本発明は、タイヤ内の空気圧を測定する空気圧センサであって、熱エネルギーを受けて発電を行う発電素子からの電力で機能する、タイヤ空気圧計に関する。本発明は、さらに、発電素子において発電された電力を蓄電する蓄電池を備え、蓄電池からの電力で機能する、タイヤ空気圧計であることが好ましい。
【背景技術】
【0002】
自動車やバイクなどに用いるタイヤにおいて、タイヤの空気圧が低下してしまうと、タイヤのショルダー部が摩耗したり、タイヤのショルダー部が発熱したりして、バースト、すなわちパンクの原因となる。
【0003】
また、バーストを引き起こすまでに至らない場合であっても、タイヤの空気圧が低下することにより、操縦の安定性が低下したり、燃費が悪化したり、雨天時にアクアプレーニング現象を引き起こしたりして、重大な事故につながる危険性がある。
【0004】
したがって、タイヤの空気圧を常時監視することは、自動車やバイクの走行上の安全性を確保したり、他のドライバーの安全性を確保したりする観点から、非常に重要なことである。
【0005】
そのため、タイヤの空気圧の状態を把握し、走行上の安全性を確保するために、タイヤ内にタイヤ空気圧計を取り付け、タイヤの圧力および温度などを測定し、その測定数値をドライバーに提供することが一般的となっており、それを実現するための技術開発が進んでいる。
【0006】
例えば、特許文献1には、タイヤバルブと一体となるように成形したタイヤ空気圧検知手段が示されている。また、特許文献2にはタイヤのインナーライナーにアンテナを設置し、これに空気圧監視装置を接続して、車両との信号伝達を行う手段が示されている。
【0007】
しかし、上記のような従来型のタイヤ空気圧計は、タイヤ空気圧計を機能させるための蓄電池を、定期的に充電したり交換したりしなければならないという問題があった。
【0008】
タイヤ空気圧計の蓄電池を充電または交換するためには、車両からタイヤを取り外し、取り外したタイヤからタイヤ空気圧計を回収して、蓄電池の充電または交換を行い、タイヤ空気圧計をタイヤに再び取り付けて、タイヤを車両に再び取り付けるという作業が必要となるため、タイヤ空気圧計の蓄電池を充電または交換するためだけに、大きな労力が必要となっていた。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明のタイヤ空気圧計の実施形態について、図面を用いて説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0023】
図1には、本発明の実施形態に係るタイヤ空気圧計10を示している。このタイヤ空気圧計10は、自動車やバイクなど、タイヤによって駆動するものに広く適用できる。
【0024】
本発明の実施形態に係るタイヤ空気圧計10は、例えば、本体11、発電素子12a、発電素子12b、充電回路21、蓄電池22、空気圧センサ23、温度センサ24、異常判定部25、無線送信機26を備えて構成することができる。
【0025】
本体11は、充電回路21、蓄電池22、空気圧センサ23、温度センサ24、異常判定部25、無線送信機26を内包する構造となっている。空気圧センサ23および温度センサ24は、それぞれタイヤ内の空気圧および温度を測定するために、センサ部が本体11の外部に露出した構造となっている。なお、本願明細書において、タイヤ内とは、タイヤとリムによって囲まれた空間のことをいう。
【0026】
本体11には、上述のような電子機器類が内蔵されているため、電子機器類がタイヤ内の熱によって故障したり劣化したりしないような構成とすることが好ましい。そのため、本体11は、遮熱部材で構成されていることが好ましい。遮熱部材の種類は、特に限定されず、公知のものを用いることができる。
【0027】
本発明に用いる発電素子12aおよび/または発電素子12b(以下、発電素子12a/bという。)は、熱エネルギーを受けて発電を行うことができる発電素子であり、本体11の外面を略被覆するようにして設置することができる。発電素子12a/bの設置態様は、空気圧センサ23および温度センサ24のセンサ部を被覆しない態様であれば特に限定されない。
【0028】
本実施形態のタイヤ空気圧計10の本体11においては、設置面14の反対側となる位置に発電素子12aを設置し、設置面14側となる位置に発電素子12bを設置する態様を示している。
【0029】
発電素子12a/bは、本体11の外面または内面のいずれに設置してもよい。発電素子12a/bを本体11の外面に設置する場合は、発電素子12a/bに与えられる熱エネルギーが、本体11によって遮られることがないため、発電素子12a/bにおける発電量が向上する。発電素子12a/bを本体11の内面に設置する場合は、発電素子12a/bと充電回路21を結ぶ配線を通す孔を本体11に設ける必要がなくなり、全ての配線を本体11の内部に収めることができる。
【0030】
発電素子12a/bの発電に用いる熱エネルギーとしては、車両走行時にタイヤと路面との摩擦によって生じる熱や、走行中の車両からリムを介して伝わってくる熱などが利用される。そのため、発電素子において発電を行うための熱エネルギーが、車両走行中に持続的に供給されることにより、タイヤ空気圧計10が機能する構成となっている。
【0031】
本発明に用いる発電素子12a/bは、熱エネルギーを受けて発電を行うことができるものであるが、得られる熱エネルギー量に応じて発電量も異なってくる。そのため、蓄電池22に一定の電力を供給するために充電回路21を設けることが好ましい。
【0032】
充電回路21としては、DC/DCコンバータなどを用いることができる。
【0033】
蓄電池22は、充電回路21において変圧された電力を蓄電する。蓄電池22において蓄電された電力は、必要に応じて、空気圧センサ23、温度センサ24、異常判定部25、および無線送信機26に供給される。
【0034】
蓄電池22には、タイヤ空気圧計10を最初に使用する際に、一定量以上の電力が蓄電されていることが好ましく、蓄電池22の消費電力分を発電素子12a/bにおいて発電した電力で補填する態様とすることが好ましい。
【0035】
空気圧センサ23は、タイヤ内の空気圧を測定する。測定されたタイヤ内の空気圧をもとに、空気圧センサ23が空気圧情報を算出し、異常判定部25に出力する。
【0036】
タイヤ内の空気圧を測定する方法については、特に限定されず、歪ゲージ抵抗式、半導体ピエゾ抵抗式、静電容量式、またはシリコンレゾナント式など、公知の方式を用いることができる。
【0037】
温度センサ24は、タイヤ内の温度を測定する。測定されたタイヤ内の温度をもとに、温度センサ24が温度情報を算出し、異常判定部25に出力する。
【0038】
タイヤ内の温度を測定する方法については、特に限定されず、測温抵抗体、熱電対、赤外線温度計、IC温度センサ、またはサーミスタなど、公知の方法を用いることができる。
【0039】
タイヤ内の空気圧は、タイヤ内の温度によって変化するため、測定された空気圧を所定温度における空気圧に換算して、タイヤ内の空気圧の異常判定を行うことが好ましい。
【0040】
異常判定部25は、空気圧センサ23から入力した空気圧情報と、温度センサ24から入力した温度情報とをもとに、上記のような圧力換算を行い、換算圧力が予め設定していた空気圧の閾値以上であるか否かの判定を行うことで、タイヤ内の空気圧の異常を検出する。検出された空気圧の異常に係る異常情報は、無線送信機26に出力される。
【0041】
なお、温度センサ24を設けずに、空気圧センサ23から入力した空気圧情報のみをもとにして、異常判定部25が、タイヤ内の空気圧の異常を検出する態様としてもよい。
【0042】
また、異常判定部25を設けずに、空気圧情報および/または温度情報を無線送信機26に出力して、空気圧情報および/または温度情報をドライバー等に認識させる態様としてもよい。
【0043】
本発明に用いる発電素子12a/bは、タイヤ内の温度に応じて発電量が変化するため、温度センサ24に代えて発電量センサを設け、発電量センサにおいて測定した発電量と、発電素子の発電性能とをもとに、タイヤ内の温度を逆算することもできる。このようにして算出されたタイヤ内の温度情報と、空気圧センサ23が算出した空気圧情報とから、タイヤ内の空気圧の異常を検出する構成とすることができる。
【0044】
また、タイヤ内の測定温度についての閾値を設け、測定温度が閾値以上となった場合にも異常を警告する態様としてもよい。同様に、発電素子における発電量についての閾値を設け、発電量が閾値以上となった場合には、タイヤ内の温度が閾値以上となったものと見做して、異常を警告する態様としてもよい。
【0045】
無線送信機26は、異常判定部25から入力された異常情報を警告信号として無線送信する。無線送信された警告信号をドライバー等が認知することにより、タイヤ空気圧の異常が認識される。
【0046】
警告信号の送信先としては、ドライバーにタイヤ空気圧の異常を認識させるためには、車両に搭載されたカーナビゲーションシステムやドライバーの有するスマートフォンなどに警告信号を送信する態様が挙げられる。また、ドライバー以外の第三者にタイヤ空気圧の異常を認識させるためには、車両管理会社の管理センターなどに警告信号を送信する態様が挙げられる。
【0047】
なお、無線送信機26における警告信号の送信動作は、必要に応じて連続的に、または所定時間毎に間欠的に(例えば、数分〜数時間に1回程度)、実行するような構成とすることができる。すなわち、タイヤ空気圧のモニタリング形態を、連続的なモニタリング形態または間欠的なモニタリング形態に任意に設定することができる。
【0048】
警告信号の送信動作を連続的に実行することで、タイヤ空気圧の変化状態を継続的にモニタリングすることができる。また、警告信号の送信動作を所定時間毎に実行すれば、送信動作を連続的に実行する場合に比べて、送信動作に要する消費電力を抑えることができ、蓄電池の電力消費等を軽減することができる。
【0049】
上記以外に蓄電池の電力消費等を軽減させる方法としては、空気圧情報および/または温度情報もしくは警告信号等のデータを、無線送信によって能動的に発信せずに、RF−ID等によって受動的に外部から取り出す方法が挙げられる。この場合は、無線送信機26に代えてFlashメモリ等の不揮発メモリを設けた上で、上記データを一旦不揮発メモリに蓄えておけば、外部から電波で不揮発メモリにアクセスして上記データを取り出すことができるようになる。
【0050】
図2には、本発明の実施形態に係るタイヤ空気圧計をタイヤに設置した場合のタイヤ断面図を示している。
図2におけるタイヤ断面図は、タイヤ空気圧計30、タイヤ40、リム50によって構成されている。
【0051】
タイヤ空気圧計30は、その本体の外面または内面に発電素子を備えている。発電素子が熱エネルギーを受けて発電を行い、その電力がタイヤ空気圧計30に供給されることで、タイヤ空気圧計30は機能する。
【0052】
タイヤ40は、ゴム層41、インナーライナー42、カーカス43、ビードワイヤー44、ベルト45によって構成されている。また、タイヤ40の各部位は、
図2に示す通り、リム50の側から、ビード部51、サイドウォール部52、ショルダー部53、トレッド部54の4つに区分することができる。
【0053】
リム50は、ホイールの一部を構成しており、通常アルミニウムなどの金属で構成されている。リム50とタイヤ40によって囲まれたタイヤ内の空間に発電素子を備えたタイヤ空気圧計30を設置することにより、タイヤ空気圧計30を機能させるための蓄電池を充電または交換する必要がなくなり、長期間にわたり継続してタイヤ空気圧計30を使用できるようになる。
【0054】
タイヤ空気圧計30に設置した発電素子の発電に用いる熱エネルギーとしては、車両走行時にタイヤと路面との摩擦によって生じる熱や、走行中の車両からリムを介して伝わってくる熱などを利用できる。
【0055】
図2に示す実施形態においては、タイヤ空気圧計30をリム50に設置している。タイヤ空気圧計30をリム50に設置する方法は、特に限定されないが、例えば、ネジ状の軸部を設けたタイヤ空気圧計30と、ネジ受け孔を設けたリム50とを螺合して設置する方法などが挙げられる。
【0056】
また、タイヤ空気圧計30を接着部材でリム50に接着する態様としてもよい。タイヤ空気圧計30を接着部材でリム50に接着する場合、接着部材は耐熱性の高いものを用いることが好ましい。
【0057】
その他、タイヤ空気圧計30に略環状のバンドを設け、略環状のバンドをリム50の周方向に沿って装着することにより、タイヤ空気圧計30をリム50に固定することも可能である。この場合、略環状のバンドは弾性を有するものであることが好ましい。
【0058】
なお、チューブタイプタイヤのように、インナーライナー42の代わりに、リム50の表面を含むタイヤ内側面をチューブ構造が覆っている場合は、リム50の表面を覆っているタイヤのチューブ部分にタイヤ空気圧計30を設置する態様としてもよい。この場合、チューブタイプタイヤの製造時に、タイヤ空気圧計30をチューブ部分に設置する必要がある。
【0059】
なお、本発明のタイヤ空気圧計30の設置場所は、リム50の表面に限定されず、例えば、タイヤ40の内側面に設置する態様としてもよい。タイヤ40の内側面にタイヤ空気圧計30を設置する場合は、ビード部51またはトレッド部54に設置することが好ましい。
【0060】
ビード部51は、鋼で構成された環状のビードワイヤー44を束ね、束ねられたビードワイヤー44をゴムで被覆したリング状の補強部を有する部位であり、タイヤ40をリム50に固定する役目をしている。また、ビード部51においては、タイヤ40の骨格を構成するためにゴムで被覆したコードを貼り合わせて層状にしたカーカス43が二重に形成されている。以上のような理由から、ビード部51は変形しにくい構造であるため、タイヤ空気圧計30の設置場所として適している。
【0061】
トレッド部54は、タイヤ40が路面と接触する部分であり、ゴム層41が厚くなっている。また、トレッド部54は、カーカス43を強く締め付けてトレッド部54の剛性を高めるためにベルト45が設けられている。以上のような理由から、トレッド部54は変形しにくい構造であるため、タイヤ空気圧計30の設置場所として適している。
【0062】
また、ランフラットタイヤのように、タイヤ40内の空気圧が変化しても、タイヤ40の形状が大きく変形しないようなものであれば、サイドウォール部52やショルダー部53などにタイヤ空気圧計30を設置してもよい。
【0063】
なお、本実施形態におけるタイヤ空気圧計30は、予めタイヤ40のゴム内部に組み込んだものとしてもよいし、予めホイールのリム50と一体化させたものとしてもよい。
【0064】
本発明のタイヤ空気圧計30に用いる発電素子として、例えば、温度差によって発電を行う温度差発電素子を用いようとすると、温度差を設けるために温度差発電素子を冷却するための機構が必要となるため、現実的ではない。
【0065】
また、本発明で用いている発電素子は、熱エネルギーを受けて発電を行う発電素子であるが、熱エネルギーを受けて発電を行う発電素子であっても、従来の発電素子では、発電のために100℃以上の高温を必要とすることが多かったため、タイヤ内の熱源を用いて発電を行い、タイヤ空気圧計30に電力を供給するという構成をとることはできなかった。したがって、本発明のタイヤ空気圧計30は、以下のような構成の発電素子によって実現できるものとなっている。
【0066】
本発明に用いる発電素子6は、
図3または
図4に示すように、正極1と負極5との間に、p型半導体と、n型半導体とを有するものであれば、特に限定されず、正極1と負極5との間に、さらに、強誘電体を有するものであってもよく、強誘電体を有さないものであってもよい。
【0067】
発電素子6は、例えば、
図3に示すように、正極1と、p型半導体層2と、強誘電体層3と、n型半導体層4と、負極5とがその順で配置された構造形態を有している。また、
図4に示すように、p型半導体層2と、強誘電体層3と、n型半導体層4とは、接触界面を増やすために混合したヘテロジャンクション構造をとっていてもよい。こうした発電素子6は、従来の発電素子とは異なる新しい発電素子であり、高い電流を発生する発電現象を起こす。特に恒温槽中で常温(例えば25℃)から昇温することにより実現できる。
【0068】
正極1及び負極5は、導電性材料であり、正極1の仕事関数が負極5の仕事関数と同じか高い材料を用いる。正極1の仕事関数が負極5の仕事関数より高い方が望ましい。正極1としては、銅、銅合金、SUS430等のステンレス鋼、錫めっき銅、銀、白金、金等を一例として挙げることができるが、これらの材料は、仕事関数を考慮して決定することができ、列記した正極材料に限定されない。負極5は、正極1とは異なる材料であればよく、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金、Mg−Al等のマグネシウム合金等の金属材料や、インジウム錫酸化物(ITO)等の導電性酸化物材料等を挙げることができるが、これらの材料は、仕事関数を考慮して決定することができ、列記した負極材料に限定されない。
【0069】
正極1及び負極5の形状も特に限定されず、発電素子6の形状に応じた形状に加工することができる。例えば、発電素子6が、平面配置型用の発電素子6である場合には、正極1と負極5とを、p型半導体層2、強誘電体層3及びn型半導体層4を挟んで対向配置して構成できる。なお、この平面配置型の発電素子6は、正極1と負極5とを順次直列接続して直列配置型の発電素子複合体にしたり、正極1と負極5とを順次並列接続して並列配置型の発電素子複合体にしたりすることができる。また、発電素子6を、乾電池型用の発電素子としてもよく、その場合は、中心を負極棒とし、周りを正極管として構成できる。
【0070】
p型半導体層2は、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホン酸)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(ビニルスルホン酸)、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(p−フェニレン)、ポリフルオレン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリチエニレンビニレン、グラフェン、CuAlO
2、CuGaO
2、LiNiO
2から選ばれるp型半導性高分子であることが好ましい。なお、ホール伝導が観測されれば、列記したp型半導体材料に限定されない。
【0071】
p型半導体層2の厚さは、発電素子6の作製方法によって異なり、特に限定されないが、例えば10μm以上、1000μm以下の範囲内であることが好ましい。なお、発電素子6中でのp型半導体層2の境界は、そのp型半導体特性を奏する限り、
図3に示すようにはっきり区分けされていてもよいし、
図4に示すように、p型半導体層2が強誘電体層3とn型半導体層4ともに、接触界面を増やすために混合したヘテロジャンクション構造をとっていてもよい。したがって、上記の厚さ範囲も、p型半導体層2の作用を奏する範囲での厚さとして表すことができる。
【0072】
強誘電体層3は、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛、チタン酸ビスマスランタン、チタン酸カドミウム、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、ビスマスフェライト、及びリチウムドープ酸化亜鉛から選ばれるいずれかの粒子を含むことが好ましい。なお、強誘電性が観測されれば、列記した強誘電性材料に限定されない。強誘電体層3は、材料の1種を単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。この強誘電体層3は、強誘電性を有する層であり、強誘電性を有するので発電をし、また、その強誘電体層3がさらにn型半導性を有する場合には電子(キャリア)の移動も容易であり、発電素子の構成要素として極めて望ましい。
【0073】
強誘電体粒子の形状や粒径は特に限定されないが、全体的な形状が球形状又は略球形状、楕円形状又は略楕円形状であればよく、その表面がなめらかでも凹凸であってもよい。強誘電体粒子の平均粒径は、入手の容易さや素子作製上の問題がない範囲で各種の大きさのものを選択することができるが、平均粒径の大きいものほど誘電率も高いので好ましく用いることができる。また、強誘電体粒子の平均粒径を所望の値に設定することにより、表面積をコントロールできるという利点がある。強誘電体粒子の平均粒径は、原料の段階では走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定することができ、強誘電体層3を構成した後も走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定することができる。
【0074】
強誘電体層3は、強誘電体粒子で構成されているが、本発明の効果を阻害しない範囲で、強誘電性を有する他の無機物を含んでいてもよい。また、本発明の効果を阻害しない範囲で、導電性やn型半導性を有する他の無機物を含んでいてもよい。
【0075】
n型半導体層4は、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ、フッ素ドープ酸化スズ、ガリウムドープ酸化亜鉛、アルミドープ酸化亜鉛、ニオブドープチタン酸ストロンチウム、及び酸化カルシウムドープ酸化ジルコニウムから選ばれるいずれかの粒子を含むことが好ましい。なお、電子伝導が観測されれば、列記したn型半導体材料に限定されない。この粒子は、n型半導体粒子であり、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0076】
n型半導体粒子の粒子形状や粒径は特に限定されないが、全体的な形状が球形状又は略球形状、楕円形状又は略楕円形状であればよく、その表面がなめらかでも凹凸であってもよい。n型半導体粒子の平均粒径は、入手の容易さや素子作製上の問題がない範囲で各種の大きさのものを選択することができるが、平均粒径の大きいものほど導電率が高いので好ましく用いることができる。また、n型半導体粒子の平均粒径を所望の値に設定することにより、表面積をコントロールできるという利点がある。n型半導体粒子の平均粒径は、原料の段階では走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定することができ、n型半導体層4を構成した後も走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定することができる。
【0077】
n型半導体層4は、n型半導体粒子で構成されているが、本発明の効果を阻害しない範囲で、n型になり得る他の無機物を含んでいてもよい。
【0078】
n型半導体層4の抵抗は特に限定されないが、例えば2Ω以上、7Ω以下程度の範囲内が好ましい。n型半導体層4をこうした範囲の抵抗にすることによって、内部インピーダンスを下げて電流を取り出しやすくするという利点がある。n型半導体層4の抵抗は、LCRハイテスタによって測定することができる。n型半導体層4の抵抗が2kΩ未満の場合、より具体的には例えば1kΩ未満や100kΩ未満の場合は、そのn型半導体層4上に設けられる導電性のp型半導体層2がn型半導体層4中に浸入してショート状態になってしまい、発電素子として作動しないことがある。
【0079】
発電素子6は、上記構成を備えるものであれば、各種の方法で作製することができる。
図3に示す発電素子6は、正極1と、p型半導体層2と、強誘電体層3と、n型半導体層4と、負極5とがその順で配置された構造形態であり、
図4に示す発電素子6は、正極1と負極5とが、p型半導体層2と強誘電体層3とn型半導体層4とが混合したヘテロジャンクション構造である。
【0080】
この発電素子6の作製は特に限定されないが、正極1上に、n型半導体層4、強誘電体層3、p型半導体層2を順に形成する。p型半導体層2は、p型半導性高分子を例えば滴下又は塗布して形成することができる。強誘電体層3とn型半導体層4は、それぞれの粒子を例えば加圧成形して形成することができる。
【0081】
こうして作製された発電素子部材は、平面的な直列構造又は並列構造になるように接続することができる。発電素子部材を直列接続して発電素子複合体を構成する場合、隣り合う発電素子部材の正極1と負極5とを、カシメ、圧接、ロウ付け等で接続して直列構造にすることができる。また、発電素子部材を並列接続して発電素子複合体を構成する場合、長く延びる電極に、発電素子部材の正極1と負極5をそれぞれ、カシメ、圧接、ロウ付け等で接続して並列構造にすることができる。
【0082】
このような発電素子複合体は、複数の発電素子部材を接続して1次元的(直列配置)又は二次元的(並列配置)に作製することができるが、厚さ方向に積層して三次元的な立体構造にすることもできる。
【0083】
なお、乾電池型用の発電素子としてもよく、その場合、底のある正極管の中に、n型半導体粒子や強誘電体粒子の投入と、p型半導性高分子材料の滴下又は塗布とを繰り返し、それらを層状に形成することができる。なお、負極棒は、n型半導体層4と強誘電体層3とp型半導体層2との層状構造の形成前又は形成後に、正極管の中央に、その正極管に接触しないようにして挿入すればよい。
【0084】
本発明に用いる発電素子では、例えば、正極1は、厚さ0.2mm、縦10mm、横10mmの平板状の銅部材とし、負極5は、厚さ0.2mm、縦10mm、横10mmの平板状のアルミニウム部材とすることができる。負極5の上に、ニオブ酸リチウム粒子からなる厚さ2mmのn型半導体層4を形成し、この強誘電性を有するn型半導体層4の上から、液状のp型半導性高分子であるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホナート))を滴下し、n型半導体層4上にp型半導体層2を設け、その上から負極5を載せて発電素子6を作製することができる。以上のようにして、電極間抵抗が25kΩとなる発電素子6を得ることができる。
【0085】
発電素子6を恒温糟に入れ、負荷抵抗10Ωを接続し、恒温層中の温度を変化させながら、発電素子6の性能を評価すると、表1および表2に示すような結果を得ることができる。
【0088】
本発明に用いる発電素子としては、高い電流を発生する発電現象を起こすことができ、特に恒温槽中で常温(例えば25℃)から昇温した場合であっても発電することが可能な発電素子を用いることができる。
【0089】
発電素子は、p型半導体と強誘電体とn型半導体とを混合した粉末を、銅などの正極板とアルミニウムなどの負極板とでラミネートして封止したバルク型の態様として、タイヤ空気圧計に設置することができる。また、p型半導体と強誘電体とn型半導体とを混合してペースト状にしたものを、銅などの正極板とアルミニウムなどの負極板とでラミネートして封止したフィルム型の態様として、タイヤ空気圧計に設置することもできる。
【0090】
上記のようなバルク型またはフィルム型の発電素子は、数mm角のものを直列または並列に連結して用いてもよいし、数cm角のものを直列または並列に連結して用いてもよい。また、本発明に用いる発電素子は、任意の形状に成形できるため、発電素子を設置する基材の表面は、平坦である必要はなく、曲面状であってもよいし、凹凸を有するものであってもよい。