【解決手段】軸方向に延びる被検査孔81を有する被検査物8を載置する載置部と、載置部22に載置された被検査物8の被検査孔81の内部に配置されるミラー部材30と、被検査孔81の軸方向一方側に配置される光照射部および撮像部50とを有する。ミラー部材30は、第1反射面および第2反射面を有する。第1反射面と第2反射面とのなす角は鈍角である。光照射部は、第1反射面に向かって軸方向一方側から他方側へと指向性を有する照射光を照射する。第1反射面は、照射光を軸方向に対して垂直な方向へ反射する。第2反射面は、照射光が照射された被検査孔81の内面の映像を、軸方向に対して垂直な方向から軸方向一方側へと反射する。撮像部50は、第2反射面により反射された映像を撮像する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、本願では、ミラー部材の中心軸と平行な方向を「軸方向」、中心軸に直交する方向を「径方向」、中心軸を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」、とそれぞれ称する。
【0012】
また、本願では、「垂直」は「略垂直」を、「平行」は「略平行」を、「同一」は「略同一」をそれぞれ含む。
【0013】
<1.第1実施形態>
<1−1.内面検査装置の構成>
図1は、本発明の第1実施形態に係る内面検査装置1の斜視図である。
図1に示すように、内面検査装置1は、支持部20、ミラー部材30、光源40、撮像部50、操作部60および制御部10を有する。
【0014】
この内面検査装置1は、ミラー部材30の少なくとも一部を、被検査物8の有する被検査孔81の内部に配置して、被検査孔81をなす被検査物8の内面の状態を検査する装置である。内面検査装置1は、例えば、電気機器や自動車などの種々の装置を構成する、筒状の部材の内面を検査する。
【0015】
支持部20は、本体部21と、ステージ22と、ステージ駆動部23とを有する。本体部21は、ミラー部材30、光源40および撮像部50のそれぞれを支持する。本実施形態では、ミラー部材30は、本体部21に対して固定されている。また、光源40および撮像部50は、本体部21に対して角度および位置を調整可能に固定されている。
【0016】
ステージ22は、被検査物8を載置するための載置部である。ステージ22の中央には、上下に貫通する貫通孔221が設けられる。貫通孔221には、ミラー部材30が挿入される。ステージ22は、本体部21に対して移動可能に支持される。
【0017】
ステージ駆動部23は、ステージ22を軸方向に移動させる移動機構を有する。移動機構を動作させると、ステージ22に載置された被検査物8とミラー部材30とが軸方向に相対移動する。これにより、被検査孔81の内面の被照射部80(
図2参照)を軸方向に移動できる。なお、被照射部80とは、光源40からの照射光がミラー部材30を介して照射される部位である。
【0018】
なお、本実施形態では、検査時において、ミラー部材30、光源40および撮像部50の位置が固定されている。このため、ステージ駆動部23は、ミラー部材30と、光源40と、撮像部50との相対位置を同一に保ったまま、被検査物8と、ミラー部材30、光源40および撮像部50とを軸方向に相対移動させる。これにより、光源40からミラー部材30の後述する第1反射面31、被検査孔81の内面、および、ミラー部材30の後述する第2反射面32を介して撮像部50へ至る光路の相対的な位置関係を変えることなく、被検査孔81の内面の被照射部80を軸方向に移動できる。
【0019】
また、ステージ駆動部23は、ステージ22を後述する中心軸9を中心として回転させる回転機構をさらに有する。回転機構を動作させると、軸方向に延びる回転軸を中心として、ステージ22上に載置された被検査物8が回転する。これにより、被検査孔81の内面の被照射部80を周方向に移動できる。
【0020】
図1に示すように、被検査物8は、被検査孔81が中心軸9に沿って延びるように、ステージ22上に載置される。なお、本実施形態のステージ22には、被検査物8を固定する固定部材(図示せず)が備えられている。
【0021】
なお、
図1中に示すように、本実施形態では、中心軸9に沿う方向をz方向とする。また、中心軸9に直交する方向であって、互いに直交する2方向をx方向およびy方向とする。
【0022】
ミラー部材30は、中心軸9に沿って延びる略円柱状の部材である。後述する検査工程では、
図1に示すように、ミラー部材30の少なくとも軸方向一方側の端面が、ステージ22に載置された被検査物8の被検査孔81の内部に配置される。
【0023】
図2は、検査時におけるミラー部材30の周辺の様子を示した斜視図である。
図3は、ミラー部材30のx方向から見た側面図である。
図4は、ミラー部材30のA−A’断面における断面図である。
【0024】
図2に示すように、ミラー部材30の軸方向(z方向)一方側の端面は、第1反射面31、第2反射面32および中央境界線33を有する。ミラー部材30の軸方向一方側の端面は、軸方向(z方向)およびy方向に対しておおよそ45°傾斜している。第1反射面31および第2反射面32を構成するミラー部材30の表面は研磨され、鏡面加工されている。
【0025】
中央境界線33は、第1反射面31と第2反射面32との境界をなす線である。
図2に示すように、本実施形態の中央境界線33は、軸方向であるz方向に対して、約45°傾斜している。すなわち、中央境界線33は、軸方向に対して垂直なxy平面に対して、約45°傾斜している。なお、本実施形態では、中央境界線33は、y方向に対して、約45°傾斜している。
【0026】
ここで、ミラー部材30の軸方向一方側の端面において、中央境界線33に直交する方向を幅方向と称する。第1反射面31は、中央境界線33から幅方向一方側へ平面状に拡がる。また、第2反射面32は、中央境界線33から幅方向他方側へ平面状に拡がる。
【0027】
図4に示すように、第1反射面31と第2反射面32とは、V字状に配置されている。すなわち、第1反射面31と第2反射面32とは、ミラー部材30の軸方向一方側の端面において、V字状の溝を形成する。第1反射面31と第2反射面32とのなす角は、鈍角である。なお、鈍角とは、90°よりも大きく、180°よりも小さい角度である。このように、第1反射面31と第2反射面32とをV字状に配置することにより、1つのミラー部材30に効率よく第1反射面31と第2反射面32とを配置できる。
【0028】
本実施形態では、第1反射面31と第2反射面32とは、中央境界線33を含む平面に関して面対称である。すなわち、第1反射面31と第2反射面32とは、軸方向(z方向)に延びる面に関して面対称である。
【0029】
光源40は、指向性を有する照射光を照射する光照射部である。光源40は、被検査物8の被検査孔81の軸方向一方側に配置される。本実施形態の光源40は、レーザー光を照射するレーザー発振器である。
【0030】
撮像部50は、被検査物8の被検査孔81の軸方向一方側に配置される。本実施形態の撮像部50は、レンズを有するCCDカメラである。
【0031】
操作部60は、モニタ61および入力部62を有する。モニタ61は、内面検査装置1の各処理に関わる種々の情報(例えば、ステージ22の位置情報、撮像部50の撮像した映像等)を表示するための部位である。モニタ61には、例えば、液晶ディスプレイ等の表示装置が用いられる。
【0032】
入力部62は、制御部10に対して種々の指令を入力するための部位である。内面検査装置1の作業者は、モニタ61を確認しながら、入力部62を操作することができる。入力部62には、例えば、キーボードやマウスが用いられる。なお、操作部60として、タッチパネル式のディスプレイ等の、モニタ61と入力部62とが一体となった装置が用いられてもよい。
【0033】
制御部10は、内面検査装置1の各部を制御する。
図1に示すように、制御部10は、ステージ駆動部23と、光源40と、撮像部50と、操作部60のモニタ61および入力部62と電気的に接続されている。本実施形態の制御部10は、パーソナルコンピュータにより構成される。なお、制御部10は、電子回路等の他の構成であってもよい。
【0034】
<1−2.検査工程について>
次に、内面検査装置1を用いた検査工程について説明する。
【0035】
本実施形態では、被検査物8がステージ22上に載置された後、作業者が入力部62を介して制御部10に対して初期設定指令を入力する。これにより、制御部10からステージ駆動部23へ駆動指令信号が入力される。ステージ駆動部23は、当該駆動指令信号に従って、ステージ22を初期位置へと配置する。
【0036】
このとき、制御部10からの指令信号によって光源40および撮像部50の角度や軸方向位置を調整してもよい。具体的には、初期設定指令の入力後、制御部10からこれらの位置を調節する調節機構に対して指令信号が入力されて、光源40および撮像部50の角度や軸方向位置を調整してもよい。
【0037】
初期設定の完了後、作業者が入力部62を介して制御部10に対して検査開始指令を入力することにより、または、自動的に、制御部10は、検査を開始する。検査が開始されると、制御部10は、光源40による照射光の照射と、撮像部50による被照射部80の映像の撮像とを開始する。また、制御部10は、ステージ駆動部23によるステージ22の軸方向の移動および回転を開始する。これにより、被検査孔81の内面のうち、被照射部80となる部位を移動させていく。
【0038】
続いて、検査時における照射光の光軸および被照射部80の映像が撮像部50へ到達する光路について説明する。
図5は、検査時におけるミラー部材30の周辺の様子をx方向から見た側面図である。
図6は、検査時におけるミラー部材30の周辺の様子を軸方向一方側かつy方向から見た斜視図である。
【0039】
図1、
図2、
図5および
図6に示すように、光源40は、第1反射面31に向かって軸方向一方側から軸方向他方側へと照射光L1を照射する。なお、各図中において、照射光L1と、後述する照射光L2とは、実線で示されている。
【0040】
本実施形態では、
図5に示すように、光源40から照射された照射光L1は、x方向に見て、軸方向(z方向)に対して平行に進行する。すなわち、照射光L1の光軸は、xz平面に対して平行である。一方、
図6に示すように、照射光L1の光軸は、軸方向に対してx方向に傾斜している。なお、本実施形態では、照射光L1の光軸は、軸方向に対する角度が約12°である。このように、照射光L1の進む方向の軸方向に対する角度は、15°以下であることが望ましい。
【0041】
第1反射面31は、照射光L1を軸方向に対して垂直な方向へ反射する。ここで、照射光L1が第1反射面31において反射された光を、照射光L2と称する。照射光L2の進む方向は、軸方向に対して垂直である。すなわち、照射光L2の光軸は、xy平面に対して平行である。そして、照射光L2は、被検査物8の被検査孔81の内面の一部である被照射部80を照射する。
【0042】
第2反射面32は、照射光L2が照射された被検査孔81の内面の映像を、軸方向に対して垂直な方向から軸方向一方側へと反射する。そして、撮像部50が、第2反射面32において反射された当該映像を撮像する。
【0043】
ここで、被照射部80の映像が撮像部50へ到達するまでの光路のうち、被照射部80から第2反射面32に至る部分を光路L3と称し、第2反射面32から撮像部50へ至る部分を光路L4と称する。光路L3および光路L4は、各図中において、二点鎖線で示されている。光路L3は、軸方向に対して垂直である。すなわち、光路L3は、xy平面に対して平行である。光路L4は、軸方向他方側から軸方向一方側へと進む。
【0044】
本実施形態では、被照射部80の周方向の中央と、軸方向に延び、かつ、中央境界線33と重なる平面とが、交差するように、照射光L1の角度が調整されている。これにより、照射光L1,L2と、光路L3,L4とが、軸方向に延び、かつ、中央境界線33と重なる平面に対して対称に配置される。その結果、
図5に示すように、x方向に見て、照射光L1と光路L4とが重なる。また、x方向に見て、照射光L2と光路L3とが重なる。
【0045】
光路L4は、照射光L1の光軸と同様に、x方向に見て、軸方向に対して平行である。すなわち、光路L4は、xz平面に対して平行である。また、
図6に示すように、光路L4は、軸方向に対して、x方向に傾斜している。なお、光路L4は、軸方向に対する角度が12°以下であることが望ましい。
【0046】
このように、この内面検査装置1では、第1反射面31を介した被検査孔81の内面への照射光L2の光軸と、被照射部80の映像が撮像部50へ到達するまでの光路のうち、被照射部から第2反射面32までの光路L3とが、軸方向に対して垂直である。これにより、被検査孔81の内面が、ネジ溝等の凹凸を有している場合であっても、陰の発生を抑制しつつ内面の様子を適切に撮像できる。
【0047】
図4に示すように、本実施形態では、第1反射面31と第2反射面32とのなす角の角度は、約172°である。第1反射面31と第2反射面32とのなす角が小さすぎると、ミラー部材30と被検査孔81の内面との距離を小さくする必要が生じる。したがって、径が大きい被検査孔81の検査を行うことが困難となる。一方、第1反射面31と第2反射面32とのなす角がほぼ180°となると、照射光L1の反射と被照射部80の映像の反射とが別個の反射面31,32で行うことが困難となる。このため、第1反射面31と第2反射面32とのなす角の角度は、160°以上かつ178°以下であることが好ましい。また、第1反射面31と第2反射面32とのなす角の角度は、172°であることがより好ましい。
【0048】
<2.変形例>
以上、本発明の例示的な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
【0049】
図7は、一変形例に係る内面検査装置の、検査時におけるミラー部材30Aの周辺の様子を示した斜視図である。
図8は、
図7の例の内面検査装置の、検査時におけるミラー部材30Aの周辺の様子を示した斜視図である。
【0050】
図7および
図8の例の内面検査装置では、光源(図示せず)が、スリット光を照射するスリット光照射部である。光源がスリット光照射部であることにより、光源がレーザー光である場合と比べて、被照射部80Aの大きさを大きくすることができる。
【0051】
この光源は、長手方向と、長手方向に直交する短手方向とを有する略長方形状のスリット光を照射する。このため、光源から第1反射面31Aへと向かう照射光L1Aの、第1反射面31Aにおける照射範囲310Aは、略長方形となる。同様に、被照射部80Aも略長方形となる。
図7および
図8の例では、照射範囲310Aの長手方向は、ミラー部材30Aの中央境界線33Aと平行である。これにより、被照射部80Aの長手方向が、軸方向と一致する。
【0052】
また、
図7および
図8の例では、光源から第1反射面31Aに入射される照射光L1Aの進む方向は、軸方向に平行である。このように、第1反射面に入射される照射光の光軸の方向は、軸方向に平行であってもよいし、軸方向に対して傾斜していてもよい。
【0053】
図9は、他の変形例に係る内面検査装置1Bの概略図である。この内面検査装置1Bは、追加反射部材41Bをさらに有する。
【0054】
図9の例の内面検査装置1Bでは、光源40Bから照射された照射光L0Bが追加反射部材41Bへと入射される。そして、照射光L0Bが追加反射部材41Bにおいて反射した照射光L1Bが第1反射面31Bへと入射される。すなわち、光源40Bから照射された照射光が、第1反射面31Bへ直接入射されず、追加反射部材41Bを介して入射される。
【0055】
上記の実施形態では、光源からの照射光が直接第1反射面へと入射されたが、本発明はこの限りではない。
図9の例のように、光源からの照射光が直接第1反射面へと入射されなくてもよい。
【0056】
また、上記の実施形態では、被照射部の映像が第2反射部のみを介して撮像部へと到達するが、本発明はこの限りではない。被照射部の映像が、第2反射部と、追加反射部材とを介して撮像部へと到達してもよい。
【0057】
また、上記の実施形態では、ミラー部材の位置が固定され、移動機構であるステージ駆動部により、被検査物を載置するステージが移動させられた。しかしながら、本発明はこれに限られない。移動機構は、被検査物とミラー部材とを軸方向に相対移動させるものであればよい。
【0058】
このため、被検査物が載置される載置部の位置が固定され、移動機構がミラー部材を軸方向に移動させてもよい。なお、被検査物が載置される載置部の位置が固定され、移動機構がミラー部材、光源および撮像部が固定された部材を移動させてもよい。このようにすれば、ミラー部材と、光源と、撮像部とは、その相対的位置が固定される。また、移動機構は、被検査物が載置される載置部とミラー部材との双方を軸方向に移動させてもよい。
【0059】
また、上記の実施形態では、単独のミラー部材が第1反射面および第2反射面の双方を有していたが、本発明はこの限りではない。ミラー部材は、第1反射面を有する第1ミラー部材と、第2反射面を有する第2ミラー部材とを含んでもよい。
【0060】
その他、内面検査装置の細部の形状については、本願の各図面と相違していてもよい。また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。