【解決手段】本発明の中空成形用ポリプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン共重合体とエチレン・プロピレン共重合体とを含むポリプロピレン系樹脂を含有し、メルトフローレートが0.1〜5.0g/10分であり、前記ポリプロピレン系樹脂は、キシレン可溶分の極限粘度が0.7〜2.0dl/g、キシレン不溶分の質量平均分子量M
)が6以上、前記エチレン・プロピレン共重合体の含有割合が23〜35質量%であり、前記プロピレン共重合体は、エチレン単位0.5〜4.0質量%とプロピレン単位95.0〜99.5質量%とを含み、前記エチレン・プロピレン共重合体は、エチレン単位60〜85質量%とプロピレン単位15〜40質量%とを含む。
プロピレン共重合体からなるマトリックスとエチレン・プロピレン共重合体とを含むポリプロピレン系樹脂を含有し、JIS K7210に従い、温度230℃、荷重21.18Nの条件で測定したメルトフローレートが0.1〜5.0g/10分であり、
前記ポリプロピレン系樹脂は、キシレン可溶分の、135℃のテトラヒドロナフタレン中での極限粘度が0.7〜2.0dl/g、キシレン不溶分の質量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比率(Mw/Mn)が6以上であり、前記エチレン・プロピレン共重合体の含有割合が23〜35質量%であり、
前記プロピレン共重合体は、エチレン単位0.5〜4.0質量%とプロピレン単位96.0〜99.5質量%とを含み、
前記エチレン・プロピレン共重合体は、エチレン単位60〜85質量%とプロピレン単位15〜40質量%とを含む、中空成形用ポリプロピレン系樹脂組成物。
前記ポリプロピレン系樹脂は、プロピレン共重合体の存在下、エチレン単量体及びプロピレン単量体が重合した重合混合物である、請求項1に記載の中空成形用ポリプロピレン系樹脂組成物。
造核剤を、前記ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して0質量部超1.0質量部以下の範囲で含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の中空成形用ポリプロピレン系樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<ポリプロピレン系樹脂組成物>
本発明の一態様の中空成形用ポリプロピレン系樹脂組成物(以下、「ポリプロピレン系樹脂組成物」と略す。)は、ポリプロピレン系樹脂を含有する。
該ポリプロピレン系樹脂組成物は、メルトフローレート(以下、「MFR」という。)が0.1〜5.0g/10分であり、0.5〜3.0g/10分であることが好ましい。ここで、MFRは、JIS K7210に従い、温度230℃、荷重21.18Nの条件で測定した値である。
ポリプロピレン系樹脂組成物のMFRが前記下限値未満であると、成形時の流動性が低すぎて成形品が得られないことがある。ポリプロピレン系樹脂組成物のMFRが前記上限値を超えると、耐衝撃性及び耐ドローダウン性が低くなることがある。
【0008】
(ポリプロピレン系樹脂)
ポリプロピレン系樹脂は、プロピレン共重合体からなるマトリックスとゴム成分を主体としたエチレン・プロピレン共重合体とを含有する。
ポリプロピレン系樹脂は、プロピレン共重合体とエチレン・プロピレン共重合体とが重合時に混合された混合樹脂であってもよいし、別々に得られたプロピレン共重合体とエチレン・プロピレン共重合体とが溶融混練によって混合された混合樹脂であってもよい。物性バランスに優れるものがより安価で得られることから、プロピレン共重合体とエチレン・プロピレン共重合体とが重合時に混合された混合物(重合混合物)であることが好ましい。
重合によってプロピレン共重合体とエチレン・プロピレン共重合体とが混合された重合混合物は、重合段階でプロピレン共重合体とエチレン・プロピレン共重合体とがサブミクロンオーダーで混じり合う。そのため、重合によってプロピレン共重合体とエチレン・プロピレン共重合体とが混合された重合混合物をベースとした組成物は、優れた物性バランスを示す。
一方、プロピレン共重合体とエチレン・プロピレン共重合体とを溶融混練して得た単なる機械混合物で同様な優れた物性バランスを得る場合には、製造コストが高くなるという問題を含んでいる。
なお、前記重合混合物と機械混合物とは異なる物性を示すのは、プロピレン共重合体中のエチレン・プロピレン共重合体の分散状態が異なっているためと推測されるが、エチレン・プロピレン共重合体のプロピレン共重合体との界面の状態を含めた分子レベルでの分散状態を分析する現実的手段は現状知られていない。
【0009】
プロピレン共重合体とエチレン・プロピレン共重合体とが重合時に混合されたポリプロピレン系樹脂は、多段重合により製造することができる。例えば、1段目の重合反応器にて、触媒存在下、エチレンモノマーとプロピレンモノマーを重合し、得られたプロピレン共重合体を2段目の重合反応器に供給すると共に2段目の重合反応器にてエチレンモノマーとプロピレンモノマーとを共重合することでポリプロピレン系樹脂を得ることができる。この方法では、2段目の重合反応器にて、プロピレン共重合体存在下、エチレン・プロピレン共重合体を生成させながら、その生成するエチレン・プロピレン共重合体とプロピレン共重合体とを混合する。
プロピレン共重合体の存在下でエチレン・プロピレン共重合体を生成させることにより、生産性が高くなる上に、プロピレン共重合体中のエチレン・プロピレン共重合体の分散性が高くなるため、物性バランスが向上する。
また、多段重合は上記の方法に限らず、プロピレン共重合体を複数の重合反応器にて重合してもよいし、エチレン・プロピレン共重合体を複数の重合反応器にて重合してもよい。また、ポリプロピレン系樹脂を得る方法として、モノマー濃度や重合条件の勾配を有する重合器を用いて行う方法が挙げられる。このような重合器では、例えば、少なくとも2つの重合領域が接合されたものを使用し、気相重合でモノマーを重合することができる。
具体的には、触媒の存在下、上昇管からなる重合領域にてモノマーを供給して重合し、上昇管に接続された下降管にてモノマーを供給して重合し、上昇管と下降管とを循環しながら、ポリマー生成物を回収する。この方法では、上昇管中に存在する気体混合物が下降管に入るのを全面的または部分的に防止する手段を備える。また、上昇管中に存在する気体混合物とは異なる組成を有する気体および/または液体混合物を下降管中に導入する。この重合方法は、例えば、特表2002−520426号公報に記載された方法を適用することができる。
また、重合の際には、公知のプロピレン重合用触媒が使用され、また、必要に応じて、分子量の調整のために、水素が添加されてもよい。
【0010】
前記重合混合物を得る際の重合では、立体特異性チーグラー・ナッタ触媒を用いることが好ましい。さらに、前記触媒は、(A)マグネシウム、チタン、ハロゲン及び電子供与体化合物を含有する固体触媒成分;(B)有機アルミニウム化合物;(C)外部電子供与体化合物を含むものがより好ましい。
なお、触媒の種類に応じて、得られる重合体の性状が異なるが、性状の違いの全てを分析する現実的な手段は知られていない。
【0011】
固体触媒成分(A)の調製に用いられるチタン化合物として、一般式:Ti(OR)
gX
4−g(Rは炭化水素基、Xはハロゲン、0≦g≦4)で表される4価のチタン化合物が好適である。炭化水素基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル等が挙げられ、ハロゲンとしては、Cl、Br等が挙げられる。
より具体的なチタン化合物としては、TiCl
4、TiBr
4、TiI
4などのテトラハロゲン化チタン;Ti(OCH
3)Cl
3、Ti(OC
2H
5)Cl
3、Ti(O
n−C
4H
9)Cl
3、Ti(OC
2H
5)Br
3、Ti(O−isoC
4H
9)Br
3などのトリハロゲン化アルコキシチタン;Ti(OCH
3)
2Cl
2、Ti(OC
2H
5)
2Cl
2、Ti(O
n−C
4H
9)
2Cl
2、Ti(OC
2H
5)
2Br
2などのジハロゲン化アルコキシチタン;Ti(OCH
3)
3Cl、Ti(OC
2H
5)
3Cl、Ti(O
n−C
4H
9)
3Cl、Ti(OC
2H
5)
3Brなどのモノハロゲン化トリアルコキシチタン;Ti(OCH
3)
4、Ti(OC
2H
5)
4、Ti(O
n−C
4H
9)
4などのテトラアルコキシチタンなどが挙げられる。これらチタン化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記チタン化合物の中で好ましいものはハロゲン含有チタン化合物、とくにテトラハロゲン化チタンであり、特に好ましいものは、四塩化チタン(TiCl
4)である。
【0012】
固体触媒成分(A)の調製に用いられるマグネシウム化合物として、マグネシウム・炭素結合やマグネシウム・水素結合を有するマグネシウム化合物、例えばジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジプロピルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ジアミルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ジデシルマグネシウム、エチル塩化マグネシウム、プロピル塩化マグネシウム、ブチル塩化マグネシウム、ヘキシル塩化マグネシウム、アミル塩化マグネシウム、ブチルエトキシマグネシウム、エチルブチルマグネシウム、ブチルマグネシウムハイドライドなどが挙げられる。
これらのマグネシウム化合物は、例えば有機アルミニウム等との錯化合物の形で用いることもでき、また、液状状態であっても固体状態であってもよい。
さらに好適なマグネシウム化合物として、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、フッ化マグネシウム等のハロゲン化マグネシウム;メトキシ塩化マグネシウム、エトキシ塩化マグネシウム、イソプロポキシ塩化マグネシウム、ブトキシ塩化マグネシウム、オクトキシ塩化マグネシウム等のアルコキシマグネシウムハライド;フエノキシ塩化マグネシウム、メチルフエノキシ塩化マグネシウム等のアリロキシマグネシウムハライド;エトキシマグネシウム、イソプロポキシマグネシウム、ブトキシマグネシウム、n−オクトキシマグネシウム、2−エチルヘキソキシマグネシウム等のアルコキシマグネシウム;フエノキシマグネシウム、ジメチルフエノキシマグネシウム等のアリロキシマグネシウム;ラウリン酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム等のマグネシウムのカルボン酸塩などが挙げられる。
これらマグネシウム化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0013】
上述のプロピレン樹脂組成物の製造で使用する固体触媒成分(A)の調製に用いられる電子供与体化合物として、アルコール、フェノール類、ケトン、アルデヒド、カルボン酸、有機酸又は無機酸のエステル、エーテル、酸アミド、酸無水物等の含酸素電子供与体、アンモニア、アミン、ニトリル、イソシアネート等の含窒素電子供与体などが知られているが、本発明における電子供与体化合物はジカルボン酸ジエステルを含むことが好ましい。ジカルボン酸とは2つのカルボキシル基を有する化合物である。ジカルボン酸ジエステルの具体例として、以下のものが挙げられる。
ジエチルスクシネート、ジブチルスクシネート、ジエチルメチルスクシネート、ジエチルジイソプロピルスクシネート、ジアリルエチルスクシネート、α−メチルグルタル酸ジイソブチル、マロン酸ジブチルメチル、マロン酸ジエチル、エチルマロン酸ジエチル、イソプロピルマロン酸ジエチル、ブチルマロン酸ジエチル、フェニルマロン酸ジエチル、ジエチルマロン酸ジエチル、アリルマロン酸ジエチル、ジイソブチルマロン酸ジエチル、ジノルマルブチルマロン酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸モノオクチル、マレイン酸ジオクチル、マレイン酸ジブチル、ブチルマレイン酸ジブチル、ブチルマレイン酸ジエチル、β−メチルグルタル酸ジイソプロピル、フマル酸ジ−2−エチルヘキシル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル、シトラコン酸ジオクチル、シトラコン酸ジメチルなどの脂肪族ポリカルボン酸エステル。
1,2−シクロヘキサンカルボン酸ジエチル、1,2−シクロヘキサンカルボン酸ジイソブチル、テトラヒドロフタル酸ジエチル、ナジツク酸ジエチルのような脂環族ポリカルボン酸エステル。
【0014】
モノエチルフタレート、ジメチルフタレート、メチルエチルフタレート、モノイソブチルフタレート、モノノルマルブチルフタレート、ジエチルフタレート、エチルイソブチルフタレート、エチルノルマルブチルフタレート、ジn−プロピルフタレート、ジイソプロピルフタレート、ジn−ブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジn−ヘプチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジn−オクチルフタレート、ジネオペンチルフタレート、ジデシルフタレート、ベンジルブチルフタレート、ジフェニルフタレート、ナフタリンジカルボン酸ジエチル、ナフタリンジカルボン酸ジブチル、トリメリツト酸トリエチル、トリメリツト酸ジブチルなどの芳香族ポリカルボン酸エステル。
3,4−フランジカルボン酸などの異節環ポリカルボン酸エステル。
【0015】
固体触媒成分中に担持させることのできる多価カルボン酸ジエステルの他の例としては、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジn−ブチル、セバシン酸ジn−オクチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシルなどの長鎖ジカルボン酸のエステル類を挙げることができる。
コハク酸、コハク酸の1位または2位にアルキル基等の置換基を持つ置換コハク酸もジカルボン酸に含まれる。ジカルボン酸ジエステルの中でコハク酸、置換コハク酸、フタル酸、マレイン酸、置換マロン酸のジエステルがより好ましく、コハク酸エステル(スクシネート)系の電子供与体化合物を好適に用いることができる。
好適なスクシネート系化合物は、下記化学式(I)で表されるスクシネート構造を有する化合物である。
スクシネート系化合物を電子供与体として含む触媒を用いて重合して得た重合混合物を用いると、キシレン不溶分のM
w/M
nを容易に下記範囲にでき、成形時の流動性と耐ドローダウン性を容易に向上させることができる。なお、キシレン不溶分のM
w/M
nが大きいことは、ポリプロピレン系樹脂を構成するプロピレン共重合体とエチレン・プロピレン共重合体の分子量分布が広いことを意味する。
【0017】
式(I)中、R
1及びR
2は、互いに同一又は異なり、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の線状又は分岐のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、又はアルキルアリール基である。好ましいR
1及びR
2は、炭素数1〜8のアルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、及びアルキルアリール基である。R
1及びR
2は、第1級アルキル、特に分岐第1級アルキルから選択される化合物が特に好ましい。好適なR
1及びR
2の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、イソブチル、ネオペンチル、2−エチルヘキシルが挙げられ、エチル、イソブチル、及びネオペンチルが特に好ましい。
R
3〜R
6は、互いに同一か又は異なり、水素、或いは、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の線状又は分岐のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、又はアルキルアリール基である。同じ炭素原子に結合しているR
3とR
4、R
5とR
6は互いに結合して環構造を形成してもよい。異なる炭素原子に結合しているR
3〜R
6のいずれか2つ以上は互いに結合して環構造を形成してもよい。
【0018】
式(I)に示される化合物の好ましい群の1つは、R
3〜R
5が水素であり、R
6が、3〜10個の炭素原子を有する、分岐アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、及びアルキルアリール基の単置換スクシネート化合物である。
好適な単置換スクシネート化合物の具体例としては、ジエチル−sec−ブチルスクシネート、ジエチルテキシルスクシネート、ジエチルシクロプロピルスクシネート、ジエチルノルボニルスクシネート、ジエチルペリヒドロスクシネート、ジエチルトリメチルシリルスクシネート、ジエチルメトキシスクシネート、ジエチル−p−メトキシフェニルスクシネート、ジエチル−p−クロロフェニルスクシネート、ジエチルフェニルスクシネート、ジエチルシクロヘキシルスクシネート、ジエチルベンジルスクシネート、ジエチルシクロヘキシルメチルスクシネート、ジエチル−t−ブチルスクシネート、ジエチルイソブチルスクシネート、ジエチルイソプロピルスクシネート、ジエチルネオペンチルスクシネート、ジエチルイソペンチルスクシネート、ジエチル(1−トリフルオロメチルエチル)スクシネート、ジエチルフルオレニルスクシネート、1−(エトキシカルボジイソブチルフェニル)スクシネート、ジイソブチル−sec−ブチルスクシネート、ジイソブチルテキシルスクシネート、ジイソブチルシクロプロピルスクシネート、ジイソブチルノルボニルスクシネート、ジイソブチルペリヒドロスクシネート、ジイソブチルトリメチルシリルスクシネート、ジイソブチルメトキシスクシネート、ジイソブチル−p−メトキシフェニルスクシネート、ジイソブチル−p−クロロフェニルスクシネート、ジイソブチルシクロヘキシルスクシネート、ジイソブチルベンジルスクシネート、ジイソブチルシクロヘキシルメチルスクシネート、ジイソブチル−t−ブチルスクシネート、ジイソブチルイソブチルスクシネート、ジイソブチルイソプロピルスクシネート、ジイソブチルネオペンチルスクシネート、ジイソブチルイソペンチルスクシネート、ジイソブチル(1−トリフルオロメチルエチル)スクシネート、ジイソブチルフルオレニルスクシネート、ジネオペンチル−sec−ブチルスクシネート、ジネオペンチルテキシルスクシネート、ジネオペンチルシクロプロピルスクシネート、ジネオペンチルノルボニルスクシネート、ジネオペンチルペリヒドロスクシネート、ジネオペンチルトリメチルシリルスクシネート、ジネオペンチルメトキシスクシネート、ジネオペンチル−p−メトキシフェニルスクシネート、ジネオペンチル−p−クロロフェニルスクシネート、ジネオペンチルフェニルスクシネート、ジネオペンチルシクロヘキシルスクシネート、ジネオペンチルベンジルスクシネート、ジネオペンチルシクロヘキシルメチルスクシネート、ジネオペンチル−t−ブチルスクシネート、ジネオペンチルイソブチルスクシネート、ジネオペンチルイソプロピルスクシネート、ジネオペンチルネオペンチルスクシネート、ジネオペンチルイソペンチルスクシネート、ジネオペンチル(1−トリフルオロメチルエチル)スクシネート、ジネオペンチルフルオレニルスクシネートが挙げられる。
これら化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0019】
式(I)に示される化合物の他の好ましいものとして、R
3〜R
6の少なくとも2つの基が、水素ではなく、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の線状又は分岐のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、又はアルキルアリール基から選択される二置換スクシネート化合物が挙げられる。水素ではない2つの基は同じ炭素原子に結合していることが好ましい。
好適な二置換スクシネート化合物の具体例としては、ジエチル−2,2−ジメチルスクシネート、ジエチル−2−エチル−2−メチルスクシネート、ジエチル−2−ベンジル−2−イソプロピルスクシネート、ジエチル−2−シクロヘキシルメチル−2−イソブチルスクシネート、ジエチル−2−シクロペンチル−2−n−プロピルスクシネート、ジエチル−2−シクロペンチル−2−n−ブチルスクシネート、ジエチル−2,2−ジイソブチルスクシネート、ジエチル−2−シクロヘキシル−2−エチルスクシネート、ジエチル−2−イソプロピル−2−メチルスクシネート、ジエチル−2−テトラデシル−2−エチルスクシネート、ジエチル−2−イソブチル−2−エチルスクシネート、ジエチル−2−(1−トリフルオロメチルエチル)−2−メチルスクシネート、ジエチル−2−イソペンチル−2−イソブチルスクシネート、ジエチル−2−フェニル−2−n−ブチルスクシネート、ジイソブチル−2,2−ジメチルスクシネート、ジイソブチル−2−エチル−2−メチルスクシネート、ジイソブチル−2−ベンジル−2−イソプロピルスクシネート、ジイソブチル−2−シクロヘキシルメチル−2−イソブチルスクシネート、ジイソブチル−2−シクロペンチル−2−n−プロピルスクシネート、ジイソブチル−2−シクロペンチル−2−n−ブチルスクシネート、ジイソブチル−2,2−ジイソブチルスクシネート、ジイソブチル−2−シクロヘキシル−2−エチルスクシネート、ジイソブチル−2−イソプロピル−2−メチルスクシネート、ジイソブチル−2−テトラデシル−2−エチルスクシネート、ジイソブチル−2−イソブチル−2−エチルスクシネート、ジイソブチル−2−(1−トリフルオロメチルエチル)−2−メチルスクシネート、ジイソブチル−2−イソペンチル−2−イソブチルスクシネート、ジイソブチル−2−フェニル−2−n−ブチルスクシネート、ジイソブチル−2,2−ジイソプロピルスクシネート、ジイソブチル−2−フェニル−2−n−プロピルスクシネート、ジネオペンチル−2,2−ジメチルスクシネート、ジネオペンチル−2−エチル−2−メチルスクシネート、ジネオペンチル−2−ベンジル−2−イソプロピルスクシネート、ジネオペンチル−2−シクロヘキシルメチル−2−イソブチルスクシネート、ジネオペンチル−2−シクロペンチル−2−n−プロピルスクシネート、ジネオペンチル−2−シクロペンチル−2−n−ブチルスクシネート、ジネオペンチル−2,2−ジイソブチルスクシネート、ジネオペンチル−2−シクロヘキシル−2−エチルスクシネート、ジネオペンチル−2−イソプロピル−2−メチルスクシネート、ジネオペンチル−2−テトラデシル−2−エチルスクシネート、ジネオペンチル−2−イソブチル−2−エチルスクシネート、ジネオペンチル−2−(1−トリフルオロメチルエチル)−2−メチルスクシネート、ジネオペンチル−2,2−ジイソプロピルスクシネート、ジネオペンチル−2−イソペンチル−2−イソブチルスクシネート、ジネオペンチル−2−フェニル−2−n−ブチルスクシネートが挙げられる。
これら化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
また、式(I)に示される化合物の特に好ましいものとしては、水素とは異なる少なくとも2つの基、則ちR
3及びR
5、又はR
4及びR
6が異なる炭素原子に結合している化合物も挙げられる。
この化合物の具体例としては、ジエチル−2,3−ビス(トリメチルシリル)スクシネート、ジエチル−2,2−sec−ブチル−3−メチルスクシネート、ジエチル−2−(3,3,3−トリフルオロプロピル)−3−メチルスクシネート、ジエチル−2,3−ビス(2−エチルブチル)スクシネート、ジエチル−2,3−ジエチル−2−イソプロピルスクシネート、ジエチル−2,3−ジイソプロピル−2−メチルスクシネート、ジエチル−2,3−ジシクロヘキシル−2−メチルスクシネート、ジエチル−2,3−ジベンジルスクシネート、ジエチル−2,3−ジイソプロピルスクシネート、ジエチル−2,3−ビス(シクロヘキシルメチル)スクシネート、ジエチル−2,3−ジ−t−ブチルスクシネート、ジエチル−2,3−ジイソブチルスクシネート、ジエチル−2,3−ジネオペンチルスクシネート、ジエチル−2,3−ジイソペンチルスクシネート、ジエチル−2,3−(1−トリフルオロメチルエチル)スクシネート、ジエチル−2,3−テトラデシルスクシネート、ジエチル−2,3−フルオレニルスクシネート、ジエチル−2−イソプロピル−3−イソブチルスクシネート、ジエチル−2−tert−ブチル−3−イソプロピルスクシネート、ジエチル−2−イソプロピル−3−シクロヘキシルスクシネート、ジエチル−2−イソペンチル−3−シクロヘキシルスクシネート、ジエチル−2−テトラデシル−3−シクロヘキシルメチルスクシネート、ジエチル−2−シクロヘキシル−3−シクロペンチルスクシネート、ジエチル−2,2,3,3−テトラメチルスクシネート、ジエチル−2,2,3,3−テトラエチルスクシネート、ジエチル−2,2,3,3−テトラプロピルスクシネート、ジエチル−2,3−ジエチル−2,3−ジイソプロピルスクシネート、ジイソブチル−2,3−ビス(トリメチルシリル)スクシネート、ジイソブチル−2,2−sec−ブチル−3−メチルスクシネート、ジイソブチル−2−(3,3,3−トリフルオロプロピル)−3−メチルスクシネート、ジイソブチル−2,3−ビス(2−エチルブチル)スクシネート、ジイソブチル−2,3−ジエチル−2−イソプロピルスクシネート、ジイソブチル−2,3−ジイソプロピル−2−メチルスクシネート、ジイソブチル−2,3−ジシクロヘキシル−2−メチルスクシネート、ジイソブチル−2,3−ジベンジルスクシネート、ジイソブチル−2,3−ジイソプロピルスクシネート、ジイソブチル−2,3−ビス(シクロヘキシルメチル)スクシネート、ジイソブチル−2,3−ジ−t−ブチルスクシネート、ジイソブチル−2,3−ジイソブチルスクシネート、ジイソブチル−2,3−ジネオペンチルスクシネート、ジイソブチル−2,3−ジイソペンチルスクシネート、ジイソブチル−2,3−(1−トリフルオロメチルエチル)スクシネート、ジイソブチルー2,3−n−プロピルスクシネート、ジイソブチル−2,3−テトラデシルスクシネート、ジイソブチル−2,3−フルオレニルスクシネート、ジイソブチル−2−イソプロピル−3−イソブチルスクシネート、ジイソブチル−2−tert−ブチル−3−イソプロピルスクシネート、ジイソブチル−2−イソプロピル−3−シクロヘキシルスクシネート、ジイソブチル−2−イソペンチル−3−シクロヘキシルスクシネート、ジイソブチル−2−n−プロピル−3−(シクロヘキシルメチル)スクシネート、ジイソブチル−2−テトラデシル−3−シクロヘキシルメチルスクシネート、ジイソブチル−2,2,3,3−テトラメチルスクシネート、ジイソブチル−2,2,3,3−テトラエチルスクシネート、ジイソブチル−2,2,3,3−テトラプロピルスクシネート、ジイソブチル−2,3−ジエチル−2,3−ジイソプロピルスクシネート、ジイソブチル−2−シクロヘキシル−3−シクロペンチルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ビス(トリメチルシリル)スクシネート、ジネオペンチル−2,2−sec−ブチル−3−メチルスクシネート、ジネオペンチル−2−(3,3,3−トリフルオロプロピル)−3−メチルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ビス(2−エチルブチル)スクシネート、ジネオペンチル−2,3−ジエチル−2−イソプロピルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ジイソプロピル−2−メチルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ジシクロヘキシル−2−メチルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ジベンジルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ジイソプロピルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ビス(シクロヘキシルメチル)スクシネート、ジネオペンチル−2,3−ジ−t−ブチルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ジイソブチルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ジネオペンチルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ジイソペンチルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−(1−トリフルオロメチルエチル)スクシネート、ジネオペンチル−2,3−ジネオペンチルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ジイソペンチルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−テトラデシルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−フルオレニルスクシネート、ジネオペンチル−2−イソプロピル−3−イソブチルスクシネート、ジネオペンチル−2−tert−ブチル−3−イソプロピルスクシネート、ジネオペンチル−2−イソプロピル−3−シクロヘキシルスクシネート、ジネオペンチル−2−イソペンチル−3−シクロヘキシルスクシネート、ジネオペンチル−2−テトラデシル−3−シクロヘキシルメチルスクシネート、ジネオペンチル−2−n−プロピル−3−(シクロヘキシルメチル)スクシネート、ジネオペンチル−2−シクロヘキシル−3―シクロペンチルスクシネート、ジネオペンチル−2,2,3,3−テトラエチルスクシネート、ジネオペンチル−2,2,3,3−テトラプロピルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ジエチル−2,3−ジイソプロピルスクシネートが挙げられる。
これら化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
また、式(I)に示される化合物としては、R
3〜R
6のうちの少なくとも2つ以上が結合して環を形成したものも好ましい。
このような化合物として、特表2002−542347号公報に記載されている化合物、例えば、1−(エトキシカルボニル)−1−(エトキシアセチル)−2,6−ジメチルシクロヘキサン、1−(エトキシカルボニル)−1−(エトキシアセチル)−2,5−ジメチルシクロペンタン、1−(エトキシカルボニル)−1−(エトキシアセチルメチル)−2−メチルシクロヘキサン、1−(エトキシカルボニル)−1−(エトキシ(シクロヘキシル)アセチル)シクロヘキサンが挙げられる。また、国際公開第2009/069483号、国際公開第2009/057747号に開示されている3,6−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル等の環状スクシネート化合物も好適に用いることができる。
【0022】
式(I)に示される化合物のうち、R
3〜R
6がヘテロ原子を含む場合、ヘテロ原子は、窒素原子、リン原子等の第15族原子、あるいは、酸素原子、イオウ原子等の第16族原子であることが好ましい。R
3〜R
6が第15族原子を含む化合物としては、特開2005−306910号公報に開示されている化合物が挙げられる。R
3〜R
6が第16族原子を含む化合物としては、特開2004−131537号公報に開示されている化合物が挙げられる。
固体触媒成分(A)を構成するハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素またはこれらの混合物が挙げられ、特に塩素が好ましい。
【0023】
有機アルミニウム化合物(B)としては、例えば、トリエチルアルミニウム、トリブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、トリイソプレニルアルミニウム等のトリアルケニルアルミニウム、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシド等のジアルキルアルミニウムアルコキシド、エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシド等のアルキルアルミニウムセスキアルコキシドのほかに、R
72.5Al(OR
8)
0.5(R
7,R
8は、各々異なってもよいし同じでもよい炭化水素基である。)で表わされる平均組成を有する、部分的にアルコキシ化されたアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド等のジアルキルアルミニウムハロゲニド、エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミド等のアルキルアルミニウムセスキハロゲニド、エチルアルミニウムジクロリド、プロピルアルミニウムジクロリド、ブチルアルミニウムジブロミド等のアルキルアルミニウムジハロゲニドなどの部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドなどのジアルキルアルミニウムヒドリド、エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリド等のアルキルアルミニウムジヒドリドなどの部分的に水素化されたアルキルアルミニウム、エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミド等の部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウム等が挙げられる。
上記有機アルミニウム化合物(B)は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
外部電子供与体化合物(C)は、有機ケイ素化合物を含む。
好ましい有機ケイ素化合物として、例えば、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、t−ブチルメチルジメトキシシラン、t−ブチルメチルジエトキシシラン、t−アミルメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ビスo−トリルジメトキシシラン、ビスm−トリルジメトキシシラン、ビスp−トリルジメトキシシラン、ビスp−トリルジエトキシシラン、ビスエチルフェニルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン、テキシルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、iso−ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、クロルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、2−ノルボルナントリメトキシシラン、2−ノルボルナントリエトキシシラン、2−ノルボルナンメチルジメトキシシラン、ケイ酸エチル、ケイ酸ブチル、トリメチルフエノキシシラン、メチルトリアリルオキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシシラン)、ビニルトリアセトキシシラン、ジメチルテトラエトキシジシロキサンなどが挙げられる。
これらの中でも、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン、テキシルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ビスp−トリルジメトキシシラン、p−トリルメチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、2−ノネボルナントリエトキシシラン、2−ノルボルナンメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ケイ酸エチルが好ましい。
上記外部電子供与体化合物(C)は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
上記触媒の中でも、固体触媒成分(A)がマグネシウムとチタンとハロゲンとフタレート系またはスクシネート系化合物を含む電子供与体化合物とを含有する固体触媒、有機アルミニウム化合物(B)が、トリエチルアルミニウム、トリブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、外部電子供与体化合物(C)が、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン等の有機ケイ素化合物であるものが好ましい。
【0026】
前記ポリプロピレン系樹脂は、キシレン可溶分の、135℃のテトラヒドロナフタレン中での極限粘度が0.7〜2.0dl/gであり、0.8〜1.8dl/gであることが好ましい。ポリプロピレン系樹脂の極限粘度が前記下限値未満であると、ポリプロピレン系樹脂の製造が困難になることがあり、前記上限値を超えると、該樹脂組成物から得られる成形品の透明性が低下する傾向にある。
【0027】
前記ポリプロピレン系樹脂は、キシレン不溶分の質量平均分子量M
wと数平均分子量M
nとの比率(M
w/M
n)が6以上であり、8以上であることが好ましい。ここで、ポリプロピレン系樹脂のキシレン不溶分の質量平均分子量M
wと数平均分子量M
nは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定した値である。キシレン不溶分は、ポリプロピレン系樹脂の試料をo−キシレン中、135℃で溶解させた後、25℃に冷却し、その冷却した溶液を、濾紙を用いて濾過し、濾紙上に残ったものを採取して得られる成分である。
前記ポリプロピレン系樹脂の前記M
w/M
nが前記下限値未満であると、中空成形の際の流動性と耐ドローダウン性が低くなることがある。
ポリプロピレン系樹脂のM
w/M
nを前記範囲にするためには、電子供与体化合物としてスクシネートを含む重合触媒を用いればよい。
【0028】
ポリプロピレン系樹脂におけるエチレン・プロピレン共重合体の含有割合は23〜35質量%であり、25〜33質量%であることが好ましい。ポリプロピレン系樹脂におけるエチレン・プロピレン共重合体の含有割合が前記下限値未満であると、該樹脂組成物から得られる成形品の耐衝撃性が低下する傾向にあり、前記上限値を超えると、該樹脂組成物から得られる成形品の剛性が低下する傾向にある。
【0029】
前記プロピレン共重合体は、エチレン単位0.5〜4.0質量%とプロピレン単位96.0〜99.5質量%とを含む共重合体である。プロピレン共重合体におけるエチレン単位の含有割合が前記下限値未満であると(すなわち、プロピレン単位の含有割合が前記上限値を超えると)、耐衝撃性と透明性とのバランスを損ねることがある。一方、プロピレン共重合体におけるエチレン単位の含有割合が前記上限値を超えると(すなわち、プロピレン単位の含有割合が前記下限値未満であると)、剛性が低下することがある。
プロピレン共重合体においては、エチレン単位の含有割合が1.0〜3.0質量%、プロピレン単位の含有割合が97.0〜99.0質量%であることが好ましい。
【0030】
前記エチレン・プロピレン共重合体は、エチレン単位とプロピレン単位を有する共重合体である。エチレン・プロピレン共重合体においては、プロピレン単位含有割合が15〜40質量%(すなわち、エチレン単位含有割合が60〜85質量%)であり、18〜36質量%(すなわち、エチレン単位含有割合が64〜82質量%)であることが好ましい。エチレン・プロピレン共重合体におけるプロピレン単位含有割合が前記下限値未満であると、該樹脂組成物から得られる成形品の耐衝撃性が低下する傾向にあり、前記上限値を超えると、該樹脂組成物から得られる成形品の透明性が低下する傾向にある。
【0031】
(造核剤)
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、造核剤を含有してもよい。造核剤は、ポリプロピレン結晶核の形成を促進させるものである。結晶核を形成することによって、剛性及び透明性をより向上させることができる。
造核剤の具体例としては、ノニトール系化合物、ソルビトール化合物、カルボン酸の金属塩、芳香族リン酸エステル系化合物、トリアミノベンゼン誘導体核剤などが挙げられる。剛性が高く臭気が少ない点では、芳香族リン酸エステル系化合物とトリアミノベンゼン誘導体核剤が好ましい。
ノニトール系化合物としては、例えば、1,2,3−トリデオキシ−4,6−5,7−ビス−o−[(4−プロピルフェニル)メチレン]ノニトールが挙げられる。
ソルビトール化合物としては、例えば、ジベンジリデンソルビトール、1,3,2,4−ジ−(メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−(エチルベンジリテン)ソルビトール、1,3,2,4−(メトキシベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−(エトキシベンジリデン)ソルビトールなどが挙げられる。
カルボン酸の金属塩としては、例えば、アジピン酸ナトリウム、アジピン酸カリウム、アジピン酸アルミニウム、セバシン酸ナトリウム、セバシン酸カリウム、セバシン酸アルミニウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸アルミニウム、ジ−パラ−t−ブチル安息香酸アルミニウム、ジ−パラ−t−ブチル安息香酸チタン、ジ−パラ−t−ブチル安息香酸クロム、ヒドロキシ−ジ−t−ブチル安息香酸アルミニウムなどが挙げられる。
芳香族リン酸エステル系造核剤としては、リン酸2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム塩系造核剤、リン酸−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)アルミニウム塩系造核剤、リン酸−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)リチウム塩系造核剤が挙げられる。
また、トリアミノベンゼン誘導体系造核剤として、例えば、1,3,5−トリス(2,2−ジメチルプロパンアミド)ベンゼン等が挙げられる。
上記造核剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
造核剤の含有量は、ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して0質量部超1.0質量部以下であることが好ましく、0.05〜0.5質量部であることがより好ましい。造核剤を前記範囲で含めば、該樹脂組成物から得られる成形品の剛性及び透明性をより高くできる。しかし、前記上限値を超えて造核剤を含有させても、結晶核形成の促進効果は頭打ちとなり、単純に製造コスト増となるため、産業上大量安価に製造する場合においては現実的でない。
【0033】
造核剤を含有する場合のポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法としては、前記ポリプロピレン系樹脂と前記造核剤とを混合し、溶融混練する方法が挙げられる。必要に応じて、ポリプロピレン系樹脂以外の他の樹脂又はゴム、添加剤等をさらに混合してもよい。各成分の添加の順序には制限はない。
混合の方法としては特に制限はなく、例えば、ヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー等のミキサーを用いる方法が挙げられる。
混合した後、得られた混合物を溶融混練し、さらにペレット化してもよい。溶融混練装置としては、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールミル等を用いることができる。
【0034】
ポリプロピレン系樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリプロピレン系樹脂以外の樹脂又はゴムを含有してもよい。ポリプロピレン系樹脂組成物が含有してもよい樹脂又はゴムは1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
また、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物には、任意成分として、例えば、塩素吸収剤、耐熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、内部滑剤、外部滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、難燃剤、分散剤、銅害防止剤、中和剤、可塑剤、発泡剤、気泡防止剤、架橋剤、過酸化物、油展および顔料(有機または無機)等のその他の添加剤が含まれてもよい。各添加剤の添加量は公知の量としてよい。
【0035】
MFR、溶融粘度及び組成が前記範囲の本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、耐衝撃性、特に低温耐衝撃性、剛性及び透明性に優れる。
また、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、耐ドローダウン性が高く、中空成形時において、溶融した樹脂組成物が自重によって下に垂れ落ちることを防ぐことができる。
【0036】
<中空成形品>
本発明の中空成形品は、上記ポリプロピレン系樹脂組成物を含有するものである。
中空成形品の製造方法としては、例えば、押出機を用いてポリプロピレン系樹脂組成物を溶融混練し、押出成形して管状のパリソンを作製する工程と、そのパリソンを金型で挟むと共にパリソンの内部に空気を吹き込み、溶融した樹脂を金型内面に密着させて賦形して賦形物を得る工程と、その賦形物を冷却する工程とを有する方法が挙げられる。
中空成形品は、例えば、飲料、食品、医薬品、化粧品、洗剤等を充填するための容器として使用することができる。また、中空成形品は、蓋、コンテナ等にも使用することができる。
【実施例】
【0037】
以下に、実施例及び比較例を示すが、本発明は以下の実施例に限定されない。
各例における、エチレン・プロピレン共重合体におけるプロピレン単位の含有割合、ポリプロピレン系樹脂のキシレン可溶分の極限粘度、ポリプロピレン系樹脂のキシレン不溶分のM
w/M
n、ポリプロピレン系樹脂組成物のMFRは以下のように測定した。
1)エチレン・プロピレン共重合体のプロピレン単位の含有割合:
エチレン・プロピレン共重合体のプロピレン単位の含有割合は、1,2,4−トリクロロベンゼン/重水素化ベンゼンの混合溶媒に溶解した試料について、日本電子株式会社製JNM LA−400(
13C共鳴周波数100MHz)を用い、
13C−NMR法で測定した。
2)ポリプロピレン系樹脂のキシレン可溶分の極限粘度:
ポリプロピレン系樹脂のキシレン可溶分は、以下の方法によって得た。
サンプル2.5gを、o−キシレン(溶媒)を250ml入れたフラスコに入れ、ホットプレートおよび還流装置を用いて、135℃で、窒素パージを行いながら、30分間撹拌し、ポリプロピレン系樹脂を完全溶解させた後、25℃で1時間、冷却した。これにより得られた溶液を、濾紙を用いて濾過した。濾過後の濾液を100ml採取し、アルミニウムカップ等に移し、窒素パージを行いながら、140℃で蒸発乾固を行い、室温で30分間静置して、キシレン可溶分を得た。
得られたキシレン可溶分を試料として用い、テトラヒドロナフタレン中、135℃において毛細管自動粘度測定装置(SS−780−H1、株式会社柴山科学器械製作所製)を用いて、極限粘度を測定した。
3)ポリプロピレン系樹脂のキシレン不溶分のM
w/M
n:
ポリプロピレン系樹脂のキシレン不溶分の質量平均分子量M
wと数平均分子量M
nは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(ポリマーラボラトリーズ株式会社製PL−GPC220)を用いて測定した。
キシレン不溶分の採取方法としては、上述したようにキシレン可溶分を濾過した際に濾紙上に残った残留物(キシレン不溶成分と溶媒の混合物)にアセトンを加えて濾過した後、濾過されなかった成分を、80℃設定の真空乾燥オーブンにて、蒸発乾固させ、キシレン不溶分を得た。
4)MFR:
ポリプロピレン系樹脂組成物のMFRは、JIS K7210に準拠して、温度230℃、荷重:21.18Nの条件で測定した。
【0038】
(実施例1)
ポリプロピレン系樹脂100質量部と、1,2,3―トリデオキシ−4,6:5,7−ビス−[(4−プロピルフェニル)メチレン]−ノニトールを含むノニトール系造核剤(ミリケンジャパン株式会社製、Millad NX8000J)0.25質量部、酸化防止剤(BASF社製B225、イルガノックス1010とイルガフォス168の1:1混合物)0.2質量部、中和剤(淡南化学工業株式会社製カルシウムステアレート)0.05質量部とを、ヘンシェルミキサーで1分間攪拌、混合して溶融混練用混合物を得た。
本例では、ポリプロピレン系樹脂として、スクシネート系(表中では、「Suc」と表記する。)のチーグラー・ナッタ触媒を用い、1段目で、エチレンとプロピレンとを共重合してプロピレン共重合体を形成し、2段目で、該プロピレン共重合体存在下、エチレンとプロピレンを共重合させてエチレン・プロピレン共重合体を形成させて得た重合混合物を用いた。具体的に重合混合物は以下のようにして製造した。
特開2011−500907号の実施例に記載の調製法に従い、固体触媒成分を以下の様に調製した。
窒素でパージした500mLの4つ口丸底フラスコ中に、250mLのTiCl
4を0℃において導入した。撹拌しながら、10.0gの微細球状MgCl
2・1.8C
2H
5OH(USP−4,399,054の実施例2に記載の方法にしたがって、しかしながら10000rpmに代えて3000rpmで運転して製造した)、および9.1ミリモルのジエチル−2,3−(ジイソプロピル)スクシネートを加えた。温度を100℃に上昇させ、120分間保持した。次に、撹拌を停止し、固体生成物を沈降させ、上澄み液を吸い出した。次に、以下の操作を2回繰り返した:250mLの新しいTiCl
4を加え、混合物を120℃において60分間反応させ、上澄み液を吸い出した。固体を、60℃において無水ヘキサン(6×100mL)で6回洗浄した。
上記固体触媒と、トリエチルアルミニウム(TEAL)およびジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)を、固体触媒に対するTEALの質量比が18であり、TEAL/DCPMSの質量比が10となるような量で、室温において5分間接触させた。得られた触媒系を、液体プロピレン中において懸濁状態で20℃において5分間保持することによって予備重合を行った。得られた予備重合物を、2段の重合反応器を直列に備える重合装置の1段目の重合反応器に導入し、プロピレンの液相状態にてプロピレン共重合体を製造し、2段目の気相重合反応器でエチレン−プロピレン共重合体を製造した。重合の際には、重合温度、重合圧力、触媒の添加量、1段目のエチレン供給量、2段目のエチレン供給量とプロピレン供給量を調整し、分子量調整剤として水素を用いて、ポリプロピレン系樹脂組成物のMFRとポリプロピレン系樹脂のキシレン可溶分の極限粘度が所定の量となるように、1段目と2段目の供給量を調整した。また、共重合体成分が所定の量となるように、1段目と2段目の滞留時間分布を調整した。
得られた重合混合物からなるポリプロピレン系樹脂は、プロピレン共重合体中のエチレン単位含有割合、ポリプロピレン系樹脂中のエチレン・プロピレン共重合体含有割合、エチレン・プロピレン共重合体中のプロピレン単位含有割合、ポリプロピレン系樹脂のキシレン可溶分の極限粘度、ポリプロピレン系樹脂のキシレン不溶分のM
w/M
nが表1に示すものである。
次いで、前記溶融混練用混合物を、スクリュー温度を230℃、スクリュー回転数90rpmに設定した単軸押出機(ナカタニ機械株式会社製NVC−50)を用いて溶融混練し、ペレット化して、MFRが1.4g/10分のポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0039】
(実施例2〜8)
表1に示すような、プロピレン共重合体中のエチレン単位含有割合、ポリプロピレン系樹脂中のエチレン・プロピレン共重合体含有割合、ポリプロピレン系樹脂のキシレン可溶分の極限粘度、エチレン・プロピレン共重合体中のプロピレン単位含有割合になるように重合条件を調整して、プロピレン共重合体とエチレン・プロピレン共重合体との重合混合物を得た。
その重合混合物をポリプロピレン系樹脂として用いた以外は実施例1と同様にして、表1に示すMFRのポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0040】
(実施例9)
造核剤をポリプロピレン系樹脂に混合しなかった以外は実施例1と同様にして、表1に示すMFRのポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0041】
(比較例1)
フタレート系(表中では、「Pht」と表記する。)のチーグラー・ナッタ触媒を用い、1段目で、エチレンとプロピレンとを共重合してプロピレン共重合体を形成し、2段目で、該プロピレン共重合体存在下、エチレンとプロピレンを共重合させてエチレン・プロピレン共重合体を形成させて重合混合物を得た。具体的に重合混合物は以下のようにして製造した。
MgCl
2上にTiと内部ドナーとしてのジイソブチルフタレートを担持させた固体触媒を、欧州特許第728769号公報の実施例5に記載された方法により調製した。次いで、上記固体触媒と、有機アルミニウム化合物としてトリエチルアルミニウム(TEAL)と、外部電子供与体化合物としてジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)を用い、固体触媒に対するTEALの重量比が20、TEAL/DCPMSの重量比が10となるような量で、12℃において24分間接触させた。得られた触媒系を、液体プロピレン中において懸濁状態で20℃にて5分間保持することによって予備重合を行った。得られた予備重合物を、2段の重合反応器を直列に備える重合装置の1段目の重合反応器に導入し、プロピレンの液相状態にてプロピレン共重合体を製造し、2段目の気相重合反応器でエチレン−プロピレン共重合体を製造した。重合の際には、重合温度、重合圧力、触媒の添加量、1段目のエチレン供給量、2段目のエチレン供給量とプロピレン供給量を調整し、分子量調整剤として水素を用いて、ポリプロピレン系樹脂組成物のMFRとポリプロピレン系樹脂のキシレン可溶分の極限粘度が所定の量となるように、1段目と2段目の供給量を調整した。また、共重合体成分が所定の量となるように、1段目と2段目の滞留時間分布を調整した。
得られた重合混合物は、プロピレン共重合体中のエチレン単位含有割合、ポリプロピレン系樹脂中のエチレン・プロピレン共重合体含有割合、ポリプロピレン系樹脂のキシレン可溶分の極限粘度、エチレン・プロピレン共重合体中のプロピレン単位含有割合が表1に示すものである。
この重合混合物をポリプロピレン系樹脂として用いた以外は実施例1と同様にして、表2に示すMFRのポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0042】
(比較例2〜8)
表2に示すような、プロピレン共重合体中のエチレン単位含有割合、重合混合物中のエチレン・プロピレン共重合体含有割合、ポリプロピレン系樹脂のキシレン可溶分の極限粘度、エチレン・プロピレン共重合体中のプロピレン単位含有割合になるように重合条件を調整して、プロピレン共重合体とエチレン・プロピレン共重合体との重合混合物を得た。
その重合混合物をポリプロピレン系樹脂として用いた以外は実施例1と同様にして、表2に示すMFRのポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
<評価>
各例のポリプロピレン系樹脂組成物について、下記方法によりアイゾッド衝撃強度、曲げ弾性率、ヘイズを測定し、成形時の樹脂圧力(流動性の指標)、耐ドローダウン性を評価した。測定結果及び評価結果を表1,2に示す。
【0046】
[アイゾッド衝撃強度]
ポリプロピレン系樹脂組成物を、射出成形機(ファナック株式会社製FANUC ROBOSHOT S2000i 射出成形機)を用い、シリンダー温度255℃、金型温度40℃、平均射出速度200mm/秒、冷却時間20秒の条件で成形し、幅10.0mm、厚み4.0mm、長さ80mmの測定用試験片を得た。
その測定用試験片を用い、JIS K7110に準拠し、株式会社東洋精機製作所製デジタル衝撃試験機(DG−UB2)を用い、温度0℃でアイゾッド衝撃強度を測定した。アイゾッド衝撃強度の値が高い程、耐衝撃性に優れる。
【0047】
[曲げ弾性率]
JIS K7151に従い、ポリプロピレン系樹脂組成物を、射出成形機(ファナック株式会社製FANUC ROBOSHOT S2000i 射出成形機)を用い、シリンダー温度255℃、金型温度40℃、平均射出速度200mm/秒、冷却時間20秒の条件で成形し、幅10.0mm、厚み4.0mm、長さ80mmの測定用試験片を得た。
その測定用試験片を用い、JIS K7171に準拠し、島津製作所製全自動試験機(AG−X10kN)を用い、温度23℃、相対湿度50%、スパン間64mm、曲げ速度2.0mm/分の条件で曲げ弾性率を測定した。曲げ弾性率の値が高い程、剛性に優れる。
【0048】
[透明性]
ポリプロピレン系樹脂組成物を、成形温度210℃、圧力10MPa、成形時間60秒の条件でプレス成形した後、冷却温度30℃、冷却時間60秒の条件で冷却して、縦5cm、横5cm、厚さ0.5mmのシート状の試験片を作製した。この試験片を用い、JIS K7136に従い、ヘイズ測定装置((株)村上色彩技術研究所製HM−150型)によりヘイズを測定した。ヘイズの値が小さい程、透明性に優れる。
【0049】
[成形時の樹脂圧力]
中空成形機(株式会社日本製鋼所製、押出機のスクリュー直径50mm)を用い、成形温度230℃、スクリュー回転数15回転/分の条件でポリプロピレン系樹脂組成物を押出成形した際の押出機の樹脂圧力(MPa)を計測した。
【0050】
[耐ドローダウン性]
中空成形機(株式会社日本製鋼所製、押出機のスクリュー直径50mm)を用い、成形温度230℃、スクリュー回転数15回転/分の条件でポリプロピレン系樹脂組成物を鉛直方向の下方に向けて押出成形して、管状のパリソンを作製した。作製されたパリソンを目視観察して耐ドローダウン性を評価した。成形後のパリソンの形状を維持したものを良好と評価し、自重により変形して成形後のパリソンの形状を維持できなかったものを不良と評価した。
【0051】
実施例1〜9のポリプロピレン系樹脂組成物は、0℃のアイゾッド衝撃強度及び曲げ弾性率が大きく、低温耐衝撃性及び剛性に優れていた。また、実施例1〜9のポリプロピレン系樹脂組成物は、ヘイズが小さく、透明性に優れていた。しかも、実施例1〜9のポリプロピレン系樹脂組成物は、流動性と耐ドローダウン性にも優れていた。
ポリプロピレン系樹脂のキシレン不溶分のM
w/M
nが6未満の比較例1のポリプロピレン系樹脂組成物は、成形時の樹脂圧力が高く、耐ドローダウン性が低かった。
プロピレン共重合体のエチレン単位が0.5質量%未満の比較例2のポリプロピレン系樹脂組成物は、0℃のアイゾッド衝撃強度が小さく、ヘイズが大きかった。
ポリプロピレン系樹脂中のエチレン・プロピレン共重合体の含有割合が20質量%未満の比較例3のポリプロピレン系樹脂組成物は、0℃のアイゾッド衝撃強度が小さかった。
ポリプロピレン系樹脂中のエチレン・プロピレン共重合体の含有割合が35質量%を超える比較例4のポリプロピレン系樹脂組成物は、曲げ弾性率が小さかった。
エチレン・プロピレン共重合体中のプロピレン単位の含有割合が15質量%未満の比較例5のポリプロピレン系樹脂組成物は、0℃のアイゾッド衝撃強度が小さかった。
エチレン・プロピレン共重合体中のプロピレン単位の含有割合が40質量%を超える比較例6のポリプロピレン系樹脂組成物は、ヘイズが大きかった。
ポリプロピレン系樹脂中のキシレン可溶分の極限粘度が2.0dl/gを超える比較例7のポリプロピレン系樹脂組成物は、ヘイズが大きかった。
MFRが5g/10分を超える比較例8のポリプロピレン系樹脂組成物は、0℃のアイゾッド衝撃強度が小さく、また、耐ドローダウン性が低かった。