【実施例2】
【0016】
(比色法によるタンパク質含量及びウロン酸含量の測定)
実施例1で得られた低分子化プロテオグリカンのタンパク質含量を、比色法であるローリー法にて、牛血清アルブミン(アクロス社製)を標準物質とした検量線から求めたところ、3.2重量%であった。ウロン酸含量を、比色法であるカルバゾール硫酸法にて、グルクロン酸(シグマ社製)を標準物質とした検量線から求めたところ、29.1重量%であった。原料プロテオグリカン(市販の鮭由来プロテオグリカン)について同様に分析したところ、タンパク質含量は5.8重量%、ウロン酸含量は30.7重量%であった。
【0017】
(熱分析装置による水分量の測定)
実施例1で得られた低分子化プロテオグリカンの水分含量は、熱分析装置(Thermo Plus TG8210、リガク社製)にて、120℃で試料重量が恒量となるまで加熱し、重量減少分を試料に含まれていた水分とした。その結果、実施例1で得られた低分子化プロテオグリカンの水分含量は12.2±2.3重量%であった。同様に、原料プロテオグリカン(市販の鮭由来プロテオグリカン)の水分含量について分析したところ、14.2±1.7重量%であった。
【0018】
(オストワルド粘度計による粘度の測定)
実施例1で得られた低分子化プロテオグリカンについて、熱分析で得られた水分含量をもとに、乾燥重量に換算して30mgになるように秤量し、6mLの脱イオン水を加え、低温室(4℃)で一昼夜静置した(5mg/mL)。この溶液から5mL(含む25mgの低分子化プロテオグリカン)を量りとり、30℃の恒温槽の中で、オストワルド粘度計(粘度計No.1、毛細管内径0.5mm、柴田科学製)を用いて毛細管の落下時間(秒)を計測した。同じ溶液による測定を7回繰り返し、最小値と最大値を除く5回の測定値を平均した。溶媒として脱イオン水の落下時間を測定した。その結果、実施例1で得られた低分子化プロテオグリカンの落下時間は118.88±0.09秒であった。このとき、同じ条件で測定した脱イオン水の落下時間は60.54±0.06秒であった。原料プロテオグリカン(市販の鮭由来プロテオグリカン)について、同じ条件で落下時間を測定したところ、281.51±0.30秒であった。
【0019】
(低分子化プロテオグリカン溶液の密度の測定)
風袋を計量した台付きメスフラスコ(2mL、岩城硝子製)に、粘度測定で用いた溶液2mL(含む10mgの実施例1で得られた低分子化プロテオグリカン)を加えた重量を計量し、風袋を差し引いた数値から密度(g/cm
3)を求めた。同じ操作を3回繰り返して平均値を求めた。溶媒として脱イオン水の密度を測定した。その結果、実施例1で得られた低分子化プロテオグリカン溶液の密度は、0.98993±0.01004g/cm
3であった。同じ条件下で測定した脱イオン水の密度は、0.98637±0.00321g/cm
3であった。原料プロテオグリカン(市販の鮭由来プロテオグリカン)についても、同じ条件で粘度を測定した溶液の密度を測定した結果、0.98928±0.00392g/cm
3であった。
【0020】
(低分子化プロテオグリカン溶液の相対粘度)
オストワルド粘度計の測定値と密度の測定値から、溶液の落下時間(秒)と溶液の密度(g/cm
3)の積を、溶媒の落下時間(秒)と溶媒の密度(g/cm
3)の積で割った値を相対粘度として算出した。実施例1で得られた低分子化プロテオグリカンの30℃における相対粘度は、脱イオン水を1としたとき1.97であった。同じ条件で測定した原料プロテオグリカン(市販の鮭由来プロテオグリカン)の相対粘度は4.66であった。
【0021】
(低分子化プロテオグリカンの紫外可視吸収スペクトル)
実施例1で得られた低分子化プロテオグリカン溶液について、紫外可視吸収スペクトルを測定して、濃度当たりの吸光係数を求めた。紫外可視吸収スペクトルは、U−3010分光光度計(日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、400nm〜200nmの測定範囲における吸光度を測定した。分解能は0.5nm、セル長は10mmであった。
図3は、実施例1で得られた低分子化プロテオグリカンを、1(w/v)%、0.5(w/v)%、0.25(w/v)%及び0.125%(w/v)になるように、脱イオン水で調製した溶液の紫外可視吸収スペクトルである。
図3のグラフの横軸は波長(nm)を表し、縦軸は吸光度を表す。
図3のグラフにおいて、すべての濃度の溶液で275nmに極大吸収が見られた。このとき、吸光度(A)と濃度(C)は、「吸光度(A)=吸光係数(a)×濃度(%)」の関係式が成り立つ(ランベルト―ベールの法則)。実施例1で得られた低分子化プロテオグリカンでは、極大吸収275nmにおける1(w/v)%あたりの吸光係数は0.091であった。
図4には、比較として原料プロテオグリカン(市販の鮭由来プロテオグリカン)について、同じ条件で測定した紫外可視吸収スペクトルを示した。原料プロテオグリカンは、同様に275nmに極大吸収が見られ、1(w/v)%あたりの吸光係数は0.36であった。
【0022】
(低分子化プロテオグリカンの赤外吸収スペクトル)
実施例1で得られた低分子化プロテオグリカンの赤外吸収スペクトルをKBrディスク透過法で測定した。赤外吸収スペクトルは、フーリエ変換赤外分光光度計(FT/IR−420、日本分光製)を用いて、測定範囲4000〜400cm
−1、分解能4cm
−1、積算回数65、スキャンスピード2mm/秒の条件で測定した。
図5のグラフの横軸は波数(cm
−1)を表し、縦軸は透過率(%T)を表す。
図5のグラフにおいて、谷となっている部分が吸収ピークであり、吸収ピークに記載された数字1〜7は、
図5の右の表の「No.」に対応する。表中の波数(cm
−1)は、数字1〜7の各吸収ピークの波数(cm
−1)を表す。
図5より、実施例1で得られた低分子化プロテオグリカンは、波数3423cm
−1、1736cm
−1、1638cm
−1、1560cm
−1、1378cm
−1、1229cm
−1、および1072cm
−1全てに吸収ピークを有する。低分子化プロテオグリカンは、1736cm
−1に吸収ピークを有し、1420cm
−1付近に吸収ピークが見られないことが特徴である。
図6には、比較として原料の鮭由来プロテオグリカンについて、同じ条件で測定した赤外吸収スペクトルを示した。原料プロテオグリカンは、波数3398cm
−1、1638cm
−1、1421cm
−1、1384cm
−1、1231cm
−1、および1068cm
−1全てに吸収ピークを有した。本発明の低分子化プロテオグリカンは、原料として用いた市販の鮭由来プロテオグリカンが有する1421cm
−1に吸収ピークを有せず、原料プロテオグリカンが有しない1735cm
−1付近に吸収ピークを有していた。
【0023】
(低分子化プロテオグリカンの核磁気共鳴スペクトル)
実施例1で得られた低分子化プロテオグリカンについて、重水中におけるプロトン核磁気共鳴(
1H−NMR)スペクトルを測定した。
1H−NMRスペクトルの測定は、JNM−EX270(日本電子製)を用いた。最初に、10.4mgの低分子化プロテオグリカンを2mLの重水(D2O、99%)に溶解し、37℃の恒温槽で24時間振とうして重水置換を行った。溶液を凍結乾燥した後、同じ操作を繰り返した。2回目の凍結乾燥後、0.75mLの重水(D
2O、99.9%)に溶解し、石英綿を通して直径が5mmの試料管に導入した。内部標準として、少量のアセトンを加えた。測定は70℃で行った。最初に標準測定を行った。内部標準として加えたアセトンの化学シフトを2.22ppmとしたとき、水に由来するシグナルが4.33ppmに見られたことから、このシグナルを選択し、対応する周波数を照射しながらデカップリング測定を行った。測定温度は70℃に設定した。
図7は、実施例1で得られた低分子化プロテオグリカンの重水溶液の
1H−NMRである。グラフの横軸は化学シフト(ppm)、縦軸は相対強度を表している。実施例1で得られた低分子化プロテオグリカンの
1H−NMRでは、2.02ppmと、3.39ppmから4.74ppmにシグナルが観測された。
図8には、比較として原料プロテオグリカン(市販の鮭由来プロテオグリカン)について、同じ条件で測定した
1H−NMRを示した。原料プロテオグリカンは、1.90ppmおよび2.02ppmと、3.38ppmから4.74ppmにシグナルが観測された。
【実施例3】
【0024】
(低分子化プロテオグリカンのコラーゲンゲル収縮促進効果)
線維芽細胞を包埋したコラーゲンゲルの収縮率を本発明の低分子化プロテオグリカンの添加時と非添加時で比較し、コラーゲンゲル収縮促進作用を評価した。氷冷下で、コラーゲンI−PC溶液(高研製、終濃度1mg/mL)に、DMEM培地で調製した正常ヒト皮膚線維芽細胞の細胞懸濁液1.0×10
5cells/mL(終濃度)を泡立てないように穏やかに混合した後、24ウェルプレートの各ウェルに0.8mLずつ注入し、直ちに37℃でゲル化させた。その後、実施例1で得られた低分子化プロテオグリカン及び比較とした原料プロテオグリカン(市販の鮭由来プロテオグリカン)について、各プロテオグリカン(添加濃度200μg/mL)を含有するDMEM培地を加え、ウェル壁面からゲルを剥離しコラーゲンゲル収縮を行った。48時間培養後、コラーゲンゲルの写真を撮影し、画像解析ソフトImageJによって画像解析してサンプル添加培養後のコラーゲンゲルの面積を測定した。ゲルの収縮状態を撮影した画像を
図9に示す。ダネット(Dunnett)の検定により5%及び1%有意水準で各サンプルのゲル収縮率を比較した。
【0025】
コラーゲンゲルの収縮率は次式により算出した。
ゲル収縮率(%)=100−サンプル添加48時間培養後のゲル面積/サンプル添加前のゲル面積×100
サンプル添加前のコラーゲンゲル面積を1.9cm
2(ウェル底の直径:15.6mm)とした。
【0026】
図9で明らかなように、低分子化プロテオグリカンはコラーゲンゲルを収縮した。ImageJによって画像解析してコラーゲンゲルの面積を定量した結果を
図10に示す。無添加コントロール群の収縮率は43.79±3.06%、原料プロテオグリカンの収縮率は50.51±3.51%、低分子化プロテオグリカンの収縮率は63.07±1.84%であり、低分子化プロテオグリカンに有意なコラーゲンゲル収縮効果が認められた。したがって、原料プロテオグリカン以上に低分子化プロテオグリカンには皮膚のシワやタルミを予防し、改善する効果が認められ、化粧品の成分として好適である。