災害時等においてライフラインが断たれたとしても使用することができ、小規模な太陽光発電装置だけで必要な電力をまかなうことができる循環式トイレシステムを提供する。
水洗式便器100から排出された汚水を、固液分離槽200において固液分離し、一次処理水としたのち、土壌処理槽600で土壌処理して、水洗式便器100で再び利用することができるようにした循環式トイレシステム10において、一次処理水を一次貯留槽300から土壌処理槽600に送水するための汚水ポンプを、スクリュー式揚水ポンプ400としたことにより、汚水ポンプの始動電流を低く抑えて、小規模な太陽光発電装置900だけで必要な電力をまかなうことができるようにした。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、災害時等において電気や上下水道等のライフラインが正常に機能しなくなった場合においても使用することができ、小規模な太陽光発電装置のみで稼働に必要な電力をまかなうことができる循環式トイレシステムを提供する。本発明はまた、この循環式トイレシステムを用いて実施することができる循環式トイレ排水処理方法も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、
水洗式便器と、
水洗式便器から排出された汚水を固液分離する固液分離槽と、
固液分離槽で処理された一次処理水を貯留する一次貯留槽と、
非水平方向に延びる外筒と、外筒内に配されたスクリューとを備えて、一次貯留槽に貯留された一次処理水を揚水するためのスクリュー式揚水ポンプと、
内部を土壌で充填されるとともに、土壌中に埋設された散水管と、土壌の下端部に設けられた集水部とを備えて、スクリュー式揚水ポンプで揚水された一次処理水を散水管に通水して土壌中に浸透させ、集水部より回収して二次処理水とする土壌処理槽と、
二次処理水を水洗式便器へ送水するための加圧ポンプと、
スクリュー式揚水ポンプ及び加圧ポンプを稼働する電力を供給する太陽光発電装置と、
を備えた循環式トイレシステム
を提供することによって解決される。
【0007】
本発明の循環式トイレシステムにおいては、一次処理水を揚水する汚水ポンプとしてスクリュー式揚水ポンプを採用しているため、一般的に汚水ポンプとして使用されるノンクロッグポンプや渦流ポンプを採用した場合に比べて、ポンプの始動時に流れる始動電流を大幅に抑えることが可能となっている。このため、本発明の循環式トイレシステムは、小規模な太陽光発電装置のみでその稼働に必要な電力をまかなうことができるため、設置場所を問わないだけでなく、設置コストを抑えることもできるものとなっている。本発明の循環式トイレシステムにおけるスクリュー式揚水ポンプは、非水平方向に延びる外筒と、外筒内に配されたスクリューとを備えたものであり、スクリューを回転させることで、外筒内に一次処理水の流れを生じさせ、外筒の下端部付近の一次処理水を外筒の上端部付近まで揚水することができるものとなっている。なお、ここで言う「土壌」とは、赤玉土や黒土等の所謂「土」だけでなく、各種の礫類や、粒状の多孔性材料等も含むものとする。
【0008】
本発明の循環式トイレシステムにおいては、スクリュー式揚水ポンプを駆動するためのインバーター装置を更に備えることもできる。これによって、周波数と電圧をコントロールしながらスクリュー式揚水ポンプを始動することができるため、始動電流が大きくならないよう調節しながらポンプを始動することができ、循環式トイレシステムの稼働に必要な電力を更に低く抑えることができる。
【0009】
本発明の循環式トイレシステムにおいて、スクリュー式揚水ポンプのスクリューの外半径と外筒の内半径との差を大きくしすぎると、その隙間から一次処理水が漏れ落ちやすくなり、効率的に揚水することができない虞がある。このため、スクリュー式揚水ポンプにおけるスクリューの外半径と外筒の内半径との差は、10mm以下とすると好ましい。スクリューの外半径と外筒の内半径との差は、7mm以下とするとより好ましく、5mm以下とすると更に好ましい。一方、スクリューの外半径と外筒の内半径との差を小さくしすぎると、スクリューの回転抵抗が大きくなり、電力を余分に消費しやすくなる。このため、スクリュー式揚水ポンプにおけるスクリューの外半径と外筒の内半径との差は、1mm以上とすると好ましい。スクリューの外半径と外筒の内半径との差は、2mm以上とするとより好ましく、2.5mm以上とすると更に好ましい。これにより、少ない電力で効率的に一次処理水を揚水することができる。
【0010】
本発明の循環式トイレシステムにおいては、土壌処理槽に充填される土壌の表層に、植栽可能な土質を有する植栽層を設けると好ましい。というのも、土壌処理槽においては、好気性微生物による一次処理水の好気性処理が行われるため、その表層に植栽を行うと、植栽層に植物の根が張り巡らされて土壌中に微細な空間ができ、土壌の深い位置までが好気的環境となって、一次処理水の好気性処理が効率的に行われるようになるからである。一般的な汚水処理における好気性処理としては、曝気を行う活性汚泥法が挙げられるが、連続的に曝気を行うためには相当の電力を要する。この点、表層に植栽を施した土壌処理槽による好気性処理は、電力を使用することなく効率的な好気性処理を実現することができる。また、土壌中に浸透した一次処理水の一部が毛細管現象によって植栽層に移動し、植物の成長に利用されることによって、土壌処理槽における一次処理水の処理速度を上昇させることもできる。
【0011】
本発明の循環式トイレシステムにおいては、土壌処理槽に充填される土壌を、散水管を含む散水層と、散水層の下方に隣接して配された透過層とを備えた層構造を有するものとし、散水層の透水係数P
dと透過層の透水係数P
pとの比P
d/P
pが10〜10
4となるようにすると好ましい。これによって、散水管から散水層中へ浸透した一次処理水が、すぐに透過層へ移動するのではなく、散水層中で水平方向に広がったのちに透過層へ降下するようにすることができる。このため、一次処理水が透過層の広い範囲を満遍なく通過するようにして、透過層における一次処理水の浄化処理をより効率的なものとすることができる。
【0012】
上記課題はまた、
水洗式便器から排出された汚水を固液分離する固液分離工程と、
固液分離工程で処理された一次処理水を貯留する一次貯留工程と、
一次貯留工程で貯留された一次処理水をスクリュー式揚水ポンプによって揚水する揚水工程と、
スクリュー式揚水ポンプで揚水された一次処理水を土壌中に埋設された散水管に通水して土壌中に浸透させ、下端の集水部より回収して二次処理水とする土壌処理工程と、
二次処理水を水洗式便器へ送水する加圧工程と、
スクリュー式揚水ポンプ及び加圧ポンプを稼働する電力を供給する太陽光発電工程と、
を備えた循環式トイレ排水処理方法
を提供することによっても解決される。
【0013】
これにより、少ない電力でトイレ排水の浄化処理を行って循環利用することが可能になる。このため、小規模な太陽光発電装置のみでその稼働に必要な電力をまかなうことができ、設置場所を問わないだけでなく、設置コストも抑えた循環式トイレシステムを提供することが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によって、災害時等において電気や上下水道等のライフラインが正常に機能しなくなった場合においても使用することができ、小規模な太陽光発電装置のみで稼働に必要な電力をまかなうことができる循環式トイレシステムを提供することが可能になる。また、この循環式トイレシステムを用いて実施することができる循環式トイレ排水処理方法も提供することができるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながらより詳しく説明する。ただし、本発明の循環式トイレシステムは以下に記述する形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能なものとする。
【0017】
1. 循環式トイレシステム
図1は、本実施態様の循環式トイレシステム10の全体を示す模式図である。
図1においては、一次貯留槽300の一部を破断させて、中に設置されたスクリュー式揚水ポンプ400を露出させている。本実施態様の循環式トイレシステム10は、
図1に示すように、水洗式便器100と、固液分離槽200と、一次貯留槽300と、スクリュー式揚水ポンプ400と、流量調整槽500と、土壌処理槽600と、二次貯留槽700と、余剰槽710と、加圧ポンプ800と、太陽光発電装置900と、インバーター装置910とを備えたものとなっている。固液分離槽200は、第一分離槽210と、第二分離槽220と、第三分離槽230とを備えた三槽式となっている。
【0018】
水洗式便器100から排出された汚水は、固液分離槽200の第一分離槽210へと流れ落ち、固液分離槽200において嫌気性処理を受けながら多段階に固液分離されて一次処理水となる。一次処理水は、一次貯留槽300に貯留され、日に数回程度スクリュー式揚水ポンプ400によって土壌処理槽600へと揚水圧送される。本実施態様の循環式トイレシステム10においては、一次貯留槽300と土壌処理槽600との間に、土壌処理槽600への送水量を調節するための流量調整槽500が設けられている。土壌処理槽600に送水された一次処理水は、土壌処理槽600に充填された土壌内を通過することによって土壌処理され、二次処理水として回収される。回収された二次処理水は二次貯留槽700に貯留され、加圧ポンプ800によって水洗式便器100の洗浄水を貯留しておくための先浄水タンク110へと圧送されて、水洗式便器100を洗浄するために使われる。
【0019】
本実施態様の循環式トイレシステム10の稼働に必要な電力は、平常時においては、商用電源からの供給電量と太陽光発電装置900によって発電される電力とを組み合わせてまかなわれるが、災害時等において商用電源からの電力供給が停止した際には、そのすべてを太陽光発電装置900による電力でまかなうことができるようになっている。太陽光発電装置900とスクリュー式揚水ポンプ400とを繋ぐ送電回路にはインバーター装置910が設けられており、スクリュー式揚水ポンプ400に送電される電気の周波数と電圧をコントロールすることができるようになっている。
【0020】
本実施態様の循環式トイレシステム10においては、
図1に示すように、固液分離槽200と、一次貯留槽300と、流量調整槽500と、土壌処理槽600と、二次貯留槽700と、余剰槽710とが地面に埋められた状態で設置されている。固液分離槽200、一次貯留槽300、流量調整槽500、二次貯留槽700及び余剰槽710には、メンテナンスのための点検口が、地表に露出するように設けられ、蓋でふさがれている。しかし、本発明の循環式トイレシステム10は、その各構成の設置場所を特に限定されない。本発明の循環式トイレシステム10においては、土壌処理槽600を含むすべての構成を、地上や建物内部や屋上等に設置することもできるが、本実施態様に示すように、その一部の構成を地面に埋まった状態で設置すると、地震や火事等の災害時にも破損しにくくなるため好ましい。また、景観上の観点からも、循環式トイレシステム10の一部構成を地面に埋まった状態で設けると好ましい。
【0021】
このように、本発明の循環式トイレシステム10は、汚水を浄化循環させて便器の洗浄水として再利用することができるとともに、災害時等において商用電源の電力供給が断たれた場合でも、太陽光発電装置900による電力だけで稼働し続けることができるものとなっている。加えて、本発明の循環式トイレシステム10は、大規模な太陽光発電装置を必要とせず、小規模な太陽光発電装置900だけでその稼働電力をまかなうことができるものとなっているため、その設置箇所を問わず、コスト的にも優れたものとなっている。というのも、本発明の循環式トイレシステム10は、一次貯留槽300から一次処理水を揚水するポンプとしてスクリュー式揚水ポンプ400を採用するとともに、太陽光発電装置900からスクリュー式揚水ポンプ400への送電回路にインバーター装置910を備えているため、従来大きな電力を必要としていた汚水ポンプの始動を、低電力で行うことができるようになっているからである。以下、本発明の循環式トイレシステム10の各構成について、具体的に説明する。
【0022】
2. 水洗式便器
水洗式便器100は、その種類や形状を特に限定されず、一般的な水洗式便器を採用することができる。しかし、災害時等に利用者が多くなった場合にも対応可能とするためには、水洗式便器100は、少量の水で洗浄可能なタイプの便器とすると好ましい。本実施態様においては、土壌処理槽600で土壌処理され、加圧ポンプ800によって圧送された二次処理水を、水洗式便器100の洗浄に利用するまでの間貯留しておく洗浄水タンク110を設けている。
【0023】
3. 固液分離槽及び一次貯留槽
本実施態様の循環式トイレシステム10における固液分離槽200は、
図1に示すように、第一分離槽210と、第二分離槽220と、第三分離槽230とを備えたものとなっており、水洗式便器100からの汚水を3段階で固液分離するものとなっている。一次貯留槽300は、固液分離槽200において処理された一次処理水を貯留しておくためのものとなっている。第一分離槽210から第二分離槽220、第二分離槽220から第三分離槽230、及び、第三分離槽230から一次貯留槽300への処理水の移動は、オーバーフローした処理水が自然流入することによって行われる。
【0024】
汚水の固液分離処理は、一般的に、固体成分と液体成分とを分ける物理学的処理と、微生物による生物学的処理とを組み合わせたものとされることが多い。生物学的処理には、大きく分けて好気性処理と嫌気性処理とがあるが、本発明の循環式トイレシステム10における固液分離槽200は、嫌気性処理を行うものとなっている。というのも、固液分離処理と同時に好気性処理を行う場合には、一般的には曝気を必要とするため、連続的に曝気を行うための相当の電力を要し、本発明の目的に反するからである。この点、本発明において採用している嫌気性処理は、曝気を必要としない。また、汚水のBOD値がばらついても処理能力が低下しにくいため、利用者数が大幅に変化しがちな災害時にも安定的に処理を行うことが可能となっている。
【0025】
固液分離槽200は、建築基準法の「屎尿浄化槽構造基準」及び浄化槽法に準拠するものであって、水洗式便器100からの汚水を嫌気性環境下において固液分離できるものであれば、その固液分離方式や構造を限定されない。本実施態様における固液分離槽200は、第一分離槽210と、第二分離槽220と、第三分離槽230とを備えた三槽式となっているが、固液分離槽200は一槽式や二槽式としてもよく、4つ以上の分離槽を備えたものとしてもよい。また、固液分離槽200は、本実施態様のように各分離槽間を通水管で接続するようにしてもよいが、固液分離槽200の内部に分離壁を設けて段階的に固液分離するようにしてもよい。固液分離槽200で処理された一次処理水を、次の処理工程である土壌処理槽600で効率的に処理するためには、固液分離槽200は、一次処理水のBODを100〜150mg/L程度まで低下させることができるものとすると好ましい。ただし、一次処理水のBODが低くなりすぎると、後述する土壌処理槽600における一次処理水の好気性処理が効率的に行われなくなる虞があるため、固液分離槽200は、一次処理水のBODを50〜70mg/L程度よりは低下させないものとすると好ましい。
【0026】
4. スクリュー式揚水ポンプ
図2は、本実施態様の循環式トイレシステム10におけるスクリュー式揚水ポンプ400の側面図である。
図2においては、外筒430の一部を破断させてスクリュー420を露出させている。また、スクリュー式揚水ポンプ400と一次貯留槽300との位置的関係を示すために、一次貯留槽300を破線で表示している。本実施態様において、スクリュー式揚水ポンプ400は、
図2に示すように、スクリュー420と、スクリュー420の周囲を覆う外筒430と、スクリュー420を回転させるための駆動手段440と、駆動手段440の駆動力をスクリュー420に伝達するためのシャフト450とを備えたものとなっており、一次貯留槽300の内部に設けられている。
【0027】
スクリュー式揚水ポンプ400は、駆動手段440によってスクリュー420を一の方向に回転することで、外筒430の下部に設けられた開口部(図示省略)から外筒430内に一次処理水を吸入して外筒430の上端付近まで揚水することができるものとなっている。揚水された一次処理水は、流量調整槽500(
図1を参照)を経て土壌処理槽600(
図1を参照)へと送られる。流量調整槽500は、スクリュー式揚水ポンプ400による揚水速度と、土壌処理槽600への一次処理水の取り込み速度に差があった場合に、これを緩衝するために一次処理水を一時的に貯留するためのものとなっている。スクリュー式揚水ポンプ400による一次処理水の揚水は、連続的に行ってもよいが、断続的に行うと好ましい。具体的には、日に数回程度、一度に大量に一次処理水を土壌処理槽600へと送水するようにすると好ましい。これにより、後述するように、土壌処理槽600における好気性処理を効率的なものとすることができるからである。
【0028】
本実施態様におけるスクリュー式揚水ポンプ400は、一次貯留槽300の内部に設けられているが、スクリュー式揚水ポンプ400は、一次貯留槽300に貯留された一次処理水を揚水して土壌処理槽600に送ることができるようになっていれば、その設置箇所を特に限定されない。本実施態様において、スクリュー式揚水ポンプ400による揚水高さL
1は、0.5〜1m程度となっているが、揚水高さL
1は、循環式トイレシステム10の設計に応じて適宜変更することができる。しかし、揚水高さL
1が高すぎると、スクリュー420にかかる負荷が増大しやすい。このため、揚水高さL
1は、4m以下とすると好ましく、2m以下とすると更に好ましい。
【0029】
本実施態様におけるスクリュー式揚水ポンプ400は、一次処理水を略鉛直に揚水するものとなっているが、所望の揚水高さL
1を実現でき、非水平であれば、スクリュー式揚水ポンプ400の揚水方向は特に限定されず、鉛直方向に対して傾斜させてもよい。外筒430は、通常スクリュー420の外面全体を覆う円筒状とされるが、外筒430を鉛直方向に対して傾斜させる場合には、スクリュー420の下側のみを覆う半筒状とすることもできる。スクリュー420は、外筒430の中心軸に対して偏心して設けてもよい。本実施態様において、外筒430は、スクリュー420の回転軸と、外筒430の中心軸とが略一致する円筒状に形成されている。
【0030】
図3は、本実施態様の循環式トイレシステム10におけるスクリュー式揚水ポンプ400における、スクリュー420と外筒430とを、揚水方向に垂直な面で切断した断面図である。本実施態様において、スクリュー420の外半径と外筒430の内半径との差L
2は、約3mmとなるように調節されており、これによって、一次処理水を効率的に揚水できるようになっている。
【0031】
本発明の循環式トイレシステム10において、スクリュー420の外半径と外筒430の内半径との差L
2は、特に限定されない。しかし、スクリュー420の外半径と外筒430の内半径との差L
2を大きくしすぎると、その隙間から一次処理水が漏れ落ちやすくなり、効率的に揚水することができなくなる虞がある。このため、スクリュー420の外半径と外筒430の内半径との差L
2は、10mm以下とすると好ましく、7mm以下とするとより好ましく、5mm以下とすると更に好ましい。一方、スクリュー420の外半径と外筒430の内半径との差L
2を小さくしすぎると、スクリュー420の回転抵抗が大きくなって、電力を余分に消費してしまう虞がある。このため、スクリュー420の外半径と外筒430の内半径との差L
2は、1mm以上とすると好ましく、2mm以上とするとより好ましく、2.5mm以上とすると更に好ましい。
【0032】
スクリュー420の内径L
3は、スクリュー420の強度を保つことができるのであれば特に限定されない。スクリュー420の外径L
4も特に限定されないが、スクリュー420の外径L
4を大きくしすぎると、スクリュー420を回転させるために大きな力が必要となって、電力を多く消費してしまう虞がある。このため、スクリュー420の外径L
4は、150mm以下とすると好ましく、130mm以下とするとより好ましい。一方、スクリュー420の外径L
4を小さくしすぎると、効率よく一次処理水を揚水することができない虞がある。このため、スクリュー420の外径L
4は、50mm以上とすると好ましく、70mm以上とするとより好ましい。本実施態様において、スクリュー420の外径L
4は、約100mmとなっている。
【0033】
スクリュー式揚水ポンプ400における、スクリュー420のブレード421のピッチL
5(
図2を参照)は、特に限定されない。しかし、ブレード421のピッチL
5が広すぎると、効率よく一次処理水を揚水することができない虞がある。このため、ブレード421のピッチL
5の、スクリュー420の外径L
4に対する比L
5/L
4は、2.0以下とすると好ましく、1.5以下とするとより好ましい。一方、ブレード421のピッチL
5が狭すぎても、効率よく一次処理水を揚水することができない虞がある。このため、ブレード421のピッチL
5の、スクリュー420の外径L
4に対する比L
5/L
4は、0.5以上とすると好ましく、0.7以上とするとより好ましい。本実施態様において、ブレード421のピッチL
5の、スクリュー420の外径L
4に対する比L
5/L
4は、約1.0となっている。スクリュー420は、
図2においては右巻きに描かれているが、左巻きとしてもよい。
【0034】
本発明におけるスクリュー式揚水ポンプ400は、災害時などにおいて商用電源からの電力供給が停止した場合にも、太陽光発電装置900から供給される電力だけで始動し、稼働することができるものとなっている。しかし、悪天候が続く等すると、太陽光発電装置900が十分な電力を供給できない虞がある。このため、本実施態様の循環式トイレシステム10には、
図1に示すように、一次貯留槽300に貯留された一次処理水を手動で揚水するための手動ポンプ460も備えている。手動ポンプ460は、電力を使用せずに一次処理水を揚水することができるものであれば、その種類を限定されず、手以外の体の部位で操作するものであってもよい。
【0035】
5. 土壌処理槽
図4は、本実施態様の循環式トイレシステム10における土壌処理槽600を、散水管621に略垂直な鉛直面で切断した断面図である。本実施態様における土壌処理槽600は、
図4に示すように、土壌処理槽600の表層に配されて植栽可能な土質を有する植栽層610と、散水管621を埋設された散水層620と、散水層620の下方に配された透過層630と、透過層630の下方に配されて陽イオン交換性の多孔性材料を含有する吸着層640と、集水管651を備え、土壌内を通過してきた処理水を集水する集水部として機能する集水層650と、から成る層構造を有している。土壌処理槽600の地中部分の外壁面には、処理水が外部に漏れないようにするための遮水シート601が備えられている。
図4においては、植栽層610に植えることのできる植物の例として葉物野菜を破線で示している。
【0036】
本発明の循環式トイレシステム10における土壌処理槽600は、土壌を通過させることによって、一次処理水を浄化処理するためのものとなっている。すなわち、スクリュー式揚水ポンプ400で揚水圧送されて、土壌処理槽600に埋設された散水管621に通水された一次処理水は、その側壁が透水性とされた散水管621から散水層620に滲出する。散水層620に滲出した処理水は、その一部が毛細管現象によって散水層620の上方に設けられた植栽層610へ移動するとともに、残りの部分は重力に従って透過層630へと浸透降下する。透過層630を通過した処理水は、更に吸着層640を通過したのち、集水層650に設けられた集水管651によって集水されて、二次処理水として二次貯留槽700(
図1を参照)に貯留される。
【0037】
散水層620、植栽層610及び透過層630において、処理水は、土壌中に生息する微生物によって好気的に生物処理されるとともに、土壌を通過することによって物理的にろ過される。また、処理水に含まれるリン酸が土壌に吸着除去される。処理水に含まれていたアンモニア態窒素は、微生物による好気性処理によって硝酸態窒素となり、処理水に含まれるカリウムと、土壌に吸着されたリン酸と共に、植栽層610に植えられた植物の根から吸収されて、肥料として植物の成長に利用される。吸着層640は、ゼオライトを含んでおり、処理水に含まれるアンモニア等の臭気性物質や色素性成分を吸着して、処理水の脱臭と脱色を行うことができるものとなっている。このように、土壌処理槽600における土壌処理によって、一次処理水に含まれる有機物や窒素やリン酸や不溶物等を取り除いて、一次処理水を多面的に浄化することができるようになっている。本実施態様の循環式トイレシステム10において、土壌処理槽600での土壌処理を経て得られる二次処理水のBODは、5mg/L程度かそれ以下となっている。
【0038】
植栽層610は、土壌処理槽600の表層に位置しており、植栽に適した土質を有している。本実施態様においては、
図4に示すように、植栽層610に葉物野菜を植えている。というのも、植栽層610に植物を植えると、土壌処理槽600における好気性処理を効率的なものとすることができるからである。すなわち、植栽層610に植物の根が張り巡らされることによって、植栽層610の土壌中に微細な空間を生じさせることができ、微生物による好気性処理に必要な酸素を、土壌中に豊富に供給することができるようになる。このため、植栽層610に植える植物は、特に限定されないが、地中深くまで根を張り、好硝酸性である野菜類とすると好ましい。具体的には、法蓮草や小松菜が適している。加えて、一次処理水が土壌処理槽600に送られると、窒素やリン酸、カリウム等といった肥料成分と水が植栽層610に供給されるため、植栽層610に植物を植えると、水やりや追肥を行わなくとも、植物を元気に育てることができ、災害時等には食料として役立てることもできる。
【0039】
植栽層610の土壌は、所望の植物を植えるのに適したものであれば特に限定されない。本実施態様においては、植栽層610に、もみ殻粉炭を混在させた土を用いている。というのも、もみ殻粉炭は、好気性処理に適した微生物を多く含有するとともに、土壌の通気性を向上させ、処理水の脱臭や脱色も行うことができるからである。植栽層610の鉛直方向厚みは、通常150〜300mmとされ、本実施態様においては、約220mmとなっている。
【0040】
散水層620は、埋設した散水管621から滲出する一次処理水を土壌処理槽600の水平方向へ広く行き渡らせるためのものとなっている。このため、散水管621から散水層620へ滲出した一次処理水は、すぐに透過層630へ降下するのではなく、散水層620内を水平方向へ広がってから徐々に透過層630へ移動するようにすると好ましい。具体的には、散水層620の透水係数P
dと、透過層630の透水係数P
pとの比P
d/P
pが、10以上となるようにすると好ましい。比P
d/P
pは、10
2以上とするとより好ましい。しかし、比P
d/P
pを大きくしすぎると、処理水が散水層620から透過層630へなかなか浸透せず、散水層620が水浸しの状態となって嫌気的環境となり、好気性処理の効率が低下する虞がある。このため、比P
d/P
pは、10
4以下となるようにすると好ましい。比P
d/P
pは、5x10
3以下とするとより好ましい。本実施態様において、比P
d/P
pは、約10
3となっている。
【0041】
散水層620の土壌は、所望の透水係数P
dを有するものであれば特に限定されないが、本実施態様においては、腐葉土又は枯葉を含んだものとしている。これらは好気性処理に適した微生物を多く含むため、散水層620における好気性処理を効率的なものとすることができる。散水層620の鉛直方向厚みは、通常80〜200mmとされ、本実施態様においては、約120mmとなっている。散水管621は、その上端が、土壌処理槽600の植栽層610の上端から鉛直方向に300mm〜350mmの位置となるように埋設すると好ましい。というのも、散水管621の埋設位置が浅すぎると、散水管621から滲出した一次処理水が直接植物の根に当たってしまい、植物が根腐れを起こす虞があり、散水管621の埋設位置が深すぎると、散水管621から滲出した一次処理水が植物の根に十分供給されない虞があるからである。
【0042】
散水管621は、通水させた一次処理水を散水層620に滲出させることができるようになっていれば、その構造や素材を特に限定されない。本実施態様における散水管621は、可撓性の樹脂を螺旋状に配した骨格を備えた管であって、透水性の不織布でその骨格を裏打ちした構造を有することにより、その側面の全方向へ一次処理水を滲出させることができるものとなっている。一次処理水は、散水管621から滲出したのち、散水管621の直下に下降するのではなく、散水層620内において水平方向に広く浸透してから、植栽層610や透過層630へ移動するようにすると好ましい。このため、本実施態様においては、
図4に示すように、散水管621を受けるようにして散水管621の下部に配された非透水性の樋状部材622と、散水管621に接触して水平方向に広がるように配された導水部材623とを設けている。
【0043】
導水部材623は、散水管621の上部に接触して設けられた上側導水部材623aと、散水管621と樋状部材622との間に挟まれて設けられた下側導水部材623bとで構成されている。上側導水部材623aは、一次処理水が植栽層610の広い範囲に移動しやすくするためのものとなっており、下側導水部材623bは、一次処理水が散水層620内において水平方向に広がりやすくするためのものとなっている。下側導水部材623bは、樋状部材622の内底部付近にある一次処理水を吸い上げるという、サイフォンのような機能も有している。樋状部材622は、散水管621の直下へ一次処理水が移動することを防ぐことができるものであれば、その素材や形状を限定されない。導水部材623は、散水管621から滲出した一次処理水を水平方向に広がるように導水することができれば、どのような素材で形成してもよいが、本実施態様においては、厚手の不織布で形成している。
【0044】
スクリュー式揚水ポンプ400によって一次処理水を揚水し、散水管621へ通水させる工程は、低速で連続的に行うこともできるが、日に数回程度、一度に大量の一次処理水を揚水して散水管621へ通水するようにすると好ましい。というのも、一度に大量の一次処理水を散水管621へ通水すると、土壌処理槽600の土壌の全域に渡って処理水が浸透したのち、集水層650へ向かって一気に降下するため、これに伴って表層から土壌中に空気が引き込まれ、土壌をより好気的な環境にして、好気性処理を効率的なものとすることができるからである。
【0045】
透過層630の土壌は、所望の透水係数P
pを有し、好気性処理を行う微生物の生育に適したものであればその種類を特に限定されない。本実施態様においては、透過層630の土壌を、アルミニウム成分を豊富に含み、リン酸の吸着能を有する黒ボク土と、ろ過性能に優れた真砂土と、好気性微生物を多く含み、土壌の通気性を向上させるとともに脱臭や脱色を行うことができるもみ殻粉炭とを含むものとしている。透過層630の鉛直方向厚みは、通常200〜450mmとされ、本実施態様においては、約340mmとなっている。
【0046】
本実施態様においては、透過層630と集水層650との間に、陽イオン交換性の多孔性材料であるゼオライトを含有する吸着層640を設けている。これによって、吸着層を通過する処理水に含まれる臭気性物質を多孔性材料に吸着させて、処理水の脱臭を行うことができる。また、処理水に含まれる色素性物質も吸着させて、処理水の脱色も行うことができる。吸着層640に含有させる多孔性材料は、陽イオン交換性ものに限定されないが、陽イオン交換性ものとすると、アンモニア等の陽イオン性の臭気性物質を効率的に吸着することができる。吸着層640の下端部には、高い透水性を有しながらも多孔性材料等は通過させない割布641を設けており、集水層650に多孔性材料等が侵入するのを防いでいる。吸着層640の鉛直方向厚みは、通常50〜150mmとされ、本実施態様においては、約120mmとなっている。
【0047】
本実施態様において、集水管651は透水性の素材で形成されており、集水層650における集水管651以外の部分には砂利等が充填されている。集水層650の構造は、土壌処理槽600の下端部に位置して処理水を漏れなく回収できるものであれば、特に限定されない。土壌処理槽600の底部の形状は、
図4に示すように平らなものとしてもよいが、集水管651に向かって狭くなる断面略V字状としてもよい。
【0048】
6. 二次貯留槽及び加圧ポンプ
土壌処理槽600において土壌処理された二次処理水は、二次貯留槽700に貯留される(
図1を参照)。二次貯留槽700は、土壌処理槽600において処理された二次処理水を貯留することができれば、その具体的な大きさや構造を問わない。本実施態様においては、大雨などによって二次貯留槽700がオーバーフローした際に備えて、余剰の二次処理水を一時的に貯留するための余剰槽710を設けている。二次貯留槽700に貯留された二次処理水は、加圧ポンプ800によって圧送されて、再び水洗式便器100の洗浄水として循環利用される。本実施態様においては、加圧ポンプ800も、スクリュー式揚水ポンプ400の手動ポンプ460と同様の手動ポンプ(図示省略)を備えており、太陽光発電装置900から十分な電力が供給されないときにも、二次処理水を圧送して水洗式便器100の洗浄に利用できるようになっている。
【0049】
7. 太陽光発電装置
本実施態様の循環式トイレシステム10は、災害時等において商用電源からの電力供給が停止した際にも、その全ての必要電力をまかなうことができる太陽光発電装置900を備えている。太陽光発電装置900は、循環式トイレシステム10の規模や設置箇所に応じて、所望の電力量を供給することができるものであれば、その大きさや種類を特に限定されない。本実施態様の循環式トイレシステム10においては、水洗式便器100一つあたりの太陽光発電装置900の発電電力は、約0.075kWもあればよい。図には示していないが、循環式トイレシステム10には、太陽光発電装置900で発電された電気を蓄電可能な蓄電装置を備えてもよい。
【0050】
本実施態様においては、太陽光発電装置900によって発電された電力をスクリュー式揚水ポンプ400へ送電する送電回路において、電気の周波数と電圧をコントロールすることができるインバーター装置910を設けている。これによって、スクリュー式揚水ポンプ400を、より省電力で稼働することができるようになっている。すなわち、スクリュー式揚水ポンプ400を稼働させるうえで、最も大きな電力を必要とするのは始動時であるところ、本実施態様においては、インバーター装置910によって、太陽光発電装置900の供給電力の周波数と電圧とを最適化しながら徐々にスクリュー式揚水ポンプ400を始動させることによって、スクリュー式揚水ポンプ400の始動電流を大幅に抑えることができる。このため、太陽光発電装置900を小規模なものとしても、スクリュー式揚水ポンプ400を始動させることができるようになっている。インバーター装置910は、上記の目的を達成することができるものであれば、その種類や容量を特に限定されない。
【0051】
8. その他
本実施態様の循環式トイレシステム10においては、
図1に示すように、処理槽間の継手にゴム製の耐震用継手11を使用している。本発明において、処理槽間を連結する継手の素材は特に限定されないが、ゴム製の耐震用継手11とすると、地震等によって地面が変形して処理槽の位置関係がずれたとしても、継手が外れたり破損したりすることを防ぐことができるため好ましい。また、循環式トイレシステム10における固液分離槽200、一次貯留槽300、流量調整槽500、二次貯留槽700及び余剰槽710は、その素材を特に限定されないが、震災時等に多少撓んだりゆがんだりした場合でも破損しにくいものとするため、本実施態様においては樹脂製としている。