【解決手段】アクチュエータ(2)に装着されるハンド(35)を収納するハンドストッカ(10)であって、ハンドを吊り掛けた状態で収納し、ハンドと対面する盤面(17a)にハンドを吊り掛ける吊り掛け機構(70)が設けられた収納ボード(17)を備え、吊り掛け機構は、盤面から水平方向に延びて、ハンドに設けられた吊り掛け部(40)と係合する掛け部材(22)と、掛け部材に吊り掛けられたハンドが盤面から離れる方向へ移動するのを抑止する押さえ部材(23)と、掛け部材に吊り掛けられたハンドが盤面に近づく方向へ移動するのを規制する支持部材(24)と、を含み、ハンドは押さえ部材と支持部材との間に挟まれて収納される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施形態)
図に従って本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1を参照して、本発明の第1実施形態のハンドストッカ10は、例えば、加工対象部品(以下、「ワーク8」という)を搬送する装置として機能するアクチュエータ2に交換可能に取り付けられるハンド35を収納する装置として用いられる。ハンドストッカ10は、工作機械、洗浄装置などと組み合わせて利用される。洗浄装置にハンドストッカ10を組み合わせた場合、ハンドストッカ10に収納されているハンド35をアクチュエータ2に装着し、アクチュエータ2は、ハンド35によってワーク8を把持して洗浄装置の洗浄領域に搬入する。アクチュエータ2がワーク8を把持した状態で洗浄ノズルからワーク8に洗浄液を噴出することにより、ワーク8に付着する異物を除去する。このようなロボットハンド式洗浄装置としては、出願人が製造する型式JCC503Roboがある。
【0009】
アクチュエータ2は、直交軸形のロボットの駆動部である。アクチュエータ2は、図示しない数値制御装置によってXYZ方向に移動するクイル2aを有している。クイル2aの先端部には、回転軸3(B軸)回りに回転するB軸サドル2bが設けられる。B軸サドル2bには、回転軸4(C軸)回りに回転するC軸サドル2cが設けられる。C軸サドル2cの先端に、ハンド35を装着するハンドチェンジャ5が設けられる。なお、軸名称は例示であり、これを変更できることは言うまでもない。
【0010】
ハンドチェンジャ5は、装着方向6に沿って動き、後述する結合部42と結合する。ハンドチェンジャ5は、結合部42と正確に位置決めして結合し、結合部42へ圧縮空気などの制御流体、電気信号などをハンド35に送る。ハンドチェンジャ5、結合部42は、例えばコスメック株式会社製ロボットハンドチェンジャーSWR型のように公知のものが利用できる。
【0011】
ハンドチェンジャ5は、結合部42を切り離す際に、結合部42を突き放す。ハンドチェンジャ5が結合部42を押し出す距離を払出し距離(押出し距離)という。ハンドチェンジャ5が結合部42を連結するときは、アクチュエータ2は、ハンドチェンジャ5と結合部42とが払出し距離と同じか、払出し距離より僅かに大きい距離だけ離間した位置に位置決めする。ハンドチェンジャ5は、結合部42を連結するときに、結合部42を引き込み、定位置に位置決めする。なお、アクチュエータ2は、上述の直交軸形ロボットに代えて、垂直多関節型ロボット、水平多関節型ロボット、パラレルリンク式ロボットなどあらゆる種類のロボットのアクチュエータを利用できる。
【0012】
ハンドストッカ10は、ハンド35を吊り掛けるため吊り掛け機構70が盤面17aに設けられた長方形状の収納ボード17と、収納ボード17をスライド自在に支持する長方形状の架台15と、収納ボード17、架台15およびアクチュエータ2の可動領域1を囲う安全柵11と、を主に備えて構成される。
【0013】
安全柵11は、人体とアクチュエータ2とを隔離する。望ましくは、安全柵11は、内部を視認できるように金網や透明プラスチックの視認窓を設けられる。安全柵11の内部には、ローラーコンベア7が設けられる。ローラーコンベア7は、ワーク8を可動領域1内に送る。アクチュエータ2は、ローラーコンベア7によって送られたワーク8を、ハンドチェンジャ5で結合したハンド35によって操作する。
【0014】
図示しないが、ワーク8の品種に適合する各種ハンド35を収納するために、可動領域1内において収納ボード17は複数設けられている。そして、例えば、複数の収納ボード17のうち一部は、架台15にスライド自在に支持され、残りの収納ボード17は架台15に固定されている。勿論、全ての収納ボード17がスライド式であっても良い。収納ボード17は、ワーク8の品種に適合する複数の種類のハンド35を1台づつ吊り掛けて収納する。アクチュエータ2は、複数の収納ボード17の中から、把持するワーク8の品種に適合するハンド35を選んで装着する。アクチュエータ2がハンド35を交換するときには、空きスペースとなっている収納ボード17に再びハンド35を吊り掛けて、アクチュエータ2とハンド35との結合状態を解除する。
【0015】
図2を参照して、固定された架台15上に長手方向(Y軸の正方向)に延びるスライド部材16が設けられる。スライド部材16の移動部またはスライダに収納ボード17が設けられる。これにより、収納ボード17は、スライド部材16に案内されて架台15上をスライド自在である。安全柵11には引出開口(作業口)12が設けられており、収納ボード17にハンド35が吊り掛けられた状態で、収納ボード17を引出開口12から安全柵11の外側に引き出すことができる。なお、スライド部材16は、テレスコピック型のスライドレール、直線ガイド、ボールスプライン等を利用できる。
【0016】
図1と
図2を併せて参照して、収納ボード17の引き出し方向の端部に、支柱14によって支えられている安全扉13が設けられている。安全扉13には、窓13aが設けられている。収納ボード17が安全柵11内に収納されたときに、安全扉13は、引出開口12を覆う。安全柵11の引出開口12に隣接するように、安全スイッチ20が設けられている。安全スイッチのプラグ20aは、安全扉13に備えられている。収納ボード17が完全に収納されたときに、安全扉13は引出開口12を覆い、人体の可動領域1への侵入を防ぐ。
【0017】
このときに、プラグ20aは、安全スイッチ20に挿入され、安全スイッチ20が安全扉13の閉じ状態を検知する。収納ボード17と共に収納部10aが引き出されたときには、安全スイッチ20が安全扉13の空き状態を検知する。安全スイッチ20が安全扉13の空き状態を検出しているときに、アクチュエータ2の動力が停止する。なお、安全スイッチ20は、キーロック式の安全スイッチを利用できる。この場合には、例えば数値制御装置がロックを解除したときのみ収納ボード17が引き出し可能となり、ロック状態にないときは、アクチュエータ2への動力供給が停止される。
【0018】
また、架台15と収納ボード17との間に、収納ボード17の引き出し方向(Y軸の正方向)に沿ってケーブル保護管31が敷設されている。ケーブル保護管31の固定端は架台15に、ケーブル保護管31の移動端は収納ボード17にそれぞれ固定される。ケーブル保護管31は、電気ケーブル、圧縮空気配管であるチューブを収納する。
【0019】
図3を参照して、収納ボード17の対角に位置する一対の角部には、2つの挿通孔21(21a,21b)が設けられている。架台15にも挿通口(不図示)が設けられている。ピン18は、収納ボード17が安全柵11内に収納されて架台15に装着された状態(
図3の状態)にあるときに、挿通孔21aに挿入されて収納ボード17と架台15とが位置決めされる。架台15には、センサ19aが設けられており、ピン18の装着を検知する。ピン18は、収納ボード17を引き出すときに抜き取られる。センサ19(19a,19b)は、近接センサ、リミットスイッチ、電磁スイッチ、接触センサ等が利用できる。
【0020】
一方、
図2に示すように収納ボード17が引出開口12から引き出された状態にあるとき、ピン18は挿通孔21bに挿入され、ピン18の挿入をセンサ19bが検知する。ここで、ピン18の挿入、脱着は、作業者によって行われても良いし、シリンダ等によって自動で行われても良い。また、収納ボード17を引き出した状態(
図2の状態)におけるピン18の挿通孔21bへの挿入は省略できる。また、収納ボード17を収納した状態(
図3の状態)におけるピン18の挿通孔21aへの挿入は、その他の位置決め機構によって代替できる。
【0021】
次に、吊り掛け機構70について説明する。収納ボード17は、その一面側(
図3の手前方向)にハンド35と対面する盤面17aを有し、その盤面17aにハンド35を吊り掛けるための吊り掛け機構70が設けられる。吊り掛け機構70は、盤面17aから水平方向に延びて、ハンド35に設けられた吊り掛け部40(後述)と係合する掛け部材22と、ハンド35が盤面17aから離れる方向へ移動するのを抑止する押さえ部材23と、ハンド35が盤面17aに近づく方向へ移動するのを規制する支持部材24と、を含む。また、収納ボード17は、付勢機構25、位置決め機構26、複数のセンサ30を有している。
【0022】
掛け部材22は、収納ボード17の略中央部に水平方向に並べて2つ設けられる。これは、収納ボード17を安定して吊り掛けるためであるが、掛け部材22の数は単数でも複数でも良く、適宜決定することができる。また、掛け部材22の取付位置も任意に決定できる。掛け部材22は、同軸線上に設けられた小径部である掛け台22bと、掛け台22bを支える支柱部22aとを有する段差付き丸棒状に形成される。掛け台22bがハンド35の吊り掛け部40(
図4参照)と係合して、ハンド35が掛け部材22に吊り掛けられる。なお、支柱部22aは、六角柱状または角柱状でも良く、掛け台22bと同径の丸棒でもよい。また、支柱部22aは後述の支持部材24と兼ねても良い。
【0023】
掛け部材22の先端部には、押さえ部材23が一体で設けられている。押さえ部材23は、掛け部材22と同軸上に設けられた円筒状の丸棒である。押さえ部材23の収納ボード17側の面が押さえ面23aである。押さえ面23aは、ハンド35の接触面44を押さえる。こうして、押さえ部材23は、掛け部材22に吊り掛けられたハンド35が倒れ込まないように保持している。なお、押さえ部材23は、その押さえ面23aがハンド35の接触面44と当接するように設けても良い。また、ハンド35の接触面44と押さえ面23aとが僅かの隙間を空けるように、ハンド35が掛け部材22に吊り掛けられても良い。
【0024】
なお、押さえ部材23は、掛け部材22の先端部に一体で設ける代わりに、別の支持部材によって収納ボード17に固定されても良い。例えばY軸方向から見てL字状の部材として、ハンド35に係合しても良い(詳細は後述する)。また、押さえ部材23は、内部に弾性部材を備え、弾性部材によって押さえ面23aをハンド35の接触面44に付勢するようにしても良い。
【0025】
支持部材24は、丸棒状をなし、支持面24aをその一面側の先端部に有している。支持面24aは、ハンド35の後述する支持対象面41を支える。支持面24aは、掛け部材22の周囲に複数設けられるがその個数は単数であっても構わない。好ましくは、支持面24aは、3点又は4点以上設けられる。これはハンド35を安定的に支持するためである。こうして、支持面24aは、押さえ面23aと協調して、吊り掛けられたハンド35を挟み込むようにハンド35を裏面側から支持する。
【0026】
なお、支持部材24は、丸棒状に替えて、六角柱、角柱、平板状でもよい。また、支持部材24は、収納ボード17に立てられた複数の支柱の端面に梁のように板材を渡して設けても良い(詳細は後述する)し、テーブル状を成しても良い。テーブル状の支持部材を設けて、後述するハンド35の凸部との干渉を回避するようにテーブル面に抜き穴を設けても良い。これらの場合には、梁状に渡した板材のXマイナス方向の面、又はテーブル面が支持部材24aとなる。いずれの形態をとっていても、支持部材24は支持面24aを備え、支持面24aがハンド35を支持すれば良い。支持面24aが広い場合、支持面24aの点数は少なくても良いことは言うまでもない。また、支持部材24の高さが収納ボードに調整可能に設けられても良い。
【0027】
収納ボード17の重力方向の下部には、ハンド検知センサ32が設けられている。ハンド検知センサ32は、いわゆる着座センサ、接触センサその他の検知幅の狭いセンサが利用できる。ここで、着座センサは、圧縮空気の噴出口を検知対象面と接触させて、圧縮空気の噴出口を検知対象面で塞がれたときと、圧縮空気の噴出口が検知対象面で塞がれていないときの、圧縮空気の圧力の差を検知するものである。即ち、圧縮空気の圧力が高くなれば検知対象面の設置を検出する。ここで、圧縮空気の圧力を検知することに代えて、圧縮空気の流量を検知しても良い。
【0028】
ハンド検知センサ32は、ハンド35が収納ボード17に吊り掛けられた際の重力方向下面を検知する。ハンド検知センサ32の検知幅が狭いため、ハンド検知センサ32は、ハンド35が正確に収納ボード17に収納されていることを検知する。ここで、ハンド35は、収納ボード17に若干の寸法上の遊びをもって吊り掛けられるが、重力の作用により重力方向の高さは正確に定まる。そのため、ハンド検知センサ32の検知幅が狭くても、良好にハンド35の定位置への収納(吊り掛け)を検知できる。
【0029】
なお、ハンド検知センサ32を設けることに代えて、支持部材24を、着座センサのノズルとして用いても良い。このときは、押さえ部材23がハンド35を支持部材24に対して付勢する構造を併用できる。
【0030】
付勢機構25は、吊り掛けられたハンド35を方向28(Y軸の正方向)に付勢する。付勢機構25は、弾性体によって付勢部材を付勢するプランジャが利用できる。係合部材としての位置決め機構26は、吊り掛けられたハンド35のY軸方向を位置決めする。位置決め機構26は、後述するハンド35の溝である受容部材27と係合し、ハンド35の位置を割り出す。位置決め機構26として、プランジャ、ピン、ボールキャッチと係合する突起が利用できる。
【0031】
ハンド35の種別検知のため、複数のセンサ30が収納ボード17に設けられる。センサ30は、近接センサ、リミットスイッチ、接触センサ、電磁センサが利用できる。複数のセンサ30の検知状態によってハンド35の種別を検出する。例えば3つのセンサの検出を1、非検出を0として2進数の000ないし111をハンド35の形式ごとに割当てられる。ハンド35には、センサ30が検知できるドグ45(
図4参照)をそれぞれの検出番号に応じて取り付けられる。
【0032】
図4を参照して、ハンド35の詳細構造について説明する。ハンド35は、フレーム36の一方の面に、クランプ装置37、座面ピン38、位置決めピン39などのワーク8を把持する機能部材が設けられる。フレーム36の他方の面にアクチュエータ2にと連結する結合部42が設けられている。勿論、上記の構成に代えて、フレーム36の他方の面もワーク8を把持する機能部材を付けても良いし、フレーム36の端面(例えば
図4の左側)に結合部42を設けても良い。
【0033】
フレーム36は、略矩形の平板状をなす。フレーム36の中央部には肉抜部36aが設けられている。肉抜部36aが設けられているため、ハンド35を軽量にし、ハンド慣性モーメントを小さく構成できる。また、前述のロボットハンド式洗浄機のハンドとして利用する場合には、肉抜部36aを通して、洗浄液の噴流をワーク8に直接当てることができる。
【0034】
座面ピン38は、略円筒状をなし、フレーム36の一方の面に突出して設けられている。座面ピン38の先端面は、平滑な着座面38aとなっている。着座面38aは、ワーク8と接触する。着座面38aは1つでも良いが、好ましくは複数設けられている。より望ましくは、ワーク8の周辺部を3点又は4点以上で支持する。着座面38aは、耐摩耗性を高めるために、例えばcBN、硬質クロムメッキ被膜等の被膜が設けられている。座面ピン38がファインセラミックスや超鋼金属など、硬質な材料で製造されていても良い。好ましくは着座面38aは、クランプ爪37dと対面する位置に設けられる。また、好ましくは、一つ以上の着座面38aは、いわゆる着座センサとして機能する。
【0035】
クランプ装置37は、圧縮空気シリンダ等のシリンダ37a、シリンダ37aのピストン軸37bによって駆動するリンク機構37c、リンク機構37cによって開閉するクランプ爪37dで構成される。好ましくはクランプ爪37dは、着座面38aと対面するように設けられる。ハンド35は、クランプ爪37dと着座面38aの間にワーク8を挟持する。位置決めピン39は、先端に円錐面を有する略円筒状をなす。位置決めピン39は、ワーク8のピン穴(図示せず)に挿入され、ワーク8の着座面38aに平行な方向のワーク8の位置を決める。
【0036】
結合部42は、ハンドチェンジャ5と結合する。結合部42は、ハンドチェンジャ5から供給される流体をシリンダ37a、着座面38aに送る流体流路42aが設けられている。支持対象面41は、支持部材24の支持面24aと当接する。好ましくは、支持対象面41は、例えば切削加工によって結合部42に対して正確な位置に設けられる。支持対象面41は、好ましくは耐摩耗性被膜を備える。支持対象面41の高さは、後述する接触面44に対して調整可能に設けられても良い。勿論、ハンド35全面が例えば切削加工により高精度に製作されていれば、支持対象面41を特別に設ける必要はない。
【0037】
フレーム36には、好ましくは、ハンド35の種別を判別するためのドグ45、ワーク8の挿入をガイドするガイド部材43、収納ボード17に設けられた位置決め機構26と係合してハンド35を位置決めする受容部材27が設けられる。受容部材27は、図示された断面V字状の溝の他、円錐状の穴、ボールキャッチなどが利用される。
【0038】
なお、位置決め機構26、および受容部材27は取り外しても良い。位置決め機構26を収納ボード17に、受容部材27をハンド35にそれぞれ設けることに代えて、位置決め機構26をハンド35に、受容部材27を収納ボード17に設けても良い。
【0039】
図5を参照して、吊り掛け部40の詳細について説明する。吊り掛け部40は、フレーム36に開口40aを有する。この開口40aは、
図5に示すように略ひょうたん型に形成され、大径部40b、この大径部40bと連続して上方に延びる長穴状の小径部40c、および小径部40cの先端に小径部40cを折り曲げるように設けられている鍵部40dを有する。小径部40cは、ハンド35が収納ボード17に収納されたときに、重力方向上側を向くように設けられている(
図1参照)。吊り掛け部40は、フレーム36を貫通するように設けられている。即ち、本実施形態において、開口40aはひょうたん型の貫通穴である。
【0040】
鍵部40dの距離46は、ハンドチェンジャ5と結合部42との装着時の離間距離(払出し距離)と同じか、それより若干大きく取る。鍵部40dは、結合部42に向く方向に設けられている。ハンドチェンジャ5が結合部42を切り離すときに、ハンドチェンジャ5が結合部42を押し出すためである。
【0041】
ハンドチェンジャ5が結合部42を切り離すときの機能によっては、鍵部40dは、省いても良いし、結合部42の反対方向に設けても良い。しかし、ハンドチェンジャ5が結合部42を切り離すときにアクチュエータ2がハンドチェンジャを引き込む必要がある場合、鍵部40dは、結合部42と反対方向に設ける。
【0042】
フレーム36表面のうち鍵部40dの周囲は、押さえ部材23の押さえ面23aと接触する接触面44である。好ましくは、接触面44は、ハンド35が収納ボード17に吊り掛けられた状態(収納された状態)において、押さえ面23aと僅かに隙間が生じるように設けられる。この隙間とは、アクチュエータ2がハンド35を装着または脱着するときにアクチュエータ2のサーボ系の振れまたはハンド35の熱膨張を吸収できる程度よりも大きく、かつ、この隙間によるハンド35の傾きがアクチュエータ2とハンド35との装着時の傾きの許容限度よりも小さく設計される。
【0043】
望ましくは、吊り掛け部40のうち掛け台22bおよび押さえ部材23と接触する面は、耐摩耗性を高めるために、cBN,硬質クロムメッキ、窒化チタンなどの硬質皮膜を有する。また、好ましくは、接触面44は、例えば切削加工によって支持対象面41または結合部42に対して正確な位置に設けられる。例えば接触面44は、フレーム36に切削加工されて設けられる。
【0044】
なお、吊り掛け部40は、上記したひょうたん型の貫通穴の構成に代えて凹部とすることもできる。具体的には、フレーム36の掛け面側(
図4の上面側)にひょうたん型の開口40aを形成し、開口40aの内部に押さえ部材23を収容可能な空洞を設ける構成とする。この場合、空洞の内面であって開口40aの周囲の部分が押さえ部材23の押さえ面23aと接触する接触面44となる。
【0045】
また以上の説明では、望ましい構成として支持対象面41、接触面44に耐摩耗性被膜を備えることを挙げた。勿論、ハンド35又はフレーム36の表面全面が耐摩耗性被膜を備えても良い。特に、高圧洗浄及び高圧噴流によるバリ取りにハンド35を利用する場合、ハンド35又はフレーム36の全面が耐摩耗性被膜を備えることが望ましい。この場合、ハンド35は、高圧噴流に晒されるところ、ハンド35全面が耐摩耗性被膜で覆われていればハンド35の噴流による壊食を低減できる。
【0046】
次に、
図1と
図5を併せて参照して、ハンド35の収納方法について説明する。ハンド35をハンドストッカ10に収納するには、まず、アクチュエータ2を操作して、ひょうたん型の貫通穴の大径部40bと押さえ部材23とを位置合わせする。そして、ハンド35をX軸の正方向に移動し、大径部40bに押さえ部材23を挿入する。押さえ部材23がフレーム36を完全に通過し、ハンド35の裏面が支持部材24の支持面24aと当接した状態で、アクチュエータ2を操作して、ハンド35をZ軸の正方向(下方向)に降ろす。このとき、掛け部材22の掛け台22bは、ひょうたん型の貫通穴の小径部40cを通過し、押さえ部材23と掛け部材22の支柱部22aとが小径部40cを介して対峙する。小径部40cの上端に掛け台22bが到達した高さで、ハンドチェンジャ5と結合部42とを切り離す。
【0047】
ハンドチェンジャ5は結合部42を切り離す際には、ハンド35の装着方向6であるY軸の正方向にハンド35を若干押し出す。このとき、掛け部材22の掛け台22bに対して、ハンド35が動き、掛け台22bが鍵部40dに収まる。ハンド35が収納ボード17に吊り掛けられたときに、付勢機構25は、ハンド35を方向28(Y軸の正方向)の向きに付勢する。ハンド35は付勢機構25によって付勢されるため、掛け台22bが鍵部40dに常時収まり、ハンド35のY軸およびZ軸方向の位置が定まる。即ち、付勢機構25は、ハンド35を収納ボード17の所定の位置に保持させる機能を有している。
【0048】
また、接触面44が押さえ部材23とごくわずかの隙間をもって対面する位置にあるため、ハンド35が押さえ部材23および支持部材24との間に挟まる。そしてハンド35は、押さえ部材23により収納ボード17の盤面17aから離れる方向(X軸の負方向)への移動が抑止されると共に、支持部材24により収納ボード17の盤面17aに近づく方向(X軸の正方向)への移動も規制される。そのため、ハンド35のX軸方向の位置も定まる。このように、ハンド35は、多少の遊びをもってハンドストッカ10に収納されるため、アクチュエータ2がハンド35を装着または脱着するときに、アクチュエータ2のサーボ系の振れを吸収できる。
【0049】
次に、ハンド35のアクチュエータ2への装着方法を説明する。アクチュエータ2は、ハンドチェンジャ5と結合部42との隙間が距離46と等しいかあるいは距離46より若干小さい隙間(払出し距離)をもって、ハンドチェンジャ5を結合部42に近接させる。そして、ハンドチェンジャ5を結合部42に結合させた後、上述したハンド35を収納ボード17に吊り掛けた手順と反対の手順でハンド35を収納ボード17から取り外せば良い。
【0050】
以上説明したように、本実施形態に係るハンドストッカ10によれば、ハンド35が収納ボード17に吊り掛けて収納されるため、例えばハンド35を収納台に水平に載置する構成に比べて、ハンドストッカ10の設置面積を縮小できる。特に、本実施形態で例示したように直交軸形のアクチュエータ2を用いる場合であって、可動領域1の内部にハンド35を設置する場合には、ハンドストッカ10の設置空間(体積)だけ運搬に利用できる領域が削られる。この場合には、ハンドストッカ10にハンド35を収納ボード17に吊り掛ける(立て掛ける)ことで、可動領域1内の運搬に利用できる領域が大きく取れる。
【0051】
ハンドストッカ10は、収納ボード17を引出開口12から可動領域1外(安全柵11の外)に引き出せるため、ハンドストッカ10に収納するハンド35を容易に交換でき、作業性に優れる。また、収納ボード17のメンテナンスも容易である。アクチュエータ2の可動領域1が、ハンドストッカ10領域とその他の作業領域(図示しない)に区分されている場合、アクチュエータ2がその他の作業領域内で作業している時間内であっても、収納ボード17を可動領域1外に引き出せる。
【0052】
また、ハンドストッカ10は、位置決め機構26、付勢機構25以外に可動する構成部品を含まない。即ち、本実施形態に係るハンドストッカ10は、従来技術に比べて可動部が少なく簡単な構造である。このため、ハンドストッカ10は、殆どメンテナンスを必要としない。また、センサ19a,19b,30以外に電気部品も含まない。センサ19a,19b,30は近接センサ、リミットスイッチ、接触スイッチを採用できる。これらのセンサは一般的に耐久性及び信頼性が高い。電気部品の数が非常に少ないため、ハンドストッカ10は、電気的トラブルが非常に少ない。
【0053】
(第2実施形態)
図6に従って、第2実施形態のハンドストッカ50について以下に説明する。ハンドストッカ50は、旋回ベース54を旋回装置60に載せている。安全柵51のうち、旋回ベース54の背面の部分に安全扉53を設けている。その余の部分については、上述の第1実施形態と同一である。以下、第1実施形態と同様の構成については、第1実施形態と同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0054】
旋回ベース54は、第1実施形態の収納ボード17に相当し、その盤面54aに吊り掛け機構としての掛け部材22、支持部材24、押さえ部材23を有している。
【0055】
旋回装置60は、主に架台57、旋回軸55で構成される。旋回軸55は、旋回ベース54の重力方向下面に設けられている。旋回軸55は、ベアリング56によって架台57に軸61の回りに回転可能に支持されている。旋回ベース54には、ピン58を挿入する挿通孔54bが設けられている。架台57にも、ピン58を挿入する挿通孔57aが設けられている。ピン58が挿通孔54b、57aに嵌合して挿入されるため、ハンドストッカ50は、その収納状態において正確に回転方向に位置決めされている。架台57には、ピン58の挿入を検知するセンサ59が設けられる。
【0056】
架台57には、旋回ベース54の旋回範囲を定める図示しないメカニカルストッパを設けても良い。このとき、旋回ベース54には、旋回範囲の限界(旋回端)で前述のメカニカルストッパに突き当たる突き当て部を設ける。そして、架台57に突き当て部がメカニカルストッパと当接し、旋回ベース54が旋回端にあることを検知するセンサを設けても良い。
【0057】
安全柵51には、旋回ベース54が回転したときに、旋回ベース54に吊り掛けられたハンド35にアクセスするための旋回開口(作業口)52が設けられる。そして、旋回開口52を閉じるように安全扉53が設けられている。安全扉53は、ボルト締結されても良いし、図示しない蝶番によって安全柵51に開き扉として設けられても良い。好ましくは、安全扉53が開き扉として設けられるときは、図示しない安全スイッチが取り付けられる。
【0058】
ハンドストッカ50に収納するハンド35を交換するときは、作業者が安全扉53を取外す(又は開く)。続いて作業者がピン58を引き抜く。ピン58の引き抜きによって、センサ59は、ピン58が引き抜かれたことを検知する。その後作業者は、旋回ベース54を180°旋回させ、旋回ベース54の盤面54aが旋回開口52を向かせる。そしてハンド35を交換する。作業者は、ハンド35を交換した後、先の手順を逆順に行うことによって、ハンドストッカ50を収納状態に戻す。
【0059】
この第2実施形態に係るハンドストッカ50によれば、旋回ベース54が軸61の回りに回動するため、収納ボード17をスライドする第1実施形態の構成と比べて、Y軸方向のスペースを縮小することができる。また、その他の作用効果は第1実施形態と同様である。
【0060】
(第3実施形態)
図7〜
図9を参照して、第3実施形態に係るハンドストッカ90について説明する。第3実施形態に係るハンドストッカ90は、主に吊り掛け機構170と吊り掛け部140の構成が第1実施形態と相違する。よって、以下、この相違について説明し、その他の構成については第1実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
【0061】
吊り掛け機構170は、
図8に示すように、盤面17aから水平方向に延びて、ハンド35に設けられた吊り掛け部140(後述)と係合する掛け部材122と、盤面17aから水平方向に延びて、ハンド35が盤面17aから離れる方向へ移動するのを抑止する押さえ部材123と、盤面17aに設けられ、ハンド35が盤面17aに近づく方向へ移動するのを規制する支持部材124と、を含む。
【0062】
掛け部材122は、丸棒状に形成され、収納ボード17の略中央部に水平方向に並べて2つ設けられる。押さえ部材123は、掛け部材122より上方の位置に、水平方向に並べて2つ設けられる。押さえ部材123は、水平部123bと、この水平部123bから上方に立ち上がる立ち上がり部123cとを有するフック状の部材である。立ち上がり部123cの盤面17aと対向する面が、ハンド35が盤面17aから離れる方向へ移動するのを抑止する押さえ面123aである。このように、第3実施形態では、掛け部材122と押さえ部材123とが別体で盤面17aに設けられている点が第1実施形態と相違する。
【0063】
支持部材124は、収納ボード17の盤面17aから水平方向に延在する2本の支柱124bと、各支柱124bの端面に当接して設けられ、梁のように細長いプレート124cと、を備える。プレート124cの前面がハンド35と当接する支持面124aとなる。即ち、本実施形態は、プレート124cの支持面124aがハンド35を支持する構成であることも、第1実施形態との相違点である。
【0064】
また、第3実施形態では、掛け部材122の形状に応じてハンド35の吊り掛け部140の形状が第1実施形態と異なる。具体的には、
図9に示すように、掛け部材122の直径より若干大きい長穴140aが設けられており、この長穴140aの上端部に鍵部140dが連続している。このように構成された第3実施形態であっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏し得る。
【0065】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。例えば、収納ボード17に更にX方向又はZ方向にハンド35を付勢する付勢機構を追加できる。これらの追加した付勢機構により、ハンドストッカに収納されたハンド35の収納位置を正確に位置決めできる。また、例えば、1つの収納ボード17に、第1〜第3実施形態として記載された掛け部材22,122、押さえ部材23,123、および支持部材24,124の構成を適宜、組み合わせて設けても良い。前記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。