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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-154402(P2017-154402A)
(43)【公開日】2017年9月7日
(54)【発明の名称】透光板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 18/00 20060101AFI20170810BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20170810BHJP
   C23C 14/34 20060101ALI20170810BHJP
   C23C 14/10 20060101ALI20170810BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20170810BHJP
   B64C 1/14 20060101ALI20170810BHJP
   B63B 19/02 20060101ALI20170810BHJP
   B61D 25/00 20060101ALN20170810BHJP
【FI】
   B32B18/00 C
   B32B9/00 A
   C23C14/34 S
   C23C14/10
   B60J1/00 H
   B64C1/14
   B63B19/02
   B61D25/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-40320(P2016-40320)
(22)【出願日】2016年3月2日
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東條 暁典
(72)【発明者】
【氏名】古市 渉
(72)【発明者】
【氏名】福島 浩司
【テーマコード(参考)】
4F100
4K029
【Fターム(参考)】
4F100AA20B
4F100AD00B
4F100AK01A
4F100AK25A
4F100AK45A
4F100AK52C
4F100AR00C
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100EH46
4F100EH66
4F100EJ42
4F100EJ65
4F100EJ86
4F100GB31
4F100GB32
4F100JB13
4F100JK12C
4F100JN01
4K029AA11
4K029AA24
4K029BA46
4K029BC02
4K029BD00
4K029CA05
4K029DC05
4K029DC35
4K029DC39
4K029EA01
4K029FA07
(57)【要約】
【課題】数十nmオーダーの薄いセラミック層が樹脂基体上に設けられていても、耐摩耗性に優れる透光板及びその製造方法を提供する。
【解決手段】樹脂基体と、上記樹脂基体上に設けられたセラミック層とからなる透光板であって、上記セラミック層は、Arを含有し、上記セラミック層の厚さは、500nm以下であることを特徴とする透光板。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基体と、前記樹脂基体上に設けられたセラミック層とからなる透光板であって、
前記セラミック層は、Arを含有し、
前記セラミック層の厚さは、500nm以下であることを特徴とする透光板。
【請求項2】
前記セラミック層は、スパッタリング膜からなる請求項1に記載の透光板。
【請求項3】
前記セラミック層は、Si及びOを含有する請求項1又は2に記載の透光板。
【請求項4】
前記樹脂基体と前記セラミック層との間に、ハードコート層をさらに備える請求項1〜3のいずれかに記載の透光板。
【請求項5】
前記樹脂基体は、ポリカーボネート又はポリメチルメタクリレートからなる請求項1〜4のいずれかに記載の透光板。
【請求項6】
前記樹脂基体の厚さは、2〜6mmである請求項1〜5のいずれかに記載の透光板。
【請求項7】
自動車、列車、航空機又は船舶用の窓ガラスとして使用される請求項1〜6のいずれかに記載の透光板。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の透光板を製造するための方法であって、
Arガス雰囲気下でのスパッタリングによって、Arを含有する厚さ500nm以下のセラミック層を樹脂基体上に形成することを特徴とする透光板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透光板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
耐久性の必要なディスプレイ用のパネルや自動車用の窓ガラス等には、耐傷性に優れた無機ガラスが広く使用されてきた。近年、軽量化及び割れにくさの観点から、樹脂ガラスが注目されている。しかし、樹脂ガラスは、無機ガラスよりも表面の硬度が低いため、耐摩耗性や耐傷性が不充分であり、さらには耐候性にも劣るといった欠点を有している。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1には、透明な樹脂基板の少なくとも一方の面上に、ハードコート層が積層形成されてなる自動車用樹脂ガラスであって、上記ハードコート層が、真空蒸着重合によって形成された有機高分子薄膜を含んで構成されていることを特徴とする自動車用樹脂ガラスが提案されている。特許文献1には、望ましい態様として、上記ハードコート層が、上記有機高分子薄膜と、該有機高分子薄膜の上記樹脂基板側とは反対側に、真空成膜プロセスによって積層形成された無機薄膜とを含む複層構造を有していることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−116182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の自動車用樹脂ガラスでは、ハードコート層の最外層を酸化珪素等からなる無機薄膜にて構成することにより、無機ガラスに匹敵する表面硬度が得られ、優れた耐摩耗性や耐傷性が確保され得るとされている。しかし、特許文献1に記載の自動車用樹脂ガラスでは、無機薄膜の厚さは100nm〜20μm程度であり、耐摩耗性を確保しつつ、無機薄膜をさらに薄くすることは困難であった。
【0006】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、数十nmオーダーの薄いセラミック層が樹脂基体上に設けられていても、耐摩耗性に優れる透光板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の透光板は、樹脂基体と、上記樹脂基体上に設けられたセラミック層とからなる透光板であって、上記セラミック層は、Arを含有し、上記セラミック層の厚さは、500nm以下であることを特徴とする。
【0008】
本発明の透光板では、Arを含有するセラミック層を樹脂基体上に設けることによって、耐摩耗性を向上させることができる。耐摩耗性が向上する理由としては、セラミック層に含有されるArがセラミック層の体積を膨張させようとする力が働く結果、セラミック層内に圧縮応力が発生するためと推測される。
その結果、本発明の透光板では、数十nmオーダーの薄いセラミック層が樹脂基体上に設けられていても、充分な耐摩耗性を透光板に付与することができる。したがって、厚いセラミック層が樹脂基体上に設けられている場合と異なり、自動車用の窓ガラス等として過酷な屋外で使用する場合であってもセラミック層にクラック等が発生しにくいため、長期信頼性に優れる透光板とすることができる。
【0009】
本発明の透光板において、上記セラミック層は、スパッタリング膜からなることが好ましい。
Arガス雰囲気下でのスパッタリングによってセラミック層を形成することにより、セラミック層にArを容易に含有させることができる。また、スパッタリングによりセラミック層を形成すると、セラミック層がカラム状に成長するため、カラム内に取り込まれたArがカラムを広げようとする力が働く結果、セラミック層内に圧縮応力が発生しやすくなることも期待できる。そのため、セラミック層が緻密となり、傷が付き難く、また、傷が付いたとしてもセラミック層の表面に圧縮応力がかかっているために傷が進展しにくい。
【0010】
本発明の透光板において、上記セラミック層は、Si及びOを含有することが好ましい。
Si及びOを含有するセラミック層は、透明であり、また、優れた耐摩耗性を発揮する。
【0011】
本発明の透光板は、上記樹脂基体と上記セラミック層との間に、ハードコート層をさらに備えることが好ましい。
樹脂基体とセラミック層との間にハードコート層を設けることによって、表面硬度を高くすることができるため、耐摩耗性をさらに向上させることができる。
【0012】
本発明の透光板において、上記樹脂基体は、ポリカーボネート又はポリメチルメタクリレートからなることが好ましい。
これらの樹脂は、高い透光性を有している上に、複屈折がなく、充分な強度を有しているため、透光板の樹脂基体の材料として好適に使用することができる。
【0013】
本発明の透光板において、上記樹脂基体の厚さは、2〜6mmであることが好ましい。
樹脂基体の厚さが上記範囲であると、例えば自動車用等の窓ガラスとして使用する場合の機械的強度を確保することができ、さらに、ガラス全体に歪み等が発生しにくくなる。
【0014】
本発明の透光板は、自動車、列車、航空機又は船舶用の窓ガラスとして使用されることが好ましい。
上述のとおり、本発明の透光板は耐摩耗性に優れるため、自動車用の窓ガラス等として過酷な屋外での使用にも耐えることができる。
【0015】
本発明の透光板の製造方法は、上記透光板を製造するための方法であって、Arガス雰囲気下でのスパッタリングによって、Arを含有する厚さ500nm以下のセラミック層を樹脂基体上に形成することを特徴とする。
【0016】
本発明の透光板の製造方法では、Arガス雰囲気下でのスパッタリングによってセラミック層を形成することにより、セラミック層にArを含有させることができる。したがって、耐摩耗性に優れる透光板を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の透光板の一例を模式的に示す断面図である。
図2図2は、本発明の透光板の別の一例を模式的に示す断面図である。
図3図3は、実施例1で作製した透光板のRBS分析の結果を示すグラフである。
図4図4は、比較例1で作製した透光板のRBS分析の結果を示すグラフである。
図5図5は、実施例1で作製した透光板のPIXE分析の結果を示すグラフである。
図6図6は、比較例1で作製した透光板のPIXE分析の結果を示すグラフである。
【0018】
(発明の詳細な説明)
[透光板]
本発明の透光板は、樹脂基体と、上記樹脂基体上に設けられたセラミック層とからなる透光板であって、上記セラミック層は、Arを含有し、上記セラミック層の厚さは、500nm以下であることを特徴とする。
【0019】
図1は、本発明の透光板の一例を模式的に示す断面図である。
図1に示す透光板10は、樹脂基体11と、樹脂基体11上に設けられたセラミック層12とからなる。
【0020】
本発明の透光板において、セラミック層は、樹脂基体上に設けられている。ただし、セラミック層は、樹脂基体と接していなくてもよく、樹脂基体とセラミック層との間に他の層が設けられていてもよい。
【0021】
本発明の透光板において、セラミック層の厚さは、100nm以下であることが好ましく、60nm以下であることがより好ましく、40nm以下であることがさらに好ましい。また、セラミック層の厚さは、10nm以上であることが好ましい。
本発明の透光性では、セラミック層の厚さが上記範囲であっても、充分な耐摩耗性を透光板に付与することができる。
【0022】
セラミック層の厚さは、例えば、レーザー顕微鏡を用いて測定することができる。後述する他の層の厚さについても同様に測定することができる。
例えば、セラミック層の厚さは、樹脂基体の表面にセラミック層が形成された部分と、樹脂基体の表面にセラミック層が形成されていない部分がある試料を準備し、樹脂基体の表面にセラミック層が形成された部分と形成されていない部分との境界の段差をまたぐようにレーザー顕微鏡を走査して、その段差の高さをセラミック層の厚さとして測定することができる。
【0023】
本発明の透光板において、セラミック層にArが含有されていることは、ラザフォード後方散乱分光(RBS)分析により確認することができる。
RBS分析では、バンデグラフ型加速器(High−Voltage Enginiaring製、型番AN−2500)を使用し、入射イオン:He、入射エネルギー:2.3MeV、散乱角:90度、入射角:試料面の法線に対し45度、ビーム径:Φ3mm、照射量:20〜50μC、測定エネルギー範囲:0〜20keVの条件で評価する。
【0024】
セラミック層中のArの含有量は、粒子線励起X線(PIXE)分析により測定することができる。
PIXE分析では、バンデグラフ型加速器(High−Voltage Enginiaring製、型番AN−2500)を使用し、入射イオン:He、入射エネルギー:2.3MeV、入射角:試料面の法線に対し45度、ビーム径:Φ3mm、照射量:20〜50μC、測定エネルギー範囲:0〜40keVの条件で行い、発生した特性X線をSi検出器により検出する。
【0025】
本発明の透光板において、Arを含有するセラミック層は、例えば、Arガス雰囲気下でのスパッタリングによって形成することができる。すなわち、本発明の透光板において、Arを含有するセラミック層は、スパッタリング膜からなることが好ましい。
【0026】
本発明の透光板において、セラミック層は、酸化物セラミック、炭化物セラミック又は窒化物セラミック等の無機材料からなる。
セラミック層を構成する無機材料としては、透明な材料であることが好ましく、例えば、SiO、SiOxCy(0.5≦x≦1.7、0.2≦y≦2.0)、SiC、Si、Al3、TiO等が挙げられる。
【0027】
中でも、セラミック層は、Si及びOを含有することが好ましく、SiO又はSiOxCy(0.5≦x≦1.7、0.2≦y≦2.0)からなることが好ましい。
これらの無機材料からなるセラミック層は、いずれも透明であり、また、優れた耐摩耗性を発揮する。
【0028】
SiOからなるセラミック層は、SiOをターゲットとした物理蒸着(PVD)法、プラズマCVD法等により形成することができる。また、SiOxCyからなるセラミック層は、SiO及びSiCをターゲットとしたPVD法、SiCをターゲットとした酸素雰囲気下でのPVD法、プラズマCVD法等により形成することができる。
【0029】
本発明の透光板において、樹脂基体がポリカーボネートからなる場合、セラミック層はSiOからなることが好ましく、樹脂基体がポリメチルメタクリレートからなる場合、セラミック層はSiOxCyからなることが好ましい。
【0030】
本発明の透光板において、セラミック層は、非晶質であることが好ましい。セラミック層が非晶質であると、セラミック層を透明にすることができる。
【0031】
本発明の透光板において、セラミック層は、単層構造を有している必要はなく、2層以上の複層構造を有していてもよい。
【0032】
本発明の透光板において、樹脂基体は、透明な樹脂材料からなる基体である。樹脂材料としては、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリスチレン(PS)等が挙げられる。これらの中では、樹脂基体は、ポリカーボネート又はポリメチルメタクリレートからなることが好ましい。これらの樹脂は、高い透光性を有している上に、複屈折がなく、充分な強度を有しているため、透光板の樹脂基体として好適に使用することができる。
【0033】
本発明の透光板において、樹脂基体の厚さは、透光板の用途に応じて適切な厚さとすることができる。
樹脂基体の厚さは、板状の透光板の樹脂基体として適切なmmオーダーの厚さでもよいし、フィルム状の透光板の樹脂基体として適切なμmオーダーの厚さでもよい。なお、樹脂基体の厚さは不均一であってもよい。
例えば、本発明の透光板を自動車、列車、航空機又は船舶用の窓ガラスとして使用する場合、樹脂基体の厚さは、2〜20mmであることが好ましい。特に、本発明の透光板を自動車用の窓ガラスとして使用する場合、樹脂基体の厚さは、2〜6mmであることが好ましい。樹脂基体の厚さが上記範囲であると、自動車用等の窓ガラスとして使用する場合の機械的強度を確保することができ、さらに、ガラス全体に歪み等が発生しにくくなる。
【0034】
本発明の透光板において、樹脂基体の形状は、特に限定されるものではなく、平板、曲板、半円筒、円筒状の他、その断面の外縁の形状は、楕円形、多角形等の任意の形状であってもよい。
例えば、本発明の透光板を自動車、列車、航空機又は船舶用の窓ガラスとして使用する場合、樹脂基体は、曲面状に湾曲していることが好ましい。
【0035】
本発明の透光板において、樹脂基体は、無色である必要はなく、有色であってもよい。
【0036】
本発明の透光板においては、樹脂基体とセラミック層等との密着性を向上させるため、サンドブラスト処理や化学薬品等によって樹脂基体の表面が粗化されていてもよい。
【0037】
本発明の透光板において、樹脂基体の表面が粗化されている場合、樹脂基体の表面粗さRzJISは、0.3〜20μmであることが好ましい。
樹脂基体の表面粗さRzJISが0.3μm未満であると、樹脂基体の表面積が小さくなるため、樹脂基体とセラミック層等との密着性が充分に得られにくくなる。一方、樹脂基体の表面粗さRzJISが20μmを超えると、樹脂基体の表面にセラミック層等が形成されにくくなる。これは、樹脂基体の表面粗さRzJISが大きすぎると、樹脂基体の表面に形成された凹凸の谷の部分にセラミック層等が形成されにくく、この部分に空隙が形成されるためであると考えられる。
なお、樹脂基体の表面粗さRzJISは、レーザー顕微鏡(キーエンス社製VK−X200violet仕様)を用いて表面の輪郭曲線を測定した後、JIS B 0601:2001に準拠して、走査距離を30μmとして測定することができる。
【0038】
本発明の透光板は、樹脂基体とセラミック層との間に、ハードコート層をさらに備えることが好ましい。この場合、本発明の透光板は、樹脂基体とハードコート層との間に、プライマー層をさらに備えることがより好ましい。
すなわち、本発明の透光板は、樹脂基体と、樹脂基体上に設けられたハードコート層と、ハードコート層上に設けられたセラミック層とからなることが好ましく、樹脂基体と、樹脂基体上に設けられたプライマー層と、プライマー層上に設けられたハードコート層と、ハードコート層上に設けられたセラミック層とからなることがより好ましい。
【0039】
図2は、本発明の透光板の別の一例を模式的に示す断面図である。
図2に示す透光板20は、樹脂基体21と、樹脂基体21上に設けられたプライマー層24と、プライマー層24上に設けられたハードコート層23と、ハードコート層23上に設けられたセラミック層22とからなる。
【0040】
本発明の透光板において、プライマー層は、樹脂基体とハードコート層とを接着させるために設けられる層であり、樹脂材料からなる。
プライマー層を構成する樹脂材料は、樹脂基体及びハードコート層に対する接着性が良好であることが好ましく、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上使用することができる。これらの材料は樹脂基体及びハードコート層との接着性に優れるため、プライマー層を介して樹脂基体及びハードコート層を強固に接着することができる。中でも、プライマー層を形成する材料は、アクリル樹脂、ウレタン樹脂又はエポキシ樹脂が好ましく、アクリル樹脂がより好ましい。なお、アクリル樹脂は、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルの重合体である。
【0041】
本発明の透光板において、プライマー層がアクリル樹脂からなる場合、上記アクリル樹脂は、少なくとも、エチレン性不飽和結合を1分子中に少なくとも2個以上有するアクリレート系化合物を含有するものが好ましく、中でも(メタ)アクリロイル基を1分子中に2個以上有する多官能(メタ)アクリレートであることが好ましい。また、上記アクリル系樹脂は、上記多官能(メタ)アクリレートと組み合わせて、(メタ)アクリロイル基を1分子中に1個有する単官能(メタ)アクリレートを用いてもよい。単官能(メタ)アクリレートを併用することにより、ハードコート層の製膜性及び密着性が向上する。
【0042】
本発明の透光板において、プライマー層の厚さは特に限定されないが、樹脂基体及びハードコート層との接着性の観点から、1〜10μmが好ましく、3〜8μmがより好ましい。
【0043】
本発明の透光板において、ハードコート層は、表面に傷等が発生することを防止するために設けられる層であり、樹脂材料からなる。
ハードコート層を構成する樹脂材料としては、例えば、シリコーン樹脂、シリカハイブリッドコンポジット、アクリル樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。これらは1種又は2種以上使用することができる。これらの材料を用いてハードコート層を形成することにより、ハードコート層とセラミック層との密着性を向上させることができ、セラミック層により付与される耐摩耗性等をより充分に発揮することができる。中でも、ハードコート層を形成する材料は、シリコーン樹脂が好ましい。
【0044】
本発明の透光板において、ハードコート層の厚さは特に限定されないが、高い表面硬度を得る観点から、1〜10μmが好ましく、2〜5μmがより好ましい。
【0045】
本発明の透光板において、セラミック層、ハードコート層及びプライマー層は、樹脂基体の片面に設けられていてもよく、樹脂基体の両面に設けられていてもよい。
【0046】
[透光板の製造方法]
本発明の透光板は、Arガス雰囲気下でのスパッタリングによって、Arを含有する厚さ500nm以下のセラミック層を樹脂基体上に形成することにより製造することができる。
【0047】
(樹脂基体の準備)
樹脂基体としては[透光板]で説明した樹脂基体を使用することができ、使用する用途に応じて任意の形状に切削加工、押出成形等により成形した樹脂基体を準備する。
【0048】
また、樹脂基体の表面の不純物を除去するために、洗浄処理を行うことが好ましい。
上記洗浄処理としては特に限定されず、従来公知の洗浄処理を用いることができ、例えば、水やアルコール溶媒中で超音波洗浄を行う方法等を用いることができる。また、スパッタリング装置内に樹脂基体を設置し、プラズマを発生させることによって樹脂基体の表面をプラズマ洗浄してもよい。
【0049】
上記洗浄処理後には、必要に応じて、樹脂基体の表面の粗さを調整したりするために、樹脂基体の表面に粗化処理を施してもよい。例えば、サンドブラスト処理、エッチング処理等の粗化処理を施してもよい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
粗化処理後に、さらに洗浄処理を行ってもよい。
樹脂基体表面の好ましい表面粗さ等については[透光板]で既に説明したので、ここではその説明を省略する。
【0050】
(セラミック層の形成)
セラミック層は、Arガス雰囲気下でのスパッタリングによって形成することができる。
セラミック層の材料、厚さについては[透光板]で既に説明したので、ここではその説明を省略する。
【0051】
スパッタリングは、物理蒸着(PVD)の一種である。
スパッタリングによりセラミック層を形成する場合、樹脂材料からなる樹脂基体、プライマー層等の温度が高温にならず、樹脂材料の耐熱温度以下の温度でセラミック層を形成することができるので、樹脂材料へのセラミック層の形成方法として適している。
【0052】
スパッタリングは、5〜200℃で行うことが好ましい。この温度はチャンバー内の設定温度であり、常温(25℃±15℃)であることも好ましい。なお、樹脂基体等の樹脂材料がスパッタリングの熱で溶融しないよう適宜冷却して温度調整してもよい。
【0053】
スパッタリングは、チャンバー内の圧力を0.5〜0.8Paで行うことが好ましく、0.6〜0.7Paで行うことがより好ましい。
【0054】
スパッタリングは、アルゴン:酸素=4:1〜21:1の分圧雰囲気下で行うことが好ましい。
【0055】
スパッタリングの方法としては、マグネトロンスパッタリング、イオンビームスパッタリング、2極スパッタリング、反応性スパッタリング、ECRスパッタリング等が挙げられる。
特に、RF(交流、高周波)スパッタリングが好ましく、RFマグネトロンスパッタリングがより好ましい。RFスパッタリングであると、絶縁体であるセラミックターゲットについてもスパッタリングが可能であり、マグネトロンスパッタリングとすることによって成膜速度を速くすることができる。
【0056】
RFマグネトロンスパッタリングを行う場合には、セラミック層の材料となるターゲットをスパッタリング装置に設置して、樹脂基体をチャンバー内に載置し、チャンバー内をAr雰囲気としてチャンバー内の圧力を例えば0.5〜0.8Paに減圧する。
そして、高周波電圧を印加してスパッタリングを所定時間行い、所定の厚さのセラミック層をハードコート層等の上に形成する。
【0057】
(プライマー層の形成)
樹脂基体上にプライマー層を形成する場合、例えば、[透光板]で説明したプライマー層を構成する樹脂材料を含む溶液を樹脂基体上に塗布した後、乾燥、硬化させればよい。あるいは、プライマー層となるフィルムを樹脂基体上に貼り付けてもよい。
上記樹脂材料を含む溶液を塗布する方法としては、例えば、スプレーコート法、ディップコート法、フローコート法等が挙げられる。
【0058】
(ハードコート層の形成)
プライマー層上にハードコート層を形成する場合、例えば、[透光板]で説明したハードコート層を構成する樹脂材料を含む溶液をプライマー層上に塗布した後、乾燥、硬化させればよい。あるいは、ハードコート層となるフィルムをプライマー層上に貼り付けてもよい。
上記樹脂材料を含む溶液を塗布する方法としては、例えば、スプレーコート法、ディップコート法、フローコート法等が挙げられる。
【0059】
プライマー層及びハードコート層を硬化させる方法は特に限定されず、熱硬化、紫外線硬化、電子線硬化、常温硬化等の各方法を使用でき、材料に応じて適宜選択すればよい。また、プライマー層及びハードコート層は、プライマー層を硬化させた後、ハードコート層を形成してもよく、プライマー層及びハードコート層を同時に硬化させてもよい。
【0060】
[透光板の用途]
本発明の透光板は、耐摩耗性が必要な用途に好適に使用することができる。
特に、本発明の透光板は、自動車用のガラスとして使用されることが好ましく、具体的には、自動車用の窓、ランプカバー又はランプレンズに使用されることが好ましい。
【0061】
自動車用の窓としては、前後左右の窓、ルーフ等が挙げられる。中でも、リアウインドウに使用されることが好ましい。
ランプカバーとしては、ヘッドランプカバー、スモールランプカバー、ウィンカーカバー、フォグランプカバー、テールランプカバー、ブレーキランプカバー、バックランプカバー、車内灯カバー等が挙げられる。
ランプレンズとしては、ヘッドランプレンズ、スモールランプレンズ、ウィンカーレンズ、フォグランプレンズ、テールランプレンズ、ブレーキランプレンズ、バックランプレンズ、車内灯レンズ等が挙げられ、ランプカバーと一体化したものであってもよい。
【0062】
本発明の透光板は、自動車用のガラス以外の用途として、列車、航空機、船舶、二輪車、自転車等の自動車以外の輸送用機器用のガラス(窓、ランプカバー、各種ランプレンズ等);家屋、オフィスビル等の建築物用のガラス(窓等);室内照明(LED照明、蛍光灯)、信号機、道路灯、歩道灯、防犯灯、公園灯等の各種照明のカバー等に使用することができる。
【0063】
(実施例)
以下、本発明をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明は、以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0064】
[透光板の作製]
(実施例1)
樹脂基体として、ポリカーボネート板(厚さ5mm)を準備した。
樹脂基体の表面に、アクリル樹脂系のプライマーをディップコート法により塗工した後、乾燥させることにより、アクリル樹脂からなる厚さ4μmのプライマー層を形成した。
次に、プライマー層上に、ポリシロキサンを含むハードコート層用組成物をディップコート法により塗工し、乾燥させた後、熱硬化させることにより、シリコーン樹脂からなる厚さ3μmのハードコート層を形成した。
【0065】
形成したハードコート層の表面に、RFマグネトロンスパッタリングによってセラミック層を形成した。スパッタリング装置を使用し、スパッタリングの電源はRF電源、サンプル/ターゲット間距離は100mmとした。また、スパッタリングの条件は、ターゲット:SiO、チャンバー内の圧力:0.6Pa、出力:100W、雰囲気:Arガス、温度:室温(RT)、処理時間:90秒とした。以上により、SiOからなる厚さ40nmのセラミック層を形成し、実施例1の透光板を作製した。
【0066】
(比較例1)
実施例1と同様に、樹脂基体上にプライマー層及びハードコート層を形成した。
形成したハードコート層の表面に、プラズマCVD法によってセラミック層を形成した。プラズマCVD装置を使用し、原料ガスとしてヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)を用いた。以上により、SiOからなる厚さ40nmのセラミック層を形成し、比較例1の透光板を作製した。
【0067】
[透光板の評価]
(RBS分析によるArの確認)
実施例1及び比較例1で作製した透光板のRBS分析を行い、セラミック層にArが含有されているかを確認した。
RBS分析では、バンデグラフ型加速器(High−Voltage Enginiaring製、型番AN−2500)を使用し、入射イオン:He、入射エネルギー:2.3MeV、散乱角:90度、入射角:試料面の法線に対し45度、ビーム径:Φ3mm、照射量:20〜50μC、測定エネルギー範囲:0〜20keVの条件で評価した。
【0068】
図3は、実施例1で作製した透光板のRBS分析の結果を示すグラフであり、図4は、比較例1で作製した透光板のRBS分析の結果を示すグラフである。図3及び図4において、横軸はエネルギー、縦軸は散乱強度を表している。
図3に示すように、実施例1ではArに起因するピークが存在するのに対し、図4に示すように、比較例1ではArに起因するピークが存在しない。以上の結果から、スパッタリングによってセラミック層を形成した実施例1では、セラミック層にArが含有されていることが確認できる。
【0069】
(PIXE分析によるArの含有量の測定)
実施例1及び比較例1で作製した透光板のPIXE分析を行い、セラミック層中のArの含有量を測定した。
PIXE分析では、バンデグラフ型加速器(High−Voltage Enginiaring製、型番AN−2500)を使用し、入射イオン:He、入射エネルギー:2.3MeV、入射角:試料面の法線に対し45度、ビーム径:Φ3mm、照射量:20〜50μC、測定エネルギー範囲:0〜40keVの条件で行い、発生した特性X線をSi検出器により検出した。
【0070】
図5は、実施例1で作製した透光板のPIXE分析の結果を示すグラフであり、図6は、比較例1で作製した透光板のPIXE分析の結果を示すグラフである。図5及び図6において、横軸はエネルギー、縦軸はX線強度を表している。
図5に示すように、実施例1ではArに起因するピークが存在し、このピークからセラミック層中のArの含有量を求めたところ、4.3×1014atoms/cmであった。一方、図6に示すように、比較例1ではArに起因するピークが確認できず、Arの含有量は測定限界以下であった。
【0071】
(耐摩耗性の評価)
実施例1及び比較例1で作製した透光板のヘイズ値を測定し、耐摩耗性の評価を行う。
具体的には、アルミナの砥粒を有する摩耗輪を、透光板のセラミック層表面で移動させ、移動の後に残される傷の痕跡による光の拡散透過で耐摩耗性を評価する。この評価方法においては、数値が小さいほど耐摩耗性に優れる。装置条件は下記のとおりである。なお、測定はJIS K 7136:2000に準じて行う。
【0072】
<ヘイズ値>
光計測器
ヘイズメータ:日本電色工業(株)製 NDH4000(A光源を使用)
光スポット径:7mm
摩耗試験
摩耗試験機 :taber社Model5135
サンプル回転数:1000回
回転速度 :72rpm
荷重 :500g
摩耗輪 :CS−10F
【0073】
その結果、セラミック層にArを含有する実施例1は、セラミック層にArを含有しない比較例1に比べてヘイズ値が小さく、耐摩耗性に優れることが確認できる。
【符号の説明】
【0074】
10,20 透光板
11,21 樹脂基体
12,22 セラミック層
23 ハードコート層
24 プライマー層
図1
図2
図3
図4
図5
図6