【解決手段】構造物の基礎に形成された孔内に埋設される鋼管杭40が挿通する筒部6と筒部6が通るケース5とケース5に対して左右方向に出し入れ可能に収納される一対の支持アーム7、7とを有する支持部材2と、鋼管杭40上に載せられ、ジャッキ42の載る台座3と、台座3の左右方向両側に貫通する一対のねじ軸10、10を有し、ジャッキ42により支持部材2を持ち上げる持ち上げ部材4とを備える。一対の支持アーム7、7が、基礎の孔周縁の下方への突出状態と、基礎の孔内への収納状態との間で出し入れされるものであり、一対のねじ軸10、10が台座3の上方にねじ結合する中ナット14を有する。
構造物の基礎に形成された孔内に設けられる鋼管杭が挿通され、前記基礎の孔周縁を支持する支持部材と、前記鋼管杭上に載せられ、ジャッキが載る台座と、前記台座の上方に配置される基板とその基板の左右方向両側からそれぞれ下方に延びるねじ軸とを有する持ち上げ部材とを備え、前記ねじ軸が前記台座の左右方向両側にそれぞれ挿通された状態で、前記ねじ軸の下部に前記支持部材が取り付けられた傾斜修復器具であって、
前記支持部材は、前記鋼管杭が挿通される筒部と、その筒部が通る枠状のケースと、前記ケースに対して左右方向に出し入れ可能に収納される一対の支持アームとを有し、
前記ケースは、底板部と、天板部と、その底板部と天板部の間に設けられ、前記支持アームの出し入れ方向に沿う側板部とを有し、前記一対の支持アームが前記基礎の孔周縁の下方への突出状態と前記基礎の孔内への収納状態との間で出し入れされるものであり、前記ねじ軸が前記台座の上方にねじ結合する中ナットを有する傾斜修復器具。
前記支持部材は、前記ケース上に載り、前記筒部が通る枠状の上ケースと、前記上ケースに対して左右方向に交差する方向に出し入れ可能に収納される一対の上支持アームとを有し、
前記上ケースが、底板部と、天板部と、その底板部と天板部の間に設けられ、前記上支持アームの出し入れ方向に沿う側板部とを有し、
前記上支持アームが前記基礎の孔周縁の下方への突出状態と前記基礎の孔内への収納状態との間で出し入れされるものである請求項1に記載の傾斜修復器具。
前記ねじ軸が上ねじ軸と下ねじ軸と、ねじ結合により前記上ねじ軸と下ねじ軸を連結する長ナットとからなり、その長ナットが前記中ナットよりも上方に位置した請求項1または2に記載の傾斜修復器具。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の第一実施形態に係る傾斜修復器具を
図1〜
図6に基づいて説明する。
この傾斜修復器具1は、
図1〜
図3に示すように、構造物の基礎31に形成された孔32周縁の下方を支持する支持部材2と、鋼管杭40上に載せられ、ジャッキ42の載る台座3と、台座3の左右方向両側に貫通する一対のねじ軸10、10を有し、ジャッキ42より支持部材2を持ち上げる持ち上げ部材4とを備える。
【0018】
なお、以下、左右方向及び前後方向とは、一対のねじ軸10、10が左右両側に配置された持ち上げ部材4に正対した状態での左右方向及び前後方向を意味する。
【0019】
支持部材2は、鋼管杭40が挿通される筒部6と、筒部6が通る枠状のケース5と、ケース5に対して左右方向に出し入れ可能に収納される一対の支持アーム7、7とを備える。
【0020】
ケース5は、矩形の底板部5a及び天板部5bと、それらの幅方向(前後方向)両側縁間の左右方向に沿って設けられた一対の側板部5cとからなり、長さ方向(左右方向)の両側が開口する枠状をなす。底板部5a及び天板部5bは、その中央に円筒状の筒部6が上下方向に通る状態となっている。
【0021】
底板部5a及び天板部5bは、筒部6を挟んで左右方向両側に貫通孔5d、5dが形成される。底板部5aは、
図2に示すように、天板部5b及び側板部5cよりも、左右方向外向きに突き出して形成されている。天板部5bは、その上面と筒部6の上端面とが同一平面上に位置している。
【0022】
筒部6は、鋼管杭40が挿通可能な内径を有し、その下部がケース5の底板部5aよりも下方に突き出した状態となっている。
【0023】
図2に示すように、一対の支持アーム7、7は、断面形状が矩形の第一アームバー7a及び第二アームバー7bと、これらの一端に固定されたガイドバー7cとからなる。第一アームバー7aは、ガイドバー7cの一端部に固定され、第二アームバー7bは、ガイドバー7cの他端寄りの位置に固定される。
【0024】
第一アームバー7a及び第二アームバー7bは、相互に平行となる状態で、ガイドバー7cに対して直角にかつ同じ側に固定されている。一対の支持アーム7、7は、ガイドバー7cが左右方向外側に配置された状態で、第一アームバー7a及び第二アームバー7bがケース5に収納される。
【0025】
また、ケース5に収納される一対の支持アーム7、7のうち、一方の支持アーム7は、その第一アームバー7aがケース5の幅方向(前後方向)一側方に位置する。他方の支持アーム7は、その第一アームバー7aがケース5の幅方向(前後方向)他側方に位置する。
【0026】
このような位置関係となる一対の支持アーム7、7は、それぞれのガイドバー7cが天板部5b及び側板部5cの左右方向両側端縁に接し、かつ底板部5aの左右方向外向きに突き出す部分の上部に位置する状態(収納状態)となる(
図1参照)。
【0027】
また、一対の支持アーム7、7は、それぞれのガイドバー7cがケース5に対して、左右方向外向きに突き出した状態(突出状態)とすることができる。すなわち、一対の支持アーム7、7は、支持部材2のケース5に対して、収納状態と突出状態の間で出し入れ可能に収納される。
【0028】
支持部材2の上方に配置される台座3は、矩形の板体からなり、下面中央に固定される嵌合リング8と、嵌合リング8を挟んで左右方向両側に設けられる貫通孔3a、3aとを有する。嵌合リング8は、円環状をなし、その内径が鋼管杭40の外径よりも大きく、内部に鋼管杭40が嵌合する。
【0029】
持ち上げ部材4は、台座3の上方に配置される基板9と、基板9の左右方向両側からそれぞれ下方に延びる一対のねじ軸10、10と、ねじ軸10のそれぞれにねじ込み可能な中ナット14、14及び下ナット11、11とを有する。基板9は、台座3の左右方向の幅と同じ幅を有する矩形の板体であり、左右方向両側にねじ軸10が通る貫通孔9a、9aを有する。
【0030】
ねじ軸10は、
図3に示すように、上ねじ軸10a及び下ねじ軸10bが長ナット12により上下方向に連結されたものである。ねじ軸10は、上端部が基板9の左右両側の貫通孔9a、9aにそれぞれ挿通される状態で、上ナット13、13により基板9に取り付けられる。
【0031】
また、ねじ軸10は下ねじ軸10bに中ナット14がねじ結合し、中ナット14よりも下方において、台座3の貫通孔3a、3aにそれぞれ挿通される。すなわち、下ねじ軸10bは、台座3の上方にねじ結合する中ナット14を有している。
【0032】
また、ねじ軸10は、台座3の下方において、固定ナット15がねじ結合する。ねじ軸10の固定ナット15よりも下部が、ケース5の底板部5a及び天板部5bの貫通孔5dに挿通される。さらに、ケース5よりも下方において、下ナット11がねじ軸10の下端部に嵌め合わされる。下ナット11により、支持部材2のケース5がねじ軸10に対して取り付けられる。
【0033】
なお、ねじ軸10は、上ねじ軸10aと下ねじ軸10bとに分離可能であるが、1本のねじ軸から構成してもよい。ねじ軸10が、上ねじ軸10aと下ねじ軸10bとに分離可能であれば、後述のように、構造物の傾斜修復後、長ナット12を回転操作し、基板9と共に上ねじ軸10aを下ねじ軸10bから取り外すことが可能となる。
【0034】
この発明の傾斜修復器具1は上記のような構成であり、以下にその使用方法を
図4〜6に基づいて説明する。
【0035】
前準備として、構造物の基礎31のうち、傾斜修正箇所となる位置に既存の方法で孔32を設ける。続いて、
図4(a)に示すように、孔32の中央に鋼管杭40を基礎31下方の地盤から反力が得られるまで、順次上下方向に連結しつつ、回転により埋設する。
【0036】
孔32は、
図6に示すように、支持部材2のケース5に対して、左右方向、前後方向にわずかに大きい略矩形をなしている。略矩形の孔32を設けることにより、支持部材2のケース5から突き出される一対の支持アーム7、7の突出量を小さく抑えられる。その結果、傾斜修正時に支持アーム7、7が受ける荷重をケース5の天板部5bで確実に受けることができる。
【0037】
ここで、鋼管杭40としては、その外周部にらせん状に取り付けられたプレート状のブレード41を備えるものを採用することができる。この場合、鋼管杭40は、公知の回転装置(図示省略)、例えばオーガ回転装置等を用いて回転させて地面に埋設する。
【0038】
また、鋼管杭40として、ブレード41を備えていないものを用いてもよい。この場合、油圧、空気圧、機械式などのハンマ、重錘等で鋼管杭40を打撃して、地面中に貫入させることができる。その一方で、ブレード41を備える鋼管杭40を用いると、ブレード41が地面に食い込むため、打撃貫入させる鋼管杭を用いた場合よりも、鋼管杭40が安定する。また、回転させることで、鋼管杭40はブレード41により地中を掘り進み、反力が得られる目標深度まで容易に到達させることが可能となる。
【0039】
続いて、持ち上げ部材4の一対の下ねじ軸10bの下端に支持部材2のケース5を挿通して、下ナット11及び固定ナット15により固定した状態とする。さらに、一対の下ねじ軸10bに台座3を挿通して、中ナット14、14をそれぞれねじ結合する(
図4(a)の一点鎖線参照)。
【0040】
この下ねじ軸10bの下端への支持部材2のケース5の固定は、鋼管杭40が基礎31下方の地盤に埋設される前に行われていることが好ましいが、鋼管杭40の埋設後であってもよい。
【0041】
次に、支持部材2を基礎31の孔32に入れ、ケース5の筒部6に鋼管杭40を挿通し、台座3の嵌合リング8に鋼管杭40を挿入し、台座3に鋼管杭40を突き合わせる。
【0042】
このとき、
図4(b)に示すように、台座3は、持ち上げ部材4の一対の下ねじ軸10b、10bにねじ結合する中ナット14に突き当たっている。また、支持部材2は、一対の下ねじ軸10b、10bを介して、基礎31に対して低く配置されている。
【0043】
また、下ねじ軸10bの上部に上ねじ軸10aを長ナット12により連結してねじ軸10とする。そして、ねじ軸10の上ねじ軸10aに、持ち上げ部材4の基板9の貫通孔9a、9aをそれぞれ挿通し、基板9上において、上ナット13を上ねじ軸10aに締め付ける(
図4(b)の一点鎖線参照)。
【0044】
その後、台座3上にジャッキ42を配置し、ジャッキ42のピストン42a上に基板9を載せ、基板9上において、上ナット13を上ねじ軸10aに締め付ける。このとき、ジャッキ42のピストン42aは、
図5(a)に示すように、最も下方に位置した状態となっている。なお、ジャッキ42は、油圧式、機械式、空気圧式など、公知のものを適用することができる。
【0045】
支持部材2のケース5の支持アーム7、7を左右方向の外向きに突出させ、それぞれのガイドバー7c、7cを基礎31の孔32の周縁部の下方に位置する状態とする。
【0046】
以上のようにして、基礎31の孔32の周縁部の下部に傾斜修復器具1の支持部材2が取り付けられる。続いて、
図5(b)に示すように、ジャッキ42を操作して、そのピストン42aを上昇させる。ここで、台座3は、鋼管杭40上に載っており、下方に移動できないことから、ピストン42aの上昇に伴い、持ち上げ部材4により、支持部材2のケース5が引き上がる。
【0047】
すなわち、ピストン42aの上昇に伴い、基板9が上昇し、基板9に取り付けたねじ軸10を介して、支持部材2のケース5が引き上げられる。ケース5の引き上げに伴って、支持アーム7、7を介して、基礎31が引き上がる。
【0048】
基礎31を所定位置まで引き上げた状態では、ねじ軸10に締め付けられる中ナット14が、台座3に対して基板9の引き上げ高さ分だけ上方に移動している(
図5(b)の一点鎖線参照)。この状態の中ナット14を回転させて(
図5(b)の実線参照)、台座3に突き合わせる。
【0049】
中ナット14の回転操作により、ねじ軸10は中ナット14が台座3に突き当たる位置で保持され、ねじ軸10に引き上げられた支持部材2で基礎31を引き上げた状態で保持される。すなわち、中ナット14の回転操作によって、支持部材2で基礎31を引き上げた状態で保持することができる。このため、従来の傾斜修復器具の場合と異なり、大掛かりな溶接作業が不要となり、傾斜修復の作業性が良好なものとなる。
【0050】
また、溶接作業に伴って、基礎31の孔32の下方に予め深い穴を空ける必要がなく、鋼管杭40を基礎31の孔32に回転により埋め込み可能な作業空間が確保されていればよい。
【0051】
その後、ピストン42aを押し下げてジャッキ42を台座3から取り外す。その後、
図7に示すように、長ナット12を回転操作し、上ねじ軸10aを下ねじ軸10bから取り外す。最後に、構造物の基礎31の孔32の下方を土で埋め戻して、構造物の傾斜修復作業を終える。
【0052】
また、構造物の傾斜修復作業が終了した後、時間経過に伴い、構造物の傾斜が再発した場合であっても、この実施形態の傾斜修復器具1を再利用することができる。
【0053】
すなわち、構造物の基礎31の孔32の下方の土を掘り、台座3上にジャッキ42を載せ、下ねじ軸10bの上部に長ナット12により上ねじ軸10aを連結する。そして、ジャッキ42のピストン42a上に基板9を載せて、基板9上において、上ナット13を上ねじ軸10aに締め付ける。
【0054】
このようにして、再度、基礎31の下部に傾斜修復器具1を取り付けることができ、上述した手順で基礎31を持ち上げることができるので、傾斜修復作業を再度容易に行うことができる。
【0055】
この発明に係る第二実施形態を
図8〜13に基づいて説明する。
この第二実施形態は、
図8に示すように、支持部材2がケース5上に載る上ケース20と、上ケース20に対して前後方向に出し入れ可能に収納される一対の上支持アーム21とをさらに有する点で、前記第一実施形態と相違し、第一実施形態の構成と同じ構成と考えられるものには、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0056】
実施形態の支持部材2の上ケース20は、矩形の底板部20a及び天板部20bと、それらの幅方向(左右方向)両側縁間の前後方向に沿って設けられた一対の側板部20cとからなり、長さ方向(前後方向)の両側が開口する枠状をなす。底板部20a及び天板部20bは、その中央に筒部6が通る状態となっている。
【0057】
上ケース20の底板部20aは、
図8に示すように、天板部20b及び側板部20cよりも、前後方向外向きに突き出して形成されている。天板部20bは、その上面と筒部6の上端面とが同一平面上に位置している。
【0058】
図9に示すように、上ケース20の底板部20aの前後方向の長さは、ケース5の天板部5bの前後方向の幅と同じ長さに形成されている。
【0059】
一対の上支持アーム21、21は、断面形状が矩形の第一アームバー21a及び第二アームバー21bと、これらの一端に固定されたガイドバー21cとからなる。第一アームバー21aは、ガイドバー21cの一端部に固定され、第二アームバー21bは、ガイドバー21cの他端寄りの位置に固定される。
【0060】
第一アームバー21a及び第二アームバー21bは、相互に平行となる状態でガイドバー21cに対して直角にかつ同じ側に固定されている。一対の上支持アーム21、21は、ガイドバー21cが前後方向外側に配置された状態で、第一アームバー21a及び第二アームバー21bが上ケース20に収納される。
【0061】
また、上ケース20に収納される一対の上支持アーム21、21のうち、一方の上支持アーム21は、その第一アームバー21aが上ケース20の幅方向(左右方向)一側方に位置する。他方の上支持アーム21は、その第一アームバー21aが上ケース20の幅方向(左右方向)他側方に位置する。
【0062】
このような位置関係となる一対の上支持アーム21、21は、それぞれのガイドバー21cが天板部20b及び側板部20cの前後方向両側端縁に接し、かつ底板部20aの前後方向外向きに突き出す部分の上部に位置する状態(収納状態)となる。
【0063】
また、一対の上支持アーム21、21は、それぞれのガイドバー21cが上ケース20に対して、前後方向外向きに突き出した状態(突出状態)とすることができる。すなわち、一対の上支持アーム21、21は、支持部材2の上ケース20に対して、収納状態と突出状態の間で前後方向に出し入れ可能に収納される。
【0064】
この実施形態では、
図10に示すように、ケース5の一対の支持アーム7、7は、それぞれのガイドバー7c、7cの上面が、天板部5bよりも高い位置となる状態で突出している。ガイドバー7c、7cの上面は、上支持アーム21、21のそれぞれのガイドバー21c、21cの上面に対して同一平面となるように形成されている。
【0065】
なお、上ケース20は、一対の上支持アーム21、21が左右方向に対して交差する方向に出し入れ可能に収納されていればよい。第二実施形態のように、左右方向に対して直交する方向、すなわち、前後方向に出し入れ可能に収納されていると、
図12に示すように、一対の支持アーム7、7及び一対の上支持アーム21、21により、基礎31の孔32の周縁部を前後方向及び左右方向にバランス良く持ち上げることが可能となる。
【0066】
この実施形態のケース5は、底板部5a及び天板部5bの中央を通る外筒部22を有する。外筒部22は、円筒状をなし、その内部に上ケース20の筒部6がすき間なく嵌り合う内径を有する。
【0067】
外筒部22は、その上端部と天板部5bの上面とが同一平面上に位置している。ケース5の外筒部22内に上方から上ケース20の筒部6が嵌め合わされ、ケース5上に上ケース20が載る状態となる。
【0068】
ケース5上に上ケース20が載る状態において、上ケース20の底板部20aの長さ方向(前後方向)の辺縁が、ケース5の天板部5bの幅方向(前後方向)の辺縁と一致している。また、ケース5の左右方向両側の貫通孔5dの間に上ケース20が配置されている。
【0069】
このように構成される第二実施形態では、上述した第一実施形態の場合と同様に、構造物の基礎31に設けた孔32の中央に鋼管杭40を埋設する。そして、支持部材2のケース5の外筒部22内に上ケース20の筒部6を嵌め合わせ、ケース5上に上ケース20が載る状態とする。
【0070】
続いて、ケース5上に上ケース20が載る支持部材2を基礎31の孔32に入れ、筒部6に鋼管杭40を挿通する。その後、台座3の嵌合リング8内に鋼管杭40を差し込んで、台座3に鋼管杭40を突き合わせる。
【0071】
その後、
図11(a)に示すように、台座3上にジャッキ42を配置し、ジャッキ42のピストン42a上に基板9を載せる。基板9上において、上ナット13を上ねじ軸10aに締め付け、支持部材2を一対の下ねじ軸10b、10bを介して、基礎31に対して低く配置する。
【0072】
このとき、支持部材2は、ケース5の一対の支持アーム7、7が左右方向に、上ケース20の一対の上支持アーム21、21が前後方向に出し入れ可能な状態となっている。
【0073】
この状態のケース5の一対の支持アーム7、7を左右方向の外向きに突出させ、上ケース20の一対の上支持アーム21、21を前後方向に突出させる。これにより、支持アーム7、7のガイドバー7c及び上支持アームのガイドバー21cを基礎31の孔32の周縁部の下方に位置する状態とする。
【0074】
以上のようにして、基礎31の孔32の周縁部の下部に傾斜修復器具1の支持部材2が取り付けられる。その後、上述した第一実施形態の場合と同様、ジャッキ42の操作により、持ち上げ部材4を介して支持部材2のケース5及び上ケース20が引き上げられる。その引き上げに伴って、支持アーム7、7及び上支持アーム21、21を介して、基礎31が引き上がる。
【0075】
基礎31が引き上がる状態で、中ナット14の回転操作によって、支持部材2で基礎31を引き上げた状態で保持することができる。このため、従来の傾斜修復器具の場合と異なり、大掛かりな溶接作業が不要となり、傾斜修復の作業性が良好なものとなる。
【0076】
また、
図12に示すように、基礎31の孔32周縁部は、支持部材2のケース5及び上ケース20から突き出される一対の支持アーム7、7及び上支持アーム21、21により、前後方向及び左右方向に支持される。このため、傾斜修正時に支持アーム7、7及び上支持アーム21、21への荷重が分散されるとともに、基礎31の孔32周縁を確実に支持することが可能となる。
【0077】
基礎31が引き上がった後は、ピストン42aを押し下げてジャッキ42を台座3から取り外す。その後、
図13に示すように、長ナット12を回転操作し、上ねじ軸10aを下ねじ軸10bから取り外す。最後に、構造物の基礎31の孔32の下方を土で埋め戻して、構造物の傾斜修復作業を終える。
【0078】
また、構造物の傾斜修復作業が終了した後、時間経過に伴い、構造物の傾斜が再発した場合であっても、第一実施形態と同様に、この第二実施形態の傾斜修復器具1を再利用することができる。
【0079】
この発明に係る第三実施形態を
図14に基づいて説明する。
この第三実施形態は、
図14に示すように、支持部材2のケース5が、外筒部22の代わりに挿通孔23を有する点で、前記第二実施形態と相違し、第二実施形態の構成と同じ構成と考えられるものには、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0080】
この実施形態のケース5は、天板部5b及び底板部5aの中央に上側挿通孔23a及び下側挿通孔23bが形成される。天板部5bの上側挿通孔23aと、底板部5aの下側挿通孔23bは、同径の円形をなし、それぞれ同心円状に配置される。
【0081】
上側挿通孔23a及び下側挿通孔23bは、その内部に上ケース20の筒部6がすき間なく嵌り合う内径を有し、挿通孔23を構成する。ケース5の挿通孔23内に上方から上ケース20の筒部6が嵌め合わされ、ケース5上に上ケース20が載る状態となる。
【0082】
この状態において、第二実施形態の場合と同様に、上ケース20の底板部20aの長さ方向(前後方向)の辺縁が、ケース5の天板部5bの幅方向(前後方向)の辺縁と一致する。また、ケース5の左右方向両側の貫通孔5dの間に上ケース20が配置される。