【課題】光硬化性、保存安定性、吐出性を損なうことなく、ポリエチレンテレフタレートやポリプロピレン、ポリエチレン等のプラスチック類フィルム等に対する密着性、折れ曲がり性が良好な光硬化型インクジェットインク組成物を提供する。
【解決手段】本発明の光硬化型インクジェット組成物は、少なくとも、(A)単官能モノマー、(B)光重合開始剤、および(C)表面調整剤を含む光硬化型インクジェットインク組成物において、(A)単官能モノマーとして、当該(A)単官能モノマー全量に対し、(A−1)脂環式炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマー60〜85質量%、(A−2)芳香族炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマー15〜30質量%、(A−3)飽和鎖式炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマー0.5〜10質量%を含むことを特徴とする。
(A−3)飽和鎖式炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマーとして、少なくともイソステアリル(メタ)アクリレートを含む、請求項1に記載の光硬化型インクジェットインク組成物。
(A−1)脂環式炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマーとして、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート及びジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種を含む、請求項1または2に記載の光硬化型インクジェットインク組成物。
(A−2)芳香族炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマーとして、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種を含む、請求項1から3までのいずれかに記載の光硬化型インクジェットインク組成物。
(B)光重合開始剤として、(B−1)アシルホスフィンオキサイド化合物、(B−2)チオキサントン化合物及び(B−3)アルキルフェノン化合物を含む、請求項1から4までのいずれかに記載の光硬化型インクジェットインク組成物。
(B)光重合開始剤の全量に対し、(B−1)アシルホスフィンオキサイド化合物を40〜70質量%含み、(B−2)チオキサントン化合物を20〜40質量%含み、(B−3)アルキルフェノン化合物を5〜20質量%含む、請求項5に記載の光硬化型インクジェットインク組成物。
(C)表面調整剤として、少なくともポリエーテル変性シリコン(メタ)アクリレートモノマーと、ポリエーテル変性シロキサンとを、質量比で、1:10〜10:1の割合で含み、ポリオレフィン表面に対して適用される、請求項1から6までのいずれかに記載の光硬化型インクジェットインク組成物。
【背景技術】
【0002】
インクジェットインクとしては、水系と溶剤系が多く使用されており、各々の特徴に応じて用途が使い分けられている。
しかしながら、水性インクでは印刷基材に制限があり、耐水性が比較的悪い、インクの乾燥エネルギーが大きいなどの問題点を有している。
溶剤系インクでは上記水性インクでの問題点が改善できるが、乾燥によるヘッドへのインク成分付着や、溶剤揮発による臭気の発生、換気装置などの設備が必要となるなどの問題を有している。そのため、近年では比較的揮発性の低い光硬化型インクへの置換えが期待されている。
このように、光硬化型インクは、乾燥工程を簡略化することによるコストダウンや、環境対応としての溶剤の揮発量低減などのメリットから、溶剤型インクからの置換えが進み、近年使用量が増加しており、オフセット、シルクスクリーン、トップコート剤などに供給、使用されている。
【0003】
しかし、プラスチック類フィルム、特にポリエチレンテレフタレートやポリプロピレン、ポリエチレン等のフィルムは、表面の極性が小さく化学的に安定で有機溶剤に侵されることが少ないという特徴をもっている。
そのため、これらのフィルムについて何も表面処理を行わない場合には、表面の濡れが悪く、インクの密着性や耐折り曲げ性が十分に得られないなどの欠点があった。
密着性、耐折り曲げ性を向上させる手段として、モノマーの架橋密度を下げることも考えられるが、この場合は、硬化速度が低下するため生産性が低下するなどの欠点が生じる。
その他、密着性、耐折り曲げ性を向上させるための手段として、予め被記録媒体にコロナ放電処理やフレーム処理等を行うことが効果的であるが、装置が大掛かりで高額となり、また、処理後の経時変化において密着性が低下することがあるなどの欠点があった。
よって、実使用上、十分な密着性、耐折曲り性を得ながら、生産性の向上、設備のコストダウンなどをできないのが実情であった。
【0004】
ところで、光硬化型インクジェットインクとして、少なくとも(A)ジプロピレングリコールジアクリレート、(B)N−ビニルカプロラクタム、(C)Tgが20℃未満の単官能アクリルモノマーからなるインクジェット用インキにおいて、(A),(B),(C)の配合量の合計が全インキ成分中60〜90重量%かつTgが20℃以上の単官能アクリルモノマーの配合量が10重量%未満であることを特徴とする紫外線硬化型インクジェットインキが知られている(特許文献1参照)。この技術によれば、吐出性、硬化性、可撓性に優れた紫外線硬化型インクジェットインキを提供することができるとされる。
また、着色材および重合性モノマーを含有するエネルギー線硬化型インクジェットインク組成物であって、前記重合性モノマーが、分子内に芳香族炭化水素系の環状構造を有する単官能モノマーおよび分子内に脂肪族炭化水素系の環状構造を有する単官能モノマーを含み、かつ、重合性モノマーの90質量%以上が単官能モノマーであるエネルギー線硬化型インクジェットインク組成物も知られている(特許文献2参照)。この技術によれば、種々の材質の被記録媒体表面に対して高い密着性を有し、かつ、硬化後に優れた延伸性を有するエネルギー線硬化型インクジェットインク組成物を提供することができるとされる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明にかかるインク組成物の好ましい実施形態について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
【0010】
〔A:単官能モノマー〕
本発明のインク組成物は、少なくとも(A)単官能モノマーを含み、この(A)単官能モノマーとして、(A−1)脂環式炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマーと、(A−2)芳香族炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマーと、(A−3)飽和鎖式炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマーを含む。
【0011】
<A−1:脂環式炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマー>
本発明において、(A−1)脂環式炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマー(以下、「脂環式単官能(メタ)アクリレート」と称する場合がある)とは、分子内に1個以上の脂環式炭化水素基を有する重合性(メタ)アクリレートモノマーをいう。
脂環式炭化水素基としては、例えばシクロアルカン骨格、ノルボルナン骨格およびアダマンタン骨格等の脂肪族環状構造が挙げられる。
【0012】
そのような脂環式単官能(メタ)アクリレートとしては、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、4−n−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルシクロへキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、3,5,5−トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等の分子内に脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中では、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートの1種又は2種以上が好ましく、イソボルニル(メタ)アクリレート及び/又はジシクロペンテニル(メタ)アクリレートが特に好ましい。イソボルニル(メタ)アクリレート及び/又はジシクロペンテニル(メタ)アクリレートを含有することにより、光重合開始剤や顔料分散剤などの溶解性に優れ、良好な保存安定性を得ることができる。
特に、2種類以上を組み合わせて用いることが好ましく、種々の材質の被記録媒体、とりわけポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等のプラスチック類フィルムに対して優れた濡れ性及び密着性を得ることができる。
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートまたはメタクリレートを表し、「(メタ)アクリロイルオキシ」等の表記も同様の意味を有する。
【0013】
<A−2:芳香族炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマー>
本発明において、(A−2)芳香族炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマー(以下、「芳香族単官能(メタ)アクリレート」と称する場合がある)とは、分子内に1個以上の芳香族炭化水素基を有する重合性(メタ)アクリレートモノマーをいう。
芳香族炭化水素基としては、例えばベンゼンのような単環芳香族、ナフタレンおよびアントラセンなどのような多環芳香族等の芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0014】
そのような芳香族単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェノールEO変性(メタ)アクリレート、パラクミルフェノールEO変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールEO変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールPO変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリ(エチレングリコールプロピレングリコール)(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート等の分子内に1個以上の芳香族炭化水素系の環状構造を有する(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中では、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートの1種又は2種以上が好ましく、ベンジル(メタ)アクリレートが特に好ましい。ベンジル(メタ)アクリレートを含有することにより、種々の材質の被記録媒体、とりわけポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等のプラスチック類フィルムに対して優れた硬化性を得ることができ、さらに低粘度のインク組成物を得ることができるため吐出性に優れる。
【0015】
<A−3:飽和鎖式炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマー>
本発明において、(A−3)飽和鎖式炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマー(以下、「飽和鎖式単官能(メタ)アクリレート」と称する場合がある)とは、分子内に1個以上の飽和鎖式炭化水素基を有する重合性(メタ)アクリレートモノマーをいう。
飽和鎖式炭化水素基としては、脂環基や芳香環基といった環状構造を有しない、典型的には直鎖状又は分岐鎖状構造が挙げられる。
【0016】
そのような飽和鎖式単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ノルマルブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ノルマルオクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、2−デシルテトラデカニル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、イソヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、イソヘプタデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの(メタ)アクリレートは1種類又は2種類以上を使用できる。
これらの中では、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−デシルテトラデカニル(メタ)アクリレートの1種又は2種以上が好ましく、ラウリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートが特に好ましい。ラウリル(メタ)アクリレート及び/又はイソステアリル(メタ)アクリレートを含有することにより、種々の材料の記録媒体、とりわけポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等のプラスチック類フィルムに対して優れた耐折り曲げ性を得ることができ、良好な接着性を得ることができる。
【0017】
<インク組成物中の(A)単官能モノマーの含有量>
本発明のインク組成物は、(A)単官能モノマー全量に対して、(A−1)脂環式炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマーを60〜85質量%含み、(A−2)芳香族炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマーを15〜30質量%含み、(A−3)飽和鎖式炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマーを0.5〜10質量%含む。
これら3種の単官能モノマーを前記の範囲で含有することにより、得られるインク組成物に十分な密着性および耐折り曲げ性、濡れ性を付与することができる。
(A−1)脂環式炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマーを70〜80質量%含み、(A−2)芳香族炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマーを20〜25質量%含み、(A−3)飽和鎖式炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマーを2〜8質量%含むことが好ましい。
【0018】
〔B:光重合開始剤〕
本発明のインク組成物は、低エネルギーの照射手段により重合を開始させるために光重合開始剤を含有する。特に、光ラジカル重合型の光重合開始剤を含有することが望ましい。
光重合開始剤として、波長450〜300nmの光により開始剤機能が発現するものが好ましい。
光重合開始剤の具体例としては、(B−1)アシルホスフィンオキサイド化合物、(B−2)チオキサントン化合物、(B−3)アルキルフェノン化合物が好ましく、これら3種を併用することが特に好ましい。
【0019】
<B−1:アシルホスフィンオキサイド化合物>
(B−1)アシルホスフィンオキサイド化合物としては、具体的には、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイドなどが好ましく挙げられ、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドが特に好ましい。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
<B−2:チオキサントン化合物>
(B−2)チオキサントン化合物としては、具体的には、例えば、チオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントンなどが好ましく挙げられ、4−イソプロピルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントンが特に好ましい。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
<B−3:アルキルフェノン化合物>
(B−3)アルキルフェノン化合物としては、具体的には、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロへキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オンなどが好ましく挙げられ、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オンが特に好ましい。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
<インク組成物中の(B)光重合開始剤の含有量>
インク組成物中の(B)光重合開始剤の含有量は、重合性化合物の含有量や種類にもよるが、インク組成物100質量部に対して、好ましくは2質量部以上、より好ましくは5質量部以上であり、また好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。光重合開始剤の含有量が前記範囲にあると、インク組成物に十分な硬化性を付与することができ、インク組成物が低温状態において析出することを防止し得る。
また、(B)光重合開始剤の全量に対して、(B−1)アシルホスフィンオキサイド化合物を40〜70質量%含み、(B−2)チオキサントン化合物を20〜40質量%含み、(B−3)アルキルフェノン化合物を5〜20質量%含むことが好ましい。
これら3種類の光重合開始剤を前記の範囲で含有することにより、得られるインク組成物は表面硬化性、又は内部硬化性が十分に優れるため、シングルパスインクジェットにおいても十分な効果速度を付与することができる。
(B−1)アシルホスフィンオキサイド化合物を50〜60質量%含み、(B−2)チオキサントン化合物を25〜35質量%含み、(B−3)アルキルフェノン化合物を10〜15質量%含むことがより好ましい。
【0023】
本発明のインク組成物が、(B)光重合開始剤として、アシルホスフィンオキサイド化合物、チオキサントン化合物およびアルキルフェノン化合物以外の他の光重合開始剤を含有する場合、他の光重合開始剤の含有量は、インク組成物100質量部に対して、総量で5質量部以下であることが好ましい。他の光重合開始剤の含有量が多くなりすぎると反応性又は保存安定性が低下するおそれがある。
【0024】
〔(C)表面調整剤〕
上述した(A)単官能モノマー、(B)光重合開始剤の組み合わせにより、適度の硬化性と密着性を有するインク組成物を製造できる。しかしながら、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等のプラスチック類フィルムは、インク組成物が濡れにくく印字ドットが弾きやすい傾向にあるため、本発明は、さらに(C)表面調整剤を用いることによって、十分に接触角を下げることを図っている。
【0025】
(C)表面調整剤としては、表面張力低下能、重合性モノマーとの相溶性との観点から、シリコン系表面調整剤を使用することが好ましい。
具体的なシリコン系表面調整剤としては、ジメチルシロキサン骨格の変性体が好ましく挙げられる。
【0026】
好ましくは、シリコン系表面調整剤として、(メタ)アクリル基を含有するシリコン系表面調整剤を含有する。上記フィルムに対し、良好な濡れ性を得られるだけでなく、構造中の(メタ)アクリル基が、(A)単官能モノマーのラジカル重合に伴って、(メタ)アクリル基含有シリコン系表面調整剤同士、および(A)単官能モノマーと硬化反応するため、印字ドットの表面硬化性が高まり、耐擦過性、および硬化性が向上する。
(メタ)アクリル基含有シリコン系表面調整剤としては、具体的には、例えば、TEGO Rad 2010、2011、2100、2200N、2250、2300、2500、2600、2700(エボニックインダストリーズAG社製)、BYK−UV3570、3575、3576(ビックケミー社製)などが挙げられる。
特に、(メタ)アクリル基含有シリコン系表面調整剤としてポリエーテル変性シリコン(メタ)アクリレートモノマーを用いることが好ましい。
【0027】
特に好ましくは、上記ポリエーテル変性シリコン(メタ)アクリレートモノマーと、ポリエーテル変性シロキサンを併用する。これにより、上記フィルムに対して十分な濡れ性を得ることができる。
ポリエーテル変性シロキサンとしては、具体的には、例えば、BYK−345、BYK−347、BYK−348、BYK−349、BYK−3455(ビックケミー社製)、シルフェイスSAG001、シルフェイスSAG003、シルフェイスSAG005(日信化学工業社製)、L−7001、L−7002、57 ADDITIVE、FZ−2105(東レダウコーニング社製)、AFCONA−3231、3236、3238、3250、3280(AFCONA社製)などが挙げられる。これらの中でも、BYK−345、BYK−347、BYK−348、BYK−349、シルフェイスSAG003、シルフェイスSAG005、57 ADDITIVEが特に好ましく、上記フィルムに対し良好な濡れ性を得ることができ、密着性が向上する。
【0028】
インク組成物中の(C)表面調整剤の含有量は、インク組成物全体に対して、2.5質量%以下が好ましく、0.02〜2.5質量%がより好ましい。(C)表面調整剤の含有量が2.5質量%より多いと、未溶解物が生じたり、泡立ちを引き起こすおそれがある。
(C)表面調整剤として、ポリエーテル変性シリコン(メタ)アクリレートモノマーとポリエーテル変性シロキサンを、質量基準で、1:10〜10:1の割合で含むことが好ましい。
【0029】
〔その他の成分〕
本発明のインク組成物は、インク組成物として、以下に詳述するような他の一般的な成分を含有してよい。
【0030】
<着色材>
本発明のインク組成物は、インク組成物である以上、着色材を含有するのが通常である。
前記着色材としては、従来公知の各種染料を使用することもできるが、耐候性の観点より、無機顔料、有機顔料のいずれかまたは両方を使用することが好ましい。
基本的には、シアン色を有する顔料、マゼンタ色を有する顔料、イエロー色を有する顔料、黒色顔料および白色顔料などを用いることができる。場合によっては、バイオレット、ブルー、グリーン、オレンジおよびレッド等の特色顔料を用いることにより色再現性に優れた画像を形成することができる。また、一般的な黒色顔料および白色顔料、ならびにシアン、マゼンタおよびイエローの3原色の顔料の他に、目的に応じて、例えば金、銀等の金属光沢顔料や無色または淡色の体質顔料等を含有してもよい。
また、インクジェットインクへの適正から顔料の粒子径は、微細なものが好ましい。この微細化については、公知の種々の技術を利用することができる。粒子径としては、平均粒子径として、0.01〜1μm程度であれば良いが、沈降等をさけるには、0.3μm以下が好ましい。
【0031】
無機顔料としては、具体的には、例えば、亜鉛華、酸化チタン、酸化亜鉛、リトポン、酸化鉄、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、カオリナイト、モンモリロナイト、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、カドミウムレッド、べんがら、モリブデンレッド、クロムバーミリオン、モリブデートオレンジ、黄鉛、クロムイエロー、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、チタンイエロー、酸化クロム、ピリジアン、コバルトグリーン、チタンコバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、群青、ウルトラマリンブルー、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット、マイカなどが挙げられる。
【0032】
有機顔料としては、具体的には、例えば、アゾ系、アゾメチン系、ポリアゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、インジゴ系、チオインジゴ系、キノフタロン系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリン系の有機顔料などが挙げられる。また、酸性、中性または塩基性カーボンからなるカーボンブラックを用いてもよい。
【0033】
シアン色を有する顔料としては、具体的にカラーインデックス(C.I.)ナンバーで例示すると、C.I.ピグメントブルー1、15、15:1、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64などが挙げられる。これらの中でも、耐候性、着色力などの点から、C.I.ピグメントブルー15:3、15:4のいずれかまたは両方が好ましい。
【0034】
マゼンダ色を有する顔料としては、具体的にカラーインデックス(C.I.)ナンバーで例示すると、C.I.ピグメントレッド48、57、57:1、122、123、168、185、202、221、254、C.I.ピグメントバイオレット19などが挙げられる。これらの中でも、耐候性、着色力などの点から、C.I.ピグメントレッド57:1、122、185、202、C.I.ピグメントバイオレット19などが好ましい。
【0035】
イエロー色を有する顔料としては、具体的にカラーインデックス(C.I.)ナンバーで例示すると、C.I.ピグメントイエロー3、74、83、93、95、109、110、120、128、129、138、139、150、151、153、154、155、168、180、185、215などが挙げられる。これらの中でも、耐候性などの点から、C.I.ピグメントイエロー74、83、109、110、120、128、139、150、151、154、155などが好ましい。
【0036】
黒色顔料としては、具体的には、例えば、#2650、#2600、#2350、#2300、#1000、#980、#970、#960、#950、#900、#850、#52、#47、#45、#45L、#44、#40、#33、#32、#30、#25、MA77、MA7、MA8、MA11、MA100、MA100R、MA100S,MA230(三菱化学社製)、SPECIAL BLACK 100、SPECIAL BLACK 250、SPECIAL BLACK 350、SPECIAL BLACK 550、NIPex 35、NIPex 60、NIPex 70、NIPex 90(オリオンエンジニアドカーボンズ社製)、REGAL 250R、REGAL 300R、REGAL 330、REGAL 330R、REGAL 350R、REGAL 400、REGAL 400R、REGAL 660、REGAL 660R(キャボット社製)などが好ましい。
【0037】
白色顔料としては、隠蔽力や着色力の点から酸化チタンを用いることが好ましい。より好ましくは、硫酸法によって製造されたルチル型の結晶構造をもつ酸化チタンを用いることが好ましい。具体的には、例えば、タイペークR−820N、タイペークR−830、タイペークR−930、タイペークR−980、タイペークR−550、タイペークR−630、タイペークR−680(石原産業社製)、R−25、R−21、R−32、R−5N、R−62N、R−42、R−45M、D−918(堺化学工業社製)などが挙げられる。
酸化チタンの他に必要に応じて、炭酸カルシウム又は硫酸バリウム、水酸化アルミニウムなどといった体質顔料を使用してもよい。
【0038】
インク組成物中の着色材の含有量は、色および使用目的により適宜選択すればよいが、一般的にはインク組成物全量に対して、0.1〜20質量%含むことが好ましい。さらには0.3〜15質量%含むことがより好ましい。着色材の含有量が前記範囲にあると、インク組成物の粘度を上昇させることなく流動性を維持し、優れた画像の着色力を有する本発明のインク組成物を得ることができる。
【0039】
着色材として顔料を用いる場合、顔料の分散性を向上させるため、顔料誘導体や顔料分散剤をさらに使用してもよい。顔料誘導体としては、具体的には、例えば、ソルスパース5000S(ルーブリゾール社製)などが挙げられる。顔料分散剤としては、具体的には、例えば、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリ(メタ)アクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエステルポリアミン、ステアリルアミンアセテート等が使用できる。
本発明では、エステル構造又は変性ポリ(メタ)アクリレート構造を有する分散剤を用いると、経時での保存安定性および吐出性から好ましい。
【0040】
エステル構造又は変性ポリ(メタ)アクリレート構造を有する顔料の分散剤の具体例としては、ソルスパース9000、13940、17000、18000、28000、32000、J−180、J−200(ルーブリゾール社製)、DA−703−50、DA−7300、DA234(楠本化成社製)、DISPERBYK−2022、2025、2050、2096、BYKJET−9150、9051、9052(BykCemie社製)等が挙げられる。上記顔料誘導体および顔料分散剤の含有量は、上記顔料を十分にインク組成物中に分散できる量であれば足り、適宜の量に設定できる。
【0041】
<他の任意の重合性化合物>
本発明のインク組成物は、重合性化合物として、(A)単官能モノマーだけでなく、多官能モノマーおよび/または重合性オリゴマーを含有してもよい。
具体的には、EO変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、カプロラクタン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエート(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられるが、これに限定されるものではない。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
<その他の添加剤>
その他の添加剤として、例えば、上記(B)光重合開始剤とともに、重合開始助剤を併用してもよい。
重合開始助剤としては、N−メチルジエタノールアミン、4−(ジメチルアミノ)安息香酸エチル、ジメチルアミノ安息香酸2−エチルへキシル、4,4‘ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、トリエタノールアミン等のアミン化合物が挙げられ、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
光重合開始剤とともに重合開始助剤を併用することで、空気中での光反応時の表面酸素阻害が低減されることにより、硬化性や接着性がより向上する。
【0043】
さらに、本発明のインク組成物は、印刷適性や印刷物耐性を高めるために、紫外線吸収剤、酸化防止剤、貯蔵安定剤などの添加剤を必要に応じて含有しても構わない。
【0044】
〔インク組成物の使用〕
本発明のインク組成物は、浸透性素材、非浸透性素材にかかわらず種々の材質の被記録媒体に対して使用することができる。
浸透性素材とは、特に限定されないが、例えば、アート紙やコート紙などの紙類が挙げられる。
非浸透性素材としては、プラスチック類のフィルムやプレート、金属類、ガラスなどが挙げられる。
本発明のインク組成物は、特に、プラスチック類のフィルムやプレートへの接着性、硬化性に優れており、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミドなどを素材とする被記録媒体への使用に適している。
特に、印字ドットが濡れ広がりにくいポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンやポリエチレン等の難接着材料への接着性、硬化性が良好で、被記録媒体の折り曲げに対しても硬化膜に亀裂など生じずに優れた耐折り曲げ性を得ることができる。
【0045】
本発明のインク組成物を使用するには、インクジェット記録方式用プリンタより被記録媒体上に吐出し、その後紫外線LED光を照射する。これにより被記録媒体上のインク組成物は速やかに硬化する。
【0046】
紫外線LED光の照射時間は、0.01〜5秒が好ましく、0.02〜3秒がより好ましい。紫外線LED光の照射時間が5秒より長いとプラスチックなどの熱可塑性基材が溶融または変形する傾向にあり、0.01秒より短いと積算光量不足により、インク組成物が十分に硬化しない傾向にある。
【0047】
本発明のインク組成物は、インクジェットプリンタに搭載して使用する場合には必要に応じて複数色を組み合わせて使用することができる。組み合わせに限定はないが、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、ホワイトの組み合わせなどで使用することができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。実施例中の「部」は「質量部」を表す。
なお、以下の実施例及び比較例では、まず、顔料分散体を作製し、これを用いてインク組成物を作製した。
そこで、以下では、まず原料について説明したのち、顔料分散体の作製について説明し、その後、これらを用いた実施例及び比較例にかかるインク組成物の作製、その評価・考察について順次説明する。
【0049】
〔原料〕
<A:単官能モノマー>
(A−1:脂環式単官能(メタ)アクリレート)
・イソボルニルアクリレート
・ジシクロペンテニルアクリレート
・シクロへキシルアクリレート
・ジシクロペンタニルアクリレート
・1−アダマンチルアクリレート
・ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート
【0050】
(A−2:芳香族単官能(メタ)アクリレート)
・ベンジルアクリレート
・フェニルアクリレート
・フェノキシメチルアクリレート
・フェノキシエチルアクリレート
・2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート
【0051】
(A−3:飽和鎖式単官能(メタ)アクリレート)
・イソステアリルアクリレート
・ラウリルアクリレート
・イソオクチルアクリレート
【0052】
<他の重合性化合物>
(単官能(メタ)アクリレート)
・メトキシポリエチレングリコールアクリレート
(多官能(メタ)アクリレート)
・トリメチロールプロパンEO(3.5)付加物トリアクリレート
【0053】
<B:光重合開始剤>
(B−1:アシルホスフィンオキサイド化合物)
・BAPO(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド)
【0054】
(B−2:チオキサントン化合物)
・2,4−ジエチルチオキサントン
【0055】
(B−3:アルキルフェノン化合物)
・MABB(2−(ジメチルアミノ)−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン)
【0056】
<C:表面調整剤>
・ポリエーテル変性シロキサン(シルフェイスSAG005:日信化学工業社製)
・ポリエーテル変性シリコンアクリレート(シロキサンとシリコン,3−[3−(アセチロキシ)−2−ヒドロキシ]プロポキシプロピル メチル,ジ−メチル,3−[2−ヒドロキシ−3−[(1−オキソ−2−プロぺニル)オキシ]プロポキシプロピル メチルからなるシリコンアクリレート)
・メガファック F−556(DIC社製 含フッ素基・親水性基・新油性基含有オリゴマー)
・LF−1980(楠本化成社製 特殊アクリル系重合物)
【0057】
<着色材>
・C.Iピグメントブラック7(ブラック顔料)
・C.Iピグメントイエロー155(イエロー顔料)
・C.Iピグメントバイオレット19(マゼンタ顔料)
・C.Iピグメントブルー15:3(シアン顔料)
・C.Iピグメントホワイト6(ホワイト顔料)
【0058】
<その他の添加剤>
(顔料分散剤)
・ソルスパース J180(ルーブリゾール社製)
(重合開始助剤)
・4−(ジメチルアミノ)安息香酸エチル(東京化成工業社製)
【0059】
〔顔料分散体の作製〕
<顔料分散体1>
下記の配合で顔料分散体1を作製した。
具体的には、モノマーに顔料および分散剤を投入し、均一になるまで撹拌後、得られたミルベースを横型ビーズミルで分散して作製した。
・C.Iピグメントブラック7 15部
・ソルスパース J180 10部
・イソボルニルアクリレート 75部
【0060】
<顔料分散体2>
下記の配合で、顔料分散体1と同様の製造方法により、顔料分散体2を作製した。
・C.Iピグメントイエロー155 15部
・ソルスパース J180 15部
・イソボルニルアクリレート 70部
【0061】
<顔料分散体3>
下記の配合で、顔料分散体1と同様の製造方法により、顔料分散体3を作製した。
・C.Iピグメントバイオレット19 15部
・ソルスパース J180 10部
・イソボルニルアクリレート 75部
【0062】
<顔料分散体4>
下記の配合で、顔料分散体1と同様の製造方法により、顔料分散体4を作製した。
・C.Iピグメントブルー15:3 15部
・ソルスパース J180 10部
・イソボルニルアクリレート 75部
【0063】
<顔料分散体5>
下記の配合で、顔料分散体1と同様の製造方法により、顔料分散体5を作製した。
・C.Iピグメントホワイト6 30部
・ソルスパース J180 10部
・イソボルニルアクリレート 60部
【0064】
〔実施例1〕
後述する表1の記載に従い、各原料を表の上から順次撹拌しながら添加した。1時間の撹拌の後、溶解残りがないことを確認し、1.0μのフィルターにてろ過してインク組成物を作製した。
【0065】
〔実施例2〜24〕
実施例1と同様にして、後述する表1又は2に記載の通りにインク組成物を作製した。
【0066】
〔比較例1〜12〕
実施例1と同様にして、後述する表3記載の通りにインク組成物を作製した。
【0067】
〔評価〕
上記各実施例、比較例にかかるインク組成物について、下記の各評価を行った。
【0068】
<保存安定性>
保存安定性は60℃の環境下に3か月間静置したインク組成物の粘度を測定し、初期粘度に対する変化率で評価した。変化率は以下の式により算出した。
粘度変化率(%)={(60℃30日間保管後の粘度値)−(初期粘度値)}/(初期粘度値)×100
◎:粘度変化率5%未満
○:粘度変化率5%以上、10%未満
×:粘度変化率10%以上
【0069】
<吐出性>
インク組成物を紀州技研工業社製HQ8000で吐出し、印字イメージ内ドット占有率37.1%において1万回の連続印字を行い、以下の基準に従い評価した。
◎:総ドット数に対して1%未満のドット抜け
○:総ドット数に対して1%以上10%未満のドット抜け
×:総ドット数に対して10%以上のドット抜け
【0070】
<硬化性>
インク組成物をインクジェット吐出装置により、100%ベタ画像をポリプロピレンシートに吐出し、その直後に京セラ社製UV−LEDライト6W/cm
2で紫外線を照射して硬化するときのコンベア速度から硬化性を評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:30m/min以上
○:25m/min以上30m/min未満
△:20m/min以上25m/min未満
×:20m/min未満
【0071】
<密着性>
JIS K5600−5−6に規定された「基盤目試験セロテープ(登録商標)剥離」に従って評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:100個中90個以上で剥離が認められない。
○:100個中80個以上89個以下で剥離が認められない。
△:100個中50個以上79個以下で剥離が認められない。
×:100個中49個以下で剥離が認められない。
【0072】
<耐折り曲げ性>
インク組成物を紀州技研工業社製HQ8000より100%ベタ画像を吐出し、直後に京セラ社製UV−LEDライトにて硬化して印刷物を得た。この印刷物の印刷面を外向きに折り曲げ、以下の基準に従い評価した。
◎:180°に折り曲げ硬化膜に亀裂が生じない。
○:90°に折り曲げ硬化膜に亀裂が生じず、180°の折り曲げで亀裂が生じる。
×:90°に折り曲げ硬化膜に亀裂が生じる。
【0073】
〔結果〕
各実施例及び比較例の配合と、上述の評価の結果を下表1〜3に示す。
なお、両表中段における「AとBの配合詳細」は、(A)単官能モノマーにおける(A−1)〜(A−3)の含有割合と、(B)光重合開始剤における(B−1)〜(B−3)の含有割合とをまとめたものである。(A−1)については、顔料分散体中に含有されているものも含めて、含有量及び含有割合が算出されている。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
〔考察〕
表1,2の結果に示すとおり、本発明のインク組成物の全ての条件を満足する実施例の各インク組成物は、いずれも、全ての物性を十分に満足させるものであった。
【0078】
これに対し、表3の結果に示すとおり、比較例の各インク組成物は、本発明のインク組成物の条件を満足していないために、いずれかの評価において、十分な結果が得られておらず、高粘度や析出により吐出性、保存安定性が得られないもの、ポリプロピレンへの濡れ性不足や密着性、又は耐折り曲げ性が得られないもの、単官能モノマーと光重合開始剤の相性が悪い、又は表面硬化性が悪く、硬化性が得られないもの等であった。
具体的に見ると、比較例1〜4の結果は、本発明所定の(A−1)〜(A−3)を併用する必要性を示している。
また、比較例5の結果は、(C)表面調整剤を含有することの必要性を示している。
さらに、比較例6〜12の結果は、本発明所定の(A−1)〜(A−3)を併用するだけでなく、(A−1)60〜85質量%、(A−2)15〜30質量%、(A−3)0.5〜10質量%の範囲とするべきことの必要性を示している。
【0079】
また、実施例1及び実施例2の結果から、(A−1)として2種類併用することでより密着性が向上することが判った。
実施例1及び実施例4の結果から、(A−1)としては、イソボルニルアクリレートとジシクロペンテニルアクリレートの組み合わせが、保存安定性の観点において特に適していることが判った。
実施例1及び実施例5の結果から、(A−2)の含有量としては20〜25質量%であることが、硬化性の観点において特に好ましいことが判った。
実施例1及び実施例6の結果から、(A−3)の含有量としては2〜8質量%であることが、耐折り曲げ性の観点において特に好ましいことが判った。
実施例1、実施例9及び実施例10の結果から、(B)光重合開始剤としては、(B−1)50〜60質量%、(B−2)25〜35質量%、(B−3)10〜15質量%の範囲であることが、硬化性の観点において特に好ましいことが判った。
実施例1、実施例13〜実施例15の結果から、(C)表面調整剤としてポリエーテル変性シリコン(メタ)アクリレートモノマーとポリエーテル変性シロキサンの2種類を併用することが、硬化性や密着性の観点において特に好ましいことが判った。
実施例1、実施例16〜18の結果から、(B)光重合開始剤として、本発明所定の(B−1)〜(B−3)の3種を併用することが、硬化性の観点において特に好ましいことが判った。