【解決手段】電動機付き減速機1Aは、ケーシング10Aと、ケーシングに対する回転運動を発生させる電動機20Aと、電動機よりも径方向内側に位置し、電動機から得られる回転運動を減速させながら伝達する減速機構30Aと、減速後の回転数で回転する出力部40Aと、ケーシングまたはケーシングに固定された部材と電動機の回転部とを回転可能に接続する第1軸受71Aと、ケーシングと出力部とを回転可能に接続する第2軸受72Aとを有する。減速機構は、周方向の位置によって内径が異なり、電動機の回転部とともに回転する非真円カム31Aと、非真円カムの回転に応じて変形する可撓内歯歯車32Aと、出力部に設けられた可動外歯歯車15Aと、を有する。第2軸受は、可撓内歯歯車よりも径方向内側に配置される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本願では、電動機の回転軸と平行な方向を「軸方向」、回転軸に直交する方向を「径方向」、回転軸を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」、とそれぞれ称する。ただし、上記の「平行な方向」は略平行な方向も含むものとする。また、上記の「直交する方向」は略直交する方向も含むものとする。
【0010】
<1.第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る電動機付き減速機1Aの縦断面図である。
図2は、
図1のA−A位置から見た可動外歯歯車15A、可撓内歯歯車32A、第3軸受33A、内側円筒部22A、および第1軸受71Aの横断面図である。この電動機付き減速機1Aは、電動機20Aから得られる第1回転数の回転運動を、第1回転数よりも低い第2回転数の回転運動に変換して、出力部40Aを回転させる装置である。電動機付き減速機1Aは、例えば、作業ロボットにおけるアームの関節部分に組み込まれて、アームの屈伸運動を実現させるために用いられる。ただし、本発明の電動機付き減速機は、アシストスーツ、ターンテーブル、工作機械の割出盤、車椅子、無人搬送車などの他の機器に組み込まれて、各種の回転運動を実現させるものであってもよい。
【0011】
図1および
図2に示すように、本実施形態の電動機付き減速機1Aは、ケーシング10A、電動機20A、減速機構30A、出力部40A、第1軸受71A、第2軸受72A、および第3軸受33Aを有する。
【0012】
ケーシング10Aは、電動機付き減速機1A内の各部を直接または間接的に支持する金属製の部材である。ケーシング10Aは、例えば、作業ロボットにおける基端側のアーム部材91Aに、ねじ止めによって固定される。
図1に示すように、ケーシング10Aは、ベース部11A、軸方向に延びる外側円筒部12A、および軸方向に延びる中空軸14Aを有する。
【0013】
ベース部11Aは、電動機20Aの回転軸9Aに対して略垂直に配置された、円板状の部位である。中空軸14A(中空シャフト)は、ベース部11Aの径方向内側の端部から、回転軸9Aの周囲を取り囲むように軸方向に延びる。中空軸14Aは、第2軸受72Aの径方向内側に位置する。外側円筒部12Aは、中空軸14Aよりも径方向外側に位置する円筒状の部位である。中空軸14Aおよび外側円筒部12Aは、いずれも、回転軸9Aと同軸に配置される。
【0014】
電動機20Aは、駆動電流に応じて回転運動を発生させる駆動源である。電動機20Aは、ステータ21A、内側円筒部22A、ハブ23A、およびマグネット24Aを有する。ステータ21Aは、ケーシング10Aに対して相対的に静止する。内側円筒部22A、ハブ23A、およびマグネット24Aは、ケーシング10Aに対して回転可能に支持される。すなわち、本実施形態では、ステータ21Aが、電動機20Aの静止部を構成し、内側円筒部22A、ハブ23A、およびマグネット24Aが、電動機20Aの回転部25Aを構成する。
【0015】
ステータ21Aは、複数の突極部をもつ環状のステータコア211Aと、各突極部に巻かれたコイル212Aとを有する。ステータコア211Aの内周面は、ケーシング10Aの外側円筒部12Aの外周面に、例えば圧入や接着剤で固定される。このように、本実施形態では、外側円筒部12Aに直接ステータ21Aが固定される。これにより、電動機20Aの部品点数が低減される。
【0016】
内側円筒部22Aは、回転軸9Aに沿って配置された円筒状の部材である。内側円筒部22Aの少なくとも一部分は、ケーシング10Aの外側円筒部12Aの径方向内側に配置される。内側円筒部22Aと外側円筒部12Aとの間には、2つの第1軸受71Aが介在する。2つの第1軸受71Aは、軸方向に間隔をあけて配置される。各第1軸受71Aの内輪は、内側円筒部22Aの外周面に固定される。また、各第1軸受71Aの外輪は、外側円筒部12Aの内周面に固定される。ケーシング10Aは、電動機20Aの回転部25Aと、第1軸受71Aによって、回転可能に接続される。
【0017】
本実施形態では、第1軸受71Aに、ボールベアリングが用いられる。ただし、ボールベアリングに代えて、ローラベアリング、クロスローラベアリング、滑り軸受、流体動圧軸受等の他方式の軸受が用いられていてもよい。また、第1軸受71Aの内輪と内側円筒部22Aとの間に、他の部材が介在していてもよい。また、第1軸受71Aの外輪と外側円筒部12Aとの間に、他の部材が介在していてもよい。
【0018】
ハブ23Aは、内側円筒部22Aとマグネット24Aとを繋ぐカップ状の部材である。ハブ23Aの径方向内側の端縁部は、内側円筒部22Aに固定される。また、ハブ23Aの外周部には、円筒状のマグネット保持部231Aが設けられる。マグネット24Aは、マグネット保持部231Aの内周面に、例えば接着剤で固定される。本実施形態では、ステータ21Aの径方向外側に、マグネット24Aが位置する。なお、マグネット24Aは、N極とS極とが周方向に交互に着磁された単一のリングマグネットであってもよく、磁極毎に分割された複数のセグメントマグネットであってもよい。
【0019】
コイル212Aに駆動電流が供給されると、ステータコア211Aの各突極部に磁束が生じる。そして、突極部とマグネット24Aとの間における磁束の作用により、周方向のトルクが発生する。その結果、内側円筒部22A、ハブ23A、およびマグネット24Aが、回転軸9Aを中心として、第1回転数で回転する。なお、本実施形態では、電動機20Aに、作業ロボットのアーム駆動に適したブラシレスDCモータが用いられている。しかしながら、本発明に用いられる電動機20Aは、必ずしもブラシレスDCモータでなくてもよい。
【0020】
なお、第1軸受71Aの内輪と外輪の間、および後述する減速機構30Aの各部材の周囲には、潤滑剤としてのグリースが封入される。第1軸受71Aは、内輪と外輪の間にシール部材を有する。これにより、減速機構30または第1軸受71Aから、電動機20A側へ、グリースが流れ込むことが、抑制される。
【0021】
また、この電動機付き減速機1Aでは、ケーシング10Aと出力部40Aとの間に、オイルシール81Aが介在する。また、この電動機付き減速機1Aでは、回転部25Aと出力部40Aとの間にも、オイルシール82Aが介在する。これにより減速機構30Aから外部へ、グリースが漏れ出すことが、抑制される。
【0022】
減速機構30Aは、電動機20Aから得られる回転運動を減速させながら出力部40Aへ伝達する機構である。減速機構30Aは、電動機20Aよりも径方向内側に位置する。
【0023】
電動機付き減速機1Aの減速機構30Aには、可撓歯車を利用した、いわゆる波動歯車機構が用いられる。
図1および
図2に示すように、減速機構30Aは、カム31A、可撓内歯歯車32A、および第3軸受33Aを有する。また、本実施形態では、減速機構30Aは、可動外歯歯車15Aをさらに有する。可動外歯歯車15Aは、円環状であり、出力部40Aにねじ止めによって固定される。また、可動外歯歯車15Aの径方向内側に、ケーシング10Aの中空軸14Aが配置される。可動外歯歯車15Aは、第2軸受72Aによって、中空軸14Aと回転可能に接続される。
【0024】
カム31Aは、内側円筒部22Aの内周面に設けられた、非真円の環状の部位である。カム31Aは、電動機20Aの回転部25Aとともに回転する。
図2に示すように、カム31Aは、軸方向に見て楕円形の内周面を有する。したがって、周方向の位置によって、カム31Aの内径は相違する。
【0025】
可撓内歯歯車32Aは、筒状部322Aとフランジ部323Aとを有する。筒状部322Aは、カム31Aの径方向内側に配置され、軸方向に筒状に延びる。筒状部322Aは、カム31Aの回転に応じて変形する。また、筒状部322Aの内周面には、複数の内歯321Aが一定のピッチで設けられる。フランジ部323Aは、筒状部322Aの軸方向の一方の端部から径方向外側へ拡がる。フランジ部323は、ケーシング10Aのベース部11Aに、例えばねじ止めで固定される。
【0026】
第3軸受33Aは、非真円のカム31Aと可撓内歯歯車32Aとの間に介在する可撓性の軸受である。第3軸受33Aは、内輪と、外輪と、内輪および外輪の間に介在する複数の球体とを有する。第3軸受33Aの外輪は、カム31Aの楕円状の内周面に固定される。第3軸受33Aの内輪は、可撓内歯歯車32Aの外周面に固定される。
【0027】
なお、第3軸受33Aの外輪とカム31Aとは、単一の部材で構成されていてもよい。また、第3軸受33Aの内輪と可撓内歯歯車32Aとは、単一の部材で構成されていてもよい。
【0028】
出力部40Aは、内側円筒部22Aとケーシング10Aの中空軸14Aとの間に配置された、円板状の部材である。可動外歯歯車15Aは、中空軸14Aの径方向外側に配置された円筒状の部材である。出力部40Aは、可動外歯歯車15Aと、ねじ止めによって固定される。
図2に示すように、可動外歯歯車15Aの外周面には、複数の外歯が、周方向に一定のピッチで設けられる。また、
図1に示すように、可動外歯歯車15Aと中空軸14Aとの間には、第2軸受72Aが介在する。これにより、ケーシング10Aは、第2軸受72Aを介して、出力部40Aと回転可能に接続される。
【0029】
本実施形態では、第2軸受72Aに、クロスローラベアリングが用いられる。
図1に示すように、第2軸受72Aは、可動外歯歯車15Aの内周面と、中空軸14Aの外周面との間に、複数の円筒ころ721Aを有する。複数の円筒ころ721Aは、可動外歯歯車15Aの内周面に設けられた環状のV溝と、中空軸14Aの外周面に設けられた環状のV溝との間に、向きを交互に変えながら配置される。これにより、可動外歯歯車15Aと中空軸14Aとが、互いの回転を許容しながら、高剛性に接続される。
【0030】
このようなクロスローラベアリングは、ボールベアリングのように一対で用いずとも、軸方向および径方向に、必要な剛性を得ることができる。すなわち、クロスローラベアリングを用いることで、ケーシング10Aと出力部40Aとの間に介在するベアリングの数を減らすことができる。これにより、第2軸受72Aの重量を低減できるとともに、第2軸受72Aの軸方向の寸法を抑えることができる。
【0031】
なお、本実施形態では、可動外歯歯車15Aの内周面を含む一部分が、第2軸受72Aの外輪として機能する。ただし、第2軸受72Aは、可動外歯歯車15Aとは別に外輪を有していてもよい。また、本実施形態では、中空軸14Aの外周面を含む一部分が、第2軸受72Aの内輪として機能する。ただし、第2軸受72Aは、中空軸14Aとは別に内輪を有していてもよい。
【0032】
ハブ23Aとともに非真円のカム31Aが回転すると、カム31Aの回転に応じて、可撓内歯歯車32Aの筒状部322Aの形状が変化する。すなわち、軸方向に見たときに、筒状部322Aは、第3軸受33Aを介して、カム31Aの内周面の形状に沿った楕円形状となる。その楕円の短軸は、カム31Aの回転に追従して周方向に移動する。可撓内歯歯車32Aは、内周面に設けられた複数の内歯321Aのうち、短軸の両端に位置する内歯321Aのみが、可動外歯歯車15Aの外歯と噛み合う。
【0033】
このように、可撓内歯歯車32Aの複数の内歯321Aは、可動外歯歯車15Aの複数の外歯と、周方向の一部分のみにおいて噛み合う。そして、その噛み合う位置が、カム31Aの回転に応じて周方向に移動する。ただし、可動外歯歯車15Aに設けられた外歯の数と、可撓内歯歯車32Aに設けられた内歯321Aの数とは、互いに異なる。このため、カム31Aの1回転ごとに、可撓内歯歯車32Aの同じ位置の内歯321Aに噛み合う可動外歯歯車15Aの外歯の位置がずれる。これにより、可動外歯歯車15Aが、回転軸9Aを中心として、ゆっくりと回転する。すなわち、可撓内歯歯車32Aは、可動外歯歯車15Aと、歯数の違いによって相対回転する。このときの可動外歯歯車15Aの回転数は、カム31Aの回転数よりも小さい。出力部40Aは、可動外歯歯車15Aとともに、減速後の回転数で、回転軸9Aを中心として回転する。
【0034】
なお、カム31Aの内周面の形状は、必ずしも楕円形には限られない。カム31Aの内周面は、回転軸9Aからの距離が一定でない他の形状であってもよい。また、本実施形態では、可動外歯歯車15Aとは別に出力部40Aが設けられているが、出力部40Aの一部分が、可動外歯歯車15Aとして機能してもよい。
【0035】
図1に示すように、本実施形態の電動機付き減速機1Aは、回転軸9Aに対して垂直な同一平面90A上に、第1軸受71A、電動機20Aの回転部25Aに含まれるマグネット24A、減速機構30Aの歯車列、第2軸受72A、第3軸受33A、およびカム31Aが、配列されている。具体的には、回転軸9Aから径方向外側へ向けて、第2軸受72A、可動外歯歯車15A、可撓内歯歯車32A、第3軸受33A、カム31A、第1軸受71A、およびマグネット24Aが、順に配列される。本実施形態において、歯車列は、可撓内歯歯車32Aおよび可動外歯歯車15Aを有する。なお、回転軸9Aに対して垂直とは、略垂直な場合を含む。同一平面とは、例えば、
図1のA−A平面であり、略同一な平面の場合を含む。
【0036】
第2軸受72Aを可撓内歯歯車32Aよりも径方向外側に配置しようとすると、可撓内歯歯車32Aの軸方向の一方側または他方側に、第2軸受72Aを配置する必要がある。その結果、電動機付き減速機1Aが軸方向に大型化する。これに対し、本実施形態の電動機付き減速機1では、可撓内歯歯車32Aよりも径方向内側に、第2軸受72Aが配置される。これにより、電動機付き減速機1Aを軸方向に薄型化することができる。また、この電動機付き減速機1Aでは、減速機構30Aよりも径方向外側に、電動機20Aが配置される。これにより、ステータ21Aおよびマグネット24Aのサイズを大きくして、電動機20Aの駆動力を大きくすることができる。すなわち、この電動機付き減速機1Aの構造を採れば、軸方向の薄型化と駆動力の確保とを両立できる。
【0037】
特に、本実施形態では、第1軸受71A、マグネット24A、減速機構30Aの可撓内歯歯車32Aおよび可動外歯歯車15A、および第2軸受72Aの各々の少なくとも一部分が、同一平面90A内に位置する。このため、これらの複数の要素の一部が同一平面90Aから外れた位置に配置される場合と比べて、電動機付き減速機1Aを軸方向に薄型化できる。また、電動機20Aにおいて生じた回転運動が、効率よく出力部40Aに伝達する。
【0038】
本実施形態では、減速機構30Aに波動歯車機構が用いられる。波動歯車機構を用いれば、減速前の第1回転数で回転する部材(例えばカム31A)と、減速後の第2回転数で回転する部材(例えば出力部40A)とを、回転軸9Aに対して垂直な同一平面上に配置しやすい。したがって、波動歯車機構を用いることで、減速機構30Aの軸方向の厚みを、より抑えることができる。
【0039】
電動機付き減速機1Aでは、電動機20A、減速機構30A、出力部40Aを含む装置内の全ての要素が、ケーシング10Aに直接または間接的に支持されている。このため、電動機付き減速機1A内の一部の要素を、外部の部材によって支持する必要はない。したがって、電動機付き減速機1Aを、独立したアセンブリとして扱うことができ、伝動装置として構成する場合に、大型化を抑制できる。
【0040】
また、この電動機付き減速機1Aでは、第1軸受71Aと第2軸受72Aとの間に、電動機20Aの回転部、減速機構30A、および出力部40Aが支持される。これにより、電動機20Aの回転部、減速機構30A、および出力部40Aの回転姿勢が安定する。その結果、電動機付き減速機1Aの駆動時における振動および騒音を低減できる。また、可撓内歯歯車32Aおよび可動外歯歯車15Aの噛み合いが安定し、噛み合いの不備によって各歯車が損傷することを抑制できる。
【0041】
特に、電動機付き減速機1Aを軸方向に薄型化すると、軸方向の寸法に対して径方向の寸法比率が大きくなる。このため、一般的には、薄型化すればするほど、電動機20Aの回転部25A、減速機構30A、および出力部40Aの回転姿勢を安定させることが技術的に難しくなる。しかしながら、本実施形態の構造を採用すれば、上述の通り、電動機付き減速機1Aを軸方向に薄型化することと、電動機20Aの回転部25A、減速機構30A、および出力部40Aの回転姿勢を安定させることとを、両立させることができる。
【0042】
また、この電動機付き減速機1Aは、電動機20Aの回転部25Aを覆うカバー26Aを有する。これにより、外部から電動機20Aの回転部25Aへ接触することを抑制することができる。カバー26Aは、ケーシング10Aに、ねじ27Aで止めることによって固定される。したがって、カバー26Aは、ケーシング10Aに対して相対的に静止する。ただし、カバー26Aは、低速で回転する出力部40Aに固定されていてもよい。
【0043】
電動機付き減速機1Aは、さらに回路基板を有していてもよい。例えば、電動機20Aに駆動電流を供給するための回路基板が、ケーシング10Aに固定されていてもよい。
【0044】
図3は、軸方向に見たケーシング10Aの平面図である。
図3に示すように、ケーシング10Aは、複数の第1ねじ穴51Aと、複数の第2ねじ穴52Aとを有する。複数の第1ねじ穴51Aは、周方向に略等間隔に配列される。複数の第2ねじ穴52Aは、複数の第1ねじ穴51Aよりも径方向内側において、周方向に略等間隔に配列される。ケーシング10Aは、可撓内歯歯車32Aのフランジ部323Aと、第1ねじ穴51Aに挿入される第1ねじ511Aによって、固定される。ケーシング10Aは、外部の部材であるアーム部材91Aと、第2ねじ穴52Aに挿入されるねじ521Aによって、固定される。
【0045】
ケーシング10Aの表面の、第1ねじ穴51Aと第2ねじ穴52Aとの間には、歪ゲージ55Aが配置される。
図3中に矢印で示すように、電動機付き減速機1Aの駆動時には、第1ねじ穴51Aの付近と、第2ねじ穴52Aの付近とに、異なる方向の応力が生じる。このため、ケーシング10Aの表面の、第1ねじ穴51Aと第2ねじ穴52Aの間の位置には、ねじりモーメントが生じる。歪ゲージ55Aは、当該ねじりモーメントを検出する。これにより、電動機付き減速機1Aの駆動時に、ケーシング10Aに加わるトルクを検出することができる。
【0046】
図3の例では、4つの歪ゲージ55Aが、周方向に等間隔に配列される。ただし、歪みゲージ55Aの数は、1〜3つであってもよく、5つ以上であってもよい。また、第1ねじ穴51Aおよび第2ねじ穴52Aの数についても、
図3に示された数には限定されない。
【0047】
<2.第2実施形態>
本発明の第2実施形態について説明する。上記の第1実施形態に係る電動機付き減速機1Aは、可撓内歯歯車32Aが筒状部322Aとフランジ部323AからなるL字形状(以下、「ハット型」とする)の部材であった。これに対し、以下に説明する第2実施形態は、可撓内歯歯車の形状が「ハット型」ではなく「円筒型」である場合の例である。
【0048】
図4は、第2実施形態に係る電動機付き減速機1Bの縦断面図である。なお、以下では、第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態と同等の部分については、重複説明を省略する。
【0049】
図4に示すように、電動機付き減速機1Bは、ケーシング10B、電動機20B、減速機構30B、および出力部40Bを有する。本実施形態の減速機構30Bは、第1実施形態に登場した各構成要素に加え、さらに固定外歯歯車13Bを有する。固定外歯歯車13Bは、ベース部11Bの径方向内側の端縁部と出力部40Bとの間に位置する円環状の部材である。固定外歯歯車13Bの外周面には、複数の外歯が、周方向に一定のピッチで設けられる。
【0050】
この電動機付き減速機1Bでは、固定外歯歯車13Bは、ケーシング10Bと、ねじ止めによって、固定される。したがって、固定外歯歯車13Bは、ケーシング10Bに対して相対的に静止する。また、可動外歯歯車15Bは、出力部40Bと、ねじ止めによって、固定される。したがって、出力部40Bは、可動外歯歯車15Bとともに回転する。また、本実施形態の可撓内歯歯車32Bは、可撓性を有する筒状部のみからなる。
【0051】
電動機20Bを駆動させると、ハブ23Bとともにカム31Bが回転する。これにより、カム31Bの回転に応じて、可撓内歯歯車32Bの形状が変化する。すなわち、軸方向に見たときに、可撓内歯歯車32Bはカム31Bの内周面の形状に沿った楕円形状となるが、その楕円の短軸が、カム31Bの回転に追従して周方向に移動する。可撓内歯歯車32Bは、内周面に設けられた複数の内歯321Bのうち、短軸の両端に位置する内歯321Bのみが、固定外歯歯車13Bの外歯および可動外歯歯車15Bの外歯と噛み合う。
【0052】
本実施形態では、固定外歯歯車13Bの外歯の数と、可動外歯歯車15Bの外歯の数とは、互いに異なる。このため、カム31Bの1回転ごとに、可撓内歯歯車32Bの同じ位置の内歯321Bに噛み合う可動外歯歯車15Bの外歯と固定外歯歯車13Bの外歯の位置が相互にずれる。これにより、可動外歯歯車15Bおよび出力部40Bが、回転軸9Bを中心として、ゆっくりと回転する。つまり、固定外歯歯車13Bの外歯の数と、可動外歯歯車15Bの外歯の数の違いによって、可動外歯歯車15Bおよび出力部40Bが、ケーシング10Bに対して相対回転する。その結果、アーム部材91Bに対して、出力部40Bが、ゆっくりと回動する。このときの出力部40Bの回転数は、第1回転数よりも低い第2回転数となる。
【0053】
本実施形態では、出力部40Bと中空軸14Bとが、単一の部材により形成される。このため、中空軸14Bは、出力部40Bとともに、第2回転数で回転する。
【0054】
この電動機付き減速機1Bでも、可撓内歯歯車32Bよりも径方向内側に、第2軸受72Bが配置される。これにより、電動機付き減速機1Bを軸方向に薄型化することができる。また、減速機構30Bよりも径方向外側に、電動機20Bが配置される。これにより、ステータ21Bおよびマグネット24Bのサイズを大きくして、電動機20Bの駆動力を大きくすることができる。すなわち、この電動機付き減速機1Bの構造を採れば、軸方向の薄型化と駆動力の確保とを両立できる。
【0055】
また、この電動機付き減速機1Bでは、電動機20Bの回転軸9Bに対して垂直な同一平面90B上に、第1軸受71B、マグネット24B、減速機構30Bの可撓内歯歯車32B、可動外歯歯車15Bまたは固定外歯歯車13B、および第2軸受72Bが、配列される。すなわち、第1軸受71B、マグネット24B、可撓内歯歯車32B、可動外歯歯車15Bまたは固定外歯歯車13B、および第2軸受72Bの、各々の少なくとも一部分が、同一平面90B内に位置する。このため、これらの複数の要素の一部が同一平面90Bから外れた位置に配置される場合と比べて、電動機付き減速機1Bを軸方向に薄型化できる。
【0056】
また、本実施形態の可撓内歯歯車32Bは、上述の通り、複数の内歯321Bをもつ筒状部のみからなる。すなわち、本実施形態の可撓内歯歯車32Bは、第1実施形態の可撓内歯歯車32Aのようなフランジ部323Aを有していない。これにより、減速機構30Bの軸方向および径方向の厚みを、さらに抑えることができる。
【0057】
本実施形態においても、第2軸受72Bには、クロスローラベアリングが用いられる。
図4に示すように、第2軸受72Bは、固定外歯歯車13Bの内周面と、中空軸14Bの外周面との間に、複数の円筒ころ721Bを有する。複数の円筒ころ721Bは、固定外歯歯車13Bの内周面に設けられた環状のV溝と、中空軸14Bの外周面に設けられた環状のV溝との間に、向きを交互に変えながら配置される。これにより、出力部40Bは、ケーシング10Bと、互いの回転を許容しながら、高剛性に接続される。
【0058】
なお、本実施形態では、固定外歯歯車13Bの内周面を含む一部分が、第2軸受72Bの外輪として機能する。ただし、第2軸受72Bは、固定外歯歯車13Bとは別に外輪を有していてもよい。また、本実施形態では、中空軸14Bの外周面を含む一部分が、第2軸受72Bの内輪として機能する。ただし、第2軸受72Bは、中空軸14Bとは別に内輪を有していてもよい。また、本実施形態では、固定外歯歯車13Bは、ケーシング10Bとは別部材となっているが、ケーシング10Bの一部分が、固定外歯歯車13Bとして機能してもよい。
【0059】
また、
図4に示すように、本実施形態のハブ23Bには、複数の通気孔232Bが周方向に配列される。各通気孔232Bは、ハブ23Bの一部分をプレスで切り起こすことによって、形成される。電動機20Bの駆動時には、各通気孔232Bからハブ23Bの内部へ、外気が流入する。これにより、ステータ21Bのコイル212Bが冷却される。
【0060】
なお、第1実施形態と同様に、ケーシング10Bには、複数の第1ねじ穴51Bと、複数の第2ねじ穴52Bとが、設けられる。ケーシング10Bは、固定外歯歯車13Bと、第1ねじ穴51Bに挿入される第1ねじ511Bによって、固定される。ケーシング10Bは、外部の部材であるアーム部材91Bと、第2ねじ穴52Bに挿入されるねじ521Bによって、固定される。
【0061】
ケーシング10Bの表面の、第1ねじ穴51Bと第2ねじ穴52Bとの間には、歪ゲージ55Bが配置される。電動機付き減速機1Bの駆動時には、第1ねじ穴51Bの付近と、第2ねじ穴52Bの付近とに、異なる方向の応力が生じる。このため、ケーシング10Bの表面の、第1ねじ穴51Bと第2ねじ穴52Bの間の位置には、ねじりモーメントが生じる。歪ゲージ55Bは、当該ねじりモーメントを検出する。これにより、電動機付き減速機1Bの駆動時に、ケーシング10Bに加わるトルクを検出することができる。
【0062】
<3.第3実施形態>
続いて、本発明の第3実施形態について説明する。
図5は、第3実施形態に係る電動機付き減速機1Cの縦断面図である。なお、以下では、第2実施形態との相違点を中心に説明し、第2実施形態と同等の部分については、重複説明を省略する。
【0063】
図5に示すように、本実施形態の電動機付き減速機1Cは、ケーシング10C、電動機20C、減速機構30C、および出力部40Cを有する。
【0064】
上述した第2実施形態では、ステータ21Bよりも径方向外側にマグネット24Bが配置された、いわゆるアウターロータ型の電動機20Bが用いられていた。これに対し、本実施形態では、ステータ21Cよりも径方向内側にマグネット24Cが配置された、いわゆるインナーロータ型の電動機20Cが用いられている。以下、本実施形態の電動機20Cの構造について、説明する。
【0065】
電動機20Cは、駆動電流に応じた回転運動を発生させる駆動源である。電動機20Cは、ステータ21C、内側円筒部22C、ハブ23C、およびマグネット24Cを有する。ステータ21Cは、ケーシング10Cに対して固定される。内側円筒部22C、ハブ23C、およびマグネット24Cは、ケーシング10Cに対して回転可能に支持される。すなわち、本実施形態では、ステータ21Cが、電動機20Cの静止部を構成し、内側円筒部22C、ハブ23C、およびマグネット24Cが、電動機20Cの回転部25Cを構成する。
【0066】
内側円筒部22Cは、回転軸9Cに沿って配置された円筒状の部材である。内側円筒部22Cの少なくとも一部分は、ケーシング10Cの外側円筒部12Cの径方向内側に配置される。内側円筒部22Cと外側円筒部12Cとの間には、2つの第1軸受71Cが介在する。2つの第1軸受71Cは、軸方向に間隔をあけて配置される。各第1軸受71Cの内輪は、内側円筒部22Cの外周面に固定される。また、各第1軸受71Cの外輪は、外側円筒部12Cの内周面に固定される。
図5の例では、第1軸受71Cに、ボールベアリングが用いられる。
【0067】
電動機20Cのステータ21Cは、径方向内側へ向けて突出した複数の突極部を有する環状のステータコア211Cと、各突極部に巻かれたコイル212Cとを有する。
【0068】
ハブ23Cは、マグネット24Cとカム31Cとを繋ぐカップ状の部材である。ハブ23Cの外周部には、円筒状のマグネット保持部231Cが設けられる。マグネット24Cは、マグネット保持部231Cの外周面に固定される。
【0069】
コイル212Cに駆動電流が供給されると、ステータコア211Cの各突極部に磁束が生じる。そして、突極部とマグネット24Cとの間における磁束の作用により、周方向のトルクが生じる。その結果、ハブ23Cおよびマグネット24Cが、回転軸9Cを中心として、第1回転数で回転する。
【0070】
この電動機付き減速機1Cでも、可撓内歯歯車32Cよりも径方向内側に、第2軸受72Cが配置される。これにより、電動機付き減速機1Cを軸方向に薄型化することができる。また、減速機構30Cよりも径方向外側に、電動機20Cが配置される。これにより、ステータ21Cおよびマグネット24Cのサイズを大きくして、電動機20Cの駆動力を大きくすることができる。すなわち、この電動機付き減速機1Cの構造を採れば、軸方向の薄型化と駆動力の確保とを両立できる。
【0071】
電動機付き減速機1Cにおいても、電動機20Cの回転軸9Cに対して垂直な同一平面90C上に、第1軸受71C、マグネット24C、可撓内歯歯車32C、可動外歯歯車15Cまたは固定外歯歯車13C、および第2軸受72Cが、配列される。すなわち、第1軸受71C、マグネット24C、可撓内歯歯車32C、可動外歯歯車15Cまたは固定外歯歯車13C、および第2軸受72Cの各々の少なくとも一部分が、同一平面90C内に位置する。このため、これらの要素の一部が同一平面90Cから外れた位置に配置される場合と比べて、電動機付き減速機1Cを軸方向に薄型化できる。
【0072】
電動機付き減速機1Cにおいても、電動機20C、減速機構30C、および出力部40Cを含む装置内の全ての要素が、ケーシング10Cに直接または間接的に支持される。このため、電動機付き減速機1C内の一部の要素を、外部の部材によって支持する必要はない。したがって、電動機付き減速機1Cを、独立したアセンブリとして扱うことができる。
【0073】
電動機付き減速機1Cにおいても、第1軸受71Cと第2軸受72Cとの間に、電動機20Cの回転部25C、減速機構30C、および出力部40Cが支持される。これにより、電動機20Cの回転部25C、減速機構30C、および出力部40Cの回転姿勢が安定する。その結果、電動機付き減速機1Cの駆動時における振動および騒音を低減できる。また、可撓内歯歯車32C、固定外歯歯車13C、および可動外歯歯車15Cの噛み合いが安定し、噛み合いの不備によって各歯車が損傷することを抑制できる。
【0074】
<4.第4実施形態>
続いて、本発明の第4実施形態について簡単に説明する。
図6は、第4実施形態に係る電動機付き減速機1Dの縦断面図である。本実施形態では、第3実施形態と同じく、ステータ21Dよりも径方向内側にマグネット24Dが配置された、いわゆるインナーロータ型の電動機20Dが用いられている。一方で、第3実施形態の可撓内歯歯車32Cは「円筒型」であったのに対し、本実施形態の可撓内歯歯車32Dは、第1実施形態と同じく、筒状部322Dとフランジ部323Dとを有する「ハット型」となっている。詳細な構造について前述の内容と重複するため、説明を省略する。
【0075】
<5.第5実施形態>
続いて、本発明の第5実施形態について説明する。
図7は、第5実施形態に係る電動機付き減速機1Eの縦断面図である。本実施形態の電動機付き減速機1Eは、例えば自動車用エンジンのバルブ開閉調整装置に用いられる。なお、以下では、第4実施形態との相違点を中心に説明し、第4実施形態と同等の部分については、重複説明を省略する。
【0076】
図7に示すように、本実施形態の電動機付き減速機1Eは、第4実施形態に係る電動機付き減速機1Dの構造を、差動型減速装置に応用したものである。中空軸14Eは、バルブ駆動用軸92Eの軸上に、キー93Eを介して固定される。タイミングプーリ401Eは、エンジン等の外部装置によって駆動する。第4実施形態にかかる電動機付き減速機1Dでは、ステータ21Dに電流が流れていない場合、マグネット24Dは静止状態である。これに対し、本実施形態の電動機付き減速機1Eにおいては、タイミングプーリ401Eの回転に合わせて、マグネット24Eを含む電動機付き減速機1Eのステータ21Eを除く全体が、タイミングプーリ401Eと同じ第1回転速度で、回転軸9Eを中心として回転する。なお、ステータ21Eのみが、固定部材70Eに設けられた固定用穴73Eを介して外部のフレームに固定される。
【0077】
本実施形態の電動機付き減速機1Eは、電動機付き減速機1Dに設けられていた軸受に加えて、さらに、ステータ21Eを固定する固定部材70Eと、可撓内歯歯車32Eとの間に介在する第4軸受74Eを有する。
【0078】
ステータ21Eのコイル212Eに駆動電流が供給されると、コイル212Eに磁束が生じる。そして、突極部とマグネット24Eとの間における磁束の作用により、周方向のトルクが発生する。その結果、ステータ21Eを除く電動機20Eと、出力部40Eとが、回転軸9Eを中心として、第1回転速度とは異なる第2回転速度で回転する。このようにして、ステータ21Eを除く電動機20Eおよび出力部40Eの回転の位相を、タイミングプーリ401Eや、タイミングプーリ401Eと接続されたケーシング10Eの回転の位相に対して、速くしたり遅くしたりすることができる。
【0079】
<6.変形例>
以上、本発明の例示的な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
【0080】
図8は、一変形例に係る電動機付き減速機1Fの部分縦断面図である。
図8の例では、2つの第2軸受72Fが、軸方向に並べて配置される。これにより、出力部40Fは、ケーシング10Fと、互いの回転を許容しながら接続される。
【0081】
図9は、他の変形例に係る電動機付き減速機1Gの部分縦断面図である。
図9の例でも、2つの第2軸受72Gが、軸方向に並べて配置される。これにより、出力部40Gは、ケーシング10Gと、互いの回転を許容しながら接続される。
【0082】
図8および
図9のように、第2軸受を、軸方向の第1位置において環状に配列された第1の球体列を有する軸受と、軸方向の第1位置とは異なる第2位置において環状に配列された第2の球体列を有する軸受と、で構成してもよい。このようにすれば、出力部とケーシングとを、より高剛性に接続できる。また、個々の第2軸受を構成する個々の軸受を小型化することができるため、電動機付き減速機の径方向の寸法を抑えることができる。
【0083】
また、上記の各実施形態の構造では、中空軸が、第2軸受に対して径方向内側に位置する。そして、中空軸の内側に、軸方向に貫通する空間が存在する。このため、中空軸の内側に、電気配線の一部を通すことができる。これにより、周辺の配線処理に関わる煩雑さを解決できる。また、配線コードの屈曲を少なくでき、さらに束状に纏めることでバラケを防ぐことができる。
【0084】
上記の電動機付き減速機を構成する各部材の材料には、例えば、高強度の金属が用いられる。しかし、各部材の材料は、使用時の負荷に耐え得るものであればよく、必ずしも金属には限定されない。
【0085】
また、電動機付き減速機の細部の形状については、本実施形態の各図に示された形状と相違していてもよい。