特開2017-155808(P2017-155808A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-155808(P2017-155808A)
(43)【公開日】2017年9月7日
(54)【発明の名称】物品支持装置
(51)【国際特許分類】
   F16M 13/00 20060101AFI20170810BHJP
   A47B 97/04 20060101ALI20170810BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20170810BHJP
   H04N 5/64 20060101ALI20170810BHJP
【FI】
   F16M13/00 T
   A47B97/04 A
   G09F9/00 351
   H04N5/64 581T
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-38717(P2016-38717)
(22)【出願日】2016年3月1日
(71)【出願人】
【識別番号】000231589
【氏名又は名称】ニスカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】青柳 達三
(72)【発明者】
【氏名】落合 徹
(72)【発明者】
【氏名】清水 眞
(72)【発明者】
【氏名】志村 拓哉
【テーマコード(参考)】
5G435
【Fターム(参考)】
5G435AA06
5G435BB12
5G435EE13
5G435EE50
(57)【要約】      (修正有)
【課題】転倒を防止するとともにドアの開口などの狭隘な箇所を容易に通過できる物品支持装置を提供する
【解決手段】ディスプレイ装置Bなどの面を有する被取付物を支持する荷重支持機構であって、当該被取付物を保持する保持手段を有する本体部と、ディスプレイ面を挟んで対向する側にそれぞれ端部を有し、本体部を支持する第1の支持部材121及び第2の支持部材122とを備え、ディスプレイ面を挟んで対角にある端部同士を結ぶ2つの直線110,111が異なる長さとなるように支持部材が設けられる。
【選択図】図18
【特許請求の範囲】
【請求項1】
面を有する被取付物を支持する物品支持装置であって、
前記被取付物を保持する保持手段を有する本体部と、
前記面を挟んで対向する側にそれぞれ端部を有し、前記本体部を支持する第1の支持部材及び第2の支持部材と、を備え、
前記面を挟んで対角にある前記端部同士を結ぶ2つの直線が、異なる長さである事を特徴とする物品支持装置。
【請求項2】
前記第1の支持部材及び前記第2の支持部材は、
前記面を挟んで対角にある、前記第1の支持部材と前記第2の支持部材の一方の端部を結ぶ第1の直線と、前記第1の支持部材と前記第2の支持部材の他方の端部を結ぶ第2の直線とが、異なる長さである事を特徴とする請求項1に記載の物品支持装置。
【請求項3】
前記2つの直線は、互いに交わる交点を有し、
前記交点から、前記面を挟んで対角にある前記端部までの長さが、各々等しいことを特徴とする請求項1に記載の物品支持装置。
【請求項4】
前記交点と、前記本体部及び前記被取付物の重心位置とが、鉛直方向で重なることを特徴とする請求項2乃至3に記載の物品支持装置。
【請求項5】
前記前記第1の支持部材及び前記第2の支持部材の長さは、
前記第1の支持部材及び前記第2の支持部材の、対角にない端部を結ぶ直線が、
前記本体部を鉛直方向から見た場合に、
前記重心位置を中心に、前記本体部もしくは前記取付物の最上位置に応じて設定される所定半径の円の外側に位置する長さを有することを特徴とする請求項4に記載の物品支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ等の表示装置及びホワイトボード等の面を有する被取付物を支持し、特に被取付物を移動可能に支持する物品支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイ等の表示装置及びホワイトボード等(以下、ディスプレイ装置という。)は大画面化に伴い大型化し、また単に情報を表示するだけでなく、ホワイトボード本来の機能であるユーザーが目的に応じて書き込みを行うという両方の機能を備えた表示装置が教育現場や会社内の会議等で活用されつつある。
【0003】
そのため、ディスプレイ装置をある特定の場所に設置して使用するのではなく、キャスター付きの支持装置に載置して、使用用途に応じて自由に移動できることが好ましい。
【0004】
ディスプレイ装置を載置する支持装置に関する従来技術として、特許文献1に開示される「ディスプレイ用スタンド」がある。
【0005】
【特許文献1】特開2007−102209号公報
【0006】
特許文献1に記載された発明は、大型のディスプレイ等の取付物を昇降自在に支持し、キャスター付きの脚体で移動自在な支持装置である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載された発明は、近年の大型のディスプレイ装置の多くが有する薄型(ディスプレイの幅寸法に対してディスプレイの奥行寸法が極端に小さい)という特徴に起因し、ディスプレイの表示面の前後方向の安定性が悪く、ディスプレイ表示面の前後に支持装置本体を支える脚体を張り出した形状となる。
【0008】
また、特許文献1に記載されたような昇降機能を有する支持装置では、支持装置に載置したディスプレイ装置を最も高い位置に上昇させて留めた際にも、支持装置の倒れを発生させてはならず(国際的に取り決めのある事務機器の適用規格を満足させる必要がある)、それに加え安定性を向上させるために、より大幅に張り出した脚体を予め備えなければならない。
【0009】
しかし、あまり大きく脚体を張り出させると、支持装置の設置安定性は向上するものの、移動を行う際にドア等の狭隘な箇所を通過できなくなるという不具合が生じる。
【0010】
本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであり、転倒を防止するとともにドアの開口などの狭隘な箇所を容易に通過できる物品支持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記のような課題を解決するために、本発明は、以下のような手段を採用している。
すなわち、本発明は、面を有する被取付物を支持する荷重支持機構であって、当該被取付物を保持する保持手段を有する本体部と、面を挟んで対向する側にそれぞれ端部を有し、本体部を支持する第1及び第2の支持部材とを備え、面を挟んで対角にある端部同士を結ぶ2つの直線が異なる長さである事を特徴とする。
【0012】
また、上記本発明の態様において、第1の支持部材及び第2の支持部材は、一方の側に配置された第1の支持部材と第2の支持部材の端部を結ぶ直線と、他方の側に配置された第1の支持部材と第2の支持部材の端部を結ぶ直線とが交わる交点を有し、当該交点から、前記面を挟んで対角にある端部までの長さが等しいことが好ましい。
【0013】
また、上記本発明の態様において、当該交点と、本体部及び被取付物の重心位置とが、鉛直方向で重なることがさらに好ましい。
【発明の効果】
【0014】
以上、説明したように、本発明による物品支持装置によれば、面を挟んで対角にある支持部材の端部同士を結ぶ2つの直線が異なる長さを有する。これにより、面を挟んで対向する支持部材の面からそれぞれの端部までの長さが異なった配置となる。さらに、対角に位置する支持部材の端部は、上記端部同士を結ぶ2つの直線が交わる交点から同じ長さを有する。これにより、面を挟んだ両側で倒れ難さの強度を等しくする事ができる。
【0015】
さらに、ドアの開口などの狭隘な箇所の幅よりも物品を搭載した物品支持装置の奥行寸法が大きい場合でも、一方の面と支持部材とが交差する交点から、その支持部材の他方の面側の端部までの長さ、もしくは他方の面乃至物品支持装置のいずれかと支持部材とが交差する交点から、その支持部材の一方の面側の端部までの長さが、狭隘な箇所の幅よりも小さくすることができ、狭隘な箇所を容易に通過することができる。
また、開口を通り抜ける際に、支持機構を回転させる時、回転方向に対して先行する支持部材の長さが長いので、物品支持装置が倒れ辛い。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】昇降機構の基本構成を示す正面図である。
図2図1のII-II線における矢視図である。
図3】第2カムフォロアが固定カム面の第1領域S1にある状態での要部間の関係を説明する図である。
図4】第2カムフォロアが固定カム面の第2領域S2にある図3と同様の説明図である。
図5】第2カムフォロアが固定カム面の第3領域S3にある図3と同様の説明図である。
図6】昇降機構を適用した荷重支持装置の実施態様の斜視図である。
図7図6の実施態様の分解斜視図である。
図8】支持フレーム部が最上位置にある荷重支持装置の正面図である。
図9(a)】一方のカムフォロア部材を上から見た図8の部分拡大縦断面図である。
図9(b)】固定カム部材を省略して示す図9のIX-IX線における矢視図である。
図10】支持フレーム部の下側の下部フレーム及び第2ばねを示す拡大図である。
図11】支持フレーム部を上方から平面視した部分拡大図である。
図12図8の固定カム面及びカムフォロア部材を示す部分拡大図である。
図13】支持フレーム部が中間位置にある図8と同様の正面図である。
図14図12の固定カム面及びカムフォロア部材を示す部分拡大図である。
図15】支持フレーム部が最下位置にある図8と同様の正面図である。
図16図15の固定カム面及びカムフォロア部材を示す部分拡大図である。
図17】転倒防止機構を備えた物品支持装置の実施態様の斜視図である。
図18図16のIV視点からの装置模式図である。
図19】狭隘な箇所を通過する説明図である。
図20】一方の支持脚部が狭隘な箇所を通過した説明図である。
図21】支持脚部の断面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、添付図面を参照しつつ、本発明の好適な実施態様を詳細に説明する。尚、添付図面において、本明細書全体を通して類似の構成要素には、同様の参照符号を付して表すこととする。
【0018】
図1及び図2は、本発明による荷重支持機構の基本構成を概念的に示している。同図に示すように、荷重支持機構1は、例えば床や台上に設置される固定支持部2と、物品の荷重を受ける可動支持部3と、例えば引張コイルばねからなる第1ばね4とを備える。例えばディスプレイ装置である物品Aは、可動支持部3上に設けられた取付ステー5により、荷重支持機構1の前面側に取り付けて支持することができる。
【0019】
固定支持部2は、本実施態様において、垂直な左右の縦枠部材6a,6bと、前記両縦枠部材の上端間に水平に架設された横枠部材7とからなる外枠構造を有する。一方の縦枠部材6aには、その上下方向中央付近から下端付近まで延長する固定カム8が、一体に設けられている。
【0020】
固定カム8は、他方の縦枠部材6b側に向けて即ち図1において右向きに凸状に、かつその接線方向の傾きが上端から下端まで全長に亘って又は部分的に変化するように湾曲している固定カム面9を有する。好ましくは、図2に示すように、縦枠部材6aの前後側部に1つずつ、1対の固定カム8,8及び固定カム面9,9が前後対称に設けられる。
【0021】
可動支持部3は、本実施態様において、固定支持部2の縦枠部材6a,6b間を水平に延長する上側及び下側の横枠部材10a,10bと、垂直な左右の縦枠部材11a,11bとからなる矩形枠構造を有する。縦枠部材11a,11bは、固定支持部2の各縦枠部材6a,6b内側のガイド12a,12bに沿って上下に移動可能に設けられる。これにより可動支持部3は、物品Aを取り付けた状態で前記ガイドに案内されて、固定支持部2に関して上下方向に移動可能である。
【0022】
第1ばね4は、その上端4aが固定支持部2の横枠部材7に固定され、かつ下端4bが可動支持部3の上側の横枠部材10aに固定され、垂直方向に伸縮して垂直方向上向きの付勢力FAを発生する。この第1ばね4の付勢力FAによって、可動支持部3及び物品Aは垂直方向に変位可能に支持される。
【0023】
更に可動支持部3には、該可動支持部と共に移動する可動カムとして、下側の横枠部材10bを前後方向に貫通し、かつ前記可動支持部の移動方向に直交する向きに即ち水平方向に延長するカム溝13が設けられている。カム溝13は、互いに対向する平行な上側下向きの第1可動カム面14aと下側上向きの第2可動カム面14bとを有する。
【0024】
カム溝13には、カムフォロア部材15が設けられている。カムフォロア部材15は、カム溝13を前後方向に貫通する断面円形の真直ぐなロッド形状又は円管形状の第1カムフォロア16と、前記カム溝から前後に突出する第1カムフォロア16の前後両端にそれぞれ設けられたローラー状の第2カムフォロア17,17とを有する。
【0025】
第1カムフォロア16は、その外周面で第1及び/又は第2可動カム面14a,14bに接触しつつ、カム溝13内を該カム溝に沿って左右に移動することができる。第2カムフォロア17は、好適には第1カムフォロア16の前記両端に関して自在に回動可能であり、それぞれ対応する固定カム8の固定カム面9に当接するように配置される。
【0026】
可動支持部3の下側の横枠部材10bには、圧縮コイルばねからなる第2ばね18が外装されている。第2ばね18は、固定カム8側の端部18aが第1カムフォロア16に固定され、かつ反対側の端部18bが横枠部材10bの固定カム8とは反対側の適当な位置に固定されている。第2ばね18は、第2カムフォロア17が固定カム面9に常時押圧された状態にカムフォロア部材15を付勢するように設けられる。
【0027】
このとき、第2ばね18の付勢力FBは、後述するように、固定カム面9の傾きによって第2カムフォロア17に対する垂直方向上向き又は下向きの力を生じる。また、横枠部材10bの存在によって第2ばね18は、常に座屈することなく圧縮された状態で真直に保持される。
【0028】
本実施態様では、カム溝13が、横枠部材10bの固定カム8側の端部付近から反対側に向けて延長している。これによって、カムフォロア部材15が第2カムフォロア17を固定カム面9に当接させつつ水平方向に移動可能な範囲、即ち水平ストロークをできるだけ大きく設定することができる。従って、第2ばね18の付勢力FBを第2カムフォロア17による固定カム面9の押圧に利用可能な範囲を、より広くとることができる。
【0029】
物品Aを荷重支持機構1に支持しているとき、物品Aの荷重Wは、第1ばね4を下向きに伸長させ、この力は可動支持部3を介して伝達され、カム溝13の下向きの第1可動カム面14aによりカムフォロア部材15を押下げるように作用する。他方、第1ばね4の付勢力FAは、同じく可動支持部3を介して伝達され、カム溝13の上向きの第2可動カム面14bによりカムフォロア部材15を押上げるように作用する。
【0030】
上述したように構成することによって、第1ばね4と第2ばね18とは、図2から分かるように、可動支持部3の移動方向に直交する平面即ち水平面において上下に少なくとも部分的に重なるように配置することができる。このような配置によって、荷重支持機構1を実際の装置に実現する際に、その奥行き寸法をより小さく即ちより薄型に設計することができる。これは、支持する荷重が大きくなって第1ばね4及び/又は第2ばね18に大きな付勢力が要求され、それらのばねが大型化する場合にも有利である。
【0031】
別の実施態様では、第1ばね4に、引張コイルばねに代えて圧縮コイルばねを用い、可動支持部3を押し上げるように、その下側に配置することができる。また別の実施態様では、図1の第1ばねに加えて、可動支持部3の下側にそれを押し上げるように、圧縮コイルばねを追加することができる。いずれの場合も、実際に装置化する際に、その奥行き寸法をより小さく設計することができる。
【0032】
本実施態様では、図2に示すように、固定カム8と第2カムフォロア17が、それぞれ第1カムフォロア16の軸方向に沿って2つずつ、下側の横枠部材10bを挟んで前後対称の対をなすように設けられている。このような配置によって、固定カム8からカムフォロア部材15に作用する力が、第1カムフォロア16の軸方向に沿ってバランス良く前後対称に分散するので、前記第1カムフォロアに撓みや変形を生じ難く好都合である。このような力の分散により、個々の固定カム8はその負担が小さくなるので、より薄板化することができる。それにより、装置全体の薄型化、軽量化を図ることができる。
【0033】
更に、第1カムフォロア16には、各固定カム8からの押圧力がそれぞれ当接位置に集中してかつ同じ向きに作用するので、その軸方向長さに長過ぎると、過度の撓みや変形を生じたり折損する虞がある。本実施態様では、カム溝13を設けた横枠部材10bと固定カム8との間に別の構成要素が存在しないので、第1カムフォロア16の軸方向長さを短くすることができ、有利である。
【0034】
また、固定カム面9は、第2カムフォロア17と当接する範囲がその位置によって次の3つの領域に分けられる。第1領域S1は、前記第2カムフォロアとの接点における法線方向が水平方向に関して上向きの領域である。第2領域S2は、前記第2カムフォロアとの接点における法線方向が実質的に水平方向の領域である。別言すれば、第2領域S2では、前記第2カムフォロアとの接点における接線方向が実質的に垂直である。ここで、実質的とは、完全な水平方向よりも僅かに上向き又は下向きであるが、その程度は、本発明の作用効果上又は本実施態様の動作もしくは機能上無視できるほどに小さく、水平方向と見なし得る場合を含むという意味である。また、第3領域S3は、前記第2カムフォロアとの接点における法線方向が水平方向に関して下向きの領域である。
【0035】
図1図2では、物品Aを載せた可動支持部3が、第2カムフォロア17が固定カム面9の第1領域S1内にある上方位置で静止している。この位置では、第1ばね4の変位量が小さく、そのばね力FAの大きさは荷重Wよりも小さい。図3は、この静止位置においてカムフォロア部材15、可動支持部3及び固定カム8からなる系に作用する力の平衡状態を模式的に示している。
【0036】
また、説明を簡単化するため、可動支持部3、第2ばね18及びカムフォロア部材15の荷重、並びに固定支持部2のガイド12a,12bと可動支持部3の縦枠部材11a,11bとの間、第1カムフォロア16とカム溝13との間及び第2カムフォロア17と固定カム8との間の摩擦力は省略する。実際の設計では、これらの要素を考慮しなければならないことは言うまでもない。
【0037】
このとき、前記可動支持部、第2ばね及びカムフォロア部材の荷重即ち重量を、前記カムフォロア部材、可動支持部、固定カムからなる系に作用する力に加えたとき、それらの合力が、前記ガイドと縦枠部材との間、第1カムフォロアとカム溝との間及び前記第2カムフォロアと固定カムばねとの間で発生する摩擦力に等しいかそれより小さければ、前記平衡状態は保たれる。これらの摩擦力によって可動支持部3は、前記平衡状態で或る位置に静止しているとき、その静止位置に保持することができる。
【0038】
このように前記可動支持部を静止位置に保持する力としては、例えば、第1カムフォロア16と第2カムフォロア17間にトルクリミッターを設けた場合、該トルクリミッターによって前記両カムフォロア間に働く力が考えられる。また、この静止位置保持力は、第2カムフォロア17の固定カム面9との接触面をゴム等の摩擦係数の大きな材料で構成した場合、このゴム面と前記固定カム面間で働く摩擦力によっても得られる。
【0039】
一般にばね定数kのコイルばねのばね力Fは、前記コイルばねの軸方向の変位x(ばねの自由長即ち無負荷状態の長さからの変位:ここでは、圧縮方向に正とする)についてF=k・x で表される。可動支持部3の上限位置において、物品Aを静止状態で支持できるように、第1ばね4は、自由長から所定の初期変位量xA0だけ予め伸張させた状態で、既に垂直方向上向きに初期ばね力(FA0=kA・xA0)を発揮し、同時に第2ばね18は、同様に自由長から所定の初期変位量xB0だけ予め圧縮させた状態で、既に垂直方向上向きに初期ばね力(FB0=kB・xB0)を発揮している。
【0040】
図3において、第1カムフォロア16とカム溝13との間では、第1可動カム面14aとの接点Paにおいて、可動支持部3を介して物品Aの荷重Wが前記第1可動カム面から前記第1カムフォロアに対して垂直下向きに作用している。この状態で理想的には、第1カムフォロア16が、前記第1可動カム面との間だけでなく、第2可動カム面14bとの間でも力伝達可能に当接していると仮定することができる。その場合、それらの接点Pbでは、第1ばね4の付勢力FAが前記第1カムフォロアに対して垂直上向きに作用すると考えられる。
【0041】
実際には、このような理想的な状態で第1カムフォロア16と第2可動カム面14bとが力伝達可能に当接することは困難で、その場合、それらの接点Pbで相互に作用する力は存在しない。このとき、接点Paでは、第1可動カム面14aから第1カムフォロア16に対して、恰も物品Aの荷重Wから第1ばね4の付勢力FAを差し引いた大きさの力Fvが垂直下向きに作用しているのと等価である。いずれの場合にも、カム溝13から第1カムフォロア16には、実質的に物品Aの荷重Wから第1ばね4の付勢力FAを差し引いた大きさの力Fvが、垂直下向きに作用していることになる。
【0042】
第2カムフォロア17と固定カム面9との接点Pcでは、前記第2カムフォロアから前記固定カム面への押圧力と、前記固定カム面からその法線方向に作用する反力Rcとが平衡している。前記第2カムフォロアから前記固定カム面への押圧力は、第2ばね18の付勢力FBと、上述したように第1カムフォロア16に作用する垂直下向きの力Fvとの合力である。前記固定カム面の反力Rcは、上向きの垂直方向成分Rc1と、水平方向成分Rc2とを有する。
【0043】
前記第2カムフォロアが前記固定カム面上の或る位置で静止しているとき、荷重Wと第1ばね4のばね力FAと反力Rcの垂直方向成分Rc1との間には、力の作用方向を垂直方向上向きを正として、次の関係が理論上常に成立する。
W+FA+Rc1=0
尚、実際の設計では、前述したように各部材の間で摩擦力が発生し、この関係式で表す合力が0でなく、僅かに値を持っていたとしても、その合力が前記各部材間の摩擦力よりも小さければ、平衡状態が保たれる。
【0044】
第2ばね18の付勢力FBと反力Rcの水平方向成分Rc2の間には、水平方向に力の作用方向を図中右向きを正として、次の関係が理論上常に成立する。
FB+Rc2=0
従って、反力Rcの水平方向成分Rc2の大きさは、第2ばね18の付勢力FBに等しい。この付勢力FBの大きさによって、反力Rcの大きさ、従って垂直方向成分Rc1の大きさが決定される。
【0045】
図3の場合、第1ばね4のばね力FAの大きさが荷重Wよりも小さいので、前記固定カム面から上向きに作用している反力Rcの垂直方向成分Rc1をアシスト力として加えることによって、垂直方向に荷重Wとの平衡を実現している。この状態で可動支持部3を押し下げ又は押し上げると、その力が荷重W又はばね力FAに付加されて、前記平衡が崩れるため、物品Aを比較的小さい力で簡単に昇降させることができる。
【0046】
可動支持部3を昇降させると、カムフォロア部材15は、第1カムフォロア16がカム溝13に沿ってかつ第2カムフォロア17が固定カム面9に沿って、左右方向に変位しながら下方又は上方に移動する。前記第2カムフォロアが前記固定カム面の第1領域S1の範囲内にある間、反力Rcの上向きの垂直方向成分Rc1が第1ばね4のばね力FAを、荷重Wと平衡させるように補助する。
【0047】
第1領域S1の範囲内において、可動支持部3が下降して第1ばね4の変位が大きくなると、それに対応してばね力FAが増大し、それに伴って反力Rcの垂直方向成分Rc1によるアシスト力も小さくて済むようになる。従って、固定カム面9の接線方向の垂直方向に対する傾きも、下方へ第2領域S2に近付くほど小さくなる。
【0048】
他方、第2ばね18は、可動支持部3の下降により第2カムフォロア17が固定カム面9を下方に移動するにつれて、圧縮変位が大きくなり、ばね力FBが増大する。それに伴い、前記第2カムフォロアから前記固定カム面への押圧力、従って反力Rcが増大する。固定カム面9の傾きは、第1ばね4のばね力FAの変化に加えて、第2ばね18のばね力FBの変化をも考慮して、反力Rcの垂直方向成分Rc1によるアシスト力が最適となるように決定することが好ましい。
【0049】
図4は、物品Aを載せた可動支持部3を図1の上方位置から押し下げて、図1に想像線で示すように、第2カムフォロア17が固定カム面14の第2領域S2内にある中間位置で静止させたとき、カムフォロア部材15、可動支持部3、固定カム8からなる前記系に作用する力の平衡状態を模式的に示している。同様に簡単化のため、可動支持部3、第2ばね18及びカムフォロア部材15の荷重、並びに固定支持部2のガイド12a,12bと可動支持部3の縦枠部材11a,11bとの間、第1カムフォロア16とカム溝13との間及び第2カムフォロア17と固定カム8との間の摩擦力は省略して説明する。
【0050】
この場合、第1カムフォロア16とカム溝13との間では、垂直方向に第1ばね4のばね力FAと荷重Wとが実質的に平衡している。従って、ばね力FAは、固定カム面9からの反力Rcによるアシスト力を必要としない。
【0051】
第2カムフォロア17と固定カム面9との接点Pcでは、固定カム面14からの反力Rcが、前記第2カムフォロアに第2ばね18から作用する付勢力FBと平衡しており、垂直方向成分を有しない。この状態でも、可動支持部3を押し下げ又は押し上げると、その力が荷重W又はばね力FAに付加されて、前記平衡が崩れるため、物品Aを比較的小さい力で簡単に昇降させることができる。
【0052】
物品Aを載せた可動支持部3を更に押し下げて、図1に想像線で示すように、第2カムフォロア17が固定カム面9の第3領域S3内にある下方位置で静止させる。このとき、第1ばね4は変位が更に増大して、そのばね力FAの大きさは荷重Wよりも大きくなる。
【0053】
図5は、この静止位置において、カムフォロア部材15、可動支持部3、固定カム8からなる前記系に作用する力の平衡状態を模式的に示している。同様に簡単化のため、可動支持部3、第2ばね18及びカムフォロア部材15の荷重、並びに固定支持部2のガイド12a,12bと可動支持部3の縦枠部材11a,11bとの間、第1カムフォロア16とカム溝13との間及び第2カムフォロア17と固定カム8との間の摩擦力は省略して説明する。
【0054】
同図において、第1カムフォロア16とカム溝13との間では、第2可動カム面14bとの接点Pbにおいて、第1ばね4の付勢力FAが前記第1カムフォロアに対して垂直上向きに作用している。この状態で理想的には、第1カムフォロア16が、前記第2可動カム面との間だけでなく、第1可動カム面14aとの間でも力伝達可能に当接していると仮定することができる。その場合、それらの接点Paでは、可動支持部3を介して物品Aの荷重Wが前記第1可動カム面に対して垂直下向きに作用すると考えられる。
【0055】
実際には、このような理想的な状態で第1カムフォロア16と第1可動カム面14aとが力伝達可能に当接することは困難で、その場合、それらの接点Paで相互に作用する力は存在しない。このとき、接点Pbでは、第2可動カム面14bから第1カムフォロア16に対して、恰も第1ばね4の付勢力FAから物品Aの荷重Wを差し引いた大きさの力Fvが垂直上向きに作用しているのと等価である。いずれの場合にも、第1カムフォロア16には、実質的に第1ばね4の付勢力FAから物品Aの荷重Wを差し引いた大きさの力Fvが、カム溝13から垂直上向きに作用していることになる。
【0056】
第2カムフォロア17と固定カム面9との接点Pcでは、前記第2カムフォロアから前記固定カム面への押圧力と、前記固定カム面からその法線方向に作用する反力Rcとが平衡している。前記第2カムフォロアから前記固定カム面への押圧力は、第2ばね18の付勢力FBと、上述したように第1カムフォロア16に作用する垂直上向きの力Fvとの合力である。前記固定カム面の反力Rcは、下向きの垂直方向成分Rc1と、水平方向成分Rc2とを有する。
【0057】
前記下方位置では、第1ばね4のばね力FAの大きさが荷重Wよりも大きいので、固定カム面9から下向きに作用している反力Rcの垂直方向成分Rc1が、ばね力FAによる上向きの付勢力即ち押し上げ力を削減する向きに作用することによって、垂直方向に荷重Wとの平衡を実現している。この状態でも、可動支持部3を押し下げ又は押し上げると、その力が荷重W又はばね力FAに付加されて、前記平衡が崩れるため、物品Aを比較的小さい力で簡単に昇降させることができる。
【0058】
可動支持部3を昇降させると、カムフォロア部材15は、第1カムフォロア16がカム溝13に沿ってかつ第2カムフォロア17が固定カム面9に沿って、左右方向に変位しながら下方又は上方に移動する。前記第2カムフォロアが前記固定カム面の第3領域S3の範囲内にある間、反力Rcの下向きの垂直方向成分Rc1が、第1ばね4のばね力FAによる押し上げ力を削減して荷重Wと平衡させる向きに作用する。
【0059】
第3領域S3の範囲内において、可動支持部3が上昇して第1ばね4の変位が小さくなると、それに対応してばね力FAが減少し、それに伴って、ばね力FAによる押し上げ力を削減する反力Rcの垂直方向成分Rc1も小さくて済むようになる。従って、固定カム面9の接線方向の垂直方向に対する傾きも、上方へ第2領域S2に近付くほど小さくなる。
【0060】
他方、第2ばね18は、可動支持部3の上昇により第2カムフォロア17が固定カム面9を上方に移動するにつれて、圧縮変位が大きくなり、ばね力FBが増大する。それに伴い、前記第2カムフォロアから前記固定カム面への押圧力、従って反力Rcが増大する。固定カム面9の傾きは、第1ばね4のばね力FAの変化に加えて、第2ばね18のばね力FBの変化をも考慮して、ばね力FAによる押し上げ力の削減が最適となるように、決定することが好ましい。
【0061】
このように本実施態様によれば、固定カム面9の全領域で、カムフォロア部材15、可動支持部3及び固定カム8からなる系に作用する物品Aの荷重W、第1ばね4のばね力FA、第2ばね18のばね力FB及び固定カム8からの反力が、カムフォロア部材15周りで平衡している。それにより、物品Aを載せた可動支持部3をその上下ストロークの範囲において、所望の高さ位置に静止させかつその位置を保持し、また比較的少ない力で簡単に昇降させることができる。
【0062】
上述した本発明の基本構成は、様々な変形・変更を加えて実施することができる。例えば、第2ばね18は、横枠部材10bを管状部材で構成し、その中に内装することもできる。また、可動支持部3は、上述した矩形枠以外の様々な構造が可能である。
【0063】
更に、図1の固定カム8、カム溝13、カムフォロア部材15及び第2ばね18をもう1組追加して、固定支持部2及び可動支持部3の左右方向の中心線に関して鏡面対称に配置することができる。このとき、前記第2ばねは1つの共通の圧縮ばねで構成し、その両端にそれぞれ前記カムフォロア部材15を設けることが好ましい。このように左右対称に構成することによって、前記固定カムが負担する荷重を少なくし、全体として、より大きな荷重を左右にバランス良く安定して支持することができる。
【0064】
このような本発明の荷重支持機構を具体的に適用した物品支持装置の好適な実施態様を、図6乃至図8に示す。本実施態様の物品支持装置20は、大画面ディスプレイ等のような比較的大きい重量の物品Bを支持するためのもので、床面等に対し移動可能に設置される基台21と、該基台に固定される固定フレーム部22と、前記固定フレーム部に昇降可能に取り付けられる支持フレーム部23と、第1ばね24と、支持フレーム部23を昇降操作するための操作ハンドル部25とを備える。
【0065】
物品Bは、後述するように支持フレーム部23に一体にかつ取り外し可能に取り付けられる。固定フレーム部22は、その下部を基台21の上面にステー21bによってしっかりと立設固定される。
【0066】
固定フレーム部22は概ね矩形の枠構造からなり、水平に延長する上部及び下部フレーム26,27と、前記上部フレームと下部フレーム間を垂直に延長する左右側部フレーム28,29とを有する。更に固定フレーム部22には、左右側部フレーム28,29間を水平に延長する略中間高さの中間フレーム30と前記上部フレームとの間を垂直に延長する第1ブレーキレール31が中央に設けられている。
【0067】
図9(a)は、固定フレーム部22の一方の側部フレーム28の断面を示しているが、他方の側部フレーム29も側部フレーム28と全く対称に構成されているので、図面は省略する。図9(a)に示すように、側部フレーム28,29には、それぞれ前記枠構造の内側に開口する断面コ字状のガイドレール32,33が、該側部フレームの略上端から下端まで形成されている。
【0068】
固定フレーム部22の左右側部フレーム28,29には、中間フレーム30より下側部分の内側に、固定カム部材34,35が左右対称に取り付けられている。固定カム部材34,35は、それぞれ側部フレーム28,29の前後面に互いに平行に固定された2枚の上下方向に長いカムプレートを有する。固定カム部材34,35はそれぞれ、その上端付近から下端付近まで延長する固定カム面36,37を有する。固定カム面36,37は互いに対向する向きに凸状をなし、その接線方向の傾きが上端から下端まで全長に亘って又は部分的に変化するように湾曲するように設けられている。
【0069】
支持フレーム部23は概ね矩形の枠構造からなり、垂直に延長する左右ガイドフレーム38,39と、前記両ガイドフレーム間を水平に延長する上部フレーム40及び上下に少し離隔された2つの下部フレーム41,42とを有する。支持フレーム部23は固定フレーム部22に、左右ガイドフレーム38,39をそれぞれ前記固定フレーム部の対応する左右側部フレーム28,29のガイドレール32,33内に摺動可能に嵌装させ、前記ガイドレールに沿って上下に移動可能に装着される。
【0070】
左右ガイドフレーム38,39には、ガイドレール32,33内を摺動する際にその内面との間で生じ得る摩擦その他の抵抗を低減又は解消するために、前記ガイドレール内面に摺接して転動する複数のローラー43が取り付けられている。これにより、支持フレーム部23は、固定フレーム部22に対して左右にガタついたり変位したりすることなく、上下方向に円滑に移動することができる。
【0071】
このように支持フレーム部23をその外枠が固定フレーム部22の外枠に直接支持されるように取り付けることによって、支持フレーム部23それ自体及び装置全体の構造強度が向上する。それにより、物品Bの大重量化に対応可能な耐高荷重かつ高強度な構造の物品支持装置20を実現することができる。
【0072】
支持フレーム部23には、物品Bを固定するために、それぞれ前記ガイドフレームの直ぐ前側を垂直に延長する左右1対の取付ステー44が設けられている。更に支持フレーム部23には、上部フレーム40の中央にブレーキ装置45が設けられている。前記ブレーキ装置は、後述するように、操作ハンドル部25によって係合させ又は係合解除することができる。
【0073】
第1ばね24は、支持フレーム部23の左右ガイドフレーム38,39の直ぐ内側にそれぞれ2本ずつ左右対称にかつ左右方向に並列に配置された引張コイルばね46,47を有する。各引張コイルばね46,47は、上端を固定フレーム部22の上部フレーム26に固定して垂直に吊り下げられ、下端が支持フレーム部23の上側の下部フレーム41に固定されている。
【0074】
図10に示すように、支持フレーム部23の下側の下部フレーム42には、該下部フレームを前後方向に貫通する2つのカム溝48、49が左右対称に設けられている。図中左側のカム溝48について図9(a)、(b)に示すように、各カム溝48、49は、下部フレーム42の左右両端付近から反対側に向けて水平に所定の長さ延長し、互いに対向する平行な上側下向きの第1可動カム面50a、51aと、下側上向きの第2可動カム面50b,51bとを有する。
【0075】
下部フレーム42には、圧縮コイルばねからなる第2ばね52が外装されている。第2ばね52は、このように支持フレーム部23の一部を構成する真直ぐな下部フレーム42に外装することによって、その圧縮により生じ得る座屈を確実に防止することができる。別の実施例では、筒状をなす下部フレーム42の内部に第2ばね52を装着することもできる。
【0076】
第2ばね52の左右両端には、下部フレーム42に摺動自在に外挿されたカムフォロアホルダー53,54を介して、それぞれカムフォロア部材55,56が設けられている。図中左側のカムフォロア部材55について図9(a)に示すように、カムフォロア部材55,56は、カム溝48、49を前後方向に貫通する断面円形の真直ぐなロッド状の第1カムフォロア57,58を有する。更にカムフォロア部材55,56は、前記カム溝から前後に突出する第1カムフォロア57,58の前後両端にそれぞれ設けられたローラー状の第2カムフォロア59,60を有する。
【0077】
第1カムフォロア57,58は、その外周面で第1可動カム面50a、51a及び第2可動カム面50b,51bに接触しつつ、カム溝48、49内を該カム溝に沿って左右に移動することができる。第2カムフォロア59,60は、例えば転がり軸受を介して第1カムフォロア57,58の前記両端に関して回動自在に装着することもできる。
【0078】
第2カムフォロア59,60は、それぞれ対応する固定カム部材34,35の固定カム面36,37に当接するように配置される。また、第2カムフォロア59,60は、第2ばね52によってそれぞれ水平方向外向きに付勢され、対応する固定カム部材34,35の固定カム面36,37に押圧される。
【0079】
図中左側のカムフォロアホルダー53について図9(b)に示すように、カムフォロアホルダー53,54は、第2ばね52の軸方向に沿って外側の第1ホルダー部材61,62と内側の第2ホルダー部材63,64とからなる。前記第1ホルダー部材は、例えば軸受を介して第1カムフォロア57,58を回動自在に保持する。前記第2ホルダー部材は、その端面で第2ばね52の端部を受けるためのばね受けである。
【0080】
第1ホルダー部材61,62と第2ホルダー部材63,64とは、互いに接合されて噛み合いジョイントを構成するように、相補的に係合可能な複数の段差を周方向に階段状に設けた突き合わせ面をそれぞれ有する。第1ホルダー部材61,62と第2ホルダー部材63,64とを周方向に相対的に回転させて、それらの突き合わせ位置を変えることによって、カムフォロアホルダー53,54の軸方向長さを変えることができる。
【0081】
図9(a)に示すように、固定カム部材34の前記各カムプレートは、それぞれカムフォロア部材55の軸方向に沿って2つずつ前後対称をなすように配置されているので、前記各カムプレートがカムフォロア部材55を押圧する力は、その軸方向に沿って分散しかつそれぞれ前後対称に作用する。図示しないが、他方のカムフォロア部材56についても、同様に固定カム部材35の前記各カムプレートによる押圧力が、その軸方向に沿って分散しかつそれぞれ前後対称に作用する。これにより、カムフォロア部材55、56は、カム溝48、49内で安定して水平に保持される。更にこのような力の分散によって、固定カム部材35は、各前記各カムプレートの負担が小さくなるので、それらをより薄板化することができる。それにより、装置全体の薄型化、軽量化を図ることができる。
【0082】
また、固定カム部材34、35の前記各カムプレートは、カム溝48、49が設けられた支持フレーム部23の下部フレーム42との間に別の構成要素が存在しないので、それらを前後方向に間隔を小さくして配置することができる。その結果、カムフォロア部材55、56は、第1カムフォロア57,58の軸方向長さを短くすることができ、それらが長過ぎる場合に生じ得る過度の撓みや変形又は折損の虞を予め解消することができる。
【0083】
図11は、支持フレーム部23の図中左側部分を部分的に拡大して上方から平面視した図である。同図に示すように、本実施態様の物品支持装置20は、第1ばね24の引張コイルばね46の略全体が、第2ばね52と上下に重なるように平面配置されている。図示しないが、反対側の引張コイルばね47も同様に、略全体が、第2ばね52と上下に重なる関係に平面配置されている。このような配置によって、仮令第1ばね24及び/又は第2ばね52の外径が大きくなっても、物品支持装置20の奥行き寸法を最小に抑制して、薄型に設計することができる。
【0084】
図8に示すように、固定カム面36,37は、図1に関連して説明したと同様に、第2カムフォロア59,60との当接位置によって次の3つの領域に分けられる。第1領域S1は、前記第2カムフォロアとの接点における法線方向が水平方向に関して上向きの領域である。第2領域S2は、前記第2カムフォロアとの接点における法線方向が実質的に水平方向、即ち接線方向が実質的に垂直方向の領域である。実質的とは、上述したように完全な水平方向よりも僅かに上向き又は下向きであるが、その程度は、物品支持装置20の作用効果上又はその動作もしくは機能上無視できるほどに小さく、水平方向と見なし得る場合を含むという意味である。また、第3領域S3は、前記第2カムフォロアとの接点における法線方向が水平方向に関して下向きの領域である。
【0085】
操作ハンドル部25は、支持フレーム部23の左右両ガイドフレーム38,39の前部に取り付けられた左右の垂直な伝達ロッド65を有する。各伝達ロッド65の下部には、略L字型の連結ステー66がそれぞれ結合され、前方へ突出する両連結ステー66の先端部によって、左右方向に延長する長尺なハンドル桿67が保持されている。このハンドル桿67を手で持って操作ハンドル部25を操作することにより、支持フレーム部23及び物品Bを昇降させることができる。
【0086】
図8及び図12は、物品Bを取り付けた支持フレーム部23がその移動範囲の最上位置にある場合を示している。第2カムフォロア59,60は、固定カム面36,37の第1領域S1の上端で静止している。この位置において、カムフォロア部材55、56、固定フレーム部22び支持フレーム部23からなる系に作用する物品Bの荷重W、第1ばね24のばね力FA、第2ばね52のばね力FB、及び前記固定カム面からの反力は、前記カムフォロア部材の周りで平衡している。
【0087】
第1領域S1では、第1ばね24の各引張コイルばね46,47の変位が小さく、そのばね力FAは物品Bの荷重Wより小さい。第2カムフォロア59に固定カム面36から作用する反力Rcは、上向きの垂直方向成分を含むから、これをアシスト力として第1ばね24のばね力FAに加えることによって、垂直方向に荷重Wと平衡している。
【0088】
図13及び図14は、物品Bを取り付けた支持フレーム部23がその移動範囲の中間位置にある場合を示している。第2カムフォロア59,60は、固定カム面36,37の第2領域S2内の位置で静止している。この中間位置でも、前記カムフォロア部材、固定フレーム部及び支持フレーム部からなる前記系に作用する物品Bの荷重W、前記第1ばねのばね力FA、前記第2ばねのばね力FB、及び前記固定カム面からの反力が、前記カムフォロア部材の周りで平衡している。
【0089】
第2領域S2では、第1ばね24のばね力FAと荷重Wとが実質的に平衡している。固定カム面36,37からの反力Rcは実質的に水平方向成分だけで、第2ばね52のばね力FBと平衡しており、垂直方向成分は有しない。
【0090】
図15及び図16は、物品Bを取り付けた支持フレーム部23がその移動範囲の最下位置にある場合を示している。第2カムフォロア59,60は、固定カム面36,37の第3領域S3の下端で静止している。この下端位置でも、前記カムフォロア部材、固定フレーム部及び支持フレーム部からなる前記系に作用する物品Bの荷重W、前記第1ばねのばね力FA、前記第2ばねのばね力FB、及び前記固定カム面からの反力が、前記カムフォロア部材の周りで平衡している。
【0091】
第3領域S3では、第1ばね24の各引張コイルばね46,47の変位が大きく、そのばね力FAは物品Bの荷重Wより大きい。第2カムフォロア59に固定カム面36から作用する反力Rcは、下向きの垂直方向成分を含んでおり、これが、第1ばね24のばね力FAによる押し上げ力を削減する向きに作用することによって、垂直方向に荷重Wと平衡している。
【0092】
物品Bの荷重Wが小さくなると、第1ばね24に変更はないから、そのばね力FAは相対的に大きくなる。従って、第1領域S1では、前記固定カム面によるばね力FAへのアシスト力を小さくし、第3領域S3では、ばね力FAによる押し上げ力を削減する下向きの力を大きくする必要がある。
【0093】
逆に、物品Bの荷重Wが大きくなると、第1ばね24のばね力FAは相対的に小さくなる。従って、第1領域S1では、前記固定カム面によるばね力FAへのアシスト力を大きくし、第3領域S3では、ばね力FAによる押し上げ力を削減する下向きの力を小さくする必要がある。
【0094】
物品支持装置20では、カムフォロアホルダー53,54の軸方向長さを変更して第2ばね52の圧縮変位を調節することによって、支持フレーム部23の同じ高さ位置における第2ばね52の付勢力FB、従って前記固定カム面からの反力Rcを増減するように調整する。荷重Wが小さい場合は、前記カムフォロアホルダーの軸方向長さを短くして、第2ばね52の付勢力FBを減少させ、前記固定カム面からの反力Rc及びその垂直方向成分を小さくする。逆に、荷重Wが大きい場合は、前記カムフォロアホルダーの軸方向長さを長くして、第2ばね52の付勢力FBを増加させ、前記固定カム面からの反力Rc及びその垂直方向成分を大きくする。
【0095】
これまで説明を行った物品支持装置の好適な実施態様の基台21に、更に転倒防止の機能を備えた実施態様を図17に示す。基台21は、固定フレーム部22を挟んでその両端に一対の脚部支持部材を備える。(以下、便宜上ディスプレイの画面と向き合う視点で、左側に位置する脚部支持部材を左脚部支持部材121、及び右側に位置する脚部支持部材を右脚部支持部材122として説明を行う。また、物品支持装置のディスプレイ(物品B)が配置されている側を前、それに対して固定フレーム部22が配置されている側を後として以下の説明を進める。)
【0096】
左脚部支持部材121と右脚部支持部材122とはそれぞれ、物品Bのディスプレイ面を挟んでその両側に一対の端部を備えている。それぞれの端部4個所には、キャスター80が備えられ物品支持装置を自在に移動させることができる。左脚部支持部材121の前側端部のフレームを覆うように、脚部を延長した形状の転倒防止用のエクステンションフット81が高さ調整ボルト82によって高さ調整可能に取り付けられている。エクステンションフット81は左脚部支持部材121のフレームを、その上面方向から両側を囲うコの字形状で、左脚部支持部材121の端部を覆っている。さらにエクステンションフット81の形状は、脚部支持部材の上面から連続して地面の方向に向かって下方向に傾斜した斜部と、さらにその斜部の先端に地面と平行となる水平部を有している。エクステンションフット81の詳しい構造及び機能については、後ほど説明を行う。
【0097】
エクステンションフット81が取り付けられた左脚部支持部材121の前端部とディスプレイの面を挟んで対角の位置に配置される、右脚部支持部材122の後端部にも、左脚部支持部材121と同じ構成でエクステンションフット81が備えられる。本実施例では、左脚部支持部材121の前端部及び右脚部支持部材122の後端部にエクステンションフット81が配置される例を示したが、左脚部支持部材121の後端部と右脚部支持部材122の前端部に配置してもよい。
【0098】
図18は、図17の視点IV方向(物品支持装置の上側)から見た、物品Bを含む装置全体の外形を模式化した図である。左脚部支持部材121はエクステンションフット81を含んだ外形の輪郭として図示している。左脚部支持部材121の前側の端部を左前脚部端部121aとし、後側の端部を左後脚部端部121bとして表す。また、右脚部支持部材122も同様に、エクステンションフット81を含んだ外形の輪郭として図示し、右脚部支持部材122の前側の端部を右前脚部端部122aとし、後側の端部を右後脚部端部122bとして表す。
【0099】
ディスプレイ等の表示機器を支える支持装置の脚部の張り出しは、事務機器の適用規格である、例えばUL60950−1に対応させる構成で、その長さが決まる。UL60950−1 4物理的要求事項4−1安定性には以下の様な記載があり、その規格に適合するように装置を構成しなければならない。「質量が25kg以上の床置きユニットは、床上2m以内のところで、その装置の重量の20%に等しい力(最大250Nとする)を、上方を除き、あらゆる方向に加えたとき、転倒してはならない。機器取扱者又はサービス従事者が使用時に動かすことのできる扉、引出し等は、据付説明書で指示した範囲を逸脱しない範囲で、最も不利となる位置にしておく。」
【0100】
図18に、物品Bと物品支持装置とを合わせた装置全体の重心を円で表現し、重心100とする。物品Bは先に説明した通り荷重支持機構1により、固定フレーム部22に対して上下方向に移動させることができる。本実施態様では床等の設置箇所に対して物品Bを垂直方向に変化可能に支持されるため、物品Bを上下方向に移動させても視点IV方向から見た重心100の見掛け上の位置は変わらない。
【0101】
上記規格に従い、最も不利な条件となる位置に装置を配置させ(本実施態様では物品Bを最も上昇させた位置)、装置に対してあらゆる方向に力を加えた時に転倒に耐えうる支持部材を設ける必要がある。その支持部材が必要となる領域を図18において、重心100の中心から半径Rで描かれる、重心からの倒れ強度に必要な支持部材の配置領域101で示す。この配置領域101の円の外側まで支持装置の脚部を張り出して配置させれば、上記規格を満たすことができる。
【0102】
本実施態様において、基台21を挟んで左右で支持する左脚部支持部材121と右脚部支持部材122は、重心からの倒れ強度に必要な支持部材の配置領域101の外側に配置されている。次にディスプレイの面に対して垂直方向の張り出し位置は、左前脚部端部121aと右前脚部端部122aを結ぶ直線が、重心からの倒れ強度に必要な支持部材の配置領域101の外側に配置されている。また、左後脚部端部121bと右後脚部端部122bとを結ぶ直線が、重心からの倒れ強度に必要な支持部材の配置領域101の外側に配置されている。これにより、物品支持装置から張り出した脚部支持部材は、あらゆる方向に対して重心からの倒れ強度に必要な支持部材の配置領域101の外側に配置されている。
【0103】
更に脚部支持部材の構成を詳細に説明する。ディスプレイ前面の垂直方向に対して、左前脚部端部121aと右前脚部端部122aは、異なる長さを有している。本実施態様では、図18に示すように右前脚部端部122aより左前脚部端部121aの方がディスプレイ前面から張り出し量が大きい形態で説明を行う。
【0104】
ディスプレイの面を挟んで対角に位置する左前脚部端部121aと右後脚部端部122bとを結ぶ直線と、左後脚部端部121bと右前脚部端部122aとを結ぶ直線とは異なる長さを有する。つまり、面を挟んで対角に位置する端部同士を結ぶ2つの直線は、異なる長さである。また、ディスプレイの後面側の脚部支持部材の端部は、ディスプレイの前面に配置された脚部支持部材の長さの比率とは反対の比率の長さを有している。つまり、左後脚部端部121bより右後脚部端部122bの方がディスプレイ後面から張り出し量が大きい。これらの脚部端部の張り出し量の違いにより、左前脚部端部121aとディスプレイ面を挟んで対角の領域に配置された右後脚部端部122bとを結ぶ直線110と、左後脚部端部121bとディスプレイ面を挟んで対角の領域に配置された右前脚部端部122aとを結ぶ直線111との長さが異なる。これにより同じ張り出し長さで端部を設定するよりも、少なくとも一方の面側の端部は、ディスプレイ面に近づけることができる。
【0105】
左前脚部端部121aと右後脚部端部122bとを結ぶ直線110と、左後脚部端部121bと右前脚部端部122aとを結ぶ直線111との交差する点を、交点104で表す。この交点104と重心100の中心とが、視点IV方向から見た時に重なるように、それぞれの脚部端部が設置されることが好ましい。先に述べたが、物品Bを上下方向に移動させても視点IV方向から見た重心100の見掛け上の位置は変わらないため、物品Bを上下方向に移動させても、視点IV方向から見た交点104と重心100との重なりも変わらない。
【0106】
また、交点104から左前脚部端部121aまでの長さ110aと、交点104から右後脚部端部122bまでの長さ110bが等しい事が好ましい。同様に、交点104から右前脚部端部122aまでの長さ111aと、交点104から左後脚部端部121bまでの長さとが等しいことが好ましい。これにより、ディスプレイ面の前後で倒れ強度を等しくすることができる。
【0107】
建物のドアの開口などの狭隘な箇所を、図18に開口部Lとして表す。ドアの開口部Lの寸法にはある程度の幅があるが、一般的なドアで最も狭い幅は、700mm程度である。それに対して、UL60950−1に対応させる構成は、装置もしくは物品の高さを、設置面を基準に最も高い位置を2000mmとして算出すると、その高さの20%以上の半径Rで描く円の外側に装置を支える指示部材が必要となり、重心からの倒れ強度に必要な支持部材の配置領域101は直径800mm以上が必要となる。図18に示すように、脚部支持部材の端部を結ぶ直線、例えば左脚部支持部材121で説明すると左前脚部端部121aと左後脚部端部121bとを結ぶ直線は半径Rで描かれる配置領域101と同等か、それ以上の長さが必要となる。つまり、左各部支持部材121の長手方向の全長は800mm以上となるため、そのままでは700mmのドアの幅を通過することはできない。
【0108】
それに対し、本実施態様のように、ディスプレイ面を挟んで対角の領域に配置された脚部端部を結ぶそれぞれの直線の長さが異なるように、脚部支持部材の長さを異ならせることで、ディスプレイ面を挟んで対向する支持部材の端部の少なくとも一方がディスプレイに近づき、狭隘な箇所を通過することができる。この構成及び方法について、図19図20を用いて説明を行う。
【0109】
左脚部支持部材121とディスプレイの前面との交点で、重心100に近い側の点を左脚部の付け根Qで表す。左脚部の付け根Qと左後脚部端部121bとを直線で結んだ線をL1で表す。このとき、左脚部の付け根Qと左後脚部端部121bとを直線で結んだ線L1を開口部Lより長く設定してしまうと開口部を通過できないため、L1<Lの関係になるように脚部の長さを設定する。
【0110】
従来の装置では、装置の重心と脚部の端部までが、全て同じ長さで構成されている物や、ドア等の開口部Lの通り抜け性を考慮してディスプレイ面の前後で脚部の長さの比率を異ならせた物がある。全て同じ長さで構成された装置では、所定の製品高さもしくは重量を超えた物品を支持しようとすると、L1<Lの関係を満たす脚部の長さが容易に維持できなくなってしまう。また、ディスプレイ面の前後で脚部の長さの比率を異ならせた装置の場合、短く設定した脚部側を利用して開口部を通過することができるかもしれないが、ディスプレイ面の前後で倒れに対する強度の差が生まれ、設置場所が制限されたり、移動する際に装置の向きを制限させる必要が生じたりする。本実施態様では、ディスプレイ前面に対して左右で脚部端部の長さをディスプレイ面の垂直方向に異ならせる。左右で一方の端部を短くした場合でも、他方の端部を長くすればそれぞれの端部を結ぶ直線を、配置領域101の外側に設定することができる。さらに、ディスプレイ前面の左右脚部端部長さの反対の比率で、ディスプレイの面に対向して配置される後側の左右脚部端部長さを設定すれば、容易にL1<Lの関係を満たすことができる。
【0111】
実際に、開口部Lを通過させる際は、図19のように、まずはディスプレイBが支持された物品支持装置の左前脚部端部121aを開口部Lに挿入する。その後、開口部Lの一端に左脚部の付け根Qを引き寄せる。次に左脚部の付け根Qを中心に、図に示した円弧矢印の向き(図19では反時計周り)に、物品支持装置を回転させる。この回転の際、左脚部の付け根Qに対し、4つの脚部端部の中で最も離れた位置にある右後脚部端部122bに対して、最も大きな回転モーメントが発生する。しかし、右後脚部端部122bは右前脚部端部122aと比較して重心100に対して長い脚部で構成されているため、この回転モーメントに対向する力を大きくすることができる。
【0112】
続いて、図20に示すように、左後脚部端部121bを通過させる。その後、図示しないが、開口部Lを形成する壁とディスプレイの面とが概ね直交する向きに物品支持装置を合わせ、ディスプレイの面もしくは基台21の長手方向に沿って開口部Lを通過させる。右脚部支持部材122と開口部Lとが近づいたところで、左脚部の付け根Qとディスプレイの面を挟んで対角の位置にある右脚部と基台21が交差する付け根Pを、開口部Lの他端に引き寄せ、右前脚部端部122aを通過させる。最後に付け根Pを中心に、時計周り方向に物品支持装置を回転させ、右後脚部端部122bを通過させる。なお、物品支持装置を右脚部支持部材122側から通過させる場合には、上記説明の反対の手順で行う。
【0113】
このように、本実施態様による物品支持装置は、装置の安定性に対する国際規格を満足しつつ、ドアの開口などの狭隘な箇所を通過させやすいため、ディスプレイの大型化に伴い支持装置の倒れ強度に必要な支持部材の配置領域101が広がったとしても、容易に移動させることができる。
また、ディスプレイの前面及び後面の両側で、同じ倒れ強度を実現することができ、設置場所を選んだり、移動する際に装置の向きを気に掛けるなどの必要がなくなる。
【0114】
次に図21にて、脚部支持部材について更に説明を行う。ここでは代表として左脚部支持部材121を用いて説明を行う。左脚部支持部材121は、角柱形状で構成され、その両端が下面側から凹んだ形状をしている。その凹んだ形状の箇所に、一般的なキャスター80が取付ボルト105によって、4個所で左脚部支持部材121に固定されている。左脚部支持部材121の両端に凹形状を形成しキャスター80を取付けることで、左脚部支持部材121の下面と床面の距離を近づけることができる。この左脚部支持部材121の下面と床面の隙間を狭くすることで、足がその隙間に入り辛くなり、ディスプレイの近傍に立って扱う人の転倒を防止することができる。
【0115】
基台21は、図21に図示するように左脚部支持部材121の側面にそって、取付ネジで固定される。左脚部支持部材121と基台21とが同じ高さに固定されることで、支持部材の上に基台21が搭載されるよりも、重心の位置が下がり装置全体の安定性を高くすることができる。
【0116】
エクステンションフット81は左脚部支持部材121のフレームを、その上面方向から両側を囲うコの字形状で、左脚部支持部材121の端部を覆っている。さらにエクステンションフット81の形状は、脚部支持部材の上面から連続して床面の方向に向かって下方向に傾斜した斜部と、さらにその斜部の先端に地面と平行となる水平部を有している。さらに、高さ調整ボルト82はエクステンションフット81と左脚部支持部材121のフレーム上面との間にワッシャー(図示しない)を備え、高さ調整ボルト82を回転させることで、エクステンションフット回動支点106を基準に左前脚部端部が床面に対して離接するように回動させることができる。これにより、設置時にはエクステンションフット81の先端(左前脚部端部121a)を床面に接触させ、装置の設置を安定させることができる。また、移動時にはエクステンションフット81の先端を持ち上げ、床面を傷付けることを防ぐことができる。
【0117】
なお、上記実施態様は本発明の好適な実施の一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、上記実施態様では荷重支持機構を挟んで左右に配置した脚部支持部材で支持する形態で説明したが、荷重支持機構を中心に放射状に張り出した形状の脚部支持部材であっても良い。つまり、上記実施態様では基台21の両側に脚部支持部材を設けた形態で説明したが、脚部支持部材は荷重支持機構の下部から本実施態様で示した各脚部端部に向けて真っすぐ斜めに延ばした脚部支持部材の形状であっても良い。
また、物品支持装置に支持される対象はディスプレイに限定されることはなく、他の電子機器や展示及び掲示物であっても良い。
【符号の説明】
【0118】
1 荷重支持機構
2 固定支持部
3 可動支持部
4 第1ばね
5 取付ステー
6a,6b 縦枠部材
7 横枠部材
8 固定カム
9 固定カム面
10a,10b 横枠部材
11a,11b 縦枠部材
12a,12b ガイド
13 カム溝
14a 第1可動カム面
14b 第2可動カム面
15 カムフォロア部材
16 第1カムフォロア
17 第2カムフォロア
18 第2ばね
20 物品支持装置
21 基台
22 固定フレーム部
23 支持フレーム部
24 第1ばね
25 操作ハンドル部
26 上部フレーム
27 下部フレーム
28,29 側部フレーム
30 中間フレーム
31 第1ブレーキレール
32,33 ガイドレール
34,35 固定カム部材
36,37 固定カム面
38,39 ガイドフレーム
40 上部フレーム
41,42 下部フレーム
45 ブレーキ装置
46,47 引張コイルばね
48、49 カム溝
50a、51a 第1可動カム面
50b,51b 第2可動カム面
52 第2ばね
53,54 カムフォロアホルダー
55,56 カムフォロア部材
57,58 第1カムフォロア
59,60 第2カムフォロア
80 キャスター
81 エクステンションフット
82 高さ調整ボルト
100 物品支持装置と物品Bの重心
101 重心からの倒れ強度に必要な支持部材を表す領域
104 110と111の交点
105 キャスター固定ネジ
106 エクステンションフット回動支点
110 左前脚部端部と右後脚部端部を結ぶ直線
111 左後脚部端部と右前脚部端部を結ぶ直線
121 左脚部支持部材
121a 左前脚部端部
121b 左後脚部端部
122 右脚部支持部材
122a 右前脚部端部
122b 右後脚部端部
P 右脚部支持部材と基台との交点
Q 左脚部支持部材と物品Bの前面との交点
L ドアの開口部
L1 左後脚部端部とQとを結ぶ直線
L1 右前脚部端部とPとを結ぶ直線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9(a)】
図9(b)】
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21