特開2017-153924(P2017-153924A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2017153924-介護スプーン 図000003
  • 特開2017153924-介護スプーン 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-153924(P2017-153924A)
(43)【公開日】2017年9月7日
(54)【発明の名称】介護スプーン
(51)【国際特許分類】
   A47G 21/04 20060101AFI20170810BHJP
【FI】
   A47G21/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】書面
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2016-56153(P2016-56153)
(22)【出願日】2016年3月2日
(71)【出願人】
【識別番号】514070373
【氏名又は名称】門脇 秀和
(72)【発明者】
【氏名】門脇 秀和
【テーマコード(参考)】
3B115
【Fターム(参考)】
3B115AA17
3B115AA22
3B115AA28
3B115BA02
(57)【要約】
【課題】従来の介護に用いるスプーンは、その皿部を全体に小さくし、薄くする事で対応してきた。しかし、一方で、喫食量の減少をきたし、病態の悪化をきたしかねないリスクを有している。本発明の介護スプーンを用いることによって、喫食量の増加を望み、病態の悪化を防ぐ事、および、より安全な経口摂取への介護を実践する事、が提供される。
【解決手段】皿部に、開口の促進機能、喫食量を確保する容積、口腔内回転時に食物が離れやすい機能を持たせ、喫食量を確保させる事を可能にした。柄部は、持ちやすい太さと、口腔内回転させやすい形状を有し、介護者の負担軽減を実現させた。上記のような特徴を有する、介護スプーンである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部および側部に、開口を促すことが可能な形状を有するスプーン。
【請求項2】
食物が離れやすいようにする機能を持たすべく、皿部の表面を加工した介護スプーン。
【請求項3】
口腔内回転時に、接する口唇を傷つけないような柄の形状を有するスプーン。
【請求項4】
回転させやすいように、柄部に適度な太さと、円筒形の部位を有するスプーン。
【請求項5】
皿部が口腔内にあっても、回転角を把握できるデザインを柄部に有するスプーン。
【請求項6】
皿部の前方に溝を有するスプーン。
【請求項7】
およそ10mL以上の容積の固形物を乗せられるスプーン。
【請求項8】
舌上の食物を、より口腔の奥に誘うことを可能にした形状を有するスプーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、食事を摂る際に、認知症などの理由により、他者から介助が必要な者に対して用いる、介護スプーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、介護に用いるスプーンは、開口困難などの被介護者の病態を勘案し、その皿部を全体に小さくし、薄くする事で対応してきた。その様な皿部の形状により、喫食料を確保でき、経口摂取を維持することが可能となった者は多く存在する。また、一般の介護用品とは一線を画し、口腔内のKポイントなる部位を可能にし、それにより、リハビリテーションの効率を上げたり、経口摂取を促したりする事を可能にした「Kスプーン(R)」という物も存在している。
以上のスプーンの工夫をまとめると「一回量が多すぎず、口唇で取り込みやすくした」ことで「ある一定の用件を満たした、被介護者および介護者にとって、便利な介護用のスプーンはある」と言える。
【0003】
しかしながら、以下のような病態の被介護者には、これまでの介護用のスプーンでは、適切な介護が達成できない可能性がある。
「頑固な開口困難がある者」「舌での食物の送り込みが拙劣である者」「一口あたりの食物量が少なすぎる事で、喫食量の確保が困難な者」「充分な食物量を提供する事で、胃の蠕動運動が起き、摂取量が確保される者」「液体の吸引は可能な者」などである。このような被介護者においては、介護者の負担は大きく、介護時間がより長くなる。特に認知症の場合には、集中できる時間は30分だという意見もあり、それ以上の時間をかけても喫食量の増大を望めない可能性がある。
【0004】
以上の事から、既存のスプーンとは違った視点から、新たな介護用のスプーンを開発する必要があると言える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【特許文献】存在しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
開口困難な被介護者に、皿部が浅いスプーンを用いて食事介助を行った場合に、上口唇で、食物がこそぎ落されてしまう可能性がある。
【0006】
片側の麻痺の者などでは、患側(嚥下が困難な側)に食物が落ち込み、誤嚥性肺炎が起きる可能性がある。
【0007】
舌での食物の送り込みが拙劣な者においては、食事時間が延長したり、結果として喫食量の減少を来たしたりする可能性がある。
【0008】
1回当たりの喫食量が少ないことで、胃の許容性弛緩が起こりにくくなり、かつ、腸管の適切な蠕動運動が起こりにくくなることにより、全体の喫食量不足をきたす可能性がある。
【0009】
本人は液体を吸って飲めるのだが、皿部が浅いスプーンでは、液体の提供が困難である。
【0010】
上記の如く要因が複合して被介護者に襲いかかり、総じて喫食量の減少をきたし、その結果、感染性合併症のリスクを増大させてしまう可能性がある。
【0011】
そこで、この発明は、この介護スプーンを用いることによって、前述の課題を解決していく事、および、より安全な経口摂取への介護を実践する事、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するために、以下のような手段を講じる。
【0012】
第1発明は、皿部の先端に、より深い角度を持たせることによって、被介護者の開口を促すことを可能にする介護スプーンである。
【0013】
第2発明は、開口を促すためと、皿部の内容物を上口唇でこそぎ落とされないことを両立させるために、先端部と側面部は、「土手」の様な形状を有する介護スプーンである。
【0014】
第3の発明は、十分な容積を有する皿部によって、1回当たりの喫食量、二次的には全体の喫食量の増加が見込める介護スプーンである。
【0015】
第4発明は、皿部を口腔内回転させることを容易にした構造を有する介護スプーンである。そのために以下の点に着目する。口腔内回転が可能な皿部のサイズ、回転させやすく、かつ回転を実施する際に使用者が疲れにくい柄部の形状、回転後に皿部の食物が離れやすいように皿部にエンボス加工もしくはそれに該当するような形状を持たせる事、皿部が口腔内にあっても回転角が認識できる柄部のデザイン、など。
【0016】
第5発明は、舌の送り込みの悪い被介護者の場合に、舌上の食物を奥へ押し込めるように、皿部の先端部と側面部をより垂直に近い形状(前述の「土手」と同様の意味)にした介護スプーンである。
【0017】
第6発明は、従来の薄い皿部を有する介護用のスプーンに比し、液体の提供を容易にするべく、やや深めの皿部を有する介護スプーンである。
【0018】
第7発明は、液体を吸引しやすいように、すなわち、吸い口になるようなカットされた部位を設けた介護スプーンである。
この発明は、以上の構成よりなる、新たな介護スプーンである。
【発明の効果】
【0019】
第1および2の発明により、開港困難であった被介護者に対する経口摂取の介助を容易にする。
【0020】
第3および6の発明により、従来に比し、1回当たりの喫食量を増加させることが容易になり、胃の許容性弛緩や腸管の蠕動運動を惹起しやすくなる。
【0021】
第4発明により、口腔内回転という手技が、従来のスプーンに比し容易に実践できる。
【0022】
第5発明により、舌での送り込みが悪い被介護者に要する介護時間の短縮が見込める。
【0023】
第7発明により、平生の経口摂取の介助時や、対象患者であればリハビリテーション時などに、より多くの液体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】介護スプーンの全体像を、先端部の右前上方から見た斜視図である。
【0025】
図2】(a)介護スプーンの皿部を、右前上方から見た斜視図である。(b)介護スプーンの皿部と、柄部への接続部を右側方やや上方から見た斜視・側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
皿部の先端(SN)の角度と、側面のウイング部(W)、により、開口を促すことを実現する。同時に、Wの高さと皿部の深さが、1回当たりの食物の量を確保し、スプーン上の食物を上口唇でこそぎ落され難いようにしている。
【0027】
皿部に設けられたエンボス加工(EM)により、皿部からの食物の「離れ」を容易にする。本スプーンを口腔内回転させる場合、柄と皿部の接合部(S)は半円筒形であり、接した口唇を傷つけない構造になっている。また皿部の深さおよび幅(WD)は、口腔内で回転できるサイズである。
【0028】
柄部は、介護者が持ちやすい太さを有しており、かつ、回転させやすいように、柄の中心付近(T)は円筒形の構造にしている。
【0029】
皿部が被介護者の口腔内にあったとしても、柄部および皿部の角度が把握できるように、柄部末端(E)の天面は平行な面としている。
【0030】
液状のものを吸うリハビリテーションができるように、皿部の先端両側に溝(M)を設けている。
【0031】
皿部先端(SN)と側面のウイング部(W)は、その垂直に近い角度を有することにより、舌上の食物を左右や口腔内後方に誘うことを容易にしている。
皿部と皿部に近い柄部は、口腔粘膜に接する可能性があるため、表面は鈍の形状をしている。
本発明は、以上の様な構造である。
【符号の説明】
【0032】
E 柄部の末端部
T 柄部の中心付近
S 柄部と皿部接続部
WD 皿部の幅
SN 皿部の先端部
EM 皿部に設けたエンボス加工
W 皿部の側面のウイング部
M 皿部の両側前方に設けた溝
図1
図2