特開2017-155219(P2017-155219A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三洋化成工業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-155219(P2017-155219A)
(43)【公開日】2017年9月7日
(54)【発明の名称】潤滑油添加剤及び潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 141/12 20060101AFI20170810BHJP
   C10M 129/16 20060101ALI20170810BHJP
   C10M 129/28 20060101ALI20170810BHJP
   C10M 135/10 20060101ALI20170810BHJP
   C10M 105/14 20060101ALI20170810BHJP
   C10M 105/18 20060101ALI20170810BHJP
   C10M 107/34 20060101ALI20170810BHJP
   C10N 10/04 20060101ALN20170810BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20170810BHJP
   C10N 40/02 20060101ALN20170810BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20170810BHJP
   C10N 40/08 20060101ALN20170810BHJP
   C10N 40/20 20060101ALN20170810BHJP
【FI】
   C10M141/12
   C10M129/16
   C10M129/28
   C10M135/10
   C10M105/14
   C10M105/18
   C10M107/34
   C10N10:04
   C10N30:06
   C10N40:02
   C10N40:04
   C10N40:08
   C10N40:20
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-27444(P2017-27444)
(22)【出願日】2017年2月17日
(31)【優先権主張番号】特願2016-36318(P2016-36318)
(32)【優先日】2016年2月26日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】嘉村 光真
(72)【発明者】
【氏名】勝川 吉隆
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BB04A
4H104BB08C
4H104BB15C
4H104BB41A
4H104BG06C
4H104CB14A
4H104CB15A
4H104EB08
4H104FA02
4H104LA03
4H104LA20
4H104PA01
4H104PA02
4H104PA05
4H104PA21
(57)【要約】
【課題】潤滑油中で摩耗を低減する効果及び焼付きを防止する効果を奏する潤滑油添加剤及び潤滑油添加剤と基油とを含有してなる潤滑油組成物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるカルシウム含有ポリエーテル化合物(A)を含有する潤滑油添加剤。
1[−(OA1m−Ba-(Ca2+a/2f (1)
[R1は水酸基含有化合物からf個の水酸基を除いた残基である。(OA1)は炭素数が2〜4のオキシアルキレン基である。mは2〜100の整数である。2以上のA1は同じでも異なっていてもよい。fは1〜6の整数である。fが1の場合、BはXa-(Ca2+a/2であり、Xa-は価数がaであるアニオン性基、Ca2+はカルシウムイオンである。fが2以上の場合、BはXa-(Ca2+a/2又は水酸基であり、少なくとも1つはXa-(Ca2+a/2である。]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるカルシウム含有ポリエーテル化合物(A)を含有する潤滑油添加剤。
1[−(OA1m−B]f (1)
[R1は水酸基含有化合物からf個の水酸基を除いた残基である。(OA1)は炭素数が2〜4のオキシアルキレン基である。mは2〜100の整数である。mが2以上の場合、(OA1)は同じでも異なっていてもよい。fは1〜6の整数である。fが1の場合、BはXa-(Ca2+a/2であり、Xa-は価数がaであるアニオン性基、Ca2+はカルシウムイオンである。fが2以上の場合、BはXa-(Ca2+a/2又は水酸基であり、少なくとも1つはXa-(Ca2+a/2である。]
【請求項2】
一般式(1)中、アニオン性基がカルボン酸アニオン性基、スルホン酸アニオン性基及びリン酸アニオン性基からなる群から選ばれる1種以上である請求項1記載の潤滑油添加剤。
【請求項3】
請求項1又は2記載の潤滑油添加剤と基油(B)とを含有してなる潤滑油組成物であって、基油(B)がエチレングリコール、プロピレングリコール及び下記一般式(2)で表される化合物からなる群から選ばれる1種以上であり、(A)と(B)の合計重量に基づいて(A)を0.2〜99.8重量%含有する潤滑油組成物。
2[−(A2O)n−H]g (2)
[R2は活性水素含有化合物からg個の活性水素を一部又は全部除いた残基、(A2O)は炭素数が2〜4のアルキレンオキシ基である。nは1〜350の整数である。nが2以上の場合、(A2O)は同じでも異なっていてもよい。gは1〜8の整数である。]
【請求項4】
前記基油(B)がエチレングリコール、プロピレングリコール、一般式(2)中のA2Oがエチレンオキシ基で表されるポリエーテル及び一般式(2)中の−(A2O)n−が下記一般式(3)で表されるポリエーテルからなる群から選ばれる1種以上である請求項3記載の潤滑油組成物。
−(A3O)h−(A4O)i−(A5O)j− (3)
[式(3)中、(A3O)はエチレンオキシ基、(A4O)はプロピレンオキシ基、及び(A5O)はブチレンオキシ基を表す。これらのアルキレンオキシ基は任意の順序で良い。h、i及びjがそれぞれ2以上の場合、付加形式はランダム付加でもブロック付加でもよい。h+i+jは1〜350の整数、hは1〜350の整数、i及びjはそれぞれ0〜100の整数であって、h/(h+i+j)は0.5〜1.0である。nが2以上の場合、(A2O)は同じでも異なっていてもよい。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油添加剤及び潤滑油添加剤と基油とを含有してなる潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、石油系基油をベースとした潤滑油において、硫黄系及び又は塩素系極圧剤が使用されている。また、毒性や発癌性の観点から塩素フリーの極圧剤及び又は摩耗防止剤として過塩基性スルホン酸カルシウムが使用されている(特許文献1〜2参照)
一方で、近年、水溶性、生分解性、加水分解の問題がないといった観点から、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエーテル等の水酸基を含有する化合物を基油とした潤滑油が使用されてきている(特許文献3参照)。
しかしながら、上記水酸基を含有する化合物を基油とした潤滑油中において、従来の硫黄系及び又は塩素系極圧剤、過塩基性スルホン酸カルシウム等の極圧剤は適合性が悪く不安定であり、摩耗を低減する効果及び焼付きを防止する効果が期待できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−320679号公報
【特許文献2】特表2010−507718号公報
【特許文献3】特開2006−083378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、潤滑油中で摩耗を低減する効果及び焼付きを防止する効果を奏する潤滑油添加剤及び潤滑油添加剤と基油とを含有してなる潤滑油組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の問題点を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。即ち、本発明は、下記一般式(1)で表されるカルシウム含有ポリエーテル化合物(A)を含有する潤滑油添加剤である。
1[−(OA1m−B]f (1)
[R1は水酸基含有化合物からf個の水酸基を除いた残基である。(OA1)は炭素数が2〜4のオキシアルキレン基である。mは2〜100の整数である。2以上の(OA1)は同じでも異なっていてもよい。fは1〜6の整数である。fが1の場合、BはXa-(Ca2+a/2であり、Xa-は価数がaであるアニオン性基、Ca2+はカルシウムイオンである。fが2以上の場合、BはXa-(Ca2+a/2又は水酸基であり、少なくとも1つはXa-(Ca2+a/2である。]
【発明の効果】
【0006】
本発明の潤滑油添加剤は以下の効果を奏する。
(1)潤滑油の潤滑性を向上させる。
(2)潤滑油の耐摩耗性を向上させる。
(3)水酸基を含有する化合物を基油とした潤滑油中で安定である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の潤滑油添加剤はカルシウム含有ポリエーテル化合物(A)を含有する。
【0008】
本発明のカルシウム含有ポリエーテル化合物(A)は下記一般式(1)で表される。
1[−(OA1m−B]f (1)
[R1は水酸基含有化合物からf個の水酸基を除いた残基である。(OA1)は炭素数が2〜4のオキシアルキレン基である。mは2〜100の整数である。2以上の(OA1)は同じでも異なっていてもよい。fは1〜6の整数である。fが1の場合、BはXa-(Ca2+a/2であり、Xa-は価数がaであるアニオン性基、Ca2+はカルシウムイオンである。fが2以上の場合、BはXa-(Ca2+a/2又は水酸基であり、少なくとも1つはXa-(Ca2+a/2である。]
【0009】
一般式(1)中、R1は水酸基含有化合物からf個の水酸基を除いた残基である。但し、R1は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、メチルプロパンジオールから水酸基を除いた残基を含むが、それ以外の炭素数が2〜4のオキシアルキレン基を有する水酸基含有化合物から水酸基を除いた残基を含まない。
【0010】
水酸基含有化合物は、脂肪族あるいは脂環族の1価アルコール、脂肪族または脂環族の多価アルコール、ジオール類、芳香族アルコール類及びヒドロキシ酸等が挙げられる。
脂肪族あるいは脂環族の1価アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール及びオクタデカノール、セチルアルコール、オレイルアルコール、イソドデカノール、イソトリデカノール、イソテトラデカノール、及びシクロヘキサノール等が挙げられる。
脂肪族または脂環族の多価アルコールの具体例としては、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリストール及びソルビトール等が挙げられる。
ジオール類は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、メチルプロパンジオール、ペンタンジオール、メチルペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2’−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール及びトリシクロデカンジメタノール等が挙げられる。
芳香族アルコール類は、ベンジルアルコール、オクチルフェノール、及びノニルフェノール等が挙げられる。
ヒドロキシ酸としては、ヒドロキシピバリン酸−ネオペンチルグリコールエステル、ジメチロールプロピオン酸及びジメチロールブタン酸等が挙げられる。
これら水酸基含有化合物の中では、原料コスト、及び合成のしやすさの観点から、脂肪族あるいは脂環族の1価アルコール、脂肪族または脂環族の多価アルコール、ジオール類及び芳香族アルコール類が好ましく、環境規制の観点から、脂肪族あるいは脂環族の1価アルコール、脂肪族または脂環族の多価アルコール及びジオール類が好ましい。
具体的には、ブタノール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール、イソドデカノール、イソトリデカノール、イソテトラデカノール、シクロヘキサノール、グリセリン、プロピレングリコール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジール、オクチルフェノール及びノニルフェノールが好ましく、ブタノール、ラウリルアルコール、グリセリン、プロピレングリコール、ペンタエリストール及びソルビトールがさらに好ましい。
【0011】
mは2〜100の整数である。安定性、潤滑性及び耐摩耗性の観点から好ましくは3〜95の整数である。
【0012】
(OA1)は炭素数が2〜4のオキシアルキレン基であり、オキシエチレン基、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基等が挙げられる。mが2以上の場合、(OA1)は同じでも異なっていてもよい。
これらのうち、安定性、潤滑性及び耐摩耗性の観点から好ましくはオキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、及びそれらの併用であり、更に好ましくはオキシエチレン基、オキシエチレン基とオキシプロピレン基の併用、オキシエチレン基とオキシブチレン基の併用、オキシエチレン基とオキシプロピレンとオキシブチレン基の併用である。
【0013】
fは1〜6の整数である。fが1の場合、BはXa-(Ca2+a/2である。Xa-は価数がaであるアニオン性基、Ca2+はカルシウムイオンである。fが2以上の場合、BはXa-(Ca2+a/2又は水酸基であり、少なくとも1つはXa-(Ca2+a/2である。fは安定性、潤滑性及び耐摩耗性の観点から好ましくは1〜3の整数、更に好ましくは1〜2の整数、特に好ましくは1である。
アニオン性基とは陰イオン性の親水基であり、カルボン酸アニオン性基(−COO-、−CH2COO-)、スルホン酸アニオン性基(−S(=O)2-)、リン酸アニオン性基(−OP(=O)(OH)O-及び−OP(=O)(O-2)、硫酸アニオン性基(−OS(=O)2-)、ホスホン酸(−P(=O)(OH)O-及び−P(=O)(O-2)及びホスフィン酸(−PH(=O)O-)等が挙げられる。
【0014】
(A)としては、例えば、水酸基含有化合物の炭素数が2〜4のアルキレンオキサイド付加物の末端アニオン性基変性物のカルシウム塩等が挙げられる。
水酸基含有化合物は、脂肪族あるいは脂環族の1価アルコール、脂肪族または脂環族の多価アルコール、ジオール類、芳香族アルコール類及びヒドロキシ酸等が挙げられる。水酸基含有化合物の具体例としては、前記一般式(1)中の、R1に水酸基を加えたもの等が挙げられる。
【0015】
水酸基含有化合物に付加させるアルキレンオキサイド(以下、AOと略記する)としては、炭素数2〜4のAOが挙げられ、具体的にはエチレンオキサイド(以下、EOと略記する)、1,2−プロピレンオキサイド(以下、POと略記する)、1,2−ブチレンオキサイド(以下、BOと略記する)、テトラヒドロフラン(以下、THFと略記する))等が挙げられる。EO、PO、BO及びTHF等は、単独で用いても併用してもよく、併用した場合の付加形式は、ランダム付加でも、ブロック付加でもよい。
これらのうち、安定性、潤滑性、耐摩耗性及び反応性の観点から、好ましくはEO付加、EO/POランダム付加、EO/BOランダム付加、EO/THFランダム付加、EO/POブロック付加、PO/EOブロック付加、EO/BOブロック付加、BO/EOブロック付加、EO/PO/BOランダム付加、EO/PO/THFランダム不可、及びEO/BO/THFランダム付加であり、さらに好ましくはEO付加、EO/POランダム付加、EO/BOランダム付加、EO/THFランダム付加、EO/POブロック付加、PO/EOブロック付加、EO/BOブロック付加、及びBO/EOブロック付加である。
【0016】
水酸基含有化合物の炭素数が2〜4のアルキレンオキサイド付加物の数平均分子量は安定性、潤滑性、及び耐摩耗性の観点より、150〜43200であり、好ましくは410〜27000である。
【0017】
末端アニオン性基としては、カルボン酸アニオン性基、スルホン酸アニオン性基、リン酸アニオン性基、硫酸アニオン性基、ホスホン酸及びホスフィン酸等が挙げられる。末端アニオン性基を2つ以上含有する場合、それぞれ同一でも異なっていてもよい。これらのうち、合成しやすさの観点からカルボン酸アニオン性基、スルホン酸アニオン性基及びリン酸アニオン性基がより好ましい。
【0018】
(A)の具体例としては、ブタノールのEO/POランダム付加物の末端酢酸化物のカルシウム塩、ブタノールのEO/BOランダム付加物の末端スルホン化物のカルシウム塩、ブタノールのEO/POランダム付加物の末端リン酸化物のカルシウム塩、ラウリルアルコールのEO付加物の末端酢酸化物のカルシウム塩、プロピレングリコールのPO/EOブロック付加物の末端酢酸化物のカルシウム塩、グリセリンのEO付加物の末端リン酸化物のカルシウム塩、ペンタエリスリトールのPO付加物の末端スルホン化物のカルシウム塩及びソルビトールのEO/POランダム付加物の末端酢酸化物のカルシウム塩等が挙げられる。
上記(A)は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0019】
本発明の潤滑油組成物は、カルシウム含有ポリエーテル化合物(A)を含有する潤滑油添加剤と基油(B)とを含有してなる潤滑油組成物である。
基油(B)は安定性の観点からエチレングリコール、プロピレングリコール及び下記一般式(2)で表される化合物である。
2[−(A2O)n−H]g (2)
[R2は活性水素含有化合物からg個の活性水素を一部又は全部除いた残基、(A2O)は炭素数が2〜4のアルキレンオキシ基である。nは1〜350の数である。nが2以上の場合、(A2O)は同じでも異なっていてもよい。gは1〜8の整数である。]
【0020】
一般式(2)中、R2は活性水素含有化合物からg個の活性水素を一部又は全部除いた残基である。
活性水素含有化合物からg個の活性水素を一部又は全部除いた残基としては、水酸基及びアミノ基等を含有する化合物から、後述のアルキレンオキサイドと反応しうる活性水素を除いた基である。
活性水素含有化合物としては、アルコール類、アミン類及びカルボン酸類等が挙げられる。
【0021】
アルコール類は、1〜6価のアルコールが挙げられる。
1価アルコールとしては、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐の脂肪族1価アルコール、炭素数4〜24の脂環式1価アルコール及び炭素数6〜24の芳香環含有1価アルコールが挙げられる。
炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐の脂肪族1価アルコールは、具体例としてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンチルアルコール、オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール並びにステアリルアルコール等が挙げられる。
炭素数4〜24の脂環式1価アルコールは、具体例としてシクロブタンアルコール、シクロペンチルアルコール、シクロヘキシルアルコール等が挙げられる。
炭素数6〜24の芳香環含有1価アルコールは、具体例としてフェノール、ベンジルアルコール等が挙げられる。
2価アルコールとしては、炭素数2〜18の直鎖もしくは分岐の脂肪族2価アルコール、炭素数6〜24の脂環式2価アルコール及び炭素数6〜24の芳香環含有2価アルコールが挙げられる。
炭素数2〜18の直鎖もしくは分岐の脂肪族2価アルコールは、具体例としてエチレングリコール(以下、EGと略す)、1,2−プロピレングリコール(以下、PGと略す)、ネオペンチルグリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール(以下、BGと略す)、1,6−ヘキサンジオール及び1,2−ドデカンジオール等が挙げられる。
炭素数6〜24の脂環式2価アルコールは、具体例としてシクロヘキサンジオール等が挙げられる。
炭素数6〜24の芳香環含有2価アルコールは、具体例としてハイドロキノン等が挙げられる。
3価アルコールとしては、グリセリン(以下GRと略す)、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
4価アルコールとしては、グリセリンペンタエリスリトール(以下、PEと略す)、ソルビタン等が挙げられる。
5価アルコールとしては、ブドウ糖、果糖等が挙げられる。
6価アルコールとしては、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、ジペンタエリスリト−ル、テトラグリセリン等が挙げられる。
【0022】
アミン類は、炭素数2〜18のアルキルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン及びペンタエチレンヘキサミン等が挙げられる。
【0023】
カルボン酸類は、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
【0024】
(A2O)は炭素数が2〜4のアルキレンオキシ基であり、具体的にはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基及びブチレンオキシ基等が挙げられる。nが2以上の場合、(A2O)は同じでも異なっていてもよい。2〜4のアルキレンオキシ基のうち、潤滑性及び耐摩耗性の観点から好ましくはエチレンオキシ基、エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基との併用、エチレンオキシ基とブチレンオキシ基との併用及びエチレンオキシ基とプロピレンオキシ基ブチレンオキシ基の併用であり、更に好ましくはエチレンオキシ基である。
【0025】
nは1〜350の整数である。nは安定性及び潤滑性及び耐摩耗性の観点から好ましくは1〜100の整数、更に好ましくは1〜10の整数である。
【0026】
gは1〜8の整数である。gは安定性及び潤滑性及び耐摩耗性の観点から好ましくは1〜6の整数、更に好ましくは1〜3の整数、特に好ましくは1〜2の整数である。
【0027】
本発明における一般式(2)中の−(A2O)n−は下記一般式(3)で表すこともできる。
−(A3O)h−(A4O)i−(A5O)j− (3)
[式(3)中、(A3O)はエチレンオキシ基、(A4O)はプロピレンオキシ基、及び(A5O)はブチレンオキシ基を表す。これらのアルキレンオキシ基は任意の順序で良い。h、i及びjがそれぞれ2以上の場合、付加形式はランダム付加でもブロック付加でもよい。h+i+jは1〜350の整数、hは1〜350の整数、i及びjはそれぞれ0〜100の整数であって、h/(h+i+j)は0.5〜1.0である。nが2以上の場合、(A2O)は同じでも異なっていてもよい。]
【0028】
h+i+jは1〜350の整数であり、さらに好ましくは1〜349である。
hは1〜350の整数であり、hは安定性、潤滑性、及び耐摩耗性の観点から好ましくは1〜266、更に好ましくは1〜100、最も好ましくは1〜10である。
プロピレンオキシ基を含む場合には、iは安定性及び合成のしやすさの観点から好ましくは0〜100の整数、更に好ましくは1〜50の整数、最も好ましくは1〜5の整数である。
ブチレンオキシ基を含む場合には、jは安定性及び合成のしやすさの観点から好ましくは0〜100の整数、更に好ましくは1〜50の整数、最も好ましくは1〜5の整数である。
プロピレンオキシ基及びブチレンオキシ基を含む場合には、h/(h+i+j)は水溶性の観点から好ましくは0.5〜1.0、更に好ましくは0.5〜0.99、最も好ましくは0.6〜0.99である。
h、i及びjがそれぞれ2以上の場合、付加形式はランダム付加でもブロック付加でもよいが、好ましくはランダム付加である。なお、h+i+j=nである。
【0029】
基油(B)としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ブタノールのEO/POランダム付加物、グリセリンのEO付加物、ソルビトールのEO/POランダム付加物、ペンタエチレンヘキサミンのEO/BOブロック付加物、ラウリルアミンのEO/BOランダム付加物、ジエチレントリアミンのEO/BOブロック付加物、1,2−ドデカンジオールのEO/PO/BOブロック付加物、エチレンジアミンのEO/BOランダム付加物、1,6−ヘキサンジオールのEO/POランダム付加物等が挙げられる。
【0030】
(B)の数平均分子量は安定性及び合成しやすさの観点より好ましくは150,000以下であり、更に好ましくは100,000以下、最も好ましくは62〜88,000である。
【0031】
カルシウム含有ポリエーテル化合物(A)の含有量は、潤滑性及び耐摩耗性の観点から、(A)と(B)の合計重量に基づいて好ましくは0.2〜99.8重量%であり、更に好ましくは1〜40重量%、特に好ましくは5〜30重量%である。
【0032】
カルシウム含有ポリエーテル化合物(A)の含有量は、潤滑性及び耐摩耗性の観点から、潤滑油添加剤の量に基づいて好ましくは0.2〜99.8重量%であり、更に好ましくは1〜40重量%、特に好ましくは5〜30重量%である。
潤滑油添加剤に基油(B)を用いる場合、基油(B)の含有量は、潤滑性及び耐摩耗性の観点から、(A)と(B)の合計重量に基づいて0.2〜99.8重量%であり、好ましくは60〜99重量%、更に好ましくは70〜95重量%である。
請求項1又は2記載の潤滑油添加剤と基油(B)とを含有してなる潤滑油組成物であって、基油(B)がエチレングリコール、プロピレングリコール及び下記一般式(2)で表される化合物からなる群から選ばれる1種以上であり、(A)と(B)の合計重量に基づいて(A)を0.2〜99.8重量%含有する潤滑油組成物。
【0033】
本発明の潤滑油組成物には、添加剤として水を使用してもよく、純水、イオン交換水、水道水、工業用水等のいずれを用いてもよい。
【0034】
本発明において、数平均分子量(以下、Mnと略記する。)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって、ポリエチレンオキサイドを基準物質として、40℃で測定される。
装置本体:HLC−8120(東ソー株式会社製)
カラム:東ソー株式会社製TSKgel α6000、G3000 PWXL
検出器:装置本体内蔵の示差屈折計検出器
溶離液:0.5%酢酸ソーダ・水/メタノール(体積比70/30)
溶離液流量:1.0ml/分
カラム温度:40℃
試料:0.25%の溶離液溶液
注入量:200μl
標準物質:東ソー株式会社製TSK TANDARD POLYETHYLENE OXIDE
データ処理ソフト:GPC−8020modelII(東ソー株式会社製)
【0035】
本発明の潤滑油組成物には、添加剤として、カルシウム含有ポリエーテル化合物(A)以外に、油性剤、防錆剤等を含むものであっても良い。
【0036】
油性剤としては、カプリル酸及びオレイン酸等のモノカルボン酸並びにアゼライン酸及びダイマー酸等のジカルボン酸等が挙げられる。
【0037】
防錆剤としては、(B)を除く、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミンのEO付加物(例えば2mol付加物等)等のアミン系化合物等が挙げられる。
【0038】
本発明の潤滑油添加剤は、潤滑性と安定性の観点から、金属加工油、作動油、軸受油等の用途に使用することができる。
【実施例】
【0039】
以下の実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下において、部は重量部を表す。
<実施例1〜13、比較例1〜3>
表1に記載の部数の配合原料を表1に記載の配合温度で攪拌して混合し、本発明の潤滑油(S1)〜(S13)及び比較の潤滑油(H1)〜(H3)を、それぞれ100部得た。
【0040】
【表1】
【0041】
表1中の略号は、以下の組成を表す。
(A1)ブタノールのEO/POランダム付加物(数平均分子量540、モル比EO/PO=50/50)の酢酸化物のカルシウム塩
(A2)ブタノールのEO/BOランダム付加物(数平均分子量3,900、モル比EO/PO=50/50)のスルホン化物のカルシウム塩
(A3)ブタノールのEO/POランダム付加物(数平均分子量2,000、モル比EO/PO=50/50)のリン酸化物のカルシウム塩
(A4)ラウリルアルコールのEO付加物(数平均分子量410)の酢酸化物のカルシウム塩
(A5)プロピレングリコールのPO/EOブロック付加物(数平均分子量2,400、モル比PO/EO=70/30)の酢酸化物のカルシウム塩(Bの数:2)
(A6)グリセリンのEO付加物(数平均分子量500)のリン酸化物のカルシウム塩(Bの数:2)
(A7)ペンタエリスリトールのEO/POランダム付加物(数平均分子量1,000、モル比EO/PO=60/40)のスルホン化物のカルシウム塩(Bの数:1)
(A8)ソルビトールのEO/POランダム付加物(数平均分子量27,000、モル比EO/PO=70/30)の末端酢酸化物のカルシウム塩(Bの数:3)
(B1)エチレングリコール
(B2)プロピレングリコール
(B3)ポリエチレングリコール(数平均分子量300)
(B4)ブタノールのEO/POランダム付加物(数平均分子量540、モル比EO/PO=57/43)
(B5)グリセリンのEO付加物(数平均分子量600)
(B6)ソルビトールのEO/POランダム付加物(数平均分子量88,000、 モル比EO/PO=84/16)
(B7)ペンタエチレンヘキサミンのEO/BOブロック付加物(数平均分子量3,000、モル比EO/PO=52/48)
(B8)ラウリルアミンのEO/BOランダム付加物(数平均分子量16,100、モル比EO/BO=67/33)
(B9)ジエチレントリアミンのEO/BOブロック付加物(数平均分子量22,800、モル比EO/BO=95/5)
(B10)1,2−ドデカンジオールのEO/PO/BOブロック付加物(数平均分子量1,650、モル比EO/PO/BO=66/27/7)
(B11)エチレンジアミンのEO/BOランダム付加物(数平均分子量72,800、モル比EO/BO=71/29)
(B12)1,6−ヘキサンジオールのEO/POランダム付加物(数平均分子量33,260、モル比EO/PO=71/29)
(C1)塩素化パラフィン(C14〜17)
(C2)過塩基性スルホン酸カルシウム(塩基価350mgKOH/g)
【0042】
(A1)、(A4)、(A5)、及び(A8)は、水酸化カリウムを触媒とし、加圧反応装置を用いて、100〜150℃のうち適した温度で、4〜20時間のうち適した時間をかけて原料アルコールのアルキレンオキサイド付加反応を行った。そして、クロロ酢酸を仕込み、40〜60℃のうち適した温度で5〜15時間のうち適した時間をかけて酢酸化し、酢酸化物を作製した。そして、水酸化Caで中和した。
(A2)及び(A7)は、水酸化カリウムを触媒とし、加圧反応装置を用いて、130〜150℃のうち適した温度で、4〜8時間のうち適した時間をかけて原料アルコールのアルキレンオキサイド付加反応を行った。そして、クロロスルホン酸を仕込み、0〜70℃のうち適した温度で、2時間かけてスルホン化し、スルホン化物を作製した。そして、水酸化Caで中和した。
(A3)及び(A6)は、水酸化カリウムを触媒とし、加圧反応装置を用いて、150℃で、4時間をかけて原料アルコールのアルキレンオキサイド付加反応を行った。そして、リン酸を仕込み、60〜90℃のうち適した温度で4〜12時間のうち適した時間をかけてリン酸化し、リン酸化物を作製した。そして、水酸化Caで中和した。
(A1)〜(A8)は、必要に応じ、エバポレーターを用いて減圧下、70℃で3時間かけて脱水を行った。
【0043】
(B4)〜(B10)は、水酸化カリウムを触媒とし、加圧反応装置を用いて、100〜150℃のうち適した温度で、4〜20時間のうち適した時間をかけてアルキレンオキサイド付加反応を行い、製造した。(B11)及び(B12)は、水酸化セシウムを触媒とし、加圧反応装置を用いて、110℃で、20時間かけてアルキレンオキサイド付加反応を行い、製造した。なお、その他の化合物は、市販品を用いた。
【0044】
<評価例>
得られた潤滑油組成物の安定性、潤滑性及び耐摩耗性を試験した。
試験方法は、以下のとおりである。結果を表1に示す。
(1)安定性
本発明の潤滑油50mlを100mlガラス製ビーカーに入れ、25℃で10分間静置した後、外観から安定性を評価した。
[安定性]
○:均一透明
×:白濁又は分離
【0045】
(2)潤滑性及び耐摩耗性
振動摩擦摩耗試験機(オプチモール社製 SRV試験機)を用い、鋼球と平面の鋼ディスクとの点接触(荷重300N)における摩擦係数を評価した。試験条件を下記に示す。
振幅:2mm、 振動数:50Hz、 温度:40℃
時間:10分間
[潤滑性]
○:時間10分間の平均摩擦係数<0.10
×:時間10分間の平均摩擦係数≧0.10
[耐摩耗性]
◎:10分摩耗後の鋼球の摩耗痕<0.4mm
○:10分摩耗後の鋼球の摩耗痕0.4〜0.5mm
×:10分摩耗後の鋼球の摩耗痕>0.5mm
【0046】
表1からわかるように、実施例の潤滑油組成物は、安定性、潤滑性、耐摩耗性いずれにも優れている。一方、比較例の潤滑油組成物は、安定性、潤滑性、及び耐摩耗性うちのいずれか1項目以上において実施例の潤滑油組成物と比べて劣っている。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の潤滑油添加剤は、安定、かつ潤滑性及び耐摩耗性に優れており、上記のようにして得られた潤滑油添加剤及び潤滑油添加剤と基油とを含む潤滑油組成物とし、金属加工油、建設機械、船舶及び金属加工機械等の作動油、軸受け油、又はギア油等に、好適に用いることができる。