【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、第1発明は、利用者の頭部に装着されて主に目に対する補助を行なう視覚補助器において少なくとも利用者が目視確認できる移動方向を示す表示部を備え、かつ、目的地を設定する目的地設定手段と、現在地の位置情報を入力する現在地入力手段と、この現在地入力手段によって順次入力される現在地から前記設定された目的地までの移動ルートを検索するルート検索手段と、検索されたルートに従って前記表示部に移動方向を表示させる表示処理手段とを備えることを特徴とする装着型ナビゲーションシステムを提供する(請求項1)。
【0011】
本発明の装着型ナビゲーションシステムによれば、利用者が目的地設定手段を用いて目的地を設定して、視覚補助器を頭部に装着することにより、現在地入力手段が利用者の現在地の位置情報を入力し、ルート検索手段が現在地から目的地までの移動ルートを検索し、表示処理部が検索されたルートに従って表示部に移動方向を表示させる。したがって、利用者は視覚補助器の表示部に表示される移動方向を周囲の安全と共に確認し、この移動方向に移動するときに、いずれは目的地に到着することができる。
【0012】
視覚補助器は利用者の頭部に装着されることにより、利用者の目に対して保護や視覚矯正などの補助機能を有するメガネ、サングラス、ゴーグル、ウェアラブル端末を含むものであり、前記表示部を備えることにより、利用者が目視確認可能な歩行時の移動方向を表示させることができる。表示部は光学素子を用いて利用者の目前に半透明の映像を表示させる小型モニタであることが好ましいが、利用者が視覚補助器をかけた状態で点灯状態を確認できる程度の左右の位置に設けた発光ダイオードのようなものであってもよい。また、表示部は利用者のみならず、周囲に対して方向指示器のごとく例えばオレンジ色の発光ダイオードによって現在案内中の移動方向を示すものであってもよい。この場合、利用者の移動方向指示を周囲の人に対して示すことができるので、急な方向転換による衝突などの発生を防止できる。
【0013】
目的地設定手段は利用者の音声による入力を行なうマイクなどの音声入力部と、入力した音声情報を文字情報に変換する音声認識プログラムと、音声認識した情報を用いて目的地リストを作成するリスト作成プログラムと、リストの中から目的地を選択する入力キーなどの目的地選択部とを備えるものであることが考えられる。しかしながら、近距離通信するキーボードなどの入力部を備えるものであっても、目的地を示す座標情報や位置情報を特定するコードを他の情報端末からの通信によって入力して設定するものであってもよい。
【0014】
前記現在地入力手段は少なくともGPS(米国によって運用される衛星測位システム:Global Positioning Systemであり、他にも、GLONASS、ガリレオ、北都、IRNSSなどの位置情報を発信するシステムであってもよい)の人工衛星およびIMES(屋内の測位システム:Indoor MEssaging System)の端末との通信により現在地の座標情報や移動方向などの情報を入力可能とする位置情報受信部であることが考えられ、複数の方法で受信した位置情報を用いて補完することにより、精度を向上させるものであっても、無線LANの電波を用いて精度を向上させるものであっても、ジャイロセンサを用いて位置情報の変化量やカメラを用いて撮像した画像の変化と比較して、より精度の高い補正を行なうものであってもよい。
【0015】
ルート検索手段は少なくとも歩行によって通行可能な建造物内のルートも含む移動ルートを記録してなる歩行者用地図情報を用いて、前記目的地までの移動ルートを検索するものであり、例えば、最短ルート、上下方向の変動が少ないルート、道幅を含む歩行しやすさで選ばれるルートなどの複数のルート検索をして利用者が表示部などを用いて選択できるようにすることが考えられる。
【0016】
前記目的地設定手段、現在地入力手段、ルート検索手段、表示処理手段は視覚補助器に設けた演算処理部によって実行されるプログラムによって実現されるものが考えられる。しかしながら、目的地設定手段、現在地入力手段、ルート検索手段、表示処理手段のうち少なくとも一つを、視覚補助器と近距離無線通信によって接続される移動端末の演算処理部によって実行されるプログラムによって実現されるようにしてもよい。
【0017】
前記構成の装着型ナビゲーションシステムでは、表示部を介して移動方向が利用者に示されるので、利用者は歩行時に携帯端末を見つめることなく進行方向を確認することができる。ここで、現在地入力手段から入力される位置情報には幾らかの誤差が含まれていることが考えられ、とりわけ起動時には正確な現在地が明確ではなく、表示部に表示される移動方向の指示も不安定になることが考えられるが、利用者が移動することによって徐々に正確な現在地が測位できるため、表示部の表示も次第に安定する。ここで利用者が従来のように携帯端末の画面を見つめて立ち止まったり、進行方向を確認することなく方向転換することがなくなるため、安全性が向上する。
【0018】
前記ルート検索手段がルート上にある段差、スロープ、歩道の道幅、視覚障害者誘導用ブロックの有無のうち少なくとも一つを含むルート情報を有する歩行者用地図情報と、利用者の特性としての許容段差、車椅子または歩行補助器の大きさ、視覚障害の有無のうち少なくとも一つを含む利用者特性情報とを用いて、移動ルートを検索するものである場合(請求項2)には、利用者の特性に合わせたルート検索を行なうことができるので、検索されたルートが利用者にとって通行不能となることがなく、有用である。
【0019】
例えば利用者特性情報としてシニアカーを含む車椅子の利用者が設定されている場合や歩行補助器としての手押し車のようなものを用いている場合には、ルート検索手段は、段差がなくスロープのあるルートで、かつ、道幅がシニアカーを含む車椅子や歩行補助器の幅よりも広いルートだけを選択的に検索する。同様に、利用者特性情報として視覚障害者が設定されている場合には、ルート検索手段は、視覚障害者誘導用ブロックのあるルートが優先的に検索する。
【0020】
歩行者用地図情報には、段差、スロープ、歩道の道幅、視覚障害者誘導用ブロックの有無のうち少なくとも一つを含むルート情報が含まれており、利用者の条件にしたがって歩行者が通行可能であるルートを示すものであり、徒歩で利用可能なあらゆるルートが記録されていることが好ましい。なお、本発明における歩行者とは、できる限り簡素な補助具を用いて低速移動する利用者の総称として用いており、脚を地に付けて利用者の脚によって移動する場合のみならず、脚の機能低下を補助するためにシニアカーや車椅子の助けを得て低速移動する場合も含む表現である。
【0021】
前記歩行者用地図情報および利用者特性情報は、前記視覚補助器に近距離通信によって接続される移動端末の記憶部に記録し、前記目的地設定手段、現在地入力手段、ルート検索手段、表示処理手段は前記移動端末の演算処理部によって実行されるソフトウエアの実行によって実現されるものである場合(請求項3)には、視覚補助器の構成を簡素化することができるので、それだけ視覚補助器の軽量化を図ることができる。また、移動端末の情報処理能力は劇的に向上しているため、歩行者用地図情報や利用者特性情報を十分に記憶できる記憶部を備え、かつ、目的地の設定、位置情報の入力、ルートの検索、および、誘導表示内容の生成に関する情報処理を十分に高速に行なうことができる。
【0022】
なお、移動端末とは携帯電話型の情報処理端末(所謂スマートホン)、タブレット型情報処理端末(所謂タブレットPC)、および、ノートブック型を含むモバイルPCを含むものであり、前記近距離通信は電磁波を用いる無線通信であることにより自由度が増して好ましいが、通信ケーブルを用いた接続によって実現される近距離通信であってもよい。
【0023】
前記歩行者用地図情報はインターネット上の装着型ナビゲーションサービス提供サーバの記録部に記録し、前記目的地設定手段、現在地入力手段、ルート検索手段、表示処理手段は前記視覚補助器に近距離通信によって接続され、無線通信によってインターネットに接続される移動端末の演算処理部によって実行されるソフトウエアの実行によって実現されるものである場合(請求項4)には、視覚補助器の構成を簡素化することができるので、それだけ軽量化を図ることができる。
【0024】
歩行者用地図情報は装着型ナビゲーションサービス提供サーバの記録部に記録されているので、歩行者用地図情報を定期的に更新して最新の状態に保つことにより、利用者は常に最新の歩行者用地図情報を用いてルート検索をして、目的地まで案内させることができる。前記目的地設定手段、現在地入力手段、ルート検索手段、表示処理手段は前記視覚補助器との近距離無線通信によって接続されると共に前記インターネットを介する無線通信により装着型ナビゲーションサービス提供サーバに接続される移動端末の演算処理部によって実行されるプログラムによって実現されるものであるから、十分に高速にルート検索を行なって利用者に移動方向を示すことができる。
【0025】
頭部の骨に振動を伝達することにより、利用者に音声メッセージを伝達可能とする骨伝導スピーカを備える場合(請求項5)には、周囲の騒音が大きい場合であっても利用者は音声メッセージによる移動方向の案内を周囲の人々に気づかれることなく受けることができる。したがって、利用者が視覚障害者であっても目的地までの案内を受けることができる。なお、この音声メッセージを骨伝導を用いないスピーカによって発音させることも容易に考えることができる。
【0026】
前記視覚補助器に設けて少なくとも前方を撮像するカメラと、このカメラによって撮像した映像を解析して利用者の安全を確認する安全確認手段と、この安全確認手段が危険を検知するときに利用者に危険を通知する危険通知手段とを備える場合(請求項6)には、安全確認手段がカメラで撮像した映像を用いて利用者の安全を確認し、危険通知手段が危険を検知するときに利用者に対して危険を通知するので、利用者は迫る危険に可能な限り早く気づくことができ、危険を回避することができる。
【0027】
カメラは例えば視覚補助器の前面中央部に設けて利用者が目視確認できる範囲の映像を撮像するものであることが考えられ、これによって利用者が目視確認できる映像の見落としているかもしれない危険に注意を喚起できる。例えば、向かう方向の信号が赤信号である、車が接近中である、案内ルート上に段差がある等の危険を検知する場合に、これらを危険予知状態として通知することができる。なお、通知は例えば「信号が赤です」、「車が来ています」、「○m先階段」、「○階で降車」等の文字を表示部に表示させることが考えられるが、音声による通知を行なってもよい。とりわけ、利用者が視覚障害を持つ場合に、移動に伴う危険をカメラで確認して危険予知を行えるので、視覚障害者の移動時の安全性の向上に貢献できる。
【0028】
また、カメラで撮像した映像を用いて視覚補助器の姿勢を解析することにより利用者の視線方向を確認する視線方向確認手段を設けても良く、これにより、前記表示処理手段は視線方向に対する移動方向の表示位置を求めることにより利用者の視線に対するルートを利用者が見ているであろう映像に対して矢印などを用いて正確に表示させることも可能である。
【0029】
前記視覚補助器は頭部に接触することにより血圧、脈拍数、呼吸速度、体温のうち少なくとも一つからなるバイタル値を測定するバイタル測定部を備え、かつ、このバイタル測定部によって測定されたバイタル値を用いて利用者の健康状態を確認する健康状態確認手段と、この健康状態確認手段が利用者の健康状態の悪化を検知するときに周囲に音声による支援要求通知をする支援要求通知手段とを備える場合(請求項7)には、バイタル測定部が利用者の健康状態の悪化を示すバイタル値を測定するときに健康状態確認手段が健康状態の悪化を検知して支援要求通知手段が周囲に支援要求通知をする。
【0030】
バイタル測定部は例えば視覚補助器が利用者の頭部に接触する部分に設けた、温度センサ、光センサ、圧力センサ、電極などを用いて測定される各物理量を用いて、血圧、脈拍数、呼吸速度、体温のうち少なくとも一つからなるバイタル値を測定するものであり、健康状態確認手段は前記バイタル値のうち、例えば収縮期血圧が60mmHg 未満、1分間の脈拍が40回未満または測定不能の頻脈、1分以上無呼吸、35度以下または42度以上の体温などを検知するときに、これを健康状態の悪化として検知することができる。
【0031】
前記支援要求通知手段は例えば外部に対して音声を再生するスピーカとその駆動回路が考えられ、例えば、「助けてください」と発音するものであることが考えられる。なお、支援要求通知手段として例えば赤色の点滅光による異常発生の通知をすることも考えられる。さらに、前記バイタル測定部が健康状態の悪化に至らないまでも、履歴に残っている通常のバイタル値から外れる場合に、利用者本人に対して健康状態の変化を表示部への表示や音声によって通知して注意を促すことも考えられる。これにより、利用者の高齢化に伴って本人が気付かない体調の変化にできるだけ早く気付いて、大事に至らないように策を講じることができる。
【0032】
インターネットに接続されて登録された利用者からの現在地情報を収集すると共に登録された受信者に少なくとも利用者の現在地の位置情報を通知する機能を有する利用者異常通知サーバを備える一方、前記健康状態確認手段が利用者の健康状態の悪化を検知するときにインターネットを介して利用者異常通知サーバに健康状態が悪化した利用者の現在地の位置情報を通知する異常通知手段を備える場合(請求項8)には、異常通知手段が利用者の健康状態の悪化を検知するときに利用者異常通知サーバに現在地の位置情報を通知し、利用者異常通知サーバが各利用者からの通知を受信するときに登録された受信者に利用者の現在地の位置情報を通知するので、登録された受信者は利用者の窮状を速やかに確認して現場に赴くなどの救助行動をとることができる。
【0033】
なお、異常通知手段は健康状態が悪化した利用者の現在地情報のみならず、バイタル値を利用者異常通知サーバに転送し、利用者異常通知サーバは現在地の位置情報のみならずバイタル値を登録された受信者に通知するものであることにより、受信者は通知を受信したときに利用者の健康状態をある程度確認できるので好ましい。また、前記通知は電子メールやソーシャルネットワーキングサービスを用いて通知するものであることが考えられる。さらに、前記異常通知手段は災害時にはバイタル値が正常の範囲内であっても利用者によるキー入力などの手動操作によって現在位置の通知およびバイタル値の通知を行なうように構成されていることが好ましい。
【0034】
さらに、前記受信者には現在地の近辺で検索させて得られた最寄りの医療機関や主治医などの医療機関および救急医療センタが含まれていることが好ましいことは言うまでもない。
【発明の効果】
【0035】
前述したように、本発明によれば、利用者の目に対して保護や視覚矯正などの補助機能を有するメガネ、サングラス、ゴーグル、ウェアラブル端末を含む視覚補助器に、目的地までの移動ルートを案内する移動方向が表示されるので、利用者は視覚補助器を頭部に装着することにより、情報端末を移動しながら操作したり、その画面を確認することなく、目的地まで道案内を受けることができるので、安全に目的地まで移動することができる。
【0036】
ルート検索手段に利用者の特性を設定し、歩行者用地図情報を用いて利用者が通行可能な移動ルートが検索されることにより、利用者は安全かつ確実に目的地にたどり着くことができる。装着型ナビゲーションシステムの構成の一部を視覚補助器と近距離通信によって接続された移動端末に設けることにより、視覚補助器の構成を簡素化して軽量化を図ることができる。
【0037】
骨伝導スピーカを備える場合には利用者は周囲に音を漏らすことなく音声メッセージによるルート案内を受けることができ、とりわけ視覚障害者にとって音声案内を受けることにより土地勘のない場所でも移動できるので有用である。さらに、視覚補助器にカメラを備えて危険を検知するときに危険を通知する機能を備えることにより、利用者の移動時の安全性向上に貢献できる。
【0038】
さらに、視覚補助器がバイタル測定部を備える場合には、健康状態が悪化した利用者の支援要求を周囲の人に通知することにより、利用者の突然の体調不調に対応することができるので、とりわけ、健康面で問題を抱える高齢者や身体障碍者にとって有用である。
【0039】
また、インターネットに接続された利用者異常通知サーバを用いることにより、離れた地点にいる登録された受信者に利用者の健康状態の悪化を瞬時に知らせることができ、迅速な対応を取ることができるので有用である。
【0040】
インターネットに接続されて登録された複数の利用者からの現在地の位置情報を収集すると共に一人の利用者の現在地の位置情報を友人関係が登録された別の利用者に通知する機能を有する相互位置検索サーバを備える一方、前記表示処理手段が相互位置検索サーバから受信する友人の現在地の位置情報を利用者自身の現在地の位置情報と比較して現在の方向から見た友人の現在地を表示する友人位置表示機能を有する場合(請求項9)には、利用者は自分から見た友人の現在地の方向をリアルタイムで確認し、戸外で友人に容易に会うことができる。なお、友人のいる方向は水平方向のみならず、高さ方向も表示することが好ましく、相互位置検索サーバは高速移動する利用者を検知したときには事故防止のために移動方向と移動速度を影響するすべての利用者に配信することが好ましい。