特開2017-155910(P2017-155910A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ CKD株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2017155910-流体制御弁 図000003
  • 特開2017155910-流体制御弁 図000004
  • 特開2017155910-流体制御弁 図000005
  • 特開2017155910-流体制御弁 図000006
  • 特開2017155910-流体制御弁 図000007
  • 特開2017155910-流体制御弁 図000008
  • 特開2017155910-流体制御弁 図000009
  • 特開2017155910-流体制御弁 図000010
  • 特開2017155910-流体制御弁 図000011
  • 特開2017155910-流体制御弁 図000012
  • 特開2017155910-流体制御弁 図000013
  • 特開2017155910-流体制御弁 図000014
  • 特開2017155910-流体制御弁 図000015
  • 特開2017155910-流体制御弁 図000016
  • 特開2017155910-流体制御弁 図000017
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-155910(P2017-155910A)
(43)【公開日】2017年9月7日
(54)【発明の名称】流体制御弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 7/07 20060101AFI20170810BHJP
【FI】
   F16K7/07 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-42349(P2016-42349)
(22)【出願日】2016年3月4日
(71)【出願人】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(72)【発明者】
【氏名】西村 康典
(72)【発明者】
【氏名】菅田 和広
(72)【発明者】
【氏名】黒沢 清志
(57)【要約】
【課題】パーティクルの発生及び流体の滞留を抑制することのできる流体制御弁を提供する。
【解決手段】流体の流通状態を制御する流体制御弁10であって、対向する厚肉部22が長手方向に沿って形成されたフッ素樹脂製のチューブ20と、チューブ20の外周面に流体により圧力を加える加圧機構40と、を備え、チューブ20は、加圧機構40により外周面に加えられる圧力に対して、対向する厚肉部が形成されていない部分が互いに近付くように形成されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流通状態を制御する流体制御弁であって、
対向する厚肉部が長手方向に沿って形成されたフッ素樹脂製のチューブと、
前記チューブの外周面に流体により圧力を加える加圧機構と、
を備え、
前記チューブは、前記加圧機構により前記外周面に加えられる前記圧力に対して、前記対向する厚肉部が形成されていない部分が互いに近付くように形成されていることを特徴とする流体制御弁。
【請求項2】
前記チューブの長手方向に垂直な断面において、前記対向する厚肉部が形成されていない部分の外径は、前記対向する厚肉部が形成されている部分の外径よりも短くなっている請求項1に記載の流体制御弁。
【請求項3】
前記チューブの長手方向に垂直な断面において、前記対向する厚肉部が形成されていない部分の外周面の曲率は、前記対向する厚肉部が形成されている部分の外周面の曲率よりも小さくなっている請求項1又は2に記載の流体制御弁。
【請求項4】
前記チューブの長手方向に垂直な断面において、前記対向する厚肉部が形成されていない部分の外周面は直線部を含んでいる請求項1〜3のいずれか1項に記載の流体制御弁。
【請求項5】
前記チューブの長手方向に垂直な断面において、前記厚肉部は、前記チューブの内側へ突出しており、前記チューブの内側ほど幅が狭くなっている請求項1〜4のいずれか1項に記載の流体制御弁。
【請求項6】
前記チューブは、周方向に捻られた状態で保持されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の流体制御弁。
【請求項7】
前記チューブの長手方向において、前記厚肉部は、前記チューブの両端から所定長さを除いた部分に形成されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の流体制御弁。
【請求項8】
前記加圧機構は、前記チューブの外周を圧縮性の流体で満たす容器と、前記容器内の前記圧縮性の流体の圧力を制御する圧力制御弁と、を備え、
前記圧力制御弁により、前記チューブ内に流通する前記流体の流量を制御する請求項1〜7のいずれか1項に記載の流体制御弁。
【請求項9】
前記加圧機構は、前記チューブの外周を非圧縮性の流体で満たす容器と、前記容器に接続されたシリンダと、前記シリンダ内の前記非圧縮性の流体を吐出及び吸引するピストンと、前記ピストンを駆動するアクチュエータと、前記アクチュエータの駆動量を制御する駆動量制御部と、を備え、
前記駆動量制御部により、前記チューブ内に流通する前記流体の流量を制御する請求項1〜7のいずれか1項に記載の流体制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流通状態を制御する流体制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の流体制御弁において、可撓性管の内部に球状の弁座を保持し、可撓性管の周囲に流体の圧力を作用させるものがある(特許文献1参照)。特許文献1に記載のものでは、可撓性管の内部を流れる流体の圧力と、可撓性管の周囲に作用する流体の圧力との差圧に応じて、可撓性管の内部に流体が流通及び遮断させられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4806819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、半導体製造装置等に用いられる流体制御弁では、弁の開閉に伴ってパーティクルが発生することが問題となる。特許文献1に記載のものでは、流体を遮断する際に、球状の弁座と可撓性管の内壁とが擦れるため、パーティクルの発生が避けられない。また、球状の弁座と可撓性管の内壁との隙間を流体が流れる構成のため、流体制御弁が開いた状態でも流体が滞留し易い。
【0005】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、パーティクルの発生及び流体の滞留を抑制することのできる流体制御弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
【0007】
第1の手段は、流体の流通状態を制御する流体制御弁であって、対向する厚肉部が長手方向に沿って形成されたフッ素樹脂製のチューブと、前記チューブの外周面に流体により圧力を加える加圧機構と、を備え、前記チューブは、前記加圧機構により前記外周面に加えられる前記圧力に対して、前記対向する厚肉部が形成されていない部分が互いに近付くように形成されていることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、フッ素樹脂製のチューブには、対向する厚肉部が長手方向に沿って形成されている。そして、加圧機構によって、チューブの外周面に流体により圧力が加えられる。このため、チューブが変形して流路断面積が縮小し、チューブの内部を流通する流体の流量を減少させることができる。対向する厚肉部は、チューブの長手方向に沿って形成されているため、チューブの内部における流体の流通を阻害しない。したがって、流体の滞留を抑制することができる。
【0009】
流体の流量を減少させる際に、チューブが他の部材と擦れないため、パーティクルの発生を抑制することができる。さらに、チューブの外周面に流体により圧力が加えられるため、チューブを外部から部材により機械的に変形させる構成と比較して、チューブに応力の集中する箇所が生じることを抑制することができる。その結果、パーティクルの発生を抑制することができる。
【0010】
ここで、チューブに上記厚肉部が形成されていない場合は、チューブの外周面に圧力が加えられた際に、チューブが過剰に変形したり、チューブが折れ曲がったりするおそれがある。その場合、チューブに応力の集中する箇所が生じ、その部分からパーティクルが発生するおそれがある。また、対向する厚肉部が互いに近付くようにチューブが変形した場合は、対向する厚肉部が形成されていない部分が互いに離れ、チューブの流路断面積を適切に縮小させることができないおそれがある。
【0011】
この点、チューブは、加圧機構により外周面に加えられる圧力に対して、対向する厚肉部が形成されていない部分が互いに近付くように形成されている。このため、対向する厚肉部が形成されていない部分が、対向する厚肉部を挟むように互いに近付いて、チューブの流路断面積を適切に縮小させることができる。
【0012】
第2の手段では、前記チューブの長手方向に垂直な断面において、前記対向する厚肉部が形成されていない部分の外径は、前記対向する厚肉部が形成されている部分の外径よりも短くなっている。
【0013】
上記構成によれば、対向する厚肉部が形成されていない部分に流体により作用する合力が、対向する厚肉部が形成されている部分に流体により作用する合力よりも大きくなり易い。したがって、対向する厚肉部が形成されていない部分が互いに近付くように、チューブを変形させ易くなる。
【0014】
第3の手段では、前記チューブの長手方向に垂直な断面において、前記対向する厚肉部が形成されていない部分の外周面の曲率は、前記対向する厚肉部が形成されている部分の外周面の曲率よりも小さくなっている。
【0015】
上記構成によれば、対向する厚肉部が形成されていない部分に流体により作用する合力が、対向する厚肉部が形成されている部分に流体により作用する合力よりも大きくなり易い。したがって、対向する厚肉部が形成されていない部分が互いに近付くように、チューブを変形させ易くなる。
【0016】
具体的には、第4の手段のように、前記チューブの長手方向に垂直な断面において、前記対向する厚肉部が形成されていない部分の外周面は直線部を含んでいるといった構成を採用することができる。こうした構成によれば、対向する厚肉部が形成されていない部分に流体により作用する合力が、対向する厚肉部が形成されている部分に流体により作用する合力よりも大きくなり易い。
【0017】
第5の手段では、前記チューブの長手方向に垂直な断面において、前記厚肉部は、前記チューブの内側へ突出しており、前記チューブの内側ほど幅が狭くなっている。
【0018】
上記構成によれば、対向する厚肉部が形成されていない部分が互いに近付くように変形する際に、厚肉部の外面に沿って変形させ易くなる。したがって、チューブに応力の集中する箇所が生じることを抑制することができ、パーティクルの発生を抑制することができる。
【0019】
第6の手段では、前記チューブは、周方向に捻られた状態で保持されている。
【0020】
上記構成によれば、チューブの外周面に流体により圧力が加えられた際にチューブが変形し易くなる。このため、チューブを変形させるために、加圧機構によりチューブの外周面に加える圧力を小さくすることができる。
【0021】
第7の手段では、前記チューブの長手方向において、前記厚肉部は、前記チューブの両端から所定長さを除いた部分に形成されている。
【0022】
上記構成によれば、チューブの長手方向の両端において、チューブの内側に配管等を挿入して接続することができる。
【0023】
第8の手段では、前記加圧機構は、前記チューブの外周を圧縮性の流体で満たす容器と、前記容器内の前記圧縮性の流体の圧力を制御する圧力制御弁と、を備え、前記圧力制御弁により、前記チューブ内に流通する前記流体の流量を制御する。
【0024】
上記構成によれば、チューブの外周を圧縮性の流体で満たす容器と、容器内の気体の圧力を制御する圧力制御弁と、を備える簡易な構成により、チューブ内に流通する流体の流量を制御することができる。
【0025】
第9の手段では、前記加圧機構は、前記チューブの外周を非圧縮性の流体で満たす容器と、前記容器に接続されたシリンダと、前記シリンダ内の前記非圧縮性の流体を吐出及び吸引するピストンと、前記ピストンを駆動するアクチュエータと、前記アクチュエータの駆動量を制御する駆動量制御部と、を備え、前記駆動量制御部により、前記チューブ内に流通する前記流体の流量を制御する。
【0026】
上記構成によれば、チューブの外周を非圧縮性の流体で満たす容器と、一般的なピストン機構と、を備える構成により、チューブ内に流通する流体の流量を制御することができる。さらに、チューブを変形させるためにピストンにより吐出する流体の量は少量でよいため、シリンダ及びピストンを小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第1実施形態の流体制御弁を示す断面図。
図2】チューブを示す断面図。
図3図2の3−3線断面図。
図4図2の4−4線断面図。
図5】比較例のチューブを示す断面図。
図6図5のチューブに作用する圧力を示す模式図。
図7図4のチューブに作用する圧力を示す模式図。
図8】変形した状態のチューブを示す断面図。
図9】操作エア圧力と流量とチューブ硬さとの関係を示すグラフ。
図10】操作エア圧力と流路断面積との関係を示すグラフ。
図11】操作エア圧力と流量と流体圧との関係を示すグラフ。
図12】流量指令値と流量制御値とを示すタイムチャート。
図13】第2実施形態の流体制御弁を示す断面図。
図14】チューブの変更例を示す模式図。
図15】操作エア圧力と流量とチューブ捻りとの関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1実施形態)
以下、半導体製造装置等に用いられる流体制御弁に具現化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0029】
図1に示すように、流体制御弁10は、チューブ20、及び加圧機構40を備えている。チューブ20の両端には、配管81,91がそれぞれ接続構造82,92により接続されている。そして、薬液配管81からチューブ20へ薬液(流体に相当)が流入し、薬液配管91から薬液が流出する。その際に、薬液の流量が流体制御弁10により制御される。なお、薬液配管81,91及び接続構造82,92は、耐薬品性の材料により形成されている。
【0030】
加圧機構40は、容器41、エア配管51、電空比例弁60等を備えている。容器41は、本体42及び蓋43を備えている。本体42及び蓋43は、それぞれ耐薬品性の材料により形成されている。本体42は、円筒状に形成された中間部42aと、中間部42aの両端に設けられた円板状のフランジ部42bとを備えている。フランジ部42bの中央には貫通孔が形成されている。そして、フッ素樹脂製(耐薬品性)のチューブ20が、一方のフランジ部42bの貫通孔から本体42の内部へ挿入され、他方のフランジ部42bの貫通孔から突出している。
【0031】
図2に示すように、チューブ20は、円筒状の小径部21と、円筒状の大径部26とを備えている。小径部21の外径は、大径部26の外径よりも小さくなっている。小径部21の内径は、大径部26の内径よりも小さくなっている。小径部21の両端に、それぞれ大径部26が接続されている。
【0032】
図3の断面図に示すように、大径部26の長手方向に垂直な断面形状は、幅のある円になっている。すなわち、大径部26の内周面及び外周面は、大径部26の断面において円になっている。
【0033】
図4の断面図に示すように、小径部21は、対向する厚肉部22と、対向する薄肉部24(対向する厚肉部22が形成されていない部分に相当)とを備えている。厚肉部22は、チューブ20の長手方向、すなわち薬液の流れ方向に沿って形成されている。厚肉部22は、小径部21に形成されており、大径部26には形成されていない。すなわち、チューブ20の長手方向において、厚肉部22は、チューブ20の両端から所定長さ(大径部26)を除いた部分に形成されている。上記接続構造82,92において、大径部26の内側に接続部材83,93がそれぞれ挿入されている。
【0034】
チューブ20の長手方向に垂直な断面において、厚肉部22は、小径部21(チューブ20)の内側へ突出しており、小径部21の内側ほど幅が狭くなっている。厚肉部22の底部と先端部との間は滑らかな曲面により接続されている。チューブ20の長手方向に垂直な断面において、厚肉部22と薄肉部24との接続部(境界部)には、厚肉部22と薄肉部24とを滑らかに接続するR部23が形成されている。
【0035】
(1)チューブ20の長手方向に垂直な断面において、対向する薄肉部24が形成されている部分の外径Raは、対向する厚肉部22が形成されている部分の外径Rbよりも短くなっている。(2)チューブ20の長手方向に垂直な断面において、対向する薄肉部24が形成されている部分の外周面の曲率は、対向する厚肉部22が形成されている部分の外周面の曲率よりも小さくなっている。(3)チューブ20の長手方向に垂直な断面において、対向する薄肉部24が形成されている部分の外周面は直線部25を含んでいる。これらの(1)〜(3)の構成は必ずしも全て備えている必要はなく、これらの(1)〜(3)の構成の少なくとも1つを備えていればよい。
【0036】
図1に戻り、チューブ20の大径部26の外周に、Oリング30(シール部材)が取り付けられている。本体42のフランジ部42bと蓋43とが締結部材44により締結されており、フランジ部42bと蓋43との間にOリング30が保持されている。そして、本体42の内周面とチューブ20の外周面との間が、Oリング30によりシールされている。
【0037】
本体42の中間部42aには、中間部42aの内側と外側とを連通させる連通孔42cが形成されている。連通孔42cには、接続部材52によりエア配管51の一端が接続されている。エア配管51の他端は、電空比例弁60に接続されている。電空比例弁60(圧力制御弁に相当)には、エア供給源61が接続されている。そして、電空比例弁60は、電気信号の大きさに比例して、操作エア(圧縮性流体に相当)の圧力を無段階に制御する。したがって、容器41によりチューブ20の外周が操作エアで満たされ、電空比例弁60により容器41内の操作エアの圧力が制御される。すなわち、加圧機構40は、チューブ20の外周面に操作エアにより圧力を加える。このため、チューブ20が変形して流路断面積が縮小し、チューブ20の内部を流通する薬液の流量を減少させることができる。また、操作エアの圧力を低下させることにより、チューブ20が変形して流路断面積が拡大し、チューブ20の内部を流通する薬液の流量を増加させることができる。
【0038】
ここで、チューブ20に厚肉部22が形成されていない場合は、チューブ20の外周面に圧力が加えられた際に、チューブ20が過剰に変形したり、チューブ20が折れ曲がったりするおそれがある。その場合、チューブ20に応力の集中する箇所が生じ、その部分からパーティクルが発生するおそれがある。また、対向する厚肉部22が互いに近付くようにチューブ20が変形した場合は、対向する薄肉部24が形成されている部分が互いに離れ、チューブ20の流路断面積を適切に縮小させることができないおそれがある。
【0039】
図5は、比較例のチューブ120を示す断面図である。チューブ120の外周面は、チューブ120の長手方向に垂直な断面において円になっている。この場合、図6に矢印で模式的に示すように、チューブ120の外周面に操作エアの圧力が作用する。このため、対向する厚肉部122が形成されている部分に操作エアにより作用する合力が、対向する薄肉部124が形成されている部分に操作エアにより作用する合力よりも大きくなる。その結果、対向する厚肉部122が互いに近付くようにチューブ120が変形し、対向する薄肉部124が形成されている部分が互いに離れ、チューブ120の流路断面積を適切に縮小させることができなくなる。
【0040】
これに対して、本実施形態では、図7に矢印で模式的に示すように、チューブ20の外周面に操作エアの圧力が作用する。このため、対向する薄肉部24が形成されている部分に操作エアにより作用する合力が、対向する厚肉部22が形成されている部分に操作エアにより作用する合力よりも大きくなる。その結果、図8に示すように、対向する薄肉部24が形成されている部分が、対向する厚肉部22を挟むように互いに近付いて、チューブ20の流路断面積を適切に縮小する。さらに、対向する薄肉部24が形成されている部分が互いに近付くように変形する際に、厚肉部22の外面に沿って変形する。
【0041】
また、対向する厚肉部22は、チューブ20の長手方向に沿って形成されているため、チューブ20の内部における薬液の流通を阻害しない。そして、薬液の流量を減少させる際に、チューブ20が他の部材と擦れないため、パーティクルの発生を抑制することができる。
【0042】
図9は、操作エア圧力と流量とチューブ硬さとの関係を示すグラフである。チューブ20の硬軟にかかわらず、操作エアの圧力が高いほど、流体制御弁10を流れる薬液の流量が小さくなる。しかしながら、チューブ20が硬いフッ素樹脂で形成されている場合は、操作エアの圧力を高くしても流量を0に近付けることができない。すなわち、チューブ20の流路断面積を十分に小さくすることができない。これに対して、チューブ20が軟らかいフッ素樹脂で形成されている場合は、操作エアの圧力を高くすることで流量を0に近付けることができる。すなわち、チューブ20の流路断面積を十分に小さくすることができる。
【0043】
図10は、本実施形態の流体制御弁10の操作エア圧力と流路断面積との関係を示すグラフである。操作エアの圧力が低い領域aでは、操作エアの圧力上昇に対して、流路断面積が徐々に小さくなっている。操作エアの圧力が中程度の領域bでは、操作エアの圧力上昇に比例して流路断面積が小さくなっている。操作エアの圧力が高い領域cでは、操作エアの圧力上昇に対して、流路断面積が徐々に小さくなっている。そして、流路断面積が0に近くなっている。
【0044】
図11は、操作エア圧力と流量と流体圧(薬液圧力)との関係を示すグラフである。実線で示すように、薬液圧力が低い場合は、操作エア圧力に応じて流量を任意に制御することができる。薬液圧力が中程度の場合は、操作エア圧力を高くすることで流量を0に近付けることができるが、操作エア圧力を低くすると流量が過度に大きくなる。同様に、薬液圧力が高い場合は、操作エア圧力を高くすることで流量を0に近付けることができるが、操作エア圧力を低くすると流量が過度に大きくなる。
【0045】
したがって、流体制御弁10を流れる薬液の流量は、チューブ20の硬さ及び弾力性と、チューブ20の外周面に作用する操作エアの圧力と、チューブ20内を流通する薬液の圧力と、の釣り合いで決まる。チューブ20の弾力性は、チューブ20の材質や、チューブ20の管壁の厚み等により調節することができる。流体制御弁10は、圧力の低い薬液を小流量で流す用途に適しているが、これらのパラメータを調節することで任意の流量範囲に適用することができる。
【0046】
図12は、本実施形態の流体制御弁10の流量指令値と流量制御値(実際の流量)とを示すタイムチャートである。流量の指令値が変化した場合に、それに制御値を追従させることができる。しかも、指令値の変化に対して、高い応答性で制御値を追従させることができる。なお、流量の指令値に対応した電気信号により電空比例弁60が制御される。
【0047】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。
【0048】
・対向する厚肉部22は、チューブ20の長手方向に沿って形成されているため、チューブ20の内部における薬液の流通を阻害しない。したがって、薬液の滞留を抑制することができ、薬液等の流体の置換性を向上させることができる。
【0049】
・薬液の流量を減少させる際に、チューブ20が他の部材と擦れないため、パーティクルの発生を抑制することができる。さらに、チューブ20の外周面に操作エアにより圧力が加えられるため、チューブ20を外部から部材により機械的に変形させる構成と比較して、チューブ20に応力の集中する箇所が生じることを抑制することができる。しかも、流体制御弁10を閉じる際の衝撃を小さくすることができる。その結果、パーティクルの発生を抑制することができる。
【0050】
・チューブ20は、加圧機構40により外周面に加えられる圧力に対して、対向する薄肉部24が形成されている部分が互いに近付くように形成されている。このため、対向する薄肉部24が形成されている部分が、対向する厚肉部22を挟むように互いに近付いて、チューブ20の流路断面積を適切に縮小させることができる。
【0051】
・チューブ20の長手方向に垂直な断面において、対向する薄肉部24が形成されている部分の外径Raは、対向する厚肉部22が形成されている部分の外径Rbよりも短くなっている。このため、対向する薄肉部24が形成されている部分に操作エアにより作用する合力が、対向する厚肉部22が形成されている部分に操作エアにより作用する合力よりも大きくなり易い。したがって、対向する薄肉部24が形成されている部分が互いに近付くように、チューブ20を変形させ易くなる。
【0052】
・チューブ20の長手方向に垂直な断面において、対向する薄肉部24が形成されている部分の外周面の曲率は、対向する厚肉部22が形成されている部分の外周面の曲率よりも小さくなっている。具体的には、前記チューブ20の長手方向に垂直な断面において、前記対向する薄肉部24が形成されている部分の外周面は直線部を含んでいる。このため、対向する薄肉部24が形成されている部分に操作エアにより作用する合力が、対向する厚肉部22が形成されている部分に操作エアにより作用する合力よりも大きくなり易い。したがって、対向する薄肉部24が形成されている部分が互いに近付くように、チューブ20を変形させ易くなる。
【0053】
・チューブ20の長手方向に垂直な断面において、厚肉部22は、チューブ20の内側へ突出しており、チューブ20の内側ほど幅が狭くなっている。このため、対向する薄肉部24が形成されている部分が互いに近付くように変形する際に、厚肉部22の外面に沿って変形させ易くなる。したがって、チューブ20に応力の集中する箇所が生じることを抑制することができ、パーティクルの発生を抑制することができる。
【0054】
・チューブ20の長手方向において、厚肉部22は、チューブ20の両端から所定長さを除いた部分に形成されている。このため、チューブ20の長手方向の両端において、チューブ20の内側に配管81,91への接続部材83,93を挿入して接続することができる。
【0055】
・チューブ20の外周を操作エアで満たす容器41と、容器41内の気体の圧力を制御する電空比例弁60と、を備える簡易な構成により、チューブ20内に流通する薬液の流量を制御することができる。
【0056】
・加圧機構40は、万が一にチューブ20の小径部21から薬液が漏れ出したり透過したりした場合、その外側が容器41で覆われているため、薬液が流体制御弁10の外部へ漏れ出すことを抑制することができる。
【0057】
なお、電空比例弁60に代えて、電気信号の大きさに応じて操作エアの圧力をステップ状に制御する圧力制御弁や、操作エアの圧力をオンオフ制御する圧力制御弁等を採用することもできる。また、操作エアに代えて、窒素等の作動気体を用いることもできる。
【0058】
(第2実施形態)
以下、第1実施形態の加圧機構40の構成を変更した第2実施形態について、図13を参照して説明する。第1実施形態の加圧機構40は、チューブ20の外周面に操作エアにより圧力を加えた。第2実施形態の加圧機構140は、チューブ20の外周面に水(非圧縮性流体に相当)により圧力を加える。なお、第1実施形態と同一の部材については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0059】
加圧機構140は、チューブ20の外周を水で満たす容器41(図示略)と、シリンダ161と、ピストン162と、アクチュエータ163と、駆動量制御部164と、を備えている。シリンダ161は、接続部材52及び水配管151を介して容器41に接続されている。ピストン162は、シリンダ161内に往復動可能に収容されている。ピストン162は、シリンダ161内の水を吐出及び吸引する。アクチュエータ163は、ピストン162を往復駆動する。アクチュエータ163として、モータや、ピエゾ素子、ソレノイド、サーマルアクチュエータ等を用いることができる。駆動量制御部164は、アクチュエータ163の駆動量を制御する。
【0060】
そして、駆動量制御部164により、アクチュエータ163の駆動量、すなわちピストン162による水の吐出量及び吸引量が制御される。これにより、チューブ20の外周面に水により作用する圧力が制御され、チューブ20内に流通する薬液の流量が制御される。こうした構成によれば、チューブ20の外周を水で満たす容器41と、一般的なピストン機構と、を備える構成により、チューブ20内に流通する薬液の流量を制御することができる。ここで、チューブ20を変形させるためにピストン162により吐出する水の量は少量でよいため、シリンダ161及びピストン162を小型化することができる。しかも、駆動量制御部164により、アクチュエータ163の駆動量を制御すればよいため、制御を簡潔にすることができる。
【0061】
加圧機構140は、万が一にチューブ20の小径部21から薬液が漏れ出したり透過したりした場合、その外側が容器41で覆われているため、薬液が流体制御弁10の外部へ漏れ出すことを抑制することができる。
【0062】
なお、加圧機構140で用いる非圧縮性の流体として、水に代えて油や、その他の液体を採用することもできる。また、水(非圧縮性の流体)に代えて圧縮性の流体(気体等)を採用することもできるが、薬液の流量を制御する精度を高くするためには、非圧縮性の流体を採用することが望ましい。また、流量を制御する薬液とは反応しない非圧縮性の流体を採用することで、チューブ20から薬液が漏れ出した場合も安全に使用できる。
【0063】
また、上記の各実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。
【0064】
図14は、チューブ20の変更例を示す模式図である。矢印で示すように、チューブ20を捻った状態で、チューブ20を容器41により保持することもできる。このときの捻り量を調節することで、流体制御弁10の流量特性を変更することができる。さらに、チューブ20を捻ることで、硬いフッ素樹脂製のチューブ20であっても、薬液の流量を適切に制御することができる。すなわち、チューブ20は、周方向に捻られた状態で保持されているため、チューブ20の外周面に流体により圧力が加えられた際にチューブ20が変形し易くなる。このため、チューブ20を変形させるために、加圧機構40,140によりチューブ20の外周面に加える圧力を小さくすることができる。
【0065】
図15は、操作エア圧力と流量とチューブ捻りとの関係を示すグラフである。破線で示す捻りなしのグラフは、図9の破線のグラフと同一であり、硬いフッ素樹脂製のチューブ20の流量特性を示している。実線で示すように、硬いフッ素樹脂製のチューブ20を捻ることにより、操作エアの圧力を高くした場合に流量を0に近付けることができる。すなわち、チューブ20の流路断面積を十分に小さくすることができる。しかも、操作エア圧力が低い領域から高い領域まで、操作エアの圧力上昇に比例して流路断面積を小さくすることができる。
【0066】
・チューブ20の全長にわたって厚肉部22を形成することもできる。その場合は、接続部材の内側にチューブ20を挿入して、薬液配管81,91に接続する構造を採用するとよい。
【0067】
図4,5に示すように、チューブ20の長手方向に垂直な断面において、厚肉部22を三角形状に形成することができる。これに対して、チューブ20の長手方向に垂直な断面において、厚肉部22を五角形状や、半円状等、その他の形状に形成することもできる。また、厚肉部22と薄肉部24とを滑らかに接続するR部23の曲率半径を、チューブ20の変形し易さに応じて変更してもよい。R部23を省略することもできる。
【符号の説明】
【0068】
10…流体制御弁、20…チューブ、22…厚肉部、24…薄肉部、25…直線部、40…加圧機構、41…容器、51…エア配管、60…電空比例弁、81…薬液配管、91…薬液配管、120…チューブ、122…厚肉部、124…薄肉部、140…加圧機構、151…水配管、161…シリンダ、162…ピストン、163…アクチュエータ、164…駆動量制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15