【解決手段】下記の一般式(1)で示される(メタ)アクリル酸塩(a01)由来の構成単位(a1)及び下記の一般式(2)で示される(メタ)アクリル酸エステル(a02)由来の構成単位(a2)を必須構成単位とする共重合体(A)を含有する帯電防止剤(X)であって、共重合体(A)の重量に基づく下記の一般式(3)で示される基の含有率が40〜70重量%であり、共重合体(A)の重量平均分子量が5,000〜300,000であることを特徴とする帯電防止剤(X)。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の帯電防止剤(X)は、上記の一般式(1)で示される(メタ)アクリル酸塩由来の構成単位(a1)及び上記の一般式(2)で示される(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位(a2)を必須構成単位とする共重合体(A)を含有する帯電防止剤(X)であって、共重合体(A)の重量に基づく上記の一般式(3)で示される基、以下オニウムカルボキシレート基(q)とも記載する、この基の含有率が40〜70重量%であり、共重合体(A)の重量平均分子量が5,000〜300,000であることを特徴とする。
本発明において(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味し、以下同様の記載法を用いる。
【0022】
本発明における(メタ)アクリル酸塩(a01)として、一般式(1)として表され、(メタ)アクリル酸を一般式(4)〜(9)で表されるオニウムカチオン(Q
+)で中和された塩が挙げられる。
一般式(1)中のQ
+はオニウムカチオンであり、一般式(4)で表されるような4級アンモニウムイオン、一般式(5)で表されるような4級ホスホニウムイオン、一般式(6)で表されるようなスルホニウムイオン、一般式(7)で表されるようなピリジニウムイオン、ピペリジニウムイオン、ピロリジニウムイオン、一般式(8)で表されるようなイミダゾリウムイオン、一般式(9)で表されるようなピラゾリウムイオンなどが挙げられる。
また本発明における(メタ)アクリル酸エステルは、一般式(2)として表される。
共重合体(A)は、(メタ)アクリル酸塩(a01)と(メタ)アクリル酸エステル(a02)を必須構成単位、(メタ)アクリル酸(a03)と下記の重合性単量体(a04)を任意の構成単位とした共重合体である。
【0023】
共重合体(A)中のオニウムカルボキシレート基(q)の重量%は、共重合体(A)の重量に基づき、帯電防止性の観点から40〜70重量%であり、好ましくは55〜75%、更に好ましくは60〜70%である。
共重合体(A)中のオニウムカルボキシレート基(q)の重量%が40%未満であると、帯電防止剤(X)として添加しても、十分な帯電防止性を付与することができない。70重量%を超えると被着体表面への汚染が発生する。
【0024】
共重合体(A)中のオニウムカルボキシレート基(q)部分の重量%は、(メタ)アクリレート系共重合体(A1)の組成、および合成時の原料のオニウム塩(z)の投入量から計算することができる。
【0025】
また、逆エプトン法による滴定から、算出することができる。
具体的には本発明の帯電防止剤(X)、又は帯電防止剤(X)の溶液に水とメチレンブルー指示薬を加え、0.0035Mラウリル硫酸ナトリウム滴定用溶液で滴定し、下層が上層より淡色となる点を終点とする。ラウリル硫酸ナトリウム滴定用溶液の終点までの滴定量および空試験の滴定量からオニウムカルボキシレート基の1kg当たりのモル含量(qA)および、オニウムカルボキシレート基の重量%(qB)の含有量を以下の式で算出する。
計算式1;
(qA)(モル/1000g)=[本試験の滴定量(L)−空試験の滴定量(L)]×ラウリル硫酸ナトリウム滴定用溶液の濃度(mol/L)×40/サンプル量(g)
計算式2;
(qB)(重量%)=(qA)×(オニウムカルボキシレート基の分子量+44)/1000
【0026】
本発明者らは鋭意検討した結果、本発明における帯電防止剤(X)が好適に性能を発揮する重量平均分子量と、粘着剤(B)としての後述するアクリル系粘着剤(B2)が好適に性能を発揮する重量平均分子量とは異なった。
具体的には、本発明の帯電防止剤(X)中の共重合体(A)の重量平均分子量は、粘着剤に添加時の被着体表面への汚染性と帯電防止性と粘着力の観点から重量平均分子量が5,000以上〜300,000以下であり、好ましくは重量平均分子量が20,000以上〜190,000以下、更に好ましくは20,000以上〜140,000以下、特に好ましくは30,000以上〜140,000以下、最も好ましくは50,000以上〜100,000以下である。
本発明の帯電防止剤(X)中の共重合体(A)の分子量分布(Mw/Mn)は、粘着剤に添加時の被着体表面への汚染性と帯電防止性と粘着力の観点から、好ましくは3以上〜10以下、さらに好ましくは3以上〜8以下である。
【0027】
帯電防止剤(X)中の共重合体(A)の重量平均分子量が5000未満であると、粘着剤組成物の被着体表面への汚染性に問題が生じてしまう。
共重合体(A)の重量平均分子量が300,000を超えると、帯電防止性が劣り、粘着力が低下してしまう。
【0028】
本発明における重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)は、標準物質をポリスチレンとして、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー分析により測定した重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)である。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーの測定条件は、例えば以下の条件で測定することができる。
装置:「HLC−8120GPC」[東ソー(株)製]
カラム:「Guardcolumn H
XL−H」(1本)、「TSKgel GMH
XL」(2本)[いずれも東ソー(株)製]
試料溶液:0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量:100μl
流量:1ml/分
測定温度:40℃
検出装置:屈折率検出器
基準物質:標準ポリスチレン
【0029】
共重合体(A)の製造法は限定されないが、以下の(1)又は(2)の方法で製造することができる。(1)の製造方法が好ましい。
【0030】
(1) (メタ)アクリル酸(a03)と一般式(2)で示される(メタ)アクリル酸エステル(a02)を共重合させ、得られた共重合体(A1)とオニウム塩(z)を溶媒の存在下または非存在下で行ない、加熱し反応させることにより、オニウムカルボキシレート基(q)を有する共重合体(A)が得られる。
【0031】
反応温度は特に限定されないが、好ましくは50〜150℃である。また、反応時間は特に限定されないが、好ましくは3〜50時間である。また、必要により被着体汚染がない範囲で公知の硬化促進触媒(例えば、2−メチルイミダゾール)を用いてもよい。
【0032】
オニウム塩(z)が、オニウム・炭酸エステル塩(z1)であることが好ましく、この場合も(A1)と(z1)を同様に溶媒の存在下または非存在下で反応させ、アニオン交換反応で副生する炭酸ガスを反応系から適宜除くことにより、共重合体(A)が得られる。
【0033】
(2) オニウムカルボキシレート基(q)を有する、上記の一般式(1)で示される(メタ)アクリル酸塩(a01)と上記の一般式(2)で示される(メタ)アクリル酸エステル(a02)を必須構成単位として、共重合させる方法であり、下記(A1)と同様の製造方法で行うことができる。
【0034】
[共重合体(A1)]
ここで、共重合体(A1)としては、上記の一般式(2)で示される(メタ)アクリル酸エステル(a02)と(メタ)アクリル酸(a03)を必須構成単量体として共重合して得られる共重合体が挙げられる。
【0035】
(a02)の炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基[n−、iso−又はt−ブチル基、n−、sec−、iso−又はネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基、トリデシル基、ミリスチル基、セチル基及びステアリル基等のアルキル基並びにオレイル基等のアルケニル基]、脂環式炭化水素基(シクロヘキシル基等)、芳香脂肪族炭化水素基(ベンジル基及びフェネチル基等)、芳香族炭化水素基(フェニル基等)が挙げられる。これらの内、(A)の粘着力の観点から、好ましいのは炭素数1〜12のアルキル基であり、さらに好ましくはn−エチル基及びn−ブチル基及び2−エチルヘキシル基である。(a1)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0036】
共重合体(A1)において、(メタ)アクリル酸(a03)と一般式(2)で示される(メタ)アクリル酸エステル(a02)以外の重合性単量体(a04)を共重合成分としてもよい。(a04)としては、以下の重合性単量体(1)〜(10)等が挙げられる。(a04)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0037】
(1)ビニル系炭化水素(炭素数2〜20):
(1−1)脂肪族ビニル系炭化水素:炭素数2〜20のアルケン類[エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセン及び前記以外のα−オレフィン等];炭素数4〜20のアルカジエン類[ブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン及び1,7−オクタジエン等]等。
(1−2)脂環式ビニル系炭化水素:モノ又はジシクロアルケン及びアルカジエン類[シクロヘキセン、(ジ)シクロペンタジエン、ビニルシクロヘキセン及びエチリデンビシクロヘプテン等];テルペン類(ピネン及びリモネン等)等。
(1−3)芳香族ビニル系炭化水素(炭素数8〜20):スチレン及びそのハイドロカルビル(アルキル、シクロアルキル、アラルキル及びアルケニル)置換体(α−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン、クロチルベンゼン、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン及びトリビニルベンゼン等);インデン及びビニルナフタレン等。
【0038】
(2)重合性不飽和カルボン酸(炭素数4〜130)及びこれらの塩:
炭素数4〜12の重合性不飽和モノカルボン酸[クロトン酸、桂皮酸及びビニル安息香酸等];炭素数4〜12の重合性不飽和ジカルボン酸(マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸及びメサコン酸等);前記炭素数4〜12の重合性不飽和ジカルボン酸のモノハイドロカルビル(炭素数1〜18)エステル;コハク酸の水酸基含有単量体モノエステル[炭素数8〜130、例えば2−ヒドロキシアルキル(炭素数2〜4)(メタ)アクリレートの無水コハク酸開環付加体、ポリ(n=2〜30)オキシアルキレン(炭素数2〜4)グリコールモノ(メタ)アクリレートの無水コハク酸開環付加体及び2−ヒドロキシアルキル(アルキル基の炭素数2〜4)(メタ)アクリレートのカプロラクトン(1〜5モル)付加体の無水コハク酸開環付加体];並びにこれらの塩等。
【0039】
(3)スルホン基含有ビニル系単量体、ビニル系硫酸モノエステル化物及びこれらの塩:
炭素数2〜14のアルケンスルホン酸[ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸及びメチルビニルスルホン酸等];スチレンスルホン酸及びその炭素数1〜24のアルキル置換体[α−メチルスチレンスルホン酸等];スルホアルキル(炭素数1〜8)(メタ)アクリレート又は(メタ)アクリルアミド[スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸及び2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等];アルキル(炭素数3〜18)(メタ)アリルスルホコハク酸エステル;ポリ(n=2〜30)オキシアルキレン(炭素数2〜4:オキシエチレン、オキシプロピレン、オキシブチレン:単独、ランダム、ブロックでもよい)モノ(メタ)アクリレートの硫酸エステル[ポリ(n=5〜15)オキシプロピレンモノメタクリレート硫酸エステル等];並びにこれらの塩。
【0040】
(4)燐酸基含有ビニル系単量体及びその塩:
(メタ)アクリロイルオキシアルキル(炭素数1〜24)燐酸モノエステル[2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート及びフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート等];(メタ)アクリロイルオキシアルカン(炭素数1〜24)ホスホン酸類[2−アクリロイルオキシエタンホスホン酸等];並びにこれらの塩等。
【0041】
前記(2)〜(4)の塩としては、アルカリ金属塩(ナトリウム塩及びカリウム塩等)及びアルカリ土類金属塩(カルシウム塩及びマグネシウム塩等)等の塩が挙げられる。
【0042】
(5)水酸基含有ビニル系単量体:
(5−1)炭素数2〜6のジオールの不飽和カルボン酸モノエステル[ヒドロキシアルキル(炭素数2〜6)(メタ)アクリレート{ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート(以下、HEAと略記)、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及びヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等}及びそのラクトン(炭素数4〜20、例えばブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン及びラウロラクトン)1〜5モル付加体等];
(5−2)ポリ(n=2〜30)オキシアルキレン(炭素数2〜4)(メタ)アクリレート[ポリ(n=10)オキシエチレンモノ(メタ)アクリレート等];
(5−3)ポリ(n=2〜30)オキシアルキレン(炭素数2〜4)(メタ)アリルエーテル[ポリ(n=10)オキシエチレン(メタ)アリルエーテル等];
(5−4)炭素数3〜8の不飽和アルコール[(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、1−ブテン−3−オール及び2−ブテン−1,4−ジオール等];
(5−5)炭素数8〜15のスチレン化合物[ヒドロキシスチレン等];
(5−6)炭素数5〜30のアルケニルエーテル[ヒドロキシアルキル(炭素数2〜6)アルケニル(炭素数3〜6)エーテル{2−ヒドロキシエチルプロぺニルエーテル等};蔗糖アリルエーテル等];
(5−7)炭素数4〜10の水酸基含有(メタ)アクリルアミド[N−メチロール(メタ)アクリルアミド等]等。
【0043】
(6)含窒素ビニル系単量体:
(6−1)アミド基含有ビニル系単量体(炭素数3〜30):(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N,N’−メチレン−ビス(メタ)アクリルアミド、桂皮酸アミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジベンジル(メタ)アクリルアミド、メタクリルホルムアミド、N−メチルN−ビニルアセトアミド及びN−ビニルピロリドン等;
(6−2)ニトリル基含有ビニル系単量体(炭素数3〜15):(メタ)アクリロニトリル、シアノスチレン及びシアノアルキル(炭素数1〜4)(メタ)アクリレート等;
(6−3)ニトロ基含有ビニル系単量体(炭素数炭素数8〜16):ニトロスチレン等;
(6−4)炭素数4〜10の水酸基含有(メタ)アクリルアミドのアルキル(炭素数1〜4)エーテル化物[N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等];
(6−5)炭素数5〜15の1級、2級アミノ基含有(メタ)アクリレート[アミノアルキル(炭素数2〜6)(メタ)アクリレート{アミノエチル(メタ)アクリレート等}、アルキル(炭素数1〜6)アミノアルキル(炭素数1〜6)(メタ)アクリレート{t−ブチルアミノエチルメタクリレート等}等];
(6−6)炭素数5〜10の1級又は2級アミノ基含有アクリルアミド[N−アミノアルキル(炭素数2〜6)(メタ)アクリルアミド{N−アミノエチル(メタ)アクリルアミド等}及びアルキル(炭素数2〜6)アミノアルキル(炭素数1〜6)(メタ)アクリルアミド{t−ブチルアミノエチルアクリルアミド等}等]。
【0044】
(7)エポキシ基含有ビニル系単量体:グリシジル(メタ)アクリレート等。
(8)ハロゲン含有ビニル系単量体:
塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、(メタ)アリルクロライド、クロルスチレン、ブロムスチレン、ジクロルスチレン、クロロメチルスチレン、テトラフルオロスチレン、クロロプレン、フッ素化オレフィン(炭素数2〜10、フッ素原子数1〜20)及びフッ素化アルキル(炭素数2〜10、フッ素原子数1〜20)(メタ)アクリレート等。
【0045】
(9)ビニルエステル類:
炭素数2〜6の不飽和アルコール[ビニルアルコール、(メタ)アクリルアルコール及びイソプロペニルアルコール等]又はヒドロキシスチレンと炭素数1〜12のモノ又はポリカルボン酸とのエステル(酢酸ビニル、ビニルブチレート、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ジアリルフタレート、ジアリルアジペート、イソプロペニルアセテート、メチル−4−ビニルベンゾエート、ビニルメトキシアセテート、ビニルベンゾエート及びアセトキシスチレン等);アルキル(メタ)アクリレート(アルキルの炭素数1〜3又は19〜30)[メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート及びエイコシル(メタ)アクリレート等];多価(2〜3)アルコール不飽和カルボン酸エステル[エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等]等。
【0046】
(10)その他のビニル系単量体:
(10−1)ビニル(チオ)エーテル(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、2−メトキシエチルビニルエーテル、メトキシブタジエン、2−ブトキシエチルビニルエーテル、3,4−ジヒドロ1,2−ピラン、2−ブトキシ−2’−ビニロキシジエチルエーテル、2−エチルメルカプトエチルビニルエーテル、フェノキシスチレン、ジビニルサルファイド、p−ビニルジフェニルサルファイド及びエチルビニルサルファイド等);
(10−2)アリルエーテル[ポリ(ジ〜テトラ)(メタ)アリロキシアルカン(炭素数2〜6)類{ジアリロキシエタン、トリアリロキシエタン、テトラアリロキシエタン、テトラアリロキシプロパン、テトラアリロキシブタン及びテトラメタアリロキシエタン等}等];
(10−3)ビニルケトン(ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン及びビニルフェニルケトン等);
(10−4)ビニルスルホン(ビニルエチルスルフォン、ジビニルスルフォン及びジビニルスルフォキシド等);
(10−5)ポリ(n=2〜30)オキシアルキレン(炭素数2〜4)不飽和カルボン酸ジエステル[ポリ(n=10)オキシエチレンマレイン酸ジエステル等]等。
【0047】
(a04)の内、帯電防止性の観点から好ましいのは、炭素数4〜12の重合性不飽和モノカルボン酸、炭素数4〜12の重合性不飽和ジカルボン酸のモノアルキル(炭素数1〜18)エステル、コハク酸の水酸基含有単量体モノエステルである。
【0048】
重合性単量体(a04)の内、後述する粘着剤(B)の粘着性能を阻害しないという観点から好ましいのは、炭素数4〜12の重合性不飽和モノカルボン酸、炭素数4〜12の重合性不飽和ジカルボン酸のモノハイドロカルビル(炭素数1〜18)エステル、コハク酸の水酸基含有単量体モノエステル、炭素数3〜30のアミド基含有ビニル系単量体、炭素数2〜6の不飽和アルコール又はヒドロキシスチレンと炭素数1〜12のモノ又はポリカルボン酸とのエステル、炭素数2〜20のビニル系炭化水素、及び炭素数2〜6のジオールの不飽和カルボン酸モノエステル、更に好ましいのは炭素数2〜6の不飽和アルコールと炭素数1〜12のモノカルボン酸とのエステル、及びヒドロキシアルキル(炭素数2〜6)(メタ)アクリレート、特に好ましいのは、エチル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及びヒドロキシブチル(メタ)アクリレートである。
【0049】
(a04)の内、オニウムカルボキシレート基(q)部分のカルボキシレート基として導入される組成としては限定されないが、好ましくは重合性不飽和カルボン酸(炭素数3〜130)であり、更に好ましいのは、炭素数3〜12の重合性不飽和モノカルボン酸であり、最も好ましいのは(メタ)アクリル酸である。
オニウムカルボキシレート基(q)部分のカルボキシレート基は、(メタ)アクリル酸のカルボキシレート基のみから製造される組成とすることにより、(A)中の(q)部分の重量%を40%以上にするのが容易であるため好ましい。
【0050】
共重合体(A1)の構成単位となる、(メタ)アクリル酸エステル(a02)由来の構成単位(a2)と(メタ)アクリル酸由来の構成単位(a3)の重量比は、帯電防止性と粘着剤組成物としたときの粘着性の観点から、(a2)と(a3)の合計に対する(a2)の量が、好ましくは20〜80重量%、さらに好ましくは30〜70重量%である。
重合性単量体(a04)由来の構成単位(a4)の重量比は、(a2)と(a3)の合計に対して、好ましくは0〜30重量%、さらに好ましくは0〜20重量%である。
【0051】
(A1)の製造方法は特に限定されず公知の方法を用いることができるが、ラジカル重合法が好ましく、溶液重合法が分子量を調節しやすいため好ましい。
溶液重合において用いられる溶媒としては、エステル〔C(以下、炭素数をCと記載する。)2〜8、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル〕、アルコール(C1〜8、例えばメタノール、エタノール、オクタノール)、炭化水素(C4〜8、例えばn−ブタン、シクロヘキサン、トルエン)、ケトン(C3〜9、例えばメチルエチルケトン(以下、MEKと略記することがある))等が挙げられる。
【0052】
(メタ)アクリル酸(a03)とオニウム塩(z)を溶媒の存在下または非存在下で、加熱し反応させることにより、オニウムカルボキシレート基(q)を有する(メタ)アクリル酸塩(a01)が得られる。反応温度は特に限定されないが、好ましくは10〜100℃である。また、反応時間は特に限定されないが、好ましくは1〜50時間である。
オニウム塩(z)が、オニウム・炭酸エステル塩(z1)であることが好ましく、この場合も(a03)と(z1)を同様に溶媒の存在下または非存在下で反応させ、アニオン交換反応で副生する炭酸ガスを反応系から適宜除くことにより、(メタ)アクリル酸塩(a01)が得られる。
[オニウム塩(z)]
本発明における(z)には、3級アミンもしくはアミジン(z0)をアルキル化剤を用いて4級化することにより得られるものが含まれる。
【0053】
3級アミン(z0)としては、複素環含有アミン(C5〜20、例えばN−メチルピロリジン、N−エチルピロリジン、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン、N−メチルヘキサメチレンイミン、N−エチルヘキサメチレンイミン、N−メチルホルモリン、N,N’−ジメチルピペラジン等)等が挙げられる。
【0054】
アミジン(z0) のうち鎖状のものの具体例としては、N,N−ジメチル−N’−ベンジルフォルムアミジン、N−メチル−N,N’−ジベンジルフォルムアミジン、N,N−ジメチル−N’−ベンジルアセトアミジン、N,N−ジメチル−N’−フェニルアセトアミジン、N−メチル−N,N’−ジベンジルアセトアミジンなどが挙げられる。
【0055】
アミジン(z0) のうち環状のものの具体例としては、イミダゾール環、2−イミダゾリン環もしくはテトラヒドロイミダゾリン環を有する化合物が挙げられ、これらの具体例は下記のとおりである。
(1)イミダゾール単環化合物
イミダゾール同族体:1−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、1−フェニルイミダゾール、1−ベンジルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−エチル−2−メチルイミダゾール、1−メトキシエチルイミダゾール、1−フェニル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−メチル−2−フェニルイミダゾール、1−メチル−2−ベンジルイミダゾール、1,4−ジメチルイミダゾール、1,5−ジメチルイミダゾール、1,2,4−トリメチルイミダゾール、1,4−ジメチル−2−エチルイミダゾールなど
オキシアルキル誘導体:1−メチル−2−オキシメチルイミダゾール、1−メチル−2−オキシエチルイミダゾール、1−メチル−4−オキシメチルイミダゾール、1−(β−オキシエチル)−イミダゾール、1−メチル−2−エトキシメチルイミダゾール、1−エトキシメチル−2−メチルイミダゾールなど
ニトロおよびアミノ誘導体:1−メチル−4(5)ニトロイミダゾール、1,2−ジメチル−4(5)−ニトロイミダゾール、1,2−ジメチル−5(4)−アミノイミダゾール、1−メチル−4(5)−(2−アミノエチル)イミダゾール、1−(β−アミノエチル)イミダゾールなど。
【0056】
(2)ベンゾイミダゾール化合物: 1−メチルベンゾイミダゾール、1−メチル−2−ベンジルベンゾイミダゾール、1−メチル−5(6)−ニトロベンゾイミダゾールなど。
(3)2−イミダゾリン環を有する化合物: 1−メチルイミダゾリン、1,2−ジメチルイミダゾリン、1,2,4−トリメチルイミダゾリン、1,4−ジメチル−2−エチルイミダゾリン、1−メチル−2−フェニルイミダゾリン、1−メチル−2−ベンジルイミダゾリン、1−メチル−2−オキシエチルイミダゾリン、1−メチル−2−ヘプチルイミダゾリン、1−メチル−2−ウンデシルイミダゾリン、1−メチル−2−ヘプタデシルイミダゾリン、1−(β−オキシエチル)−2−メチルイミダゾリン、1−メチル−2−エトキシメチルイミダゾリン、1−エトキシメチル2−メチルイミダゾリンなど。
(4)テトラヒドロピリミジン環を有する化合物: 1−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1,2−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン−5をはじめとして、特公昭46−37503号公報に記載されているものなど。
【0057】
3級アミン及びアミジン(z0)のうち好ましいのは、環状アミジンである。さらに好ましいのは、イミダゾール環、2−イミダゾリン環もしくはテトラヒドロイミダゾリン環を有する化合物;特に、1−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−エチル−2−メチルイミダゾール、1−メトキシエチルイミダゾール、1,4−ジメチル−2−エチルイミダゾール、1−メチルベンゾイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾリン、1,2,4−トリメチルイミダゾリン、1,4−ジメチル−2−エチルイミダゾリン、1−メチル−2−ヘプチルイミダゾリン、1,2−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7および1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン−5およびこれらの混合物である。
【0058】
アルキル化剤としては、ハロゲン化炭化水素[ハロゲン化アルキル(C1〜8、例えばメチルクロライド、エチルクロライド、ブチルブロマイド、メチルアイオダイド)、芳香環含有ハライド(C6〜8、例えばフェニルブロマイド、ベンジルクロライド)等]、炭酸ジアルキルエステル(アルキル基はC3〜8、例えば炭酸ジメチル、炭酸ジエチル)、ジアルキル硫酸エステル(C2〜8、例えば硫酸ジメチル、硫酸ジエチル)、有機リチウム化合物(C4〜8、例えばブチルリチウム、フェニルリチウム)、グリニャール試薬(上記のハロゲン化炭化水素とマグネシウムを反応させたもの等)等が挙げられる。これらのうち被着体汚染の観点から好ましいのは炭酸ジアルキルエステルである。
【0059】
上記オニウム塩(z)のうち、被着体汚染の少なさの観点から好ましいのはアミジニウム・炭酸エステル塩(z1)である。
【0060】
(z1)は、アミジン(z0)を上記炭酸ジアルキルエステルを用いて4級化することにより得られ、(z1)を構成するカチオンは、前記一般式(1)におけるカチオンと同じである。
【0061】
本発明の帯電防止剤(X)は、オニウムカルボキシレート基(q)を有する共重合体(A)を必須成分として含有することを特徴とする。
本発明の帯電防止剤(X)は、更に媒体(C)を含有することができる。帯電防止剤(X)が媒体(C)を含有することで、帯電防止剤(X)の粘度低下や状態変化を行うことによるハンドリング性向上を行うことができる。
【0062】
媒体(C)としては、水及び有機溶剤[炭素数2〜8のエステル(酢酸エチル、プロピオン酸エチル及び酢酸ブチル等)、炭素数1〜8のアルコール(メタノール、エタノール及びオクタノール等)、炭素数6〜10の炭化水素(シクロヘキサン、トルエン及び軽ナフサ等)及び炭素数3〜9のケトン(メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等)等]が挙げられる。(C)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
(メタ)アクリレート系共重合体(A)製造時の溶媒を媒体(C)として使用することもできる。また、(メタ)アクリレート系共重合体(A)製造時の溶媒を除去し、媒体(C)を加えて本発明の帯電防止剤(X)を製造することもできる。
【0063】
本発明の帯電防止剤(X)の用途に応じて媒体(C)は適宜選択することができ、帯電防止剤(X)、粘着剤組成物における性能(塗工性能、粘着剤物性)を阻害しない媒体(C)を選択することが好ましい。
特に、後述する架橋剤(D)としてポリ(2〜5)イソシアネート(D11)を用いる時は、活性水素を有する官能基(カルボキシル基、水酸基、アミノ基、ヒドロキシメチル基等)を有する媒体(C)の使用量は少ないほうが好ましく、活性水素を有する官能基(カルボキシル基、水酸基、アミノ基、ヒドロキシメチル基等)を有する媒体(C)を含有しないことがさらに好ましい。
【0064】
本発明の帯電防止剤(X)中には、ハンドリング性の観点から前記媒体(C)を含有していることが好ましく、(X)中に(C)が含有される場合は(X)中の(A)の量が10〜70重量%の範囲になるように媒体(C)の量を調整することがより好ましい。
共重合体(A)は、(メタ)アクリル酸塩(a01)由来の構成単位(a1)及び下記の一般式(2)で示される(メタ)アクリル酸エステル(a02)由来の構成単位(a2)を必須構成単位とするが、他の構成単位として(メタ)アクリル酸由来の構成単位(a4)、上記の重合性単量体(a05)由来の構成単位(a5)を有していてもよい。
(a1)と(a2)の重量比は好ましくは1:4〜4:1である。
(a1)と(a2)の合計重量に対して(a4)の重量比は好ましくは0〜15重量%さらに好ましくは0〜10重量%である。
(a1)と(a2)の合計重量に対して(a5)の重量比は好ましくは0〜30重量%さらに好ましくは0〜20重量%である。
【0065】
本発明の粘着剤組成物は、帯電防止剤(X)と粘着剤(B)と架橋剤(D)を含有する。該粘着剤組成物は、混合と同時に架橋が進行するので、塗布する場合は速やかに塗布することが好ましい。
本発明の粘着剤層、粘着フィルムおよび粘着シートは、凝集力を向上させる観点から、帯電防止剤(X)と粘着剤(B)と架橋剤(D)を含有する粘着剤組成物を架橋させて使用する。
【0066】
本発明における粘着剤(B)としては、通常の粘着シートに使用されている粘着剤が使用でき、具体的にはゴム系粘着剤(B1)、アクリル系粘着剤(B2)シリコーン系粘着剤(B3)およびエチレン系粘着剤(B4)が含まれる。
(B1)を構成するポリマーとしては、重量平均分子量が400,000〜20,000,000(好ましくは500,000〜2,000,000)のゴム、例えば天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリイソブチレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体およびスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体が挙げられる。
【0067】
(B2)を構成するポリマーとしては、重量平均分子量が400,000〜2,000,000(好ましくは500,000〜1,500,000)の(メタ)アクリル系重合体、例えばアクリルモノマー単独重合体およびアクリルモノマーとその他のビニルモノマーとの共重合体が挙げられる。
アクリルモノマーとその他のビニルモノマーは、上記のハイドロカルビル基の炭素数が4〜18の(メタ)アクリレート(a1)、および(a1)以外の重合性単量体(a2)が挙げられる。
共重合体の製造は、公知の重合方法(塊重合、溶液重合、乳化重合および懸濁重合等)で重合開始剤[アゾ系重合開始剤(アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等)、パーオキサイド系重合開始剤(ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド等)等]を使用して行うことができる。
公知の重合方法(塊重合、溶液重合、乳化重合および懸濁重合等)で重合後の(メタ)アクリル系重合体に、紫外線(UV)にて架橋する反応基を付与することにより、塗工時および塗工後に紫外線(UV)にて架橋することが可能となるため、粘着力の調整を行うことができるため、好ましい。
【0068】
(B3)を構成するポリマーとしては、重量平均分子量が10,000〜1,000,000(好ましくは100,000〜500,000)のポリジメチルシロキサンおよびポリジフェニルシロキサン等が挙げられる。
【0069】
(B4)を構成するポリマーとしては、重量平均分子量が5,000〜10,000,000(好ましくは30,000〜2,000,000)のエチレン/酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)およびエチレン/エチルアクリレート共重合体樹脂(EEA)が挙げられる。また、その他共重合可能な前記のビニルモノマーをエチレンと共重合させたものでもよい。エチレン含量は、通常30〜97重量%、好ましくは40〜95重量%である。
【0070】
粘着剤(B)の形態としては、溶剤型、エマルション型、水溶液型、カレンダー用固体型、熱溶融型、液状硬化型等が挙げられる。
【0071】
本発明の粘着剤組成物中の帯電防止剤(X)と粘着剤(B)の量比(固形分比)は、帯電防止性と粘着性の観点から、(X):(B)=1:100〜50:100が好ましく、(X):(B)=5:100〜40:100がより好ましい。
【0072】
本発明の帯電防止剤(X)は添加型の帯電防止剤(X)であることから、ゴム系粘着剤(B1)、シリコーン系粘着剤(B3)およびエチレン系粘着剤(B4)にも容易に帯電防止性能を付与することができるため、第4級アンモニウム塩基(例えば特許文献5)などを含有する帯電防止性を有する樹脂に比べ、適用できる粘着剤(B)の範囲が広くなるため有用である。
【0073】
架橋剤(D)としては特に制限されることはないが、粘着剤(B)中の活性水素を有する官能基(カルボキシル基、水酸基、アミノ基、ヒドロキシメチル基等)と反応し得る反応性官能基(イソシアネート、エポキシ、ヒドラジド、オキサゾリニルおよびアジリジニル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基)を1分子中に2〜5個有する有機化合物(D1)、および価数が2〜4である多価金属キレート化合物(D2)からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0074】
(D1)の官能基当たりの分子量は、粘着剤組成物の凝集力と粘着力およびタックの観点から、好ましい下限は分子量40、さらに好ましくは60、凝集力と粘着力の観点から好ましい上限は、Mw20,000、さらに好ましくは10,000、とくに好ましくは5,000である。
(D2)の多価金属の1価当たりの分子量は、粘着剤組成物の凝集力と粘着力およびタックの観点から好ましい下限は40、さらに好ましくは50、凝集力と粘着力の観点から好ましい上限は140、さらに好ましくは130、とくに好ましくは110である。
(D1)には、ポリ(2〜5)イソシアネート(D11)、ポリ(2〜5)エポキシド(D12)、ヒドラジド(D13)、オキサゾリン化合物(D14)およびアジリジン化合物(D15)が含まれる。
【0075】
ポリイソシアネート(D11)としては、C(NCO基中の炭素を除く、以下同様)2〜18の脂肪族ポリイソシアネート、C4〜15の脂環式ポリイソシアネート、C6〜20の芳香族ポリイソシアネート、C8〜15の芳香脂肪族ポリイソシアネート、およびこれらのポリイソシアネートの変性物からなる群より選ばれる1種以上の化合物が挙げられる。
【0076】
脂肪族ポリイソシアネート(以下PIと略記)としては、ジイソシアネート(以下DIと略記)[エチレンDI、テトラメチレンDI、ヘキサメチレンDI(HDI)、ドデカメチレンDI、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンDI、リジンDI、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート等]、トリイソシアネート(以下TIと略記)[1,6,11−ウンデカンTI、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレンTIおよびリジンエステルTI(リジンとアルカノールアミンとの反応生成物のホスゲン化物)、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート、2−および/または3−イソシアナトプロピル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート等]、および上記DIの、後述する変性物等が挙げられる。
これらのうち入手のしやすさおよび工業的観点から好ましいのは、テトラメチレンDIおよびHDIである。
【0077】
脂環式PIとしては、DI[イソホロンDI(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンDI(水添MDI)、シクロヘキシレンDI、メチルシクロヘキシレンDI(水添TDI)、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート、ノルボルナンDI等]、TI[ビシクロヘプタンTI等]、および上記DIの、後述する変性物等が挙げられる。
これらのうち入手のしやすさおよび工業的観点から好ましいのは、IPDI、水添MDIおよび水添TDIである。
【0078】
芳香族PIとしては、DI〔トリレンDI(TDI)[2,4−および2,6−TDI並びにこれらの混合物]、ジフェニルメタンDI(MDI)[4,4’−および2,4’−MDI並びにこれらの混合物]、ナフチレンDI(NDI)等〕、2官能および3官能以上のPIの混合物[粗製TDI、粗製MDI(ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート)等]、および上記DIの、後述する変性物等が挙げられる。
これらのうち入手のしやすさおよび工業的観点から好ましいのは、TDI、MDIおよびNDIである。
【0079】
芳香脂肪族PIとしては、DI[キシリレンDI(XDI)、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンDI(TMXDI)、ジイソシアナトエチルベンゼン等]、上記DIの後述する変性物等が挙げられる。
これらのうち入手のしやすさおよび工業的観点から好ましいのは、XDIおよびTMXDIである。
【0080】
上記PIの変性物としては、上記に例示したPIのNCO基の一部をカルボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン、ウレア、ビュレット、イソシアヌレートおよび/またはウレタン基等に変性した化合物が挙げられる。
【0081】
上記PIの変性物のうち、ウレタン基変性物としては、過剰量の上記に例示したPIと、活性水素化合物とを反応させて得られるNCO末端ウレタンプレポリマー(遊離のPIが含まれる擬プレポリマーを含む)が挙げられる。
該活性水素化合物としては、低分子多価(2価〜4価またはそれ以上)アルコールおよび2〜3価のポリ(n=2〜30)オキシアルキレン(C2〜4)等が挙げられる。
【0082】
低分子多価(2価〜4価またはそれ以上)アルコールとしては、2〜3価アルコール〔脂肪族アルコール〔2価[C2〜20、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−および1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチルペンタンジオール、ネオペンチルグリコール(以下それぞれEG、DEG、PG、BD、HG、MPD、NPGと略記)、1,9−ノナンジオール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン]、3価[C3〜8、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン(以下それぞれGR、TMPと略記)等]〕;脂環式アルコール[C4〜20、例えば1,4−ジヒドロキシシクロヘキサン、2,2−ビス(4,4’−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン];芳香環含有アルコール[C8〜15、例えばm−およびp−キシリレングリコール、1,4−ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン]等〕および4価またはそれ以上の多価アルコール[C5〜10またはそれ以上、例えばペンタエリスリトール、α−メチルグルコシド、ソルビトール、キシリット、マンニット、グルコース、フルクトース、ショ糖、ジペンタエリスリトール、ポリグリセリン(重合度2〜20)等]が挙げられる。
2〜3価のポリ(n=2〜30)オキシアルキレン(C2〜4)としては 上記低分子多価アルコールおよび/または多価フェノール(C6〜20、例えばカテコール、レゾルシノール、ビスフェノールA、−Sおよび−F)にアルキレンオキシド(C2〜4、以下AOと略記)を付加させて得られるポリエーテルポリオール等が挙げられる。
【0083】
上記例示したPIはブロック剤でブロックされていてもよい。ブロック剤としては、例えばフェノール化合物(C6〜24、例えばフェノール、クレゾール、キシレノール、トリメチルフェノール、エチルフェノール、プロピルフェノール、クロロフェノール、ニトロフェノール、チモール、モノ−、ジ−およびトリ−α−フェニルエチルフェノールおよびt−ブチルフェノール);活性メチレン化合物[C4〜20、例えばアセト酢酸エステル(アセト酢酸エチル、アセト酢酸ブチル等)、マロン酸ジエステル(マロン酸ジエチル、マロン酸エチルブチル、マロン酸エチルベンジル等)、アセチルアセトン、ベンズイミダゾールおよび1−フェニル−3−メチル−5−ピラゾロン];ラクタム(C4〜12、例えばε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタムおよびβ−プロピオラクタム);オキシム(C3〜12、例えばアセトオキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、マルドオキシム、アセトアルドオキシム、ベンゾフェノンオキシムおよびジエチルグリオキシム);アルコール(C1〜24、例えばメタノール、エタノール、n−ブタノール、t−ブチルアルコール、t−アミルアルコール、ジメチルエチニルカルビノール、ジメチルフェニルカルビノール、メチルジフェニルカルビノール、トリフェニルカルビノール、1−ニトロ−t−ブチルカルビノール、1−クロロ−t−ブチルカルビノールおよびトリフェニルシリノール);2級芳香族アミン(C6〜20、例えばジフェニルアミン、o−、m−、p−ジトルイルアミン、N−ナフチルトルイジン、N−ナフチルキシリジン、フェニルα−ナフチルアミン、フェニルβ−ナフチルアミン、カルバゾール、2,2’−ジニトロジフェニルアミンおよび2,2’−ジクロロフェニルアミン);メルカプト化合物(C1〜18、例えば2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトチアゾリン、ドデシルメルカプタン、エチル2−メルカプトチアゾール、2−メルカプト5−クロロベンゾチアゾール、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、ブチルメルカプタン、フェニルメルカプタン、トルイルメルカプタン、エチルフェニルメルカプタンおよびエチニルジメチルチオカルビノール);イミダゾール化合物(C3〜10、例えばイミダゾールおよび2−エチルイミダゾール);酸アミド(C3〜50、例えばアセトアニリド、アクリルアミドおよびダイマー酸アミド);酸イミド(C4〜10、例えばコハク酸イミド、フタル酸イミドおよびグルタル酸イミド)および重亜硫酸塩が挙げられる。
【0084】
上記NCO末端ウレタンプレポリマーにおいて、PI中のNCO基と活性水素の当量比(NCO/活性水素当量比)は、通常1.1/1〜100/1、好ましくは2/1〜80/1、さらに好ましくは3/1〜60/1である。該ウレタンプレポリマー中のNCO含量(重量%)は、通常3〜35%である。
【0085】
ポリエポキシド(D12)としては、グリシジル型ポリエポキシド(D121)(エポキシ当量80〜2,500)および非グリシジル型ポリエポキシド(D122)(エポキシ当量43〜10,000)が挙げられる。
(D121)としては、グリシジルエーテル〔多価フェノール(前記)のグリシジルエーテル(ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテルおよびピロガロールトリグリシジルエーテル等)、低分子多価アルコール(前記)のグリシジルエーテル(EG−、PG−およびNPGジグリシジルエーテル、TMP−およびGRトリグリシジルエーテル等)、ポリエーテルポリオール(前記)のグリシジルエーテル[ポリエチレングリコール(以下PEGと略記)(Mw200〜2,000)、ポリプロピレングリコール(以下PPGと略記)(Mw200〜2,000)およびビスフェノールAのAO1〜20モル付加物のジグリシジルエーテル等]〕;グリシジルエステル[ポリカルボン酸(n=2〜4またはそれ以上)のグリシジルエステル(アジピン酸、フタル酸およびダイマー酸のジグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステル等];グリシジルアミン〔1級アミン(C2〜10、例えばヘキサメチレンジアミン、アニリン、トルイジン、キシリレンジアミン)またはポリ(n=2〜4またはそれ以上)アミンのグリシジル化物[N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルキシリレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルヘキサメチレンジアミン]等が挙げられる。
【0086】
(D122)としては、脂肪族ポリエポキシド〔C4〜20、例えばエポキシ化(ポリ)アルカジエン[エポキシ化ブタジエン、エポキシ化ポリ(n=2〜4またはそれ以上)ブタジエン、エポキシ化油脂(エポキシ化大豆油等)等]等〕および脂環式ポリエポキシド(リモネンジオキシド、ジシクロペンタジエンジオキシド等)が挙げられる。
【0087】
ヒドラジド(D13)としては、ポリカルボン酸[C2〜15、例えば脂肪族(シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸)、芳香族(フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等)等]のジヒドラジド、アルキレン(C2〜6)ジヒドラジド(エチレン−1,2−およびプロピレン−1,3−ジヒドラジド等)等が挙げられる。
【0088】
オキサゾリン化合物(D14)としては、C3〜10、例えば2−オキサゾリン、およびその2−アルキル(C1〜4)置換体、例えば2−メチル−、2−エチル−2−、2−イソプロピル−2−および2−n−プロピル−2−オキサゾリンが挙げられる。
【0089】
アジリジン化合物(D15)としては、C10〜50、例えばポリ(n=2〜4またはそれ以上)アミンの誘導体[1,1’−(メチレン−ジ−p−フェニレン)ビス−3,3−アジリジニル尿素、1,1’−(ヘキサメチレン)ビス−3,3−アジリジニル尿素等]、低分子多価アルコール(前記)のポリ(2−アジリジニルプロピオネート)[エチレンビス−(2−アジリジニルプロピオネート)、トリメチロールプロパン−トリス−(2−アジリジニルプロピオネート)、2,4,6−トリアジリジニル−1,3,5−トリアジン等]が挙げられる。
【0090】
金属キレート化合物(D2)には、多価(2〜4価)金属[IIA族(Mg、Ca等)、IIB族(Zn等)、IIIA族(Al等)、IVA族(Sn、Pb等)、遷移金属(Ti、Zr、マンガン、Fe、Co、Ni、Cu等)等]のキレート化合物(βジケトン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル等のキレーターとのキレート化合物){例えばアルミニウムキレート化合物〔アルミニウムアセチルアセトナート[川研ファインケミカル(株)製「アルミキレートA(W)」等]等〕}が含まれる。
粘着剤(B)に(D2)を加えると(D2)中のキレート配位子がはずれ、多価金属が粘着剤(B)の官能基に配位して架橋が行なわれる。
【0091】
架橋剤(D)の使用量は、粘着剤(B)中の活性水素と該活性水素と反応する(D1)の官能基、または(D2)の価数の当量比で表した場合、被着体への糊残りおよび被着体への密着力の観点から、(B)/〔(D1)または(D2)〕の当量比が、好ましくは1/0.01〜1/2、さらに好ましくは1/0.02〜1/1となる量である。
また、本発明の粘着剤組成物中の粘着剤(B)と架橋剤(D)の量比は、粘着性の観点から、粘着剤(B)と架橋剤(D)の固形分重量比で、(B):(D)=100:0.01〜100:10が好ましく、(B):(D)=100:0.1〜100:5がより好ましい。
【0092】
本発明の帯電防止剤(X)および粘着剤組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて粘着性付与樹脂(E1)、可塑剤(E2)、充填剤(E3)、顔料(E4)、紫外線吸収剤(E5)、酸化防止剤(E6)、シランカップリング剤(E7)および(X)以外の帯電防止剤(E8)からなる群から選ばれる添加剤(E)の少なくとも1種をさらに加えることができる。(E1)〜(E6)の具体例としては、特開2008−7702号公報に記載のものが使用できる。
【0093】
シランカップリング剤(E7)としては、重合性不飽和基含有ケイ素化合物(ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等)、エポキシ基含有ケイ素化合物[3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等]、アミノ基含有ケイ素化合物[3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等]、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等、およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0094】
帯電防止剤(E8)としては、特許文献1記載のポリエーテルポリオール(E81)、特許文献2記載の界面活性剤(E82)、特許文献3記載の金属系導電性充填剤(E83)、カーボンブラック(E84)、重量平均分子量が5000未満のオニウム塩(E85)等が挙げられる。
【0095】
(E81)の具体例としては、特許文献1に記載のものが使用できる。(E82)の具体例としては、特許文献2に記載のものが使用できる。(E83)の具体例としては、特許文献3に記載のものが使用できる。(E84)の具体例としては、特許文献4に記載のものが使用できる。
しかし、(E81)〜(E84)は少量でも帯電防止剤のブリードアウトが懸念されるため、使用量は制限され、使用しないことが好ましい。
【0096】
(E85)の具体例としては、下記一般式(12)で示されるオニウム塩(E85)であり、前記のオニウム塩(z)と同様のものが使用できる。
【0098】
(一般式(12)中、Q
+は式(4)〜式(9)のいずれかのカチオンである。Y
−は共役塩基であるアニオンを表す。)
【0099】
(E85)のうち、被着体汚染の少なさの観点から好ましいのは、X
−は−11.93未満のHammett酸度関数(H
0)を有する超強酸の共役塩基であるアニオンである。
【0100】
X
−の共役酸である超強酸は、100%硫酸より強い酸強度を有する酸(「超強酸・超強塩基」田部浩三、野依良治著、講談社サイエンティフィック刊、p1参照)であり、Hammettの酸度関数(H
0)が100%硫酸の−11.93未満のものであり、プロトン酸及びプロトン酸とルイス酸の組み合わせからなる酸が挙げられる。
【0101】
プロトン酸の超強酸の具体例としては、トリフルオロメタンスルホン酸(H
0=−14.10)、ペンタフルオロエタンスルホン酸(H
0=−14.00)等が挙げられる。
【0102】
プロトン酸とルイス酸の組み合わせに用いられるプロトン酸としては、ハロゲン化水素(フッ化水素、塩化水素、臭化水素及びヨウ化水素)が挙げられ、ルイス酸としては三フッ化硼素、五フッ化リン、五フッ化アンチモン、五フッ化砒素及び五フッ化タウリン等が挙げられる。
プロトン酸とルイス酸の組み合わせは任意であるが、組み合わせて得られる超強酸の具体例としては、四フッ化硼素酸、六フッ化リン酸、塩化フッ化硼素酸、六フッ化アンチモン酸、六フッ化砒酸及び六フッ化タウリン等が挙げられる。
【0103】
Y
−として、一般式(4)で表される重量平均分子量が5000未満のオニウム塩(E85)の耐熱性の観点から好ましいのは、Hammettの酸度関数(H
0)が−12.00以下の超強酸の共役塩基、更に好ましいのはトリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、四フッ化硼素酸、六フッ化リン、塩化フッ化硼素酸、六フッ化アンチモン、六フッ化砒素又は六フッ化タウリンの共役塩基、特に好ましいのは、トリフルオロメタンスルホン酸、四フッ化硼素酸又は六フッ化リン酸の共役塩基、最も好ましいのはトリフルオロメタンスルホン酸又は四フッ化硼素酸の共役塩基である。
【0104】
帯電防止剤(X)中の(E85)の含有量は、耐汚染性の観点から、(メタ)アクリレート系共重合体(A)と重量平均分子量が5000未満のオニウム塩(E85)の固形分重量比で、(A):(E85)=100:0〜100:5が好ましく、(A):(E85)=100:0〜100:3がより好ましく、(A):(E85)=100:0〜100:0.5が更に好ましい。
【0105】
本発明の粘着剤層、粘着フィルムおよび粘着シートに使用する粘着剤組成物は、本発明の帯電防止剤(X)と粘着剤(B)と架橋剤(D)および必要により添加剤(E)を通常の混合装置(撹拌機を備えた混合槽、スタティックミキサー等)で均一に混合することにより製造することが好ましい。(B)と(D)はフィルムやシートに塗布する直前に混合するほうが好ましく、(E)は本発明の帯電防止剤(X)の製造の段階(製造前の原料、製造途中の反応物または製造後の生成物)において加えてもよい。
【0106】
本発明のフィルム状である粘着剤層、粘着フィルムおよび粘着シートのうち、フィルム状である粘着剤層は、本発明の粘着剤組成物を種々の塗工装置を用いて離型フィルム等の離型性を有する基材の少なくとも片面の少なくとも一部に直接塗布し、加熱して溶媒あるいは分散媒の乾燥を行うとともに、好ましくは粘着剤(B)と架橋剤(D)の反応を進行させ、さらに養生を行って架橋させる方法により製造することができる。
また、粘着フィルムおよび粘着シートは、本発明の粘着剤組成物を種々の塗工装置を用いて基材の少なくとも片面の少なくとも一部に直接塗布し、加熱して溶媒あるいは分散媒の乾燥を行うとともに、好ましくは粘着剤(B)と架橋剤(D)の反応を進行させ、さらに養生を行って架橋させる方法、または離型フィルム等に粘着剤組成物を同様に塗布した後、乾燥して得られた粘着剤を、基材の少なくとも片面に転写する方法によりフィルム状、シート状あるいはテープ状などの形態に製造することができる。
【0107】
本発明の粘着剤組成物を硬化させる際の加熱手段としては、熱風(60〜150℃)、(近)赤外線および高周波等が挙げられる。
また、上記養生の条件としては、例えば室温で3〜7日間程度または45℃で12〜72時間程度が挙げられる。
粘着剤組成物の乾燥・硬化後の塗膜厚さは、粘着剤の接着力および乾燥、硬化性の観点から、好ましくは1〜250μm、さらに好ましくは1〜100μmである。
【0108】
塗工方法は特に限定されず、例えばスパイラル塗工、ロール塗工、スロットコート塗工、コントロールシーム塗工及びビード塗工等の公知の塗工方法を用いることができる。塗工装置としては、グラビアコータ、ロールコータ(グラビアロール及びリバースロール等)、リバースコータ、ドクターブレード、バーコータ、コンマコータ、ファウンテンダイコータ、リップコータ、ナイフコータ、カーテンコーター、ビード、スパイラル、スプレー、スロット及び押出機(単軸、二軸押出機及びニーダールーダー)等が挙げられる。
【0109】
本発明の粘着フィルムおよび粘着シートは、本発明の粘着剤組成物から形成される粘着剤層を有し、通常、粘着剤層と被着体からなる。
【0110】
被着体の材質としては、ガラス、各種プラスチック[ポリオレフィン(ポリエチレン及びポリプロピレン等)、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、レーヨン及びポリアミド等]、紙(和紙及びクレープ紙等)金属及び木材等が挙げられる。これらの被着体のうち、帯電しやすいものについては、種々の帯電防止剤を添加または塗布することにより帯電防止性を付与したものであることが望ましい。
【0111】
被着体の形状としては、フィルム、シート、フラットヤーン、板、フォーム、織布及び不織布等が挙げられる。
【0112】
本発明の帯電防止剤(X)および粘着剤組成物は、偏光板、位相差板、光拡散板等の各種光学部材の表面保護、および液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ等の各種の画像表示装置の表面保護を目的とした表面保護フィルム、ダイシングテープ、キャリアテープ等の電子部品加工用テープ、偏光板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、光拡散フィルム、さらにはこれらが積層されているものなどの光学部材や液晶パネル、各種の光源や拡散板など液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ等の各種画像表示装置を構成する部材の貼り合わせる際に用いられる粘着剤として、好適に用いられる。また、ステンレス鋼板、プラスチック板および塗装面の表面保護用、包装用(プラスチックケースの梱包、包装など)、マスキング用(ガラスシーリング、建築養生など)、医療用(絆創膏など)および事務用などの各種用途にも好適に用いられる。
【実施例】
【0113】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下において、「部」は重量部、「%」は重量%を示す。
【0114】
[イミダゾリウム・炭酸エステル塩(z1)の製造]
製造例1
撹拌式オートクレーブにエチルイミダゾール96部、炭酸ジメチル90部および溶媒としてメタノール64部を仕込み、反応温度110℃にて12時間反応させた後、50℃、減圧下でメタノールを留去して、メチルエチルイミダゾリウム・モノメチル炭酸塩(z1−1)186部を得た。(z1−1)の固形分濃度は45%であった。
【0115】
[共重合体(A)を含有する帯電防止剤(X)の製造]
実施例1
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロートおよび窒素ガス導入管を備えた反応容器に、MEK50部を仕込み、80℃に昇温した。次いで滴下ロートに、エチルアクリレート60部、アクリル酸40部、MEK25部、および2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.85部を仕込み均一混合液を得た。該滴下ロートを反応容器に取り付け、窒素ガスを通じながら4時間かけて反応容器内に連続的に滴下してラジカル重合させた。滴下終了後1時間熟成させ、その後2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)/MEK(0.5部/25部)溶液25.5部を滴下ロートを用いて、2時間かけて連続的に滴下してラジカル重合させた。
さらに、80℃で重合を3時間継続させ、カルボン酸基を有する(メタ)アクリレート共重合体(A1−1)の溶液を得た。
(A1−1)の溶液100部に、メチルエチルイミダゾリウム・モノメチル炭酸塩(z1−1)109部を添加し、反応温度70℃にて4時間反応させ、副生する炭酸ガスを除くことによって、メチルエチルイミダゾリウムカルボキシレート基を有する(メタ)アクリレート共重合体(A−1)の溶液からなる帯電防止剤(X−1)を得た。(X−1)の固形分濃度は44%、(A−1)中のメチルエチルイミダゾリウムカルボキシレート基(q)部分の重量%は52%、(A−1)のMwは8万であった。
【0116】
実施例2〜5及び比較例1〜2
炭素数4〜18の(メタ)アクリル酸エステル(a02)、(メタ)アクリル酸(a03)、メチルエチルイミダゾリウム・炭酸エステル塩(z1−1)を表1に記載のものに変更する以外は実施例1と同様にして、共重合体(A−2)〜(A−5)の溶液からなる本発明の帯電防止剤(X−2)〜(X−5)、及び(メタ)アクリレート共重合体(A’−1)、(A’−2)の溶液からなる比較用の帯電防止剤(X’−1)、(X’−2)を得た。
【0117】
実施例6
炭素数4〜18の(メタ)アクリル酸エステル(a02)、(メタ)アクリル酸(a03)、メチルエチルイミダゾリウム・炭酸エステル塩(z1−1)を表1に記載のものに変更し、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2部にした以外は実施例1と同様にして、共重合体(A−6)の溶液からなる本発明の帯電防止剤(X−6)を得た。
【0118】
実施例7
炭素数4〜18の(メタ)アクリル酸エステル(a02)、(メタ)アクリル酸(a03)、メチルエチルイミダゾリウム・炭酸エステル塩(z1−1)を表1に記載のものに変更し、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.5部にした以外は実施例1と同様にして、共重合体(A−7)の溶液からなる本発明の帯電防止剤(X−7)を得た。
【0119】
【表1】
【0120】
[比較用の共重合体(A’)を含有する帯電防止剤(X’)の製造]
比較例3
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロートおよび窒素ガス導入管を備えた反応容器に、MEK50部を仕込み、80℃に昇温した。次いで滴下ロートに、n−ブチルアクリレート30部、2−エチルヘキシルアクリレート30部、アクリル酸40部、MEK25部、および2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)6.55部を仕込み均一混合液を得た。該滴下ロートを反応容器に取り付け、窒素ガスを通じながら4時間かけて反応容器内に連続的に滴下してラジカル重合させた。滴下終了後1時間熟成させ、その後2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)/MEK(3.5部/25部)溶液28.5部を滴下ロートを用いて、4時間かけて連続的に滴下してラジカル重合させた。
さらに、80℃で重合を3時間継続させた後、カルボン酸基を有する(メタ)アクリレート共重合体(A1’−3)の溶液を得た。
(A1’−3)の溶液100部に、メチルエチルイミダゾリウム・モノメチル炭酸塩(A2−1)109部を添加し、反応温度70℃にて4時間反応させ、副生する炭酸ガスを除くことによって、比較用のメチルエチルイミダゾリウムカルボキシレート基を有する(メタ)アクリレート共重合体(A’−3)の溶液からなる比較用の帯電防止剤(X’−3)を得た。(X’−3)の固形分濃度は45%、(A’−3)中のオニウムカルボキシレート基(q)部分の重量%は52%、(A’−3)のMwは3千であった。
【0121】
比較例4
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロートおよび窒素ガス導入管を備えた反応容器に、酢酸エチル50部を仕込み、80℃に昇温した。次いで滴下ロートに、n−ブチルアクリレート30部、2−エチルヘキシルアクリレート30部、アクリル酸40部、酢酸エチル25部、および2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.5部を仕込み均一混合液を得た。該滴下ロートを反応容器に取り付け、窒素ガスを通じながら4時間かけて反応容器内に連続的に滴下してラジカル重合させた。滴下終了後1時間熟成させ、その後2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)/酢酸エチル(0.5部/50部)溶液50.5部を滴下ロートを用いて、4時間かけて連続的に滴下してラジカル重合させた。
さらに、80℃で重合を3時間継続させた後、カルボン酸基を有する(メタ)アクリレート共重合体(A1’−4)の溶液を得た。
(A1’−4)の溶液100部に、メチルエチルイミダゾリウム・モノメチル炭酸塩(A2−1)109部を添加し、反応温度70℃にて4時間反応させ、副生する炭酸ガスを除くことによって、比較用のメチルエチルイミダゾリウムカルボキシレート基を有する(メタ)アクリレート共重合体(A’−4)の溶液からなる比較用の帯電防止剤(X’−4)を得た。(X’−4)の固形分濃度は30%、(A’−4)中のオニウムカルボキシレート基(q)部分の重量%は52%、(A’−4)のMwは35万であった。
【0122】
比較例5
比較用の帯電防止剤(X’−5)としてビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム[東京化成(株)製]を使用した。
【0123】
[帯電防止剤の固形分濃度の調整]
帯電防止剤(X−1)〜(X−7)、および比較用の帯電防止剤(X’−1)〜(X’−5)を計算量のMEKにて希釈することにより、それぞれ固形分濃度を20%に調整した帯電防止剤(XX−1)〜(XX−7)および比較用の固形分濃度を20%に調整した帯電防止剤(XX’−1)〜(XX’−5)を作成した。
【0124】
[粘着剤(B)の製造]
製造例2
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロートおよび窒素ガス導入管を備えた反応容器に、MEK50部を仕込み、80℃に昇温した。次いで滴下ロートに、n−ブチルアクリレート80部、2−ヒドロキシエチルアクリレート17部、アクリル酸3部、MEK30部、および2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.45部を仕込み均一混合液を得た。該滴下ロートを反応容器に取り付け、窒素ガスを通じながら4時間かけて反応容器内に連続的に滴下してラジカル重合させた。滴下終了後1時間熟成させ、その後2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)/MEK(0.3部/20部)溶液20.3部を滴下ロートを用いて、2時間かけて連続的に滴下してラジカル重合させた。
さらに、80℃で重合を3時間継続させた後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート10部を加えて60℃で反応を3時間継続させた。
さらに希釈溶剤としてMEKを加えることにより、固形分濃度が20.0%に調整した粘着剤(B−1)の溶液を得た。(B−1)のGPC法によるMwは40万であった。
【0125】
実施例11
上記固形分濃度を20%に調整した帯電防止剤(XX−1)20部、(B−1)80部に、架橋剤(D)としてN,N,N’,N’−テトラグリシジルキシリレンジアミン[三菱ガス化学工業(株)製、商品名「TETRAD−X」]の10%トルエン溶液(D−1)2部を添加し、均一に混合して配合液を作成した。この配合液を離型ポリエステルフィルム[リンテック(株)製、商品名「スーパステック SP−PET38」]基材に乾燥後膜厚が30μmになるように塗工し、60℃で1分間、さらに100℃で1分間各々熱風乾燥させ、さらに45℃で3日間養生した後、離型ポリエステルフィルムから剥がして粘着剤層(基材がなく粘着剤のみからなるフィルム。以下同様。)を得た。
上記において、「スーパステック」をポリエステルフィルム[東レ(株)製、商品名「ルミラー」タイプT]に代え、該フィルム上に上記配合液を乾燥後膜厚が30μmになるように塗工して、上記と同様に行い、粘着フィルム(基材と粘着剤からなるフィルム。以下同様。)を得た。該粘着剤層または粘着フィルムについて、下記の性能評価方法に従って評価した。得たサンプルの内容を表2に示す。また、評価結果を表2に示す。
【0126】
実施例12〜18、比較例11〜15
帯電防止剤(XX−1)、(B−1)を表2に記載のものに変更する以外は実施例11と同様の操作を行い、粘着剤層または粘着フィルムを作成して各性能を評価した。得たサンプルの内容を表2に示す。また、評価結果を表2に示す。
【0127】
【表2】
【0128】
(1)粘着力
ステンレス板(SUS304、以下同じ。)に貼り付け面積が幅25mm×長さ100mmとなるように粘着フィルム試験片を貼り付け[2kg荷重のローラーで1往復、以下同じ。]、JIS−Z−0237に従い常温(23℃)での粘着力(単位:N/25mm)を評価した。
【0129】
(2)帯電防止性(表面抵抗率)
23℃×65%RHの条件で12時間、粘着剤層試験片を静置した後に、JIS−K6911に記載の方法で表面抵抗率を評価した。
【0130】
(3)被着体表面への汚染性
ステンレス板に50×100mmの面積の粘着フィルム試験片を貼り付け、60℃×90%RHの条件で1週間静置した後、試験片を剥がしステンレス板の表面の曇り、糊残り等の汚染の有無を肉眼で観察し、下記の基準で評価した。
○ :曇りおよび糊残りともになし
△ :曇りまたは糊残りがわずかにあり
× :曇りまたは糊残りが顕著にあり
【0131】
表2の結果から、(A)中のオニウムカルボキシレート基(q)部分の重量%が40%〜70%であり、(A)の重量平均分子量が5,000〜300,000である帯電防止剤(X)を用いて製造した粘着剤組成物は、帯電防止性に優れ、被着体を汚染することがないことが分かった。