特開2017-15414(P2017-15414A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2017-15414多種ハロゲンおよび硫黄の微量・超微量高速自動分析方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-15414(P2017-15414A)
(43)【公開日】2017年1月19日
(54)【発明の名称】多種ハロゲンおよび硫黄の微量・超微量高速自動分析方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/88 20060101AFI20161222BHJP
   G01N 30/06 20060101ALI20161222BHJP
   G01N 30/02 20060101ALI20161222BHJP
   G01N 31/12 20060101ALI20161222BHJP
   G01N 35/00 20060101ALI20161222BHJP
【FI】
   G01N30/88 H
   G01N30/06 G
   G01N30/02 B
   G01N31/12 A
   G01N35/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-129359(P2015-129359)
(22)【出願日】2015年6月28日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 第82回日本分析化学会有機微量分析研究懇談会において2015年5月29日発表
(71)【出願人】
【識別番号】506100967
【氏名又は名称】株式会社 ナックテクノサービス
(74)【代理人】
【識別番号】100082153
【弁理士】
【氏名又は名称】小原 二郎
(72)【発明者】
【氏名】長嶋 潜
【テーマコード(参考)】
2G042
2G058
【Fターム(参考)】
2G042AA01
2G042BA08
2G042BA10
2G042BB13
2G042BB18
2G042CB03
2G042DA03
2G042DA04
2G042FA04
2G042FA05
2G058AA01
2G058GA14
2G058GD02
(57)【要約】
【課題】
燃焼−イオンクロマトグラフ方式の多種ハロゲンおよび硫黄の自動分析方法および装置において、特に超微量試料の分析における分析試料間のクロスオーバによる分析精度の低下を防止する。
【解決手段】
燃焼装置からの分析試料の燃焼分解ガスの下流側への排出口に対して、清浄空気を上流側に向けて導入し、燃焼分解生成物の前記排出口側への付着を低減し、かつ付着した前記分解生成物を系外に除去するようにする。
【効果】
超微量試料の高精度の分析が可能となる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多種ハロゲンおよび硫黄を含む複数検体の分析試料をオートサンプラによって燃焼装置の石英燃焼管に順次供給し、これを燃焼装置中で酸素を含む清浄空気によってガス状に燃焼分解することにより無機態のハロゲンおよび硫黄の分解生成物を生成し、これら全ての分解生成物を前記燃焼装置の下流側の排出口から清浄空気にのせて下流側の吸収装置の吸収液に導入して溶解させ、イオン化によって生じる吸収液中の多種ハロゲンおよび硫黄の夫々のイオンをイオンクロマトグラフィにより分離、定量する高速自動分析方法において、
前記燃焼装置の下流側の排出口に対して、清浄空気を分解生成物の流れと対向して上流側に向けて導入し、それによって燃焼による分解生成物の前記排出口側への付着を低減し、かつ付着した前記分解生成物を系外に除去することを特徴とする高速自動分析方法。
【請求項2】
前記吸収装置の吸収液として酸化剤および還元剤を含む吸収液を用いる請求項1記載の高速自動分析方法。
【請求項3】
前記イオンクロマトグラフ装置における検量線作成用標準試料として多種ハロゲンおよび硫黄を同一化合物中に含む標準試料を用いる請求項1記載の高速自動分析方法。
【請求項4】
分析精度を向上させるために内標準物質を吸収液に含む請求項1記載の高速自動分析方法。
【請求項5】
多種ハロゲンおよび硫黄を含む複数検体の分析試料を石英燃焼管に順次供給するオートサンプラと、前記石英燃焼管を備え燃焼管中での酸素を含む清浄空気による分析試料の燃焼分解により無機態のハロゲンおよび硫黄の分解生成物を生成させる燃焼装置と、燃焼装置からの清浄空気に含まれる分解生成物を溶解し、溶解に伴って生じる多種ハロゲンおよび硫黄の夫々のイオンに解離する吸収液を備えた吸収装置と前記分解生成物を含む燃焼用の清浄空気を前記燃焼装置の下流側の排出口より吸収装置に吸引導入する吸引ポンプと、前記吸収装置の下流側に設けられ前記吸収装置からの夫々のイオンを分離展開してイオンクロマトグラムにより定量検知するイオンクロマトグラフ装置とを備えた高速自動分析装置において、
前記燃焼装置の下流側の排出口に設けられ分析試料の全ての分解生成物を含む清浄空気をニードル管を通して下流側の吸収装置に吸引するニードル機構と、
前記分解生成物を含む清浄空気の下流側への流れと対向する向きに前記ニードル管の外側から別の流れの清浄空気を前記排出口に供給する吹出口を設けたことを特徴とする高速自動分析装置。
【請求項6】
前記燃焼装置の前記下流側の排出口に供給する清浄空気を前記燃焼管の上流側に供給する試料燃焼用の酸素を含む清浄空気の供給源から供給する請求項5記載の高速自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は分析試料中の微量の有機多種ハロゲン(F、Cl,Br,I)および硫黄を同時に一括分析する高速自動分析方法および装置に関し、特に1mg以下の超微量の分析試料の自動分析にも適用可能な分析方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
環境問題への意識の高まりから、廃棄物や土壌等の安全性に関心が寄せられており、それらに含有されている元素の中、とりわけ分析頻度の高い各種ハロゲンおよび硫黄を同時に高速で自動分析する手法が求められている。一方、医薬品、ファインケミカルおよび天然物の分野では、著しく微量において薬効あるいは活性を示す化合物も多く、かつ高価であることから超微量の試料をはかり取って分析する手法が求められている。
【0003】
本発明者等はこれらの多種元素の一括分析について研究開発を重ね、従来から多くの分析技術を提案し、実用化して来た。たとえば、前記多種ハロゲンと硫黄の同時分析のために分析試料を高温で燃焼分解し、得られた燃焼分解生成ガス中の微量のハロゲンおよび硫黄をイオンクロマトグラフィによって定量検出する高速自動分析方法および装置を実施しかつ特許出願している(非特許文献1および特許文献1.2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−262000号公報
【特許文献2】特許第5399996号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】分析化学、Vol.49、No.5、pp331−343
【0006】
これらの先行技術文献による燃焼ーイオンクロマトグラフ方式の高速自動分析装置の基本的な構成および作動の概要は次の通りである。
【0007】
前記高速自動分析装置は分析対象の有機ハロゲンおよび硫黄を含む分析試料を収容して順次燃焼管に供給するオートサンプラと、前記燃焼管に供給された試料を燃焼分解して無機態のハロゲンおよび硫黄の分解生成ガスとする燃焼装置と、前記燃焼装置の下流側から排出される分解生成ガスを酸化剤および還元剤を含む吸収液に吸収溶解し、ハロゲンおよび硫黄をイオン化する吸収装置と、生成したイオンを検出定量するイオンクロマトグラフ装置とを備えている。
【0008】
前記燃焼ーイオンクロマトグラフ方式の自動分析装置の一例の概要を示す図6においては、オートサンプラ1から分析対象試料を順次石英製の燃焼管2に供給し、白金ボート3に載置した状態で燃焼装置の上流側の試料加熱炉4Aおよび下流側の燃焼炉4B内に順次移動させ、燃焼管の上流側から供給される酸素含有ガス(清浄空気又はO/不活性ガス)により高温に加熱・燃焼して無機態のハロゲンおよび硫黄酸化物の分解生成ガスを発生させる。
【0009】
得られた分解生成ガスは燃焼炉4Bの下流側の排出口から吸収装置における吸収びん5A、5Bの吸収液中に溶解されて夫々のハロゲン化物イオンおよび硫酸イオンにイオン化される。
【0010】
ハロゲン化物イオンおよび硫酸イオンを含む吸収液は、さらに引きつづく図示しないイオンクロマトグラフ装置6の分析カラムに送られて展開されサプレッサを通した後、電気伝導度度検出器を用いて検出し、クロマトグラム上に展開されて主にピーク面積法により定量される。
【0011】
前記高速自動分析装置によれば、同一操作により多品種の元素を同時に一括分析することができ高速な自動分析が可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前記本発明者等による高速自動分析方法および装置によれば微量(ミリグラムオーダ)の試料についてのトレース分析が可能であったが、近年超微量(デシミリグラムオーダ、1mg以下)の超微量試料について分析のニーズが高まっており、これらの要請に応えるために分析試料をより高精度で分析・検出することの可能な分析技術が求められるが、前記の分析方法および装置では対象とする試料や条件によってはこのような超微量の試料成分を精度よく分析・検出することが困難であった。
なお、現時点における超微量に関する明確な定義は定まっていないが、一般にははかり取り量1mg未満とされ、超微量電子天びんにより秤量が行われている。
【0013】
したがって本発明の目的は前記燃焼ーイオンクロマトグラフ方式によって分析対象試料中の多種ハロゲンおよび硫黄を同時に分析・検出することのできる高速自動分析方法および分析装置において、それらの多種元素を含むデシミリグラムオーダの量の試料の分析についても充分な高精度で対応可能な高速自動分析方法および装置を提供することにある。
【0014】
本発明者の研究実験の結果からは、超微量の試料の分析に際しての最大の課題はバックグラウンドがもたらす燃焼用空気の汚染およびキャリオーバにあることが判明した。特に多数の試料を逐次分析する際には既に分析された先行試料の一部が系内に残留するいわゆるキャリオーバが次の試料の分析時に大きく影響を与え精度を低下させていることが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は前記のキャリオーバが分析試料の燃焼装置中での加熱燃焼によって生成するガス状の分解生成物が下流側の燃焼炉の排出口付近の管路に付着することにより顕著に顕れることを具体的に突き止め、この付着を低減することにより前記超微量の試料の分析における精度の向上を阻害するキャリオーバが実質的に解消されることを発見して本発明を完成した。
【0016】
本発明は多種ハロゲンおよび硫黄を含む複数検体の分析試料をオートサンプラによって燃焼装置の石英燃焼管に順次供給し、これを燃焼装置中で酸素を含む清浄空気(キャリヤガス)によってガス状に燃焼分解することにより無機態のハロゲンおよび硫黄の分解生成物を生成し、これら全ての分解生成物を前記燃焼装置の下流側の排出口から清浄空気にのせて下流側の吸収装置の吸収液に導入して溶解させ、イオン化によって生じる吸収液中の多種ハロゲンおよび硫黄の夫々のイオンをイオンクロマトグラフィにより分離、定量する高速自動分析方法において、
前記燃焼装置の下流側の排出口に対して、清浄空気を分解生成物の流れと対向して上流側に向けて導入し、それによって燃焼による分解生成物の前記排出口側への付着を低減し、かつ付着した前記分解生成物を系外に除去することを特徴とする高速自動分析方法を提供する。
【0017】
また本発明は前記吸収装置の吸収液として酸化剤および還元剤を含む吸収液を用いる前記高速自動分析方法を提供する。
【0018】
また本発明は前記イオンクロマトグラフィにおける検量線作成用の標準試料として多種ハロゲンおよび硫黄元素を同一化合物中に含む標準試料を用いる前記高速自動分析方法を提供する。
【0019】
また本発明は分析精度を向上させるため内標準物質としてのリン酸を吸収液に含む前記高速自動分析方法を提供する。
【0020】
また本発明は多種ハロゲンおよび硫黄を含む複数検体の分析試料を石英燃焼管に順次供給するオートサンプラと、前記石英燃焼管を備え燃焼管中での酸素を含む清浄空気による分析試料の燃焼分解により無機態のハロゲンおよび硫黄の分解生成物を生成させる燃焼装置と、燃焼装置からの清浄空気に含まれる分解生成物を溶解し、溶解に伴って生じる多種ハロゲンおよび硫黄の夫々のイオンに解離する吸収液を備えた吸収装置と、前記分解生成物を含む燃焼用の清浄空気を前記燃焼装置の下流側の排出口より吸収装置に吸引導入する吸引ポンプと、前記吸収装置の下流側に設けられ前記吸収装置からの夫々のイオンを分離展開してイオンクロマトグラムにより定量検知するイオンクロマトグラフ装置とを備えた高速自動分析装置において、
前記燃焼装置の下流側の排出口に設けられ分析試料の全ての分解生成物を含む清浄空気をニードル管を通して下流側の吸収装置に吸引するニードル機構と、
前記分解生成物を含む清浄空気の下流側への流れと対向する向きに前記ニードル管の外側から別の流れの清浄空気を前記排出口に供給する吹出口を設けたことを特徴とする高速自動分析装置を提供する。
【0021】
また本発明は前記燃焼装置の前記下流側の排出口に供給する清浄ガスを前記燃焼管の上流側に供給する試料の燃焼用の酸素を含む清浄空気の供給源から供給する前記高速自動分析装置を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の方法および装置によれば、燃焼ーイオンクロマトグラフ方式による高速自動分析方法および装置において、燃焼装置下流側の排出口から分析試料の加熱分解による全ての分解生成物を下流側の吸収装置に対して導入すると共に、この流れと対向してニードル機構により清浄空気を前記ニードル管の外側から上流側に向けて供給するようになされているので前記排出口近傍で局所的に過度に進行するおそれのある燃焼分解反応が緩和されて分解生成物の付着が抑止されるものと考えられる。また、排出口近傍へのハロゲンおよび硫黄由来の付着物を除去して先行試料のキャリオーバによる後続の試料への影響を確実に減少させることができ、超微量(約0.1〜1.0 mg)の6試料の高速自動分析を高精度で達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の自動分析装置の全体のシステムを示す概要図である。
図2】本発明の自動分析装置の全体のシステムにおけるキャリヤオーバの低減効果を示す図である。
図3】本発明の実施例において得られ分析結果を示すグラフである。
図4】本発明の実施例において得られ分析結果を示すグラフである。
図5】本発明の実施例において得られ分析結果を示すグラフである。
図6】本発明者等による従来の燃焼ーイオンクロマトグラフ方式の自動分析装置の構成を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は本発明の自動分析装置の全体を示すシステム図である。図中ハロゲンおよび硫黄を含む分析試料はオートサンプラによって石英燃焼管に順次導入され、各試料毎に図示しない白金ボートに載置された状態で燃焼装置の上流側のフラッシュヒータ(試料加熱炉)および下流側の電気炉(燃焼炉)によって逐次高温に加熱され、燃焼管の上流から導入さる酸素を含む清浄空気(1.0 L/min)により加熱燃焼されて無機態のハロゲンおよびSO等からなる燃焼分解生成ガスとなる。ここで試料燃焼用の酸素を含む清浄空気中の酸素は必要に応じて混合比を調節してもよい。
【0025】
分解生成物は下流側の電気炉の端部の排出口に設けたニードル機構を介して吸収液を含む吸収びんに溶解・吸収されイオン化されてハロゲンのイオンおよび硫酸イオンとなる。この実施態様では吸収液はBrおよびI等のハロゲンのイオンおよびSOイオンの効率的な生成のため酸化/還元系(H/NHNH含有純水)の吸収液を用いている。吸収装置の吸収びんは実際には第1および第2吸収びんを切換バルブを介して直列に接続して用いられるが、図1では簡単のために単一の吸収びんとして示してある。
【0026】
生成された各種のハロゲン化物イオンおよび硫酸イオンを含む吸収液は吸収びんから図示しないイオンクロマトグラフ装置 に注液されカラム内で経時的に分離展開され、サプレッサを通した後に電気伝導度検出器を用いて検知され、定量分析の結果が表示される。
【0027】
ここでイオンクロマトグラムの検量線作成のためには種々の標準試料が用いられるが、本発明の実施態様では効率化のために一つの化合物中に多種ハロゲンおよび硫黄を同時に含む化合物を用いることが好ましい、この標準試料については後述する。
【0028】

またイオンクロマトグラムでの検量線の作成に際して良好な精度を得るために内部標準物質としてリン酸を用いている。
【0029】
本発明の高速分析装置では一連の分析試料は燃焼装置の電気炉(燃焼炉)で完全に燃焼分解されてガス化されるが、この分析試料の燃焼分解後、電気炉の先端部にある下流側の排出口およびその付近の管路には、各分析試料の分解生成ガスが燃焼分解終了後に内周側に微量の付着物として不可避的に残存する。特に本願で測定対象が超微量(1mg以下)の分析試料の場合には、これが引きつづく試料の加熱分解時に再度混入して(クロスオーバ)測定値に無視できない誤差をもたらし、測定精度を低下させていた。
【0030】
このため図1に示す本実施態様の装置では前記電気炉の排出口側のニードル機構に清浄空気(0.1 L/min)を供給してこの付着物を除き系外に除去する。これによって次の分析試料に対する混入を防止して、分析誤差を目的とする許容値以下に減少させることができクロスオーバを実質的に解消して極微量の試料分析が可能となる。
【0031】
尚本発明の図1の実施態様では燃焼装置での加熱燃焼のための清浄空気は燃焼管の上流側に設けた清浄空気および酸素含有分調節のため酸素の夫々の供給源から供給される。尚清浄空気の代わりに酸素と不活性ガスたとえばAr、He等との混合ガスを用いてもよい。
【実施例】
【0032】
以下図1に概要を示した本発明の高速分析装置を用いて行った各種実験の結果を実施例として示す。
【0033】
尚燃焼ーイオンクロマトグラフ方式の高速分析における使用機器および測定条件は次の通りである。
【0034】
イオンクロマトグラフにおける検量線作成用の各種標準試料としては市販の試料の他本発明者等の開発した多種ハロゲン・硫黄を含む化合物を用いた。これにより検量線作成に関する分析作業が大幅に効率化される。このような化合物としては下記の3種が挙げられる。
【0035】
実施例1
(キャリオーバ防止効果の検証)
本発明の分析装置におけるキャリオーバ防止の効果を検証するために、多元素共有標準試料として前記NAC−st4(1480mg)(F、Cl、Br、I、S含有)を用いて燃焼ーイオンクロマトグラフ方式を実施した。汚染を低減させるために装置は完全密閉構造とした。試験結果を下表に示し、測定前後の状態からのクロマトグラフを図3に示す。NAC−st4を用いた燃焼ークロマトグラフ方式による分析結果を得たのち(B)、清浄空気を供給してキャリオ−バを解消し(C)、これを試験前のブランク(A)と比較した。キャリオーバの影響は各元素とも0.5%未満であり、許容値1%未満を十分に下まわっていた。
【0036】
実施例2
前記多元素含有標準試料は燃焼ーイオンクロマトグラフ方式における試料分析において有効であることがすでに確認されているが、以下の試験では本発明の分析におけるその適合性を市販の標準試料と対比して示す。
【0037】
(フッ素分析)
NAC−st1および市販試薬p−安息香酸を用いて燃焼ーイオンクロマトグラフ方式の試料分析を実施した結果を下記表および図3のグラフに示す。グラフから明らかなようにp−フルオロ安息香酸(A)およびNAC−st1(B)の検量線は同等の傾向を示し、両者を合わせた検量線の相関係数(R2)は0.999以上を示し、よく一致した(A+B)。
【0038】
(臭素分析)
多元素含有試薬としてのNAC−st1および市販の4−ブロモアセトアニリドを用いて燃焼ーイオンクロマトグラフ方式の分析における検量線を作成した。結果を図4に示す。両者の検量線はH/NHNH含有移動相を含む第2吸収びんの吸収液ー(2)の場合ではほぼ一致していた。
【0039】
実施例3
(多元素標準試料による検量線)
多元素標準試料NAC−st1、NAC−st2を用いて燃焼ーイオンクロマトグラフ分析において計り取った試料中の各元素量とピーク面積の関係から夫々の元素の検量線を作成した。二次式における検量線の方程式と相関係数Rを下記表に示す。いずれの元素についてもRは0.999以上の相関性を示した。
【0040】
実施例4
(デシミリグラム量の有機ハロゲン・硫黄の分析結果)
市販の標準試料をデシミリグラムの範囲の試料量で用いて各ハロゲンおよび硫黄の含有量を分析した。結果を下記の表に示し、F、Cl、Br、S、についてのクロマトグラフを図5に示す。いずれの元素についても許容誤差±0.3%以内の結果が得られ、本発明が超微量試料に充分適用できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、従来から適用されて来た比較的大量の試料(100〜1,000mg)中の超微量成分分析の他に、特に1.0mg未満の超微量試料を正確にはかり取り、含有するハロゲンおよび硫黄の多元素を高速自動分析法により精度よく測定できるようになり、その産業上の利用可能性は大きいものと考える。
【符号の説明】
【0042】
1 オートサンプラ
2 燃焼管
3 白金ボート
4A 試料加熱炉
4B 燃焼炉
5A,5B 吸収びん
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2016年10月24日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多種ハロゲンおよび硫黄を含む複数検体の分析試料を石英燃焼管に順次供給するオートサンプラと、前記石英燃焼管を備え燃焼管中での酸素を含む清浄空気による分析試料の燃焼分解により無機態のハロゲンおよび硫黄の分解生成物を生成させる燃焼装置と、燃焼装置からの清浄空気に含まれる分解生成物を溶解し、溶解に伴って生じる多種ハロゲンおよび硫黄の夫々のイオンに解離する吸収液を備えた吸収装置と前記分解生成物を含む燃焼用の清浄空気を前記燃焼装置の下流側の排出口より吸収装置に吸引導入する吸引ポンプと、前記吸収装置の下流側に設けられ前記吸収装置からの夫々のイオンを分離展開してイオンクロマトグラムにより定量検知するイオンクロマトグラフ装置とを備え
前記燃焼装置の下流側の排出口に設けられ分析試料の全ての分解生成物を含む清浄空気をニードル管を通して下流側の吸収装置に吸引するニードル機構と、
前記分解生成物を含む清浄空気の下流側への流れと対向する向きに前記ニードル管の外側から別の流れの清浄空気を前記排出口に供給する吹出口を設けた高速自動分析装置において
前記燃焼装置の前記下流側の排出口に供給する清浄空気を前記燃焼管の上流側に供給する試料燃焼用の酸素を含む清浄空気の供給源から供給することを特徴とする前記高速自動分析装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
本発明の高速自動装置は多種ハロゲンおよび硫黄を含む複数検体の分析試料を石英燃焼管に順次供給するオートサンプラと、前記石英燃焼管を備え燃焼管中での酸素を含む清浄空気による分析試料の燃焼分解により無機態のハロゲンおよび硫黄の分解生成物を生成させる燃焼装置と、燃焼装置からの清浄空気に含まれる分解生成物を溶解し、溶解に伴って生じる多種ハロゲンおよび硫黄の夫々のイオンに解離する吸収液を備えた吸収装置と、前記分解生成物を含む燃焼用の清浄空気を前記燃焼装置の下流側の排出口より吸収装置に吸引導入する吸引ポンプと、前記吸収装置の下流側に設けられ前記吸収装置からの夫々のイオンを分離展開してイオンクロマトグラムにより定量検知するイオンクロマトグラフ装置とを備えており
前記燃焼装置の下流側の排出口に設けられ分析試料の全ての分解生成物を含む清浄空気をニードル管を通して下流側の吸収装置に吸引するニードル機構と、
前記分解生成物を含む清浄空気の下流側への流れと対向する向きに前記ニードル管の外側から別の流れの清浄空気を前記排出口に供給する吹出口とが設けられている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
前記燃焼装置の前記下流側の排出口に供給する清浄ガスは前記燃焼管の上流側に供給する試料の燃焼用の酸素を含む清浄空気の供給源から供給するようになされている。