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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-155934(P2017-155934A)
(43)【公開日】2017年9月7日
(54)【発明の名称】電磁弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20170810BHJP
   F16K 35/02 20060101ALI20170810BHJP
【FI】
   F16K31/06 305L
   F16K35/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-31004(P2017-31004)
(22)【出願日】2017年2月22日
(31)【優先権主張番号】特願2016-38874(P2016-38874)
(32)【優先日】2016年3月1日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 新治
【テーマコード(参考)】
3H064
3H106
【Fターム(参考)】
3H064AA01
3H064CA08
3H064DA01
3H106DA13
3H106DA23
3H106DB02
3H106DB26
3H106DC02
3H106DC18
3H106DD05
3H106EE35
3H106GC01
3H106GC16
(57)【要約】
【課題】コイルへの供給電力量を抑えること。
【解決手段】電磁弁10は、手動軸42が手動操作されている途中で、可動鉄心33が固定鉄心32に当接しても、手動軸42が予め定められた操作量に達するまで手動軸42の手動操作を許容する弾性部41を備えている。よって、手動軸42が作業者によって手動操作されている途中で、可動鉄心33が固定鉄心32に当接してしまうことを回避するために、可動鉄心33のストロークを予め大きくしておく必要が無い。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボディに形成された流路を切り換えるための弁体と、前記弁体を移動させるソレノイド部と、手動操作が可能な手動軸と、を備え、
前記ソレノイド部は、コイルと、固定鉄心と、前記コイルへ電力が供給されることで前記固定鉄心に吸着される可動鉄心と、前記可動鉄心を前記固定鉄心から離間する方向へ付勢する付勢ばねと、を備え、
前記手動軸が手動操作されることにより、前記付勢ばねの付勢力に抗して前記可動鉄心を前記固定鉄心に向けて押圧する押圧力が前記可動鉄心に作用され、前記可動鉄心が前記固定鉄心に向けて移動し、前記弁体が移動して前記流路が切り換えられ、前記手動軸が初期状態から予め定められた操作量だけ手動操作されると前記手動軸が自己保持される電磁弁であって、
前記手動軸が手動操作されている途中で、前記可動鉄心が前記固定鉄心に当接しても、前記手動軸が前記操作量に達するまで前記手動軸の手動操作を許容する弾性変形可能な弾性部を備えたことを特徴とする電磁弁。
【請求項2】
前記ボディと協働して前記弁体を収容する弁室を区画するとともに前記弁体が着座する弁座を有するプラグと、
前記弁室に収容され、前記弁体の周囲に配置されて前記弁体をガイドするとともに前記弁体の移動方向において前記可動鉄心と当接する筒状の弁ガイドと、
前記弁体の移動方向において前記プラグに対して前記可動鉄心とは反対側に配置されるとともに前記手動軸の手動操作に伴い前記手動軸に押圧されて前記弁体の移動方向に移動可能なアダプタと、を備え、
前記アダプタは、前記弁ガイドに当接可能な当接部を有し、
前記手動軸及び前記アダプタの一方は、前記弾性部を有していることを特徴とする請求項1に記載の電磁弁。
【請求項3】
前記アダプタは、前記弾性部を有し、
前記弾性部は、前記付勢ばねの付勢方向に対して傾斜し、前記手動軸の手動操作によって前記押圧力を前記可動鉄心に向けて伝達させる伝達面と、前記伝達面における前記手動軸の前記初期状態からの操作方向側に連続し、且つ前記付勢ばねの付勢方向に対して直交して前記手動軸が前記初期状態から前記操作量だけ手動操作されたときに前記付勢ばねの付勢力が伝達される平坦面と、を有し、
前記手動軸は、前記伝達面に沿って延びるとともに前記伝達面に摺接して前記アダプタを前記弁ガイドに向けて押圧する押圧面と、前記押圧面における前記手動軸の前記初期状態からの操作方向とは反対側に連続し、且つ前記平坦面に沿って延びるとともに前記手動軸が前記初期状態から前記操作量だけ手動操作されたときに前記平坦面に乗り上げて前記平坦面に面接触する接触面と、を有していることを特徴とする請求項2に記載の電磁弁。
【請求項4】
前記アダプタは前記当接部を複数有し、
前記複数の当接部の少なくとも二つが、前記弁ガイドに対して、前記弁体の移動方向に対して直交する方向で前記弁体を挟んだ両側に当接可能になっていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の電磁弁。
【請求項5】
前記弁体の移動方向において前記アダプタを前記プラグに対して前記弁ガイドとは反対側に付勢する手動ばねを備え、
前記手動軸が初期状態である場合、前記アダプタが前記手動ばねの付勢力によって前記プラグに対して前記弁ガイドとは反対側に付勢されて、前記当接部が前記弁ガイドから離間していることを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか一項に記載の電磁弁。
【請求項6】
前記プラグに取り付けられるカバーを備え、
前記カバーは、前記手動軸を前記弁体の移動方向に対して直交する方向に往復動可能に保持していることを特徴とする請求項2〜請求項5のいずれか一項に記載の電磁弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、電磁弁は、ボディに形成された流路を切り換える弁体と、弁体を移動させるソレノイド部とを備えている。ソレノイド部は、固定鉄心と、固定鉄心に吸着される可動鉄心と、可動鉄心を固定鉄心から離間する方向へ付勢する付勢ばねとを備えている。そして、ソレノイド部のコイルへ電力が供給されると、可動鉄心が付勢ばねの付勢力に抗して固定鉄心に向けて吸着される。この可動鉄心における固定鉄心への吸着に伴って、弁体が移動して流路が切り換えられる。
【0003】
このような電磁弁は、例えば特許文献1に開示されているように、作業者が外部から押し込み操作や回転操作等の手動操作が可能な手動軸を備えているものがある。そして、作業者が手動軸を手動操作すると、付勢ばねの付勢力に抗して可動鉄心を固定鉄心に向けて押圧する力が手動軸から可動鉄心に作用し、可動鉄心が固定鉄心に向けて移動する。これにより、弁体が移動して流路が切り換えられる。これによれば、例えば、コイルへの電力の供給を行わずに、電磁弁の動作確認を行うことができる。また、手動軸においては、初期状態から予め定められた押し込み量や回転量等の操作量だけ作業者によって手動軸が手動操作されると、手動軸が自己保持(ロック)されるものがある。これによれば、流路が切り換えられた状態を維持することができ、電磁弁の動作確認が行い易くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平1−168079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、手動軸が作業者によって手動操作されている途中で、可動鉄心が固定鉄心に当接してしまうと、手動軸を、初期状態から予め定められた操作量だけ手動操作することができなくなってしまう。すると、手動軸が自己保持されなくなってしまい、流路が切り換えられた状態を維持することができなくなってしまう。よって、手動軸が作業者によって手動操作されている途中で、可動鉄心が固定鉄心に当接してしまうことを回避するために、可動鉄心のストロークを予め大きくしておく必要がある。しかしながら、可動鉄心のストロークを大きくするほど、可動鉄心を固定鉄心に向けて吸着するために必要なコイルへの供給電力量が増大してしまう。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、コイルへの供給電力量を抑えることができる電磁弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する電磁弁は、ボディに形成された流路を切り換えるための弁体と、前記弁体を移動させるソレノイド部と、手動操作が可能な手動軸と、を備え、前記ソレノイド部は、コイルと、固定鉄心と、前記コイルへ電力が供給されることで前記固定鉄心に吸着される可動鉄心と、前記可動鉄心を前記固定鉄心から離間する方向へ付勢する付勢ばねと、を備え、前記手動軸が手動操作されることにより、前記付勢ばねの付勢力に抗して前記可動鉄心を前記固定鉄心に向けて押圧する押圧力が前記可動鉄心に作用され、前記可動鉄心が前記固定鉄心に向けて移動し、前記弁体が移動して前記流路が切り換えられ、前記手動軸が初期状態から予め定められた操作量だけ手動操作されると前記手動軸が自己保持される電磁弁であって、前記手動軸が手動操作されている途中で、前記可動鉄心が前記固定鉄心に当接しても、前記手動軸が前記操作量に達するまで前記手動軸の手動操作を許容する弾性変形可能な弾性部を備えた。
【0008】
上記電磁弁において、前記ボディと協働して前記弁体を収容する弁室を区画するとともに前記弁体が着座する弁座を有するプラグと、前記弁室に収容され、前記弁体の周囲に配置されて前記弁体をガイドするとともに前記弁体の移動方向において前記可動鉄心と当接する筒状の弁ガイドと、前記弁体の移動方向において前記プラグに対して前記可動鉄心とは反対側に配置されるとともに前記手動軸の手動操作に伴い前記手動軸に押圧されて前記弁体の移動方向に移動可能なアダプタと、を備え、前記アダプタは、前記弁ガイドに当接可能な当接部を有し、前記手動軸及び前記アダプタの一方は、前記弾性部を有していることが好ましい。
【0009】
上記電磁弁において、前記アダプタは、前記弾性部を有し、前記弾性部は、前記付勢ばねの付勢方向に対して傾斜し、前記手動軸の手動操作によって前記押圧力を前記可動鉄心に向けて伝達させる伝達面と、前記伝達面における前記手動軸の前記初期状態からの操作方向側に連続し、且つ前記付勢ばねの付勢方向に対して直交して前記手動軸が前記初期状態から前記操作量だけ手動操作されたときに前記付勢ばねの付勢力が伝達される平坦面と、を有し、前記手動軸は、前記伝達面に沿って延びるとともに前記伝達面に摺接して前記アダプタを前記弁ガイドに向けて押圧する押圧面と、前記押圧面における前記手動軸の前記初期状態からの操作方向とは反対側に連続し、且つ前記平坦面に沿って延びるとともに前記手動軸が前記初期状態から前記操作量だけ手動操作されたときに前記平坦面に乗り上げて前記平坦面に面接触する接触面と、を有していることが好ましい。
【0010】
上記電磁弁において、前記アダプタは前記当接部を複数有し、前記複数の当接部の少なくとも二つが、前記弁ガイドに対して、前記弁体の移動方向に対して直交する方向で前記弁体を挟んだ両側に当接可能になっていることが好ましい。
【0011】
上記電磁弁において、前記弁体の移動方向において前記アダプタを前記プラグに対して前記弁ガイドとは反対側に付勢する手動ばねを備え、前記手動軸が初期状態である場合、前記アダプタが前記手動ばねの付勢力によって前記プラグに対して前記弁ガイドとは反対側に付勢されて、前記当接部が前記弁ガイドから離間していることが好ましい。
【0012】
上記電磁弁において、前記プラグに取り付けられるカバーを備え、前記カバーは、前記手動軸を前記弁体の移動方向に対して直交する方向に往復動可能に保持していることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、コイルへの供給電力量を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施形態における電磁弁を示す断面図。
図2図1における2−2線断面図。
図3】ソレノイド部のコイルへ電力が供給された状態を示す断面図。
図4図3における4−4線断面図。
図5】手動軸が予め定められた操作量だけ手動操作された状態を示す断面図。
図6図5における6−6線断面図。
図7】第2の実施形態における電磁弁を示す断面図。
図8】手動軸が予め定められた操作量だけ手動操作された状態を示す断面図。
図9】第3の実施形態における電磁弁を示す断面図。
図10】手動軸が予め定められた操作量だけ手動操作された状態を示す断面図。
図11】第4の実施形態における電磁弁を示す断面図。
図12】(a)は図11における12−12線断面図、(b)は回転規制ピンの周辺の断面図。
図13】手動軸が予め定められた操作量だけ手動操作された状態を示す断面図。
図14】(a)は図13における14−14線断面図、(b)は回転規制ピンの周辺の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
以下、電磁弁を具体化した第1の実施形態を図1図6にしたがって説明する。
図1に示すように、電磁弁10は、非磁性材製(合成樹脂材料製)のボディ11を備えている。また、電磁弁10は、ボディ11に形成された流路を切り換える弁体20と、弁体20を移動させるソレノイド部30とを備えている。ボディ11には、外部制御ユニットを通じてソレノイド部30へ電力を供給するためのコネクタ部CNが装着されている。
【0016】
ボディ11の底部側の一側面には、供給ポート11a、出力ポート11b及び排出ポート11cが形成されている。ボディ11における長手方向の一端部には、ガスケットやOリングよりなるシール部12sを介してプラグ12が取り付けられている。プラグ12は、ボディ11と協働して弁体20を収容する弁室13を区画している。
【0017】
ボディ11及びプラグ12には、供給ポート11aに連通する供給通路14aが形成されている。また、ボディ11には出力ポート11bに連通する出力通路14bと、排出ポート11cに連通する排出通路14cとが形成されている。供給ポート11aは供給通路14aを介して弁室13内に連通している。出力ポート11bは出力通路14bを介して弁室13内に連通している。排出ポート11cは排出通路14cを介して弁室13内に連通している。
【0018】
プラグ12において、弁室13内に臨む端面であり、供給通路14aの弁室13への開口周囲には、弁体20が着座する供給側の弁座12eが形成されている。さらに、ボディ11において、弁室13内に臨む端面であり、排出通路14cの弁室13への開口周囲には、弁体20が着座する排出側の弁座11eが形成されている。弁体20は両弁座11e,12eに対し接離可能になっている。弁室13内において、弁体20とプラグ12との間には弁体ばね15が介在されている。
【0019】
弁室13内には、弁体20の周囲に配置されて弁体20をガイドする有底筒状の弁ガイド21が収容されている。弁ガイド21は、弁体20の周囲に配置される筒部21aと、筒部21aにおける弁座11e側に連続するとともに弁体20の移動方向に対して直交する方向に延びる底部21bとを有する。底部21bには、弁座11eとの接触を回避する逃げ孔21hが形成されている。弁体20は、底部21bにおける逃げ孔21hの周囲に当接している。
【0020】
弁ガイド21の底部21bには、ボディ11に形成されたガイド溝11hに挿通されるガイド部21fが突設されている。弁ガイド21は、ガイド部21fがガイド溝11hにガイドされることにより、弁体20の移動方向に対しての傾きが規制された状態で弁体20と一体的に移動可能になっている。弁体20は弁体ばね15の付勢力によって弁座12eから離間する方向へ弁ガイド21と共に付勢されている。よって、弁体20は、傾くことが弁ガイド21によって規制された状態で弁ガイド21と共に移動する。
【0021】
ボディ11の長手方向におけるプラグ12とは反対側の端面には、鉄心室16が凹設されている。ボディ11において、鉄心室16の周囲からは筒状の磁気フレーム17が、プラグ12とは反対側の端面を越える位置まで延設されている。よって、磁気フレーム17は、プラグ12側がボディ11に埋設されており、プラグ12とは反対側がボディ11におけるプラグ12とは反対側の端面から突出している。
【0022】
ソレノイド部30は、磁気フレーム17の内側に配設されるコイル31と、コイル31の内側に固設される柱状の固定鉄心32と、鉄心室16内に収容されるとともにコイル31へ電力が供給されることで固定鉄心32に吸着される可動鉄心33と、可動鉄心33を固定鉄心32から離間する方向へ付勢する付勢ばね34とを備えている。付勢ばね34は、固定鉄心32と可動鉄心33との間に介在されている。可動鉄心33は、付勢ばね34の付勢力により、弁室13に向けて付勢されている。コイル31は、樹脂製のボビン31aを介して固定鉄心32に巻装されている。
【0023】
図2に示すように、可動鉄心33は、弁ガイド21に向けて延びる一対の弁押圧部33aを含む。弁ガイド21は、弁体20の移動方向において可動鉄心33の一部である一対の弁押圧部33aに当接している。そして、付勢ばね34により可動鉄心33が弁室13に向けて付勢された状態では、弁ガイド21は弁押圧部33aによって押圧され、弁体20が弁座12eに押し付けられる。
【0024】
図3及び図4に示すように、コイル31へ電力が供給されると、コイル31が励磁され、コイル31の周りに、磁気フレーム17、固定鉄心32及び可動鉄心33を通過する磁束が発生する。そして、コイル31の励磁作用によって固定鉄心32に吸引力が発生し、可動鉄心33が付勢ばね34の付勢力に抗して固定鉄心32に吸着され、弁体20が弁体ばね15の付勢力によって弁座12eから離間する方向へ移動するとともに、弁座11eに着座する。これにより、供給通路14aが開放されるとともに排出通路14cが閉鎖され、供給ポート11aと出力ポート11bとが供給通路14a、弁室13及び出力通路14bを介して連通し、出力通路14b、弁室13及び排出通路14cを介した出力ポート11bと排出ポート11cとの連通が遮断される。
【0025】
図1及び図2に示すように、コイル31への電力の供給が停止されると、コイル31の励磁作用による固定鉄心32の吸引力が消滅し、可動鉄心33が付勢ばね34の付勢力により固定鉄心32から離間する方向へ移動する。そして、可動鉄心33の弁押圧部33aにより、弁ガイド21及び弁体20が弁体ばね15の付勢力に抗して弁座12eに向けて押圧されて、弁座12eに着座する。これにより、供給通路14aが閉鎖されるとともに排出通路14cが開放され、出力ポート11bと排出ポート11cとが出力通路14b、弁室13及び排出通路14cを介して連通し、供給通路14a、弁室13及び出力通路14bを介した供給ポート11aと出力ポート11bとの連通が遮断される。
【0026】
プラグ12におけるソレノイド部30とは反対側の端面には、取付凹部12aが形成されている。取付凹部12aの底面には、弁体20の移動方向に延びる一対の挿通孔12bが形成されている。一対の挿通孔12bは弁室13内に開口するとともに弁座12eの周囲に配置されている。
【0027】
取付凹部12aには、アダプタ40が取り付けられている。よって、アダプタ40は、弁体20の移動方向においてプラグ12に対して可動鉄心33とは反対側に配置されている。アダプタ40は、取付凹部12a内に収容される平板状の本体部40aと、本体部40aから突設されるとともに一対の挿通孔12bにそれぞれ挿通される一対の当接部40bとを有する。よって、アダプタ40は、当接部40bを複数有している。各当接部40bは、各挿通孔12bに挿通されて弁室13内に突出している。
【0028】
アダプタ40は、各当接部40bが各挿通孔12bにガイドされて、弁体20の移動方向に移動可能になっている。各当接部40bの先端部は、弁体20の移動方向において弁ガイド21の筒部21aに対向配置されている。一対の当接部40bは、弁ガイド21に対して、弁体20の移動方向に対して直交する方向で弁体20を挟んだ両側に当接可能になっている。取付凹部12aの底面とアダプタ40の本体部40aとの間には、手動ばね40cが介在されている、手動ばね40cは、弁体20の移動方向においてアダプタ40をプラグ12に対して弁ガイド21とは反対側に付勢する。
【0029】
図1において拡大して示すように、アダプタ40の本体部40aは、弾性部41を有する。弾性部41は屈曲形成された板状であり、弾性変形可能な樹脂製である。弾性部41は、本体部40aにおける当接部40bとは反対側の端面に連続するとともに付勢ばね34の付勢方向に対して傾斜する板状の傾斜部41aと、傾斜部41aにおける本体部40aとは反対側に位置する端部に連続するとともに付勢ばね34の付勢方向に対して直交する方向に延びる板状の平坦部41bとを有する。傾斜部41aは、本体部40aの端縁から本体部40aの中央部に向かうにつれて弁体20の移動方向において可動鉄心33から離間していくように直線状に延びるとともに、平坦部41bは、弁体20の移動方向において本体部40aの中央部に対向配置されている。
【0030】
図1及び図2に示すように、電磁弁10は、手動操作が可能な手動軸42と、プラグ12に取り付けられるカバー43とを備えている。カバー43は、プラグ12におけるソレノイド部30とは反対側の端面において、ボディ11の底部側の一側面寄りに取り付けられている。カバー43は、弁体20の移動方向において弾性部41の平坦部41bと対向配置される対向壁43aを有する。平坦部41bと対向壁43aとの間には手動軸42の挿入部42eが挿入されている。そして、カバー43は、手動軸42を弁体20の移動方向に対して直交する方向に往復動可能に保持している。手動軸42は、その挿入部42eが平坦部41bと対向壁43aとの間に対して出没可能にカバー43により保持されている。
【0031】
手動軸42の挿入部42eが平坦部41bと対向壁43aとの間に対して最も突出した状態は、手動軸42が作業者により手動操作される前の初期状態である。そして、手動軸42が初期状態からカバー43に向けて手動軸42を弁体20の移動方向に対して直交する方向に沿って押し込むように作業者により手動操作されると、手動軸42の挿入部42eが平坦部41bと対向壁43aとの間に没入する。よって、手動軸42の操作方向Y1は、カバー43に向けて手動軸42を弁体20の移動方向に対して直交する方向に沿って押し込む方向である。この手動軸42の挿入部42eが平坦部41bと対向壁43aとの間に対して最も没入した状態は、手動軸42が初期状態から予め定められた操作量(押し込み量)だけ作業者によって手動操作された状態である。
【0032】
図1において拡大して示すように、傾斜部41aにおける手動軸42に対向する外面は、付勢ばね34の付勢方向に対して傾斜し、手動軸42の手動操作によって可動鉄心33を固定鉄心32に向けて押圧する押圧力を可動鉄心33に向けて伝達させる伝達面41cになっている。伝達面41cは、本体部40aの端縁から本体部40aの中央に向かうにつれて弁体20の移動方向において可動鉄心33から離間していくように直線状に延びている。
【0033】
また、平坦部41bにおける手動軸42に対向する外面は、伝達面41cにおける手動軸42の初期状態からの操作方向Y1側に位置する端縁411cに連続し、且つ付勢ばね34の付勢方向に対して直交して手動軸42が初期状態から予め定められた操作量だけ手動操作されたときに付勢ばね34の付勢力が伝達される平坦面41dになっている。伝達面41cにおける手動軸42の初期状態からの操作方向Y1側に位置する端縁411cとは、伝達面41cにおける本体部40aとは反対側に位置する端縁である。よって、平坦面41dは、伝達面41cにおける本体部40aとは反対側に位置する端縁に連続するとともに付勢ばね34の付勢方向に対して直交する方向に延びている。
【0034】
手動軸42の挿入部42eは、伝達面41cに沿って延びるとともに伝達面41cに摺接してアダプタ40を弁ガイド21に向けて押圧する押圧面42aを有している。また、手動軸42の挿入部42eは、押圧面42aにおける手動軸42の初期状態からの操作方向Y1とは反対側に位置する端縁421aに連続し、且つ平坦面41dに沿って延びるとともに手動軸42が予め定められた操作量だけ手動操作されたときに平坦面41dに乗り上げて平坦面41dに面接触する接触面42bを有している。よって、アダプタ40は、手動軸42の手動操作に伴い手動軸42に押圧されて弁体20の移動方向に移動可能である。
【0035】
図2及び図4に示すように、手動軸42が初期状態である場合、アダプタ40が手動ばね40cの付勢力によってプラグ12に対して弁ガイド21とは反対側に付勢されて、一対の当接部40bが弁ガイド21から離間している。
【0036】
次に、第1の実施形態の作用について説明する。
図5及び図6に示すように、手動軸42が初期状態から手動操作されると、押圧面42aが伝達面41cに摺接しながらアダプタ40を弁ガイド21に向けて押圧する。すると、アダプタ40が手動ばね40cの付勢力に抗して弁ガイド21に向けて移動し、一対の当接部40bが、弁ガイド21に対して、弁体20の移動方向に対して直交する方向で弁体20を挟んだ両側に当接して、弁ガイド21及び可動鉄心33を付勢ばね34の付勢力に抗して固定鉄心32に向けて押圧する。このとき、一対の当接部40bが、弁ガイド21に対して、弁体20の移動方向に対して直交する方向で弁体20を挟んだ両側に当接して、弁ガイド21及び可動鉄心33を押圧しているため、弁ガイド21及び可動鉄心33が弁体20の移動方向に対して傾き難くなっている。
【0037】
よって、手動軸42が手動操作されることにより、付勢ばね34の付勢力に抗して可動鉄心33を固定鉄心32に向けて押圧する押圧力が可動鉄心33に作用される。そして、弁ガイド21における固定鉄心32に向けた移動に伴って、弁体20が弁体ばね15の付勢力により移動して流路が切り換えられる。よって、伝達面41cは、付勢ばね34の付勢方向に対して傾斜し、手動軸42の手動操作によって可動鉄心33を固定鉄心32に向けて押圧する押圧力を可動鉄心33に向けて伝達させる。
【0038】
さらに、手動軸42が手動操作されている途中で、可動鉄心33が固定鉄心32に当接しても、手動軸42が予め定められた操作量に達するまで弾性部41が弾性変形して手動軸42の手動操作が許容される。そして、手動軸42が予め定められた操作量だけ手動操作されると、接触面42bが平坦面41dに乗り上げて平坦面41dに面接触する。これにより、付勢ばね34の付勢力が平坦面41dに伝達されて接触面42bにより受け止められる。よって、平坦面41dには、手動軸42が初期状態から予め定められた操作量だけ手動操作されたときに付勢ばね34の付勢力が伝達される。このとき、付勢ばね34の付勢力が伝達面41cには作用しないため、付勢ばね34の付勢力によって、手動軸42が初期状態からの操作方向Y1とは反対方向へ押し戻される力が手動軸42に作用しない。よって、手動軸42が初期状態から予め定められた操作量だけ手動操作されると手動軸42が自己保持(ロック)され、流路が切り換えられた状態が維持される。このようにして、コイル31への電力の供給を行わずに、電磁弁10の動作確認が行われる。
【0039】
第1の実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)電磁弁10は、手動軸42が手動操作されている途中で、可動鉄心33が固定鉄心32に当接しても、手動軸42が予め定められた操作量に達するまで手動軸42の手動操作を許容する弾性部41を備えている。よって、手動軸42が作業者によって手動操作されている途中で、可動鉄心33が固定鉄心32に当接してしまうことを回避するために、可動鉄心33のストロークを予め大きくしておく必要が無い。その結果、可動鉄心33を固定鉄心32に向けて吸着するために必要なコイル31への供給電力量を抑えることができる。
【0040】
(2)電磁弁10は、プラグ12と、弁ガイド21と、アダプタ40と、を備え、アダプタ40は、弁ガイド21に当接可能な当接部40bを有している。アダプタ40は、弾性部41を有している。このような構成は、コイル31への電力の供給を行わずに、電磁弁10の動作確認を行うことができる電磁弁10の構成として好適である。
【0041】
(3)弾性部41は、伝達面41cと、平坦面41dとを有している。手動軸42は、押圧面42aと、接触面42bとを有している。これによれば、アダプタ40に弾性部41が設けられている場合に、手動軸42の手動操作を行って、押圧面42aによって伝達面41cを押圧することにより、可動鉄心33を固定鉄心32に向けて押圧する押圧力を可動鉄心33に向けて伝達させ、可動鉄心33が固定鉄心32に向けて移動し、弁体20が移動して流路を切り換えることができる。また、手動軸42が予め定められた操作量だけ手動操作されたときに、付勢ばね34の付勢力が平坦面41dに伝達されて接触面42bにより受け止められる。よって、付勢ばね34の付勢力によって、手動軸42が初期状態からの操作方向Y1とは反対方向へ押し戻される力が手動軸42に作用せず、手動軸42が初期状態から予め定められた操作量だけ手動操作されると手動軸42が自己保持され、流路が切り換えられた状態を維持することができる。
【0042】
(4)アダプタ40は一対の当接部40bを有し、一対の当接部40bが、弁ガイド21に対して、弁体20の移動方向に対して直交する方向で弁体20を挟んだ両側に当接可能になっている。これによれば、例えば、アダプタ40に当接部40bが一つだけ設けられており、一つの当接部40bが弁ガイド21に対して当接する場合に比べて、弁ガイド21及び可動鉄心33が弁体20の移動方向に対して傾き難くすることができる。よって、弁ガイド21及び可動鉄心33が傾く分だけ、可動鉄心33のストロークを予め大きくしておく必要が無いため、可動鉄心33を固定鉄心32に向けて吸着するために必要なコイル31への供給電力量をさらに抑えることができる。
【0043】
(5)例えば、手動軸42が初期状態である場合に、一対の当接部40bが弁ガイド21に当接していると、一対の当接部40bによって弁ガイド21における弁座12eに向けた移動が妨げられ、弁体20が弁座12eに着座せずに、シール不良を引き起こす虞がある。そこで、手動軸42が初期状態である場合、アダプタ40が手動ばね40cの付勢力によってプラグ12に対して弁ガイド21とは反対側に付勢されて、一対の当接部40bが弁ガイド21から離間している。これによれば、弁ガイド21における弁座12eに向けた移動が一対の当接部40bによって妨げられないため、弁体20を弁座12eに確実に着座させることができ、シール性を良好なものとすることができる。
【0044】
(6)カバー43は、手動軸42を弁体20の移動方向に対して直交する方向に往復動可能に保持している。これによれば、手動軸42が電磁弁10から離脱してしまうことを防止し、手動軸42を電磁弁10に一体化することができる。
【0045】
(7)弾性部41が弾性変形して、手動軸42の手動操作が許容されるため、手動軸42が手動操作されている途中で、手動軸42、アダプタ40及び弁ガイド21等に無理な力が作用せず、各部品の耐久性を向上させることができる。
【0046】
(8)本実施形態では、手動軸42が手動操作されているときに、弁ガイド21が弁体20の移動方向に対して傾き難くなっているため、弁体20を確実に弁座11eに着座させることができ、シール性を良好なものとすることができる。
【0047】
(9)手動軸42の操作方向Y1は、弁体20の移動方向に対して直交する方向である。これによれば、手動軸42の操作方向Y1が、例えば、弁体20の移動方向に沿った方向である場合に比べて、電磁弁10における弁体20の移動方向に沿った体格を小型化することができる。
【0048】
(第2の実施形態)
以下、電磁弁を具体化した第2の実施形態を図7及び図8にしたがって説明する。なお、以下に説明する実施形態では、既に説明した第1の実施形態と同一構成について同一符号を付すなどして、その重複する説明を省略又は簡略する。なお、第2の実施形態の電磁弁は、アダプタが弾性部を有しているのではなく、手動軸が弾性部を有している点が第1の実施形態と異なっている。よって、手動軸及びアダプタの一方が弾性部を有していればよい。
【0049】
図7及び図8に示すように、アダプタ40の本体部40aにおける当接部40bとは反対側の端面には、付勢ばね34の付勢方向に対して傾斜する第1面50aと、第1面50aに連続するとともに付勢ばね34の付勢方向に対して直交する方向に延びる第2面50bとを有する。
【0050】
手動軸42は、弾性部51を有している。弾性部51は屈曲形成された板状であり、弾性変形可能な樹脂製である。弾性部51は、第1面50aに沿って延びるとともに第1面50aに摺接してアダプタ40を弁ガイド21に向けて押圧する押圧面51aを有している。また、弾性部51は、押圧面51aにおける手動軸42の初期状態からの操作方向Y1とは反対側に位置する端縁511aに連続し、且つ第2面50bに沿って延びるとともに手動軸42が予め定められた操作量だけ手動操作されたときに第2面50bに乗り上げて第2面50bに面接触する接触面51bを有している。弾性部51は、アダプタ40と対向壁43aとの間に挿入されている。
【0051】
次に、第2の実施形態の作用について説明する。
手動軸42が初期状態から手動操作されると、押圧面51aが第1面50aに摺接しながらアダプタ40を弁ガイド21に向けて押圧する。すると、アダプタ40が手動ばね40cの付勢力に抗して弁ガイド21に向けて移動し、一対の当接部40bが、弁ガイド21に対して、弁体20の移動方向に対して直交する方向で弁体20を挟んだ両側に当接して、弁ガイド21及び可動鉄心33を付勢ばね34の付勢力に抗して固定鉄心32に向けて押圧する。
【0052】
よって、手動軸42が手動操作されることにより、付勢ばね34の付勢力に抗して可動鉄心33を固定鉄心32に向けて押圧する押圧力が可動鉄心33に作用される。そして、弁ガイド21における固定鉄心32に向けた移動に伴って、弁体20が弁体ばね15の付勢力により移動して流路が切り換えられる。よって、弾性部51の押圧面51aは、付勢ばね34の付勢方向に対して傾斜し、手動軸42の手動操作によって可動鉄心33を固定鉄心32に向けて押圧する押圧力を可動鉄心33に向けて伝達させる伝達面として機能している。
【0053】
さらに、手動軸42が手動操作されている途中で、可動鉄心33が固定鉄心32に当接しても、手動軸42が予め定められた操作量に達するまで弾性部51が弾性変形して手動軸42の手動操作が許容される。そして、手動軸42が予め定められた操作量だけ手動操作されると、接触面51bが第2面50bに乗り上げて第2面50bに面接触する。これにより、付勢ばね34の付勢力が第2面50bに伝達されて接触面51bにより受け止められる。よって、弾性部51の接触面51bは、手動軸42が予め定められた操作量だけ手動操作されたときに付勢ばね34の付勢力が伝達される平坦面になっている。このとき、付勢ばね34の付勢力が押圧面51aには作用しないため、付勢ばね34の付勢力によって、手動軸42が初期状態からの操作方向Y1とは反対方向へ押し戻される力が手動軸42に作用しない。よって、手動軸42が初期状態から予め定められた操作量だけ手動操作されると手動軸42が自己保持(ロック)され、流路が切り換えられた状態が維持される。第2の実施形態によれば、第1の実施形態の(1)及び(2)、(4)〜(9)に記載の効果と同様な効果を得ることができる。
【0054】
(第3の実施形態)
以下、電磁弁を具体化した第3の実施形態を図9及び図10にしたがって説明する。
図9及び図10に示すように、電磁弁60は、非磁性材料製(合成樹脂材料製)のボディ61を備えている。ボディ61は、流路を形成するとともに弁体70を収容する第1ボディ611と、ソレノイド部80を収容する第2ボディ612と、第1ボディ611と第2ボディ612との間に配置される中間ボディ613とを有している。弁体70は、流路を切り換える。ソレノイド部80は弁体70を移動させる。
【0055】
第1ボディ611には、給気ポート61a及び出力ポート61bが形成されている。また、第1ボディ611内には、弁体70が収容される弁室62が形成されている。弁室62は、給気ポート61aに連通するとともに出力ポート61bに連通している。第1ボディ611において、弁室62に臨む端面であり、出力ポート61bの弁室62への開口周囲には、弁体70が着座する弁座61eが形成されている。弁体70は、弁座61eに接離可能になっている。
【0056】
第2ボディ612には磁気フレーム63が埋設されている。ソレノイド部80は、磁気フレーム63の内側に配設されるコイル81と、コイル81の内側に固設される柱状の固定鉄心82と、コイル81へ電力が供給されることで固定鉄心82に吸着される可動鉄心83と、可動鉄心83を固定鉄心82から離間する方向へ付勢する付勢ばね84とを備えている。固定鉄心82は、可動鉄心83よりも第1ボディ611側に配置されており、第2ボディ612内から中間ボディ613内に突出している。固定鉄心82における中間ボディ613側の端面は、第1ボディ611における中間ボディ613側の開口端に突き合わさっている。弁室62は、第1ボディ611と固定鉄心82とにより区画されている。
【0057】
弁室62内には、弁体70の周囲に配置されて弁体70をガイドする有底筒状の弁ガイド71が収容されている。弁ガイド71は、固定鉄心82を貫通して可動鉄心83に当接する柱状の突設部71aを有している。第1ボディ611における弁室62を形成する内面には、規制リング64が取り付けられている。付勢ばね84は、規制リング64と弁ガイド71との間に介在されており、弁ガイド71を介して可動鉄心83を固定鉄心82から離間する方向へ付勢している。
【0058】
弁ガイド71と弁体70との間には、弁体70を弁座61eに向けて付勢する弁体ばね65が介在されている。また、弁ガイド71は、弁体70における弁座61eに向けた移動を規制する規制突起71fを有する。
【0059】
コイル81へ電力が供給されると、コイル81が励磁され、コイル81の周りに、磁気フレーム63、固定鉄心82及び可動鉄心83を通過する磁束が発生する。そして、コイル81の励磁作用によって固定鉄心82に吸引力が発生し、可動鉄心83が付勢ばね84の付勢力に抗して固定鉄心82に吸着され、弁ガイド71が可動鉄心83に押圧されて固定鉄心82から離間する方向へ移動する。そして、弁体70が弁体ばね65の付勢力によって弁座61eに向けて移動し、弁座61eに着座する。これにより、出力ポート61bが閉鎖され、弁室62を介した給気ポート61aと出力ポート61bとの連通が遮断される。
【0060】
コイル81への電力の供給が停止されると、コイル81の励磁作用による固定鉄心82の吸引力が消滅し、可動鉄心83が付勢ばね84の付勢力により固定鉄心82から離間する方向へ移動する。このとき、弁体ばね65が弁体70を弁座61eに向けて付勢するが、規制突起71fにより弁体70における弁座61eに向けた移動が規制され、弁体70が弁座61eから離間した状態が維持される。これにより、出力ポート61bが開放され、弁室62を介した給気ポート61aと出力ポート61bとの連通が許容される。
【0061】
第2ボディ612における第1ボディ611とは反対側の端面には、取付凹部61cが形成されている。取付凹部61cにはアダプタ85が取り付けられている。アダプタ85は、可動鉄心83における固定鉄心82とは反対側の端面に当接している。アダプタ85は、取付凹部61c内において、弁体70の移動方向に移動可能になっている。
【0062】
アダプタ85における可動鉄心83とは反対側の端面には、付勢ばね84の付勢方向に対して傾斜する第1面85aと、第1面85aに連続するとともに付勢ばね84の付勢方向に対して直交する方向に延びる第2面85bとを有する。
【0063】
電磁弁60は、手動操作が可能な手動軸86と、第2ボディ612に取り付けられるカバー87とを備えている。カバー87は、弁体20の移動方向においてアダプタ85と対向配置される対向壁87aを有する。また、手動軸86は、弾性部91を有している。弾性部91は屈曲形成された板状であり、弾性変形可能な樹脂製である。弾性部91は、第1面85aに沿って延びるとともに第1面85aに摺接してアダプタ85を弁ガイド71に向けて押圧する押圧面91aを有している。また、弾性部91は、押圧面91aにおける手動軸86の初期状態からの操作方向Y1とは反対側に位置する端縁911aに連続し、且つ第2面85bに沿って延びるとともに手動軸86が予め定められた操作量だけ手動操作されたときに第2面85bに乗り上げて第2面85bに面接触する接触面91bを有している。弾性部91は、アダプタ85と対向壁87aとの間に挿入されている。
【0064】
カバー87は、手動軸86を弁体70の移動方向に対して直交する方向に往復動可能に保持している。手動軸86は、弾性部91がアダプタ85と対向壁87aとの間に対して出没可能にカバー87により保持されている。
【0065】
次に、第3の実施形態の作用について説明する。
手動軸86が初期状態から手動操作されると、押圧面91aが第1面85aに摺接しながらアダプタ85を弁ガイド71に向けて押圧する。すると、アダプタ85及び可動鉄心83が付勢ばね84の付勢力に抗して固定鉄心82に向けて移動し、弁ガイド71が可動鉄心83に押圧されて固定鉄心82から離間する方向へ移動する。そして、弁体70が弁体ばね65の付勢力によって弁座61eに向けて移動して流路が切り換えられる。
【0066】
よって、手動軸86が手動操作されることにより、付勢ばね84の付勢力に抗して可動鉄心83を固定鉄心82に向けて押圧する押圧力が可動鉄心83に作用される。したがって、弾性部91の押圧面91aは、付勢ばね84の付勢方向に対して傾斜し、手動軸86の手動操作によって可動鉄心83を固定鉄心82に向けて押圧する押圧力を可動鉄心83に向けて伝達させる伝達面として機能している。
【0067】
さらに、手動軸86が手動操作されている途中で、可動鉄心83が固定鉄心82に当接しても、手動軸86が予め定められた操作量に達するまで弾性部91が弾性変形して手動軸86の手動操作が許容される。そして、手動軸86が予め定められた操作量だけ手動操作されると、接触面91bが第2面85bに乗り上げて第2面85bに面接触する。これにより、付勢ばね84の付勢力が第2面85bに伝達されて接触面91bにより受け止められる。よって、弾性部91の接触面91bは、手動軸86が予め定められた操作量だけ手動操作されたときに付勢ばね84の付勢力が伝達される平坦面になっている。このとき、付勢ばね84の付勢力が押圧面91aには作用しないため、付勢ばね84の付勢力によって、手動軸86が初期状態からの操作方向Y1とは反対方向へ押し戻される力が手動軸86に作用しない。よって、手動軸86が初期状態から予め定められた操作量だけ手動操作されると手動軸86が自己保持(ロック)され、流路が切り換えられた状態が維持される。第3の実施形態によれば、第1の実施形態の(1)に記載の効果と同様な効果を得ることができる。
【0068】
(第4の実施形態)
以下、電磁弁を具体化した第4の実施形態を図11図14にしたがって説明する。
図11図14に示すように、手動軸95は、弁体20の移動方向に対して直交する方向に回転軸線が延びるとともに、回転軸線を回転中心として回転可能にカバー43に保持されている。よって、手動軸95の操作方向は、弁体20の移動方向に対して直交する方向に延びる回転軸線を回転中心とした回転方向である。手動軸95は、円柱状の操作部96と、操作部96に連続するとともに弾性部98に一部が対向配置される対向部97とを有している。図11及び図13において拡大して示すように、対向部97は、手動軸95が初期状態のときに弾性部98に対向配置される押圧面97aと、手動軸95が初期状態から予め定められた操作量(回転量)だけ作業者によって手動操作されたときに弾性部98に乗り上げて弾性部98と面接触する接触面97bとを有する。押圧面97aと接触面97bとは、互いに直交する方向に延びている。
【0069】
図12(a)及び図14(a)に示すように、操作部96には、回転規制ピン99が挿入される溝部96aが形成されている。回転規制ピン99は、例えば、カバー43に固定されている。溝部96aは、手動軸95が初期状態のときに回転規制ピン99の外周面に対向配置される第1回転規制面961aと、手動軸95が初期状態から予め定められた操作量だけ作業者によって手動操作されたときに回転規制ピン99の外周面に対向配置される第2回転規制面962aとを有する。第1回転規制面961aと第2回転規制面962aとは、互いに直交する方向に延びている。
【0070】
そして、手動軸95が、図12(b)の状態である初期状態から、図14(b)に示すように予め定められた操作量だけ手動操作されると、第2回転規制面962aが回転規制ピン99の外周面に対向配置される。そして、作業者が手動軸95をさらに手動操作しようとすると、第2回転規制面962aが回転規制ピン99の外周面に接触して、手動軸95の手動操作が規制され、手動軸95の回転が規制される。
【0071】
また、手動軸95が予め定められた操作量だけ手動操作された状態から初期状態の位置に手動軸95を復帰させる際には、手動軸95を初期状態から予め定められた操作量だけ手動操作した操作方向とは反対方向に手動軸95を手動操作する。すると、第1回転規制面961aが回転規制ピン99の外周面に対向配置される。そして、作業者が手動軸95をさらに手動操作しようとすると、第1回転規制面961aが回転規制ピン99の外周面に接触して、手動軸95の手動操作が規制され、手動軸95の回転が規制される。この実施形態では、手動軸95の回転は、回転軸線を回転中心とした90度の範囲で行われる。
【0072】
手動軸95が初期状態から手動操作されると、押圧面97aが弾性部98を押圧する。すると、アダプタ40が手動ばね40cの付勢力に抗して弁ガイド21に向けて移動し、一対の当接部40bが、弁ガイド21に対して、弁体20の移動方向に対して直交する方向で弁体20を挟んだ両側に当接して、弁ガイド21及び可動鉄心33を付勢ばね34の付勢力に抗して固定鉄心32に向けて押圧する。そして、弁ガイド21における固定鉄心32に向けた移動に伴って、弁体20が弁体ばね15の付勢力により移動して流路が切り換えられる。
【0073】
手動軸95が手動操作されている途中で、可動鉄心33が固定鉄心32に当接しても、手動軸95が予め定められた操作量に達するまで弾性部98が弾性変形して手動軸95の手動操作が許容される。そして、手動軸95が予め定められた操作量だけ手動操作されると、接触面97bが弾性部98に乗り上げて弾性部98に面接触する。これにより、付勢ばね34の付勢力が接触面97bに伝達されて接触面97bにより受け止められ、付勢ばね34の付勢力によって、手動軸95が初期状態からの操作方向とは反対方向へ押し戻される力が手動軸95に作用し難くなっている。よって、手動軸95が初期状態から予め定められた操作量だけ手動操作されると手動軸95が自己保持(ロック)され、流路が切り換えられた状態が維持される。第4の実施形態によれば、第1の実施形態の(1)に記載の効果と同様な効果を得ることができる。
【0074】
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・ 第1及び第2の実施形態において、当接部40bの数は、一つであってもよいし、三つ以上であってもよい。例えば、当接部40bが三つ以上の場合、複数の当接部40bの少なくとも二つが、弁ガイド21に対して、弁体20の移動方向に対して直交する方向で弁体20を挟んだ両側に当接可能になっていればよい。
【0075】
・ 第1及び第2の実施形態において、例えば、手動軸42が初期状態である場合に、一対の当接部40bが弁ガイド21に当接していてもよい。
・ 上記各実施形態において、手動軸42,86の操作方向が、例えば、弁体20の移動方向に沿った方向を回転中心とした回転方向であってもよい。
【符号の説明】
【0076】
10,60…電磁弁、11,61…ボディ、12…プラグ、12e…弁座、13…弁室、20,70…弁体、21,71…弁ガイド、30,80…ソレノイド部、31,81…コイル、32,82…固定鉄心、33,83…可動鉄心、34,84…付勢ばね、40,85…アダプタ、40b…当接部、40c…手動ばね、41,51,91,98…弾性部、41c…伝達面、41d…平坦面、42,86,95…手動軸、42a…押圧面、42b…接触面、43…カバー、51a,91a…伝達面として機能する押圧面、51b,91b…平坦面である接触面。
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