【解決手段】フューエルリッド用アクチュエータ100は、車体9に固定されたケース2と、ケース2内に収容されたモータ3と、モータ3の作動によって所定の角度範囲で回転可能なギヤ部材としてのセクタギヤ4と、セクタギヤ4の回転に伴って、ケース2内に引き込まれた引込位置と引込位置から突出した突出位置との間を進退移動可能に配置された移動部材5と、移動部材5とケース2との間に配置されたシール部材7とを備え、ケース2は、移動部材5が挿通される挿通孔220が形成されたガイド部22を有し、ガイド部22によってシール部材7を保持されている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施の形態]
本発明の実施の形態に係るフューエルリッド用アクチュエータの構成及び動作について、
図1乃至
図8を参照して説明する。このフューエルリッド用アクチュエータは、車体9の給油用開口部9aを開閉するフューエルリッド91のロック及びアンロックの切替が可能である。なお、
図1及び
図2では、フューエルリッド用アクチュエータ100を模式化して図示している。
【0012】
図1は、本実施の形態に係るフューエルリッド用アクチュエータ100が搭載された車体の給油用開口部9a及びフューエルリッド91を示す斜視図である。
図2は、フューエルリッド用アクチュエータ100のロック状態におけるフューエルリッド91及びその周辺部の構造を示す断面図である。
【0013】
図1に示すように、フューエルリッド91は、車体9にヒンジ92を介して開閉可能に取り付けられ、車体9に設けられた給油用開口部9aを開閉する。フューエルリッド91の内側に設けられた取付座面910には、フューエルリッド用アクチュエータ100に係合するロック板911が取り付けられている。ロック板911には、後述するフューエルリッド用アクチュエータ100の移動部材5の先端部に係止される凹部911aが形成されている。フューエルリッド91の取付座面910と対向する車体9の対向面9cには、フューエルリッド91を開方向に付勢するオープンスプリング9bが設けられている。
【0014】
図2に示すように、ロック板911は、例えば樹脂からなる部材であり、フューエルリッド91の取付座面910にボルト101によって固定されている。フューエルリッド用アクチュエータ100は、車体9のアウタパネル93よりも内側に設けられたインナパネル94に車体取付部材80を介して固定されている。
【0015】
フューエルリッド91の閉状態においては、フューエルリッド91のロック板911における凹部911aにフューエルリッド用アクチュエータ100の移動部材5の先端部が係止することにより、フューエルリッド91が閉状態でロックされている。そして、フューエルリッド91の開動作においては、例えば運転者が運転席に設けられたリッドオープナーを操作することにより、フューエルリッド用アクチュエータ100が作動して移動部材5がケース2から突出した突出位置Yからケース2に引き込まれた引込位置X(二点鎖線)に移動する。そうすると、フューエルリッド91におけるロック板911の凹部911aから移動部材5の先端部が離脱して、フューエルリッド91がオープンスプリング9bの付勢力を受けて半開する。このように、フューエルリッド91がアンロックされて開状態となる。
【0016】
図3は、フューエルリッド用アクチュエータ100の構成例を示し、(a)はケースにカバーが取り付けられた組付状態を示す平面図であり、(b)はケースからカバーが取り外された状態を示す平面図である。
図4は、
図3(a)に示すフューエルリッド用アクチュエータ100の分解斜視図である。
図5は、移動部材5の構成例を示し、(a)は上面図であり、(b)は平面図である。
【0017】
フューエルリッド用アクチュエータ100は、車体9に固定されたケース2と、ケース2に収容されたモータ3と、モータ3の作動によって所定の角度範囲で回転するギヤ部材としてのセクタギヤ4と、セクタギヤ4の回転に伴って軸方向に進退移動可能に配置された移動部材5と、移動部材5を所定の方向に付勢する弾性部材としてコイルばね6と、ケース2と移動部材5との間に配置されたシール部材7と、ケース2の開口2aを覆うように取り付けられるカバー8と、を有している。
【0018】
ケース2は、モータ3,セクタギヤ4,及び移動部材5を収容するケース本体部21と、ケース本体部21から移動部材5の軸方向に突出して設けられた略円筒状のガイド部22と、を有している。
【0019】
ケース本体部21は、モータ3が収容されるモータ収容部210と、セクタギヤ4が収容されるギヤ収容部211と、移動部材5がスライド可能に収容されるスライド収容部212と、を有している。また、ケース本体部21の上面には、カバー8に設けられた第1乃至第6係止爪8a〜8fに係止される第1乃至第6突起部21a〜21fがそれぞれ形成されている。
【0020】
ケース本体部21のガイド部22が設置される端面には、当該端面から延在して形成された第1及び第2の係止片21g,21hが設けられている。第1及び第2の係止片21g,21hには、リング状に形成された車体取付部材80が取り付けられている。
【0021】
ガイド部22には、軸方向に貫通して移動部材5のロッド部52が挿通される挿通孔220が形成されている。挿通孔220は、ケース2の外部と、ケース2の内部(モータ収容部210、ギヤ収容部211、及びスライド収容部212)とを連通している。また、ガイド部22の挿通孔220には、シール部材7を保持する保持部23(後述する
図6参照)が形成されている。本実施の形態では、シール部材7は環状であり、後述する移動部材5のロッド部52に外嵌されている。
【0022】
セクタギヤ4は、円弧状に形成された扇部41と、ケース2におけるケース本体21に設けられたピン21iに回転可能に連結された回転軸部42と、回転軸部42から扇部41とは反対側に設けられて移動部材5に係合する係合部43とを一体に有している。扇部41の外周には、モータ3の出力軸3aに設けられたウォーム30に噛み合うギヤ部41aが形成されている。
【0023】
移動部材5は、全体として軸状に形成された部材であり、セクタギヤ4の係合部43が係合する係合穴51aが形成された本体部51と、本体部51のケース本体21よりもガイド部22側の軸方向端面51bから本体部51の延伸方向に延びた円柱状のロッド部52とを一体に有している。
【0024】
また、移動部材5は、
図2において説明した通り、ケース2から突出してフューエルリッド91をロックするロック位置としての突出位置と、突出位置から引き込んでフューエルリッド91をアンロックするアンロック位置としての引込位置との間を進退移動可能に配置されている。
【0025】
本体部51の軸方向端面51bとは反対側の先端部には、図略の緊急用レバーのケーブル端部が係止する突起51cが形成されている。移動部材5は、突起51cがケース2の外部に露呈される位置にケース2内に収容されている。これにより、例えばモータ3が故障等により正常に作動しない場合には、運転者等の手動操作によって緊急レバーが引っ張られることにより移動部材5が引込位置に移動して、フューエルリッド91のロックが解除される(
図2参照)。
【0026】
ロッド部52は、その外周面52bが軸方向に亘って凹凸の無い平滑面である。また、ロッド部52の先端には、傾斜した傾斜面52aが形成されている。この傾斜面52aは、フューエルリッド91の閉動作時においてロック板911の先端面911bと摺動する摺動面として形成されている。これにより、フューエルリッド91の閉動作時における、フューエルリッド91のロック板911と移動部材5との衝突が緩和されている。
【0027】
コイルばね6は、その一端6aがケース2におけるケース本体21に設けられた第1ばね連結部21jに連結され、その他端6bが移動部材5に設けられた図略の第2ばね連結部に連結され、引っ張られた状態で配置されている。これにより、移動部材5は、コイルばね6から引込位置から突出位置の方向の付勢力を常時受けている。
【0028】
上記のように構成されたフューエルリッド用アクチュエータ100のアンロック動作の際には、フューエルリッド91の閉状態において、モータ3の作動によってセクタギヤ4が
図3における時計回り方向に回転し、移動部材5がコイルばね6の付勢力に抗して突出位置Yから引込位置Xに向かって移動する(
図2参照)。これにより、移動部材5のロッド部52の先端部がフューエルリッド91のロック板911の凹部911aから離脱してロックが解除される。
【0029】
一方、フューエルリッド用アクチュエータ100のロック動作の際には、フューエルリッド91の閉動作に伴って、フューエルリッド91におけるロック板911の先端面911bと移動部材5のロッド部52の傾斜面52aとが接触して移動部材5が突出位置から引込位置側に押し込まれる。そして、一旦引込位置に移動した移動部材5がコイルばね6の付勢力によって再度突出位置に移動して、ロッド部52の先端がフューエルリッド91のロック板911の凹部911aに係止する。これにより、フューエルリッド91がロックされる。
【0030】
図6は、ケース2のガイド部22の挿通孔220に形成された保持部23の構成を示し、(a)は保持部23をケース本体21内のスライド収容部212側から見た場合の斜視図であり、(b)は移動部材5のロッド部52の中心軸線O方向に沿ってスライド収容部212側から挿通孔220を見た場合の保持部23を示し、(c)は(b)に示す挿通孔220を周方向に切ってシール部材7と共に第1及び第2突出部231,232を模式的に示したA−A線断面図である。
図7は、
図6(b)のB−B線断面図である。
図6(a)及び(c)では、シール部材7を二点鎖線で示す。また、以降の説明では、説明の便宜上、ロッド部52の中心軸線Oに沿った方向を単に軸方向ということにする。
【0031】
図6(a)に示すように、ケース2のガイド部22における挿通孔220には、シール部材7を保持する保持部23として、挿通孔220の内面から突出して形成された第1突出部231と、第1突出部231と軸方向に所定の距離を隔てた位置に配置されて挿通孔220の内面から突出した第2突出部232と、が形成されている。第1突出部231は第2突出部232よりもスライド収容部212から遠い位置に形成され、第1突出部231と第2突出部232との間にシール部材7が配置されている。
【0032】
また、第1及び第2突出部231,232は、挿通孔220の周方向に沿ってそれぞれ複数(本実施の形態では6個)設けられ、それぞれの周方向の位置がずれるように配置されている。なお、本実施の形態では、第1及び第2突出部231,232がそれぞれ6個ずつ形成されているが、少なくとも第1突出部231と第2突出部232との間でシール部材7を軸方向に把持できればよく、例えば、第1及び第2突出部231,232がそれぞれ2個ずつでもよく、あるいは3個ずつでもよい。
【0033】
図6(b)に示すように、第2突出部232のロッド部52の外周面52bと対向する先端面232aは、ロッド部52の外周面52bの曲率に応じて湾曲している。なお、図示は省略しているが、第1突出部231の先端面231a(後述する
図7参照)についても同様である。これにより、移動部材5の軸方向移動に伴う挿通孔220内におけるロッド部52のがたつきが防止されて、移動部材5の軸方向移動が円滑化される。
【0034】
図6(c)に示すように、複数の第1突出部231の軸方向壁面のうち第2突出部232側を指向する複数の壁面231bがシール部材7と接触すると共に、複数の第2突出部232の軸方向壁面のうち第1突出部231側を指向する複数の壁面232bがシール部材7に接触している。これにより、移動部材5の軸方向移動に伴う、シール部材7の挿通孔220における軸方向移動が規制されている。
【0035】
図7に示すように、シール部材7は、ロッド部52の外周面52b、ガイド部22の挿通孔220の内周面220a、第1突出部231の壁面231b、及び第2突出部232の壁面232bにそれぞれ接触して、ガイド部22の挿通孔220内で保持されている。これにより、ケース2におけるガイド部22の挿通孔220からケース2の内部へ浸水することが防止されている。
【0036】
第1及び第2突出部231,232の先端面231a,232aは、ロッド部52の外周面52bと、所定の隙間を介して対向している。この所定の隙間とは、例えばフューエルリッド用アクチュエータ100の組付時において、移動部材5のロッド部52をケース2のガイド部22の挿通孔220に挿通する際に必要最低限の僅かな隙間である。
【0037】
また、第1突出部231及び第2突出部232のそれぞれの先端面231a,232aは、移動部材5の軸方向移動をガイドするガイド面として形成されている。これにより、移動部材5の軸方向移動のがたつきが抑制される。
【0038】
次に、保持部23における第1及び第2突出部231,232の成形方法について
図8を参照して説明する。
図8は、保持部23の第1及び第2突出部231,232の成形するための金型を模式的に示した説明図である。
【0039】
ケース2のガイド部22における挿通孔220は、例えば金型を利用したモールド成形によって成形される。本実施の形態では、金型として第1及び第2の金型11,12を用いた場合の成形方法について説明する。
【0040】
第1の金型11は、円柱部110と、円柱部110の軸方向端面110aにおける外縁から軸方向に立設して、かつ、周方向に所定の間隔で形成された複数の第1柱部112と、複数の第1柱部112よりも径方向の内側で円柱部110よりも小径に形成された円柱状の第1小径部111とを有している。複数の第1柱部112の軸方向長さはそれぞれ均一であり、第1小径部111の軸方向長さよりも大きくなるように形成されている。
【0041】
第2の金型12は、円板部120と、円板部120の第1の金型11側を指向する軸方向端面120aの外縁から軸方向に立設して、かつ、周方向に所定の間隔で形成された複数の第2柱部121と、複数の第2柱部121よりも径方向の内側で円板部120よりも小径に形成された円柱状の第2小径部122と、を有している。第2小径部122及び複数の第2柱部121の円板部120における軸方向端面120aからの軸方向高さはそれぞれ同じであり、第1小径部122の軸方向端面122aと複数の第2柱部121の先端面121aとは面一となっている。
【0042】
上記のように構成された第1及び第2の金型11,12において、
図8(b)に示すように、第1の金型11における第1小径部111の軸方向端面111aと、第2の金型12における第2小径部122の軸方向端面122aとを接触させるように、第1の金型11と第2の金型12とを突き合せる。
【0043】
そうすると、第2の金型12の複数の第2柱部121の先端面121aと第1の金型11における円柱部110の軸方向端面110aとの間に第1隙間13aが形成される。同様に第1の金型11の複数の第1柱部112の先端面112aと第2の金型12における円板部120の軸方向端面120aとの間に第2隙間13bが形成される。そして、第1隙間13aと第2隙間13bに、溶融した高温の溶融樹脂を注入し、注入された溶融樹脂を固化させる。これにより、第1隙間13aに第1突出部231が成形されると共に、第2隙間13bに第2突出部232が成形される。なお、第1金型11の円柱部110と第2金型12の円板部120とで、ガイド部22の挿通孔220が成形される。
【0044】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明した実施の形態によれば、以下に示す作用及び効果が得られる。
【0045】
(1)ケース2は移動部材5が挿通される挿通孔220が形成されたガイド部22を有し、挿通孔220の内面にシール部材7を保持する保持部23が形成されているので、特許文献1に記載のフューエルリッド用アクチュエータのように移動部材にシール部材を配置するための環状溝を設けることなく、移動部材5と挿通孔220との間の摺動部(ロッド部52の外周面52bとケース2における挿通孔220の内周面220aとの間の隙間)を封止することができる。これにより、フューエルリッド91の閉動作時における移動部材5とフューエルリッド91との衝突時における移動部材5の応力集中を回避することができので、フューエルリッド用アクチュエータ100の防水性を確保しつつ、強度を向上させることが可能である。
【0046】
(2)移動部材5におけるロッド部52の外周面52bと接触する第1突出部231及び第2突出部232のそれぞれの先端面231a,232aが移動部材5の軸方向移動をガイドするガイド面として形成されている。これにより、移動部材5の軸方向移動のがたつきが抑制される。
【0047】
(3)第1突出部231及び第2突出部232が周方向に沿ってそれぞれ複数設けられ、周方向に互い違いに配置される。このように構成された第1突出部231及び第2突出部232は、上述したように、ケース2を製造する際に第1及び第2の金型11,12を使ったモールド成形により一括で成形することができる。つまり、例えばシール部材7を保持する保持部23としてガイド部22における挿通孔220の内周面220aに凹溝を成形し、そこにシール部材を配置することが考えられるが、この場合には挿通孔220内の比較的狭い空間で切削加工等をする必要があるため、加工の手間がかかる。本実施の形態によれば、シール部材7を保持する保持部23をモールド成形等で一括成形することができるので、製造が容易である。
【0048】
以上、本発明について実施の形態に基づいて説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【0049】
上記実施の形態では、シール部材7を保持する保持部23が第1及び第2突出部231,232を有している場合についてのみ説明したが、これに限定されず例えば挿通孔220の内周面220aに凹溝であってもよい。この場合には、シール部材7が当該凹溝に嵌着する。
【0050】
また、上記実施の形態では、第1及び第2突出部231,232の周方向における位置が互い違いの場合についてのみ説明したが、これは本発明における必須の構成要素ではなく、例えば第1及び第2突出部231,232における周方向の位置がずれていなくてもよい。