【解決手段】金属製支持材の表面に複数個の砥粒が単層に固着された固着層を有するドレッサーであって、前記砥粒の粒径dが3μm≦d<100μmであり、隣り合う砥粒同士の中心間距離をLとした場合、少なくとも一組の砥粒同士における前記Lが、d≦L<2dなる条件を満足しており、さらに、前記固着層には砥粒が固着していない島状の領域が存在し、前記砥粒が固着していない島状領域の大きさをDとした場合、3d≦D≦30dであることを特徴とする研磨布用ドレッサー。
前記砥粒が、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素、炭化ホウ素、炭化ケイ素、又は酸化アルミニウムの少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の研磨布用ドレッサー。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハの表面を研磨する装置、あるいは、集積回路を製造する途中の配線や絶縁層の表面を平坦化する装置、磁気ハードディスク基板に使用されるAl板やガラス板の表面を平坦化する装置、等ではCMP研磨が用いられている。
【0003】
このCMP研磨とは、例えば、ウレタン製の研磨パッドが貼り付けられた回転基板に、微細な砥粒を含むスラリー液を供給しながら、被研磨面を押し当てて、被研磨面を平坦化する方法である。当然のことながら、この研磨パッドの研磨能力は使用時間と共に低下していくが、この低下を抑制するために、一定時間毎に研磨パッド表層部を研削して研磨パッドの平坦性を維持しながら、常に新しい面が出るようにドレッシングしている。このドレッシングに使用する部品をドレッサーと呼び、ドレッサーは、金属基板に砥粒を電着、あるいは、ろう付け等によって接合させて得られる。
【0004】
最近では、集積回路のライン/スペ−スの極狭化によるパターン露光装置の低焦点深度化、あるいは磁気ハードディスクの記録容量増加、などに伴って、被研磨面に発生するスクラッチ傷を無くすという従来からの要求に加えて、被研磨面のうねりを低減させるなど、平坦性への要求が益々高くなってきている。これらの要求に応えていくためには、ドレッシングによってパッド表面を均一に研削してパッドの平坦性を維持することが必要とされる。さらには、ドレッシングには、パッドの目詰まりや異物を除去できる、パッド研削力も必要とされる。
【0005】
特許文献1には、高いパッド研削力とパッド平坦性を同時に満たすドレッサーとして、金属製支持材の表面に複数個の砥粒が単層に固着されたドレッサーであって、前記金属製支持材の砥粒が固着される面の表面形状は凸状を成し、前記表面の端部と中心部の高さの差が3μm以上40μm以下であり、かつ、前記砥粒の粒径をd、隣り合う砥粒同士の中心間距離をLとした場合、少なくとも一組の隣り合う砥粒同士における前記Lが、d≦L<2dであるドレッサーが開示されている。
【0006】
特許文献2には、パッド研削の際の目詰まりを抑制し、寿命を長くしたドレッサーとして、砥粒が研削面に島状に分散して固着され、ひとつの島に砥粒が2〜10個集合して固着され、島部分の全面積が砥粒を固着した研削面の全面積の0.02〜0.5倍であるドレッサーが開示されている。
【0007】
特許文献3には、パッドの切り屑の排出が良好で目詰まりが少なく寿命を長くしたドレッサーとして、砥粒が作用面に島状に固着されて島状の砥粒層を形成し、一条の島の幅が1〜5mmであり、島状の砥粒層の全面積が作用面の全面積の2〜50%であることを特徴とするドレッサーが開示されている。
【0008】
特許文献4には、砥粒に負荷がかかりすぎず切れ味が良いドレッサーとして、基材に複数の凸状の部位を設け、凸状の上部に砥粒を金属相で固着し、更に、凸部の外側に基材外周にそってリング状の凸部を形成させ、その上部に砥粒を固着させたドレッサーが開示されている。
【0009】
特許文献5には、ろう材を所定の組成にすることによって、ろう材の溶融温度の変動バラツキが抑制され、その結果、ろう付け温度の低下が可能になり、金属製支持材の変形が低減されたドレッサーが開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0022】
Alやガラスの磁気ハードディスク基板をCMP研磨する場合には、パッドの平坦性が特に重要となる。このため、ドレッサーに用いる砥粒の粒径もできるだけ小さくすることが望まれているが、砥粒径を小さくしていくと、ドレッサーのパッド研削力が低下してしまう。そこで、本発明者は、特許文献1に記載したパッド平坦性とパッド研削力を同時に満足するドレッサーを発明した。特許文献1のドレッサーは、基材の表面形状を所定の高さの差を有する凸状にすることによって、スラリー液やパッド研削屑がドレッサー表面から順調に排出されるようになる効果が出ることを見出し、更に、所定の間隔で砥粒を配置することによって、優れたパッド研削レイトと優れたパッド平坦性の両立を実現したものである。
【0023】
本発明者は、CMP工程の生産性を向上させるために、パッド平坦性を優れた状態に維持しつつ、パッド研削レイトを更に向上させることを狙って、砥粒の配置パターンを変えた種々のドレッサーを用いて、パッド研削力の指標となるパッド研削レイト、およびパッド平坦性を詳細に評価した。
【0024】
具体的には、ウレタン等の樹脂製パッドを研削し、そのパッドの厚み減少量をパッド全面に亘って詳細に調べた。その結果、特許文献1のドレッサーの砥粒の配置パターンは砥粒が基材の所定領域内に所定の面密度で均一に配置されているが、本発明者は、固着層の中に、砥粒が固着していない島状の領域、つまり、所定の条件を満足する砥粒非配置領域を導入することによって、優れたパッド平坦性を維持した状態で、パッド研削レイトを格段に向上させることができることを新たに見出した。
【0025】
図1Aは本発明のドレッサーの例を模式的に示している。
図1Bは、
図1Aの点線で示す矩形領域を拡大した、固着層の一部における拡大図である。
図2は、
図1AのX−X´に沿ってドレッサーを切断した、ドレッサーの一部における断面図である。これらの図を参照して、金属製支持材1の上には固着層2が形成されている。この固着層2は、砥粒配置領域2Aと砥粒非配置領域2Bとに領域分けされる。砥粒配置領域2Aには砥粒4が密集して配置されている。砥粒非配置領域2Bは砥粒4が配置されない領域であって、砥粒配置領域2Aを避けるように複数設けられている。本実施形態では、固着層2をドーナツ状に形成している。
【0026】
本発明者等は、砥粒配置領域2Aに配置される砥粒4の中で砥粒非配置領域2Bとの境界に位置する砥粒4のパッド研削力が、砥粒非配置領域2Bの境界に位置していない砥粒4に比べて格段に高いことを見出すとともに、更に、砥粒非配置領域2Bの大きさと面積の合計を所定の値に制御することによって、パットの平坦性を優れた値に維持できることを見出し本発明を完成するに至った。この砥粒非配置領域2Bに接している砥粒4によって、パッドに付着したスラリーやパッド研削屑、等を効率良く取り除くことが可能となる。
【0027】
従来のドレッサーにおいても基材の外周部に位置する砥粒では、パットとの当たり方が強くなるため、パッド研削力が大きくなると言われている。しかしながら、本発明のように、固着層2の中に砥粒4が固着していない領域(つまり、砥粒非配置領域2B)を所定の大きさで形成させることによって、パッド研削レイトを向上させると言う知見は、容易に想到し得ないものである。なぜならば、パッド平坦性の劣化を抑制するために、砥粒固着部では砥粒をできるだけ均一に配置させることが従来技術の考え方であったからである。
【0028】
また、従来技術において砥粒を固着する固着層の無い領域を形成させる目的は、特許文献2〜4に記載されているように、パッドの削り屑の排出を良くして、目詰まりを抑制することである。そのために、砥粒が固着していない領域は、固着層の外側に形成されており、砥粒が固着していない領域と固着層が独立して存在していた。
【0029】
本発明者は、このように固着層を孤立させた場合に、孤立したそれぞれの固着層に対するパッドへの当たり方にバラツキが生じてしまい、パッドの平坦性の劣化を抑制することができないという課題を発見した。
【0030】
本発明では、砥粒4が固着している領域はほぼつながっているため、砥粒4とパッドとの当たり方は、砥粒非配置領域2Bに接している砥粒4を除いて均一にすることが可能となる。ここで、砥粒非配置領域2Bに接している砥粒4は、他の砥粒4に比較して、パッドへの当たり方が強くなるが、
図1Bに模式的に示すように、砥粒非配置領域2Bの大きさ、および、面積の合計が所定の値の場合には、パッドの平坦性を劣化させることなく、パッド研削レイトを向上させることができることを見出した。
【0031】
砥粒非配置領域2Bに接している砥粒4で削られた削り屑は、微細な屑となるために、たとえ砥粒非配置領域2Bが孤立していたとしても削り屑は問題なく排出できる。特許文献1では、基材の表面形状を所定の高さの差を有する凸状にすることによって、スラリー液やパッド研削屑がドレッサー表面から順調に排出できるようにしているが、本発明者は、砥粒非配置領域2Bの島状領域を所定の大きさと面積にすることによって、スラリー液やパッド研削屑の排出も良くなるという新たな効果がでることも見出した。この効果が得られる理由は、パッドの削り屑が砥粒非配置領域2Bの大きさに比べて小さいために、砥粒非配置領域2Bは島状に孤立してはいるものの、削り屑を孤立した砥粒非配置領域2Bを介してスムーズに排出できるようになるからである。
【0032】
このように、本発明のドレッサーは、砥粒配置領域2Aの中で砥粒非配置領域2Bに隣接する砥粒4でパッドを効率良く研削し、砥粒非配置領域2Bに隣接していない砥粒4でパッドの平坦性を向上させており、砥粒非配置領域2Bの効果と砥粒配置領域2Aの効果とを上手くバランスさせた結果、成し得た発明である。
【0033】
本発明の限定理由について説明する。
砥粒4の粒径をdとしたとき、3μm≦d<100μmである。3μm未満では、パッド研削レイトが低下し、100μm以上では、砥粒配置領域2Aの中で砥粒非配置領域2Bに隣接する砥粒4の研削力が大きくなり過ぎ、もはや砥粒非配置領域2Bに隣接していない砥粒配置領域2Aの砥粒4によってパッド平坦性を向上させることができなくなるからである。砥粒4の粒径dが、d≦40μmであれば、パッド研削レイトが大きくなり過ぎることが無く、パット平坦性がより安定化するため好ましい。
【0034】
砥粒配置領域2Aにおいて、隣り合う砥粒4同士の中心間距離をLとした場合、少なくとも一組の隣り合う砥粒4同士における中心間距離Lが、d≦L<2d、である場合に高いパッド平坦性が得られた。このd≦L<2dの範囲では、砥粒配置領域2Aに配置された砥粒4によるパット研削力も十分であるため、パッド表面に凹凸があっても十分に平坦化できる研削力があるためである。砥粒4の中心間距離Lが2d以上になると砥粒配置領域2Aのパッド研削力が低下し、パッドの平坦性が劣化してしまう。中心間距離Lが砥粒径dよりも小さい場合では、もはや単層の砥粒を配置できなくなる。前記の距離Lに配置された砥粒数の割合は、好ましくはドレッサー全体の砥粒数の50%以上であり、より好ましくは70%以上である。
【0035】
このように固着層2の中に、砥粒4が固着していない島状の砥粒非配置領域2Bを所定の大きさで配置し、この砥粒非配置領域2Bの大きさを円相当径として、直径として表すDとした場合、3d≦D≦30dでなければならない。Dが3d未満では、パッドの削り屑の排出能力が低下して、パッド研削レイトが低下し易くなる。また、Dが30d超では、砥粒4が固着している砥粒配置領域2Aの中で砥粒4が固着していない砥粒非配置領域2Bに隣接する砥粒4の数が減少するためにパッド研削レイトが低下し易くなる。
【0036】
砥粒4が固着していない各砥粒非配置領域2Bの面積の合計をSi、砥粒4が固着している砥粒配置領域2Aの面積をSとした場合、0.1≦Si/(Si+S)<0.5とすることが好ましい。Si/(Si+S)が0.1未満では、砥粒4が固着している砥粒配置領域2Aの中で砥粒4が固着していない砥粒非配置領域2Bに隣接する砥粒4の数が減少するためにパッド研削レイトが低下し易くなる。Si/(Si+S)が0.5以上では、砥粒4が固着している砥粒配置領域2Aの面積が少なくなるために、パットの平坦性を優れた状態に維持しにくくなる。
【0037】
ここで、砥粒非配置領域2Bの形状は、円形、楕円形、多角形、あるいは、不定形、などのいずれの形状であっても良い。砥粒非配置領域2Bは固着層2の中に均一に分布されることが好ましい。均一に分布させることによって、削り屑の排出が向上してパッド研削レイトが良くなり、また、砥粒配置領域2Aの分布も均一になるためパット平坦性も向上する。
【0038】
ドレッサーを周方向に任意に4等分した場合、各1/4領域に含まれる島状の砥粒非配置領域2Bの面積が、ドレッサー全体に含まれる砥粒非配置領域2Bの15%以上35%以下であれば好ましく、20%以上30%以下であればより好ましい。ただし、各1/4領域の合計は100%である。
【0039】
砥粒径dは任意の方法で測定することができる。例えば、砥粒径dは、固着される前の砥粒4、又は、固着した砥粒4を剥がして集めてから測定してもよい。この場合、砥粒径dは、篩分級法、レーザー回折法、遠心沈降法、走査型電子顕微鏡(SEM)の直接観察法等により得られる数平均粒径とすることができる。
【0040】
本発明の場合、レーザー回折法、または、走査型電子顕微鏡の直接観察法により得られる数平均粒径を、砥粒径dとするのが好ましい。固着した砥粒4の粒径dをそのまま測定する場合には、SEMによる直接観察法により得られる円相当径より得られる数平均粒径とすることができる。
【0041】
本発明の隣り合う砥粒4同士の中心間距離L、砥粒4が固着していない砥粒非配置領域2Bの大きさD、島状に形成された各砥粒非配置領域2Bの面積の合計Si、および、砥粒4が固着している砥粒配置領域2Aの面積Sは、砥粒4が固着されたドレッサーを走査型電子顕微鏡(SEM)、など用いて撮影した写真から、公知の画像解析手法を用いて求めることができる。島状に形成された砥粒非配置領域2Bの形状が円形以外の場合には、個々の砥粒非配置領域2Bの面積と同一の面積を有する円を求め、この円の直径をDとすることができる。
【0042】
砥粒4が固着している砥粒配置領域2Aにおいて、砥粒4の配置パターンは、ランダム的であっても良く、規則的であっても良い。規則的に配置する場合には、砥粒4を三角形、四角形、五角形、六角形等、種々のパターンに配置することが可能である。
【0043】
本発明の研磨布用ドレッサーを構成する砥粒4は、硬度が大きく、酸性あるいはアルカリ性のスラリーと反応しにくいものが好適であり、例えば、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素、炭化ホウ素、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化珪素、又は酸化セリウムからなる砥粒4を用いることができる。中でも特に好ましいのは、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素、炭化ホウ素、炭化ケイ素、又は酸化アルミニウムからなる砥粒4である。これらの砥粒は一種類を単独で用いても良く、複数の砥粒を併用しても良い。これらの砥粒表面に、チタン、ジルコニウム、クロムから選ばれた少なくとも1種を被覆したもの、また、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化クロムから選ばれた少なくとも1種を被覆したものを用いることも可能である。
【0044】
本発明の最も重要な効果を奏でる砥粒4が固着していない砥粒非配置領域2Bを形成させる方法を、以下の本発明ドレッサーの製造方法の中で説明する。
【0045】
本発明によるドレッサーは、以下のように製造される。先ず、金属製支持材1にろう材を仮付けする。金属製支持材1は、砥粒4同様に、酸性あるいはアルカリ性のスラリーとの反応が生じにくいステンレス鋼が好ましい。代表的なステンレスであるSUS304、SUS316、SUS430、等が好適である。炭素鋼等の一般構造用鋼の表面にNi等のめっきをしたものも使用可能である。
【0046】
また、金属製支持材1の形状は、特に限定されるものではなく、八角形、二十角形等の多角形の形状でも良いが、金属製支持材1自体が回転しながらパッドを研削するので、均一研削性を担保するためには円盤状であることが好ましい。
【0047】
ろう材には、BNi−2やBNi−5等のJIS規格材に代表されるNi−Cr−Fe−Si−B系、Ni−Si−B系、Ni−Cr−Si−B系が適用できる。ろう材が箔の場合には、スポット溶接で金属製支持材1へ仮付け可能である。ろう材5が粉の場合には、例えば、セルロース系のバインダー等を金属製支持材1に塗布した後に粉末のろう材を散布すれば良い。
【0048】
ここで、砥粒4が固着していない砥粒非配置領域2Bは、以下の方法で形成することができる。砥粒4の配置パターンと同じ配置パターンで砥粒4が通り抜ける穴を開けた篩を作製し、この篩を用いて、砥粒4を単層に配置する。その際には、ろう材の上にバインダー等を塗布し、砥粒4がずれないように仮付けする。この後、従来の特許文献1と同様に、10
−3Pa程度に真空引きした後、ろう材が溶融する温度まで昇温することによって行うことができる。この場合、ろう材を溶融させる温度は、ろう材の融点以上であって、できるだけ低温であることが好ましく、高くても液相線温度+20℃程度以内が好ましい。バインダー、糊等は、昇温の途中で殆どが気化してしまう。
【0049】
砥粒非配置領域2Bを形成する方法は、上述の方法に限定されるものではなく、別の方法であってもよい。例えば、ろう材の溶融状態を制御することによって砥粒非配置領域2Bを形成してもよい。具体的には、例えば、格子状の交点に穴を開けた篩を用いて砥粒4を均一にろう材の上に仮付けする。その後のろう付け熱処理において、10
−3Pa程度に真空引きした後、ろう材を溶融させる温度を従来の温度よりも更に10℃〜20℃高めに設定する。
【0050】
このように溶融温度を高めに設定することによって、溶融しているろう材の粘性が低下するのと同時に、砥粒4がろう材の表面張力によって再配置し、砥粒4が固着していない砥粒非配置領域2Bが形成される。この現象は、従来温度より10〜20℃高めの温度で溶融させた場合のみ生じるものであり、この温度を高める方法では、温度のみならず、保持時間によっても、砥粒非配置領域2Bの大きさが制御可能となる。
【0051】
この溶融状態を制御する方法の場合、砥粒非配置領域2Bの面積割合であるSi/(Si+S)は、最初に配置する砥粒4の散布密度によって制御することができる。最初の砥粒4の散布密度を高くすれば、溶融状態で砥粒が再配置し難くなるため、Si/(Si+S)は小さくなる。最初の砥粒4の散布密度を小さくすれば、溶融状態での砥粒4の再配置が容易に起こるため、Si/(Si+S)を大きくすることができる。ろう付け温度を高くする場合には、金属製支持材1の熱変形が大きくなることが懸念されるが、従来よりも10〜20℃高めの温度であれば、問題のないレベルに熱変形を抑制できる。
【0052】
(実施例)
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0053】
(実施例1)
実施例No.2〜7、比較例No.1、8〜16を参照しながら、実施例1について説明する。
平均粒径dが2μm、4μm、10μm、15μm、35μm、70μm、95μm、110μmのダイヤモンド製の砥粒4を用いて、
図3Aに示すドレッサーを製造した。
図3Aは、ドレッサーの概略平面図である。
図3Bは、
図3Aの点線で示す矩形領域を拡大した拡大図である。これらの図を参照して、砥粒4が固着していない砥粒非配置領域2Bを配置したドレッサーを作製し、パッド研削レイト、パッド平坦性を評価した。使用した金属製支持材1は、直径100mm、厚み4mmの円盤状SUS304ステンレスであり、固着層2の表面はフラット状に形成した。
【0054】
図3Aの砥粒配置領域2Aに相当する部位にそれぞれのダイヤモンド砥粒4を、隣接する砥粒同士の中心間距離LがL=1.5dになるように、砥粒4を正方形配置した。具体的には、片側の面に同心円状に描いた半径32mmの円と半径48mmの円の間のド−ナツ状領域にダイヤモンド砥粒4を配置した。その際、ド−ナツ状領域を金属製支持材1の中心から見て等角度で4つのアーク形状に分割し、それぞれの分割領域を固着層2とした。そして、隣接する固着層2の間に2mm幅で砥粒4が無い部位を設けた。
【0055】
ダイヤモンド砥粒の配置パターンは正方形配置とした。本ドレッサーにおいては、前記正方形の一辺の長さがLに相当する。固着層2の中に円形の砥粒非配置領域2Bを配置した。砥粒非配置領域2Bの1つの島の大きさはD=10dとし、隣り合う砥粒非配置領域2Bの中心間距離が2Dになるように、固着層2の中に正方形配置した。この正方形の一辺の長さが2Dに相当する。このように砥粒配置領域2A、および、砥粒非配置領域2Bを配置することで、Si/(Si+S)は0.20に設定した。
【0056】
実際のダイヤモンド砥粒4は、以下のようにして配置した。先ず、箔状のろう材を
図3Aにハッチングで示す形状となるようにア−ク状に切り出し、ステンレス製支持材1に対してスポット溶接により仮付けした。
【0057】
次に、ダイヤモンド製の砥粒4が通り抜ける程度の穴を中心間距離L=1.5dとなるように正方形配置した篩を作製し、その篩をろう材の上に置いて篩を通して砥粒4を配置した。その際に、砥粒非配置領域2Bに相当する部位には穴を開けないようにした。使用したろう材は組成がNi−0.12%Fe−7.4%Cr−4.0%Si−3.0%B−0.5%P(mass%)の箔ろうで、ろう材の厚みはほぼダイヤモンド製の砥粒4の平均粒径と同じ値とした。ろう材の上には、ダイヤモンド砥粒4がずれないように有機系接着剤を塗布した。その後、980℃で真空中15分間のろう付け処理を施した。
【0058】
比較材として、ダイヤモンド砥粒4が固着していない島状の砥粒非配置領域2Bが無いドレッサーも作製した。この比較材は、砥粒4が通り抜ける程度の穴がL=1.5dの間隔で正方形に均一配置した篩を使用することで形成した。
【0059】
作製したドレッサーを用いて、実際にパッドを研削し、研削後のパッド厚み減少量からパッドの研削レイト、及び、パッド平坦性を求めた。パッドは発砲ポリウレタン製であり、パッドの直径は250mmとした。このパッドを研磨盤の上に貼り付けた。ドレッサーを、回転機構とパッドの半径方向に揺動する機構を備えた装置に固定し、加圧機構によって0.8kgの加重を加えて、パッドに押し付けた。ドレッサーの中心をパッド半径方向にパッド中心から30mm〜90mmの範囲で半径方向に揺動させた。パッド回転数は90rpm、ドレッサー回転数は80rpm、揺動は10往復/分とした。パッド回転方向とドレッサーの回転方向は同じとした。研削全面が水の膜で覆われる程度に水を供給した。
【0060】
研削開始後5分が経過した時点で一旦、研削を中断して、互いに直交する2本の直径上に沿ってパッド厚みを測長顕微鏡で測定した。1つの直径を等間隔で10等分し、等分した部位のほぼ真中付近を合計で20点測定し、平均値を求めた。再び研削を続けて、15時間後に同様な測定を行った。パッド厚みの平均値から、研削開始後5分から15時間の研削時間における平均のパッド研削レイトを求めた。平坦性は、15時間後に測定した20点の値の中から最大値及び最小値を抽出し、最大値から最小値を引いた値として求めた。結果を表1に示した。
【表1】
表1の実施例No.2と比較例No.10、実施例No.3と比較例No.11、実施例No.4と比較例No.12、実施例No.5と比較例No.13、実施例No.6と比較例No.14、実施例No.7と比較例No.15の比較から明らかなように、固着層2の中に砥粒4が固着していない砥粒非配置領域2Bを形成させた本発明のドレッサーは、優れた平坦性を維持した状態で、格段に大きな研削レイトが得られた。
【0061】
特に、砥粒径dが3μm≦d≦40μmでは、2.7μm/分以上の大きなパッド研削レイトと0.30μm以下の優れたパッド平坦性が同時に得られた。このような大きなパッド研削レイトと優れたパッド平坦性が得られるドレッサーは従来にはなかった。
【0062】
比較例No.1と比較例No.9の比較から、固着層2の中に砥粒非配置領域2Bを形成させることによって、パッド研削レイトは向上しているが、砥粒径dが3μm未満であるために2.0μm/分のパッド研削レイトを越えるレベルには達しなかった。また、比較例No.8と比較例No.16の比較から、固着層2の中に砥粒非配置領域2Bを形成させることによって、パッド研削レイトは向上しているが、比較例No.8では、砥粒径dが100μm超であるために、砥粒非配置領域2Bに隣接している砥粒4の研削力が強くなり過ぎ、その結果、もはや砥粒配置領域2Aでパッドを平坦化させる作用が十分に機能しなくなり、パッド平坦性が劣化した。
【0063】
(実施例2)
実施例No.21、22、24、25、27、28、比較例No.23、26、29を参照しながら、実施例2について説明する。平均粒径dが10μm、35μm、70μm、のダイヤモンド製の砥粒4を用いて、
図3に示したような砥粒4が固着していない砥粒非配置領域2Bを配置したドレッサーを作製し、パッド研削レイト、パッド平坦性を評価した。使用した金属製支持材1は、直径100mm、厚み4mmの円盤状SUS304ステンレスであり、固着層2の表面はフラット状に形成した。
図3の砥粒配置領域2Aに相当する部位にそれぞれのダイヤモンド製の砥粒4を、隣り合う砥粒中心間距離LがL=1.2d、1.7d、および、2.2dになるように、砥粒4を正方形配置した。
【0064】
具体的には、片側の面に同心円状に描いた半径32mmの円と半径48mmの円の間のド−ナツ状領域にダイヤモンド砥粒4を配置した。その際、ド−ナツ状領域を金属製支持材1の中心から見て等角度で4つのアーク形状に分割し、それぞれの分割領域を固着層2とした。そして、隣接する固着層2の間に2mm幅で砥粒4が無い部位を設けた。ダイヤモンド製の砥粒4の配置パターンは正方形配置とした。本ドレッサーにおいては、前記正方形の一辺の長さがLに相当する。固着層2の中に円形の砥粒非配置領域2Bを配置した。砥粒非配置領域2Bの大きさはD=10dとし、隣り合う砥粒非配置領域2Bの中心間距離が2Dになるように、固着層2の中に正方形配置した。この正方形の一辺の長さが2Dに相当する。このように砥粒配置領域2A、および、砥粒非配置領域2Bを配置することで、Si/(Si+S)を0.20の値に設定した。
【0065】
以下、実施例No.1と同様にドレッサーを作製し、研削レイトと平坦性の評価を行った。結果を表2に示した。
【表2】
【0066】
表2の実施例No.21、22、24、25、27、および、28からわかるように、隣り合う砥粒4の中心間距離Lをd≦L<2dの範囲に制限することによって、2.9μm/分以上の大きなパッド研削レイトと0.43μm以下の優れたパッド平坦性が同時に得られた。Lが2d以上である比較例No.23、26、および、29では、砥粒非配置領域2Bに隣接する砥粒の研削力が高いため研削レイトは十分にあるものの、砥粒配置領域2A自体のパッド研削力が低下するために、パッドの凹凸を取り除いてパッド平坦性を向上させる能力が低下した。
【0067】
(実施例3)
実施例No.31〜37、比較例No.38を参照しながら、実施例3について説明する。直径100mm、厚み4mmの円盤状SUS304ステンレス部材を金属製支持材1に用いた。この金属製支持材1は、固着層2の表面形状をフラットに機械加工したものであり、
図3Aに示すように、この片側の面に同心円状に描いた半径32mmの円と半径48mmの円の間のド−ナツ状領域に平均粒径が30μmのダイヤモンド砥粒4を配置した。
【0068】
その際、ド−ナツ状領域を金属製支持材1の中心から見て等角度で4つのアーク形状に分割し、それぞれの分割領域を固着層2とした。そして、隣接する固着層2の間に2mm幅で砥粒4が無い部位を設けた。砥粒配置領域2Aに配置されるダイヤモンド製の砥粒4の配置パターンは次のようにした。砥粒配置領域2Aに格子状にメッシュを描き、その交点にダイヤモンド製の砥粒4を配置した。格子間隔が砥粒中心間距離Lに相当する。その際、格子間隔を45μm(L=1.5d)と90μm(L=3.0d)の二つとし、両者を所定の割合でランダムに配置させた。
【0069】
固着層2の中に円形に形成された複数の砥粒非配置領域2Bを配置した。個々の砥粒非配置領域2Bの大きさはD=10dとし、隣り合う砥粒非配置領域2Bの中心間距離が2Dになるように、固着層2の中に正方形配置した。この正方形の一辺の長さが2Dに相当する。このように砥粒配置領域2A、および、砥粒非配置領域2Bの配置することで、Si/(Si+S)を0.20の値に設定した。
【0070】
実際のダイヤモンド製の砥粒4は、以下のようにして配置した。先ず、実施例No.1と同様に、箔状のろう材を
図3Aに示すようにア−ク状に切り出し、ステンレス製支持材1に対してスポット溶接により仮付けした。次に、ダイヤモンド砥粒4が通り抜ける程度の穴をL=1.5d、および、L=3.0dとなるように正方形配置した篩を作製した。その際に、砥粒非配置領域2Bに相当する部位には穴を開けないようにした。篩に穴を開ける場合の穴の位置決めは、間隔が45μmである格子と90μmである格子をランダムに配置させた格子を描き、それらの各格子点に穴を開けることで行った。Lが45μmである格子辺の数をN45、90μmである数をN90とした場合、{N45/(N45+N90)}×100(%)を表3に示すように設計した。
【0071】
使用したろう材、ダイヤモンド塗布、および、ろう付け処理は実施例No.1と同様にした。パッド研削レイト、パッド平坦性の評価も実施例No.1と同様にした。結果を表3に示した。
【表3】
【0072】
表3の実施例No.31〜37の結果から、少なくとも隣り合う一組の砥粒4同士の中心間距離Lが本発明範囲であるd≦L<2dを満たせば0.45μm以下の優れたパッド平坦性が得られることがわかった。さらに、d≦L<2dを満たす砥粒数の割合がドレッサー全体の砥粒数の55%以上であれば、0.36μm以下の優れた平坦性が得られ、その割合が75%以上であれば、0.28μm以下の更に優れた平坦性が得られた。
【0073】
なお、本発明においては、非常に多くの砥粒4を用いているため、{N45/(N45+N90)}×100の値は、「全砥粒数」における「45μmの間隔で配置された砥粒数」の割合として良い。
【0074】
すなわち、前記砥粒が、一辺の長さがL、B
1、B
2、・・・B
nの格子であって、それぞれがランダムに配置された格子の交点に配置されている場合においては(nは正の整数)、長さLの格子辺の数をNL、長さB
1、B
2、B
3・・・B
nの格子辺の数をNB
1、NB
2、・・・NB
nとしたときに、NL/(NL+NB
1+NB
2+・・・+NB
n)×100で算出されるXを、全砥粒数における、Lμmの間隔で配置された砥粒数の割合として良い。
【0075】
(実施例4)
実施例No.41、43〜48、50、52〜57、比較例No.42、49、51、58を参照しながら、実施例4について説明する。
平均粒径15μm、および、70μmのダイヤモンド製の砥粒4を用いて、
図3に示したような砥粒が固着していない砥粒非配置領域2Bを配置したドレッサーを作製し、パッド研削レイト、パッド平坦性を評価した。使用した金属製支持材1は、直径100mm、厚み4mmの円盤状SUS304ステンレスであり、固着層2の表面はフラット状に形成した。
【0076】
図3の砥粒配置領域2Aに相当する部位にそれぞれのダイヤモンド製の砥粒4を、隣り合う砥粒中心間距離LがL=1.5dになるように、正方形に配置した。具体的には、片側の面に同心円状に描いた半径32mmの円と半径48mmの円の間のド−ナツ状領域にダイヤモンド製の砥粒4を配置した。その際、ド−ナツ状領域を金属製支持材1の中心から見て等角度で4つのアーク形状に分割し、それぞれの分割領域を固着層2とした。そして、隣接する固着層2の間に2mm幅で砥粒4が無い部位を設けた。ダイヤモンド製の砥粒4の配置パターンは正方形配置とした。本ドレッサーにおいては、前記正方形の一辺の長さがLに相当する。固着層2の中に円形に形成された複数の砥粒非配置領域2Bを配置した。砥粒非配置領域2Bの大きさD、および、砥粒非配置領域2Bの中心間距離は表4に示す値に設定した。
【0077】
以下、実施例No.1と同様にドレッサーを作製し、研削レイトと平坦性の評価を行った。結果を表4に示した。
【表4】
【0078】
表4の実施例No.41、43〜48、50、52〜57の結果から、固着層2の中に砥粒4が固着していない砥粒非配置領域2Bを形成させた本発明のドレッサーは、2.8μm/分以上の優れたパッド研削レイトと0.45μm以下の優れたパッド平坦性を同時に得ることができた。更に、実施例No.43〜47、実施例No.52〜56に示す通り、3d≦D≦30d、かつ、0.1≦Si/(Si+S)<0.5である場合には、2.9μm/分以上の更に優れたパッド研削レイトと、0.43μm以下の更に優れたパッド平坦性を同時に得ることができた。比較例No.42、49、51、58では、砥粒非配置領域2Bの大きさDが、2.2d以下、または、36d以上であるために、研削レイトが低下した。
【0079】
(実施例5)
平均粒径dが10μmのダイヤモンド砥粒4を用いて、砥粒非配置領域2Bを配置したドレッサーを作製し、パッド研削レイト、パッド平坦性を評価した。使用した金属製支持材1は、直径100mm、厚み4mmの円盤状SUS304ステンレスであり、固着層2の表面はフラット状に形成した。
【0080】
具体的には、片側の面に同心円状に描いた半径32mmの円と半径48mmの円の間のド−ナツ状領域にダイヤモンド砥粒4を配置した。その際、ド−ナツ状領域を支持材1の中心から見て等角度で4つのアーク形状に分割し、それぞれの分割領域を固着層2とした。そして、隣接する固着層2の間に2mm幅で砥粒4が無い部位を設けた。
【0081】
実際のダイヤモンド製の砥粒4は、以下のようにして配置した。先ず、箔状のろう材5を
図3に示すようにア−ク状に切り出し、ステンレス製支持材1に対してスポット溶接により仮付けした。次に、ダイヤモンド製の砥粒4が通り抜ける程度の穴をL=1.8dとなるように正方形配置した篩を作製し、その篩をろう材の上に置いて篩を通してダイヤモンド製の砥粒4を配置した。使用したろう材は組成がNi−0.12%Fe−7.4%Cr−4.0%Si−3.0%B−0.5%P(mass%)の箔ろうで、ろう材の厚みは、20μmであった。
【0082】
ろう材の上には、ダイヤモンド製の砥粒4がずれないように有機系接着剤を塗布した。その後、実施例No.1〜4のろう付け温度よりも20℃高い1000℃で、真空雰囲気下、30分間ろう付け処理を施した。ろう付け後のダイヤモンド砥粒4の配置をSEMによって観察した結果、ダイヤモンド砥粒4の再配置が起こって、ダイヤモンド砥粒4が固着していない領域、つまり、砥粒非配置領域2Bが形成された。この砥粒非配置領域2Bは、
図3Bの砥粒非配置領域2Bのような円形ではなく、不定形状であったが、島状に孤立していた。
【0083】
任意の20箇所を200倍の倍率で撮影し、砥粒4が固着されてない個々の砥粒非配置領域2Bの円相当径D、および、砥粒非配置領域2Bの中心間距離を測定した。その結果、Dの最小値は40μm、最大値は160μmであり、平均値はD(平均)=60μmであった。隣り合う砥粒非配置領域2Bの中心間距離の最小値は70μmであり、最大値は140μmであり、中心間距離の平均値は90μmであった。
【0084】
ただし、一つの砥粒非配置領域2Bから一番近い砥粒非配置領域2Bまでの距離を中心間距離として測定した。また、ダイヤモンド砥粒4の再配置によって、砥粒4同士の中心間距離はL=1.3dに狭くなっていた。以上の観察結果から、砥粒4が固着されてない個々の砥粒非配置領域2Bの平均の円相当径DはD=6d、面積率Si/(Si+S)=0.35となった。
【0085】
以下、実施例No.1と同様にドレッサーを作製し、研削レイトと平坦性の評価を行った。結果を表5に示す。
【表5】
【0086】
表5の実施例No.61からわかるように、固着層2の中に砥粒4が固着していない砥粒非配置領域2Bを形成させた本発明のドレッサーは、優れたパッド研削レイトと優れたパッド平坦性が同時に得られた。
【0087】
(実施例6)
実施例No.71〜76を参照しながら、実施例6について説明する。
実施例No.5のドレッサーにおいて、ダイヤモンド製の砥粒4の代わりに、平均粒径が35μmの立方晶窒化ホウ素、炭化ホウ素、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、前記炭ホウ素と炭化ケイ素を質量で50%ずつ混合したもの、および、酸化珪素を用いた砥粒4を使用した。
【0088】
砥粒の配置方法、ろう付け方法、研削レイト、および、パッド平坦性の評価方法は実施例No.5と同様にした。結果を表6に示した。
【表6】
【0089】
表6の結果から、立方晶窒化ホウ素、炭化ホウ素、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、又は酸化珪素の少なくとも1種の砥粒4を用いることによって、優れたパッド研削レイトと優れたパッド平坦性が得られた。特に優れた性能を示したのは、立方晶窒化ホウ素、炭化ホウ素、炭化ケイ素、又は酸化アルミニウム少なくとも1種の砥粒4を用いた場合であった。また、2種類の砥粒4を混合して使用することによって、パッドの平坦性を維持した状態で、研削能力が向上することもわかった。
【0090】
(比較例)
特許文献2相当の条件を比較例No.81〜84に示す。平均粒径が15μm、および、70μmのダイヤモンド製の砥粒4を用いて、
図3に示した砥粒4が固着している砥粒配置領域2Aを砥粒4が付着していない砥粒非配置領域2Bとし、砥粒4が付着していない砥粒非配置領域2Bを砥粒が付着している砥粒配置領域2Aとして、砥粒配置領域2Aと砥粒非配置領域2Bを反対にしたドレッサーを作製して、パッド研削レイト、パッド平坦性を評価した。
【0091】
具体的には、実施例No.43、45、52、および、54のドレッサーにおいて、砥粒配置領域2Aに砥粒4を固着せず、砥粒非配置領域2Bに砥粒4を固着したものである。ろう材は組成がNi−0.12%Fe−7.4%Cr−4.0%Si−3.0%B−0.5%P(mass%)で、大きさが100μmアンダ−の粉ろうを用いた。使用した金属製支持材1は、直径100mm、厚み4mmの円盤状SUS304ステンレスであり、固着層2の表面はフラット状に形成した。
【0092】
粉ろうを
図3の砥粒非配置領域2Bのみに塗布するために、100μm厚の樹脂を用いて、
図3の砥粒非配置領域2Bに相当する部位に穴を開けた。この穴を開けた樹脂をSUS304支持材の上に重ねて、樹脂の開口部を通して支持材に有機系のバインダーを薄く塗布した。次に、ダイヤモンド砥粒を、隣合う砥粒中心間距離LがL=1.5dになるように、篩を用いて同様に砥粒4を正方形配置した。本ドレッサーにおいては、前記正方形の一辺の長さがLに相当する。
【0093】
砥粒4を配置した島状砥粒非配置領域2Bの大きさをD’、および、それらの島状砥粒非配置領域2Bの中心間距離は表7に示した値とした。以下、実施例No.1と同様に研削レイトと平坦性の評価を行った。ここで、実施例No.43、45、52、および、54で示したSi/(Si+S)は、島状に砥粒が固着している面積率となる。結果を表7に示す。
【表7】
【0094】
表7の比較例No.81〜84の結果から、砥粒4が固着している領域が島状孤立している場合には、孤立したそれぞれの砥粒固着部のパッドへの当たり方にバラツキが生じてしまいパッドの平坦性著しく劣化した。