路面温度センサーの検知温度が地中温度センサーの検知温度より低い場合に、地中熱交換器用ポンプを停止するよう制御するものとしたことを特徴とする、請求項1ないし7何れか一項記載の太陽熱地中蓄熱融雪システムの制御方法。
【請求項9】
12月ないし3月の冬期に、制御装置の起動後、降雪センサーの検知信号、および、路面温度センサーの検知信号を一定時間毎に受信し、降雪センサーが降雪および積雪の少なくとも一方を検知し、且つ、路面温度センサーの検知温度が氷点下の場合に、地中熱交換器用ポンプを起動し、降雪センサーが降雪および積雪を検知せず、且つ、路面温度センサーの検知温度が氷点以上の場合、地中熱交換器用ポンプを停止するよう制御するものとしたことを特徴とする、請求項1ないし7何れか一項記載の太陽熱地中蓄熱融雪システムの制御方法。
【請求項10】
12月ないし3月の冬期に、制御装置の起動後、太陽熱集熱板、放熱用循環路の流体温度センサーの検知信号、および、地中蓄熱帯、地中温度センサーの検知信号を一定時間毎に受信し、太陽熱集熱板、放熱用循環路の流体温度センサーの検知温度が、地中蓄熱帯、地中温度センサーの検知温度よりも高い場合に、太陽熱集熱板用ポンプを起動し、放熱用循環路の流体温度センサーの検知温度が、地中蓄熱帯、地中温度センサーの検知温度と同じ場合、および、放熱用循環路の流体温度センサーの検知温度が、地中蓄熱帯、地中温度センサーの検知温度よりも低い場合に、太陽熱集熱板用ポンプを停止するよう制御するものとしたことを特徴とする、請求項1ないし7何れか一項記載の太陽熱地中蓄熱融雪システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、屋外舗装区画などの融雪技術に関連するものであり、特に、年間を通じて得られる太陽熱や地熱、地中熱などを蓄熱し、降雪に際して放熱し消雪可能とする融雪システムを製造、提供、設置する分野は勿論のこと、その部品類の輸送、保管、組み立ておよび設置に必要となる設備、器具類を提供、販売する分野から、それら資材や機械装置、部品類に必要となる素材、例えば、木材、石材、各種繊維類、プラスチック、各種金属材料等を提供する分野、それらに組み込まれる電子部品やそれらを集積した制御関連機器の分野、各種計測器の分野、当該設備、器具を動かす動力機械の分野、そのエネルギーとなる電力やエネルギー源である電気、オイルの分野といった一般的に産業機械と総称されている分野、更には、それら設備、器具類を試験、研究したり、それらの展示、販売、輸出入に係わる分野、将又、それらの使用の結果やそれを造るための設備、器具類の運転に伴って発生するゴミ屑の回収、運搬等に係わる分野、それらゴミ屑を効率的に再利用するリサイクル分野などの外、現時点で想定できない新たな分野までと、関連しない技術分野はない程である。
【背景技術】
【0002】
(着目点)
住宅のエントランスや駐車場などの除雪は、一般にスノーショベルを用いた人手による排雪作業となり、多大な労力と時間とを要するばかりでなく、流雪溝などの消雪施設が無い場合には、排雪スペースを確保し、該排雪スペースまで雪を運搬して積み上げることとなり、積み重ねた雪が、庭や駐車スペースを圧迫し、不便を強いられるという問題が有り、また、公共施設や商業施設の駐車場などのように、人海戦術に頼ることができないほど広い場所では、ショベルカーや除雪車などを導入する必要があり、大きな経費を要し、経済的負担を増大することになってしまっており、こうした問題を解決するため、例えば舗装路面下に敷設した配管にボイラーや給湯器などによって加熱した温水を循環して加温消雪する技術や、地下水を消雪対象区画に散水して消雪する技術などが実用化されているものの、ボイラーや給湯器などを用いているため、冬期間の燃料費が増大して経済的負担は大きくなり、他方、地下水を散水すると地盤沈下を招く虞があるなど、これら何れの技術にも課題を残すものとなっていて、環境面、経済面での配慮が必ずしも十分とは言い難たかった。
【0003】
(従来の技術)
こうした状況を反映し、その打開策となるような提案もこれまでに散見されない訳ではない。
例えば、下記の特許文献1(1)に提案されているものに代表されるように、内部に不凍液を循環させて地中の岩盤との間で熱交換を行う熱交換器を、前記岩盤に達する深さまで埋設すると共に、少なくとも夏期に太陽光線が照射する場所に融雪盤を設け、前記熱交換器と融雪盤とを、ポンプ、切換弁およびアキュムレーターを設けた循環パイプで連結し、夏期には、前記融雪盤で太陽熱を採取して、その熱を、前記熱交換器を介して岩盤に蓄え、冬期においては、前記切換弁を切り換えて、前記熱交換器によって前記岩盤に蓄えた熱を含む地中熱を採取して融雪盤に供給し、該融雪盤で屋根や路面の雪を融かすものとした蓄熱式融雪装置や、同特許文献1(2)に見られるような、コンクリート構造物の所定部位に埋設し、または固定され且つ地盤からの熱エネルギーを採取・蓄熱する蓄熱部材であって、該蓄熱部材が閉ループを構成した第1、第2配管からの熱エネルギーを吸収および蓄えると共に該第1配管に隣接・配置した第2配管を有し、該第1、第2配管内に充填・封入した熱伝導媒体を負荷に圧送・流送するものとし、地中熱および太陽熱を蓄熱し、そのエネルギーを融雪の外、緊急時の電力供給や空調など、多用途に利用可能としたコンクリート構造物の蓄熱システム、また、同特許文献1(3)に代表されるように、地中内に受熱部を配置し、前記受熱部に連接して熱移送部を配置し、前記熱移送部に連接して熱備蓄部および熱備蓄部と同じ位相であって該熱備蓄部の外側および底部に放熱部を設けて、アスファルトに滞留した熱エネルギーを前記受熱部で受熱し、前記熱移送部により地下に段階的に移送して、前記熱備蓄部に熱備蓄させ、前記放熱部の外周より地中に徐々に放熱し、地中から地表への熱移動によりアスファルト上に降り注ぐ積雪を融雪する太陽熱の地中内熱備蓄方法などといった従来技術が散見される。
【0004】
しかし、前者特許文献1(1)に示されているような蓄熱式融雪装置などは、熱交換器を、岩盤に達する深さまで埋設しなければならず、設置場所の岩盤の深さによって設置深さに変化が生じることとなり、深い位置に岩盤が有る場合には、掘削経費が嵩んでしまう虞があるという欠点があり、特許文献1(2)のようなコンクリート構造物の蓄熱システムなどは、蓄熱体等の設置対象として、コンクリート構造物の杭、地中梁、均しコンクリート、または柱などのコンクリート構造物、貯水槽、浄化槽等を想定しているが、地上に近い深さ数メートルの範囲からの放熱を効果的に防止できるものとはなっておらず、外気温が氷点下に達すると蓄熱エネルギーに損失を生じる虞があり、それを補うには、より深い地中に設置したり、大掛かりな断熱隔壁を設けたりした蓄熱設備を設置しなければならず、所望の消雪効果を得るために経済的負担が増大する虞があり、また、特許文献1(3)に代表する太陽熱の地中内備蓄技術などは、断熱外筒、保熱内筒、および放熱外筒、放熱内筒からなり筒状をなす本体内に、上層から下層に向けて階層状となる複数の熱移送室を設け、各熱移送室を順次熱移送通路によって連結し、さらに、放熱内筒と各熱移送室および熱移送通路との間に生じる隙間に断熱材を充填してなるものとしてあるから、上端からの放熱性と上層範囲の断熱性とを確保するための構造が複雑化して、1基毎の価格が高騰してしまい、設置対象区画の路盤下に、複数基を設置する場合には、多大な経費を要するものとなってしまうという欠点を有するものであった。
【特許文献1】(1)特開2003−07046号公報 (2)特許第4530174号公報 (3)特許第4702556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(問題意識)
上述したとおり、従前までに提案のある各種蓄熱式融雪装置などは、掘削経費が嵩む虞があったり、地上付近の断熱性に課題を残し、外気温が氷点下に達すると蓄熱エネルギーに損失を生じさせてしまい、消雪効率が低下してしまったり、筒型の熱備蓄部毎に個別の断熱構造を有するため、複数基設置すると設置費用が嵩んでしまって、何れも熱効率や経済性などに課題を残すものとなっていたが、永年、様々な利用者に対して柔軟に対応し、より経済性および消雪効率に優れた融雪装置類を提供し続けてきている中、それらから得られた様々な知見およびユーザーからの情報などに基づき、構造の簡素化や断熱効率の向上は勿論のこと、設置工事の工程上などからも、その消雪機能をより正確且つ効率的に実現可能とするための構成につき、更なる改善の可能性を痛感するに至ったものである。
【0006】
(発明の目的)
そこで、この発明は、融雪対象区画の面積に比較し、地中蓄熱帯の設置区画面積を縮小化して省スペース化可能とする上、蓄熱効率および断熱効率を高め、格段の消雪性能および経費節減を達成できる新たな蓄熱型の融雪システム技術の開発はできないものかとの判断から、逸速くその開発、研究に着手し、長期に渡る試行錯誤と幾多の試作、実験とを繰り返してきた結果、今回、遂に新規な構造の太陽熱地中蓄熱融雪システム、およびその新規な制御方法を実現化することに成功したものであり、以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構成を詳述することとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の構成)
図面に示すこの発明を代表する実施例からも明確に理解されるように、この発明の太陽熱地中蓄熱融雪システムは、基本的に次のような構成から成り立っている。
即ち、地中所定深さに埋設した地中蓄熱帯の天面に上部断熱層、天面下周囲側部に地中断熱壁を配し、融雪対象区画に地中熱交換器を敷設し、太陽熱集熱板を設置すると共に、当該地中蓄熱帯と太陽熱集熱板との間に、中途適所に太陽熱集熱板用ポンプを有する太陽熱用循環路を設け、当該地中蓄熱帯と地中熱交換器との間に、中途適所に地中熱交換器用ポンプを有する消雪用循環路を設けた上、それら太陽熱集熱板用ポンプおよび地中熱交換器用ポンプを統合的に制御可能な制御装置を設けてなるものとした構成を要旨とする太陽熱地中蓄熱融雪システムである。
【0008】
これを、その表現を変えて示すと、地中所定深さに埋設した地中蓄熱帯の天面に上部断熱層、天面下周囲側部に地中断熱壁を配し、融雪対象区画に地中熱交換器を敷設し、太陽熱集熱板を設置すると共に、当該地中蓄熱帯と太陽熱集熱板との間に、中途適所に太陽熱集熱板用ポンプを有する太陽熱用循環路を設け、当該地中蓄熱帯と地中熱交換器との間に、中途適所に地中熱交換器用ポンプを有する消雪用循環路を設けた上、それら太陽熱集熱板用ポンプおよび地中熱交換器用ポンプを統合的に制御可能な制御装置を設け、当該地中蓄熱帯の天面および地上寄り周囲側部から地上へ放熱するのを防止し、夏期および冬期の太陽熱を当該太陽熱集熱板および地中熱交換器から集熱し、当該地中蓄熱帯に長期間蓄熱し、冬期の降雪に際し、地中熱交換器を介して融雪対象区画の地上に迅速に放熱するよう制御可能なものとした構成からなる太陽熱地中蓄熱融雪システムとなる。
【0009】
この基本的な構成からなる太陽熱地中蓄熱融雪システムを、具体的なものとして示すと、潜熱蓄熱材を充填した蓄熱縦管の周囲に、熱交換流体を流通および熱交換可能な集・放熱用スパイラル管を熱伝達可能に外装してなる複数本の蓄熱パイプを、互いに適宜間隔を隔てて地中所定深さに埋設した地中蓄熱帯を設け、同地中蓄熱帯の天面に上部断熱層、天面下周囲側部に地中断熱壁を配し、該地中蓄熱帯近接適所の所望融雪対象区画内舗装版肉厚中に、熱交換流体を流通および熱交換可能な地中熱交換器を敷設し、それら地中蓄熱帯および地中熱交換器の近接適所に、熱交換流体を流通および熱交換可能な太陽熱集熱板を設置すると共に、当該地中蓄熱帯と太陽熱集熱板との間に、熱交換流体用断熱パイプ製であって中途適所に太陽熱集熱板用ポンプを有する太陽熱用循環路を設け、当該地中蓄熱帯と地中熱交換器との間に、熱交換流体用断熱パイプ製であって中途適所に地中熱交換器用ポンプを有する消雪用循環路を設け、それら熱交換流体用ポンプを統合的に制御可能な制御装置を設けてなるものとした構成を要旨とする太陽熱地中蓄熱融雪システムである。
【0010】
さらに具体的なものとして示すならば、潜熱蓄熱材を充填した蓄熱縦管の周囲に、熱交換流体を流通および熱交換可能な集・放熱用スパイラル管を熱伝達可能に外装してなる複数本の蓄熱パイプを、地中1ないし20m望ましくは4mの深さに達する如く、互いに適宜間隔を隔てて埋設した地中蓄熱帯を設け、同地中蓄熱帯には、天面範囲を覆う上部断熱層、および地中1ないし2mの深さとなる天面下周囲側部を包囲する地中断熱壁を垂設し、該地中蓄熱帯の上部断熱層直上舗装版、および、近隣舗装版の少なくとも何れか一方の所望融雪対象区画内にわたる舗装版肉厚上下間適所に、熱交換流体を流通および熱交換可能な地中熱交換器を敷設し、それら地中蓄熱帯および地中熱交換器の近接適所に、熱交換流体を流通および熱交換可能な太陽熱集熱板を設置すると共に、当該地中蓄熱帯と太陽熱集熱板との間に、熱交換流体用断熱パイプ製であって中途適所に太陽熱集熱板用ポンプを有する太陽熱用循環路を設け、当該地中蓄熱帯と地中熱交換器との間に、熱交換流体用断熱パイプ製であって中途適所に地中熱交換器用ポンプを有する消雪用循環路を設け、それら熱交換流体用ポンプを統合的に制御可能な制御装置を設けてなるものとした構成からなる太陽熱地中蓄熱融雪システムとなる。
【0011】
(関連する発明1)
上記した太陽熱地中蓄熱融雪システムに関連し、この発明には、その制御方法も包含している。
即ち、4月ないし7月の夏期に、制御装置の起動後、路面温度センサーの検知信号、および、地中温度センサーの検知信号を一定時間毎に受信し、路面温度センサーの検知温度が地中温度センサーの検知温度よりも高い場合に、地中熱交換器用ポンプを起動し、路面温度センサーの検知温度が地中温度センサーの検知温度と同じ場合、および、路面温度センサーの検知温度が地中温度センサーの検知温度より低い場合に、地中熱交換器用ポンプを停止するよう制御するものとした、この発明の基本をなす前記太陽熱地中蓄熱融雪システムの制御方法である。
【0012】
この発明の制御方法を、その表現を変えて示すと、12月ないし3月の冬期に、制御装置の起動後、降雪センサーの検知信号、および路面温度センサーの検知信号を一定時間毎に受信し、降雪センサーが降雪および積雪の少なくとも一方を検知し、且つ、路面温度センサーの検知温度が氷点下の場合に、地中熱交換器用ポンプを起動し、降雪センサーが降雪および積雪を検知せず、且つ、路面温度センサーの検知温度が氷点以上の場合、地中熱交換器用ポンプを停止するよう制御するものとした、この発明の基本をなす前記太陽熱地中蓄熱融雪システムの制御方法ということができる。
【0013】
さらに、この発明の制御方法を、別の表現によって示すと、12月ないし3月の冬期に、制御装置の起動後、太陽熱集熱板、放熱用循環路の流体温度センサーの検知信号、および、地中蓄熱帯、地中温度センサーの検知信号を一定時間毎に受信し、太陽熱集熱板、放熱用循環路の流体温度センサーの検知温度が、地中蓄熱帯、地中温度センサーの検知温度よりも高い場合に、太陽熱集熱板用ポンプを起動し、放熱用循環路の流体温度センサーの検知温度が、地中蓄熱帯、地中温度センサーの検知温度と同じ場合、および、放熱用循環路の流体温度センサーの検知温度が、地中蓄熱帯、地中温度センサーの検知温度よりも低い場合に、太陽熱集熱板用ポンプを停止するよう制御するものとした、この発明の基本をなす前記太陽熱地中蓄熱融雪システムの制御方法ということができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のとおり、この発明の太陽熱地中蓄熱融雪システムによれば、従前までのものとは違い、上記したとおりの固有の特徴ある構成から、地中蓄熱帯の天面および天面下周囲側部に設けた上部断熱層および地中断熱壁が、地中蓄熱帯の天面寄りとなる地上付近から自然放熱するのを確実に防止するよう効率的に断熱し、同地中蓄熱帯の地中深い底部がわ、およびその周囲に断熱壁類を設けずとも、地中熱による加温力、保温力を有効活用し、蓄熱性能を格段に高め、年間を通じた熱損失を大幅に削減することができ、太陽熱集熱板が、吸収した太陽熱エネルギーを、地中蓄熱帯に供給可能としたから、集熱性能を大幅に強化し、制御装置からの制御によって該太陽熱集熱板が夏期に日々取り込んだ太陽熱エネルギーを、地中蓄熱帯が冬期まで蓄熱して置くことができるものとなり、その蓄熱エネルギーを冬期の降雪時に地中熱交換器に向けて一気に供給し、その大きな放熱量によって迅速に融雪することができる上、このように高効率化可能な構造により、地中熱交換器を設置した融雪対象区画の面積に比較し、地中蓄熱帯の設置区画面積を縮小化して省スペース化することができ、しかも地中蓄熱帯に上部断熱層および地中断熱壁を有し、同地中蓄熱帯の地中深い底部がわ、およびその周囲に断熱壁類を設けずとも、地中熱により、保温性および加温性を確保するものとしたから、各蓄熱パイプの地上近傍付近の断熱性を格段に高め、蓄熱中の地上への自然放熱による熱損失を確実に防止し、設置費用およびランニングコストを大幅削減すると共に、消雪性能を格段に高め、広大な駐車場などの大型舗装区画から一般住宅のエントランスまで、設置規模を問わず、格段の消雪性能および経費節減を達成できるものとなる。
【0015】
加えて、地中蓄熱帯の各蓄熱パイプを、潜熱蓄熱材を充填した蓄熱縦管の周囲に、熱交換流体を流通および熱交換可能な集・放熱用スパイラル管が、熱伝達可能に外装してなるものとしたから、潜熱蓄熱材と熱交換流体との間の熱交換によって保温・蓄熱性能を格段に高め、しかも各蓄熱パイプを、地中1ないし20m望ましくは4mの深さに達するよう垂設するものとしたから、同等の蓄熱性能を得る場合、地中蓄熱帯をより小規模化することができるものとなり、障害物のない広大な区画だけでなく、住宅街の一般住宅などにも容易に設置することができるものとなる。
【0016】
集熱用スパイラル管が、蓄熱縦管の上下間周囲に螺旋状に捲回し、一端を太陽熱集熱板の太陽熱用循環路吐出がわに、他端を地中熱交換器の消雪用循環路流入がわに接続し、放熱用スパイラル管が、集熱用スパイラル管の上下間外がわ周囲に螺旋状に捲回し、一端を地中熱交換器の消雪用循環路吐出がわに、他端を太陽熱集熱板の太陽熱用循環路流入がわに接続してなるものは、集熱用スパイラル管が、蓄熱縦管によって安定した熱量を維持可能となり、放熱用スパイラル管が、集熱用スパイラル管の外がわ周囲を保温するものとなり、より多くの熱量を蓄積可能とし、格段に秀れた蓄熱性能および消雪性能を発揮可能なものとすることができる。
【0017】
集熱用スパイラル管が、蓄熱縦管の上下間周囲に螺旋状に捲回し、一端を地中熱交換器の消雪用循環路吐出がわに、他端を太陽熱集熱板の太陽熱用循環路流入がわに接続し、放熱用スパイラル管が、集熱用スパイラル管の上下間外がわ周囲に螺旋状に捲回し、一端を太陽熱集熱板の太陽熱用循環路吐出がわに、他端を地中熱交換器の消雪用循環路流入がわに接続してなるものは、放熱用スパイラル管が、集熱用スパイラル管を外がわから保温、加温し、蓄熱縦管が、集熱用スパイラル管内の熱量を安定化し、より効率的な融雪を実現化することができる。
【0018】
集熱用スパイラル管が、蓄熱縦管の上下間周囲に螺旋状に捲回し、一端を太陽熱集熱板の太陽熱用循環路吐出がわに、他端を太陽熱用循環路流入がわに接続し、放熱用スパイラル管が、集熱用スパイラル管の上下間外がわ周囲に螺旋状に捲回し、一端を地中熱交換器の消雪用循環路吐出がわに、他端を消雪用循環路流入がわに接続してなるものは、集熱用スパイラル管が、太陽熱集熱板の太陽熱用循環路専用の独立のものとなり、放熱用スパイラル管が、地中熱交換器の消雪用循環路専用の独立のものとなるから、太陽熱集熱板用ポンプおよび地中熱交換器用ポンプによる熱交換流体の圧送をより安定化し、円滑な流動を実現化し、より熱交換効率を高めたものとすることができる。
【0019】
集熱用スパイラル管が、蓄熱縦管の上下間周囲に螺旋状に捲回し、一端を地中熱交換器の消雪用循環路吐出がわに、他端を消雪用循環路流入がわに接続し、放熱用スパイラル管が、集熱用スパイラル管の上下間外がわ周囲に螺旋状に捲回し、一端を太陽熱集熱板の太陽熱用循環路吐出がわに、他端を太陽熱用循環路流入がわに接続してなるものは、蓄熱縦管が集熱用スパイラル管の保温性を高め、放熱用スパイラル管が、集熱用スパイラル管を外がわから加温、断熱するものとなり、中心がわの蓄熱縦管から外径がわの集熱用スパイラル管まで、より均衡のとれた温度分布とし、より安定化した蓄熱性を確保するものとなる。
【0020】
地中蓄熱帯が、複数本の蓄熱パイプの間となる複数適所に、潜熱蓄熱材を充填した蓄熱専用パイプの適宜本数を、各蓄熱専用パイプ同士も適宜間隔を隔てて配置、埋設してなるものとすることにより、蓄熱専用パイプの潜熱蓄熱材が、地中からの熱、およびその近傍に配した蓄熱パイプからの熱を吸収して蓄熱し、近傍周囲の蓄熱パイプの保温性を高めると共に、断熱性を高めて自然放熱による熱損失を防ぎ、より一段と蓄熱効率および蓄熱性能を高めたものとすることができる。
【0021】
地中蓄熱帯に、50cmないし25m望ましくは1mの深さの地中温度を検知可能、且つ、検知信号を制御装置に出力可能な地中温度センサーを設けてなるものは、季節や時間毎に変化する地中温度を検知しながら、外気温度が低下して蓄熱エネルギーが地上がわに放出され易い気象条件となったときに、太陽熱集熱板より太陽熱エネルギーを供給し、また、地中熱交換器より路面に受けた太陽熱エネルギーを供給したりするよう制御し、地中蓄熱帯の蓄熱エネルギー量を減少させず、日々増加させるよう効率的に制御可能とし、冬期間には常に高い消雪性能を発揮可能なものとすることができる。
【0022】
太陽熱集熱板が、地中蓄熱帯との間の放熱用循環路および集熱用循環路の各適所に、熱交換流体の温度を検知可能、且つ、それら検知信号を制御装置に出力可能な流体温度センサーを設けてなるものは、放熱用循環路および集熱用循環路各所の各熱交換流体の温度を検知し、太陽熱集熱板によって得られる太陽熱エネルギーを効率的に地中蓄熱帯に蓄熱する制御を可能とすることができるから、より多くの太陽熱をより短時間の中に蓄熱することができるものとなる。
【0023】
地中熱交換器設置箇所の近傍に、降雪センサー、および地中熱交換器設置箇所に路面温度センサーを夫々設けたものは、降雪および路面の温度低下を素早く検知し、熱エネルギーを充分に蓄えた熱交換流体を逸早く地中熱交換器に供給・循環可能とし、短時間の中により多くの熱量を放出し、融雪対象区画を迅速に消雪および解氷可能なものとすることができる。
【0024】
そして、この発明の制御方法によれば、4月ないし7月の夏期に、路面温度センサーの検知温度が地中温度センサーの検知温度よりも高い場合に、地中熱交換器用ポンプを起動し、路面温度センサーの検知温度が地中温度センサーの検知温度と同じ場合、および、路面温度センサーの検知温度が地中温度センサーの検知温度より低い場合に、地中熱交換器用ポンプを停止するよう制御することにより、地中熱交換器を通過することによって太陽熱を吸収した熱交換流体を地中蓄熱帯に供給して夏期の強い太陽熱エネルギーを効率的に蓄熱し、熱損失を最小限に抑えて冬期の消雪能力を大幅に向上させることができるものとなる。
【0025】
そして、12月ないし3月の冬期に、降雪センサーが降雪および積雪の少なくとも一方を検知し、且つ、路面温度センサーの検知温度が氷点下の場合に、地中熱交換器用ポンプを起動し、降雪センサーが降雪および積雪を検知せず、且つ、路面温度センサーの検知温度が氷点以上の場合、地中熱交換器用ポンプを停止するよう制御することにより、降雪や積雪の発生に伴い、速やかに強力な消雪能力を発揮することができ、消雪が不要となった場合には、速やかに地中熱交換器からの放熱を停止し、熱損失を最小限に留め、より確実な蓄熱および保温を実現化することができる。
【0026】
また、12月ないし3月の冬期に、太陽熱集熱板、放熱用循環路の流体温度センサーの検知温度が、地中蓄熱帯、地中温度センサーの検知温度よりも高い場合に、太陽熱集熱板用ポンプを起動し、放熱用循環路の流体温度センサーの検知温度が、地中蓄熱帯、地中温度センサーの検知温度と同じ場合、および、放熱用循環路の流体温度センサーの検知温度が、地中蓄熱帯、地中温度センサーの検知温度よりも低い場合に、太陽熱集熱板用ポンプを停止するよう制御することにより、日照時間が短く太陽熱エネルギー量も少ない冬期間という厳しい条件下であっても、より効率的な蓄熱性能を実現化し、降雪時に一段と大量の熱エネルギーを放熱可能とする強力な消雪能力を発揮可能なものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
上記したとおりの構成からなるこの発明の実施に際し、その最良もしくは望ましい形態について説明を加えることにする。
地中蓄熱帯は、地中所定深さに外部からの熱を効率的に蓄熱および放熱可能とする機能を担うものであり、より具体的には、太陽熱集熱板および地中熱交換器との間で熱交換可能とし、それら太陽熱集熱板および地中熱交換器から供給された熱を所定深さの地中に長期間蓄熱可能とする機能を担い、天面に上部断熱層、天面下周囲側部に地中断熱壁を配したものとしなければならず、互いに適宜間隔を隔てた縦姿勢、複数本の蓄熱パイプを地中所定深さに埋設したものとすべきであり、後述する実施例に示すように、潜熱蓄熱材を充填した蓄熱縦管の周囲に、熱交換流体を流通および熱交換可能な集・放熱用スパイラル管を熱伝達可能に外装してなる複数本の蓄熱パイプを、地中1ないし20m望ましくは4mの深さに達する如く、互いに適宜間隔を隔てて埋設したものとするのが良く、潜熱蓄熱材は、蓄熱縦管の少なくとも地下1〜2mの深さまで充填したものとすることができ、蓄熱縦管の全長にわたり充填したものとするのが望ましく、複数本の蓄熱パイプの間となる複数適所に、潜熱蓄熱材を充填した蓄熱専用パイプの適宜本数を、各蓄熱専用パイプ同士も適宜間隔を隔てて配置、埋設してなるものとするのが良く、蓄熱パイプの適所に杭内温度を検知可能、且つ、検知信号を制御装置に出力可能な温度センサーを設けたものとするのができる外、50cmないし25m望ましくは1mの深さの地中温度を検知可能、且つ、検知信号を制御装置に出力可能な地中温度センサーを設けたものとするのが望ましいといえる。
【0028】
蓄熱パイプは、地中蓄熱帯の一部となり、外気温度や地中温度などの各条件に応じて蓄熱および放熱機能を担うものであり、その複数本が互いに適宜間隔を隔てて地中所定深さに達するよう縦姿勢に埋設し、全体として地中蓄熱帯をなすものとしなければならず、後述する実施例においても示してあるように、潜熱蓄熱材を充填した蓄熱縦管の周囲に、熱交換流体を流通および熱交換可能な集・放熱用スパイラル管を熱伝達可能に外装してなるものとすべきであり、潜熱蓄熱材は、集・放熱用スパイラル管との熱交換を行うと共に、地中熱をも熱交換可能となる機能を担い、地中平均温度に見合った融点のものとしなければならず、例えば、融点が10℃ないし20℃、望ましくは、後述する実施例にも示しているように、15℃に設定したものとするのが良い。
【0029】
集熱用スパイラル管は、蓄熱縦管内の潜熱蓄熱材、および、放熱用スパイラル管内を流動する熱交換流体と熱交換し、地中蓄熱帯の保温に、蓄熱性を高める機能を担い、蓄熱縦管や放熱用スパイラル管と効率的に熱交換可能な素材性とし、対象物の周囲に螺旋状に捲着してなるものとしなければならず、後述する実施例に示すように、集熱用スパイラル管が、太陽熱集熱板の太陽熱用循環路吐出がわと、地中熱交換器の消雪用循環路流入がわとの間に接続し、蓄熱縦管の上下間周囲に螺旋状に捲回するよう配してなるものとすることができ、この場合には、その内部を流動する熱交換流体を介して、太陽熱集熱板が吸収した太陽熱を、蓄熱縦管内に充填した潜熱蓄熱材に効率的に伝達可能とする機能を担い、太陽熱集熱板の太陽熱用循環路吐出がわと、地中熱交換器の消雪用循環路流入がわとの間に接続し、蓄熱縦管の上下間周囲に螺旋状に捲回するよう配したものとすべきであり、蓄熱縦管との接触部、および、放熱用スパイラル管との接触部を効率的に熱伝導可能な素材、構造からなるものとするのが望ましく、太陽熱集熱板の太陽熱用循環路吐出がわと、同太陽熱用循環路流入がわとの間に接続し、蓄熱縦管の上下間周囲に螺旋状に捲回するよう配したものとしたり、地中熱交換器の消雪用循環路吐出がわと、同消雪用循環路流入がわとの間に接続し、放熱用スパイラル管の上下間周囲に螺旋状に捲回するよう配してなるものとすることなどが可能である。
【0030】
放熱用スパイラル管は、蓄熱縦管内の潜熱蓄熱材、および、集熱用スパイラル管内を流動する熱交換流体と熱交換し、地中蓄熱帯の保温に、蓄熱性を高める機能を担い、蓄熱縦管や集熱用スパイラル管と効率的に熱交換可能な素材性とし、対象物の周囲に螺旋状に捲着してなるものとしなければならず、後述する実施例に示すように、地中熱交換器の消雪用循環路吐出がわと、太陽熱集熱板の太陽熱用循環路流入がわとの間に接続し、放熱用スパイラル管の上下間周囲に螺旋状に捲回するよう配してなるものとすることができ、この場合には、その内部を流動する熱交換流体を介して、集熱用スパイラル管内を流動する熱交換流体と熱交換可能とすると共に、集熱用スパイラル管を断熱状に保温可能とする機能を担い、地中熱交換器の消雪用循環路吐出がわと、太陽熱集熱板の太陽熱用循環路流入がわとの間に接続し、地中熱交換器を通過し放熱した熱交換流体、または、地中熱交換器を通過し路面熱を蓄えた熱交換流体を、集熱用スパイラル管内を流動する熱交換流体と熱交換可能とするよう、集熱用スパイラル管の上下間周囲に螺旋状に捲回するよう配したものとすべきであり、集熱用スパイラル管との接触部を効率的に熱伝導可能な素材、構造からなるものとするのが望ましく、地中熱交換器の消雪用循環路吐出がわと、同消雪用循環路流入がわとの間に接続し、放熱用スパイラル管の上下間周囲に螺旋状に捲回するよう配したものとしたり、太陽熱集熱板の太陽熱用循環路吐出がわと、同太陽熱用循環路流入がわとの間に接続し、蓄熱縦管の上下間周囲に螺旋状に捲回するよう配してなるものとすることなどが可能である。
【0031】
前記集・放熱用スパイラル管の太陽熱用循環路、消雪用循環路への接続は、さらに、様々な組合せが可能であり、例えば、集熱用スパイラル管が、蓄熱縦管の上下間周囲に螺旋状に捲回し、一端を太陽熱集熱板の太陽熱用循環路吐出がわに、他端を地中熱交換器の消雪用循環路流入がわに接続し、放熱用スパイラル管が、集熱用スパイラル管の上下間外がわ周囲に螺旋状に捲回し、一端を地中熱交換器の消雪用循環路吐出がわに、他端を太陽熱集熱板の太陽熱用循環路流入がわに接続してなるものとすることができ、また、集熱用スパイラル管が、蓄熱縦管の上下間周囲に螺旋状に捲回し、一端を地中熱交換器の消雪用循環路吐出がわに、他端を太陽熱集熱板の太陽熱用循環路流入がわに接続し、放熱用スパイラル管が、集熱用スパイラル管の上下間外がわ周囲に螺旋状に捲回し、一端を太陽熱集熱板の太陽熱用循環路吐出がわに、他端を地中熱交換器の消雪用循環路流入がわに接続してなるものとすることができる。
【0032】
そしてまた、集熱用スパイラル管が、蓄熱縦管の上下間周囲に螺旋状に捲回し、一端を太陽熱集熱板の太陽熱用循環路吐出がわに、他端を太陽熱用循環路流入がわに接続し、放熱用スパイラル管が、集熱用スパイラル管の上下間外がわ周囲に螺旋状に捲回し、一端を地中熱交換器の消雪用循環路吐出がわに、他端を消雪用循環路流入がわに接続してなるものや、または、集熱用スパイラル管が、蓄熱縦管の上下間周囲に螺旋状に捲回し、一端を地中熱交換器の消雪用循環路吐出がわに、他端を消雪用循環路流入がわに接続し、放熱用スパイラル管が、集熱用スパイラル管の上下間外がわ周囲に螺旋状に捲回し、一端を太陽熱集熱板の太陽熱用循環路吐出がわに、他端を太陽熱用循環路流入がわに接続してなるものなどとすることが可能である。
【0033】
熱交換流体は、ポンプなどによる圧送作用を受けて管路中を効率的に流動可能且つ、外部との効率的な熱交換を可能とする機能を担っていて、例えば、気体、液体、半個体などとすることができ、より具体的には例えば、空気、二酸化炭素、水、各種水溶液、各種油、不凍液など、様々な流体とすることが可能である。
【0034】
蓄熱専用パイプは、自ら蓄熱し、周囲近傍に配した蓄熱パイプの断熱性、および保温性を高め、蓄熱パイプから地上へ放熱するのをより効果的に阻止可能とする機能を担い、内部に潜熱蓄熱材を充填し、複数本の蓄熱パイプの間となる複数適所に、各蓄熱専用パイプ同士も適宜間隔を隔てて配置、埋設してなるものとしなければならず、少なくとも地上寄りとなる範囲に埋設すべきであり、各蓄熱パイプと略同じ深さまで到達する深さに埋設したものとするのが望ましい。
【0035】
上部断熱層は、地中蓄熱帯の天面からの放熱を防止可能とする機能を担い、地中蓄熱帯の天面を、断熱性を有する所定上下厚みの断熱層で覆ったものとしなければならず、例えば、硅石コンクリートからなる舗装路盤とすることができ、後述する実施例にも示すとおり、上下均しコンクリートの間に遮水シートおよび断熱ボードを敷設してなるものとするのが望ましく、さらに、その上層に、上下肉厚中にポリエチレン管からなる地中熱交換器を埋設した断熱性に優れた硅石コンクリート層からなる舗装版を設けたものにすることができる。
【0036】
地中断熱壁は、地中蓄熱帯の放熱し易い地上近傍の地中範囲を集中的に断熱し、これによって地中蓄熱帯の全体を効果的に断熱可能とする機能を担い、地中蓄熱帯の天面下周囲側部に沿って包囲する壁状に垂設したものとしなければならず、例えば、地中1ないし2mの深さとなる地中蓄熱帯の天面下周囲側部を、断熱性能を発揮して包囲し得るようにしたものなどとしなければならず、断熱性に優れたポリウレタン製パネルや発泡スチロール製パネル、硅石コンクリート層、その他の断熱素材壁、または、それらの組合せなどからなるものとすることができる。
【0037】
地中熱交換器は、所望融雪対象区画内舗装版肉厚中より、同舗装版表面との間で熱交換すると共に、太陽熱集熱板および地中蓄熱帯の間と熱交換可能とし、降雪に伴う積雪を融解可能とすると共に、降雪および積雪の無いときには蓄熱可能とする機能を担い、地中蓄熱帯近接適所の所望融雪対象区画内舗装版肉厚中に、熱交換流体を流通および熱交換可能なものとして設けたものとしなければならず、所望融雪対象区画内舗装版肉厚中に巡らすよう敷設した、熱伝導性に優れた金属、樹脂製またはそれらの複合素材製などの管路、または、管路状構造体などとすることができ、後述する実施例に示すように、鉄筋を有する硅石コンクリート層からなる舗装版の上下間肉厚中に、柔軟性を有し、配管作業性に優れた金属強化ポリエチレン管を敷設・埋設してなるものとするのが良い。
【0038】
太陽熱集熱板は、熱交換流体を流通すると共に、通過する熱交換流体に集熱した太陽熱を伝熱可能とする機能を担っており、集熱した太陽熱を、熱交換流体に効率的に伝熱するものとしなければならず、太陽光発電用パネルなどのように太陽光を受けて発電し、その電力を利用して熱交換流体を加熱するものとすることができる外、熱交換流体を流動、通過可能な形状であって、太陽光およびその輻射熱、外気熱などを効率的に集熱し、熱交換流体に伝熱可能としたものとすることができ、より具体的には、平板式集熱板とすることが可能である外、例えば、ウイック式、サーモサイホン式、または、自励振動式のヒートパイプとすることができ、後述する実施例に示すように、真空管ヒートパイプ式のものとすることができる。
【0039】
太陽熱用循環路は、地中蓄熱帯と太陽熱集熱板との間に熱交換流体を循環可能に接続する機能を担い、断熱性を有するものとしなければならず、熱交換流体用断熱パイプで循環可能に接続したものとすべきであり、後述する実施例に示すように、中途適所に、熱交換流体の温度を検知可能、且つ、その検知信号を制御装置に出力可能な流体温度センサーを設けたものとすることができる。
【0040】
消雪用循環路は、地中蓄熱帯と地中熱交換器との間に熱交換流体を循環可能に接続する機能を担い、断熱性を有するものとしなければならず、熱交換流体用断熱パイプで循環可能に接続したものとすべきであり、後述する実施例に示すように、中途適所に、熱交換流体の温度を検知可能、且つ、その検知信号を制御装置に出力可能な流体温度センサーを設けたものとすることができる。
【0041】
太陽熱集熱板用ポンプは、太陽熱集熱板に熱交換流体を強制的に供給・循環可能とする機能を担い、地中蓄熱帯と太陽熱集熱板との間の太陽熱用循環路中途適所に設けたものとし、該太陽熱用循環路中途の太陽熱集熱板の前後少なくとも何れか一方に設けたものとしなければならず、手動スイッチ、または、後述する実施例に示すように、制御装置からの制御を受けて起動、停止するものとすべきである。
【0042】
地中熱交換器用ポンプは、地中熱交換器に熱交換流体を強制的に供給・循環可能とする機能を担い、地中蓄熱帯と地中熱交換器との間の消雪用循環路中途適所に設けたものとし、該消雪用循環路中途の地中熱交換器の前後少なくとも何れか一方に設けたものとしなければならず、手動スイッチ、または、後述する実施例に示すように、制御装置からの制御を受けて起動、停止するものとすべきである。
【0043】
制御装置は、年間を通じた日照や気温、路面温度の変化、降雪などの気象の変化などの各種外部条件に応じて、効率的に蓄熱および融雪動作するよう太陽熱集熱板用ポンプおよび地中熱交換器用ポンプを制御可能とする機能を担い、マイクロコンピューター、IC、リレー回路など中、少なくとも何れか1つの制御部を内蔵し、自動的に入出力可能としたものとするか、または、手動入力可能なスイッチパネルからなるものの何れか一方、または双方を切り換え可能に備えたものとすることが可能であり、適所に設けた地中温度センサー、流体温度センサー、降雪センサーおよび路面温度センサーからの各種検知信号を受信し、その受信値に基づき、太陽熱集熱板用ポンプおよび地中熱交換器用ポンプの起動・停止を自動的に判断、実行可能なものとするのが望ましく、必要に応じて外部からの通信、データ収集、遠隔操作などを可能とするような通信装置を設けたものとすることができ、後述する実施例に示すように、該制御装置自体を起動・停止可能なメインスイッチを有するものとするのが良い。
【0044】
地中温度センサーは、地中蓄熱帯を埋設した地中の温度変化を検知し、その検出値を制御装置に送信可能とする機能を担い、少なくとも地上近傍の地下50cmないし2mの地中温度を検知可能なものとしなければならず、さらに、地中蓄熱帯の設置範囲および設置範囲よりも深い位置など複数種の深さに設置したものとするのが良く、例えば、後述す実施例に示すように、地下1m、3mおよび5mの各深さ位置の地中温度を夫々検知・送信可能なものとすることができる。
【0045】
流体温度センサーは、太陽熱用循環路および消雪用循環路の少なくとも何れか一方の適所を通過する熱交換流体の温度を検知可能、且つ、検知信号を制御装置に出力可能とする機能を担い、流動する熱交換流体の温度を速やかに検知可能なものとしなければならず、例えば、測温抵抗体、熱電対またはサーミスタなどとすることができる。
【0046】
降雪センサーは、降雪、および、消雪を要する積雪量の少なくとも何れか一方を検出し、その検知信号を制御装置に出力可能とする機能を担い、地中熱交換器を敷設した融雪対象区画、またはその近傍の降雪や積雪を検知可能なものとしなければならず、例えば、水分検知型、赤外線検知型、雪片カウント型、光検出型、雪片カウンターに雪温度センサーを組み合わせたもの、また、所定積雪量(例えば積雪5cm以上)に達したときに検知信号を出力するものなどとすることができる。
【0047】
路面温度センサーは、路面温度を検知し、その検知信号を制御装置に出力可能とする機能を担い、少なくとも路面温度が氷点下、または、積雪する程度に低温であることを検知可能とするものとしなければならず、測温抵抗体、熱電対またはサーミスタなどとすることができる外、非接触型の赤外線温度センサーなどとすることができる。
【0048】
太陽熱地中蓄熱融雪システムの制御方法は、この発明の太陽熱地中蓄熱融雪システムを季節毎に効率的に制御可能とし、冬期の降雪および積雪を、より経済的に消雪可能とする機能を担い、制御装置を手動または自動的に制御することが可能であり、制御方法の切り換えを4月ないし7月の夏期と、12月ないし3月の冬期とに行うよう設定するのが望ましく、後述する実施例に示すように、4月ないし7月の夏期に、制御装置の起動後、路面温度センサーの検知信号、および、地中温度センサーの検知信号を一定時間毎に受信し、路面温度センサーの検知温度が地中温度センサーの検知温度よりも高い場合に、地中熱交換器用ポンプを起動し、路面温度センサーの検知温度が地中温度センサーの検知温度と同じ場合、および、路面温度センサーの検知温度が地中温度センサーの検知温度より低い場合に、地中熱交換器用ポンプを停止するよう制御するものとするのが良い。
【0049】
また、後述する実施例に示すように、12月ないし3月の冬期に、制御装置の起動後、降雪センサーの検知信号、および、路面温度センサーの検知信号を一定時間毎に受信し、降雪センサーが降雪および積雪の少なくとも一方を検知し、且つ、路面温度センサーの検知温度が氷点下の場合に、地中熱交換器用ポンプを起動し、降雪センサーが降雪および積雪を検知せず、且つ、路面温度センサーの検知温度が氷点以上の場合、地中熱交換器用ポンプを停止するよう制御するものとするのが良い。
【0050】
さらにまた、後述する実施例に示すように、12月ないし3月の冬期に、制御装置の起動後、太陽熱集熱板、太陽熱用循環路の流体温度センサーの検知信号、および、地中蓄熱帯、地中温度センサーの検知信号を一定時間毎に受信し、太陽熱集熱板、太陽熱用循環路の流体温度センサーの検知温度が、地中蓄熱帯、地中温度センサーの検知温度よりも高い場合に、太陽熱集熱板用ポンプを起動し、太陽熱用循環路の流体温度センサーの検知温度が、地中蓄熱帯、地中温度センサーの検知温度と同じ場合、および、太陽熱用循環路の流体温度センサーの検知温度が、地中蓄熱帯、地中温度センサーの検知温度よりも低い場合に、太陽熱集熱板用ポンプを停止するよう制御するものとするのが良い。
以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構造について詳述することとする。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図面は、この発明の太陽熱地中蓄熱融雪システム、およびその制御方法の技術的思想を具現化した代表的な一実施例を示すものである。
【
図1】太陽熱地中蓄熱融雪システムを示す斜視図である。
【
図2】太陽熱地中蓄熱融雪システムを示す模式図である。
【
図3】地中蓄熱帯の集・放熱用スパイラル管を示す斜視図である。
【
図4】地中蓄熱帯の蓄熱パイプを断面化して示す平面図である。
【
図5】地中蓄熱帯および地中熱交換器を断面化して示す正面図である。を示す平面図である。
【
図6】夏期の制御装置による制御を示すフローチャートである。
【
図7】冬期の制御装置による制御を示すフローチャートである。
【
図8】冬期の制御装置による制御を示すフローチャートである。
【実施例1】
【0052】
図1ないし
図5に示す事例は、地中所定深さに埋設した地中蓄熱帯1の天面に上部断熱層2、天面下周囲側部に地中断熱壁3を配し、融雪対象区画に地中熱交換器6を敷設し、太陽熱集熱板7を設置すると共に、当該地中蓄熱帯1と太陽熱集熱板7との間に、中途適所に太陽熱集熱板用ポンプ95を有する太陽熱用循環路80を設け、当該地中蓄熱帯1と地中熱交換器6との間に、中途適所に地中熱交換器用ポンプ96を有する消雪用循環路81を設けた上、それら太陽熱集熱板用ポンプ95および地中熱交換器用ポンプ96を統合的に制御可能な制御装置90を設けてなるものとした、この発明の太陽熱地中蓄熱融雪システムにおける代表的な一実施例を示すものである。
【0053】
それら各図からも明確に把握できるとおり、この発明の太陽熱地中蓄熱融雪システムは、その地中蓄熱帯1が、深さ4mに達する長さの蓄熱縦管11中に融点15℃の潜熱蓄熱材12を充填し、該蓄熱縦管11外周壁に、熱交換流体を流通および熱交換可能な集熱用スパイラル管13が螺旋状に捲着した集熱固定パイプ13aを外装し、集熱用スパイラル管13の外がわに、熱交換流体4を流通および熱交換可能な放熱用スパイラル管14が螺旋状に捲着した放熱用固定パイプ14aを外装してなる複数本の蓄熱パイプ10,10,…を、矩形状の所定区画面積範囲内に、平面視千鳥配置状となるよう互いに適宜間隔を隔てて垂直姿勢に埋設した各ボイド管15,15,…中に差し込むよう縦設し、さらに、それら隣接する4本毎の蓄熱パイプ10,10,…から互いに略等距離(中央)となる適所に、夫々各蓄熱パイプ10,10,…と同じ深さに達するよう埋設したボイド管15中に、潜熱蓄熱材11を充填した蓄熱専用パイプ1a,1aを差し込むよう配し、それら蓄熱パイプ10,10,…および蓄熱専用パイプ1a,1aを設置した矩形状区画上に相当する同地中蓄熱帯1の天面範囲には、50mm厚の下均しコンクリート層20a、その上に遮水シート21、その上に100mm厚のポリウレタン製断熱ボード22、さらに、その上に50mm厚の上均しコンクリート層20bを積層してなる上部断熱層2を設け、同上部断熱層2の周囲側部には、深さ(D2)2mに達する硅石コンクリート製の地中断熱壁3を垂設して地上寄りとの囲を、断熱性をもって包囲したものとしてある。
【0054】
図3に示すように、集熱用スパイラル管13を模式的に示すと、太陽熱集熱板7から太陽熱用循環路80を通じて、同
図3中の実線矢印の方向に流れ込んだ熱交換流体4は、同
図3中の寸法範囲L1の範囲で、蓄熱縦管11の周囲を螺旋状に流れる間に同蓄熱縦管11(潜熱蓄熱材12)と熱交換した後、寸法範囲L2の範囲の熱交換流体用断熱パイプ8を通過し、同
図3中の二点鎖線矢印の方向に循環し、消雪用循環路81および地中熱交換器6に向けて流動するよう接続したものとし、また、
図4に示すよう、集熱用スパイラル管13の外がわ周囲に螺旋・捲着状に配した放熱用スパイラル管14は、地中熱交換器6消雪用循環路81を通じて流れ込んだ熱交換流体4が、集熱用スパイラル管13の周囲を螺旋状に流れる間に同集熱用スパイラル管13と熱交換した後、太陽熱用循環路80を通じて太陽熱集熱板7に向けて流動するよう配管したものとしてある。
【0055】
図5に示すように、該地中蓄熱帯1の上部断熱層2上均しコンクリート層20b直上、および、その近隣の所望融雪対象区画内にわたり設けた上下間厚150mmの舗装版5硅石コンクリート層51の上均しコンクリート層20bから上方100mm(舗装版5天面より下方50mm)の肉厚寸法中に、直径13mmの鉄筋50を敷設し、同鉄筋50面上範囲に、熱交換流体4を流通および熱交換可能な直径16mmの金属強化ポリエチレン管60を蛇行状に敷設して地中熱交換器6を埋設したものとしてある。
【0056】
図1および
図2に示すように、当該地中蓄熱帯1および地中熱交換器6に近接し、周辺施設利用の障害とならず、しかも日光が良く当たる適所に、熱交換流体4を流通および熱交換可能な真空管ヒートパイプ式の太陽熱集熱板7を設置したものとし、当該地中蓄熱帯1と太陽熱集熱板7との間を太陽熱用循環路80によって繋ぎ、地中蓄熱帯1と地中熱交換器6との間を消雪用循環路81によって繋ぎ、それら太陽熱用循環路80および消雪用循環路81は、何れも断熱材付き金属強化ポリエチレン管製の熱交換流体用断熱パイプ8からなるものとし、当該地中蓄熱帯1と太陽熱集熱板7との間の太陽熱用循環路80上流がわ中途適所に太陽熱集熱板用ポンプ95を設け、当該地中蓄熱帯1と地中熱交換器6との間の消雪用循環路81中途適所に地中熱交換器用ポンプ96を設けた上、それら熱交換流体用ポンプ95,96を統合的に制御可能な制御装置90を設置したものとしている。
【0057】
さらに、当該制御装置90には、地中蓄熱帯1の上部断熱層2下均しコンクリート層20a下1mの深さ(D3)、3mの深さ(D4)および5mの深さ(D5)の夫々に地中温度センサー91,91,91を設置し、地中蓄熱帯1と太陽熱集熱板7との間の太陽熱用循環路80中途適所の太陽熱集熱板用ポンプ95直後位置に熱交換流体4還元温度を検知可能とする流体温度センサー92、太陽熱集熱板7と地中蓄熱帯1との間の消雪用循環路81中途適所に熱交換流体4送液温度を検知可能とする流体温度センサー92、および、地中蓄熱帯1の何れかの蓄熱パイプ10の集・放熱用スパイラル管13,14中に熱交換流体送液温度を検知可能とする流体温度センサー92を夫々設け、地中熱交換器6を設置した舗装版5上、または、その近傍適所に降雪センサー93および路面温度センサー94を設置し、それら各センサー91,92,93,94からの検知信号を受信し、制御プログラムに従い、太陽熱集熱板用ポンプ95および地中熱交換器用ポンプ96を自動的に制御するものとしてある。
【0058】
図2中に示すように、各太陽熱集熱板用ポンプ95および地中熱交換器用ポンプ96、および、それらを制御する制御装置90は、共に同一の機械室9内に設置したものとすることができ、広大な駐車場用などの大型の太陽熱地中蓄熱融雪システムとする場合には、同
図2中に示すように、地中蓄熱帯1および地中熱交換器6を一部同様に配管してなるものを、順次配置増設してなるものとすることができ、設置予算や工期などを考慮しながら、ある程度の期間を経た後であっても、さらに、同
図2中に破線で示すように、太陽熱集熱板7および太陽熱集熱板用ポンプ95などを追加し、前述したのと略同様(
図2には左右対称的な配置にして表現している)のものを設置し、拡張・増設してなるものとすることができる。
【0059】
(実施例1の作用・効果)
以上のとおりの構成からなるこの発明の太陽熱地中蓄熱融雪システムは、
図1ないし
図4に示すように、複数本の蓄熱パイプ10,10,…が、潜熱蓄熱材12を充填した各蓄熱縦管11,11,……の周囲に集熱用スパイラル管13および放熱用スパイラル管14を螺旋状に捲着してなるものとしたから、構造を簡素化して低廉化することができ、しかも高い蓄熱性能を確保することができる。
【0060】
また、
図1および
図5に示すように、地中蓄熱帯1は、複数本の蓄熱パイプ10,10,…間に、適宜間隔を隔てた複数本の蓄熱専用パイプ1a,1aを略等間隔となるよう埋設し、さらに、それら蓄熱パイプ10,10,…および蓄熱専用パイプ1a,1aの地上寄りとなる深さに、上部断熱層2および地中断熱壁3を設けたから、地表面近傍からの放熱を効率的に防止して、断熱性能および蓄熱性能を格段に向上したものとすることができる。
【0061】
この発明の太陽熱地中蓄熱融雪システムは、
図6ないし
図8に示すような、この発明の制御方法によって一段と効率的に制御可能なものとしてある。
図1、
図2、
図5および
図6に示すように、4ないし7月の夏期には、制御装置90を手動にて起動(A)すると、路面温度センサー94および地中温度センサー91,91,91の各検出値を演算処理(B)し、路面温度が地中温度よりも低い場合に、地中熱交換器用ポンプ96を停止(B1)し、路面温度が地中温度よりも高い場合に、地中熱交換器用ポンプ96を起動(B2)し、制御装置90が手動による停止(C)操作を受けるまで連続的に自動制御し、手動停止(C)を受けるとシステムを停止(D)するよう制御するものとしてあり、この制御により、夏の強い太陽熱を効率的に熱交換流体4に伝達し、地中蓄熱帯1に蓄熱し、蓄えた熱エネルギーをできるだけ放熱しないよう冬期まで保存することができるものとなる。
【0062】
そして、
図1、
図2、
図5および
図7に示すように、12ないし3月の冬期には、制御装置90を手動にて起動(A)すると、降雪センサー93の各検出値を演算処理(B)し、降雪有りと判断した場合には、地中熱交換器用ポンプ96を起動(C2)し、システムを手動停止(D)するまで、一定時間(例えば、1分、5分または10分など)毎に降雪センサー93の各検出値を演算処理(B)する動作を繰り返し継続し、降雪センサー93が降雪を検知しなかった場合には、続いて、一定時間毎に受信する路面温度センサー94の検出値を演算処理(C)し、路面温度が−1℃を超えて上昇したときには、地中熱交換器用ポンプ96を停止(C1)し、再び降雪センサー93の各検出値を演算処理(B)し、路面温度が−1℃未満のときには、地中熱交換器用ポンプ96を起動(C2)し、システムを手動停止(D)するまで、一定時間毎に降雪センサー93の各検出値を演算処理(B)する動作を繰り返し継続し、システムの手動停止(D)操作を受けた場合には、システムを停止(E)するよう制御するものとしてあり、この制御により、降雪を迅速に検知し、速やかに消雪することができると共に、路面凍結も確実に防止できる上、不要な放熱を抑止することができる。
【0063】
また、
図1、
図2、
図5および
図8に示すように、12ないし3月の冬期には、前記
図7に示した制御に同時平行して次の制御も実行するものとしてあり、制御装置90を手動にて起動(A)すると、太陽熱集熱板7出口がわ消雪用循環路81の流体温度センサー92の検出値、および、地中温度センサー91,91,91または地中蓄熱帯1蓄熱パイプ10、集・放熱用スパイラル管13,14の適所に設置した流体温度センサー92の少なくとも何れか一方の検出値を演算処理(B)し、太陽熱集熱板7出口がわの熱交換流体4温度が、地中温度センサー91,91,91の温度、または、地中蓄熱帯1蓄熱パイプ10の集・放熱用スパイラル管13,14の熱交換流体4(杭内)温度よりも低い場合には、太陽熱集熱板用ポンプ95を停止(B1)し、一定時間毎に同様の演算処理(B)を繰り返し、太陽熱集熱板7出口がわの熱交換流体4温度が、地中温度センサー91,91,91の温度、または、地中蓄熱帯1蓄熱パイプ10の集・放熱用スパイラル管13,14の熱交換流体4(杭内)温度よりも高い場合には、太陽熱集熱板用ポンプ95を起動(B2)し、システムを手動停止(C)するまで、一定時間毎に同様の演算処理(B)を繰り返し、システムの手動停止(C)操作を受けた場合には、システムを停止(D)するよう制御するものとしてあり、この制御により、冬期における太陽熱を効率的に蓄熱し、一旦、蓄熱した熱エネルギーを無駄に放熱しないよう効率化することが可能となる。
【0064】
(結 び)
叙述の如く、この発明の太陽熱地中蓄熱融雪システム、およびその制御方法は、その新規な構成によって所期の目的を遍く達成可能とするものであり、しかも製造も容易で、従前からの各種融雪システム技術に比較して大幅に、熱エネルギーの収集および蓄熱機能を高め、各設置設備を小型化し、設置に要する空間を省スペース化し、低廉化して遥かに経済的なものとすることができ、年間を通じ太陽熱を効率的に収集・利用可能として燃料や電力などのエネルギー消費量を格段に削減することができる上、消雪機能を一段に高めたものとすることができるから、設備の設置・維持・管理費用を大幅削減し、燃料消費量を格段に削減できるものとなり、効率的な新しい融雪システムの開発を目標とする融雪機器業界、建築業界およびエクステリア業界はもとより、広大な駐車場や運動場などの管理、維持を効率的に行いたいと希望する施設管理団体や企業を含む施設管理業界、および、連日の大雪にも体力的負担を軽減し、格段に経済的に除雪可能とする新技術の提供を希望する一般家庭においても高く評価され、広範に渡って利用、普及していくものになると予想される。
【符号の説明】
【0065】
1 地中蓄熱帯
10 同 蓄熱パイプ
11 同 蓄熱縦管
12 同 潜熱蓄熱材
13 同 集熱用スパイラル管
13a 同 集熱固定パイプ
14 同 放熱用スパイラル管
14a 同放熱用固定パイプ
15 同ボイド管
1a 同 蓄熱専用パイプ
2 上部断熱層
20a 同 下均しコンクリート層
20b 同 上均しコンクリート層
21 同 遮水シート
22 同 断熱ボード
3 地中断熱壁
4 熱交換流体
5 舗装版
50 同 鉄筋
51 同 硅石コンクリート層
6 地中熱交換器
60 同 金属強化ポリエチレン管
7 太陽熱集熱板
8 熱交換流体用断熱パイプ(断熱材付き金属強化ポリエチレン管)
80 同 太陽熱用循環路
81 同 消雪用循環路
9 機械室
90 同 制御装置
91 同 地中温度センサー
92 同 流体温度センサー
93 同 降雪センサー
94 同 路面温度センサー
95 同 太陽熱集熱板用ポンプ
96 同 地中熱交換器用ポンプ