【解決手段】スペクトラムアナライザ1は、周波数掃引されるローカル信号を発生するローカル信号発生装置20と、ローカル信号と解析対象の入力信号とをミキシングして所定の中間周波数帯の信号成分を抽出するミキサ11と、ローカル信号が周波数掃引されている間にミキサ11から出力される信号に対して予め定められた分析対象周波数範囲のスペクトラム波形を求める信号処理部17と、を備え、ローカル信号発生装置20は、PFD22の出力信号を可変のループ帯域幅で通過させてVCO24に出力するLF23を備え、制御部30は、分析対象周波数範囲の掃引幅及び掃引時間に基づいてLF23のループ帯域幅を設定するLBW設定部31を備え、LBW設定部31は、予め定められた掃引時間を所定時間長くすることによりループ帯域幅を狭くする構成を有する。
前記信号成分抽出手段と前記信号処理手段との間に前記信号成分抽出手段から出力される信号に対して予め定められた分解能帯域幅の帯域制限処理を行う分解能帯域幅制限手段(12)をさらに備え、
前記ループ帯域幅設定手段は、前記分解能帯域幅を維持した状態で前記ループ帯域幅を狭くするものであることを特徴とする請求項1に記載の信号解析装置。
前記分解能帯域幅制限手段と前記信号処理手段との間に前記分解能帯域幅制限手段から出力される信号に対して予め定められたビデオ帯域幅の帯域制限処理を行うビデオ帯域幅制限手段(14)をさらに備え、
前記ループ帯域幅設定手段は、前記ビデオ帯域幅が予め定められた値よりも狭く設定されたことを条件に前記ループ帯域幅を狭くするものであることを特徴とする請求項2に記載の信号解析装置。
前記ループ帯域幅設定手段は、前記ビデオ帯域幅が前記分解能帯域幅よりも狭く設定されたことを条件に前記ループ帯域幅を狭くするものであることを特徴とする請求項3に記載の信号解析装置。
前記ループ帯域幅設定手段は、前記分析対象周波数範囲の前記掃引幅及び前記掃引時間と、前記ループ帯域幅との関係を示すテーブルを用いて前記ループ帯域幅を狭くするものであることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の信号解析装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1には、分解能帯域幅については記載されているが、一般的なスペクトラムアナライザで設定されるビデオ帯域幅については記載されていない。そのため、特許文献1に記載のものでは、ビデオ帯域幅の設定値によっては適切なループ帯域幅が設定されない場合があり、その場合には位相雑音の低減化が図れないこととなる。
【0007】
本発明は、前述の事情に鑑みてなされたもので、位相雑音の低減化を図ることができる信号解析装置及び信号解析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係る信号解析装置は、周波数掃引されるローカル信号を発生するローカル信号発生手段(20)と、前記ローカル信号と解析対象の入力信号とをミキシングして所定の中間周波数帯の信号成分を抽出する信号成分抽出手段(11)と、前記ローカル信号が周波数掃引されている間に前記信号成分抽出手段から出力される信号に対して予め定められた分析対象周波数範囲のスペクトラム波形を求める信号処理手段(17)と、を備え、前記ローカル信号発生手段は、基準信号を発生する基準信号発生器(21)と、入力電圧に応じた周波数の信号を出力する電圧制御発振器(24)と、前記電圧制御発振器の出力信号を分周する分周器(25)と、前記分周器の出力信号と前記基準信号とを比較して位相誤差信号を出力する位相周波数比較器(22)と、前記位相周波数比較器の出力信号を可変のループ帯域幅で通過させて前記電圧制御発振器に出力するフィルタ手段(23)と、を備え、前記分析対象周波数範囲の掃引幅及び掃引時間に基づいて前記ループ帯域幅を設定するループ帯域幅設定手段(31)を備え、前記ループ帯域幅設定手段は、予め定められた掃引時間を所定時間長くすることにより前記ループ帯域幅を狭くするものである構成を有している。
【0009】
この構成により、本発明の請求項1に係る信号解析装置は、掃引時間を所定時間長くすることによりフィルタ手段のループ帯域幅を狭くするので、位相雑音の低減化を図ることができる。
【0010】
本発明の請求項2に係る信号解析装置は、前記信号成分抽出手段と前記信号処理手段との間に前記信号成分抽出手段から出力される信号に対して予め定められた分解能帯域幅の帯域制限処理を行う分解能帯域幅制限手段(12)をさらに備え、前記ループ帯域幅設定手段は、前記分解能帯域幅を維持した状態で前記ループ帯域幅を狭くするものである構成を有している。
【0011】
この構成により、本発明の請求項2に係る信号解析装置は、分解能帯域幅を維持しながら掃引時間を所定時間長くすることによりフィルタ手段のループ帯域幅を狭くするので、位相雑音の低減化を図ることができる。
【0012】
本発明の請求項3に係る信号解析装置は、前記分解能帯域幅制限手段と前記信号処理手段との間に前記分解能帯域幅制限手段から出力される信号に対して予め定められたビデオ帯域幅の帯域制限処理を行うビデオ帯域幅制限手段(14)をさらに備え、前記ループ帯域幅設定手段は、前記ビデオ帯域幅が予め定められた値よりも狭く設定されたことを条件に前記ループ帯域幅を狭くするものである構成を有している。
【0013】
この構成により、本発明の請求項3に係る信号解析装置は、ビデオ帯域幅が予め定められた値よりも狭く設定されたことを条件にループ帯域幅を狭くするので、位相雑音の低減化を図ることができる。
【0014】
本発明の請求項4に係る信号解析装置は、前記ループ帯域幅設定手段は、前記ビデオ帯域幅が前記分解能帯域幅よりも狭く設定されたことを条件に前記ループ帯域幅を狭くするものである構成を有している。
【0015】
この構成により、本発明の請求項4に係る信号解析装置は、ビデオ帯域幅が分解能帯域幅よりも狭く設定されたことを条件にループ帯域幅を狭くするので、位相雑音の低減化を図ることができる。
【0016】
本発明の請求項5に係る信号解析装置は、前記ループ帯域幅設定手段は、前記分析対象周波数範囲の前記掃引幅及び前記掃引時間と、前記ループ帯域幅との関係を示すテーブルを用いて前記ループ帯域幅を狭くするものである構成を有している。
【0017】
この構成により、本発明の請求項5に係る信号解析装置は、分析対象周波数範囲の掃引幅及び掃引時間と、ループ帯域幅との関係を示すテーブルを用いてループ帯域幅を狭くするので、位相雑音の低減化を図ることができる。
【0018】
本発明の請求項6に係る信号解析方法は、請求項1に記載の信号解析装置を用いた信号解析方法であって、予め定められた掃引時間を所定時間長くすることにより前記フィルタ手段の前記ループ帯域幅を狭くする構成を有している。
【0019】
この構成により、本発明の請求項6に係る信号解析方法は、掃引時間を所定時間長くすることによりフィルタ手段のループ帯域幅を狭くするので、位相雑音の低減化を図ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、位相雑音の低減化を図ることができるという効果を有する信号解析装置及び信号解析方法を提供することができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明に係る信号解析装置をスペクトラムアナライザに適用した例を挙げて説明する。
【0023】
まず、本発明に係る信号解析装置の本実施形態における構成について説明する。
【0024】
図1に示すように、本実施形態におけるスペクトラムアナライザ1は、ミキサ11、RBW(Resolution Band Width:分解能帯域幅)フィルタ12、対数変換部13、VBW(Video Band Width:ビデオ帯域幅)フィルタ14、検波器15、ADC(アナログデジタルコンバータ)16、信号処理部17、表示部18、ローカル信号発生装置20、制御部30、操作部40を備えている。このスペクトラムアナライザ1は、信号解析装置の一例である。
【0025】
スペクトラムアナライザ1は、CPU、ROM、RAM、各種インタフェースが接続される入出力回路等を備えたマイクロコンピュータを含む。このスペクトラムアナライザ1は、ROMに予め格納された制御プログラムを実行させることにより、マイクロコンピュータを、入力信号を解析する解析装置として機能させるようになっている。
【0026】
ミキサ11は、ローカル信号発生装置20からのローカル信号と解析対象の入力信号とをミキシングして所定の中間周波数帯の信号成分を抽出し、RBWフィルタ12に出力するようになっている。このミキサ11は、信号成分抽出手段の一例である。
【0027】
RBWフィルタ12は、例えばアナログのバンドパスフィルタで構成され、遮断周波数で定まる分解能帯域幅を有する。このRBWフィルタ12は、ミキサ11から出力される信号に対して予め定められた分解能帯域幅の帯域制限処理を行って不要な周波数成分を除き、必要な中間周波数信号のみを選択して対数変換部13に出力するようになっている。ミキサ11から出力される中間周波数信号の周波数は掃引動作に同期して変化するので、RBWフィルタ12から1掃引時間(掃引期間)内において時間経過と共に出力される出力信号は、中間周波数信号に変換された入力信号の各周波数成分における時系列波形となる。なお、RBWフィルタ12は、分解能帯域幅制限手段の一例である。
【0028】
対数変換部13は、RBWフィルタ12の出力信号レベルをデシベル単位に変換してVBWフィルタ14に出力するようになっている。
【0029】
VBWフィルタ14は、例えばアナログのローパスフィルタで構成され、遮断周波数で定まるビデオ帯域幅を有する。このVBWフィルタ14は、対数変換部13から出力される信号に対して予め定められたビデオ帯域幅の帯域制限処理を行って、表示部18に最終的に表示される周波数スペクトラム波形の高周波成分(雑音成分)を除去した信号を検波器15に出力するようになっている。なお、VBWフィルタ14は、ビデオ帯域幅制限手段の一例である。
【0030】
検波器15は、VBWフィルタ14から出力された信号を検波しADC16に出力するようになっている。この検波器15では、VBWフィルタ14から出力されたアナログの周波数スペクトラム波形を示す信号における各時間軸位置のピーク値を検出し、包絡線検波された状態の最終的な周波数スペクトラム波形を得る。そして、掃引期間内に検波された信号は、掃引された周波数における時系列波形の大きさを示す。したがって、横軸を周波数、縦軸を振幅とすれば、周波数スペクトラム波形となる。
【0031】
ADC16は、検波器15から入力した周波数スペクトラム波形を示す信号をデジタルデータに変換し信号処理部17に出力するようになっている。
【0032】
信号処理部17は、ADC16からデジタルデータを入力し、ローカル信号が周波数掃引されている間にミキサ11から出力される信号に対して予め定められた分析対象周波数範囲のスペクトラム波形を求めるようになっている。また、信号処理部17は、取得した周波数スペクトラム波形のデータを表示部18に出力するようになっている。なお、信号処理部17は、信号処理手段の一例である。
【0033】
表示部18は、信号処理部17が出力する周波数スペクトラム波形のデータを、周波数ドメイン(横軸を周波数、縦軸を振幅)で表示するようになっている。
【0034】
ローカル信号発生装置20は、位相同期ループ(Phase Locked Loop:PLL)回路を備え、発振器21、位相周波数比較器(Phase Frequency Detector:PFD)22、LF(ループフィルタ)23、電圧制御発振器(Voltage Controlled Oscillator:VCO)24、分周器25を備えている。このローカル信号発生装置20は、ローカル信号発生手段の一例である。
【0035】
発振器21は、制御部30から周波数及び振幅等を示す制御信号を入力し、この制御信号に基づいて基準信号を生成してPFD22に出力するようになっている。この発振器21は、基準信号発生器の一例である。
【0036】
PFD22は、発振器21が出力する基準信号と分周器25の出力信号とを比較して位相誤差信号を出力するようになっている。このPFD22は、位相周波数比較器の一例である。
【0037】
LF23は、可変の遮断周波数で定まる可変のループ帯域幅を有し、PFD22の出力信号を可変のループ帯域幅で通過させてVCO24に出力するようになっている。このLF23のループ帯域幅は、後述するLBW設定部31によって最適値が設定されるようになっている。なお、LF23は、フィルタ手段の一例である。
【0038】
VCO24は、LF23からの入力電圧に応じた周波数の信号をミキサ11及び分周器25に出力するようになっている。このVCO24は、電圧制御発振器の一例である。
【0039】
分周器25は、制御部30から分周比を示す制御信号を入力し、この制御信号に基づいてVCO24の出力信号を分周するようになっている。
【0040】
制御部30は、LBW(Loop Band Width:ループ帯域幅)設定部31、RBW設定部32、VBW設定部33、掃引時間設定部34、周波数スパン設定部35を備えている。
【0041】
LBW設定部31は、LF23の高域遮断周波数を任意の値に設定可能であって、LF23のループ帯域幅を可変できるようになっている。このLBW設定部31は、ループ帯域幅設定手段の一例である。
【0042】
RBW設定部32は、測定者が操作部40を操作して入力した分解能帯域幅をRBWフィルタ12に設定可能になっている。また、RBW設定部32は、周波数スパンに応じて分解能帯域幅を自動的にRBWフィルタ12に設定することもできるようになっている。
【0043】
VBW設定部33は、測定者が操作部40を操作して入力したビデオ帯域幅をVBWフィルタ14に設定可能になっている。ビデオ帯域幅を設定することにより、変動の激しい信号にアベレージング効果をもたらすことで平滑化することができる。
【0044】
掃引時間設定部34は、掃引時間を設定する機能を有している。分解能帯域幅及びビデオ帯域幅を狭くするほど、RBWフィルタ12及びVBWフィルタ14の応答速度が遅くなるため、掃引時間を遅くする必要がある。そのため、掃引時間設定部34は、設定されている周波数スパンも考慮して、適切な掃引時間を自動的に選択して設定できるようになっている。ただし、測定者が操作部40を操作して入力した任意の掃引時間を設定することも可能になっている。なお、掃引時間は、周波数スパンに比例し、分解能帯域幅及びビデオ帯域幅に反比例する。
【0045】
周波数スパン設定部35は、測定者が操作部40を操作して入力した周波数スパンを設定可能になっている。
【0046】
操作部40は、各種測定条件を設定するための設定画面を表示するディスプレイ、キーボード、ダイヤル又はマウスのような入力デバイス、これらを制御する制御回路等を備えている。測定者は、操作部40を操作し、分解能帯域幅、ビデオ帯域幅、掃引時間、周波数スパン等のデータを入力可能になっている。
【0047】
次に、ループフィルタ(LF23を含む)の一般的な特性について
図2を用いて説明する。
図2(a)は、一例として、ループフィルタのループ帯域幅が、20kHz、50kHz、100kHz、300kHzの場合において、ループ帯域幅と掃引速度との関係を示している。
図2(b)は、オフセット周波数と位相雑音との関係を示している。なお、オフセット周波数は、基準となる信号周波数からどの程度周波数がずれているかを表す値である。
【0048】
図2(a)に示すように、ループフィルタは、ループ帯域幅が広くなるほど高速掃引が可能となる。一方、
図2(b)に示すように、ループフィルタは、ループ帯域幅が広くなるほど、同じオフセット周波数での位相雑音が大きくなる。すなわち、背景技術で述べたように、周波数掃引のための周波数切り換え時間と位相雑音とはトレードオフの関係にある。
【0049】
次に、
図3に基づいて、ループフィルタのループ帯域幅を設定する手法について、従来と本実施形態とを対比して説明する。
【0050】
まず、従来の手法について
図3(a)を用いて説明する。
図3(a)には、横軸を分解能帯域幅、縦軸を周波数スパンとして、選択可能なループ帯域幅の領域が示されている。分解能帯域幅が大きくなるほど、かつ、周波数スパンが広くなるほど高速掃引が可能となるので、ループ帯域幅の領域は図示のようになる。
【0051】
従来は、分解能帯域幅と周波数スパンとからループ帯域幅を設定していた。具体的には、従来は、
図3(a)に示すように、分解能帯域幅RBW1及び周波数スパンSPAN1が設定されている場合には、それらの交点51からループ帯域幅は50kHzに設定されていた。すなわち、従来は、ループ帯域幅50kHzよりも位相雑音が低くなるループ帯域幅20kHzを選択することはできなかった。
【0052】
次に、本実施形態においてLBW設定部31がループ帯域幅を設定する手法について
図3(b)を用いて説明する。
図3(b)は、分析対象周波数範囲の周波数スパン及び掃引時間と、ループ帯域幅との関係を示すテーブル(以下「ループ帯域幅テーブル」という)の一例である。具体的には、
図3(b)には、横軸を掃引時間、縦軸を周波数スパンとして、選択可能なループ帯域幅の領域が示されている。掃引時間が短くなるほど、かつ、周波数スパンが広くなるほど高速掃引が可能となるので、ループ帯域幅の領域は図示のようになる。
【0053】
本実施形態におけるLBW設定部31は、
図3(b)に示したループ帯域幅テーブルのデータを有し、周波数スパン及び掃引時間に基づいてLF23のループ帯域幅を選択できるようになっている。また、LBW設定部31は、現在設定されている分解能帯域幅を変更しないで、予め定められた掃引時間と周波数スパンとからLF23のループ帯域幅を任意に選択できるようになっている。
【0054】
具体的には、LBW設定部31は、掃引時間SWT1及び周波数スパンSPAN1が設定されている場合には、それらの交点61からループ帯域幅50kHzが選択可能となる。ここで、例えばビデオ帯域幅が予め定められた値よりも狭くなる方向に変更された場合には、LBW設定部31は、現在設定されている分解能帯域幅及び周波数スパンを維持したまま、ループ帯域幅20kHzを選択するよう掃引時間SWT1を所定時間長くして交点62とし、掃引時間SWT2とする。その結果、LBW設定部31は、LF23のループ帯域幅を50kHzよりも狭い20kHzに設定することができる。したがって、LBW設定部31は、より位相雑音の低いループ帯域幅を選択できるので、位相雑音の低減化を図ることができる。換言すれば、ビデオ帯域幅がより狭くなる方向に変更された場合には掃引時間が遅くなるので、従来のようにあえて広いループ帯域幅を維持する必要はなく、より狭いループ帯域幅にするのが好ましいということである。
【0055】
前述のLBW設定部31の機能により、交点61においてビデオ帯域幅がより狭く変更された場合、特に、ビデオ帯域幅が分解能帯域幅よりも狭く変更された場合には大きな効果が得られる。
図4を用いて具体的に説明する。
【0056】
図4は、ループ帯域幅の設定方法の違いによる位相雑音の差を、従来と本実施形態とで比較した実験データを示している。
図4に示した例では、センタ周波数(Center)は100MHz、周波数スパン(Span)は50MHz、分解能帯域幅(RBW)は300kHz、ビデオ帯域幅(VBW)は300Hzである。
【0057】
図4において、分解能帯域幅と周波数スパンとからループ帯域幅を設定する従来方式により得られたスペクトラム71(破線)と、本実施形態における設定方法により得られたスペクトラム72(実線)とが示されている。
【0058】
図4に示すように、センタ周波数に対してマーカ73で示すオフセット周波数1.1MHzにおいて、従来方式によりループ帯域幅が50kHzに設定されたスペクトラム71よりも、本実施形態における設定方法によりループ帯域幅が20kHzに設定されたスペクトラム72の方が、位相雑音が約5dBも低い結果が得られている。
【0059】
次に、本実施形態におけるスペクトラムアナライザ1の動作について
図5を用いて説明する。なお、本実施形態の特徴であるローカル信号発生装置20及び制御部30の構成に関する動作を中心に説明する。また、LBW設定部31が、ビデオ帯域幅が分解能帯域幅よりも狭く変更された場合に、LF23のループ帯域幅を狭く設定する例を挙げて説明する。
【0060】
制御部30の各設定部は、操作部40を介して測定者が入力した各種パラメータ値を各部に設定する(ステップS11)。具体的には、RBW設定部32は、入力されたRBWの値をRBWフィルタ12に設定する。VBW設定部33は、入力されたVBWの値をVBWフィルタ14に設定する。掃引時間設定部34は、入力された掃引時間の値をローカル信号発生装置20及び表示部18に適用する。周波数スパン設定部35は、入力された周波数スパンの値をローカル信号発生装置20及び表示部18に適用する。
【0061】
LBW設定部31は、
図3(b)に示したループ帯域幅テーブルを参照し、入力された掃引時間及び周波数スパンの値に基づいてLF23のループ帯域幅を設定する(ステップS12)。例えば、LBW設定部31は、
図3(b)に示したように、測定者が掃引時間SWT1及び周波数スパンSPAN1を設定した場合には、LF23のループ帯域幅を50kHzに設定する。
【0062】
制御部30は、ローカル信号発生装置20の発振器21及び分周器25に所定の制御信号を出力してローカル信号発生装置20を制御することにより、ローカル信号発生装置20は、ローカル信号を発生してミキサ11に出力する(ステップS13)。
【0063】
ミキサ11からADC16までの各要素により所定の信号処理が行われ、信号処理部17は、信号解析処理を行って(ステップS14)、分析対象周波数範囲のスペクトラム波形を求める。なお、ミキサ11からADC16までの各処理は、公知であるので説明を省略する。
【0064】
表示部18は、信号処理部17から周波数スペクトラム波形のデータを入力し、周波数スペクトラム波形を周波数ドメインで表示する(ステップS15)。
【0065】
制御部30は、ビデオ帯域幅が分解能帯域幅よりも狭く変更されたか否かを判断する(ステップS16)。
【0066】
ステップS16において、ビデオ帯域幅が分解能帯域幅よりも狭く変更されたと判断された場合には、LBW設定部31は、
図3(b)に示したように、現在設定されている分解能帯域幅及び周波数スパンを維持したまま、より狭いループ帯域幅20kHzを選択するよう掃引時間SWT1を所定時間長くして掃引時間をSWT2とする(ステップS17)。その結果、LF23のループ帯域幅が50kHzから20kHzに狭く変更され、ローカル信号発生装置20からは位相雑音の低減化が図られたローカル信号がミキサ11に出力される。そして、ステップS13の処理が実行される。
【0067】
一方、ステップS16において、ビデオ帯域幅が分解能帯域幅よりも狭く変更されたと判断されなかった場合には、ステップS13の処理に戻る。
【0068】
なお、前述の動作説明では、LBW設定部31が、ビデオ帯域幅が分解能帯域幅よりも狭く変更された場合に、LF23のループ帯域幅を狭く設定する例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば測定者が操作部40を介し掃引時間をより遅く設定した場合でもLF23のループ帯域幅を狭く設定する構成とすることもでき、前述と同様な効果が得られる。
【0069】
以上のように、本実施形態におけるスペクトラムアナライザ1は、掃引時間を所定時間長く設定することによりLF23のループ帯域幅を狭くするので、位相雑音の低減化を図ることができる。
【0070】
なお、前述の実施形態では、LBW設定部31が、1つのLF23のループ帯域幅を狭く設定する例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、ループ帯域幅が互いに異なるLFを複数有し、LBW設定部31に代えて、複数のLFの中から所定のループ帯域幅を有するLFを選択可能なLBW選択手段を備えた構成としても前述と同様な効果が得られる。