【実施例】
【0052】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
【0053】
<実施例1>
アクリル酸0.200gと、ビニル基を3個有する多官能アクリレートモノマーであるペンタエリスリトールトリアクリレート(大阪有機化学工業製ビスコート♯300)1.656gと、溶媒であるエタノール6.000gと、光重合開始剤のアルキルフェノン系重合開始剤(チバジャパン製イルガキュア907)0.111gを秤量し、十分に混合した後、この混合液にアルカリ水溶液として12%水酸化ナトリウム水溶液0.093gを更に添加混合して液組成物を調製した。
【0054】
<実施例2>
12%水酸化ナトリウム水溶液を0.185g秤量した以外、実施例1と同じアクリル酸、多官能アクリレートモノマー、アルカリ水溶液、重合開始剤、溶媒を用いて、実施例1と同様にして液組成物を調製した。
【0055】
<実施例3>
12%水酸化ナトリウム水溶液を0.370g秤量した以外、実施例1と同じアクリル酸、多官能アクリレートモノマー、アルカリ水溶液、重合開始剤、溶媒を用いて、実施例1と同様にして液組成物を調製した。
【0056】
<実施例4>
アクリル酸を0.100g、多官能アクリレートモノマーを2.070g、重合開始剤を0.130gそれぞれ秤量した以外、実施例1と同じアクリル酸、多官能アクリレートモノマー、アルカリ水溶液、重合開始剤、溶媒を用いて、実施例1と同様にして液組成物を調製した。
【0057】
<実施例5>
アクリル酸を0.300g、多官能アクリレートモノマーを1.552g、12%水酸化ナトリウム水溶液を0.278gそれぞれ秤量した以外、実施例1と同じアクリル酸、多官能アクリレートモノマー、アルカリ水溶液、重合開始剤、溶媒を用いて、実施例1と同様にして液組成物を調製した。
【0058】
<実施例6>
12%水酸化ナトリウム水溶液を0.185g、重合開始剤を0.019gそれぞれ秤量した以外、実施例1と同じアクリル酸、多官能アクリレートモノマー、アルカリ水溶液、重合開始剤、溶媒を用いて、実施例1と同様にして液組成物を調製した。
【0059】
<実施例7>
12%水酸化ナトリウム水溶液を0.185g、重合開始剤を0.186gそれぞれ秤量した以外、実施例1と同じアクリル酸、多官能アクリレートモノマー、アルカリ水溶液、重合開始剤、溶媒を用いて、実施例1と同様にして液組成物を調製した。
【0060】
<実施例8>
アルカリ水溶液として16.8%水酸化カリウム水溶液を選定し、このアルカリ水溶液を0.185g秤量し、実施例1の液組成物に更に上記式(4)で表されるスルホベタイン型化合物を0.082g添加混合した。それ以外、実施例1と同じアクリル酸、多官能アクリレートモノマー、重合開始剤、溶媒を用いて、実施例1と同様にして液組成物を調製した。
【0061】
<実施例9>
12%水酸化ナトリウム水溶液を0.185g秤量し、実施例1の液組成物に更に上記式(3)で表されるスルホベタイン型化合物を0.008g添加混合した。それ以外、実施例1と同じアクリル酸、多官能アクリレートモノマー、アルカリ水溶液、重合開始剤、溶媒を用いて、実施例1と同様にして液組成物を調製した。
【0062】
<実施例10>
12%水酸化ナトリウム水溶液を0.185g秤量し、実施例1の液組成物に更に上記式(5)で表されるスルホベタイン型化合物0.008g添加混合した。それ以外、実施例1と同じアクリル酸、多官能アクリレートモノマー、アルカリ水溶液、重合開始剤、溶媒を用いて、実施例1と同様にして液組成物を調製した。
【0063】
<実施例11>
アクリル酸0.200gと、ビニル基を3個有する多官能アクリレートモノマーであるトリペンタエリスリトールトリアクリレート(大阪有機化学工業製ビスコート♯802)1.656gと、溶媒であるエタノール6.000gと、光重合開始剤のアルキルフェノン系重合開始剤(チバジャパン製イルガキュア907)0.111gを秤量し、十分に混合した後、この混合液にアルカリ水溶液として12%水酸化ナトリウム水溶液0.185gを更に添加混合して液組成物を調製し、この液組成物に更に上記式(2)で表されるカルボベタイン型化合物0.008gを添加混合した。
【0064】
<実施例12>
12%水酸化ナトリウム水溶液を0.185g、重合開始剤を0.122gそれぞれ秤量し、実施例1の液組成物に更にリン酸含有アクリレートモノマーであるトリスアクリロイルオキシエチルフォスフェート0.186gを添加混合した。それ以外、実施例1と同じアクリル酸、多官能アクリレートモノマー、アルカリ水溶液、重合開始剤、溶媒を用いて、実施例1と同様にして液組成物を調製した。
【0065】
<実施例13>
12%水酸化ナトリウム水溶液を0.185g、重合開始剤を0.122gそれぞれ秤量し、実施例1の液組成物に更にリン酸含有アクリレートモノマーであるトリスメタアクリロイルオキシエチルフォスフェート0.186gを添加混合した。それ以外、実施例1と同じアクリル酸、多官能アクリレートモノマー、アルカリ水溶液、重合開始剤、溶媒を用いて、実施例1と同様にして液組成物を調製した。
【0066】
<実施例14>
12%水酸化ナトリウム水溶液を0.185g、重合開始剤を0.126gそれぞれ秤量し、実施例1の液組成物に更にフッ素含有アクリレートモノマーである2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート0.250gを添加混合した。それ以外、実施例1と同じアクリル酸、多官能アクリレートモノマー、アルカリ水溶液、重合開始剤、溶媒を用いて、実施例1と同様にして液組成物を調製した。
【0067】
<実施例15>
12%水酸化ナトリウム水溶液を0.185g、重合開始剤を0.117gそれぞれ秤量し、実施例1の液組成物に更にフッ素含有アクリレートモノマーである2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート0.093gを添加混合した。それ以外、実施例1と同じアクリル酸、多官能アクリレートモノマー、アルカリ水溶液、重合開始剤、溶媒を用いて、実施例1と同様にして液組成物を調製した。
【0068】
<実施例16>
12%水酸化ナトリウム水溶液を0.185g、重合開始剤を0.117gそれぞれ秤量し、実施例1の液組成物に更にフッ素含有アクリレートモノマーである1H,1H,5H−オクタフルオロプロペンチルアクリレート0.093gと式(3)で表されるスルホベタイン型化合物を0.008gをそれぞれ添加混合した。それ以外、実施例1と同じアクリル酸、多官能アクリレートモノマー、アルカリ水溶液、重合開始剤、溶媒を用いて、実施例1と同様にして液組成物を調製した。
【0069】
<実施例17>
多官能アクリレートモノマーとして多官能アクリル酸エステル(第一工業製薬製MF−001)を選定し、アクリル酸を0.100g、上記多官能アクリレートモノマーを1.000gと3官能アクリレートモノマーのビスコート♯300を0.850gと重合開始剤を0.117gそれぞれ秤量した。それ以外、実施例1と同じアクリル酸、アルカリ水溶液、重合開始剤、溶媒を用いて、実施例1と同様にして液組成物を調製した。
【0070】
<実施例18>
多官能アクリレートモノマーの代わりに多官能アクリレートオリゴマーを用いた。このオリゴマーとしてウレタンアクリレートオリゴマー(第一工業製薬製GX−8801A)を選定した。多官能アクリレートオリゴマーを1.660g、12%水酸化ナトリウム水溶液を0.185g、重合開始剤を0.112gそれぞれ秤量した。それ以外、実施例1と同じアクリル酸、アルカリ水溶液、重合開始剤、溶媒を用いて、実施例1と同様にして液組成物を調製した。
【0071】
<実施例19>
多官能アクリレートモノマーの代わりに多官能アクリレートオリゴマーを用いた。このオリゴマーとしてウレタンアクリレートオリゴマー(荒川化学工業製ビームセット577)を選定した。この多官能アクリレートオリゴマーを1.450g、アクリル酸を0.580g、12%水酸化ナトリウム水溶液を0.537g、重合開始剤を0.122gそれぞれ秤量した。それ以外、実施例1と同じアクリル酸、アルカリ水溶液、重合開始剤、溶媒を用いて、実施例1と同様にして液組成物を調製した。
【0072】
<実施例20>
多官能アクリレートモノマーの代わりに多官能アクリレートオリゴマーを用いた。このオリゴマーとしてウレタンアクリレートオリゴマー(日本合成化学製紫光7000B)を選定した。この多官能アクリレートオリゴマーを1.656g、12%水酸化ナトリウム水溶液を0.185g、重合開始剤を0.112gそれぞれ秤量した。それ以外、実施例1と同じアクリル酸、アルカリ水溶液、重合開始剤、溶媒を用いて、実施例1と同様にして液組成物を調製した。
【0073】
<実施例21>
アクリル酸を0.500g、多官能アクリレートモノマーを4.100g、20%水酸化ナトリウム水溶液を0.278g、重合開始剤を0.276gそれぞれ秤量した以外、実施例1と同じアクリル酸、多官能アクリレートモノマー、重合開始剤、溶媒を用いて、実施例1と同様にして液組成物を調製した。
【0074】
<実施例22>
アクリル酸を0.500g、多官能アクリレートモノマーを4.100g、3.4%水酸化ナトリウム水溶液を0.463g、重合開始剤を0.276gそれぞれ秤量した以外、実施例1と同じアクリル酸、多官能アクリレートモノマー、重合開始剤、溶媒を用いて、実施例1と同様にして液組成物を調製した。
【0075】
<実施例23>
重合開始剤として熱重合開始剤であるペルオキソ二硫酸アンモニウムを用いた。この重合開始剤0.111gを秤量した以外、実施例1と同じアクリル酸、多官能アクリレートモノマー、アルカリ水溶液、溶媒を用いて、実施例1と同様にして液組成物を調製した。
【0076】
<比較例1>
12%水酸化ナトリウム水溶液を0.046g秤量した以外、実施例1と同じアクリル酸、多官能アクリレートモノマー、アルカリ水溶液、重合開始剤、溶媒を用いて、実施例1と同様にして液組成物を調製した。
【0077】
<比較例2>
12%水酸化ナトリウム水溶液を0.463g秤量した以外、実施例1と同じアクリル酸、多官能アクリレートモノマー、アルカリ水溶液、重合開始剤、溶媒を用いて、実施例1と同様にして液組成物を調製した。
【0078】
<比較例3>
アクリル酸を0.050g、多官能アクリレートモノマーを2.070g、12%水酸化ナトリウム水溶液を0.046g、重合開始剤を0.127gそれぞれ秤量した以外、実施例1と同じアクリル酸、多官能アクリレートモノマー、アルカリ水溶液、重合開始剤、溶媒を用いて、実施例1と同様にして液組成物を調製した。
【0079】
<比較例4>
多官能アクリレートモノマーを0.460g、12%水酸化ナトリウム水溶液を0.185g、重合開始剤を0.040gそれぞれ秤量した以外、実施例1と同じアクリル酸、多官能アクリレートモノマー、アルカリ水溶液、重合開始剤、溶媒を用いて、実施例1と同様にして液組成物を調製した。
【0080】
<比較例5>
多官能アクリレートモノマーを1.606g、12%水酸化ナトリウム水溶液を0.185g、重合開始剤を0.009gそれぞれ秤量した以外、実施例1と同じアクリル酸、多官能アクリレートモノマー、アルカリ水溶液、重合開始剤、溶媒を用いて、実施例1と同様にして液組成物を調製した。
【0081】
<比較例6>
多官能アクリレートモノマーを1.606g、12%水酸化ナトリウム水溶液を0.185g、重合開始剤を0.223gそれぞれ秤量した以外、実施例1と同じアクリル酸、多官能アクリレートモノマー、アルカリ水溶液、重合開始剤、溶媒を用いて、実施例1と同様にして液組成物を調製した。
【0082】
<比較例7>
多官能アクリレートモノマーとしてビニル基を2個有するヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート(第一工業製薬製ニューフロンティアHPN)を選定した。この多官能アクリレートモノマーを1.576g、12%水酸化ナトリウム水溶液を0.185g、重合開始剤を0.107gそれぞれ秤量した以外、実施例1と同じアクリル酸、アルカリ水溶液、重合開始剤、溶媒を用いて、実施例1と同様にして液組成物を調製した。
【0083】
<比較例8>
アクリル酸を0.500g、多官能アクリレートモノマーを4.100g、30%水酸化ナトリウム水溶液を0.185g、重合開始剤を0.276gそれぞれ秤量した以外、実施例1と同じアクリル酸、多官能アクリレートモノマー、重合開始剤、溶媒を用いて、実施例1と同様にして液組成物を調製した。
【0084】
<比較例9>
アクリル酸を0.500g、多官能アクリレートモノマーを4.100g、2.5%水酸化ナトリウム水溶液を2.220g、重合開始剤を0.276gそれぞれ秤量した以外、実施例1と同じアクリル酸、多官能アクリレートモノマー、重合開始剤、溶媒を用いて、実施例1と同様にして液組成物を調製した。
【0085】
実施例1〜23及び比較例1〜9の液組成物における、アクリル酸、多官能アクリレートモノマー又は多官能アクリレートオリゴマー、アルカリの種類及び各秤量値を表1に、また重合開始剤、溶媒、その他のモノマー、両性型含窒素フッ素系化合物の種類及び各秤量値を表2にそれぞれ示す。なお、表1中、ビニル基を3個有する、実施例1の多官能アクリレートモノマーは「3官能モノマー1」とし、実施例11の多官能アクリレートモノマーは「3官能モノマー2」としてそれぞれ示している。また実施例18〜20の多官能アクリレートオリゴマーは「多官能オリゴマー1」、「多官能オリゴマー2」、「多官能オリゴマー3」として示し、比較例7のビニル基を2個有する多官能アクリレートモノマーは「2官能モノマー」として示している。また表2中、両性型含窒素フッ素系化合物の種類として、例えば「式(2)」と記載したものは、「式(2)に示される化合物」を意味する。
【0086】
また実施例1〜23及び比較例1〜9の液組成物における、アクリル酸に対するアルカリの割合、多官能アクリレートモノマー・多官能アクリレートオリゴマーに対するアクリル酸の割合、アクリル酸と多官能アクリレートモノマー・多官能アクリレートオリゴマーを合計した全アクリルに対する重合開始剤の割合、アルカリ水溶液中の水に対するアクリル酸塩の割合、液組成物中のその他のモノマー及び両性型含窒素フッ素系化合物の各割合を表3に示す。上記「その他のモノマー」とは、リン酸含有アクリレートモノマー又はフッ素含有アクリレートモノマーをいう。
【0087】
<比較試験及び評価>
実施例1〜23及び比較例1〜9で得られた液組成物を、バーコーター(安田精機製作所製、型番No.8)を用いて、厚さ60μm、たて297mm、よこ210mmのポリエチレンテレフタレート(PET)のフィルム基材(東レ社製ルミラー100A60)上にそれぞれ乾燥後の厚さが1〜3μmとなるように塗布し、塗膜を形成した。実施例1〜22及び比較例1〜9の液組成物から形成された塗膜については、70℃の大気雰囲気中にて30秒間乾燥し、更に、この乾燥した塗膜に紫外線を照射量480mJ/cm
2にて照射し、31種類の防汚性膜を得た。一方、実施例23で得られた液組成物から形成された塗膜については、100℃の大気雰囲気中にて30分間乾燥して1種類の防汚性膜を得た。これらの防汚性膜について、膜表面の水濡れ性(親水性)、撥油性、ヘキサデカンの転落性及び膜の耐水性を評価した。これらの結果を表3に示す。なお、表3における割合は分母を100として算出し、算出値の小数点以下を四捨五入した値である。また比較例8の液組成物は、フロックが発生し、塗料化できなかったため、水とn−ヘキサデカンの各接触角、ヘキサデカンの転落性及び膜の耐水性は測定できなかった。
【0088】
(1) 膜表面の水濡れ性(接触角)
協和界面科学製ドロップマスターDM-700を用いて、シリンジに22℃±1℃のイオン交換水を準備し、シリンジの針の先端から2μLの液滴を飛び出した状態にする。次いで評価するPETフィルム上の防汚性膜をこの液滴に近づけて防汚性膜に液滴を付着させる。この付着した水の接触角を測定した。静止状態で水が膜表面に触れた1秒後の接触角をθ/2法により解析した値を水の接触角とし、膜表面の水濡れ性(親水性)を評価した。
【0089】
(2) 膜表面の撥油性(接触角)
協和界面科学製ドロップマスターDM-700を用いて、シリンジに22℃±1℃のn−ヘキサデカン(以下、油という。)を準備し、シリンジの針の先端から2μLの液滴を飛び出した状態にする。次いで評価するPETフィルム上の防汚性膜をこの液滴に近づけて防汚性膜に液滴を付着させる。この付着した油の接触角を測定した。静止状態で油が膜表面に触れた1秒後の接触角をθ/2法により解析した値を油の接触角とし、膜表面の撥油性を評価した。
【0090】
(3) ヘキサデカンの転落性
上記(2)の膜表面の撥油性試験時に用いたシリンジの針の先端からn−ヘキサデカンの2μLの液滴を水平状態に置かれたPETフィルム上に落下させた後、このPETフィルムを70度傾斜させ、n−ヘキサデカンが流れ落ちるか否か、即ちヘキサデカンの転落性を評価した。更に、転落した試料に関しては、転落角を測定した。協和界面科学製ドロップマスターDM-700を用いて、シリンジに22℃±1℃のn−ヘキサデカン(以下、油という。)を準備し、シリンジの針の先端から5μLの液滴を飛び出した状態にする。次いで評価するPETフィルム上の防汚性膜をこの液滴に近づけて防汚性膜に液滴を付着させる。次に、試料をのせた台を傾けて、油が転落を開始する角度を測定した。
【0091】
(4) 膜の耐水性
評価する防汚性膜をPETフィルムとともに5〜15℃の水道水が500mL/分の速度で流れている水中に、水平状態で24時間置き、目視にて、防汚性膜がPETフィルムから剥離するか否か、即ち膜の耐水性を評価した。
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
【表3】
【0095】
表3から明らかなように、比較例1では、アクリル酸に対するアルカリが3質量部であったため、耐水試験で膜は膨潤剥離しなかったが、膜表面の水濡れ性及び撥油性に劣り、ヘキサデカンの液滴は転落しなかった。比較例2では、アクリル酸に対するアルカリが28質量部であったため、膜表面の水濡れ性及び撥油性は良好であり、ヘキサデカンの液滴は転落したが、耐水試験で膜は膨潤剥離した。比較例3では、全アクリルに対するアクリル酸の割合が2質量部であったため、耐水試験で膜は膨潤剥離しなかったが、膜表面の水濡れ性及び撥油性に劣り、ヘキサデカンの液滴は転落しなかった。比較例4では、全アクリルに対するアクリル酸の割合が43質量部であったため、膜表面の水濡れ性が良好であったが、撥油性に劣り、ヘキサデカンの液滴は転落せず、耐水試験で膜は膨潤剥離した。
【0096】
また比較例5では、光重合開始剤の割合が全アクリルに対して0.5質量部であったため、耐水試験で膜は膨潤剥離しなかったが、膜表面の水濡れ性及び撥油性に劣り、ヘキサデカンの液滴は転落しなかった。比較例6では、光重合開始剤の割合が全アクリルに対して12質量部であったため、成膜後の膜にひび割れが発生していた。ただし、膜表面の水濡れ性及び撥油性は良好であった。比較例7では、ビニル基が2個のアクリレートであったため、膜表面の水濡れ性が良好であったが、撥油性に劣り、ヘキサデカンの液滴は転落せず、耐水試験で膜は膨潤剥離した。比較例8では、水に対するアクリル酸ナトリウムの割合が101質量部であったため、得られた液組成物はフロック(白だま)が発生し、塗料化することができなかった。比較例9では、水に対するアクリル酸ナトリウムの割合が6質量部であったため、耐水試験で膜は膨潤剥離しなかったが、膜表面の水濡れ性及び撥油性に劣り、ヘキサデカンの液滴は転落しなかった。
【0097】
これに対して、表3から明らかなように、実施例1〜23では、アクリル酸に対してアルカリが5〜23質量部の範囲に含まれ、多官能アクリレートモノマー・多官能アクリレートオリゴマーに対してアクリル酸が5〜40質量部の範囲に含まれ、全アクリルに対して重合開始剤が1〜10質量部の範囲に含まれ、かつ水に対してアクリル酸塩が8〜60質量部の範囲に含まれていたため、膜表面の水濡れ性及び撥油性は良好であり、ヘキサデカンの液滴は転落せずに、耐水試験で膜は膨潤剥離しなかった。